ゲスト
(ka0000)
【龍鉱】大きいことはいいことだ
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/05 15:00
- 完成日
- 2016/03/13 22:34
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「ねぇ、お腹すいたー」
「ちょっとは我慢しなさいよハラミー……もうビスケットもないわよ?」
鬱蒼と生い茂る森の中に、腹の虫が思いっきり鳴き叫ぶ。
カム・ラディ遺跡周辺の地域調査に、二人組の少女がわれこそはと参加してきた。彼女たちの名前は、カルビーとハラミー。遺跡調査を趣味とするハンターたちである。カム・ラディ遺跡に入る前に、周辺調査をするべく歩いていた。
イニシャライザーなるものを装備し、結晶化した龍の死体を探す。宝探しのようなシチュエーションに、興奮度は少し上がっていた。ただし、二人の本来の目的は地形調査である。
「うふふ、ところどころ結晶みたいなものもあるし……来てよかったわ」
「カルビー……何か目がやばい」
探索シチュエーションに興奮する相棒に、ハラミーは苦笑いを浮かべる。普段見かけないものもちらほら見えるのは、ハラミーも興奮しないわけではない。
ただ、それ以上にお腹が空いていた。冷静さを失いかけているカルビーに、ハラミーは再度告げる。
「戻って、何か……」
「龍鉱石の一つでも見つけたらねー」
「むー、カルビーのけちんぼ」
ハラミーは文句を言いながらも、カルビーの言葉に従う。やや競うような状況に、出遅れた二人は焦りもある。
加えて各地では偵察に来ている歪虚もいるという。ここもいつ安全でなくなるかわからないのだ。それでも、
「……調査は丹念に」
「そう、念入りにね」
自分たちのモットーは、ないがしろにはできない。
草をかき分け邪魔な石をどけ、森の中を進む。森を抜けた先に川があった。やけに光を反射して、キラキラしい。
「あれが龍鉱石じゃない?」
川の中に見えるキラキラに目を凝らしてみれば、龍の形をした鉱石が横たわっていた。それなりの大きさがある。いわゆるお宝を前に、二人の興奮度はかなり上がった。
「よーし、目当ての物を見つけたわね。さくっと持って帰ってご飯にしよー!」
「ハラミー……どれだけお腹空いているのよ」
ハラミーは我先にと片足を川につけた……そのとき。カルビーがハラミーの肩を掴んだ。不思議そうに振り返るハラミーにカルビーは、しっと口元に指を添えた。
耳を澄ませば風に紛れて、獣の唸り声のような音が聞こえてくる。
一つの大きな足音と、複数の人間大の足音。ただし、尻尾を引きずるよな音がたまに混じっていた。
ハラミーとカルビーは、目配せをして音を立てないように後ずさる。
ややあって姿を表したのは、オーガ級の大きさを持つリザードマンだった。手にしている剣も人間と同じぐらい大きな両刃剣である。やや刃こぼれが見えるが、あれで叩かれたらハラミーたちではひとたまりもない。
複数のリザードマンを従えるそいつは、じろりと周囲を見渡していた。
そろりと下がろうとした時、ハラミーがパリッと半結晶の枝を割った。
ゲッと思ったのもつかの間、ぎょろりとした双眸が二人の姿を捉える。
「やばいの出現!」
「即退散っ!」
「命あっての……」
「「物種です!」」
叫びを上げながら、ハラミーとカルビーは疾走を開始する。
戦闘は苦手、逃げに徹するが常道な二人なのであった。
それでも諦めきれない、このコンビ。
他のハンターと組んで、ついでにあの龍鉱石を奪いに行くことを決心するのであった。
「ねぇ、お腹すいたー」
「ちょっとは我慢しなさいよハラミー……もうビスケットもないわよ?」
鬱蒼と生い茂る森の中に、腹の虫が思いっきり鳴き叫ぶ。
カム・ラディ遺跡周辺の地域調査に、二人組の少女がわれこそはと参加してきた。彼女たちの名前は、カルビーとハラミー。遺跡調査を趣味とするハンターたちである。カム・ラディ遺跡に入る前に、周辺調査をするべく歩いていた。
イニシャライザーなるものを装備し、結晶化した龍の死体を探す。宝探しのようなシチュエーションに、興奮度は少し上がっていた。ただし、二人の本来の目的は地形調査である。
「うふふ、ところどころ結晶みたいなものもあるし……来てよかったわ」
「カルビー……何か目がやばい」
