ゲスト
(ka0000)
【闇光】『龍鉱』から作られるもの
マスター:猫又ものと

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/07 07:30
- 完成日
- 2016/03/15 06:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●『龍鉱』から作られるもの
「……イニシャライザー?」
聞き慣れない言葉に目を瞬かせるスメラギ(kz0158)。
地球軍所属、ラヴィアン・リュー中尉と名乗った女性は、胸元から結晶のネックレスを取り出す。見たところ、それはカム・ラディ遺跡周辺にもあるマテリアル鉱石に似ていた。
「これは龍鉱と呼ばれる素材で作られた装備で、一定時間装備者を汚染から守ってくれるものよ。まったくファンタジーね」
「とても強い正のマテリアルを帯び、それを長時間保持できるタリスマンですか……興味深いですねぇ」
「で、その龍鉱ってなんだよ?」
「死んだ龍がマテリアル結晶となったものよ」
ふむふむと頷くナサニエル・カロッサ(kz0028)。
続いたラヴィアンの言葉に、スメラギは思わずぎょっとする。そういえば遺跡の中には彫像とは異なる、結晶で形作られた龍がいたが……あれは元々本物だったと言うのか。
「龍って死んだら石になっちまうのか!? いやでも、黒龍は消えたような……」
「龍の生態については、研究材料が少なすぎて殆どわかっていませんでしたが……ともあれ、それならば龍鉱というマテリアル鉱石が通常よりも強い力を持っているのは納得できます」
「イニシャライザーは使い捨てで、また新しい物を用意しなければ私達も戻れない。この北方で活動するのなら、あなた達にも必要なはずよ」
「スメラギ様だったら作れるんじゃないですか? イニシャライザー」
ナサニエルの言葉に意外そうな顔をするスメラギだが、確かに近くにある龍鉱からは浄化の力が感じられ、それがこの遺跡を守っているようだし、スメラギが触れてマテリアルを放てば輝きを増していく。
「……決まりね。まずはこの拠点を完全なものにしましょう。あなた達の国から増援を呼びこむ為には、カム・ラディ遺跡を復活させるしかないわ」
「復活……ですか?」
「多くの龍鉱を集めれば転移門も強化できるし、この遺跡の戦術拠点としての力を蘇らせる事も可能な筈よ。それにVOIDもここの動きに気づく頃、迎撃の準備をしなければ」
スメラギは龍鉱をしげしげと眺め、加工の方法をお付きの術者と相談する。
そうしている間、ナサニエルは遠巻きにラヴィアンの横顔を見ていた。
「……詳しすぎますねぇ」
得体の知れない異世界人。それは何も、一方的な評価ではない。ナサニエルもまた、彼女を信用してはいなかった。
交錯するヒトと龍、そして歪虚とリアルブルーの意志。
多くの謎を抱えたまま、リグ・サンガマでの戦いが始まろうとしていた。
●不足するもの
「足りないです! 全然足りないですうう!!」
「あ? 何がだよ」
「イニシャライザーですよ!!」
ばんばん! と机を叩くハンターオフィス職員、イソラに赤い双眸を向けるスメラギ。
続いた言葉に、ハァ……とため息をつく。
「足りねぇって、んな訳ねーだろ。俺様この間沢山作ったろうがよ」
「それがですね。もう殆どないんですよ」
「ハァ!? 何でだよ!!」
「だって、拠点防衛作戦の為に沢山のハンターさん達がリグ・サンガマに向かってるですよ! 在庫なんてあっと言う間に掃けちゃったです!」
――イニシャライザーとは、龍鉱と呼ばれる素材で作られた装備で、とても強い正のマテリアルを帯び、歪虚による汚染から守ってくれるものである。
北狄やリグ・サンガマといった汚染が深い地域で活動する為には必須のもので、ハンターズソサエティが依頼に出発するハンター達に貸し出しを行っている。
ただ、一定時間しか持たないことと使い捨てであるため、とにかく数が必要なのだ。
そこで、ラヴィアンのお付きの術者からイニシャライザーの加工の方法を教わったスメラギが、大量に生成してハンターズソサエティに納品したのであるが……沢山のハンター達が作戦に参加した為、あっと言う間に在庫不足に陥った、と言う訳である。
もう一度ため息をついたスメラギに、ハンターが恐る恐る声をかける。
「スメラギ様。その、イニシャライザーって作るの難しいんですか?」
「んー? なんてーのかなぁ。龍鉱石は元々多くの正マテリアルを含んでるんだが、それだけだと汚染から身を守るほどの能力はねーんだよな」
「じゃあ、その、龍鉱石が元々持ってる正のマテリアルを放出するように加工するってことか……?」
「そーいうこった。黒龍の力と龍鉱石の持つ力は近いんで、俺様が加工する分にはそんなに難しくねーのよ。ま、御柱の力使うからそれなりに体力は使うけどよ。ただ、それよりな……」
「なんです?」
「それを身につけられるように、ペンダントとかブレスレットとかに加工すんのが面倒っつーか、大変でな……」
