ゲスト
(ka0000)
【龍鉱】漢と笑顔と偵察部隊
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/07 07:30
- 完成日
- 2016/03/10 06:20
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「これが龍鉱石ですか」
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、カム・ラディ遺跡にいた。
このヴェルナーの手の平に乗っている石が、高純度のマテリアルを含んでいるというのだから驚きだ。
現在、ハンター達が集めている龍鉱石で遺跡の機能回復できるというのだが……。
「連合軍は龍鉱石で遺跡の機能を復旧しようとしています」
ヨアキム付きの執事キュジィ(kz0078)は、遺跡へ到着したばかりのヴェルナーに現状を説明していた。
ハンターの尽力で多くの龍鉱石が集められているものの、まだ十分な量には到達していない。今以上に龍鉱石を集めなければならない――可能な限り迅速に。
「しかし……来られるなら、前もって言っていただけないでしょうか」
「ああ、それは失礼。時間がなかったもので。
ノアーラ・クンタウから物資を搬送する準備を進めていますが、こちらの状況が分からなければ十分な準備が行えません。私が直接この目で視察した方が良いと考えたのですが……」
ヴェルナーは口で謝罪の言葉を述べているが、キュジィはヴェルナーが本当に悪いと思っていない事を知っている。
煙に巻きつつ、何を考えているのか悟らせない。
ヴェルナーという男は味方であっても油断は――。
「おーい、給仕!」
ヨアキム(kz0011)の声で、キュジィは脳裏に浮かんだ言葉がかき消える。
毎度の事であるが、ヨアキムに空気を読むという高等テクニックは未習得だ。
「給仕じゃありません。執事のキュジィです。
で、何かありましたか?」
「あそこの壁にどーんとワシの名前書けば、連合軍の奴らに存在感をアピールできるんじゃねぇかな?」
「止めて下さい。そんなアピールの仕方をすれば怒られますよ」
龍鉱石の調査に訪れたヨアキムだったが、初めての場所に大興奮。先程から落ち着かない様子で様々な場所を探検していた。
存在感をアピールするならもう少し違う形にしてくれればいいのに。。
そんなキュジィの心配だったが、なんとそのチャンスは早々に巡ってくる。
「兄貴、敵だ! 向こうから敵がやってくるぞ!」
「なにぃ!?」
ヨアキムが連れてきたドワーフが、走り込んできた。
聞けば、遺跡に向かって敵影が近づいてくるらしい。
その一報を聞いて、思わず笑みを浮かべるヨアキム。
「よぉし、テメェ等! 喧嘩の準備だ! ここで暴れて『連合軍にヨアキムあり』って教えてやらねぇとな!」
沸き立つヨアキムとドワーフ達。
そこへヴェルナーが口を挟む。
「どんな敵でした?」
「確か……槍を持ったリザードマンって奴が2体。で、なんか赤いドラゴンに跨がった甲冑の奴が1人いたな」
「他には?」
「それだけだったな」
「そうですか……」
ヴェルナーはそう聞いた後、押し黙る。
そこへ間髪入れずにキュジィがヨアキムを止めにかかる。
「ダメですよ、ヨアキム様。勝手に戦ったらみんなの迷惑になります。今は味方を集めて……」
「いえ、ヨアキムさん。お願いします。敵をここに近付けてはいけません。この場は私が守ります」
キュジィの声を遮るように、ヴェルナーはヨアキムに戦うよう促した。
許可が出た!
ゴーサインが出た馬鹿は、更にボルテージが上がっていく。
「よし、ここは任せたぞ! ワシの大暴れを見てやがれ!」
部下を連れて走り出すヨアキム。
瞬く間にヨアキムの姿は視界から消えていく。
「ヴェルナー様、良かったのですか? 行かせてしまって」
「敵がここを本当に襲撃する気であるならもっと兵力があってもおかしくありません。おそらく強欲と呼ばれる歪虚達も我々がここで何をやっているのかを知らないのでしょう。
――偵察。
彼らの目的がそれであれば、戦力の少なさも納得できます」
ヴェルナーは限られた情報から推論を組み立てた。
遺跡で人間が集まって何かをやっていると感じた強欲が、偵察部隊を送り込んできたのだろう。
「なら、ここで敵を倒すべきだと仰るのですか?」
「それはどうでしょう。様子を見に行った偵察部隊が帰還しないとなれば、もっと強力な戦力を送り込んでくるでしょう。それに対応する為には時間が不足しています。その上、こちらはまだ敵の情報が不足しています。
できれば、偵察部隊には謎は謎のままでお引き取りいただくのがベストです。不信に思って慎重になってくれれば、遺跡起動の時間を稼げます。
――では、キュジィ。久しぶりに仕事をしてもらいましょうか」
「え?」
「ヨアキムさんが敵の目を惹き付けている間に、背後へ回り込んで奇襲して下さい。敵を攪乱できれば、こちらの被害は最小限で済みます」
