ゲスト
(ka0000)
【龍鉱】遺脈への辿り
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/05 19:00
- 完成日
- 2016/03/11 06:22
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
まだ春の気配も見えないドワーフ工房では頭の痛い思いをする人物が一人でてきた。
ドワーフ工房【ド・ウェルク】を統括する工房管理官であるアルフェッカ・ユヴェーレンである。
先日、ドワーフ工房の技師の一人であるカペラが使えなくなったCAMをドワーフ工房で解析を行いたいと交渉したからだ。
この工房の主は通称ドワーフ王、ヨアキム。
そして、彼は連合軍において隊長職に就いている。
結果報告を連合軍やロッソの方へと送り、情報を共有したいと考えている旨を交渉材料にしたようだった。
しかし、この手の交渉は長引くことであり、それなりに手続きで時間が必要となる。
「そんなわけだから、もろもろ何か来たら対応よろしくねー」
「マジかよーーーっ!」
あっさり言い切ったカペラにアルフェッカは頭を抱えた。
カペラ自身の顔色は良く、つやつやしている。
それもそうだろう、面倒くさい手配をアルフェッカ達に押し付けて自分はリアルブルーの技術に触れて、噂の魔導トラックに乗ってドライブとかツーリングを楽しんでいたのだから。
「ああもう、面倒くさくなりそうだなぁ……」
心底面倒くさそうなアルフェッカは机に顔をつけてぐったりとしている。
「帝国の軍人でしょうに、そんな姿さらして……」
ため息交じりに呟くフォニケがアルフェッカを横目に見て発注書に必要事項を書き込んでいた。
「そっちだって、民族衣装着てたりするでしょ」
じとりと、アルフェッカがフォニケを見やると、彼女は明るく「おしゃれは楽しむものよ」と得意げに笑う。
フォニケは赤き大地の部族の民族衣装と帝国の服を上手く組み合わせておしゃれを楽しんでいる。
自由な気質のドワーフ工房だから、あまり問題視はされてない模様であり、技師達もいちいち気にしていない。
「そいや、龍鉱石の話聞いたけど」
カペラが言えば、フォニケが反応した。
「何それ」
「北方王国にある、リグ・サンガマ西部っていうところに、カム・ラディ遺跡という場所があるの。そこに【龍鉱石】というマテリアル鉱石があるみたいよ」
それは北方王国に住まうドラゴンが死にゆき、それがマテリアル鉱石となったという話から来たという。
「どんなエネルギーが確認されているの?」
興味を示すフォニケにカペラは小首を傾げつつ腕を組む。
「まだよく分からないようなのよ。うまいこといけば、今後転移門とかのエネルギー源になるとか?」
「ふぅん……でも、確認したいわ」
未知の鉱石は技術者にとって魅力的なものであり、マテリアル鉱石の加工を手がけるフォニケにとってもそれは同じ。
「おい、フォニケ。現実逃避するなよ」
クレムト所属のシェダルが釘をさすとフォニケは書きあがった書類を抱きかかえて立ち上がる。
「やぁね! 新しいものが出てくれば確認作業は必須よ!」
絶対に現実逃避だと確信した三人を置いて、フォニケがカム・ラティ遺跡へと向かう志願を行った。
ドワーフ工房【ド・ウェルク】を統括する工房管理官であるアルフェッカ・ユヴェーレンである。
先日、ドワーフ工房の技師の一人であるカペラが使えなくなったCAMをドワーフ工房で解析を行いたいと交渉したからだ。
この工房の主は通称ドワーフ王、ヨアキム。
そして、彼は連合軍において隊長職に就いている。
結果報告を連合軍やロッソの方へと送り、情報を共有したいと考えている旨を交渉材料にしたようだった。
しかし、この手の交渉は長引くことであり、それなりに手続きで時間が必要となる。
「そんなわけだから、もろもろ何か来たら対応よろしくねー」
「マジかよーーーっ!」
あっさり言い切ったカペラにアルフェッカは頭を抱えた。
カペラ自身の顔色は良く、つやつやしている。
それもそうだろう、面倒くさい手配をアルフェッカ達に押し付けて自分はリアルブルーの技術に触れて、噂の魔導トラックに乗ってドライブとかツーリングを楽しんでいたのだから。
「ああもう、面倒くさくなりそうだなぁ……」
心底面倒くさそうなアルフェッカは机に顔をつけてぐったりとしている。
「帝国の軍人でしょうに、そんな姿さらして……」