探索シチュエーションに興奮する相棒に、ハラミーは苦笑いを浮かべる。普段見かけないものもちらほら見えるのは、ハラミーも興奮しないわけではない。
ただ、それ以上にお腹が空いていた。冷静さを失いかけているカルビーに、ハラミーは再度告げる。
「戻って、何か……」
「龍鉱石の一つでも見つけたらねー」
「むー、カルビーのけちんぼ」
ハラミーは文句を言いながらも、カルビーの言葉に従う。やや競うような状況に、出遅れた二人は焦りもある。
加えて各地では偵察に来ている歪虚もいるという。ここもいつ安全でなくなるかわからないのだ。それでも、
「……調査は丹念に」
「そう、念入りにね」
自分たちのモットーは、ないがしろにはできない。
草をかき分け邪魔な石をどけ、森の中を進む。森を抜けた先に川があった。やけに光を反射して、キラキラしい。
「あれが龍鉱石じゃない?」
川の中に見えるキラキラに目を凝らしてみれば、龍の形をした鉱石が横たわっていた。それなりの大きさがある。いわゆるお宝を前に、二人の興奮度はかなり上がった。
「よーし、目当ての物を見つけたわね。さくっと持って帰ってご飯にしよー!」
「ハラミー……どれだけお腹空いているのよ」
ハラミーは我先にと片足を川につけた……そのとき。カルビーがハラミーの肩を掴んだ。不思議そうに振り返るハラミーにカルビーは、しっと口元に指を添えた。
耳を澄ませば風に紛れて、獣の唸り声のような音が聞こえてくる。
一つの大きな足音と、複数の人間大の足音。ただし、尻尾を引きずるよな音がたまに混じっていた。
ハラミーとカルビーは、目配せをして音を立てないように後ずさる。
ややあって姿を表したのは、オーガ級の大きさを持つリザードマンだった。手にしている剣も人間と同じぐらい大きな両刃剣である。やや刃こぼれが見えるが、あれで叩かれたらハラミーたちではひとたまりもない。
複数のリザードマンを従えるそいつは、じろりと周囲を見渡していた。
そろりと下がろうとした時、ハラミーがパリッと半結晶の枝を割った。
ゲッと思ったのもつかの間、ぎょろりとした双眸が二人の姿を捉える。
「やばいの出現!」
「即退散っ!」
「命あっての……」
「「物種です!」」
叫びを上げながら、ハラミーとカルビーは疾走を開始する。
戦闘は苦手、逃げに徹するが常道な二人なのであった。
それでも諦めきれない、このコンビ。
他のハンターと組んで、ついでにあの龍鉱石を奪いに行くことを決心するのであった。
リプレイ本文
●
太陽がてっぺんに登り、川面をきらきらときらめかせる。
ハンターたちは、光に照らされる川に近い森の中から様子を伺っていた。複数のリザードマンに囲まれ、一際目立つ大型のリザードマンがいた。
「大きい龍鉱石、大きい敵……」
仁川 リア(ka3483)は目の前の敵を前に、大斧の青白い柄を掴む。
「というわけで、僕も大きい斧使って相手してあげよう」
「仁川さん、一度戻りますよ」
後ろから声をかけた和泉 澪(ka4070)に、リアは頷きを返す。森の後方で、他のハンターたちと合流する。
「私の名前は七夜・真夕。よろしくね」
七夜・真夕(ka3977)が率先し、初めて顔を合わす者、以前からの知り合いも一応に自己紹介を行う。互いを知り得たところで、リュー・グランフェスト(ka2419)が「さて」と刀を構える。
「龍鉱石ね。お大きな騒ぎになったもんだけど……これからの戦いに有効だってんなら、トカゲのオモチャにはさせられねえよな」
ザレム・アズール(ka0878)が頷き、
「聞けば大きい龍鉱石だ。確実に回収するぞ」
「気分は恐竜の化石発掘ってか?」
八島 陽(ka1442)が楽しそうに告げ、すぐに表情を正す。
「その前に、あいつらを撃破しないとな」
「北の大地に希望の灯火をもたらすために、退くわけにはいきません!」
ティリル(ka5672)が気合の声を上げる。
ハンターたちは最後に作戦を確認し、散開するのだった。
「あはは、でっかいトカゲさんだ~」
前方に見えるリザードマンに、夢路 まよい(ka1328)は笑い声をあげていた。
「トカゲさんって、寒いと動けなくなるんだっけ?」
唇に指を当て、うんと小首を傾げる。
「私の魔法で試してみよ~っと!」
少しイタズラっぽい笑みを浮かべるまよいに、真夕は優しげに微笑む。
「もう少し待ってね。今、リューがこちらに連れてきてくれるから」