ヴェルナーはこの短い時間で作戦を考えていたようだ。
ヨアキムが盾となっている隙に、キュジィが敵を奇襲。
戦況不利を思わせて撤退させる作戦のようだ。偵察部隊なのだから、不利と考えれば早々に撤退するだろう。
「私は万一を考えてここで龍鉱石と遺跡を守ります。久しぶりにあなたの活躍を期待していますよ、キュジィ」
ヴェルナーはキュジィに負けない笑顔で微笑み掛けた。
ヴェルナー・ブロスフェルト(kz0032)は、カム・ラディ遺跡にいた。
このヴェルナーの手の平に乗っている石が、高純度のマテリアルを含んでいるというのだから驚きだ。
現在、ハンター達が集めている龍鉱石で遺跡の機能回復できるというのだが……。
「連合軍は龍鉱石で遺跡の機能を復旧しようとしています」
ヨアキム付きの執事キュジィ(kz0078)は、遺跡へ到着したばかりのヴェルナーに現状を説明していた。
ハンターの尽力で多くの龍鉱石が集められているものの、まだ十分な量には到達していない。今以上に龍鉱石を集めなければならない――可能な限り迅速に。
「しかし……来られるなら、前もって言っていただけないでしょうか」
「ああ、それは失礼。時間がなかったもので。
ノアーラ・クンタウから物資を搬送する準備を進めていますが、こちらの状況が分からなければ十分な準備が行えません。私が直接この目で視察した方が良いと考えたのですが……」
ヴェルナーは口で謝罪の言葉を述べているが、キュジィはヴェルナーが本当に悪いと思っていない事を知っている。
煙に巻きつつ、何を考えているのか悟らせない。
ヴェルナーという男は味方であっても油断は――。
「おーい、給仕!」
ヨアキム(kz0011)の声で、キュジィは脳裏に浮かんだ言葉がかき消える。
毎度の事であるが、ヨアキムに空気を読むという高等テクニックは未習得だ。
「給仕じゃありません。執事のキュジィです。
で、何かありましたか?」
「あそこの壁にどーんとワシの名前書けば、連合軍の奴らに存在感をアピールできるんじゃねぇかな?」
「止めて下さい。そんなアピールの仕方をすれば怒られますよ」
龍鉱石の調査に訪れたヨアキムだったが、初めての場所に大興奮。先程から落ち着かない様子で様々な場所を探検していた。
存在感をアピールするならもう少し違う形にしてくれればいいのに。。
そんなキュジィの心配だったが、なんとそのチャンスは早々に巡ってくる。
「兄貴、敵だ! 向こうから敵がやってくるぞ!」
「なにぃ!?」
ヨアキムが連れてきたドワーフが、走り込んできた。
聞けば、遺跡に向かって敵影が近づいてくるらしい。
その一報を聞いて、思わず笑みを浮かべるヨアキム。
「よぉし、テメェ等! 喧嘩の準備だ! ここで暴れて『連合軍にヨアキムあり』って教えてやらねぇとな!」
沸き立つヨアキムとドワーフ達。
そこへヴェルナーが口を挟む。
「どんな敵でした?」
「確か……槍を持ったリザードマンって奴が2体。で、なんか赤いドラゴンに跨がった甲冑の奴が1人いたな」
「他には?」
「それだけだったな」
「そうですか……」
ヴェルナーはそう聞いた後、押し黙る。
そこへ間髪入れずにキュジィがヨアキムを止めにかかる。
「ダメですよ、ヨアキム様。勝手に戦ったらみんなの迷惑になります。今は味方を集めて……」
「いえ、ヨアキムさん。お願いします。敵をここに近付けてはいけません。この場は私が守ります」
キュジィの声を遮るように、ヴェルナーはヨアキムに戦うよう促した。
許可が出た!
ゴーサインが出た馬鹿は、更にボルテージが上がっていく。
「よし、ここは任せたぞ! ワシの大暴れを見てやがれ!」
部下を連れて走り出すヨアキム。
瞬く間にヨアキムの姿は視界から消えていく。
「ヴェルナー様、良かったのですか? 行かせてしまって」
「敵がここを本当に襲撃する気であるならもっと兵力があってもおかしくありません。おそらく強欲と呼ばれる歪虚達も我々がここで何をやっているのかを知らないのでしょう。
――偵察。
彼らの目的がそれであれば、戦力の少なさも納得できます」
ヴェルナーは限られた情報から推論を組み立てた。
遺跡で人間が集まって何かをやっていると感じた強欲が、偵察部隊を送り込んできたのだろう。
「なら、ここで敵を倒すべきだと仰るのですか?」
「それはどうでしょう。様子を見に行った偵察部隊が帰還しないとなれば、もっと強力な戦力を送り込んでくるでしょう。それに対応する為には時間が不足しています。その上、こちらはまだ敵の情報が不足しています。
できれば、偵察部隊には謎は謎のままでお引き取りいただくのがベストです。不信に思って慎重になってくれれば、遺跡起動の時間を稼げます。
――では、キュジィ。久しぶりに仕事をしてもらいましょうか」
「え?」
「ヨアキムさんが敵の目を惹き付けている間に、背後へ回り込んで奇襲して下さい。敵を攪乱できれば、こちらの被害は最小限で済みます」
