シモフリ乳 ~廃墟の集落~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/02/28 22:00
完成日
2016/03/07 07:19

みんなの思い出

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オープニング

 グラズヘイム王国・古都【アークエルス】東方の森に、かつてナガケと呼ばれる集落が存在した。
 集落の主な産業は豚、牛、馬を育てる畜産だったのだが、幻獣の獅子鷹『メニュヨール』によって崩壊してしまう。家畜の仔攫いが激増したからだ。
 ナガケ集落は解散の憂き目に遭い、青年ガローア・ラグアは父親のマガンタと共に放浪の身となる。
 父が亡くなってからも根無し草な生き方を続けてきたガローア。だが覚悟を決めた彼はハンターの力を借りてメニュヨール退治に成功した。
 その後、ガローアは古都でドワーフの青年『ベッタ』と出会う。意気投合した二人は集落復興に動きだす。
 ベッタの故郷周辺に棲息していた幻の青と呼ばれていた幻獣の肉質はとても素晴らしかった。リアルブルーの高級和牛霜降り肉を彷彿とさせる。そこで幻の青の名を改めて『シモフリ』と呼称することとなった。
 シモフリ六頭を放牧場に連れて帰り、オークの樹木が並ぶ放牧場に放つ。しばらくは森での生活と同じように樹木の上で棲みついた。だが危険がなければ地表で暮らすことがわかる。また好物は木の実だが、玉蜀黍の粒にも旺盛な食欲をみせた。
 シモフリ六頭の他に乳牛一頭と鶏の雌鳥六羽も飼うことにする。これで毎日新鮮な牛乳と鶏卵が手に入るようになった。
 木の実不足に備えて春からの玉蜀黍畑の開墾を開始。その頃、紅の兎のような幻獣二体に柵を壊される事態が発生した。
 それが過ぎ去ったかと思えば雑魔の巨大蜂が飛来。雑魔蜂はハンター達の知恵と行動力によって巣ごと退治される。
 森が紅葉に染まる頃、ある商人一家を集落に泊まった。よい機会と考えたガローアはハンターに野生のシモフリを狩ってきてもらう。
 ハンターの手によって調理されたシモフリ料理を味わった一家はいたく気に入ってくれる。市場にだす際には是非に声をかけてくれといわれた。
 シモフリの仔がたくさん産まれてから日が経つ。ガローアが放牧場で作業をしていると以前に柵を壊して姿を消した赤い兎二羽を見つける。
 やせ細って倒れている姿を見て放ってはおけなかった。住処に連れて行って看病。作業の手伝いをしにハンター一行が現れてまもなくある一団が集落へやってくる。
 森で迷ったと一団は語った。だがハンター達の機転で正体が賊だとわかる。暴虐は事前に抑えられ、集落は救われた。


 春はまだ遠い。日常的な洗濯や料理を除けばこの時期にやれることはあまりなくなっていた。
 完成した玉蜀黍畑に粒を蒔くのは四月に入ってから。ガローアとベッタはシモフリの仔の世話に時間をかける。
「ほらヒタチ、暴れるんやないで」
「アオタロウは甘えんぼだね。ん? フジも撫でて欲しいのかい?」
 ハンターが名付け親になった仔シモフリ三頭は特に懐いてくれた。
「生まれて大して経っていないちゅうのに、シモフリはもう普通の餌を食えるんやな」
「かなりお驚きだよね。雌親はまだたくさん乳をだすのに。どうやらシモフリは仔を年中産めるみたいだ」
「牛や豚と同じやな」
「そうだね。牛や豚と……同じ?」
 ベッタの言葉にガローアが考え込む。そして綺麗に洗った桶を用意して雌シモフリの前に片膝を立てて屈んだ。
「何すんのや。あ、牛のように乳搾りやな」
「そうだ。もしかしてと思ったらかなりでそうだね」
 ベッタも他の個体で乳搾りを始めた。牛と比べて三分の二程度だが、真っ白な乳が手に入れられる。
「クセ、少ないんやな」
「牛乳よりも濃くて甘いような」
 その日の晩、シモフリ乳をシチューに使ってみた。その味に驚いたガローアとベッタは同時に閃く。シモフリ乳も商品化できるのではないかと。
 将来的にはわからないが生乳は扱いが難しい。冬の今時期なら構わないだろうが、古都までかなり距離があるからだ。
 チーズ、バター、ヨーグルトが真っ先に浮かぶ。
「チーズにはたくさんの種類があるよね」
「そやな。おいらたちが知らないチーズも、山ほどあるはずや」
 そこでハンターに力を借りることにする。幸いなことに今の時期なら絞っておいた乳も数日間なら持つ。機導式の冷蔵庫も考慮に入れたいのだが、それは今回の試みがうまくいってからだ。
 数日後、ベッタが古都へ買い物に出かけた際にハンターズソサエティーの支部で依頼する。ハンター一行が現れたのはそれから一週間後のことだった。