ね、と告げられて、リューは「おう」と答えて茂みの先へ行く。
体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏う。
わざと音を立てて飛び出したリューは、刀の切っ先を向けて声を張り上げた。
「そこまでだ! トカゲども!」
●
森から飛び出してきた闖入者に、リザードマンたちは一斉に視線を向けた。
爬虫類独特のギョロッとした目に睨まれながら、リューは弓を手にする。
「どうした、怖いのか?」
マテリアルを駆使し放たれた矢は、大型リザードマンの頭の右を掠めていった。
リューの挑発に応じるようにリザードマンは咆哮した。人間大の両刃剣の切っ先を向け、配下を動かす。
剣使い二匹、槍使い二匹、弓使い二匹……素早く確認をしてリューは伝える。
挑発の言葉を途切れさせず、二撃目の弓を放つ。弓持ちリザードマンがすかさずカウンターを返すが、リューは軽いステップでこれを躱す。
射程を見切るように矢の行く末を横目で追った。
「……森の中まで届くか」
独りごち視線をリザードマンに戻す。ある程度前進し、後退。前衛を担う剣と槍使いが炎を吐きつけるのを下がりながら避ける。こちらも射程を見切りつつ、
「くっそ」
と、引きつけるように悪態をついてリューはポイントまでリザードマンたちを誘導する。
「あと、少し……」
森の茂みから真夕が顔を覗かせていた。リューの位置取りを確認し、合図を出す準備を整える。リューが三撃目となる弓矢を放ったところで、エレメンタルコールを発動した。
「そこよ! 離れて!」
精霊によって届けられた声にリューはすかさず反応し、大きく距離を取る。追おうとしたリザードマン目掛けて真夕はブリザードを放つ。
「氷雪よ! あれ!!」
空間に現れた冷気の嵐。それを見たまよいが、木の影から顔を見せた。
先程までの笑みを落とし、集中した表情でまよいは告げる。
「万物を凍てつかせし氷精の吐息よ、我に仇なす者の命の灯を吹き消さん」
視線の先でリザードマンが奇襲に慌てる姿が見えた。
集中を高める中で、少し笑みを含めて高らかにいう。
「氷の棺で眠りにつけ……ブリザードッ!」
二度続けて吹き荒れる冷気の暴風に、リザードマンたちの動きが鈍る。
どちらかを避ければどちらかが当たる。そんな状況の中で、リザードマンたちが見たのは茂みから飛び出してくるハンターたちの姿であった。
その脇で、
「私達はあの大きいのを止めましょう! 行きますよっ」
「心得た」
澪とリアは中心からずれて移動を開始していた。
「一気に行きます!」
ティリルが駆け抜ける前衛の後ろから符を放つ。投げ上げた符が、リザードマンたちの頭上で稲妻とかして落ちる。稲妻を受けつつ、弓のリザードマンがやや後退しつつ矢を放つ。
合わせて前衛を担うリザードマンたちが一斉に炎を吐いた。まるで、壁のようにうねる炎を抜けてリューたちは駆ける。
「悪いな! 『槍』ならこっちにもあるんだよ!」
長槍の切っ先を向けるリザードマンに視線を向け、リューは声を上げた。
大量のマテリアルがリューの手を通して武器に流入する。大きく一歩踏み出すとともに、鋭い刺突を放つ。
「『紋章剣、天槍』!」
輝きが槍のように伸び、敵を討つ。
肩を貫かれ、リザードマンの姿勢がぐらつく。同時に足を光の筋がかすめた。
ちらりと見れば、ザレムが光でできた三角形を展開している。三角形の頂点から放たれた光の一つは槍持を、一つは弓持ちを、一つは親玉を狙う。
「思ったより素早いな」
大型のリザードマンにしては俊敏な動きで光線を躱す。
二撃を上下に受けた槍持ちは、距離を詰めて突きを放つ。カウンター気味に放たれた穂先を避け、リューは槍持に肉迫する。
すれ違いざまに一閃。
「まずは一匹」
倒れたリザードマンを一瞥し、すぐに次の相手へ視線を移す。もう一匹の槍使いは、鈍った動きに氷の矢が突き刺さっていた。
アイスボルトを使ったのは、まよいだ。
集中を切らさぬよう、まよいは木の影から顔を見せる。
「わ、わわ」
その隙を見逃さず、リザードマンの弓矢がまよいを狙う。慌てて顔を引っ込めるも、髪の数本を撃ち飛ばしていった。
「弓がいると狙いにくいな~」
頬を膨らませ抗議するまよいに応えるようにして、陽が弓持ちへと接近を狙う。
ジェットブーツで旋回し、炎の中を抜ける。
「……っ!」
