帝都復興、瓦礫と赤い花

マスター:尾仲ヒエル

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
少なめ
相談期間
5日
締切
2016/02/28 22:00
完成日
2016/03/07 19:19

みんなの思い出

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オープニング

●瓦礫撤去のお仕事
 ゾンネンシュトラール帝国首都、バルトアンデルス。
 少しずつ復旧が進んでいる市街地も、路地を一本入れば瓦礫が積み上がっているままの場所がまだ残っていた。
「こちらの一角になります。元々小さな学校だったのですが、この間の戦闘で崩れてしまって……。報酬もあまり御用意できなくて心苦しいのですが」
 いいよいいよ、とハンターたちに声を掛けられ、案内してきた職員が、ほっとした表情を浮かべる。
「どうか宜しくお願い致します」
 手袋とスコップを渡した職員は、最後にぺこりと頭を下げてハンターオフィスに戻っていった。

●朱花の教団
 特徴的な鈴の音が響いてくると、人々から声が上がる。
「パンだ」
「ササノハさまだ」
 赤い花の印が描かれた数台の馬車が空き地に止まると、その前にずらりと長い列が伸びた。
 馬車の前では白いローブを着た教団の関係者が忙しく立ち働き、次々に焼きたてのパンが配られていく。
 やがて列が消える頃には、集まった全ての人々の手にパンが行き渡っていた。

 空き地に座ってパンを食べる人々の間を、子供たちの一団がはしゃぎながら駆け回る。
 そんな中、1人の男が馬車に近づいた。
「こんにちは。パンはいかがですか」
「いらん」
 差し出されたパンに見向きもせず、男はずかずかと馬車の後ろに回り込んだ。
「教主とやらはどこにいる」
「どうかされましたか」
「イリフネさま」
 対応に出たのは、イリフネと呼ばれた黒髪の男だった。
「邪教徒どもめ。何が朱花の教団だ。ペテン師を祭り上げてエクラ教に成り替わろうとでも言うのか」
「とんでもない。朱花の教団は唯一神である光の加護のもとで活動しているに過ぎません」
 喧嘩腰の男に対し、イリフネの口調はあくまでも穏やかだ。
「我々は何物とも対立しません。我々にできるのはその日のパンを配り、人々の悲しみを癒すことだけなのです」
「目を覚ませ。あんたらは騙されてるんだ!」
 辺りを見渡し、尚も言いつのろうとする男に、集まっていた人々から声が上がった。
「ササノハさまを悪く言うな」
「そうだそうだ!」
 朱花の教団が本格的な活動を始めて半年。
 教主であるササノハは随分と人々に慕われているようだった。
「そんなに言うなら、あんたがパンを配ってくれるのかよ!」
 ぐっと言葉につまった男は、顔を真っ赤にしてどこかへ去って行く。
「皆さん。ありがとうございます。さあ、ササノハさまの浄化を受けたい方はこちらへ」
 男への不満が収まらない様子の人々を、イリフネが馬車の前へと案内する。

 ひざまずいた男の額に、白と赤のかさねの着物も鮮やかなササノハが右手を伸ばす。
 その手の甲には、教団の印そのままの、赤い花の形のアザがあった。
「あなたの罪を許します」
 柔らかな声で告げられた男は、何度もササノハに頭を下げてその場を離れた。

「あ」
 何十人もの人々への浄化を終えた後。馬車の後ろで休んでいたササノハが、何かを見つけて声を上げた。
 さらさらと、衣擦れの音をさせながら近付いた瓦礫の下には、おさげ髪の人形が押しつぶされていた。
「……ん」
 ササノハが人形の上の瓦礫をどかそうと試みる。
 それは大人でも1人では持ち上げられないほど大きな瓦礫だったが、ササノハにその無謀さは理解できていないようだった。
「痛っ」
 先日怪我をしたばかりの手の平の傷がひらき、じわりと赤いものがにじむ。
「何をされているのですか」
「叔父さん」
 近づいてきたイリフネは、ササノハが隠そうとした手をとらえた。
 傷口に眉をひそめた男は、手早く消毒を始める。
 何かあったのかと心配げにこちらを窺う信者たちに気が付き、ササノハが身を縮めた。
「大事な御体なのですから御気をおつけください。すぐに片付けは終わります」
 ため息と共にそう告げると、イリフネは信者たちの元へ説明に向かった。
 ササノハは、それ以上何もできずに用意された馬車に乗り込む。
「……迷惑かけちゃった。でも、僕も何かしたかったんだ」
 馬車の中から外を眺めながら呟いたササノハが、何かに気が付く。
 視線の先には、瓦礫を撤去するハンターたちの姿があった。
 ごそごそと荷物を探っていたササノハは、やがて教団の人間が着る白いローブを見つけ出した。
 着物からローブに着替えたササノハは、フードを目深にかぶると馬車を抜け出した。
 馬車に残された書置きには、「少し外の空気を吸ってきます。すぐに戻ります」と書かれていた。