頭をボリボリと掻くスメラギに、あー……と呟いて、顔を見合わせるハンター達。
オイマト族の族長のように手芸が得意であればさしたる問題にはならないだろうが、この幼い帝には荷が重いかもしれない。
――今まで納品した大量のイニシャライザーは、全て彼がちまちまと慣れない工具を使い針金をくくりつけ、革紐や鎖を通して作成したのかと思うと、ちょっと可愛い……いやいや、哀れにも思えてくる。
「……イソラ。とにかくイニシャライザーが沢山必要なんだな?」
「はい。そうですー。これからのことを考えるとなるべく沢山欲しいのです」
ハンターの問いにこくこくと頷くイソラ。その言葉に、ふむ、とハンターは考え込む。
「そうか。じゃあ、俺達も加工の手伝いをするとしようか」
「そうですね! イニシャライザー自体はスメラギ様にお願いしないといけないかもしれませんが、アクセサリーに加工するとかでしたら私達にも出来ますよね」
「ホントですか!? そうして貰えるとすっごく助かるですよ♪」
ハンターの言葉に嬉しそうに飛び上がるイソラ。ハンター達と彼女は、くるりとスメラギに向き直る。
「そういう訳で、加工、お願いします!」
「あー。はいはい。わーったよ。やるよ。やりゃあいいんだろ」
その小さな身で視線を受け止めて、スメラギは肩を竦めて……。
――拠点防衛作戦が進むの中で、スメラギとハンター達のとっても地味な戦いが始まる。
「……イニシャライザー?」
聞き慣れない言葉に目を瞬かせるスメラギ(kz0158)。
地球軍所属、ラヴィアン・リュー中尉と名乗った女性は、胸元から結晶のネックレスを取り出す。見たところ、それはカム・ラディ遺跡周辺にもあるマテリアル鉱石に似ていた。
「これは龍鉱と呼ばれる素材で作られた装備で、一定時間装備者を汚染から守ってくれるものよ。まったくファンタジーね」
「とても強い正のマテリアルを帯び、それを長時間保持できるタリスマンですか……興味深いですねぇ」
「で、その龍鉱ってなんだよ?」
「死んだ龍がマテリアル結晶となったものよ」
ふむふむと頷くナサニエル・カロッサ(kz0028)。
続いたラヴィアンの言葉に、スメラギは思わずぎょっとする。そういえば遺跡の中には彫像とは異なる、結晶で形作られた龍がいたが……あれは元々本物だったと言うのか。
「龍って死んだら石になっちまうのか!? いやでも、黒龍は消えたような……」
「龍の生態については、研究材料が少なすぎて殆どわかっていませんでしたが……ともあれ、それならば龍鉱というマテリアル鉱石が通常よりも強い力を持っているのは納得できます」
「イニシャライザーは使い捨てで、また新しい物を用意しなければ私達も戻れない。この北方で活動するのなら、あなた達にも必要なはずよ」
「スメラギ様だったら作れるんじゃないですか? イニシャライザー」
ナサニエルの言葉に意外そうな顔をするスメラギだが、確かに近くにある龍鉱からは浄化の力が感じられ、それがこの遺跡を守っているようだし、スメラギが触れてマテリアルを放てば輝きを増していく。
「……決まりね。まずはこの拠点を完全なものにしましょう。あなた達の国から増援を呼びこむ為には、カム・ラディ遺跡を復活させるしかないわ」
「復活……ですか?」
「多くの龍鉱を集めれば転移門も強化できるし、この遺跡の戦術拠点としての力を蘇らせる事も可能な筈よ。それにVOIDもここの動きに気づく頃、迎撃の準備をしなければ」
スメラギは龍鉱をしげしげと眺め、加工の方法をお付きの術者と相談する。
そうしている間、ナサニエルは遠巻きにラヴィアンの横顔を見ていた。
「……詳しすぎますねぇ」
得体の知れない異世界人。それは何も、一方的な評価ではない。ナサニエルもまた、彼女を信用してはいなかった。
交錯するヒトと龍、そして歪虚とリアルブルーの意志。
多くの謎を抱えたまま、リグ・サンガマでの戦いが始まろうとしていた。
●不足するもの
「足りないです! 全然足りないですうう!!」
「あ? 何がだよ」
「イニシャライザーですよ!!」
ばんばん! と机を叩くハンターオフィス職員、イソラに赤い双眸を向けるスメラギ。
続いた言葉に、ハァ……とため息をつく。
「足りねぇって、んな訳ねーだろ。俺様この間沢山作ったろうがよ」
「それがですね。もう殆どないんですよ」
「ハァ!? 何でだよ!!」
「だって、拠点防衛作戦の為に沢山のハンターさん達がリグ・サンガマに向かってるですよ! 在庫なんてあっと言う間に掃けちゃったです!」
――イニシャライザーとは、龍鉱と呼ばれる素材で作られた装備で、とても強い正のマテリアルを帯び、歪虚による汚染から守ってくれるものである。
北狄やリグ・サンガマといった汚染が深い地域で活動する為には必須のもので、ハンターズソサエティが依頼に出発するハンター達に貸し出しを行っている。
ただ、一定時間しか持たないことと使い捨てであるため、とにかく数が必要なのだ。