マテリアルで光の障壁を形成し、雷撃も合わせて炎を防ぐ。外套「玉藻」を合わせても、熱波が肌を焼きじわっと痛みが走る。
槍や剣の切っ先を抜け、弓が放てない位置まで潜り込む。
「さて、反撃だ」
カードバインダーを媒介にして、光の剣がリザードマンを貫く。ティリルが合わせて、風雷陣を放って追い打ちをかける。
「さて、もう一発」
目の前で吐きつけられた炎をしのぎ、再度機導剣を放つ。弓持ちリザードマンは、鱗が剥がれ落ちた身体で陽を睨みつけていた。
●
少しずつ布陣が整ってきた。
大型リザードマンも前方へ進もうとした、その時――。
「君の相手は僕らだよ、でっかいトカゲさん」
大斧を構えたリアが飛び込んできた。リアはとっさに振り下ろされた剣を躱すと、リザードマンの手を踏み台にして跳躍。そのまま、大斧を頭上目掛けて叩き落とす。
奇しくも避けられるが、脚部にマテリアルを集中させた澪が素早く接敵する。
「逃しませんよ」
斬撃をさらにかわした大型リザードマンは、舌なめずりをすると大剣を横に薙ぎ払った。構えから斬撃までわずかにコンマ五秒、巨大な体躯から予想もできない早さであった。
「仁川さん!」
和泉の声に、リアは大丈夫とうなずきを見せた。刀でまともに受けては、武器を破壊されかねない。初撃は見きれずとも、二撃目からは回避に重点を置けた。
それでも剣圧は強く、下手をすれば押し込まれそうになる。
「一撃は重いですが、返します!」
振り下ろされた大剣を回るようにかわして、懐へ潜り込む。後ろへ抜けるべく一歩を踏み出し、胴をなで斬りにする。硬いウロコを削り、皮目に傷を与える。
痛みより苛立ちを表情に出して、リザードマンは身体をひねった。再び横に大剣を薙ぐ。仕掛けようと前に出ていたリアが手痛い一撃を食らってしまう。
「……っ」
覚醒と鎧がなければ、骨ごと断たれただろう。痛みを感じつつ、リアは呼吸を整えると斧をぐるりと回して気丈な笑みを見せた。
「さてと、僕らのコンビネーションを見せてあげるよ」
和泉、と呼びかけ目配せする。
左右に一度距離を取り、再度駆ける。とりわけ澪は足にマテリアルを巡らし、機先を制す。伸びてきたリザードマンの刺突を軽く刀の背を当てていなす。
「鳴隼一刀流、隼巻閃!」
素早く後ろ側に回りこみ、斬りつける。斬線が背に刻まれ、リザードマンが呻く。
振り返ろうとしたところで、視線の端にリアの姿が映った。
「……紅」
リアの腕から紅に染まった炎のオーラが立ち上る。両の手を添えて、大斧を大上段から振り下ろす。
リザードマンが身を翻し、咄嗟に大剣で防ぎにかかる。だが、間に合わない。紅き一閃がリザードマンの大剣を叩き折り、足の指先を叩く。
「GYAAAAAAAA!?」
悲痛な叫びを上げて、リザードマンが後退した。怒りに任せて炎を撒き散らし、前に出ている部下たちへ叫びまくる。
視線の先で、剣士リザードマンが一匹、二対の氷の矢に穿たれて仰向けに倒れるのが見えた。部下の残りは、半分の三匹になっていた。
●
「行かせないわよ」
進路を遮るように真夕がアイスボルトを放ち、動きが一瞬止まったところをまよいが狙う。倒れる仲間に目もくれず、リザードマンたちは大型の声に従おうとしていた。
「……この数なら」
一方でザレムはジェットブーツを起動させ、大型リザードマンに迫ろうとしていた。
手数の不足したリザードマンでは、ザレムを止めることができない。まずは大型リザードマンの元へ馳せ参じようとしたが、
「合流されたら厄介なのよ」
すかさずティリルが妨害に入った。符を繰り、結界を展開して配下が戻るのを防ぐ。自らの足下が泥状に固まり、リザードマンたちの顔に焦りの色が見えた。
その様子を見て大型リザードマンがリアに背を向けた。退路を断つように放たれた真夕のアイスボルトをわざと受けてまで、包囲網を抜けんと脚を繰り出す。
澪が逃すまいと進めた足を引く。
中程で折れた剣を力任せに振り下ろし、文字通りに退路を開く。追いついたばかりのザレムが、剣を抜き放つ。
リザードマンが剣で受け止めれば柄しか残らなかった。振り払うように薙いだ腕を避けつつ、ザレムは攻性防壁を展開。麻痺を狙うが、
「……逃がしておくか」
移動速度は変わらず、駆け抜けていった。
追おうとする二人の傷を見て、深追いはしないよう告げる。こちらとて無傷ではなく、敵はまだ残されているのだ。
上に見捨てられた哀れなリザードマンも逃げ出そうと足掻いていた。