「あの、僕にも手伝わせてもらえませんか?」
 白いローブ姿の小柄な人物がハンターたちに話しかけた。

リプレイ本文

「さて、小さな事も一歩から。復興にワープ機能はありませんからねぇ。これも帝国の為」
 積み重なった瓦礫の横で、メリエ・フリョーシカ(ka1991)がストレッチを始める。
「瓦礫をどかさないと、また新しく建てられないものね。都の復旧のために頑張るわ」
 のんびりした口調のリアリュール(ka2003)の横では、アルスレーテ・フュラー(ka6148)がやる気を出していた。
「こうもあからさまに戦いの爪痕が残ってちゃ、安心して寝られないわね……。私も、実家ではいっつも寝転がって幸せを噛み締めていた身。帝都の人たちの安らかな眠りのためにも、これくらいは手伝いましょう」
「こういった装備をするのは初めてですね。ある意味では新鮮な体験ですか」
 そう言ってエルバッハ・リオン(ka2434)がジャケットの襟元をゆるめる。いつもは露出が多い服装を好む彼女だが、今回は動きやすい装備に身を包んでいた。
「派手にやられたみてえだな、ここらも。……ま、シケた顔しててもしょうがねえ。とっとと片付けて、元の街並みをつくれるようにしねえとな」
 東方に思いを馳せていた文挟 ニレ(ka5696)が、近くの瓦礫の下に何かを見つける。
「ふむ……この人形は、どっかのお嬢ちゃんの落とし物かねえ。潰されてそのままってのは可哀想だな。瓦礫を退かして助け出すかい。なあ、ちょいと皆」
「はい」
「これをどかすんですか?」
 ハンター全員が手伝って、人形は無事に瓦礫の下から取り出された。
「さて、始めましょうか。帝国と、日銭の為に」
 そう言ってメリエが作業に取りかかろうとした時、後ろから声がした。
「あの、僕にも手伝わせてもらえませんか?」
 そこに立っていたのは、フードを目深にかぶった白いローブ姿の小柄な人物だ。
「え? あぁ、同業の人?」
 振り返ったメリエに、白ローブがふるふると首を振って見せる。
「いえ」
「ああ? 手伝いだあ? 気持ちは立派だが、随分と細いのが来たね」
「あ! ニレさん、ですよね」
 近付いたニレに気付き、白ローブがフードを下ろす。
 長い黒髪がさらりとこぼれ、まだ幼さの残る端正な顔が現れた。
「先日助けていただいたササノハです。その節はありがとうございました」
 頭を下げる少年は、帝都で台頭してきている宗教団体、朱花の教団の教主でもある。
「妙なのが来たと思ったら、こないだの教主サマかい。そういや馬車があったっけな。あそこから抜け出してきたのか」
「はい。あ、僕、ササノハと言います。朱花の教団で教主をさせていただいています」
「メリエです」
「私はリアリュール」
「エルバッハです。よろしければエルと呼んでください」
「アルスレーテよ」
 それぞれの自己紹介が終わると、ニレが尋ねた。
「で、そんな恰好をしてどうしたんだい?」
「何かしたくて……抜け出してきちゃいました。僕にもお手伝いできることがあるでしょうか」
「なんかよくわかんないけど、手伝ってくれるっていうんなら大歓迎ね。私の仕事がなくなるくらい働いてくれてもいいのよ?」
 うんうんと頷くアルスレーテの横からメリエが尋ねる。
「貴方は覚醒者?」
「覚醒者……お姉さんたちみたいな人のことですよね。いいえ」
「それなら、小さな破片を集めてくれると助かりますねぇ」
「……はい!」
 メリエの提案に、不安げだったササノハの声が明るくなる。
「まあどう手伝うかは任せるけど、手を怪我しちゃうから手袋くらいはちゃんとつけるのよ?
そりゃ多少の怪我くらいなら応急手当はするつもりだけど、怪我なんてしないにこしたことはないからね」
 7人姉妹の長女、アルスレーテがお姉さんらしい言葉をかける。そこにニレが何かを投げた。
「ほれ、おたくの分の手袋だ。見るヤツによっちゃ、手のアザですぐにバレちまう。手袋してりゃ多少は長く瓦礫弄りができるだろ。……あっしの分? 気にしなさんな。素手の方がやりやすいからね」
 ひらひらと手を振るニレに、メリエが代わりの手袋を差し出す。
「それならこれを使ってください。わたしは自前のがありますから」
「お。ありがとよ」
 続いてリアリュールが着ていたジャケットを差し出す。
「その服、汚れるでしょう。よければこれを羽織ると良いわ」
「ありがとうございます」
 ササノハが物珍しそうに迷彩柄のジャケットを羽織ると、下から覗くローブは白いスカートのように見えた。
 これなら教団関係者が近くを通りがかっても大丈夫そうだ。