ため息交じりに呟くフォニケがアルフェッカを横目に見て発注書に必要事項を書き込んでいた。
「そっちだって、民族衣装着てたりするでしょ」
じとりと、アルフェッカがフォニケを見やると、彼女は明るく「おしゃれは楽しむものよ」と得意げに笑う。
フォニケは赤き大地の部族の民族衣装と帝国の服を上手く組み合わせておしゃれを楽しんでいる。
自由な気質のドワーフ工房だから、あまり問題視はされてない模様であり、技師達もいちいち気にしていない。
「そいや、龍鉱石の話聞いたけど」
カペラが言えば、フォニケが反応した。
「何それ」
「北方王国にある、リグ・サンガマ西部っていうところに、カム・ラディ遺跡という場所があるの。そこに【龍鉱石】というマテリアル鉱石があるみたいよ」
それは北方王国に住まうドラゴンが死にゆき、それがマテリアル鉱石となったという話から来たという。
「どんなエネルギーが確認されているの?」
興味を示すフォニケにカペラは小首を傾げつつ腕を組む。
「まだよく分からないようなのよ。うまいこといけば、今後転移門とかのエネルギー源になるとか?」
「ふぅん……でも、確認したいわ」
未知の鉱石は技術者にとって魅力的なものであり、マテリアル鉱石の加工を手がけるフォニケにとってもそれは同じ。
「おい、フォニケ。現実逃避するなよ」
クレムト所属のシェダルが釘をさすとフォニケは書きあがった書類を抱きかかえて立ち上がる。
「やぁね! 新しいものが出てくれば確認作業は必須よ!」
絶対に現実逃避だと確信した三人を置いて、フォニケがカム・ラティ遺跡へと向かう志願を行った。
リプレイ本文
フォニケの依頼に応じてくれたハンター達が合流して顔合わせをしていた。
「よろしくね!」
Capella(ka2390)が名乗って挨拶をした。
「私はフォニケよ。宜しくね」
Capellaのフードがもごもご動いているような気がしてフォニケは不思議そうな顔をしてしまう。
「フォニケ君の事は聞いているよ」
「え」
リフィカ・レーヴェンフルス(ka5290)に声をかけられたフォニケはきょとんとして、自分より背の高い男性を見上げる。
「キミと同じ肉好きの姪っ子や料理好きの親戚の子よりな」
誰の事なのかわかると、フォニケはつい笑みを零してしまう。
「今回は遺跡周辺の探索ですよね」
叢雲 伊織(ka5091)が改まって今回の依頼主旨を確認すると、フォニケはその通りと頷いた。
「ええそうよ」
肯定するフォニケに伊織は嬉しそうな笑顔となり、セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)が微笑ましく目を細めた。
「今回の件はそう言わざるをえませんね」
セツナも同じ考えのようであり、隣にいたティリティナ・イスキュロン(ka6171)は少し頬を紅潮させて初めての依頼にドキドキしているようである。
「実際に見ないことには分からないものもたくさんありますね」
ルーファス(ka5250)が頷く。
「では、行こうか」
待ちきれない仲間たちの様子を察して、リフィカが出発を促した。
●
目的の北方王国に到着すると、目的の遺跡へと向かう。
今は春先の時期だが、北国王国はまだまだ冬の気温であり、雪もしっかり残っていた。
「探索は太陽が沈む前に終わらせるわよ」
昼間は動いてるので、ある程度の暖は取れる。太陽が沈み、夜となれば、一気に気温は落ちて人の体温を奪っていく一方だからだ。
Capellaのフードの中身も寒いのか、もぞもぞ動いているようであった。
程なくして、遺跡が見えてくると、伊織が感動して感嘆の声をあげた。
「凄い、大きい!」
「これが遺跡……龍鉱石がたくさん拾っちゃおう!」
テンションが上がる伊織とティリティナは顔を見合わせて遺跡探索を楽しみにしている。
全員一致の考えとして、手始めは遺跡より近い拠点を探し出すこと。
拠点を見つければ、休憩や情報共有の場所として使う事ができるからだ。
雨風がしのげる屋根のある場所……ベストは洞窟のような場所。
「時間があれば、かまくらでも作りましたけど」
ルーファスが言えば、フォニケが「それはいいわね」と頷く。
「東方には七輪というものがあって、かまくらの中に七輪を持ち込んで、お餅とかをやく事があります」
伊織も話に入ると、ティリティナが楽しそうと会話にはいってくる。
「七輪は聞いた事あるわね。東方では料理に使うって」
フォニケが思い出すと、セツナが頷いた。
「鉄板で焼くより余計な脂身が落ちて、より美味しくなります」