文字通り槍使いと剣使いは、地面に足を取られているのだ。奇しくも、二発目の地縛符を繰り出せず大型は逃したものの、効果は絶大である。
「そろそろ終わらせるのよ」
自身に言い聞かせるよう声を出し、風雷陣を繰り出す。リューの一撃を受けて槍を取りこぼしたリザードマンが、稲妻に打たれて地面に突っ伏す。
その隣では、すいた空間に放たれたまよいのブリザードを受け、剣使いが凍え死んでいた。残る弓使いは、陽の接近を前にして炎を吐く選択肢以外取れていない。
「それは、効かないよ」
炎の中を抜け、陽が光の剣で切り伏せる。回りを見て戦いが終わったことを悟ると、外套を払うのだった。
●
「龍鉱石になった龍の死因って何だろうな?」
薪を抱えながら陽がハラミーたちに尋ねる。
「んー、見たらわかるかもね」
ハラミーは小首を傾げながら、薪を組み合わせる。ザレムの助言に従って焚き火を作ることにしたのだ。持参した竹刀はモッタイナイとカルビーに燃やすのを阻止された。
その分、二人が協力をしてくれたおかげで十分な火になった。
「あったかーい」とまよいが焚き火の側で温まる。
曰く、すぐに暖まれるため効率が変わるらしい。
「よかったー。無事のようですねっ!」
一足先に川中に入っていた澪が声を上げた。川の浅瀬で龍鉱石が光に照らされている。さっそくロープを取り付けると、引き上げ作業に入った。
ティリルが連れてきた馬の力も借り、一気に引き上げる。
「しかし、凄いなぁ、こんなのがドラゴンだったなんて信じられないね……」
引き上げられた龍鉱石の大きさに、リアが目を剥く。
一方でティリルは龍鉱石に触れて、目を伏せた。
「申し訳ありません。龍の皆さん……どうか力を貸してください。私たちにどうか希望を」
ずりずりと地上まで至った龍鉱石を陽がまじまじと見つめる。
死因が外傷なのかそうでないのか。結晶化の原因は川の水にあるかもしれぬと汲みとってみる。好奇心はさながら恐竜発掘に来たようであった。
「これだけ大きなものなら、転移門の強化にも使えるでしょうか?」
「他にもあるかもしれない。手分けして探そう」
「はい! そして、これも持ち帰りましょう!」
ザレムとハラカルコンビが算段を立て、辺りを捜索する。
「よっと……」
力仕事は任せろとばかりに、リューたちが剣や斧で岩をずらし河川敷もくまなく探す。川べりの斜面なんかも流れ着いたものがあるかもしれなかった。
「メモに描いておいたんだけど、あそこ辺りになんか大きいのあったよ?」
「了解。情報はまとめておくわね」
リアたちが持ってきた情報を真夕が取りまとめ、ティリルが運搬の準備をする。
中位のものはボートで運び、大型は馬の力も借りる予定だった。それでも人手が足りないようであれば、戻って頼まなければならない。
「時間一杯、目一杯、たくさん見つけるぞ!」
気合の入ったザレムの声に、ハンターたちは各々の役割を果たすべく応じる。
龍鉱石の確保はできたが、リューは逃げたリザードマンの行方も少し気になるところであった。
「こっちを手伝ってくれ」
「今は気にしても仕方ない、か」
誰かの呼ぶ声に応じてリューは手を挙げる。
今は、できることをする。それだけなのだ。
太陽がてっぺんに登り、川面をきらきらときらめかせる。
ハンターたちは、光に照らされる川に近い森の中から様子を伺っていた。複数のリザードマンに囲まれ、一際目立つ大型のリザードマンがいた。
「大きい龍鉱石、大きい敵……」
仁川 リア(ka3483)は目の前の敵を前に、大斧の青白い柄を掴む。
「というわけで、僕も大きい斧使って相手してあげよう」
「仁川さん、一度戻りますよ」
後ろから声をかけた和泉 澪(ka4070)に、リアは頷きを返す。森の後方で、他のハンターたちと合流する。
「私の名前は七夜・真夕。よろしくね」
七夜・真夕(ka3977)が率先し、初めて顔を合わす者、以前からの知り合いも一応に自己紹介を行う。互いを知り得たところで、リュー・グランフェスト(ka2419)が「さて」と刀を構える。
「龍鉱石ね。お大きな騒ぎになったもんだけど……これからの戦いに有効だってんなら、トカゲのオモチャにはさせられねえよな」
ザレム・アズール(ka0878)が頷き、
「聞けば大きい龍鉱石だ。確実に回収するぞ」
「気分は恐竜の化石発掘ってか?」