「よし」
 準備運動を終えたエルバッハが、巨大なドリルを手に覚醒する。
 まず胸元に赤い薔薇の花の紋様が浮かび、続いてその花から伸びるように、棘のついた蔓の紋様が両腕と両脚、そして両頬にまで浮かび上がった。
「綺麗ですね。本当に薔薇が咲いているみたい……」
 その美しさに目を奪われたササノハが、はっとしたように身を引いた。女性の胸元を覗き込む形になってしまっていたことに気付いたらしい。
「す、すみません!」
 謝罪されたエルバッハは恥ずかしがる風もなく、逆に胸元を強調するようなポーズをとった。
「ためしにちょっとだけ触ってみますか?」
「と! とんでもないです!」
 ぶんぶんと頭を左右に振ったササノハは、真っ赤になった顔を隠すように、またフードをかぶる。
 ふふ、と悪戯っぽい笑い声を上げたエルバッハは、大きな瓦礫に近づいていくとドリルを当てた。
 高速で回転を始めたドリルが、振動と共に瓦礫を小さな欠片へと砕いていく。
「さて、まずはこれかな。離れて下さいね、破片に当たりますよ」
 続いて瓦礫に上ったメリエの背中、肩甲骨の辺りから、陽炎のような揺らぎが立ち昇る。
 特に大きな瓦礫を選んだメリエは、その前で大ぶりの太刀を構えた。
「……せいっ!」
 渾身の力で振り下ろされた太刀の下で、瓦礫が真っ二つに割れる。
「じゃあ私は運ぶ! 運動不足解消のためにも、ひたすら運ぶわ!」
 そう宣言したアルスレーテは、小さな瓦礫の散らばる地面を、台車をがたがた言わせながら運んでいく。
「台車が通りやすいよう、一緒に地面をならしましょう」
 リアリュールと共に、ササノハはスコップを手に瓦礫置き場までの地面をきれいにならしていく。
「なら、あっしは砕き終わったのを台車に放り込んどくよ。クラスは符術師だが、種族柄、筋力にゃあ自信がある。力仕事は任せな」
 そう言いながらスコップを拾い上げたニレの額には2本の角が見えている。
「元々は、立派な学び舎だったんでしょうねぇ……悔しいなぁ。
……でも、帝国は、この程度では折れませんよ。帝国は開拓者の国。ゼロからの出発はお家芸です」
 一心に瓦礫を砕いていたメリエが顔を上げる。
「思い知らしてやりますよ。帝国は、更なる力をもって立ち上がる。そしてその力は、必ず……」
 陛下、と呟くメリエの視線は、瓦礫の先の帝都、憧れの人へと向けられている。
 ササノハと瓦礫を台車に積みながら、リアリュールは噂の教団について尋ねる。
「教団っていうからには何か布教してるってことでしょ? その朱花ってどういう教えなの?」
「言葉にすると『信じていれば再び愛しい人に会える』でしょうか。僕には浄化……手で人に触れることで心を癒す力があるみたいなんです。身近な人を失われた方に触れると、その人と夢で会えるそうなので、希望される方に触れさせていただいています。ただ、信じていただかないと効かないみたいなんですけど……」
 大人びた返答に対して、その顔はアンバランスに幼い。
「まだ若いし、お友だちといっぱい遊びたいんじゃない?」
「……もう13ですし、少しでも役に立ちたいですから」
 少しだけ寂しそうに答えたササノハの息が徐々に乱れはじめる。
 大きめの破片はリアリュールが持つようにしていたが、慣れない作業に体がついていかないらしい。
 それに気付いたエルバッハが声を掛ける。
「適度に休憩を取った方がいいですよ」
「それなら、あの木の下で休憩にしましょうか」
 リアリュールが示した先には、一本の木が木漏れ日を作り出している。
「大きな木ですね」
 学校が開かれていた頃は、子供たちがこの木の周りで遊んでいたのだろう。