「東方製の炭はあると聞いた。そこの工房ならば、七輪作れるのではないかな」
セツナの解説とリフィカの後押しにフォニケの目が輝く。
「雪が融けたら、テミスへバカンスに行って、焼肉してだらだら過ごしたい……」
何時叶うか分からないお願い事を明後日の方向に秘めるフォニケにハンター達は全員が黙るばかり。
「雪も融けはじめているな。雪崩が起きない事を祈るしかないな」
周囲を見回すリフィカに伊織が同意する。
山の一部は雪が解けて、土が見えていた。
「あちらに洞穴のようなものが見えますね」
セツナが見つけたのは、洞窟というよりも、何らかの事情で空洞ができただろう穴だ。
山の地肌が抉れたかのような空洞である。
「どうすればこのような空洞が……」
安全確認で空洞の中へと入った伊織は、ぺたぺたと土壁を触って確かめている。
冬の寒さで表面は凍っているが、崩れないだろうと思ったが、念のために他の人達にも確認してもらう。
「大丈夫だろう」
リフィカが軽く壁の上の方を叩きつつ確認していく。
「この気温が保つのであれば、今日一日は大丈夫でしょう」
セツナも頷くと、フォニケも同意見だ。
大きな荷物を置いて、遺跡探索へ出発となった。
●
まず飛び出したのは年少組。
拠点探しで少し歩いたが、随分と静かな区域となっているというのが、ハンター達が持った印象である。
戦闘になればそれはそれでという事で、半分ピクニック気分。
「やっぱり、大きいなぁ」
遺跡を目の前にして、伊織がしみじみ呟く。
「沢山拾うんだから♪」
「僕も!」
石を拾う気満々のティリティナにCapellaが声をかける。
「龍鉱石は様々な形や色があると聞いてます」
「透明なものから不透明なもの、大きいもの、小さいものと色々と見つかっているのよね」
ルーファスの言葉にフォニケが繋げる。
「ええ、今回も見つけようと思います」
こくりと頷いたルーファスははにかんだ様に頷いた。
年少組と保護者から少し離れたところを歩いていたのはセツナ。
他の場所同様に遺跡も雪に覆われているので、手で軽く払って、壊れているかどうか、確認していく。
下ばかり見ておらず、遺跡の上部分を見上げる。
天辺へ昇って行く太陽が視界の端に入り、遺跡が被っている雪が反射して、セツナは目を細めてしまうが、それもまた口元を緩ませる。
「なんだか、気分は学者のようです」
「セツナちゃん、なにかあった?」
年少組から離れたフォニケが駆け寄ってきた。
「私が歩いていた部分に関しては、まだ壊れた部分は見かけてませんが、長い年月を過ごしているのか、表面が朽ちているところがありました」
セツナとしては、壁面に彫刻や絵画が描かれているのであれば、確認したかった。実際は雪を払うと、壁面にこびりついた苔が黒ずみ、イマイチ判別がつかないのが残念である。
「遺跡の中には入れると伺いましたが」
「そうみたいね。話に寄れば、ここの遺跡には何らかの機能があるって話よね」
今回の依頼は遺跡周辺の探索となっているが、中にはこの遺跡がどのような存在であるのかを知らしめる何かがあると言われている。
「その機能を発動させる燃料なのよね」
「それを使って何かをする場所みたいね。リフィカさん、いかがされましたか?」
別な方向を歩いていたリフィカがセツナ達を見つけて、こちらへと歩いてくる。
「こっちに来てくれないか」
リフィカの声に二人は顔を見合わせて頷く。
年少組の方を向いたセツナは仲良く探している事を確認して、リフィカの案内に従う。
セツナ達がいた場所とはそう離れていない場所にリフィカが見せたかったものがあった。
「壊れているというか、崩れているところはある」
そう言って提示した場所にフォニケとセツナが腰を屈めて確認する。
「戦闘の痕跡とは思えませんね」
この近辺での戦闘はあっても激しい戦いはなかった可能性がある。
「こっちには崩れているところへ寄りかかるようにこの石があった」
視線で場所を指し示すリフィカに追って二人が見たのは、精巧な龍の形をかたどったアメジストの原石のような紫色の石が寄りかかっている。
それが目的の龍鉱石であることにすぐ気づいた。
「ここで力尽きたのかもしれない」
命の喪失あっての龍鉱石……この龍鉱石が何を思って動けなくなったのかは、ここに住まわず、今を生きる自分達には計ることは出来るのだろうかと三人は沈黙する。
年少組は遺跡の周囲を登ってピクニックや探検を楽しんでいた。
「よっしいこう」