八島 陽(ka1442)が楽しそうに告げ、すぐに表情を正す。
「その前に、あいつらを撃破しないとな」
「北の大地に希望の灯火をもたらすために、退くわけにはいきません!」
ティリル(ka5672)が気合の声を上げる。
ハンターたちは最後に作戦を確認し、散開するのだった。
「あはは、でっかいトカゲさんだ~」
前方に見えるリザードマンに、夢路 まよい(ka1328)は笑い声をあげていた。
「トカゲさんって、寒いと動けなくなるんだっけ?」
唇に指を当て、うんと小首を傾げる。
「私の魔法で試してみよ~っと!」
少しイタズラっぽい笑みを浮かべるまよいに、真夕は優しげに微笑む。
「もう少し待ってね。今、リューがこちらに連れてきてくれるから」
ね、と告げられて、リューは「おう」と答えて茂みの先へ行く。
体内のマテリアルを燃やし、炎のようなオーラを纏う。
わざと音を立てて飛び出したリューは、刀の切っ先を向けて声を張り上げた。
「そこまでだ! トカゲども!」
●
森から飛び出してきた闖入者に、リザードマンたちは一斉に視線を向けた。
爬虫類独特のギョロッとした目に睨まれながら、リューは弓を手にする。
「どうした、怖いのか?」
マテリアルを駆使し放たれた矢は、大型リザードマンの頭の右を掠めていった。
リューの挑発に応じるようにリザードマンは咆哮した。人間大の両刃剣の切っ先を向け、配下を動かす。
剣使い二匹、槍使い二匹、弓使い二匹……素早く確認をしてリューは伝える。
挑発の言葉を途切れさせず、二撃目の弓を放つ。弓持ちリザードマンがすかさずカウンターを返すが、リューは軽いステップでこれを躱す。
射程を見切るように矢の行く末を横目で追った。
「……森の中まで届くか」
独りごち視線をリザードマンに戻す。ある程度前進し、後退。前衛を担う剣と槍使いが炎を吐きつけるのを下がりながら避ける。こちらも射程を見切りつつ、
「くっそ」
と、引きつけるように悪態をついてリューはポイントまでリザードマンたちを誘導する。
「あと、少し……」
森の茂みから真夕が顔を覗かせていた。リューの位置取りを確認し、合図を出す準備を整える。リューが三撃目となる弓矢を放ったところで、エレメンタルコールを発動した。
「そこよ! 離れて!」
精霊によって届けられた声にリューはすかさず反応し、大きく距離を取る。追おうとしたリザードマン目掛けて真夕はブリザードを放つ。
「氷雪よ! あれ!!」
空間に現れた冷気の嵐。それを見たまよいが、木の影から顔を見せた。
先程までの笑みを落とし、集中した表情でまよいは告げる。
「万物を凍てつかせし氷精の吐息よ、我に仇なす者の命の灯を吹き消さん」
視線の先でリザードマンが奇襲に慌てる姿が見えた。
集中を高める中で、少し笑みを含めて高らかにいう。
「氷の棺で眠りにつけ……ブリザードッ!」
二度続けて吹き荒れる冷気の暴風に、リザードマンたちの動きが鈍る。
どちらかを避ければどちらかが当たる。そんな状況の中で、リザードマンたちが見たのは茂みから飛び出してくるハンターたちの姿であった。
その脇で、
「私達はあの大きいのを止めましょう! 行きますよっ」
「心得た」
澪とリアは中心からずれて移動を開始していた。
「一気に行きます!」
ティリルが駆け抜ける前衛の後ろから符を放つ。投げ上げた符が、リザードマンたちの頭上で稲妻とかして落ちる。稲妻を受けつつ、弓のリザードマンがやや後退しつつ矢を放つ。
合わせて前衛を担うリザードマンたちが一斉に炎を吐いた。まるで、壁のようにうねる炎を抜けてリューたちは駆ける。
「悪いな! 『槍』ならこっちにもあるんだよ!」
長槍の切っ先を向けるリザードマンに視線を向け、リューは声を上げた。
大量のマテリアルがリューの手を通して武器に流入する。大きく一歩踏み出すとともに、鋭い刺突を放つ。
「『紋章剣、天槍』!」
輝きが槍のように伸び、敵を討つ。
肩を貫かれ、リザードマンの姿勢がぐらつく。同時に足を光の筋がかすめた。
ちらりと見れば、ザレムが光でできた三角形を展開している。三角形の頂点から放たれた光の一つは槍持を、一つは弓持ちを、一つは親玉を狙う。
「思ったより素早いな」
大型のリザードマンにしては俊敏な動きで光線を躱す。
二撃を上下に受けた槍持ちは、距離を詰めて突きを放つ。カウンター気味に放たれた穂先を避け、リューは槍持に肉迫する。
すれ違いざまに一閃。