そこで、ラヴィアンのお付きの術者からイニシャライザーの加工の方法を教わったスメラギが、大量に生成してハンターズソサエティに納品したのであるが……沢山のハンター達が作戦に参加した為、あっと言う間に在庫不足に陥った、と言う訳である。
もう一度ため息をついたスメラギに、ハンターが恐る恐る声をかける。
「スメラギ様。その、イニシャライザーって作るの難しいんですか?」
「んー? なんてーのかなぁ。龍鉱石は元々多くの正マテリアルを含んでるんだが、それだけだと汚染から身を守るほどの能力はねーんだよな」
「じゃあ、その、龍鉱石が元々持ってる正のマテリアルを放出するように加工するってことか……?」
「そーいうこった。黒龍の力と龍鉱石の持つ力は近いんで、俺様が加工する分にはそんなに難しくねーのよ。ま、御柱の力使うからそれなりに体力は使うけどよ。ただ、それよりな……」
「なんです?」
「それを身につけられるように、ペンダントとかブレスレットとかに加工すんのが面倒っつーか、大変でな……」
頭をボリボリと掻くスメラギに、あー……と呟いて、顔を見合わせるハンター達。
オイマト族の族長のように手芸が得意であればさしたる問題にはならないだろうが、この幼い帝には荷が重いかもしれない。
――今まで納品した大量のイニシャライザーは、全て彼がちまちまと慣れない工具を使い針金をくくりつけ、革紐や鎖を通して作成したのかと思うと、ちょっと可愛い……いやいや、哀れにも思えてくる。
「……イソラ。とにかくイニシャライザーが沢山必要なんだな?」
「はい。そうですー。これからのことを考えるとなるべく沢山欲しいのです」
ハンターの問いにこくこくと頷くイソラ。その言葉に、ふむ、とハンターは考え込む。
「そうか。じゃあ、俺達も加工の手伝いをするとしようか」
「そうですね! イニシャライザー自体はスメラギ様にお願いしないといけないかもしれませんが、アクセサリーに加工するとかでしたら私達にも出来ますよね」
「ホントですか!? そうして貰えるとすっごく助かるですよ♪」
ハンターの言葉に嬉しそうに飛び上がるイソラ。ハンター達と彼女は、くるりとスメラギに向き直る。
「そういう訳で、加工、お願いします!」
「あー。はいはい。わーったよ。やるよ。やりゃあいいんだろ」
その小さな身で視線を受け止めて、スメラギは肩を竦めて……。
――拠点防衛作戦が進むの中で、スメラギとハンター達のとっても地味な戦いが始まる。
リプレイ本文
「ハンターの依頼で仕事と似たようなことをやるなんて、ね……」
「ジェシー様のお仕事ってなんですの?」
沢山の龍鉱石を選別しながら、どこか楽しげに言うジェシー=アルカナ(ka5880)。首を傾げるチョココ(ka2449)に、アルバート・P・グリーヴ(ka1310)が代わりに答える。
「ジェシーは宝飾職人よ。とっても腕がいいコなの」
「そうなのか。俺も物作りは得意だが、本職の作業が見られるなんて僥倖だ」
目をキラキラと輝かせるラティナ・スランザール(ka3839)。アルバートはそんな彼をまじまじと見つめる。
「あなたもドワーフね?」
「ああ。混血だけどな」
「そう。でも、いい手をしてる。今日はいい細工物が見られそうで嬉しいわ。ジェシーの細工物の美しさは折り紙つきだし、買い取りたくなりそうだけれど今日は我慢しなくてはね」
「あら、アルバート。早速めぼしい子をスカウトって訳? ……それにしても、あんたが製作側にいるなんて、なんだか妙な感じだわ」
「事実を言っているだけよ。今日の仕事は私の鑑識眼も役立ちそうじゃない?」
「全く。口が上手なのは相変わらずねえ。新作も出来たし、また近いうちに店に寄ってちょうだい」
「そうね。そうさせて貰うわ」
肩を竦めるジェシーに、満足気に微笑むアルバート。
そこに資材を持ってやって来たアシェ-ル(ka2983)が、スメラギ(kz0158)に声をかける。
「スメラギ様。これはどこに置けば宜しいですか?」
「おう。そこに置いといてく……」
そこまで言いかけた彼。ひしっと後ろから抱きつかれて固まる。
「スーちゃん! 元気してたのな?」
「どわあああ!? ちょっ。黒の夢! 急に抱きつくなって言ってんだろうがよ!!」
「おー。何で我輩って分かったのな?」
「こんなことして来るのお前くらいしかいねーよ!!!」
黒の夢(ka0187)の腕の中でじたばたと暴れるスメラギ。
次の瞬間、彼女の大きな金色の瞳からぽろぽろと涙が毀れる。
「……!!? な、何で泣く!!?」
「だ、だってスーちゃんすぐ怒鳴るのな……。暴れるし……」
「お、お前がすぐに抱きつくからだろうがー!?」
更に怒鳴られて、ぶわっと涙を流す黒の夢に、アワアワと慌てるスメラギ。
その様子を、ジェシーとアルバートが射るように見つめる。
「あらー。女の子泣かすなんてスメラギもなかなかやるわねえ」
「でも怒鳴って泣かせるっていうのはどうなのかしらねえ?」
「女の子泣かせちゃダメなんですのよ!」
