ゲスト
(ka0000)
大雨のあとに
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/04 15:00
- 完成日
- 2016/03/08 23:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
昨夜は凄い雨だった。
ハンターたちがひと晩を過ごしたグラズヘイム国内のとある街の宿。大勢が集まって食事できる食堂内で、朝食をとる他の客が口々に話している。
朝になって雨はすっかりあがったみたいだが、起床後に宿泊した部屋の窓から外を見た際には、街の通りのあちこちに水たまりができていた。
わりと大きめの街で大雨対策もできていたので、大きな被害は出なかったようだ。
ハンターたちも雨音のうるささこそ感じたものの、眠れないほどではなかった。
「聞いたか。大雨の影響で、北の小さな村に被害が出たらしいぞ」
近くの席に座っている中年男性二人組の会話が、ハンターたちの席まで届いてくる。
「薬師の女性が配達に来ていたみたいだが、住んでいる村に被害が出たと聞いて今朝方、血相を変えて街を飛び出して行ったよ」
「そうなのか?」
「ああ。何でも村に幼い子供たちを二人だけで残してきたんだそうだ」
「村には他の大人がいるだろ?」
「それが薬草の材料を取りに行きやすいという理由で、村の奥にある小さな山の近くに家があるんだそうだ。もし、土砂崩れでも起こしていたら……」
男たちの声が小さくなり、互いに表情を曇らせる。
朝食を終えたハンターたちは、店主に挨拶をして宿を出る。
昨夜の大雨が嘘のように、外には日が差している。ポカポカするくらいだ。
道を濡らす雨に気を付けながら歩き、ハンターは街の中央、大通りにあるハンターズソサエティの支部の扉を開ける。
宿と同じくらいの規模の家屋内には、出されている依頼を吟味する他のハンターの姿があった。
ちらりと向けられる視線を抜け、カウンターに向かう。若い女性が受付に立っている。
「あ、丁度いいところに来てくださいました。緊急の依頼がつい先ほど届きまして……手が空いているのであれば、どうですか?」
カウンター前に到着するなり話しかけられたハンターは、先を促すように目で受付嬢に合図した。
「依頼が出されたのは街より北の村。小さな山が特徴的で十キロほど離れています。徒歩で二時間ほどかかる場所です」
そこで一度言葉を切り、受付の女性が詳しい依頼内容の説明に入る。
「北の村でも昨夜に大雨が降ったらしく、小さな山の一部が崩れたようです。幸い怪我人はいなかったみたいですが。村の奥にあった一軒の民家が孤立してしまったらしいのです。しかも、そこには幼い兄妹が残されているそうで、至急の救出が要請されています」
ハンターは尋ねる。救出するだけであれば、村人たちで何とかなるのではないかと。
質問に対し、受付嬢が沈痛な面持ちをする。
「問題は土砂崩れだけではないみたいなのです。孤立している幼い兄妹を狙ってではないでしょうが、山から蛇が降りてきているらしく、そちらの退治も依頼されています」
蛇は歪虚らしいとも聞き、ハンターたちはそれを早く言ってくれと険しい顔つきになる。
依頼を引き受ける旨を告げ、すぐに支部を出た。
●
「ケント、ケリー! すぐにお母さんが行くからね!」
叫んだ三十代半ばと思われる女性が、周囲にいた男たちに腕を掴まれる。
どうして邪魔するのと叫び、長い黒髪を振り乱す。
街へ薬草を売るために着ていた、外行き用のワンピースの長いスカートの裾が汚れるのも気にしない。
長袖のカーディガンに覆われた手を懸命に伸ばし、ニメートルの高さはあろうかという土砂の向こうにいる我が子の身を案じる。
子供たちが小さい頃に最愛の夫は病死している。救えるのは自分だけだという思いが女性――ケニアを突き動かす。
「落ち着くんだ、ケニア」
叫んだのは、村で一番の力持ちの三十代前半の男性だった。
「街に向かわせた奴が、今頃はハンターに依頼を出してくれているはずだ。それを待て!」
「待っていられないわよ。だって、土砂の向こうにも蛇がいるんでしょ!?」
「そ、それは……くそっ! せめて正面にいる蛇どもがいなければ、ハシゴを使って向こうへ行けるのに……!」
家の屋根に登って土砂向こうを見てくれている者によれば、兄妹から見て左側に蛇が陣取っているらしかった。
明らかに通常とは違う蛇で、そのうちに一体は明らかに他よりも大きいという。
本来ならすぐにでも土砂向こうから兄妹を助け出したいのだが、ケニアたちの正面にも複数の蛇がいて威嚇するように唸っている。
とてもじゃないが、村人たちでどうにかできる相手ではなさそうだった。
「無理に突っ込んでも、ケントやケリーを助けるどころか、俺達の中から犠牲が出るだけだ!」
「そんな……ケント! ケリー! ああ、神様っ!」
祈るように両手を組んだケニアは、泣きながらその場に膝をついた。