「まずは一匹」
倒れたリザードマンを一瞥し、すぐに次の相手へ視線を移す。もう一匹の槍使いは、鈍った動きに氷の矢が突き刺さっていた。
アイスボルトを使ったのは、まよいだ。
集中を切らさぬよう、まよいは木の影から顔を見せる。
「わ、わわ」
その隙を見逃さず、リザードマンの弓矢がまよいを狙う。慌てて顔を引っ込めるも、髪の数本を撃ち飛ばしていった。
「弓がいると狙いにくいな~」
頬を膨らませ抗議するまよいに応えるようにして、陽が弓持ちへと接近を狙う。
ジェットブーツで旋回し、炎の中を抜ける。
「……っ!」
マテリアルで光の障壁を形成し、雷撃も合わせて炎を防ぐ。外套「玉藻」を合わせても、熱波が肌を焼きじわっと痛みが走る。
槍や剣の切っ先を抜け、弓が放てない位置まで潜り込む。
「さて、反撃だ」
カードバインダーを媒介にして、光の剣がリザードマンを貫く。ティリルが合わせて、風雷陣を放って追い打ちをかける。
「さて、もう一発」
目の前で吐きつけられた炎をしのぎ、再度機導剣を放つ。弓持ちリザードマンは、鱗が剥がれ落ちた身体で陽を睨みつけていた。
●
少しずつ布陣が整ってきた。
大型リザードマンも前方へ進もうとした、その時――。
「君の相手は僕らだよ、でっかいトカゲさん」
大斧を構えたリアが飛び込んできた。リアはとっさに振り下ろされた剣を躱すと、リザードマンの手を踏み台にして跳躍。そのまま、大斧を頭上目掛けて叩き落とす。
奇しくも避けられるが、脚部にマテリアルを集中させた澪が素早く接敵する。
「逃しませんよ」
斬撃をさらにかわした大型リザードマンは、舌なめずりをすると大剣を横に薙ぎ払った。構えから斬撃までわずかにコンマ五秒、巨大な体躯から予想もできない早さであった。
「仁川さん!」
和泉の声に、リアは大丈夫とうなずきを見せた。刀でまともに受けては、武器を破壊されかねない。初撃は見きれずとも、二撃目からは回避に重点を置けた。
それでも剣圧は強く、下手をすれば押し込まれそうになる。
「一撃は重いですが、返します!」
振り下ろされた大剣を回るようにかわして、懐へ潜り込む。後ろへ抜けるべく一歩を踏み出し、胴をなで斬りにする。硬いウロコを削り、皮目に傷を与える。
痛みより苛立ちを表情に出して、リザードマンは身体をひねった。再び横に大剣を薙ぐ。仕掛けようと前に出ていたリアが手痛い一撃を食らってしまう。
「……っ」
覚醒と鎧がなければ、骨ごと断たれただろう。痛みを感じつつ、リアは呼吸を整えると斧をぐるりと回して気丈な笑みを見せた。
「さてと、僕らのコンビネーションを見せてあげるよ」
和泉、と呼びかけ目配せする。
左右に一度距離を取り、再度駆ける。とりわけ澪は足にマテリアルを巡らし、機先を制す。伸びてきたリザードマンの刺突を軽く刀の背を当てていなす。
「鳴隼一刀流、隼巻閃!」
素早く後ろ側に回りこみ、斬りつける。斬線が背に刻まれ、リザードマンが呻く。
振り返ろうとしたところで、視線の端にリアの姿が映った。
「……紅」
リアの腕から紅に染まった炎のオーラが立ち上る。両の手を添えて、大斧を大上段から振り下ろす。
リザードマンが身を翻し、咄嗟に大剣で防ぎにかかる。だが、間に合わない。紅き一閃がリザードマンの大剣を叩き折り、足の指先を叩く。
「GYAAAAAAAA!?」
悲痛な叫びを上げて、リザードマンが後退した。怒りに任せて炎を撒き散らし、前に出ている部下たちへ叫びまくる。
視線の先で、剣士リザードマンが一匹、二対の氷の矢に穿たれて仰向けに倒れるのが見えた。部下の残りは、半分の三匹になっていた。
●
「行かせないわよ」
進路を遮るように真夕がアイスボルトを放ち、動きが一瞬止まったところをまよいが狙う。倒れる仲間に目もくれず、リザードマンたちは大型の声に従おうとしていた。
「……この数なら」
一方でザレムはジェットブーツを起動させ、大型リザードマンに迫ろうとしていた。
手数の不足したリザードマンでは、ザレムを止めることができない。まずは大型リザードマンの元へ馳せ参じようとしたが、
「合流されたら厄介なのよ」
すかさずティリルが妨害に入った。符を繰り、結界を展開して配下が戻るのを防ぐ。自らの足下が泥状に固まり、リザードマンたちの顔に焦りの色が見えた。
その様子を見て大型リザードマンがリアに背を向けた。退路を断つように放たれた真夕のアイスボルトをわざと受けてまで、包囲網を抜けんと脚を繰り出す。