マフラーでしっかり防寒したCapellaがジェットブーツの噴射を利用して少しずつ遺跡を上がって行く。
立っている状態であれば、あまり寒さは感じないのだが、風を受けると一気に冷たい風がCapellaの頬をさしていく。
一段、また一段と、確認しつつ登っていくと、振り向いた風景に目を細めた。
「あ」
忘れていけないのは遺跡の状態だ。
上の方は雪が融けていたりしている部分もあったりしており、苔のような黒いものが石の継ぎ目に埋もれていたりしていた。
「苔でアレだけど、無事な感じだな」
壊れてなくて何よりとCapellaはメモをしていく。
遺跡の中に入れなかったが、周辺を歩いていても楽しんでもらえているのは伊織だった。
今回集めている龍鉱石は死んだ龍の亡骸という話がある。
龍もまた、人と同様に個々で違いがあるのであれば、様々な龍鉱石があるという話もわからないでもない。
死に至る瞬間、彼らは何を思い、力尽きたのだろうか。
戦いで命を落とすものもいただろうし、あえてここを死を選ぼうとしたものがいたとしたら……彼らはどこで、どのような最期を迎えたいのだろうかと伊織は思案する。
静かな場所や綺麗な場所かと考えて、そういった所も捜してもいいかなと思った伊織は遺跡を離れないようにそんな場所を歩いていった。
一方、ルーファスは眉を八の字にして、困った様子を見せている。
「どうかしましたか?」
様子に気づいたティリティナが声をかけると、「いえ……」と少し俯かせて、言葉を濁してしまうルーファス。
じっとティリティナが言葉を待つと、ルーファスはぽつりと言葉を呟いていく。
「今、直感視で龍族がこの周辺で生きているかどうかの確認をしてて……」
その様子を何となく察したティリティナは「結果は仕方ないですよね」と返す。
「せめて、ここで何があったかは少しでも見つけたいです」
微かに微笑むルーファスが顔を上げると、ティリティナもつられて遺跡を見上げる。
「太陽が天辺ですね。お昼にしましょうか」
「はいっ!」
ルーファスの言葉にティリティナは同意して、丁度視線があったCapellaにお昼にしようと声をかけると、気づいてゆっくり下降を始めた。
Capellaを待っていた時、ティリティナはある方向をじっと凝視する。
「どうかしましたか?」
「あれはなんでしょう……」
ルーファスが声をかけると、ティリティナの視線の先にあるのは雪に覆われた部分。
「そこにいくね!」
ティリティナ達の様子に気づいたCapellaがジェットブーツの噴射を利用してある程度の雪を吹いていく。
手で雪を払っていけば、遺跡と同じ材質で出来ているものの、形は遺跡……建物とは違うものが設置されているようだ。
それ自体は壊れてしまっており、更に苔で黒ずんでいる。
「これも報告ですね」
ルーファスがメモをしていく。
下の方より、フォニケ達が声をかけきて一度合流すると、伊織はまだ戻ってない。
自分達が足を踏み入れてない方向へ向けると、伊織は空を見上げていた。
枯れた木々の枝がいくつも重なり、太陽の光が降り注いでいる静かな場所に彼は静かに佇んでいた。
「伊織君」
フォニケが呼びかけると、伊織は少し反応が遅れたかのように一拍置いて振り向く。
「ありましたよ」
彼の足元には蒼い龍鉱石とそれより緑がかった龍鉱石があった。
「どうしてここに?」
Capellaが尋ねると、伊織は曖昧に笑う。
「最期を迎えるとしたら綺麗な場所かなとか思ってました」
ほぼ勘のようなものなので、些か気恥ずかしくて笑ってごまかそうとしていた。
「よく見つけたわ。さぁ、お昼にしましょう」
フォニケがそう言えば、伊織は空腹である事を思い出した。
ここは人ならざる龍の死骸が散らばる可能性を示唆されている場所。
温かい食事を食べて、冷えや疲労で疲れた身体を休ませよう。
食事は皆で持ち寄ってきたものを食べることになった。
周囲に獣の類はいなく、狩りもできなかった。
ルーファスが持参してくれたスコップでセツナが雪を撥ね除け、フォニケが土を均して火が灯りやすいようにする。
主に料理をするのはリフィカとなり、ティリティナも手伝って、スープを作りはじめた。
お昼ごはんの用意ができるまで伊織とCapellaは拠点の護衛を買って出てくれており、周囲を警戒している。
セツナとルーファスとフォニケは皆がメモをしてくれた情報をまとめていた。
食事中に皆で確認していこうとしている。
少し時間が経過すると、いい匂いがしてきた。
「いい匂いですね」
