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　錬金術師組合の一室で、クロウは大荷物を抱えていた。そこに入っているのは魔導機械に取り付ける特殊デバイス……同じ錬金術師組合に所属するハイデマリー・アルムホルムなどが使用しているものと同じだ。但し、中身は違うが。
（……帝都の襲撃もあったし、もう少し錬金術師組合の連中も自衛力って奴を身につけなきゃいけねぇ）
　そう考えていたクロウは自分の様々な研究成果を転用、発展させこの短期間にいくつかの機導術を生み出していた。これを取り付けることでその機導術を一時的にだが使用できるようになる。
　その新たな機導術の一つ。名称をマテリアルチャージャーという。
　強化という意味では既存の機導術の中でもアルケミックパワーが近い。だが、魔導機械でマテリアルを増幅するという過程を経るアルケミックパワーに対し、マテリアルチャージャーではマテリアルを集束し、変換するという形を取っている。その為影響を及ぼすのは物理よりも魔法的な威力だ。
　尤も、強化できる威力は雀の涙ほど。
　クロウとしてはエネルギーキャノンのようにエネルギーを溜めて「バァンッ！」という感じにしたかったので些か残念ではあった。
　だが、代わりに面白い効果が得られた。この機導術を使えば、他の攻撃的な機導術……代表的なものは機導砲だろうか。これらの射程を底上げする効果が見られたのだ。無論、射程を底上げするには多少のチャージ時間が必要にはなる。この辺りが名称の由来となっている。
「それじゃ、行くとするか」
　何事も実戦を経ないと成果は確認できない。その為に、手ごろな依頼を見つけてそれに参加……ついでに参加者の中に機導師がいたらテストを手伝ってもらおうというのだ。
「……」
　この時、物陰からその様子を見ている男がいた。クロウは気付かなかった。自分が監視されていたことに。
　そして、監視者がいずこかにクロウが出かけたことを連絡していたことに。

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　そんなこんなでハンターたちと一緒に現場にやってきたクロウ。敵はスケルトン。先日の大規模作戦の影響で発生した雑魔だろう。一般人にとっては脅威でも、覚醒者にとっては大した相手ではない。
　それ故クロウは考えていた。実験には丁度いいだろうと。
「そう、思ってたんだよ。でもよぉ……」
　顔を強張らせたクロウ。その視線の先に映ったのは、バラバラに砕けた骨が塵と消える姿だった。
「こんなのいるとは聞いてねぇぞ？」
　地面に落ちた剣、おそらくスケルトンが握っていたものだろう。それを踏み砕き、咆哮を上げる敵。
　それはハンターたちにとっては見覚えのある、剣機リンドヴルムの姿だった。ただし、昨今よく見る量産型とは違う。
「そうか、コンテナか。コンテナを乗せる余剰が見当たらないんだ」
　本来リンドヴルムはコンテナに何かしらの荷物を載せて運ぶ、言わば輸送用の歪虚。だが、この歪虚からはその輸送能力が取り払われているようだ。その分小型化している。
「……勘弁してくれよ」
　ぼやきながらクロウはガントレットに手を添え、マテリアルのチャージを始める。
　何故ここに……ハンターたちが歪虚の撃退に出てきたこの場所にピンポイントでこんな敵がいるのか、謎が残る。だが、どちらにせよ敵は排除しなければならない。
　こうして、ハンターとリンドヴルムの思いもよらぬ遭遇戦が開始されることになった。

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「連絡の通り、だね。まぁこれぐらいの役には立ってくれないと困るんだけど」
　戦場のさらに上空に、一人の少年がいた。リンドヴルムに乗っていることから歪虚に連なる者だということが推測される。
　彼は双眼鏡を手に下方の戦闘を眺めている。
「さぁ、そっちもテストだけどこっちもテストなんだ。そう簡単にやられないで下さいよ？」
　そう言うと、少年はニタリと笑みを浮かべた。
「……ねぇ、先輩？」