ヴェルナーはこの短い時間で作戦を考えていたようだ。
ヨアキムが盾となっている隙に、キュジィが敵を奇襲。
戦況不利を思わせて撤退させる作戦のようだ。偵察部隊なのだから、不利と考えれば早々に撤退するだろう。
「私は万一を考えてここで龍鉱石と遺跡を守ります。久しぶりにあなたの活躍を期待していますよ、キュジィ」
ヴェルナーはキュジィに負けない笑顔で微笑み掛けた。
リプレイ本文
枯れて生気の失われた木々の合間を、乾いた風がながれる。その風に紛れ、複数の影が静かに動く。
ターゲットに気取られる事なく、静かに――かつ、着実に移動する。
目標となる奇襲ポイントへ向かって。
「もう少し先のようだ」
鞍馬 真(ka5819)が周囲を見回す。
枯れた木々の合間から、見え隠れする敵影。鞍馬達は、カム・ラディ遺跡へ現れた歪虚を撃退するべく行動を開始。ドワーフ王ヨアキム(kz0011)ら前衛班が敵の注意を惹きつける隙に、キュジィ(kz0078)の奇襲班が背後から攻撃を仕掛ける手筈だ。
「敵には遺跡からご退場願おうかねぇ」
奇襲班のマッシュ・アクラシス(ka0771)が、鞍馬から少し離れて敵の位置を確認する。
今回の作戦を立案したヴェルナー・
ブロスフェルト(kz0032)の見立てでは、今回の相手が敵の偵察部隊と考えている。遺跡全体を潰すにしては、数が少なすぎる。連合軍の状況を調べるために送り込まれたと考える方が自然だ。
「まあ、偵察にしては派手に登場しているところを考えると……敵の部隊は捨て駒か、この程度の戦力で私たちの相手ができると考えたのかもしれません」
ヨアキム付きの執事キュジィが鞍馬とマッシュの後を追従する。
普段はフォローが一流な執事とだが、まさか戦闘まで行えるとは思わなかった。
「敵の戦力は未知数な部分がある。あまり時間はかけない方がいい」
鞍馬は、マッシュとキュジィへ急ぐよう促した。
今までに出会っていない敵と前衛班は戦っている。情報が不足している為、危機的状況に陥る可能性もある。
奇襲班が到達する頃には、敵が遺跡まで突入していたという展開は避けたいところだ。
切り札――奇襲班 の面々は、足早に動く。
前衛班の身を案じながら。
●
――時間は、少しばかり遡る。
カム・ラディ遺跡へ現れたのは、歪虚『強欲』の部隊だった。
トカゲのような鱗を持ちながら槍を片手に二足歩行で迫ってくる二体のリザードマン。
そして――。
周囲に鳴り響く咆哮。
怠惰のような巨人とは異なる、獣とは違った叫び。
空気を振るわせると同時に、ハンター達の鼓膜に深く突き刺さる。
「ドラゴン……ですか。
敵の意図は分かりませんが、やる事は一つですね」
鳳城 錬介(ka6053)はヨアキムとドワーフにヒーリングスフィアを施しながらも、その注意は眼前の敵に向けられていた。
小さいながらも翼を持ち、鋭い牙と爪が武器なのは一目瞭然。傍らにいるリザードマンを軽く上回る4メートルを超える敵――ドラゴン。
それも、普通のドラゴンではない。
「ドラゴンの上にナイト……ドラゴンライダーと称すべきでしょうか。
必要ないかもしれませんが、助太刀させていただきます」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は、聖剣「カリスデオス」を敵に向ける。
ドラゴンの背に跨がるのは甲冑に身を包んだ人型の歪虚。
ドラゴンの手綱を左で手掴み、右手には槍を握り締めている。盾を背中に背負いつつ、ハンター達を上から見下ろしていた。
「野郎っ! ワシらを見下しやがって!
おいっ、一気にやっちまうぞ!」
ヨアキムが部下達へ指示を出す。
まるで山賊のような言い方だが、これでもドワーフ王を自称している。
「ちっこいおっさんが敵に突っ込んでったから、思わず付いてきちゃったけど……え? この人、ドワーフ王?」
偶然見かけたヨアキムに興味を持った玉兎 小夜(ka6009)。
ヨアキムの後を追いかけたら、ドラゴンと戦うハメになってしまった。
あ。目の前のちょっと酸っぱい香りのするちっこいおっさんは、辺境でもそこそこの権力を持つドワーフ王です。自称だけど。
「いきますっ!」
紅媛=アルザード(ka6122)は、先手必勝を発動。
誰よりも早く大太刀「蒼水月」でドラゴンライダーへ斬りかかる。
前衛の役割は注意を惹きつける事と時間稼ぎ。その為にはリスクも背負わないと敵に余裕を与えてしまう。
そこでヨアキムが生み出したノリと勢いに乗じて、初撃を狙ったのだ。
体を捻り、右回転から生まれる遠心力。それを蒼水月に乗せてドラゴンライダーへ叩き付ける。
しかし、騎士が槍で攻撃を妨害。
切っ先がドラゴンライダーの体に触れているも、大きなダメージを与える事はできない。
「……なるほど。そう簡単に倒せる相手ではありませんか」
紅媛は、蒼水月の柄の根元部分を握る手に力を込める。