セツナが言えば、少なからず、空腹を感じてしまう。
「ティリティナちゃんが持参したスープの他に、レトルトカレーと干し肉のスープを作ると言ってたわ。で、私が同僚から貰った野菜と肉のきれっぱしを煮込んだ旨味ペーストを渡したの」
フォニケがそう言いだし、ルーファスはそれが何なのか気づく。
「リアルブルーでいうところのコンソメですね」
これで美味しいスープであることをルーファスは確信しており、実際に味見をしたティリティナは喜んでいた。
スープを煮込んでいる間に、チキンや豚の燻製肉、パンを更に炙って温める。
パンはスライスしており、断面がきつね色になってくると、香ばしい匂いが立ち込めて、皆がそわそわし始めた。
「あと少しでチキンも温まる。待っててくれ」
リフィカが皆に言うと、ティリティナはフォニケが用意してくれたスープボウルを人数分用意する。
スープの配膳の間に温められたチキンをフォニケがカットしていく。
「フォニケ君は肉が多目がよかったんだよね」
情報はきちんと把握しているようであるリフィカにフォニケは喜ぶ。
「え、ずるい!」
「僕もほしいです!」
年少組達が言うと、「分ったよ」とリフィカが笑う。
皆の分が行き渡ったところで、食事となる。
食事をしながら、午前中に見つけた事を報告していった。
歪虚や雑魔などはいないどころか、生物が見当たらないというのは共通認識といったところ。
自分達が確認していった遺跡周辺には激しい戦闘の痕跡はなく、龍鉱石も少なかった。
ルーファス達が見つけた壊れたものは結果何だか分らないが、オブジェのようにも見えると言っていた。
崩れたところの欠片を退かしたら、砂が詰まっており、元は何かに使っていたような気もするとの事。
「それは報告しなきゃね」
フォニケの言葉に皆が頷く。
「午後もまた、探索ですね」
セツナがいえば、皆が同意した。
食事に集中していると、ティリティナが声を上げる。
「あ、あの……皆さんはどうしてハンターに?」
少し緊張したようにティリティナの質問。彼女は自分が今回、ハンターとして初めて依頼を受けており、他の人の事が気になったようだ。
皆は少しずつ、ティリティナに教えていくと、彼女は一つ一つ真摯に聞いてくれていた。
「フォニケさんはハンターじゃないんですよね」
「ええ、私は違うわね。でも、出会ったハンターの皆は皆いい子ばかりで大好きよ。勿論、皆もね!」
満面の笑みのフォニケにティリティナは「午後は龍鉱石を見つけますっ」と意気込んだ。
食休みの後、再び調査に出た。
龍鉱石はいくつか回収されることになり、ティリティナも見つけることができた。
「おつかれさま!」
誉めて貰ったティリティナは初めての依頼を遂行し、他のハンターと一緒にしっかりと報告をおこなった。
「よろしくね!」
Capella(ka2390)が名乗って挨拶をした。
「私はフォニケよ。宜しくね」
Capellaのフードがもごもご動いているような気がしてフォニケは不思議そうな顔をしてしまう。
「フォニケ君の事は聞いているよ」
「え」
リフィカ・レーヴェンフルス(ka5290)に声をかけられたフォニケはきょとんとして、自分より背の高い男性を見上げる。
「キミと同じ肉好きの姪っ子や料理好きの親戚の子よりな」
誰の事なのかわかると、フォニケはつい笑みを零してしまう。
「今回は遺跡周辺の探索ですよね」
叢雲 伊織(ka5091)が改まって今回の依頼主旨を確認すると、フォニケはその通りと頷いた。
「ええそうよ」
肯定するフォニケに伊織は嬉しそうな笑顔となり、セツナ・ウリヤノヴァ(ka5645)が微笑ましく目を細めた。
「今回の件はそう言わざるをえませんね」
セツナも同じ考えのようであり、隣にいたティリティナ・イスキュロン(ka6171)は少し頬を紅潮させて初めての依頼にドキドキしているようである。
「実際に見ないことには分からないものもたくさんありますね」
ルーファス(ka5250)が頷く。
「では、行こうか」
待ちきれない仲間たちの様子を察して、リフィカが出発を促した。
●
目的の北方王国に到着すると、目的の遺跡へと向かう。
今は春先の時期だが、北国王国はまだまだ冬の気温であり、雪もしっかり残っていた。
「探索は太陽が沈む前に終わらせるわよ」
昼間は動いてるので、ある程度の暖は取れる。太陽が沈み、夜となれば、一気に気温は落ちて人の体温を奪っていく一方だからだ。
Capellaのフードの中身も寒いのか、もぞもぞ動いているようであった。