土砂向こうでは兄妹が震えながら寄り添っている。隠れるべき家は土砂により破壊され、蛇から身を守る手段にはならない。
そして凶悪な蛇たちが、とうとうその視界に幼い兄妹を捉えてしまった。
昨夜は凄い雨だった。
ハンターたちがひと晩を過ごしたグラズヘイム国内のとある街の宿。大勢が集まって食事できる食堂内で、朝食をとる他の客が口々に話している。
朝になって雨はすっかりあがったみたいだが、起床後に宿泊した部屋の窓から外を見た際には、街の通りのあちこちに水たまりができていた。
わりと大きめの街で大雨対策もできていたので、大きな被害は出なかったようだ。
ハンターたちも雨音のうるささこそ感じたものの、眠れないほどではなかった。
「聞いたか。大雨の影響で、北の小さな村に被害が出たらしいぞ」
近くの席に座っている中年男性二人組の会話が、ハンターたちの席まで届いてくる。
「薬師の女性が配達に来ていたみたいだが、住んでいる村に被害が出たと聞いて今朝方、血相を変えて街を飛び出して行ったよ」
「そうなのか?」
「ああ。何でも村に幼い子供たちを二人だけで残してきたんだそうだ」
「村には他の大人がいるだろ?」
「それが薬草の材料を取りに行きやすいという理由で、村の奥にある小さな山の近くに家があるんだそうだ。もし、土砂崩れでも起こしていたら……」
男たちの声が小さくなり、互いに表情を曇らせる。
朝食を終えたハンターたちは、店主に挨拶をして宿を出る。
昨夜の大雨が嘘のように、外には日が差している。ポカポカするくらいだ。
道を濡らす雨に気を付けながら歩き、ハンターは街の中央、大通りにあるハンターズソサエティの支部の扉を開ける。
宿と同じくらいの規模の家屋内には、出されている依頼を吟味する他のハンターの姿があった。
ちらりと向けられる視線を抜け、カウンターに向かう。若い女性が受付に立っている。
「あ、丁度いいところに来てくださいました。緊急の依頼がつい先ほど届きまして……手が空いているのであれば、どうですか?」
カウンター前に到着するなり話しかけられたハンターは、先を促すように目で受付嬢に合図した。
「依頼が出されたのは街より北の村。小さな山が特徴的で十キロほど離れています。徒歩で二時間ほどかかる場所です」
そこで一度言葉を切り、受付の女性が詳しい依頼内容の説明に入る。
「北の村でも昨夜に大雨が降ったらしく、小さな山の一部が崩れたようです。幸い怪我人はいなかったみたいですが。村の奥にあった一軒の民家が孤立してしまったらしいのです。しかも、そこには幼い兄妹が残されているそうで、至急の救出が要請されています」
ハンターは尋ねる。救出するだけであれば、村人たちで何とかなるのではないかと。
質問に対し、受付嬢が沈痛な面持ちをする。
「問題は土砂崩れだけではないみたいなのです。孤立している幼い兄妹を狙ってではないでしょうが、山から蛇が降りてきているらしく、そちらの退治も依頼されています」
蛇は歪虚らしいとも聞き、ハンターたちはそれを早く言ってくれと険しい顔つきになる。
依頼を引き受ける旨を告げ、すぐに支部を出た。
●
「ケント、ケリー! すぐにお母さんが行くからね!」
叫んだ三十代半ばと思われる女性が、周囲にいた男たちに腕を掴まれる。
どうして邪魔するのと叫び、長い黒髪を振り乱す。
街へ薬草を売るために着ていた、外行き用のワンピースの長いスカートの裾が汚れるのも気にしない。
長袖のカーディガンに覆われた手を懸命に伸ばし、ニメートルの高さはあろうかという土砂の向こうにいる我が子の身を案じる。
子供たちが小さい頃に最愛の夫は病死している。救えるのは自分だけだという思いが女性――ケニアを突き動かす。
「落ち着くんだ、ケニア」
叫んだのは、村で一番の力持ちの三十代前半の男性だった。
「街に向かわせた奴が、今頃はハンターに依頼を出してくれているはずだ。それを待て!」
「待っていられないわよ。だって、土砂の向こうにも蛇がいるんでしょ!?」
「そ、それは……くそっ! せめて正面にいる蛇どもがいなければ、ハシゴを使って向こうへ行けるのに……!」
家の屋根に登って土砂向こうを見てくれている者によれば、兄妹から見て左側に蛇が陣取っているらしかった。
明らかに通常とは違う蛇で、そのうちに一体は明らかに他よりも大きいという。
本来ならすぐにでも土砂向こうから兄妹を助け出したいのだが、ケニアたちの正面にも複数の蛇がいて威嚇するように唸っている。
とてもじゃないが、村人たちでどうにかできる相手ではなさそうだった。
「無理に突っ込んでも、ケントやケリーを助けるどころか、俺達の中から犠牲が出るだけだ!」
「そんな……ケント! ケリー! ああ、神様っ!」
祈るように両手を組んだケニアは、泣きながらその場に膝をついた。
土砂向こうでは兄妹が震えながら寄り添っている。隠れるべき家は土砂により破壊され、蛇から身を守る手段にはならない。