●
「トカゲとか時代遅れ、今は兎の時代だよ!」
小夜は敵に向けて挑発を試みる。
奇襲班の攻撃を成功させるには、如何に前衛が敵の注意を惹きつけられるか。
それが鍵になる。
挑発で注意を集められるなら、奇襲の成功率は各段に上がる。
――しかし。
「…………」
ドラゴンライダーは、小夜の挑発には乗らない。
どうやら、敵はそこまでお馬鹿さんではない――否、挑発に応じる余裕は無いようだ。「うおおおおっ!」
ヨアキムは、眼前のドラゴンに向けて突貫。
大振りのパンチを何度も放ち、ドラゴンライダーはその対応に追われている。
「ヨアキムさん、助太刀します」
ユキヤは、聖剣「カリスデオス」でドラゴンの右から斬りかかる。
それに合わせて騎士は、手にした槍でユキヤの攻撃を捌く。槍攻撃でユキヤの斬撃は阻害されてしまう。
「ダメですか……ですが」
ユキヤは、後ろへ下がって間合いを取る。
攻撃が止められる可能性は、事前に考えていた。
その場合、別の攻撃チャンスが生まれる。
「これでも、喰らいやがれっ!」
ドラゴンの顔面に炸裂するヨアキムの右ストレート。
ドラゴンの頬にめり込む拳。
しかし、拳だけでは十分なダメージを与えられない。
「くそっ、もっと気合い入れたパンチじゃねぇとダメか」
悪態をつくヨアキム。
ドラゴンの方も大きなダメージにはなっていないものの、攻撃を加えたヨアキムを見過ごすつもりはない。ドラゴンライダーが手綱を操作してヨアキムの前にドラゴンを向ける。
眼前に迫る――ドラゴン。
そこへ小夜が体を滑り込ませる。
「こいよ、ドラゴンライダー。防御なんて捨ててかかってこい」
日本刀「骨喰」を鞘に収め、『納刀の構え』で間合いを推し量る小夜。
それに対してドラゴンライダーは、警戒しながらゆっくりと歩みを進める。
一歩。
また一歩。
そして――。
「はっ!」
気合いと共に放たれる居合。
骨喰の刃がドラゴンの足へと向けられる。
だが、ドラゴンを操る騎士も戦い慣れている。
騎士は動きを封じる目的でドラゴンの足へ斬撃が狙われる事を予見。
小夜の刀の軌道に騎士が槍を滑り込ませる。
周囲に響き渡る金属音。
もし、騎士の得物が剣であれば小夜の一撃はドラゴンの足を捉えていただろう。
「他の敵とは違うという訳ね」
小夜は骨喰を鞘へ収めながら、再び距離を取り始めた。
●
一方、奇襲班は所定のポイントへ到達していた。
「私はあのドラゴンライダーを貫徹の矢で狙います。二人は隙を見て接近して攻撃を仕掛けて下さい」
マッシュはボウ「レッドコメット」でドラゴンライダーを狙撃するという。
敵を遠距離攻撃して牽制する間に、他のメンバーが接近戦を仕掛ける。タイミングさえ合えば、ドラゴンライダーであっても相応のダメージを期待できる。
「あ、そうですね。私もランアウトで間合いを詰めてみます」
キュジィはマッシュの後方支援を信じて接近戦を挑むようだ。
そこへ鞍馬が別の提案を示す。
「狙撃手を増やすのはどうだ」
鞍馬の提案はこうだ。
遠距離からマッシュが狙撃。それと別に鞍馬がショートボウで別方向からも狙撃を試みる。
二方向からの狙撃で明確にダメージを与えた後、鞍馬は間合いを詰めてキュジィに続いて近接攻撃を仕掛ける。これなら奇襲の成功率も向上させられる。
「それで行きましょう。あまり前衛班の皆さんをお待たせする訳にはいきません」
キュジィは、鞍馬の案を受け入れた後で前衛班の方へ視線を送る。
戦闘で疲労の色も見え始めている。ここで一気に形勢を逆転させなければ――。
●
「大丈夫ですか」
リザードマンとの戦闘で負傷したドワーフを、ヒールの柔らかい光が包み込む。
錬介は後方から味方の支援に回っていた。
ハンターの戦力をドラゴンライダーへ回している為、リザードマン2体の対応は紅媛とヨアキムの部下が対応していた。
紅媛はともかく、ドワーフ達からすればリザードマンの相手は初めて。不慣れな為に苦戦を強いられているようだ。
「ありがてぇ。アイツら、体が鎧着ているみたいに硬いんだよ」
錬介に癒されながら、ドワーフは息を整える。
布一枚で堂々と現れたのは、単に鎧を着る文明が無いからではない。
体表の硬さから鎧そのものを着る必要がないからだ。覚醒者ではないドワーフ達が相手にするにはちょっと厳しいかもしれない。
「……ん?」
ドワーフを癒しながら、視線を上げる錬介。
見れば、一体のリザードマンが近寄って来る。
錬介が治療を行っている事を気付いて、目標に定めたようだ。
しかし、リザードマンは勘違いしている。
錬介は単なる治療役ではない。
「させるとお思いですか」
突き出された槍を旋棍「疾風迅雷」を使って外へ逸らす錬介。
ガラ空きとなったリザードマンに対してジャッジメント。光の杭がリザードマンへ突き刺さり、その場へ縛り付ける。
生まれる大きな隙――流れるようにリザードマンの前へ紅媛が滑り込む。
「これでっ!」
紅媛は円を描く体捌きから、蒼水月を下から上へ切り上げる。