程なくして、遺跡が見えてくると、伊織が感動して感嘆の声をあげた。
「凄い、大きい!」
「これが遺跡……龍鉱石がたくさん拾っちゃおう!」
テンションが上がる伊織とティリティナは顔を見合わせて遺跡探索を楽しみにしている。
全員一致の考えとして、手始めは遺跡より近い拠点を探し出すこと。
拠点を見つければ、休憩や情報共有の場所として使う事ができるからだ。
雨風がしのげる屋根のある場所……ベストは洞窟のような場所。
「時間があれば、かまくらでも作りましたけど」
ルーファスが言えば、フォニケが「それはいいわね」と頷く。
「東方には七輪というものがあって、かまくらの中に七輪を持ち込んで、お餅とかをやく事があります」
伊織も話に入ると、ティリティナが楽しそうと会話にはいってくる。
「七輪は聞いた事あるわね。東方では料理に使うって」
フォニケが思い出すと、セツナが頷いた。
「鉄板で焼くより余計な脂身が落ちて、より美味しくなります」
「東方製の炭はあると聞いた。そこの工房ならば、七輪作れるのではないかな」
セツナの解説とリフィカの後押しにフォニケの目が輝く。
「雪が融けたら、テミスへバカンスに行って、焼肉してだらだら過ごしたい……」
何時叶うか分からないお願い事を明後日の方向に秘めるフォニケにハンター達は全員が黙るばかり。
「雪も融けはじめているな。雪崩が起きない事を祈るしかないな」
周囲を見回すリフィカに伊織が同意する。
山の一部は雪が解けて、土が見えていた。
「あちらに洞穴のようなものが見えますね」
セツナが見つけたのは、洞窟というよりも、何らかの事情で空洞ができただろう穴だ。
山の地肌が抉れたかのような空洞である。
「どうすればこのような空洞が……」
安全確認で空洞の中へと入った伊織は、ぺたぺたと土壁を触って確かめている。
冬の寒さで表面は凍っているが、崩れないだろうと思ったが、念のために他の人達にも確認してもらう。
「大丈夫だろう」
リフィカが軽く壁の上の方を叩きつつ確認していく。
「この気温が保つのであれば、今日一日は大丈夫でしょう」
セツナも頷くと、フォニケも同意見だ。
大きな荷物を置いて、遺跡探索へ出発となった。
●
まず飛び出したのは年少組。
拠点探しで少し歩いたが、随分と静かな区域となっているというのが、ハンター達が持った印象である。
戦闘になればそれはそれでという事で、半分ピクニック気分。
「やっぱり、大きいなぁ」
遺跡を目の前にして、伊織がしみじみ呟く。
「沢山拾うんだから♪」
「僕も!」
石を拾う気満々のティリティナにCapellaが声をかける。
「龍鉱石は様々な形や色があると聞いてます」
「透明なものから不透明なもの、大きいもの、小さいものと色々と見つかっているのよね」
ルーファスの言葉にフォニケが繋げる。
「ええ、今回も見つけようと思います」
こくりと頷いたルーファスははにかんだ様に頷いた。
年少組と保護者から少し離れたところを歩いていたのはセツナ。
他の場所同様に遺跡も雪に覆われているので、手で軽く払って、壊れているかどうか、確認していく。
下ばかり見ておらず、遺跡の上部分を見上げる。
天辺へ昇って行く太陽が視界の端に入り、遺跡が被っている雪が反射して、セツナは目を細めてしまうが、それもまた口元を緩ませる。
「なんだか、気分は学者のようです」
「セツナちゃん、なにかあった?」
年少組から離れたフォニケが駆け寄ってきた。
「私が歩いていた部分に関しては、まだ壊れた部分は見かけてませんが、長い年月を過ごしているのか、表面が朽ちているところがありました」
セツナとしては、壁面に彫刻や絵画が描かれているのであれば、確認したかった。実際は雪を払うと、壁面にこびりついた苔が黒ずみ、イマイチ判別がつかないのが残念である。
「遺跡の中には入れると伺いましたが」
「そうみたいね。話に寄れば、ここの遺跡には何らかの機能があるって話よね」
今回の依頼は遺跡周辺の探索となっているが、中にはこの遺跡がどのような存在であるのかを知らしめる何かがあると言われている。
「その機能を発動させる燃料なのよね」
「それを使って何かをする場所みたいね。リフィカさん、いかがされましたか?」
別な方向を歩いていたリフィカがセツナ達を見つけて、こちらへと歩いてくる。
「こっちに来てくれないか」
リフィカの声に二人は顔を見合わせて頷く。
年少組の方を向いたセツナは仲良く探している事を確認して、リフィカの案内に従う。