リプレイ本文


「よろしくお願いするのですよ♪」
 集落に到着したばかりのハンター一行。緊張の面持ちでガローアとベッタに近づいたカティス・ノート(ka2486)が挨拶をする。
「よく来てくれました」
「大変やったやろ」
 部屋に荷物を置いたところでシモフリが飼われている厩舎へと向かった。
「小さいシモフリが増えてる! すごい!」
 厩舎に足を踏み入れたリューリ・ハルマ(ka0502)が目を見張る。青いまん丸な仔シモフリがゴロゴロと何頭も転がっていたからだ。
「アオタロウ、よく私がわかりましたね。よしよし♪」
 屈んだミオレスカ(ka3496)が足元に転がる仔を撫でた。
 まずは試飲から。全員がシモフリ乳を味わってみる。
「あらあら……、お肉だけでなくてミルクも良質なのですね」
 一口飲んだ火艶 静 (ka5731)がその味わいに驚いた。ほどよい濃さにほんのりと甘い。
「この乳で作る……乳製品で……料理の試作、ですか……」
 乳を飲み終わった外待雨 時雨(ka0227)は近寄ってきた仔と暫し戯れる。青く長い毛並みはとても柔らかで温かい。
 黒の夢(ka0187)が柵に寄りかかると仔が身体をすり寄せてきた。
「本当にふかふかしてるんだなー」
「名前つけてもかまへんで」
「いいの? じゃあ……汝は今からグストゥス! なのなっ」
 ベッタに促されて黒の夢が名付ける。名前が書かれた札が用意されて仔の首にぶら下げられた。
「それじゃ私はこの仔にレイノってつけようかな。丈夫に育ってね!」
 リューリが頬ですりすりして可愛がった仔にも札が用意される。
「δが元気でうれしいわ」
 こっそりと近づいてきた仔をマリィア・バルデス(ka5848)が抱きあげた。人見知りのようだがマリィアのことは覚えていたようだ。
「α、γ、ネズミ取りを任せるわ。お前たちが優秀なハンターだってこと、みなに見せつけてちょうだい……行けっ」
 αとγはマリィアの犬達。厩舎から住処に戻ることになったので集落に二頭を放つ。乳製品作りに鼠は大敵だからだ。
 住処にはチーズ、バター、ヨーグルトの試作が置いてある。二人は謙遜していたがそれなりの味に仕上がっていた。
「これならクリームチーズを作るのも簡単そうだね」
 ロラン・ラコート(ka0363)は順に味見して手応えを感じる。
「えと。料理ではないかもしれないのですが……」
 ヨーグルトを味わったカティスがおずおずと話を切りだす。
「脂肪の少ない歯応えのある部位のお肉を、ヨーグルトに漬け込んでみるのはどうでしょう? ただ漬け込んで燻製にしてもいいですし、ヨーグルトにスパイスを混ぜて漬け込むのもよさそうなのです♪」
「やってみる価値はあるで」
 カティスの案にベッタが賛成した。塩を使うよりもヨーグルトの漬けの方が作る料理に会うのではないかと。