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「それでは、こちらから仕掛けます」
　Ｈｏｌｌｏｗ(ka4450)はそう言うとカービンを構える。
（剣機相手、とはいえ今回の検証で有効性が確かめられれば戦術の幅が広がるかもしれません。だからこそ……）
「こちらからの援護で出来る限り検証がしやすい状況を……！」
　言葉と共に銃撃。それに伴い各自が動き出す。
「試験相手が新型剣機って、タイミングよすぎでしょう。クロウ誰かに恨まれ……」
　クロウの方を向いた月影 夕姫(ka0102)はそこで言葉を切り……
「……ごめん、心当たりありすぎね。くず鉄的に」
「おい！　そりゃねぇだろ！！」
　クロウの嘆きを背に受け、夕姫はマテリアルチャージャーを使用。ゾンビ頭側の側面へと回り込んでいく。
「じゃあ、さっきの提案よろしくおねがいしますね！」
　同じような動きを取るのはカール・フォルシアン(ka3702)だ。といっても、カールの狙いはバイクの移動力を活かしてさらに回り込み、後方へと向かう事だ。これは剣機の狙いを分散するという目的がある。
　なお、この提案というのはクロウに対する試作スキルのテストに関する提案だ。剣機を相手にしながらテストのことも忘れていないあたりさすがはハンターたちと言わざるを得ない。
「さて、とにかく敵のヘイトを集めていかないと」
　移動しつつ横に剣機のボディを望み、そこへファイアスローワーを使用していく。属性的にも、ゾンビ部分に対するダメージは少なかろうはずはない。加えて、高い移動力で仲間とすぐに距離を取ることが出来ている。剣機の持つ2種類の範囲攻撃に対しても有効な動きだった。
「面白そうなスキルがあるって聞いて来てみたら、面白そうな敵さんまで出てきたな……」
　カールと同じように移動していくのは仙堂　紫苑(ka5953)。後ろに回り込んで剣機の身体を壊していく算段だ。さらに、移動していく紫苑に合わせてクロウが防性強化を使用。守りを固める。
「リンドヴルムだと……？　野良なんているわけが無いだろう。謀られたか？」
　対崎　紋次郎(ka1892)は周囲を軽く警戒しつつも、前衛の動きに合わせデルタレイを使用。ゾンビ頭、加えて両方の翼を目標として攻撃する。
「クロウもまた面白いものを作ったわねー。今度工房にでも遊びに行きたいところだけど……」
　ロベリア・李(ka4206)もチャージを行いつつ皆とは逆、機械頭の方へ動いていく。その間、周辺の索敵を忘れない。当初の目的だった雑魔の残党がいると厄介との考えからだ。だが、とりあえずは他の敵は視界に入らない。
「まずは目の前のこいつをなんとかしないとか」
　そう言いながら銃を構える。
「女を前に行かすのは性分じゃないが、頼みます！
「ありがとうございます。では……行きます！」
　後方では天地 王仁丸(ka6154)が防性強化を使用。それを受けたクレール(ka0586)も動き出した。