ちょここにめっ! と叱られて更に慌てるスメラギ。そのテンパりっぷりが哀れに感じたのか、ラティナがまあまあ、と宥める。
「あー。あの。ほら、スメラギは女子に慣れてないんじゃないのかな。いや、俺も人のことは言えないが」
ラティナが知る女子と言えば愛しい幼馴染くらいだが、彼女は女子というにはちょっと……いやいや。
その言葉を聴いていたアシェールは、少し考えた後口を開く。
「スメラギ様は、女の子に慣れてないんですか?」
「えっ? ……な、慣れてるかって言われると……龍尾城にいた頃は、周り男ばっかりだったな……」
「そうですか。この先色々あるでしょうし、慣れておくといいですよ! 大丈夫です! わたくしと黒の夢さんが実験台になりますし! ね? 黒の夢さん?」
「んう。スーちゃんのためなら一肌脱いであげてもいいのな」
「はあああ!? お前ら何言ってんだよ!!」
「ですからスメラギ様、怒鳴っちゃダメです。女の子には優しくしないと、黒の夢さんまた泣いちゃいますよ?」
「ううう。アシェールちゃんー!」
己にひしっと抱きついてめそめそする黒の夢の頭をよしよしと撫でるアシェール。
その様子に、スメラギはうぐっと言葉に詰まる。
仲間達から向けられる目線が痛い。男子達からの目線は生暖かい気がする。
「スメラギは……王だからもっと貴族っぽいかと思ったけど、気さくなんだな……」
「ま、上に立つ人間も色々よねー」
「ところでスー様。職人さんに転職しましたの?」
「そういう訳じゃないと思うけど……。とりあえず時間もないことだし、始めましょうか」
ラティナの呟きに頷くジェシー。キョトン顔のチョココを、アルバートが促し……ハンター達は作業を開始する。
動き出そうとした仲間達に、アルバートはまず紙を差し出した。
「お? 何だこれ」
「分担表よ。今日はこの通りに動いて貰うわ」
スメラギの問いに、有無を言わさぬ微笑を返す彼。
ジェシーとラティナは台座作成。
アシェールと黒の夢は革製品の加工と、一部台座作成。
チョココとアルバートはイニシャライザーの仕分け……そしてスメラギは、当然イニシャライザーの作成となっていた。
「まあ、順当な配置よね」
「ああ、物作りにかけては俺達の真骨頂だ。任せておいてくれ」
請け負うジェシーとラティナに、頷きながらアシェールも続く。
「わたくしは鍛冶も裁縫も出来ますから、どちらでもお役に立てると思います」
「我輩もバターちゃんとの度重なる愛の共同作業で得た裁縫技術が火を噴くのなー!」
「仕分けなら得意ですのよ!!」
えっへんと胸を張る黒の夢とチョココに、アルバートが満足気に頷く。
「休憩時間は私と黒の夢から知らせるから。それまで各員キリキリ働いて頂戴」
「了解!!」
アルバートに敬礼を返す総員。各自、持ち場へ散っていく。
黙々と龍鉱石のマテリアルを活性化させ、イニシャライザーを作っていくスメラギ。
1つ数秒で出来るため、あっという間に石が積みあがっていく。
「……すごい量ですのね」
「沢山のハンター達が使うものだし、これでもすぐ足りなくなるかもしれないわよ」
アルバートの声にガビーンとなるチョココ。
集められた龍鉱石は山のようにあるのに……!
ふと、出来上がったイニシャライザーに目をやって、チョココはあることに気付く。
「ねえねえ、アルバート様。石の色や大きさが結構違うですの」
「ええ。だから、色や似た大きさの石を集めて仕分けるの。その方がアクセサリーにし易いでしょう?」
「そういうことですのね! 分かったですの!」
「ふふ。お願いね」
こくりと頷くチョココに、笑顔を返すアルバート。
2人は用意した箱に、石を分別して入れて行く。
ラティナとジェシーは、金槌で金属を伸ばして形を作り、そこに釘のような道具で、模様を彫っていく。
「ねえ。ラティナ。それってバングルかしら?」
「ああ。今作ってるのは金属製だけど、同じデザインでもう少し太い木製のも作ろうと思ってる」
「へえ……。ああ、ここに石をはめ込むのね? この文様は何かしら」
「これは火の文様だ。本当は全体に入れたいところだが、時間短縮の為に一箇所だけだけどな」
「1箇所っていうのも悪くないわよ。他にも文様あるみたいだけど、これは?」
「それは大地。他に水と風のも作る。探検の時とか、チーム分けの目印になるといいと思ってさ」
「ああ、なるほどね。実用的だし素敵だわ」
ラティナの説明にしきりに頷くジェシー。ラティナもまた、ジェシーの手元をまじまじと見つめる。
「その台座は、ロケットか?」
「ええ。そうよ。この籠みたいな蓋とワンセットね。中に石を入れるようにすれば、入れ替えも楽でしょう?」
「ああ。中から覗く石も綺麗に見えるし、いいデザインだ」
「ありがと。本当は、もっと凝った透かしを入れたいんだけど……今回は時間優先だものね」
「これならシンプルな意匠でもきっと映えるさ。花弁の文様とかどうだ?」
「花……。そうね。いいわね」
ラティナの言葉に何か閃いたのか、金槌をペンに持ち替えるジェシー。