「メニューによっては、塩漬けを……ってわけにはいきませんし、少し在庫の余裕があった方がよいでしょうから」
 火艶静は野生シモフリを入手すべく狩りへ出かけていく。案内も含めてベッタが同行する。
 集落では乳製品を作りを始めた。まずは時間のかかるチーズから。シモフリ乳の鍋を火にかける。
「美味しくなるのなっー」
「熟成させる必要がありますね」
 黒の夢とミオレスカが交代でかき混ぜた。適温になったところで人肌まで冷まし、ヨーグルトの元とレンネットを加える。しばらくすると固形物が浮いてきた。
「チーズってー、小さいのならまぁるいだけじゃなくて色んな形があったらいいと思うのなー。クッキーの型とかはだめー?」
 黒の夢の要望でクッキー型も使う。固形物を掬って枠の中へ入れると敷いた藁の隙間からホエーが滴り落ちる。
 そのまま食べてもよいが一部は冷暗所で寝かす。白カビがつけばカマンベールチーズが完成。それには日数が必要だ。
 集落の一同は火艶静とベッタの帰りを持つ。二人はたくさんのシモフリ肉を馬の背に載せて二日後の夕方に戻ってきた。
 カティスが調理台で肉塊を切り分ける。摺り下ろしニンニクと塩を桶のヨーグルトに混ぜた。肉にかけて軽く揉んでから漬けておく。
「ヨーグルト漬けにすると一週間ぐらいは余裕で持つのです♪ しかも肉が軟らかくなるんですよ♪」
「すごく手軽だね」
 カティスの説明をガローアが感心しながら聞く。
「これでいいわ」
 マリィアは寝る前にシモフリ乳を底の深い壺に注いでおく。上澄みを使って乳製品を作ろうとしていた。


 翌朝、調理場でカシャシャと音が鳴り響く。
 マリィアが持参したペットボトルをシェイクしていたのである。中身はシモフリ乳の上澄みだ。
「大変そうや」
「こうやってタオルで包んで熱を伝えないよう五分間振るの。今回はペットボトルを使ったけど、蓋付瓶を使ってよく振るでも大丈夫……滑りやすいけど」
 ベッタも手伝ってより分離させる。ガーゼで濾して塩をひとつまみ混ぜたらバターの完成だ。
 ホエーにはシモフリ乳を一対一で混ぜてからレモン汁を足す。鍋で温めてから冷ましておく。
「シモフリのバターって言えばそれも付加価値よ?」
「朝から豪勢だね」
 バターを塗ったトーストを食べてガローアが目を丸くした。好みで選択できるようガーリックバターもある。テーブルに並んでいたオムレツに使った乳製品はすべてシモフリ乳から作られたものだ。
「うまぃ……でぇ」
 ベッタが大口でオムレツを頬張る。
 そして朝食後。冷ました液体に浮いた中身をガーゼで包むことで水切りする。半日まてばリコッタチーズの出来上がりだ。
「クリームチーズとリコッタチーズの違いは生クリームを使うかホエーを使うかだけ」
 リコッタチーズにジャムや蜂蜜がかけられてデザートになる。さらに夕飯としてマリィアがシチューを作った。
「この味は他の食材ではだせないわ」
 マリィア自身も満足な出来。乳だけでなくチーズやヨーグルトも隠し味として使われていた。


 ナガケ集落周辺は冬であっても滅多に雪が降らなかった。保存を求めるのなら機導式冷蔵庫が必須といえる。
「あちらの世界では、ジェラートやアイスクリームと言った冷たい乳製品のデザートがあるそうですよ。ご当地メニューとしての取扱になりそうですけど、何時ぞやのご家族を受け入れたようなことをするなら、考察の余地があると思いますわ」
「とても欲しいんだけど、大きな問題があるんだ」
 火艶静の案は魅力的だが機導式冷蔵庫には毎月のメンテナンスが必要である。
 二人で相談しているうちに馬車備え付けの冷蔵庫案がでた。氷菓を販売するだけならよいが、畜産として活用するには容量不足だ。
 どうであれ氷菓のレシピは魅力的。古都で手に入れた氷で火艶静が実際に作ってくれる。氷菓を堪能した後、ガローアと火艶静はそれぞれ腕を組んで呻り続けた。


「一週間も持つなら丸儲けや。しかもうまいときとる」
 ベッタがヨーグルト漬けしたシモフリの炙り肉を頬張った。
「気に入ってもらえてよかったのですよ。今日の晩御飯はデザート付きです。ビスケットの上に、冷やして固めたヨーグルトがのったケーキなのです♪」
 カティスが運んできたケーキには紫色のソースがかけられている。使われていたのはナガケ集落自家製のブルーベリージャムだ。
 翌日、カティスはガローアから頼まれて作り方を教える。
「生クリームと砂糖を鍋に入れ弱火にかけつつ、ゼラチンを混ぜて溶かします♪」
 一晩熟成のヨーグルトを少しずつ加えていく。レモン汁も足して古都で購入した氷で冷やし固める。クッキーは厚手の袋に詰めて麺棒で砕いた。バターと混ぜて型に敷き詰めてから焼き直してクッキーの器ができあがり。先程の中身を注いで冷やし固めれば完成だ。
「う~ん」
 呻りながら食べていたガローアが突然に咽せる。カティスが手渡したコップからシモフリ乳を飲んだおかげですぐに落ち着く。
「冷蔵庫はあったほうがいいかな?」
 カティスは屈託のない笑顔で「はい♪」とガローアに答えたのだった。