セツナ達がいた場所とはそう離れていない場所にリフィカが見せたかったものがあった。
「壊れているというか、崩れているところはある」
そう言って提示した場所にフォニケとセツナが腰を屈めて確認する。
「戦闘の痕跡とは思えませんね」
この近辺での戦闘はあっても激しい戦いはなかった可能性がある。
「こっちには崩れているところへ寄りかかるようにこの石があった」
視線で場所を指し示すリフィカに追って二人が見たのは、精巧な龍の形をかたどったアメジストの原石のような紫色の石が寄りかかっている。
それが目的の龍鉱石であることにすぐ気づいた。
「ここで力尽きたのかもしれない」
命の喪失あっての龍鉱石……この龍鉱石が何を思って動けなくなったのかは、ここに住まわず、今を生きる自分達には計ることは出来るのだろうかと三人は沈黙する。
年少組は遺跡の周囲を登ってピクニックや探検を楽しんでいた。
「よっしいこう」
マフラーでしっかり防寒したCapellaがジェットブーツの噴射を利用して少しずつ遺跡を上がって行く。
立っている状態であれば、あまり寒さは感じないのだが、風を受けると一気に冷たい風がCapellaの頬をさしていく。
一段、また一段と、確認しつつ登っていくと、振り向いた風景に目を細めた。
「あ」
忘れていけないのは遺跡の状態だ。
上の方は雪が融けていたりしている部分もあったりしており、苔のような黒いものが石の継ぎ目に埋もれていたりしていた。
「苔でアレだけど、無事な感じだな」
壊れてなくて何よりとCapellaはメモをしていく。
遺跡の中に入れなかったが、周辺を歩いていても楽しんでもらえているのは伊織だった。
今回集めている龍鉱石は死んだ龍の亡骸という話がある。
龍もまた、人と同様に個々で違いがあるのであれば、様々な龍鉱石があるという話もわからないでもない。
死に至る瞬間、彼らは何を思い、力尽きたのだろうか。
戦いで命を落とすものもいただろうし、あえてここを死を選ぼうとしたものがいたとしたら……彼らはどこで、どのような最期を迎えたいのだろうかと伊織は思案する。
静かな場所や綺麗な場所かと考えて、そういった所も捜してもいいかなと思った伊織は遺跡を離れないようにそんな場所を歩いていった。
一方、ルーファスは眉を八の字にして、困った様子を見せている。
「どうかしましたか?」
様子に気づいたティリティナが声をかけると、「いえ……」と少し俯かせて、言葉を濁してしまうルーファス。
じっとティリティナが言葉を待つと、ルーファスはぽつりと言葉を呟いていく。
「今、直感視で龍族がこの周辺で生きているかどうかの確認をしてて……」
その様子を何となく察したティリティナは「結果は仕方ないですよね」と返す。
「せめて、ここで何があったかは少しでも見つけたいです」
微かに微笑むルーファスが顔を上げると、ティリティナもつられて遺跡を見上げる。
「太陽が天辺ですね。お昼にしましょうか」
「はいっ!」
ルーファスの言葉にティリティナは同意して、丁度視線があったCapellaにお昼にしようと声をかけると、気づいてゆっくり下降を始めた。
Capellaを待っていた時、ティリティナはある方向をじっと凝視する。
「どうかしましたか?」
「あれはなんでしょう……」
ルーファスが声をかけると、ティリティナの視線の先にあるのは雪に覆われた部分。
「そこにいくね!」
ティリティナ達の様子に気づいたCapellaがジェットブーツの噴射を利用してある程度の雪を吹いていく。
手で雪を払っていけば、遺跡と同じ材質で出来ているものの、形は遺跡……建物とは違うものが設置されているようだ。
それ自体は壊れてしまっており、更に苔で黒ずんでいる。
「これも報告ですね」
ルーファスがメモをしていく。
下の方より、フォニケ達が声をかけきて一度合流すると、伊織はまだ戻ってない。
自分達が足を踏み入れてない方向へ向けると、伊織は空を見上げていた。
枯れた木々の枝がいくつも重なり、太陽の光が降り注いでいる静かな場所に彼は静かに佇んでいた。
「伊織君」
フォニケが呼びかけると、伊織は少し反応が遅れたかのように一拍置いて振り向く。
「ありましたよ」
彼の足元には蒼い龍鉱石とそれより緑がかった龍鉱石があった。
「どうしてここに?」
Capellaが尋ねると、伊織は曖昧に笑う。
「最期を迎えるとしたら綺麗な場所かなとか思ってました」