そして凶悪な蛇たちが、とうとうその視界に幼い兄妹を捉えてしまった。
リプレイ本文
●
喧騒に包まれた村に、依頼を受けたハンターたちが到着する。
「あれ……子供の救出って聞いてたんですけど、なんだかいるみたいですねー?」
大雨によって発生し、壁みたいになっている土砂の前に陣取る蛇を見て葛音 水月(ka1895)が言った。
子供たちの母親ケニアによれば、土砂向こうにも蛇がいるらしい。そのうちの一体はとても大きいとも。
確かに視線を上げれば、壁から顔を出すくらいに大きな蛇が見える。まさしく大蛇と呼ぶに相応しい大きさだった。
「失わせぬ、必ず助けねばならぬ」
恭牙(ka5762)は睨むようにして、土砂から姿が見えている大蛇に決意に満ちた目を向けた。
「ハンドガンさえあれば、大抵のことは何とかなるんじゃないかしら?」
手に持つ魔導銃の調子を確かめながら、マリィア・バルデス(ka5848)は土砂の壁を守るように存在する正面の蛇の三体を見る。
「……初めての依頼ね……うまくいくといいけれど」
エリザベス・アーランド(ka5947)の言葉に、側にいるエリザベート・アインナッハ(ka6051)が頷く。
緊張気味に呟いた通り、今回はエリザベスがハンターになって初めての依頼になる。
同意したエリザベートの場合は、初めての戦闘依頼だ。
「初めての戦闘です~。頑張りましょう~」
おっとりとした雰囲気のエリザベートは、語尾を伸ばす感じの喋り方が特徴的だった。
若干の不安さを漂わせるエリザベスやエリザベートと、対照的なのが水流崎トミヲ(ka4852)だ。
「今日の僕は一味ちがうよ! 土砂災害ときたら……め組の……いや! クリムゾンウェスト風に言えば、ファイアーマン! ファイアーマンDT大魔法使い、水流崎トミヲ、だッッッ!」
緊張や不安を一掃するほどのやる気を漲らせる。そこには、取り残されている少年少女を救いたいという思いしかなかった。
「無粋な蛇もいたものですね」
ジャック(ka6170)が、張り付いたような笑顔を浮かべながら言った。細く鋭い目は、真っ直ぐに複数の蛇を捉えている。
「子供達の安全が最優先ですから、さっさと蛇には退場、もとい消えていただきましょう」
「はっはー、あんだけでかい蛇なら相当食いでがあるじゃーん」
楽しそうな声を出したのはゾファル・G・初火(ka4407)だ。
あいも変わらずのバトルジャンキーのチンピラ少女は、今日も平常運転である。
壁となっている土砂の向こうへ行こうにも、正面に位置する三体の蛇が村人の救助活動を妨害する形になっている。
土砂向こうのケントとケリーを助けるには、三体の蛇をどうにかしなければならない。
●
「無事に子供らを守り、親元に帰らせる為に蛇の討伐をしなければならぬな。その為に私は蛇には修羅と、子には護鬼となろう」
恭牙が武器を構える。
「イージーだと思ってたら制限時間付きみたいな感じで、クリア難易度が高そうです」
言いながら水月は、手早く仲間と行動を擦り合わせる。
「僕はスキルを使って、一秒でも早く子どもの側に行けないかを試します。魔法攻撃等のタイミングに合わせます。それじゃ、お願いしますねー」
やや離れた位置に陣取っている味方に告げたあと、水月は瞬脚を使った移動で、土砂際まで一気に到達する。
あとは気配を消しやすいよう、仲間の範囲魔法等の攻撃の瞬間に合わせて隠の徒を使って隠密状態になるだけだった。
水月が動いた直後、マリィアもまた行動を開始していた。
向かって右側に移動し、両手に持つ魔導銃で正面にいる蛇を狙う。
「とりあえず、そこを退いてもらう。あなたたちは邪魔」
戦闘に入り、元軍人らしい口調となったマリィアが引き金を引く。
標的に定めた蛇の胴に命中し、苦悶の絶叫が周囲に木霊す。
「拳銃ではあまりリーチが取れませんからね、距離を詰めて、真ん中の蛇狙いで行きましょう」
マリィアに続いてはジャックが、横並びする三体の蛇の中で、中央にいる一体を狙って突き進む。片手に握るエトワール・フィラントの銃口を向ける。
「同じ狙いの人がいるでしょうからね、横の蛇も警戒、援護は考えておきましょう」
「急ごう! 少しでも、この手が届くように」
声を張り上げたトミヲは、射程を優先したスキルの準備をしつつ、側で控える村人たちに声をかける。
少しでも早く、ハシゴをかけるために準備してもらうためだ。
「僕らを信じて。あんな蛇、直ぐに撃滅するから!」
視線を蛇に戻したトミヲはゴースロンを走らせつつ、集中を使用してのファイアーボールを炸裂させる。
「だから、君たちは早急に仕留める……! 昂ぶり、溢れろ、僕のDT魔力ゥ!」
マリィアがダメージを負わせた以外の蛇を、二体同時に消滅させようとした。
向かって一番左にいた蛇は直撃を食らって絶命したが、真ん中の一体は全身をうねらせるようにしてトミヲのファイアーボールを回避した。