リザードマンに浴びせられる斬撃は、リザードマンの体に傷を付ける。
だが、リザードマンを倒すまでには至らない。
「……踏み込みが甘かったようです」
息を切らす紅媛。
先程まで小夜と連携してドラゴンライダーと対峙していたが、リザードマンへの対処が弱い事を察知して早めにリザードマンの方へ目標を切り替えた。
本来であれば奇襲班が到着してから相手にする予定だったのだが……。
「ここは私に任せて、もう一方のリザードマンをお願いします」
「分かりました。決して無理はしないで下さい」
紅媛は眼前のリザードマンから視線を外さず、錬介へ残るリザードマンへ向かうように叫ぶ。
(無理に倒す必要はありません。ドワーフの皆さんと一緒に時間を稼げれば……)
紅姫は自分にそう言い聞かせる。
あと少し――時間を稼ぐだけでいい。
予定であれば奇襲班が行動を起こすはずだ……。
●
「ぐあっ!」
ドラゴンの尻尾に弾き飛ばされヨアキム。
地面をバウンド、勢いが止まった頃には全身砂にまみれていた。
ヨアキムはゆっくりと上体を起こし、口から流れ出た血を右腕で拭う。
「ヨアキムさん!」
駆け寄ったユキヤがヒールで回復を施す。
ドラゴンライダーへ戦力を集中すれば倒せない相手ではない。しかし、リザードマンの対応を含めると戦力集中は難しくなる。
おまけにヨアキムは単純馬鹿で前進あるのみ。何度傷つけられても恍惚の笑みを浮かべて立ち上がって来る。
「ふふ。なかなかご褒美……じゃなかった、いい攻撃するじゃねぇか。
けど……ここらで形勢逆転みたいだな」
ヨアキムはユキヤへ合図を送る。
どうやら奇襲班がポイントについたようだ。
ユキヤは、笑みを浮かべて小さく頷いた。
「ここからが本番ですよ」
次の瞬間、ユキヤを中心に光の波動が広がっていく。
セイクリッドフラッシュがドラゴンライダーと近くにいたリザードマンを巻き込んだ。
――伝わる衝撃。
敵に、大きな隙が生まれる。
「今だ」
その隙をついたマッシュと鞍馬が、ドラゴンに向けて貫徹の矢を放った。
渾身の力で引かれた2本の弓は、見事ドラゴンの体へ突き刺さる。
今まで感じなかった痛覚に、ドラゴンが雄叫びを上げる。
「一気に行きます」
矢が放たれると同時に、ランアウトで走り寄っていたキュジィ。
ドラゴンの懐へ飛び込むと、至近距離からスラッシュエッジを発動。ダガーによる一撃がドラゴンの体を捉えた。
「増援が到着しましたよ!」
奇襲班の到着に、紅媛は歓喜の声を上げる。
同時にリザードマンへ介入させない為、再び先手必勝でリザードマンへ攻撃を仕掛ける。浮き足だったリザードマン相手なら紅媛と錬介で対処できるはずだ。
「もう十分遊んだろう。……おやすみの時間だ」
試作振動刀「オートMURAMASA」を片手に接近した鞍馬。
足を強く踏み込んだ後、オートMURAMASAを力任せに上から下へ叩き降ろした。
斬撃の後、再び吼えるドラゴン。
しかし、今度の声は悲鳴に近い。
痛みに悶えるドラゴンを騎士もコントロールできていない。
「楽しませてくれたお礼だよ」
小夜は納刀した状態から抜刀。
腰を捻った低い姿勢から切っ先を地面に当てて発火させる。
狙う場所は――鞍馬が攻撃した場所。
派手な音が鳴り響き、ドラゴンに手傷を負わせる事に成功した。
「これは、やったかな」
疾風迅雷でリザードマンを牽制していた錬介。
ドラゴンの異変を感じ取り、戦況がハンター側に傾いた事を確信した。
そして、士気が落ちていたドワーフへ呼び掛ける。
「これで逆転です。ここで一気に押し切りましょう」
疲れた体を揺り動かして立ち上がるドワーフ達。
――そして。
ハンターとドワーフ達の奮戦により、敵を撤退させる事に成功。
被害は出てしまったものの、上々の結果と言えるだろう。
●
「ドワーフに被害はあったようですが……上出来です」
報告を聞いていたヴェルナーは作戦が概ね成功した事に満足げだ。
ドラゴンライダーは逃がしたものの、リザードマンを倒せた。だが、ヴェルナーが満足しているのは戦果よりも『その経緯』だろう。
「敵はあの戦力でこちらが苦戦、そう思わせる事ができました。
ドラゴンライダーはともかく、リザードマンの対処は素晴らしいです」
ヴェルナーの様子を見ていた錬介は、心を見透かすように呟いた。
連合軍が一方的な勝利を収めれば、次はより大きな戦力を送り込まれる。それよりも敵が侮ってくれれば、その隙に防衛機能を回復させる事ができる。
「大勝利も大敗北も今回の戦いでは不要です。
目の前の勝利よりも未来の勝利を選び取ったというべきです。
皆さん、実に見事でした」
褒めちぎるヴェルナー。
別の意図がありそうで、ハンター達は思わず恐怖を抱いてしまう。
「こちらの目論見通りになってくれると嬉しいのですが」
懸念する錬介。
それに対してヴェルナーは、小さく頷く。
「その心配ももっともです。
ですから、我々は目論見がうまく行くよう最善を尽くさねばなりません」