澪が逃すまいと進めた足を引く。
中程で折れた剣を力任せに振り下ろし、文字通りに退路を開く。追いついたばかりのザレムが、剣を抜き放つ。
リザードマンが剣で受け止めれば柄しか残らなかった。振り払うように薙いだ腕を避けつつ、ザレムは攻性防壁を展開。麻痺を狙うが、
「……逃がしておくか」
移動速度は変わらず、駆け抜けていった。
追おうとする二人の傷を見て、深追いはしないよう告げる。こちらとて無傷ではなく、敵はまだ残されているのだ。
上に見捨てられた哀れなリザードマンも逃げ出そうと足掻いていた。
文字通り槍使いと剣使いは、地面に足を取られているのだ。奇しくも、二発目の地縛符を繰り出せず大型は逃したものの、効果は絶大である。
「そろそろ終わらせるのよ」
自身に言い聞かせるよう声を出し、風雷陣を繰り出す。リューの一撃を受けて槍を取りこぼしたリザードマンが、稲妻に打たれて地面に突っ伏す。
その隣では、すいた空間に放たれたまよいのブリザードを受け、剣使いが凍え死んでいた。残る弓使いは、陽の接近を前にして炎を吐く選択肢以外取れていない。
「それは、効かないよ」
炎の中を抜け、陽が光の剣で切り伏せる。回りを見て戦いが終わったことを悟ると、外套を払うのだった。
●
「龍鉱石になった龍の死因って何だろうな?」
薪を抱えながら陽がハラミーたちに尋ねる。
「んー、見たらわかるかもね」
ハラミーは小首を傾げながら、薪を組み合わせる。ザレムの助言に従って焚き火を作ることにしたのだ。持参した竹刀はモッタイナイとカルビーに燃やすのを阻止された。
その分、二人が協力をしてくれたおかげで十分な火になった。
「あったかーい」とまよいが焚き火の側で温まる。
曰く、すぐに暖まれるため効率が変わるらしい。
「よかったー。無事のようですねっ!」
一足先に川中に入っていた澪が声を上げた。川の浅瀬で龍鉱石が光に照らされている。さっそくロープを取り付けると、引き上げ作業に入った。
ティリルが連れてきた馬の力も借り、一気に引き上げる。
「しかし、凄いなぁ、こんなのがドラゴンだったなんて信じられないね……」
引き上げられた龍鉱石の大きさに、リアが目を剥く。
一方でティリルは龍鉱石に触れて、目を伏せた。
「申し訳ありません。龍の皆さん……どうか力を貸してください。私たちにどうか希望を」
ずりずりと地上まで至った龍鉱石を陽がまじまじと見つめる。
死因が外傷なのかそうでないのか。結晶化の原因は川の水にあるかもしれぬと汲みとってみる。好奇心はさながら恐竜発掘に来たようであった。
「これだけ大きなものなら、転移門の強化にも使えるでしょうか?」
「他にもあるかもしれない。手分けして探そう」
「はい! そして、これも持ち帰りましょう!」
ザレムとハラカルコンビが算段を立て、辺りを捜索する。
「よっと……」
力仕事は任せろとばかりに、リューたちが剣や斧で岩をずらし河川敷もくまなく探す。川べりの斜面なんかも流れ着いたものがあるかもしれなかった。
「メモに描いておいたんだけど、あそこ辺りになんか大きいのあったよ?」
「了解。情報はまとめておくわね」
リアたちが持ってきた情報を真夕が取りまとめ、ティリルが運搬の準備をする。
中位のものはボートで運び、大型は馬の力も借りる予定だった。それでも人手が足りないようであれば、戻って頼まなければならない。
「時間一杯、目一杯、たくさん見つけるぞ!」
気合の入ったザレムの声に、ハンターたちは各々の役割を果たすべく応じる。
龍鉱石の確保はできたが、リューは逃げたリザードマンの行方も少し気になるところであった。
「こっちを手伝ってくれ」
「今は気にしても仕方ない、か」
誰かの呼ぶ声に応じてリューは手を挙げる。
今は、できることをする。それだけなのだ。
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作戦相談卓 夢路 まよい(ka1328) 人間(リアルブルー)|15才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/03/04 21:27:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/02 07:07:12 |