無傷で切り抜けた中央の蛇を標的にするべく、恭牙が走りだす。
「距離のある攻撃を有してはおらぬから、この地点から走るようにした方がよいだろうな。他に近距離の者と邪魔の仕合をしないように気を付けねば。キバも連れてゆくか……」
正面に見据えた蛇と睨み合う恭牙の隣を、重装馬に乗ったゾファルが駆けていく。
相棒と言ってはいるが、実は名前はまだない。そんな重装馬を走らせ、泥濘の戦場で泥を蹴立てて、壁前方の大蛇たちに突撃する。
「ぶっちらばして、注意を引くとともに、壁前から引きはがしてやるじゃん! 他のもまとめて潰すじゃん!」
好戦的な瞳をギラつかせ、ゾファルは下唇を軽く舐める。バトルジャンキーと自認するだけあって、戦闘に対する緊張は不安は微塵もなかった。
戦闘経験が不足しているエリザベートは、後方から味方を援護する形で動く。
「行きます~」
足元に注意しつつ、射程に収めた中央の蛇を狙ってマジックアローを撃つ。
「みなさんの後ろから援護しますね~」
射線に被らないようにと、味方の後方から放った光るエネルギーの矢が見事に蛇へ突き刺さる。
致命傷とまではならないが、動きを鈍らせるのには成功した。あとは前衛に任せればいい。
そのエリザベートの視線の先には、今回が初めての戦闘となるエリザベスの背中があった。
「初めて依頼に、初めての戦闘……初めて尽くしだわ」
緊張でかすかに声を震わせるも、戦闘中の雰囲気には決して飲まれたりしない。
自分の力量を冷静に把握し、前衛ながらも他の味方の後ろにポジションをとる。
前衛として戦いつつも、基本的には味方の前衛の戦いを見て覚えるような感じで行動していた。
「先輩ハンターの動きを見て勉強しなくちゃ」
味方の死角とかに注意しながら、向かってくる蛇の一撃を胴で受け止める恭牙の動きを観察する。
攻撃に備えていた恭牙はしっかりと蛇の牙を受け止め、無傷でしのぎきっていた。
恭牙のすぐ前にいるのはゾファル。攻撃を仕掛ける前に、距離を詰められた蛇が鋭い牙を突き立てようとする。
「はっはー。残念賞じゃーん。この程度の攻撃じゃ、俺様ちゃんは怪我ひとつしないじゃん」
巨大な斧で敵の攻撃を受け流した直後、チャージングからの薙ぎ払いで残っていた二体の蛇をまとめて攻撃する。
当初の予定では三体を存分に蹂躙している間に、村民や残りの仲間達に梯子を使って向こう側の要救助者を助けてもらうつもりだった。
しかし戦闘直後にマリィアがダメージを与えていた蛇は、数秒前にゾファルのギガースアックスの一撃で絶命済みだ。
残りは一体。引き離すよりも、このまま潰してしまう方が早い。
「そのまま動かないでください。すぐに仕留めてあげます」
ジャックの持つ魔導拳銃から放出された弾丸が、残り一体となっていた蛇の腹部を貫く。
瀕死となり、最後の抵抗とばかりに蛇が激しく暴れる。
真っ先に近づくのは恭牙だ。
「大蛇に対する前に蛇を、取り巻きを早々に倒さねば不安が残るし、何より子供らを守る為だ」
攻撃を受けないように立ち回りながら、鎧徹しで蛇にとどめを刺す。
「立ち塞がる敵は消えた。早く向こう側へ行かないと」
壁の前に陣取っていた三体の蛇を倒すと同時にマリィアが動き出し、ハシゴを持つ村人も行動を開始する。
●
土砂の壁の向こう側。大蛇率いる蛇たちが、獲物目掛けて全速力で走る。
兄のケントがケリーの前に立ち、身を挺して守ろうとする。
ケントが大蛇の餌食となる前に、ひとりのハンターが土砂の壁に立った。水月だ。
他のハンターが壁前にいた三体の蛇の注意を引き付けてくれている間に、壁歩きを使って独力で土砂の壁を突破したのである。
なんとか上手くいったと安堵する暇もなく、水月は上ったばかりの土砂の壁を今度は駆け下りる。
隠密を解除し、全力で移動しつつ、ケントとケリーに大蛇から離れるように指示を飛ばす。
「蛇とは逆側に離れてくださいねー。ぺろっと食べられでもしたら、お母さんが泣いちゃいますよー」
恐怖に震えながらも、頷いたケントがケリーの手を掴んで走り出す。
その様子を見た水月は軽く微笑みながら、大蛇と兄妹の前へ立つように移動する。
「ハンターとーじょう、っと。僕が来たからにはもう大丈夫ですからねー。危ないので下がっててください」
獲物を仕留めるのを邪魔され、怒り狂った大蛇が飛びかかるようにして水月へ迫る。
それを水月は軽やかなステップでも披露するかのように、ひらりと回避する。
しかし大蛇以外の蛇は、水月の脇をすり抜けるようにして背後の兄妹を狙う。
「弱い方に向かうのなら、後ろから痛いのが来ると理解させないといけませんね。相手は僕ですよー? よそ見してると刎ねちゃいます」
通り抜けた一体を追走し、にっこり笑った水月が斬撃を食らわせる。
強大なダメージで移動速度が落ちた蛇だったが、なおも標的を仕留めようと前進する。
そこに、一直線に電撃が伸びてきた。蛇に耐えられるような体力はなく、その場で動かなくなる。