「はい。おやつのパンと、ツナの缶詰! 腹が減ってはなんとやら!」
 木の下に座ったアルスレーテが、荷物からパンと缶詰を取り出す。
「身体を動かしてみんなお腹が空いただろうから、ツナサンドでも作るよ」
 ごくりと水を飲んだエルバッハがペットボトルをかざす。
「回し飲みになっちゃいますけど、皆さんも飲みます? って、足りないですかね」
「ここに水道があります」
 ササノハが瓦礫の傍の蛇口をひねると、茶色く濁った水がほとばしった。
「飲めなそうでしょうか」
「そんな時のピュアウォーターです。見ててください」
 エルバッハがスキルを使うと、ボトルに入れた水がたちまち澄んだ色に変わった。
「これで飲めますよ」
 恐る恐る口をつけたササノハの顔が笑顔に変わる。
「美味しいです!」
 続いてアルスレーテの作ったツナサンドが配られ、ハンターたちがかぶりついた。
「美味しい!」
「本当。いい味ですね」
 皆がツナサンドに舌鼓を打つ中、メリエが余ったパンに目を止めた。
「それ、使っても構わないですか? わたしも良い物持ってきたんです」
「どうぞ」
 メリエがパンをサイコロ状に切り分けていく様子を見て、リアリュールがササノハに声を掛けた。
「木の枝を探して来てもらえる?」
「はい!」
 辺りを探していたササノハが、木の葉の間に折れた木の枝がひっかかっているのを見つけた。
「ん!」
 何度も飛ぶが届きそうにもない。その時、背後から伸びた腕が、ひょいと枝を掴んだ。
「アルスレーテさん」
「はい、どうぞ」
 背の高さを活かしたアルスレーテがササノハに枝を渡す。
「ありがとうございます。……あの、どうしたら背は伸びますか?」
 羨ましそうに見上げる少年に、アルスレーテが自信満々に言い切った。
「たくさん寝ることね。秘訣は五度寝よ」
「……ごどね」
 ササノハが圧倒された様子で繰り返す。
「ありがとう。ちょうどよさそう」
 枝を受け取ったリアリュールは、手慣れた様子で加工し始めた。
「木で何か作るのが好きなの」
 リアリュールの手の中で切り分けられた木の枝は、たちまち大ぶりな楊枝へと姿を変えた。
 全員に楊枝とサイコロ状に切ったパンが配られると、そこにメリエが蜂蜜をたっぷりとかけていく。
「天然の蜂蜜です。よかったらどうぞ」
「んんー。これも美味しい!」
 ぱくりと食べたエルバッハの顔がとろける。
「甘くて美味しいです」
 頬に手を当ててうっとりしているササノハの横では、ダイエット中のアルスレーテが身もだえしていた。
「食べたいけど……でもでも美味しそうだし、食べたいー!」
「? はい、どうぞ。あーん」
 乙女の葛藤をよく分かっていないササノハが、楊枝に刺したデザートを差し出す。
 思わずぱくりと食べてしまったアルスレーテが頭を抱えた。
「美味しい! って、ああー!」
「美味しいですか? じゃあ、もう一つどうぞ」
「あああー!」
 笑いながらその様子を見ていたニレが、ふう、と煙管の煙を吐いた。
「わあ」
 青みがかった煙にササノハの視線が釘付けになる。
「こんなのもできるぞ」
 ニレがぽんと片頬を叩くと、輪っかの形の煙が上がり、その場から歓声が上がった。