そう言いながら、ヴェルナーは錬介の肩に手を置いた。
今まで以上の微笑みを浮かべながら
「これからも、働いてくれますよね?」
ターゲットに気取られる事なく、静かに――かつ、着実に移動する。
目標となる奇襲ポイントへ向かって。
「もう少し先のようだ」
鞍馬 真(ka5819)が周囲を見回す。
枯れた木々の合間から、見え隠れする敵影。鞍馬達は、カム・ラディ遺跡へ現れた歪虚を撃退するべく行動を開始。ドワーフ王ヨアキム(kz0011)ら前衛班が敵の注意を惹きつける隙に、キュジィ(kz0078)の奇襲班が背後から攻撃を仕掛ける手筈だ。
「敵には遺跡からご退場願おうかねぇ」
奇襲班のマッシュ・アクラシス(ka0771)が、鞍馬から少し離れて敵の位置を確認する。
今回の作戦を立案したヴェルナー・
ブロスフェルト(kz0032)の見立てでは、今回の相手が敵の偵察部隊と考えている。遺跡全体を潰すにしては、数が少なすぎる。連合軍の状況を調べるために送り込まれたと考える方が自然だ。
「まあ、偵察にしては派手に登場しているところを考えると……敵の部隊は捨て駒か、この程度の戦力で私たちの相手ができると考えたのかもしれません」
ヨアキム付きの執事キュジィが鞍馬とマッシュの後を追従する。
普段はフォローが一流な執事とだが、まさか戦闘まで行えるとは思わなかった。
「敵の戦力は未知数な部分がある。あまり時間はかけない方がいい」
鞍馬は、マッシュとキュジィへ急ぐよう促した。
今までに出会っていない敵と前衛班は戦っている。情報が不足している為、危機的状況に陥る可能性もある。
奇襲班が到達する頃には、敵が遺跡まで突入していたという展開は避けたいところだ。
切り札――奇襲班 の面々は、足早に動く。
前衛班の身を案じながら。
●
――時間は、少しばかり遡る。
カム・ラディ遺跡へ現れたのは、歪虚『強欲』の部隊だった。
トカゲのような鱗を持ちながら槍を片手に二足歩行で迫ってくる二体のリザードマン。
そして――。
周囲に鳴り響く咆哮。
怠惰のような巨人とは異なる、獣とは違った叫び。
空気を振るわせると同時に、ハンター達の鼓膜に深く突き刺さる。
「ドラゴン……ですか。
敵の意図は分かりませんが、やる事は一つですね」
鳳城 錬介(ka6053)はヨアキムとドワーフにヒーリングスフィアを施しながらも、その注意は眼前の敵に向けられていた。
小さいながらも翼を持ち、鋭い牙と爪が武器なのは一目瞭然。傍らにいるリザードマンを軽く上回る4メートルを超える敵――ドラゴン。
それも、普通のドラゴンではない。
「ドラゴンの上にナイト……ドラゴンライダーと称すべきでしょうか。
必要ないかもしれませんが、助太刀させていただきます」
ユキヤ・S・ディールス(ka0382)は、聖剣「カリスデオス」を敵に向ける。
ドラゴンの背に跨がるのは甲冑に身を包んだ人型の歪虚。
ドラゴンの手綱を左で手掴み、右手には槍を握り締めている。盾を背中に背負いつつ、ハンター達を上から見下ろしていた。
「野郎っ! ワシらを見下しやがって!
おいっ、一気にやっちまうぞ!」
ヨアキムが部下達へ指示を出す。
まるで山賊のような言い方だが、これでもドワーフ王を自称している。
「ちっこいおっさんが敵に突っ込んでったから、思わず付いてきちゃったけど……え? この人、ドワーフ王?」
偶然見かけたヨアキムに興味を持った玉兎 小夜(ka6009)。
ヨアキムの後を追いかけたら、ドラゴンと戦うハメになってしまった。
あ。目の前のちょっと酸っぱい香りのするちっこいおっさんは、辺境でもそこそこの権力を持つドワーフ王です。自称だけど。
「いきますっ!」
紅媛=アルザード(ka6122)は、先手必勝を発動。
誰よりも早く大太刀「蒼水月」でドラゴンライダーへ斬りかかる。
前衛の役割は注意を惹きつける事と時間稼ぎ。その為にはリスクも背負わないと敵に余裕を与えてしまう。
そこでヨアキムが生み出したノリと勢いに乗じて、初撃を狙ったのだ。
体を捻り、右回転から生まれる遠心力。それを蒼水月に乗せてドラゴンライダーへ叩き付ける。
しかし、騎士が槍で攻撃を妨害。
切っ先がドラゴンライダーの体に触れているも、大きなダメージを与える事はできない。
「……なるほど。そう簡単に倒せる相手ではありませんか」
紅媛は、蒼水月の柄の根元部分を握る手に力を込める。
●
「トカゲとか時代遅れ、今は兎の時代だよ!」
小夜は敵に向けて挑発を試みる。
奇襲班の攻撃を成功させるには、如何に前衛が敵の注意を惹きつけられるか。
それが鍵になる。
挑発で注意を集められるなら、奇襲の成功率は各段に上がる。
――しかし。
「…………」
ドラゴンライダーは、小夜の挑発には乗らない。
どうやら、敵はそこまでお馬鹿さんではない――否、挑発に応じる余裕は無いようだ。「うおおおおっ!」
ヨアキムは、眼前のドラゴンに向けて突貫。