ハシゴを使ってこちら側に来た、トミヲの放ったライトニングボルトだった。
トミヲを見てきた兄妹に、軽くサムズアップして笑いかける。
「安心していい! 君たちは助かるよ! さぁ! ここはファイアーマンが食い止めてるうちに……!」
なおも残る一体が幼い兄妹を襲おうとするも、マリィアの放った銃弾が蛇を押し止める。
グラソンからの妨害射撃を受け、蛇の動きを阻害する。
「私が見ている前で、好き勝手できるとは思わないことだ」
言い放つマリィアのおかげで追いつくのが容易になった蛇に、オルケーシスを構えたジャックが挑みかかる。
「私では実力不足でしょうから、大蛇は援護にして、取り巻きの蛇を狙います」
ランアウトからのスラッシュエッジで、着実に蛇の生命力を削る。
ジャックの背後からは、エリザベートがマジックアローで援護する。
「ん、やっぱりちょっと胸が邪魔よね……仕方ないけど」
愚痴るように言ったエリザベスも、ジャックの援護を行う。
苦境に陥る蛇を助けたいのか、大蛇が動き出す。
しかし、追いついた恭牙が真っ先に立ち塞がる。
「私は護鬼、もう私の前では人は殺させん……消えてもらうぞ、大蛇!」
渾身の一撃を叩き込むも、他の蛇よりも生命力の高い大蛇はさすがに簡単には倒せない。
だが後退りとまではいかなくとも、他の蛇の援護へ向かおうとするのは止められた。
その間に、水月がダメージを負っていた蛇を仕留めていた。
憎々しげに睨む大蛇が巨体を揺らして恭牙へ襲い掛かろうとする。
――その時だった。
「俺様ちゃんを忘れてもらったら困るじゃーん!」
横からギガースアックスで殴りつけるように、大蛇の頭を攻撃したのである。
「このまま頭を潰す方向でいくじゃん。蛇ってのは執念深いから、輪切りにしても頭だけで攻撃してくる可能性もあるんだぜ。なんで、確実に意識を狩っていくじゃーん」
他の蛇を倒し終えたトミヲも合流し、大蛇にライトニングボルトを浴びせる。
いかに巨大で強力な蛇であろうとも、ハンターたちに囲まれてしまえば不利を覆せなかった。
咆哮とともに、恭牙が気合の一撃を放つ。
かすかによろめいた大蛇に、マリィアとジャックの射撃が命中。
エリザベスとエリザベートは迂闊に近づかず、大蛇が変な動きをし始めないか警戒する。
そしてダメージと怒りで動きが単調になったところに、鳴鵺の射程に大蛇を収めた水月が強烈な攻撃をお見舞いした。
あとはとどめを刺すだけ。
大蛇の体を足場にして飛び上がったゾファルが、両手に持ったギガースアックスで文字通り大蛇の頭を潰したのだった。
●
蛇たちが一掃されたのを受け、村人たちがすぐに幼い兄妹を救出した。
母親と再会したケントとケリーは、ともに号泣していた。
その様子を見ていたトミヲは、助けられてよかったと爽やかに子供たちへ話しかける。
母親のケニアにお礼を言われた際には、余裕でドモってしまったが。
恭牙も子供たちの頭を軽く撫で、安堵させると同時に無事だった祝福をした。
エリザベスも「よかったですね」と微笑みかけていた。
「家の手伝いをしなければならないなら、片付けを手伝うわよ。軍人時代の災害派遣の関係から、災害時の救助活動や撤去作業には比較的慣れているの」
ケニアと子供たちがお礼を言うと、マリィアは笑顔で「気にしないで」と返した。
戦闘時の緊張感もだいぶ緩んできたところで、自称マジシャンというジャックが即興のステージで奇術を披露する。
「皆さん、笑顔が一番ですから。私の奇術で楽しんでください」
最初は助けた子供たちも含めて楽しんでいたが、途中でおっとりしているエリザベートが転んでしまった。
戦闘時の緊張から解放され、すっかり気が抜けてしまっていたのだ。
転んだエリザベートだけでなく、ぬかるんだ地面で戦闘していたハンターや救助に一生懸命だった村人たちも少なからず服に泥がついていた。
それを見て、腹を抱えてゲラゲラ笑ったのがゾファルである。
ゾファル自身にも泥がかかっていたので、ケリーがクスっと笑った。
その瞬間にゾファルは瞳を輝かせ、ケリーに泥をすくってぶっかけた。
「どうせなら一緒に汚れようじゃーん。はーっはっはっ!」
豪快に笑うゾファルに「もー」と唇を尖らせたケリーが、泥をかけ返す。
そこから泥戦争ともいえる泥のかけあいに発展する。
いつしか大人も子供も関わらずに参加し、蛇想像の恐怖を忘れたかのように皆で笑っていた。
こうなるのを狙っていたのかと思いきや、ゾファル本人にはそんなつもりは欠片もないみたいだった。
誰かに尋ねられても、そう答えるだろう。だって、ただの怠惰なバトルジャンキーだとも。
昨夜に大雨に見舞われた村。
蛇から子供たちを救ったハンターのおかげで、今は降り注ぐような笑い声が村全体を包んでいた。
喧騒に包まれた村に、依頼を受けたハンターたちが到着する。
「あれ……子供の救出って聞いてたんですけど、なんだかいるみたいですねー?」