 休憩で元気を取り戻したハンターたちは作業を再開する。
「やるわ。さっきのデザートを無かったことにするためにも!」
 中でも、結局デザートを完食したアルスレーテの気合の入りようは物凄く、全速力で瓦礫を運んでいく。
 ハンターたちの働きにより、瓦礫は次々と片付けられていった。
「そうだ、ボウズ。お前さんに預けたいもんがあるんだが、いいかい? このお人形、さっきそこで拾ったのさ」
「あ」
 ニレの差し出した人形に、ササノハが声を上げる。
「それ、僕も取り出したかったんです」
「そうかい。それならちょうど良かった。こいつを持ち主のところに帰してやってくれねえか。あっしは此処の瓦礫を退かすのを手伝わなきゃならねえ。のんびり人を探してる暇が無くてね」
 その言葉にはササノハを休ませる気遣いが込められている。
「たくさんの人から慕われてるボウズなら、お人形のお友達を見つけられるはずだ。頼んだよ」
「はい!」
 近くで遊んでいた子供たちに話しかけるササノハを、ハンターたちがそっと見守る。
「大丈夫かね」
「完全に怪しまれてますね」
 子供たちに取り囲まれたササノハが、観念した様子でフードを下ろした。
「あ、ササノハさまだ」
「ササノハさま、なんでそんな恰好してるのー」
「おしのび中なんです」
 内緒ですよ、と微笑んで見せるササノハに、子供たちは素直に頷く。
「この人形、誰のものか知りませんか?」
「あれ? スーのじゃない?」
「うん。ちっちゃいスーのだよ。呼んできてあげる」
 年かさの男の子が駆け出し、やがて人形と同じおさげ髪の少女を連れてきた。
「あ! 私のお人形!」
「はい。あそこにいるお姉さんたちが見つけてくれたんですよ」
 スーと呼ばれた少女は、人形を大事そうに抱えると、ハンターたちの元に駆け寄った。
「ありがとう!」
 他の子供たちも寄ってくる。
「何してるのー?」
「学校がまた使えるように、瓦礫をどかしてるのよ」
「すげー」
「ここね、僕たちの学校だったんだよ」
「そうだったの。また学校に通えるように頑張っておくわね」
「本当? ありがとう!」
 アルスレーテとリアリュールが応じると、子供たちは口々にお礼を叫びながら戻っていった。
 ハンターたちも最後の仕上げにかかる。
「一通りは片付いたかね」
「これで新しい学校も建てられそうですね」
「ええ。あの子たちも喜びますね」
 ニレの言葉に、エルバッハとメリエが頷き合う。
 主だった瓦礫は片付き、学校のあった場所は広々として見えた。
 新しい学校の建設が始まり、子供たちがまた通えるようになる日も近いだろう。
 その様子を感慨深い様子で見つめていたササノハがフードを下ろす。
「僕、戻ります。手伝わせてくださってありがとうございました。……楽しかったです。とても」
 手袋とジャケットを返したササノハは、深々と頭を下げて馬車に戻っていった。
 その姿を見送り、ハンターたちも片付けを始める。
「あまり怒られないといいですね」
「メリエさん、今の言い方、なんだかお母さんみたい」
「ちょっと! せめて『お姉さん』にしてくださいよ」
 くすくす笑うリアリュールにメリエが注文をつけると、アルスレーテが振り返った。
「む? お姉さんポジションは譲りませんよ」
「何の話ですか」
「じゃあ私、セクシーな女教師役がいいです」
「エルまで何の話だい」
 にぎやかに帰路につくハンターたちの表情は晴れ晴れとしていた。

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MVP一覧

  • 豪放なる慈鬼
    文挟 ニレka5696

重体一覧

参加者一覧

  • 強者
    メリエ・フリョーシカ(ka1991
    人間(紅)|17才|女性|闘狩人
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 豪放なる慈鬼
    文挟 ニレ(ka5696
    鬼|23才|女性|符術師
  • 守護ドワーフ
    ユウキ(ka5861
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/25 15:08:21
アイコン 相談卓的なやつ
アルスレーテ・フュラー(ka6148
エルフ|27才|女性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/02/28 20:22:14