大振りのパンチを何度も放ち、ドラゴンライダーはその対応に追われている。
「ヨアキムさん、助太刀します」
ユキヤは、聖剣「カリスデオス」でドラゴンの右から斬りかかる。
それに合わせて騎士は、手にした槍でユキヤの攻撃を捌く。槍攻撃でユキヤの斬撃は阻害されてしまう。
「ダメですか……ですが」
ユキヤは、後ろへ下がって間合いを取る。
攻撃が止められる可能性は、事前に考えていた。
その場合、別の攻撃チャンスが生まれる。
「これでも、喰らいやがれっ!」
ドラゴンの顔面に炸裂するヨアキムの右ストレート。
ドラゴンの頬にめり込む拳。
しかし、拳だけでは十分なダメージを与えられない。
「くそっ、もっと気合い入れたパンチじゃねぇとダメか」
悪態をつくヨアキム。
ドラゴンの方も大きなダメージにはなっていないものの、攻撃を加えたヨアキムを見過ごすつもりはない。ドラゴンライダーが手綱を操作してヨアキムの前にドラゴンを向ける。
眼前に迫る――ドラゴン。
そこへ小夜が体を滑り込ませる。
「こいよ、ドラゴンライダー。防御なんて捨ててかかってこい」
日本刀「骨喰」を鞘に収め、『納刀の構え』で間合いを推し量る小夜。
それに対してドラゴンライダーは、警戒しながらゆっくりと歩みを進める。
一歩。
また一歩。
そして――。
「はっ!」
気合いと共に放たれる居合。
骨喰の刃がドラゴンの足へと向けられる。
だが、ドラゴンを操る騎士も戦い慣れている。
騎士は動きを封じる目的でドラゴンの足へ斬撃が狙われる事を予見。
小夜の刀の軌道に騎士が槍を滑り込ませる。
周囲に響き渡る金属音。
もし、騎士の得物が剣であれば小夜の一撃はドラゴンの足を捉えていただろう。
「他の敵とは違うという訳ね」
小夜は骨喰を鞘へ収めながら、再び距離を取り始めた。
●
一方、奇襲班は所定のポイントへ到達していた。
「私はあのドラゴンライダーを貫徹の矢で狙います。二人は隙を見て接近して攻撃を仕掛けて下さい」
マッシュはボウ「レッドコメット」でドラゴンライダーを狙撃するという。
敵を遠距離攻撃して牽制する間に、他のメンバーが接近戦を仕掛ける。タイミングさえ合えば、ドラゴンライダーであっても相応のダメージを期待できる。
「あ、そうですね。私もランアウトで間合いを詰めてみます」
キュジィはマッシュの後方支援を信じて接近戦を挑むようだ。
そこへ鞍馬が別の提案を示す。
「狙撃手を増やすのはどうだ」
鞍馬の提案はこうだ。
遠距離からマッシュが狙撃。それと別に鞍馬がショートボウで別方向からも狙撃を試みる。
二方向からの狙撃で明確にダメージを与えた後、鞍馬は間合いを詰めてキュジィに続いて近接攻撃を仕掛ける。これなら奇襲の成功率も向上させられる。
「それで行きましょう。あまり前衛班の皆さんをお待たせする訳にはいきません」
キュジィは、鞍馬の案を受け入れた後で前衛班の方へ視線を送る。
戦闘で疲労の色も見え始めている。ここで一気に形勢を逆転させなければ――。
●
「大丈夫ですか」
リザードマンとの戦闘で負傷したドワーフを、ヒールの柔らかい光が包み込む。
錬介は後方から味方の支援に回っていた。
ハンターの戦力をドラゴンライダーへ回している為、リザードマン2体の対応は紅媛とヨアキムの部下が対応していた。
紅媛はともかく、ドワーフ達からすればリザードマンの相手は初めて。不慣れな為に苦戦を強いられているようだ。
「ありがてぇ。アイツら、体が鎧着ているみたいに硬いんだよ」
錬介に癒されながら、ドワーフは息を整える。
布一枚で堂々と現れたのは、単に鎧を着る文明が無いからではない。
体表の硬さから鎧そのものを着る必要がないからだ。覚醒者ではないドワーフ達が相手にするにはちょっと厳しいかもしれない。
「……ん?」
ドワーフを癒しながら、視線を上げる錬介。
見れば、一体のリザードマンが近寄って来る。
錬介が治療を行っている事を気付いて、目標に定めたようだ。
しかし、リザードマンは勘違いしている。
錬介は単なる治療役ではない。
「させるとお思いですか」
突き出された槍を旋棍「疾風迅雷」を使って外へ逸らす錬介。
ガラ空きとなったリザードマンに対してジャッジメント。光の杭がリザードマンへ突き刺さり、その場へ縛り付ける。
生まれる大きな隙――流れるようにリザードマンの前へ紅媛が滑り込む。
「これでっ!」
紅媛は円を描く体捌きから、蒼水月を下から上へ切り上げる。
リザードマンに浴びせられる斬撃は、リザードマンの体に傷を付ける。
だが、リザードマンを倒すまでには至らない。
「……踏み込みが甘かったようです」
息を切らす紅媛。
先程まで小夜と連携してドラゴンライダーと対峙していたが、リザードマンへの対処が弱い事を察知して早めにリザードマンの方へ目標を切り替えた。
本来であれば奇襲班が到着してから相手にする予定だったのだが……。
「ここは私に任せて、もう一方のリザードマンをお願いします」