大雨によって発生し、壁みたいになっている土砂の前に陣取る蛇を見て葛音 水月(ka1895)が言った。
子供たちの母親ケニアによれば、土砂向こうにも蛇がいるらしい。そのうちの一体はとても大きいとも。
確かに視線を上げれば、壁から顔を出すくらいに大きな蛇が見える。まさしく大蛇と呼ぶに相応しい大きさだった。
「失わせぬ、必ず助けねばならぬ」
恭牙(ka5762)は睨むようにして、土砂から姿が見えている大蛇に決意に満ちた目を向けた。
「ハンドガンさえあれば、大抵のことは何とかなるんじゃないかしら?」
手に持つ魔導銃の調子を確かめながら、マリィア・バルデス(ka5848)は土砂の壁を守るように存在する正面の蛇の三体を見る。
「……初めての依頼ね……うまくいくといいけれど」
エリザベス・アーランド(ka5947)の言葉に、側にいるエリザベート・アインナッハ(ka6051)が頷く。
緊張気味に呟いた通り、今回はエリザベスがハンターになって初めての依頼になる。
同意したエリザベートの場合は、初めての戦闘依頼だ。
「初めての戦闘です~。頑張りましょう~」
おっとりとした雰囲気のエリザベートは、語尾を伸ばす感じの喋り方が特徴的だった。
若干の不安さを漂わせるエリザベスやエリザベートと、対照的なのが水流崎トミヲ(ka4852)だ。
「今日の僕は一味ちがうよ! 土砂災害ときたら……め組の……いや! クリムゾンウェスト風に言えば、ファイアーマン! ファイアーマンDT大魔法使い、水流崎トミヲ、だッッッ!」
緊張や不安を一掃するほどのやる気を漲らせる。そこには、取り残されている少年少女を救いたいという思いしかなかった。
「無粋な蛇もいたものですね」
ジャック(ka6170)が、張り付いたような笑顔を浮かべながら言った。細く鋭い目は、真っ直ぐに複数の蛇を捉えている。
「子供達の安全が最優先ですから、さっさと蛇には退場、もとい消えていただきましょう」
「はっはー、あんだけでかい蛇なら相当食いでがあるじゃーん」
楽しそうな声を出したのはゾファル・G・初火(ka4407)だ。
あいも変わらずのバトルジャンキーのチンピラ少女は、今日も平常運転である。
壁となっている土砂の向こうへ行こうにも、正面に位置する三体の蛇が村人の救助活動を妨害する形になっている。
土砂向こうのケントとケリーを助けるには、三体の蛇をどうにかしなければならない。
●
「無事に子供らを守り、親元に帰らせる為に蛇の討伐をしなければならぬな。その為に私は蛇には修羅と、子には護鬼となろう」
恭牙が武器を構える。
「イージーだと思ってたら制限時間付きみたいな感じで、クリア難易度が高そうです」
言いながら水月は、手早く仲間と行動を擦り合わせる。
「僕はスキルを使って、一秒でも早く子どもの側に行けないかを試します。魔法攻撃等のタイミングに合わせます。それじゃ、お願いしますねー」
やや離れた位置に陣取っている味方に告げたあと、水月は瞬脚を使った移動で、土砂際まで一気に到達する。
あとは気配を消しやすいよう、仲間の範囲魔法等の攻撃の瞬間に合わせて隠の徒を使って隠密状態になるだけだった。
水月が動いた直後、マリィアもまた行動を開始していた。
向かって右側に移動し、両手に持つ魔導銃で正面にいる蛇を狙う。
「とりあえず、そこを退いてもらう。あなたたちは邪魔」
戦闘に入り、元軍人らしい口調となったマリィアが引き金を引く。
標的に定めた蛇の胴に命中し、苦悶の絶叫が周囲に木霊す。
「拳銃ではあまりリーチが取れませんからね、距離を詰めて、真ん中の蛇狙いで行きましょう」
マリィアに続いてはジャックが、横並びする三体の蛇の中で、中央にいる一体を狙って突き進む。片手に握るエトワール・フィラントの銃口を向ける。
「同じ狙いの人がいるでしょうからね、横の蛇も警戒、援護は考えておきましょう」
「急ごう! 少しでも、この手が届くように」
声を張り上げたトミヲは、射程を優先したスキルの準備をしつつ、側で控える村人たちに声をかける。
少しでも早く、ハシゴをかけるために準備してもらうためだ。
「僕らを信じて。あんな蛇、直ぐに撃滅するから!」
視線を蛇に戻したトミヲはゴースロンを走らせつつ、集中を使用してのファイアーボールを炸裂させる。
「だから、君たちは早急に仕留める……! 昂ぶり、溢れろ、僕のDT魔力ゥ!」
マリィアがダメージを負わせた以外の蛇を、二体同時に消滅させようとした。
向かって一番左にいた蛇は直撃を食らって絶命したが、真ん中の一体は全身をうねらせるようにしてトミヲのファイアーボールを回避した。
無傷で切り抜けた中央の蛇を標的にするべく、恭牙が走りだす。
「距離のある攻撃を有してはおらぬから、この地点から走るようにした方がよいだろうな。他に近距離の者と邪魔の仕合をしないように気を付けねば。キバも連れてゆくか……」
正面に見据えた蛇と睨み合う恭牙の隣を、重装馬に乗ったゾファルが駆けていく。