ほぼ勘のようなものなので、些か気恥ずかしくて笑ってごまかそうとしていた。
「よく見つけたわ。さぁ、お昼にしましょう」
フォニケがそう言えば、伊織は空腹である事を思い出した。
ここは人ならざる龍の死骸が散らばる可能性を示唆されている場所。
温かい食事を食べて、冷えや疲労で疲れた身体を休ませよう。
食事は皆で持ち寄ってきたものを食べることになった。
周囲に獣の類はいなく、狩りもできなかった。
ルーファスが持参してくれたスコップでセツナが雪を撥ね除け、フォニケが土を均して火が灯りやすいようにする。
主に料理をするのはリフィカとなり、ティリティナも手伝って、スープを作りはじめた。
お昼ごはんの用意ができるまで伊織とCapellaは拠点の護衛を買って出てくれており、周囲を警戒している。
セツナとルーファスとフォニケは皆がメモをしてくれた情報をまとめていた。
食事中に皆で確認していこうとしている。
少し時間が経過すると、いい匂いがしてきた。
「いい匂いですね」
セツナが言えば、少なからず、空腹を感じてしまう。
「ティリティナちゃんが持参したスープの他に、レトルトカレーと干し肉のスープを作ると言ってたわ。で、私が同僚から貰った野菜と肉のきれっぱしを煮込んだ旨味ペーストを渡したの」
フォニケがそう言いだし、ルーファスはそれが何なのか気づく。
「リアルブルーでいうところのコンソメですね」
これで美味しいスープであることをルーファスは確信しており、実際に味見をしたティリティナは喜んでいた。
スープを煮込んでいる間に、チキンや豚の燻製肉、パンを更に炙って温める。
パンはスライスしており、断面がきつね色になってくると、香ばしい匂いが立ち込めて、皆がそわそわし始めた。
「あと少しでチキンも温まる。待っててくれ」
リフィカが皆に言うと、ティリティナはフォニケが用意してくれたスープボウルを人数分用意する。
スープの配膳の間に温められたチキンをフォニケがカットしていく。
「フォニケ君は肉が多目がよかったんだよね」
情報はきちんと把握しているようであるリフィカにフォニケは喜ぶ。
「え、ずるい!」
「僕もほしいです!」
年少組達が言うと、「分ったよ」とリフィカが笑う。
皆の分が行き渡ったところで、食事となる。
食事をしながら、午前中に見つけた事を報告していった。
歪虚や雑魔などはいないどころか、生物が見当たらないというのは共通認識といったところ。
自分達が確認していった遺跡周辺には激しい戦闘の痕跡はなく、龍鉱石も少なかった。
ルーファス達が見つけた壊れたものは結果何だか分らないが、オブジェのようにも見えると言っていた。
崩れたところの欠片を退かしたら、砂が詰まっており、元は何かに使っていたような気もするとの事。
「それは報告しなきゃね」
フォニケの言葉に皆が頷く。
「午後もまた、探索ですね」
セツナがいえば、皆が同意した。
食事に集中していると、ティリティナが声を上げる。
「あ、あの……皆さんはどうしてハンターに?」
少し緊張したようにティリティナの質問。彼女は自分が今回、ハンターとして初めて依頼を受けており、他の人の事が気になったようだ。
皆は少しずつ、ティリティナに教えていくと、彼女は一つ一つ真摯に聞いてくれていた。
「フォニケさんはハンターじゃないんですよね」
「ええ、私は違うわね。でも、出会ったハンターの皆は皆いい子ばかりで大好きよ。勿論、皆もね!」
満面の笑みのフォニケにティリティナは「午後は龍鉱石を見つけますっ」と意気込んだ。
食休みの後、再び調査に出た。
龍鉱石はいくつか回収されることになり、ティリティナも見つけることができた。
「おつかれさま!」
誉めて貰ったティリティナは初めての依頼を遂行し、他のハンターと一緒にしっかりと報告をおこなった。
依頼結果
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面白かった! | 4人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 ティリティナ・イスキュロン(ka6171) 人間(リアルブルー)|12才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/03/05 06:42:18 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/01 23:48:45 |