「分かりました。決して無理はしないで下さい」
紅媛は眼前のリザードマンから視線を外さず、錬介へ残るリザードマンへ向かうように叫ぶ。
(無理に倒す必要はありません。ドワーフの皆さんと一緒に時間を稼げれば……)
紅姫は自分にそう言い聞かせる。
あと少し――時間を稼ぐだけでいい。
予定であれば奇襲班が行動を起こすはずだ……。
●
「ぐあっ!」
ドラゴンの尻尾に弾き飛ばされヨアキム。
地面をバウンド、勢いが止まった頃には全身砂にまみれていた。
ヨアキムはゆっくりと上体を起こし、口から流れ出た血を右腕で拭う。
「ヨアキムさん!」
駆け寄ったユキヤがヒールで回復を施す。
ドラゴンライダーへ戦力を集中すれば倒せない相手ではない。しかし、リザードマンの対応を含めると戦力集中は難しくなる。
おまけにヨアキムは単純馬鹿で前進あるのみ。何度傷つけられても恍惚の笑みを浮かべて立ち上がって来る。
「ふふ。なかなかご褒美……じゃなかった、いい攻撃するじゃねぇか。
けど……ここらで形勢逆転みたいだな」
ヨアキムはユキヤへ合図を送る。
どうやら奇襲班がポイントについたようだ。
ユキヤは、笑みを浮かべて小さく頷いた。
「ここからが本番ですよ」
次の瞬間、ユキヤを中心に光の波動が広がっていく。
セイクリッドフラッシュがドラゴンライダーと近くにいたリザードマンを巻き込んだ。
――伝わる衝撃。
敵に、大きな隙が生まれる。
「今だ」
その隙をついたマッシュと鞍馬が、ドラゴンに向けて貫徹の矢を放った。
渾身の力で引かれた2本の弓は、見事ドラゴンの体へ突き刺さる。
今まで感じなかった痛覚に、ドラゴンが雄叫びを上げる。
「一気に行きます」
矢が放たれると同時に、ランアウトで走り寄っていたキュジィ。
ドラゴンの懐へ飛び込むと、至近距離からスラッシュエッジを発動。ダガーによる一撃がドラゴンの体を捉えた。
「増援が到着しましたよ!」
奇襲班の到着に、紅媛は歓喜の声を上げる。
同時にリザードマンへ介入させない為、再び先手必勝でリザードマンへ攻撃を仕掛ける。浮き足だったリザードマン相手なら紅媛と錬介で対処できるはずだ。
「もう十分遊んだろう。……おやすみの時間だ」
試作振動刀「オートMURAMASA」を片手に接近した鞍馬。
足を強く踏み込んだ後、オートMURAMASAを力任せに上から下へ叩き降ろした。
斬撃の後、再び吼えるドラゴン。
しかし、今度の声は悲鳴に近い。
痛みに悶えるドラゴンを騎士もコントロールできていない。
「楽しませてくれたお礼だよ」
小夜は納刀した状態から抜刀。
腰を捻った低い姿勢から切っ先を地面に当てて発火させる。
狙う場所は――鞍馬が攻撃した場所。
派手な音が鳴り響き、ドラゴンに手傷を負わせる事に成功した。
「これは、やったかな」
疾風迅雷でリザードマンを牽制していた錬介。
ドラゴンの異変を感じ取り、戦況がハンター側に傾いた事を確信した。
そして、士気が落ちていたドワーフへ呼び掛ける。
「これで逆転です。ここで一気に押し切りましょう」
疲れた体を揺り動かして立ち上がるドワーフ達。
――そして。
ハンターとドワーフ達の奮戦により、敵を撤退させる事に成功。
被害は出てしまったものの、上々の結果と言えるだろう。
●
「ドワーフに被害はあったようですが……上出来です」
報告を聞いていたヴェルナーは作戦が概ね成功した事に満足げだ。
ドラゴンライダーは逃がしたものの、リザードマンを倒せた。だが、ヴェルナーが満足しているのは戦果よりも『その経緯』だろう。
「敵はあの戦力でこちらが苦戦、そう思わせる事ができました。
ドラゴンライダーはともかく、リザードマンの対処は素晴らしいです」
ヴェルナーの様子を見ていた錬介は、心を見透かすように呟いた。
連合軍が一方的な勝利を収めれば、次はより大きな戦力を送り込まれる。それよりも敵が侮ってくれれば、その隙に防衛機能を回復させる事ができる。
「大勝利も大敗北も今回の戦いでは不要です。
目の前の勝利よりも未来の勝利を選び取ったというべきです。
皆さん、実に見事でした」
褒めちぎるヴェルナー。
別の意図がありそうで、ハンター達は思わず恐怖を抱いてしまう。
「こちらの目論見通りになってくれると嬉しいのですが」
懸念する錬介。
それに対してヴェルナーは、小さく頷く。
「その心配ももっともです。
ですから、我々は目論見がうまく行くよう最善を尽くさねばなりません」
そう言いながら、ヴェルナーは錬介の肩に手を置いた。
今まで以上の微笑みを浮かべながら
「これからも、働いてくれますよね?」
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/04 14:58:04 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/03/06 22:25:26 |