思いついたデザインを紙に書き記して行く。
いつもは独りで作業しているが、こうして誰かと製作するのも悪くない。いい刺激になる。
「ねーねー。ラティナちゃん。これ指輪にしたいんだけど、どうやったら台座にくっつけられるのな?」
名を呼ばれて振り返る彼。黒の夢の手には、ペンダントにするには小さすぎる石がいくつも乗っている。
「これって、元は龍の生命なのな。……我輩達は勝手に持ち出し利用してるのだからせめて、余すことなく使ってあげられたらなって思うのな」
こんなに小さくても、寄せ集めれば十分なマテリアルの力を放出する。
小さな欠片でも、龍の命が宿っている。それが分かったからこそ役立てたいと続けた彼女に、ラティナもまた考え込む。
「そうだな。これだけ小さいと削る訳にもいかないか……。台座はシンプルにして通し穴をつけて、石を爪で留めて揺れるようにくっつけたらどうだ?」
「あー! それなら石の交換も出来るのな! ラティナちゃん頭いいー!!」
「ふふ。黒の夢さん、上手く行きそうで良かったですね」
「うん! 聞いてみてよかったのな!!」
アシェールに嬉しそうな笑みを返す黒の夢。桃色の髪の少女の手元を見て、ジェシーは首を傾げる。
「アシェールちゃんは……ベルトを作ってるのかしら? 綺麗に出来てるわね」
「そうです! 黒の夢さんがバックル作るって仰って……このなめした牛革なら、ベルトに良いかと思ったんです」
「バックル! それも素敵ねえ。それなら、このロケットみたいに石を封入する形もいいし、この指輪みたいに石を下げられるようにしてもいいわね」
「ふおお……! ジェシーちゃんも天才なのな……!」
「んもう。大袈裟ねえ」
感動に打ち震える黒の夢にくすくすと笑うジェシー。
その間も、アシェールが黙々とベルトを量産していく。
三人寄れば文殊の知恵とは良く言ったもので、仲間達がいれば、いくらでも素敵なアイデアが浮かんで来る。
――そんな事を、一体どれだけ続けただろうか。
スメラギの額には、玉のような汗が浮かんでいる。
「だーれだっ♪」
「……だからおま……」
「スメラギ様、怒鳴っちゃダメです」
突然黒の夢に目隠しをされて、叫びかけたスメラギ。アシェールに釘を刺されて、ぐぬぬと黙る。
「皆、お疲れ様。単純作業は漫然と続けていても効率が落ちるだけよ。休憩にしましょ」
「わーい! 休憩ですのー! お腹空いたですのー!」
大喜びのチョココ。アルバートの手には、紅茶と緑茶が入ったポットに、蜂蜜がかかったパンケーキとフルーツが乗っている。
そしてラティナがお香を焚くと、柑橘系のいい香りが漂ってきた。
「あら。爽やかな香りね」
「気分がスッキリするだろ?」
「そうねー。さすがにずっと下向いてたから肩凝ったわ」
首を回しながら席につくジェシー。その隣で目を閉じているアシェールに、チョココが首を傾げる。
「アシェール様、眠いんですの?」
「寝ているわけではないですよ。瞳を閉じるだけでも集中力は回復しやすいのです」
「ふーん。そんなもんかね」
出された紅茶に抵抗なく口をつけるスメラギ。その様子を、黒の夢がにんまりしながら見つめる。
「ねぇ、スーちゃん、そろそろ慣れた?」
「何にだよ?」
「我輩ともーだけど、お城じゃないこの世界に、なのな」
「んー。ここにはまあ、慣れて来たけどよ……。抱きつかれるのは慣れねえな……」
「大丈夫です。スメラギ様。練習あるのみです」
「だから練習必要あんのか?」
「怒鳴らないようにするのに必要です!」
ぐっと握りこぶしを作るアシェールに、でっかい冷や汗を流すスメラギ。
アルバートがくつりと笑って、仲間達を見渡す。
「さ、特製パンケーキでしっかりリフレッシュして頂戴。これが終わったらもう一頑張りしちゃいましょ」
休憩の後も、ハンター達は黙々と作業を続けた。
この作戦が終わっても、使い続けられるものを。
そう願いながら作ったそれは、頑丈で、シンプルでいながらも繊細で上品な品に仕上がり……。
指輪、バックル、簪にバングル、ペンダント……そして、ジェシーとラティナがそれぞれ違うデザインのロケットを作り上げた。
そして全員で加工物の精度を確認し、石を嵌めて一気に完成させ、更に完成品をチェック。仕分けを行い、アルバートの手で納品リストが作られた。
また、アシェールの手によって製品一つ一つに皮製の認識票まで取り付けられ、これで管理はかなり楽になりそうであった。
「手伝ってくれてあんがとさん。助かったぜ。これ、やるよ」
全て作業が終わった後。スメラギはハンター達の手に順番に小さな龍鉱石を乗せた。
キラキラと輝くそれを、チョココはまじまじと見つめる。
「わー。キラキラですの! 貰っていいですの?」
「おう。礼にしちゃあ少ねえけどな」
「いや、有難い。綺麗なもんだな」
作業中、何度も見てはいたが、龍鉱石には何とも言えない輝きと美しさがあって……。
これもマテリアルと、龍の命が篭っているからなのだろうか?