相棒と言ってはいるが、実は名前はまだない。そんな重装馬を走らせ、泥濘の戦場で泥を蹴立てて、壁前方の大蛇たちに突撃する。
「ぶっちらばして、注意を引くとともに、壁前から引きはがしてやるじゃん! 他のもまとめて潰すじゃん!」
好戦的な瞳をギラつかせ、ゾファルは下唇を軽く舐める。バトルジャンキーと自認するだけあって、戦闘に対する緊張は不安は微塵もなかった。
戦闘経験が不足しているエリザベートは、後方から味方を援護する形で動く。
「行きます~」
足元に注意しつつ、射程に収めた中央の蛇を狙ってマジックアローを撃つ。
「みなさんの後ろから援護しますね~」
射線に被らないようにと、味方の後方から放った光るエネルギーの矢が見事に蛇へ突き刺さる。
致命傷とまではならないが、動きを鈍らせるのには成功した。あとは前衛に任せればいい。
そのエリザベートの視線の先には、今回が初めての戦闘となるエリザベスの背中があった。
「初めて依頼に、初めての戦闘……初めて尽くしだわ」
緊張でかすかに声を震わせるも、戦闘中の雰囲気には決して飲まれたりしない。
自分の力量を冷静に把握し、前衛ながらも他の味方の後ろにポジションをとる。
前衛として戦いつつも、基本的には味方の前衛の戦いを見て覚えるような感じで行動していた。
「先輩ハンターの動きを見て勉強しなくちゃ」
味方の死角とかに注意しながら、向かってくる蛇の一撃を胴で受け止める恭牙の動きを観察する。
攻撃に備えていた恭牙はしっかりと蛇の牙を受け止め、無傷でしのぎきっていた。
恭牙のすぐ前にいるのはゾファル。攻撃を仕掛ける前に、距離を詰められた蛇が鋭い牙を突き立てようとする。
「はっはー。残念賞じゃーん。この程度の攻撃じゃ、俺様ちゃんは怪我ひとつしないじゃん」
巨大な斧で敵の攻撃を受け流した直後、チャージングからの薙ぎ払いで残っていた二体の蛇をまとめて攻撃する。
当初の予定では三体を存分に蹂躙している間に、村民や残りの仲間達に梯子を使って向こう側の要救助者を助けてもらうつもりだった。
しかし戦闘直後にマリィアがダメージを与えていた蛇は、数秒前にゾファルのギガースアックスの一撃で絶命済みだ。
残りは一体。引き離すよりも、このまま潰してしまう方が早い。
「そのまま動かないでください。すぐに仕留めてあげます」
ジャックの持つ魔導拳銃から放出された弾丸が、残り一体となっていた蛇の腹部を貫く。
瀕死となり、最後の抵抗とばかりに蛇が激しく暴れる。
真っ先に近づくのは恭牙だ。
「大蛇に対する前に蛇を、取り巻きを早々に倒さねば不安が残るし、何より子供らを守る為だ」
攻撃を受けないように立ち回りながら、鎧徹しで蛇にとどめを刺す。
「立ち塞がる敵は消えた。早く向こう側へ行かないと」
壁の前に陣取っていた三体の蛇を倒すと同時にマリィアが動き出し、ハシゴを持つ村人も行動を開始する。
●
土砂の壁の向こう側。大蛇率いる蛇たちが、獲物目掛けて全速力で走る。
兄のケントがケリーの前に立ち、身を挺して守ろうとする。
ケントが大蛇の餌食となる前に、ひとりのハンターが土砂の壁に立った。水月だ。
他のハンターが壁前にいた三体の蛇の注意を引き付けてくれている間に、壁歩きを使って独力で土砂の壁を突破したのである。
なんとか上手くいったと安堵する暇もなく、水月は上ったばかりの土砂の壁を今度は駆け下りる。
隠密を解除し、全力で移動しつつ、ケントとケリーに大蛇から離れるように指示を飛ばす。
「蛇とは逆側に離れてくださいねー。ぺろっと食べられでもしたら、お母さんが泣いちゃいますよー」
恐怖に震えながらも、頷いたケントがケリーの手を掴んで走り出す。
その様子を見た水月は軽く微笑みながら、大蛇と兄妹の前へ立つように移動する。
「ハンターとーじょう、っと。僕が来たからにはもう大丈夫ですからねー。危ないので下がっててください」
獲物を仕留めるのを邪魔され、怒り狂った大蛇が飛びかかるようにして水月へ迫る。
それを水月は軽やかなステップでも披露するかのように、ひらりと回避する。
しかし大蛇以外の蛇は、水月の脇をすり抜けるようにして背後の兄妹を狙う。
「弱い方に向かうのなら、後ろから痛いのが来ると理解させないといけませんね。相手は僕ですよー? よそ見してると刎ねちゃいます」
通り抜けた一体を追走し、にっこり笑った水月が斬撃を食らわせる。
強大なダメージで移動速度が落ちた蛇だったが、なおも標的を仕留めようと前進する。
そこに、一直線に電撃が伸びてきた。蛇に耐えられるような体力はなく、その場で動かなくなる。
ハシゴを使ってこちら側に来た、トミヲの放ったライトニングボルトだった。
トミヲを見てきた兄妹に、軽くサムズアップして笑いかける。
「安心していい! 君たちは助かるよ! さぁ! ここはファイアーマンが食い止めてるうちに……!」
なおも残る一体が幼い兄妹を襲おうとするも、マリィアの放った銃弾が蛇を押し止める。