「クリームチーズからだね」
 調理場を借りたリューリは生クリームとシモフリ乳を合わせて鍋で温めた。塩とレモン汁を足し、ザルで水切りを行う。重石でさらに絞り込み、ヘラでなめらかにしたら完成である。
「うまいですね」
「でしょ♪」
 味見したガローアの横でリューリが微笑んだ。そのクリームチーズで次にチーズケーキが作られる。他にも生クリーム、薄力粉、レモン、砂糖、鶏卵が用意された。
「クッキーで生地を作り、全部混ぜて型に入れてオーブンで焼けば完成! だからもう少しだけ待ってね♪」
 完成までの間、リューリとガローアはお喋りを楽しむ。
「クリームチーズはパンにハムと挟んでも美味しいし、甘めにするならジャムも良いかも?」
「バターだけだと飽きる人もいるから」
「ヨーグルトを布で包んで水切りしても濃厚で美味しくなるね。ホエーにシモフリ乳と蜂蜜、レモンを少し入れてドリンクにすると美味しいよ」
 ささっと会話で触れたばかりのドリンクを作ってくれた。
「爽やかな味。チーズケーキにも合いそうだし」
「うーん、幸せ♪」
 二人だけで味わったわけではなかった。仲間達にも味わってもらい好評を得る。
「チーズケーキも売れたらええな」
「古都で協力してくれる人か」
 美味しい料理を食べる度にガローアとベッタの期待と悩みは膨らんでいった。


 ロランが作ってくれたのはスフレチーズケーキだ。
「折角の材料だからね」
 揃ったのはどれも申し分ない極上の素材。クリームチーズ、砂糖、力粉、鶏卵、そしてヨーグルトを使う。極シンプルに作るつもりだが一つだけポイントがあった。それはメレンゲである。
「ここはホールではなくて、一口大のチーズケーキを作ってみようか」
 泡立て器とボールを小気味よく鳴らしながら卵白をかき混ぜていく。メレンゲの角を立たせ、慣れた手つきで材料を合わせてオーブンへ。その美味しそうなにおいはナガケ集落中を駆け巡った。
 焼きたてのスフレチーズケーキに惹かれて一同が調理場に集まる。折角なので飲み物を用意し、おやつとして頂く。
「リューリさんのは濃厚な味で、ロランさんのはふんわりしているね」
「どっちがうまいかは好みの問題や」
 ガローアとベッタにとって甲乙付けがたい。後日、ベッタがロランの調理作業を見学させてもらう。
「こ、こうやればええんか?」
「単純なようで結構難しいんだ。見てて」
 ロランから泡立て方を懸命に習得しようとベッタは頑張った。


「これから何を作るんや?」
「レアチーズ風のヨーグルトケーキなどを……」
 外待雨がビスケットを細かく砕いたものにバターを混ぜて型に敷き詰める。それとは別に水切りしたヨーグルト、レモン汁、クリームを混ぜ合わせた。
「クリームはシモフリ乳のものを……です」
 外待雨は作業の一つ一つを丁寧に教える。ゼラチンを加えて型から抜いたビスケット地に注ぎ入れる。しばらく冷やして固まるのを待つ。
「八等分に切り分け……ミントを飾れば、完成です……」
 さっそくベッタが試食した。
「同じようでもみんな違うもんやな。外待雨さんのはとても爽やかな味がするで」
 一切れだけのつもりがベッタはつい食べ過ぎてしまう。材料は余っているからといって外待雨は作り直した。
 ある朝、一同は外待雨が調理したフレンチトーストを頂く。
 ベッタが準備した苺、ヨーグルト、砂糖で中身の具が作られている。ポケット状にした食パンに詰め、卵液へと潜らせてバターで焼いてあった。
「おいしいよね」
「おいらも大好きや」
 フレンチトーストは朝食として何度も並べられる。
「シモフリ達は元気ですね……」
 時間があるときは厩舎を見学。仔達はとにかく転がるのが大好き。遊んで欲しいと外待雨にじゃれついてきた。