ラティナは石を翳して目を細める。
「折角だし、今日デザインしたロケットの改良版を作ってそれに入れようかしら。透かし彫りを入れたかったけど、時間がなくて断念したのよね」
「あら。当然私の分も作ってくれるのよね?」
「……指定があるなら今のうちよ?」
そのまま商談に入るジェシーとアルバート。
黒の夢は、掌に石を握り締めて、ぱたりと倒れこんだ。
疲れたのもあるが――石の輝きを見る度に、種族で違う寿命の差を考えて哀しくなる。
スメラギや仲間達と共に過ごす時間は、とても心地良い。
でも……これは、いつまでも続く訳ではない。彼女の手を砂のように零れ落ちて行くもので……。
ふと、スメラギの赤い双眸がこちらを心配そうに見ているのに気がついて、首を傾げる。
「……黒の夢」
「んー? どーしたのな?」
「いや、あの別にお前のしたことを怒ってる訳じゃなくてだな。その、どーしていーかわかんねーから大声になっちまうっていうか……攻撃してるつもりはねーんだ。怖がらせたなら悪かった」
「……スーちゃんはエライのな。ちゃんとごめんなさい出来る子なのな!」
「だから子ども扱いすんなって!」
「あら、我輩はこれでもずっと大人の男性として扱ってるのに。解らないならやっぱり汝はまだまだお子様なのなー」
しな垂れかかられ、唇をつんつん、と突かれて狼狽するスメラギ。大きく息を吸い込んだ彼の目の前に、アシェールが指でバッテンマークを作る。
「はい、スメラギ様。怒鳴っちゃダメですよ」
「無理! こんなことされたら俺様心臓破裂する!!」
「慣れればいいんですよ」
「その前に死ぬわ!!」
「あ、そうだ。これ、お守り代わりにして下さいね♪」
「その。何て言うか……大変だな」
ぎゃーぎゃーと騒いでいるスメラギの手に腕輪を通すアシェール。
そんな彼に、ラティナは同情の眼差しを向けて……。
その横で、チョココは暢気にお茶を啜っていた。
こうしてイニシャライザーの生産に従事し、大量に作り出したハンター達。
――これにより、リグ・サンガマへ旅立つハンター達へ安定した供給が行われるようになり、進軍へ少なからず貢献することとなる。
「ジェシー様のお仕事ってなんですの?」
沢山の龍鉱石を選別しながら、どこか楽しげに言うジェシー=アルカナ(ka5880)。首を傾げるチョココ(ka2449)に、アルバート・P・グリーヴ(ka1310)が代わりに答える。
「ジェシーは宝飾職人よ。とっても腕がいいコなの」
「そうなのか。俺も物作りは得意だが、本職の作業が見られるなんて僥倖だ」
目をキラキラと輝かせるラティナ・スランザール(ka3839)。アルバートはそんな彼をまじまじと見つめる。
「あなたもドワーフね?」
「ああ。混血だけどな」
「そう。でも、いい手をしてる。今日はいい細工物が見られそうで嬉しいわ。ジェシーの細工物の美しさは折り紙つきだし、買い取りたくなりそうだけれど今日は我慢しなくてはね」
「あら、アルバート。早速めぼしい子をスカウトって訳? ……それにしても、あんたが製作側にいるなんて、なんだか妙な感じだわ」
「事実を言っているだけよ。今日の仕事は私の鑑識眼も役立ちそうじゃない?」
「全く。口が上手なのは相変わらずねえ。新作も出来たし、また近いうちに店に寄ってちょうだい」
「そうね。そうさせて貰うわ」
肩を竦めるジェシーに、満足気に微笑むアルバート。
そこに資材を持ってやって来たアシェ-ル(ka2983)が、スメラギ(kz0158)に声をかける。
「スメラギ様。これはどこに置けば宜しいですか?」
「おう。そこに置いといてく……」
そこまで言いかけた彼。ひしっと後ろから抱きつかれて固まる。
「スーちゃん! 元気してたのな?」
「どわあああ!? ちょっ。黒の夢! 急に抱きつくなって言ってんだろうがよ!!」
「おー。何で我輩って分かったのな?」
「こんなことして来るのお前くらいしかいねーよ!!!」
黒の夢(ka0187)の腕の中でじたばたと暴れるスメラギ。
次の瞬間、彼女の大きな金色の瞳からぽろぽろと涙が毀れる。
「……!!? な、何で泣く!!?」
「だ、だってスーちゃんすぐ怒鳴るのな……。暴れるし……」
「お、お前がすぐに抱きつくからだろうがー!?」
更に怒鳴られて、ぶわっと涙を流す黒の夢に、アワアワと慌てるスメラギ。
その様子を、ジェシーとアルバートが射るように見つめる。
「あらー。女の子泣かすなんてスメラギもなかなかやるわねえ」
「でも怒鳴って泣かせるっていうのはどうなのかしらねえ?」
「女の子泣かせちゃダメなんですのよ!」
ちょここにめっ! と叱られて更に慌てるスメラギ。そのテンパりっぷりが哀れに感じたのか、ラティナがまあまあ、と宥める。
「あー。あの。ほら、スメラギは女子に慣れてないんじゃないのかな。いや、俺も人のことは言えないが」
ラティナが知る女子と言えば愛しい幼馴染くらいだが、彼女は女子というにはちょっと……いやいや。
その言葉を聴いていたアシェールは、少し考えた後口を開く。
「スメラギ様は、女の子に慣れてないんですか?」
「えっ? ……な、慣れてるかって言われると……龍尾城にいた頃は、周り男ばっかりだったな……」
「そうですか。この先色々あるでしょうし、慣れておくといいですよ! 大丈夫です! わたくしと黒の夢さんが実験台になりますし! ね? 黒の夢さん?」
「んう。スーちゃんのためなら一肌脱いであげてもいいのな」
「はあああ!? お前ら何言ってんだよ!!」
「ですからスメラギ様、怒鳴っちゃダメです。女の子には優しくしないと、黒の夢さんまた泣いちゃいますよ?」
「ううう。アシェールちゃんー!」
己にひしっと抱きついてめそめそする黒の夢の頭をよしよしと撫でるアシェール。
その様子に、スメラギはうぐっと言葉に詰まる。
仲間達から向けられる目線が痛い。男子達からの目線は生暖かい気がする。
「スメラギは……王だからもっと貴族っぽいかと思ったけど、気さくなんだな……」
「ま、上に立つ人間も色々よねー」
「ところでスー様。職人さんに転職しましたの?」
「そういう訳じゃないと思うけど……。とりあえず時間もないことだし、始めましょうか」
ラティナの呟きに頷くジェシー。キョトン顔のチョココを、アルバートが促し……ハンター達は作業を開始する。
動き出そうとした仲間達に、アルバートはまず紙を差し出した。
「お? 何だこれ」
「分担表よ。今日はこの通りに動いて貰うわ」
スメラギの問いに、有無を言わさぬ微笑を返す彼。
ジェシーとラティナは台座作成。
アシェールと黒の夢は革製品の加工と、一部台座作成。
チョココとアルバートはイニシャライザーの仕分け……そしてスメラギは、当然イニシャライザーの作成となっていた。
「まあ、順当な配置よね」
「ああ、物作りにかけては俺達の真骨頂だ。任せておいてくれ」
請け負うジェシーとラティナに、頷きながらアシェールも続く。
「わたくしは鍛冶も裁縫も出来ますから、どちらでもお役に立てると思います」
「我輩もバターちゃんとの度重なる愛の共同作業で得た裁縫技術が火を噴くのなー!」
「仕分けなら得意ですのよ!!」
えっへんと胸を張る黒の夢とチョココに、アルバートが満足気に頷く。
「休憩時間は私と黒の夢から知らせるから。それまで各員キリキリ働いて頂戴」
「了解!!」
アルバートに敬礼を返す総員。各自、持ち場へ散っていく。
黙々と龍鉱石のマテリアルを活性化させ、イニシャライザーを作っていくスメラギ。
1つ数秒で出来るため、あっという間に石が積みあがっていく。
「……すごい量ですのね」
「沢山のハンター達が使うものだし、これでもすぐ足りなくなるかもしれないわよ」
アルバートの声にガビーンとなるチョココ。
集められた龍鉱石は山のようにあるのに……!