グラソンからの妨害射撃を受け、蛇の動きを阻害する。
「私が見ている前で、好き勝手できるとは思わないことだ」
言い放つマリィアのおかげで追いつくのが容易になった蛇に、オルケーシスを構えたジャックが挑みかかる。
「私では実力不足でしょうから、大蛇は援護にして、取り巻きの蛇を狙います」
ランアウトからのスラッシュエッジで、着実に蛇の生命力を削る。
ジャックの背後からは、エリザベートがマジックアローで援護する。
「ん、やっぱりちょっと胸が邪魔よね……仕方ないけど」
愚痴るように言ったエリザベスも、ジャックの援護を行う。
苦境に陥る蛇を助けたいのか、大蛇が動き出す。
しかし、追いついた恭牙が真っ先に立ち塞がる。
「私は護鬼、もう私の前では人は殺させん……消えてもらうぞ、大蛇!」
渾身の一撃を叩き込むも、他の蛇よりも生命力の高い大蛇はさすがに簡単には倒せない。
だが後退りとまではいかなくとも、他の蛇の援護へ向かおうとするのは止められた。
その間に、水月がダメージを負っていた蛇を仕留めていた。
憎々しげに睨む大蛇が巨体を揺らして恭牙へ襲い掛かろうとする。
――その時だった。
「俺様ちゃんを忘れてもらったら困るじゃーん!」
横からギガースアックスで殴りつけるように、大蛇の頭を攻撃したのである。
「このまま頭を潰す方向でいくじゃん。蛇ってのは執念深いから、輪切りにしても頭だけで攻撃してくる可能性もあるんだぜ。なんで、確実に意識を狩っていくじゃーん」
他の蛇を倒し終えたトミヲも合流し、大蛇にライトニングボルトを浴びせる。
いかに巨大で強力な蛇であろうとも、ハンターたちに囲まれてしまえば不利を覆せなかった。
咆哮とともに、恭牙が気合の一撃を放つ。
かすかによろめいた大蛇に、マリィアとジャックの射撃が命中。
エリザベスとエリザベートは迂闊に近づかず、大蛇が変な動きをし始めないか警戒する。
そしてダメージと怒りで動きが単調になったところに、鳴鵺の射程に大蛇を収めた水月が強烈な攻撃をお見舞いした。
あとはとどめを刺すだけ。
大蛇の体を足場にして飛び上がったゾファルが、両手に持ったギガースアックスで文字通り大蛇の頭を潰したのだった。
●
蛇たちが一掃されたのを受け、村人たちがすぐに幼い兄妹を救出した。
母親と再会したケントとケリーは、ともに号泣していた。
その様子を見ていたトミヲは、助けられてよかったと爽やかに子供たちへ話しかける。
母親のケニアにお礼を言われた際には、余裕でドモってしまったが。
恭牙も子供たちの頭を軽く撫で、安堵させると同時に無事だった祝福をした。
エリザベスも「よかったですね」と微笑みかけていた。
「家の手伝いをしなければならないなら、片付けを手伝うわよ。軍人時代の災害派遣の関係から、災害時の救助活動や撤去作業には比較的慣れているの」
ケニアと子供たちがお礼を言うと、マリィアは笑顔で「気にしないで」と返した。
戦闘時の緊張感もだいぶ緩んできたところで、自称マジシャンというジャックが即興のステージで奇術を披露する。
「皆さん、笑顔が一番ですから。私の奇術で楽しんでください」
最初は助けた子供たちも含めて楽しんでいたが、途中でおっとりしているエリザベートが転んでしまった。
戦闘時の緊張から解放され、すっかり気が抜けてしまっていたのだ。
転んだエリザベートだけでなく、ぬかるんだ地面で戦闘していたハンターや救助に一生懸命だった村人たちも少なからず服に泥がついていた。
それを見て、腹を抱えてゲラゲラ笑ったのがゾファルである。
ゾファル自身にも泥がかかっていたので、ケリーがクスっと笑った。
その瞬間にゾファルは瞳を輝かせ、ケリーに泥をすくってぶっかけた。
「どうせなら一緒に汚れようじゃーん。はーっはっはっ!」
豪快に笑うゾファルに「もー」と唇を尖らせたケリーが、泥をかけ返す。
そこから泥戦争ともいえる泥のかけあいに発展する。
いつしか大人も子供も関わらずに参加し、蛇想像の恐怖を忘れたかのように皆で笑っていた。
こうなるのを狙っていたのかと思いきや、ゾファル本人にはそんなつもりは欠片もないみたいだった。
誰かに尋ねられても、そう答えるだろう。だって、ただの怠惰なバトルジャンキーだとも。
昨夜に大雨に見舞われた村。
蛇から子供たちを救ったハンターのおかげで、今は降り注ぐような笑い声が村全体を包んでいた。
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相談卓 エリザベート・アインナッハ(ka6051) エルフ|17才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/03/02 22:26:04 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/02/29 23:45:56 |