 ミオレスカとガローアは暗所に保管したカマンベールチーズの熟成具合を確認する。
「大分白くなってきましたね。これはこれでいいんですけど、発酵が進みすぎると悪くなってしまうので、原料用チーズがいいかもしれません、しかし、出来たてをそのままというのが、実に濃厚かつさっぱりいただけます」
「古都にあるチーズのお店に卸すのが一番かな」
「一次チーズは以前の商人の方みたいに、ここまで来られる方だけの、特別な味ににするとして、保存用のチーズとしてお勧めがスモークチーズです。確か燻製の設備はありましたよね?」
「燻製なら日持ちするね」
「味わいが深くなりますし、お酒が飲める方には特に、いいかもしれません」
 その日に作ったチーズは燻製仕立てにされた。
「脂身が少なめな肉のほうが燻製には適しているね。ヨーグルトの保存と甲乙つけがたい」
 迷うぐらいに商売の選択肢が増えてガローアは喜ぶ。これまでシモフリ肉ばかりに注目してきたが、乳製品が扱えるのなら事情は変わるからだ。


 ナガケ集落滞在の日々で、最も夕食を用意してくれたのが黒の夢である。
「グラタンなのなっ!」
 黒の夢が運んできたグラタンを一口食べたガローアとベッタは顔を見合わす。
 それから無言で食べきったのが美味しさを物語る。カマンベールチーズにシモフリ肉、野菜が使われていた。
 シモフリ肉にホウレンソウ、茸にヨーグルトをパイ生地で包み込んで焼き上げたキッシュはガローアのお気に入りだ。
「お弁当にいいよね。美味しいし、食べやすいし」
 ガローアは必ずといっていいほどキッシュを抱えて出かけていく。
「古都で木苺ジャムが売っていたから買ってきたよ」
「うれしい、なのなっ!」
 ガローアからジャムの瓶を受け取って黒の夢が喜ぶ。じっと眺めているとつい涎が垂れそうになった。
「すごいのなー、どれにシモフリって付けても美味しそうな響き……」
 自分が作った料理も含めてどの料理にも興味津々。シモフリ肉は噂以上の味だ。柔らかくて噛みしめると旨味が口中に広がる。
 おやつの時間にはシモフリ乳に木苺ジャムを加えたミックスジュースを用意した。蜂蜜と卵をシモフリ乳に加えて作ったプリンが並ぶ日も。
「冷蔵庫の件も含めて、古都に店をだすつもりだよ」
「忙しいけど何とかするつもりやで」
 最後の晩御飯のとき、ガローアとベッタがハンター達に決意を語る。
 二人がナガケ集落での畜産を手放したら意味がない。委託するか、もしくは誰かに任せるつもりだという。

 ハンター一行は帰路に就いた。
「おいしい、なのな♪」
「ほんとうに」
 黒の夢とミオレスカが馬車に揺られながら、様々な形をした一口チーズを頬張った。他にも自分達が作った料理を摘まみながら、ナガケ集落の未来を想像し合う。
「実家に帰るのは久々なのです♪」
 カティスは古都で少し立ち寄りたい場所がある。最後には仲間達と一緒に転移門を潜り抜けてリゼリオへと帰っていくのだった。

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MVP一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢ka0187

重体一覧

参加者一覧

  • 黒竜との冥契
    黒の夢(ka0187
    エルフ|26才|女性|魔術師
  • 雨降り婦人の夢物語
    外待雨 時雨(ka0227
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • お茶会の魔法使い
    ロラン・ラコート(ka0363
    人間(紅)|23才|男性|闘狩人
  • 元気な墓守猫
    リューリ・ハルマ(ka0502
    エルフ|20才|女性|霊闘士
  • ティーマイスター
    カティス・フィルム(ka2486
    人間(紅)|12才|女性|魔術師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 森の主を討ち果たせし者
    火艶 静 (ka5731
    人間(紅)|35才|女性|舞刀士
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
黒の夢(ka0187
エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/02/25 13:25:05
アイコン 試行錯誤スルノデス
黒の夢(ka0187
エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/02/28 20:24:12
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/02/28 10:23:22