ふと、出来上がったイニシャライザーに目をやって、チョココはあることに気付く。
「ねえねえ、アルバート様。石の色や大きさが結構違うですの」
「ええ。だから、色や似た大きさの石を集めて仕分けるの。その方がアクセサリーにし易いでしょう?」
「そういうことですのね! 分かったですの!」
「ふふ。お願いね」
こくりと頷くチョココに、笑顔を返すアルバート。
2人は用意した箱に、石を分別して入れて行く。
ラティナとジェシーは、金槌で金属を伸ばして形を作り、そこに釘のような道具で、模様を彫っていく。
「ねえ。ラティナ。それってバングルかしら?」
「ああ。今作ってるのは金属製だけど、同じデザインでもう少し太い木製のも作ろうと思ってる」
「へえ……。ああ、ここに石をはめ込むのね? この文様は何かしら」
「これは火の文様だ。本当は全体に入れたいところだが、時間短縮の為に一箇所だけだけどな」
「1箇所っていうのも悪くないわよ。他にも文様あるみたいだけど、これは?」
「それは大地。他に水と風のも作る。探検の時とか、チーム分けの目印になるといいと思ってさ」
「ああ、なるほどね。実用的だし素敵だわ」
ラティナの説明にしきりに頷くジェシー。ラティナもまた、ジェシーの手元をまじまじと見つめる。
「その台座は、ロケットか?」
「ええ。そうよ。この籠みたいな蓋とワンセットね。中に石を入れるようにすれば、入れ替えも楽でしょう?」
「ああ。中から覗く石も綺麗に見えるし、いいデザインだ」
「ありがと。本当は、もっと凝った透かしを入れたいんだけど……今回は時間優先だものね」
「これならシンプルな意匠でもきっと映えるさ。花弁の文様とかどうだ?」
「花……。そうね。いいわね」
ラティナの言葉に何か閃いたのか、金槌をペンに持ち替えるジェシー。
思いついたデザインを紙に書き記して行く。
いつもは独りで作業しているが、こうして誰かと製作するのも悪くない。いい刺激になる。
「ねーねー。ラティナちゃん。これ指輪にしたいんだけど、どうやったら台座にくっつけられるのな?」
名を呼ばれて振り返る彼。黒の夢の手には、ペンダントにするには小さすぎる石がいくつも乗っている。
「これって、元は龍の生命なのな。……我輩達は勝手に持ち出し利用してるのだからせめて、余すことなく使ってあげられたらなって思うのな」
こんなに小さくても、寄せ集めれば十分なマテリアルの力を放出する。
小さな欠片でも、龍の命が宿っている。それが分かったからこそ役立てたいと続けた彼女に、ラティナもまた考え込む。
「そうだな。これだけ小さいと削る訳にもいかないか……。台座はシンプルにして通し穴をつけて、石を爪で留めて揺れるようにくっつけたらどうだ?」
「あー! それなら石の交換も出来るのな! ラティナちゃん頭いいー!!」
「ふふ。黒の夢さん、上手く行きそうで良かったですね」
「うん! 聞いてみてよかったのな!!」
アシェールに嬉しそうな笑みを返す黒の夢。桃色の髪の少女の手元を見て、ジェシーは首を傾げる。
「アシェールちゃんは……ベルトを作ってるのかしら? 綺麗に出来てるわね」
「そうです! 黒の夢さんがバックル作るって仰って……このなめした牛革なら、ベルトに良いかと思ったんです」
「バックル! それも素敵ねえ。それなら、このロケットみたいに石を封入する形もいいし、この指輪みたいに石を下げられるようにしてもいいわね」
「ふおお……! ジェシーちゃんも天才なのな……!」
「んもう。大袈裟ねえ」
感動に打ち震える黒の夢にくすくすと笑うジェシー。
その間も、アシェールが黙々とベルトを量産していく。
三人寄れば文殊の知恵とは良く言ったもので、仲間達がいれば、いくらでも素敵なアイデアが浮かんで来る。
――そんな事を、一体どれだけ続けただろうか。
スメラギの額には、玉のような汗が浮かんでいる。
「だーれだっ♪」
「……だからおま……」
「スメラギ様、怒鳴っちゃダメです」
突然黒の夢に目隠しをされて、叫びかけたスメラギ。アシェールに釘を刺されて、ぐぬぬと黙る。
「皆、お疲れ様。単純作業は漫然と続けていても効率が落ちるだけよ。休憩にしましょ」
「わーい! 休憩ですのー! お腹空いたですのー!」
大喜びのチョココ。アルバートの手には、紅茶と緑茶が入ったポットに、蜂蜜がかかったパンケーキとフルーツが乗っている。
そしてラティナがお香を焚くと、柑橘系のいい香りが漂ってきた。
「あら。爽やかな香りね」
「気分がスッキリするだろ?」
「そうねー。さすがにずっと下向いてたから肩凝ったわ」
首を回しながら席につくジェシー。その隣で目を閉じているアシェールに、チョココが首を傾げる。
「アシェール様、眠いんですの?」
「寝ているわけではないですよ。瞳を閉じるだけでも集中力は回復しやすいのです」
「ふーん。そんなもんかね」
出された紅茶に抵抗なく口をつけるスメラギ。その様子を、黒の夢がにんまりしながら見つめる。
「ねぇ、スーちゃん、そろそろ慣れた?」
「何にだよ?」
「我輩ともーだけど、お城じゃないこの世界に、なのな」
「んー。ここにはまあ、慣れて来たけどよ……。抱きつかれるのは慣れねえな……」
「大丈夫です。スメラギ様。練習あるのみです」
「だから練習必要あんのか?」
「怒鳴らないようにするのに必要です!」
ぐっと握りこぶしを作るアシェールに、でっかい冷や汗を流すスメラギ。
アルバートがくつりと笑って、仲間達を見渡す。
「さ、特製パンケーキでしっかりリフレッシュして頂戴。これが終わったらもう一頑張りしちゃいましょ」
休憩の後も、ハンター達は黙々と作業を続けた。
この作戦が終わっても、使い続けられるものを。
そう願いながら作ったそれは、頑丈で、シンプルでいながらも繊細で上品な品に仕上がり……。
指輪、バックル、簪にバングル、ペンダント……そして、ジェシーとラティナがそれぞれ違うデザインのロケットを作り上げた。
そして全員で加工物の精度を確認し、石を嵌めて一気に完成させ、更に完成品をチェック。仕分けを行い、アルバートの手で納品リストが作られた。
また、アシェールの手によって製品一つ一つに皮製の認識票まで取り付けられ、これで管理はかなり楽になりそうであった。
「手伝ってくれてあんがとさん。助かったぜ。これ、やるよ」
全て作業が終わった後。スメラギはハンター達の手に順番に小さな龍鉱石を乗せた。
キラキラと輝くそれを、チョココはまじまじと見つめる。
「わー。キラキラですの! 貰っていいですの?」
「おう。礼にしちゃあ少ねえけどな」
「いや、有難い。綺麗なもんだな」
作業中、何度も見てはいたが、龍鉱石には何とも言えない輝きと美しさがあって……。
これもマテリアルと、龍の命が篭っているからなのだろうか?
ラティナは石を翳して目を細める。
「折角だし、今日デザインしたロケットの改良版を作ってそれに入れようかしら。透かし彫りを入れたかったけど、時間がなくて断念したのよね」
「あら。当然私の分も作ってくれるのよね?」
「……指定があるなら今のうちよ?」
そのまま商談に入るジェシーとアルバート。
黒の夢は、掌に石を握り締めて、ぱたりと倒れこんだ。
疲れたのもあるが――石の輝きを見る度に、種族で違う寿命の差を考えて哀しくなる。
スメラギや仲間達と共に過ごす時間は、とても心地良い。
でも……これは、いつまでも続く訳ではない。彼女の手を砂のように零れ落ちて行くもので……。
ふと、スメラギの赤い双眸がこちらを心配そうに見ているのに気がついて、首を傾げる。
「……黒の夢」
「んー? どーしたのな?」
「いや、あの別にお前のしたことを怒ってる訳じゃなくてだな。その、どーしていーかわかんねーから大声になっちまうっていうか……攻撃してるつもりはねーんだ。怖がらせたなら悪かった」
「……スーちゃんはエライのな。ちゃんとごめんなさい出来る子なのな!」
「だから子ども扱いすんなって!」
「あら、我輩はこれでもずっと大人の男性として扱ってるのに。解らないならやっぱり汝はまだまだお子様なのなー」
しな垂れかかられ、唇をつんつん、と突かれて狼狽するスメラギ。大きく息を吸い込んだ彼の目の前に、アシェールが指でバッテンマークを作る。
「はい、スメラギ様。怒鳴っちゃダメですよ」
「無理! こんなことされたら俺様心臓破裂する!!」
「慣れればいいんですよ」
「その前に死ぬわ!!」
「あ、そうだ。これ、お守り代わりにして下さいね♪」
「その。何て言うか……大変だな」
ぎゃーぎゃーと騒いでいるスメラギの手に腕輪を通すアシェール。
そんな彼に、ラティナは同情の眼差しを向けて……。
その横で、チョココは暢気にお茶を啜っていた。
こうしてイニシャライザーの生産に従事し、大量に作り出したハンター達。
――これにより、リグ・サンガマへ旅立つハンター達へ安定した供給が行われるようになり、進軍へ少なからず貢献することとなる。
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質問卓 黒の夢(ka0187) エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/03/05 21:05:00 |
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【相談卓】内職、始めました。 黒の夢(ka0187) エルフ|26才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/03/07 07:12:10 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/03 08:48:45 |