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　クレールは自身の技術と機導術を合わせた陽掴飛びにより剣機の懐に入り込む。
「さぁ、私に撃ってこい、剣機！」
　そのまま異様ともいえる武器を振るうと三日月刀のような光が飛び、剣機を切り裂く。月雫だ。
　順調な滑り出し……だが、剣機も黙ってはいない。機械頭がロベリアの攻撃に目もくれず機導砲を放つ。射線にいたのはクレール。そして、少し距離を開けてＨｏｌｌｏｗの姿。目標2人程度であれば射線に入れるのはそう難しくないようだ。
　クレールは武器を突きだす。そこには剣が現出している。太陽というカウンター技。命中させられれば剣機にも効果があっただろう。だがクレールはその剣ごと機導砲の光条に飲み込まれる。触れていない以上、その攻撃には効果が無い。
「……こっちに撃ってきますか」
　後方のＨｏｌｌｏｗも回避しきれない。防御障壁を張って受け止める。クレールは王仁丸の防性強化もあってダメージはかなり抑えられた。だが、Ｈｏｌｌｏｗの方は強かなダメージを被る。
「防御障壁を使ってもこれほどの……危険ですね」
「早速か……一直線上にならないように注意して！」
　大声を張り上げたカール。やはり範囲攻撃には注意が必要だ。
「そうなると、もっとこっちに注意を逸らさないと……！？」
　少しでも敵の狙いを反らそうと考えていたカール。そのカールを不意の痛みが襲う。
　それが、剣により切り裂かれたものだと気付いたのは口から、そして腹部から血を噴き出した時。強力な、リンドヴルム最大の威力を誇る剣の尾による攻撃だ。
「くっ……」
　そのままバイクから落ちたカール。腹部を触るとぬめりとした血の感触。それもかなりの量だ。
「凄い威力ですね……」
注意するように、と告げることもできず、カールの意識は暗転する。敵のヘイトを集めようというカールの目論見は成功していた。だが、成功していたがゆえに最大の攻撃を見舞われたというのは皮肉な話であった。
「やっぱり、接近は危険だな」
　紋次郎は距離を測りつつ、チャージを1回使用。そのままデルタレイを撃ち込む。
「チャージ完了、行くわよ！」
　夕姫はチャージが完了したタイミングで機導砲を撃ち込む。狙いはばっちり。剣機に命中する。
「……ちゃんと、射程は伸びているみたいね」
　通常なら当たらない間合いからの機導砲はキッチリと命中。想定通り射程は伸びている。が、威力の方は……多少上がっている程度。
「チャージ2回……あれだと通常とあまり変わらないみたいね」
　剣機を挟んでその様子を視界にとらえたロベリアはチャージを続行。機械頭を狙って攻撃していく。この時銃の間合いを確保していたため剣の尾にやられない間合いを維持できているのは良かった。
　だが、こちらはそうもいかない。
「近づかないと狙えないからな……」
　紫苑は剣機後方からジェットブーツを使って跳躍。剣機に飛び乗る。
　そして、そこからゾンビ頭の首筋を狙い……
「まず肉を削ぐ」
　言葉通り、肉を削ぎ取るように鋸を振るう。腐肉が千切れ飛ぶ様子を、身じろぎせず紫苑は眺める。
（……思ったより肉が厚い。まぁもう何発か削れば……）
　削りきれば骨が見えるようになる。そうなれば、そこにエレクトリックショックとともに鋸を撃ち込む。さらにジェットブーツを使って蹴り込むことで押し込んで、切断しようというつもりのようだ。
　攻撃を受けた剣機、苦しんだかのように頭を振り毒のブレスを吐く。だが、苦し紛れか。狙いも甘く皆爆心から離れて回避する。
「……動き回られると面倒だな。速く仕事を終わらせ……」
　攻撃を加えようとした紫苑。その身体が宙に浮いた。背後から剣の尾による攻撃だ。尾は紫苑を貫くとそのまま持ち上げ、まるで血振りでもするかのように振るう。紫苑の身体はそのまま地面に叩きつけられる。動きが無い。大きなダメージを負って気を失ったようだ。
　今回の戦いでは剣機の尾に対する警戒が薄く、ハンターたちがダメージを追う要因となっていた。もっとも、首の方はすでに紫苑の攻撃でかなりのダメージを与えられていたようだ。
「よくもやってくれた……次はそうはいかない！」
「こっちも合わせる。攻撃の手を緩めるな」
　クレールは接近し、再度月雫を使用。それに合わせて紋次郎もデルタレイを撃ち込んでいく。さらに、Ｈｏｌｌｏｗも銃撃を繰り返す。ここでゾンビ頭は毒のブレスを吐こうとするもそれだけの力は無く、崩れ落ちる。
「これでまずは一つ、とりあえずは優勢ね」
　いいつつ銃撃を行う夕姫。手を抜いたりはしない。ロベリアも同じく銃撃。ただ、属性的に有効なデルタレイなどと比べるとやや威力は劣るか。
「……こちらもデルタレイに切り替えた方が良さそうですか」
　状況を観察したＨｏｌｌｏｗ。武器をカービンから機杖に持ち替えた。王仁丸もチャージを続けながら攻性強化も忘れない。
「……」
　その表情はどこか悔しそうである。女を前に行かせるのは性分じゃない、と王仁丸はいった。だが、新米である彼にはまだ前線で戦えるほどの実力が伴っていない。少なくとも王仁丸自身はそう思っているようだ。だからこそ、王仁丸は援護に徹する。防性強化を、攻性強化を切らすことなく使用して、少しでも前線の負担を減らそうと考える。
「こっちのチャージが終わるまで……頼む！」
　はやる心に呼応するかのように、手に持つ魔導槍には、徐々にマテリアルが蓄積されていった。
　ここで機械頭からの機導砲。クレールと紋次郎を結ぶ線上を薙ぎ払う。クレールは回避。2度も同じ手は喰わない。だが、射線上の紋次郎は不意を付かれた。
「今度はこっちもか……！」
　ジェットブーツを使って回避……いや、間に合わない。紋次郎は防御に切り替え防御障壁。多少は威力を殺せたが、それでも強い。勢いに押され後方に倒される。が、すぐに立ち上がる。かなりのダメージを受けたが、まだ戦えそうだ。
「ゾンビ頭が無くなった分攻撃も単調になってきたね」
　クレールは再三にわたり月雫。かなりのダメージを与えているはずだが、それでも本体を倒すに至らないのは敵の耐久力の賜物か。
デルタレイの光条が駆け巡り、本体に突き刺さっていく。
「良し、チャージ完了！」
　夕姫は再度機導砲を撃ち込む。狙いは翼。撃ち込まれた機導砲は過たず命中し、翼に穴をあける。
　機械頭側面ではロベリアも予定敷いていたチャージを完了。
「こいつでちょっとは動きが鈍ってくれればいいんだけど……！」
そこにエレクトリックショックを使用。機械部品が多い。効果はかなりあると見え、機導砲を撃ちだそうとした頭が小刻みに震え次の行動に移らない。
「射程向上。威力も十分。スキルは上手くいったみたいね」
　これで多少攻撃頻度は落ちるか。しかし、敵の攻撃はそれだけではない。体を躱すと尤も近いクレールに向かい剣の尾が振り下ろされる。
　咄嗟に使われた防御障壁を貫き、尾がクレールに突き刺さる。だが……
「狙い通り……喰らえ！」
　初動で使用した剣が尾に触れ、そのまま弾かれる。太陽だ。クレールの狙い通り剣機の身体は麻痺したかのように動きが抑制されている。
「どう、だ……」
　しかし、クレールの方もただでは済まなかった。防御力の高さが幸いし、倒れるには至らないものの、片膝を付く。同じ攻撃をあと1発もらえればもう動けないだろう。

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　震える体で、剣機は大きく後方にジャンプする。飛行して逃げよう、というわけではない。この状態では攻撃を躱すことも、まともな攻撃も出来ない。そこでまずは距離を取ろうというのだ。これにはすでに翼がボロボロで飛行し逃げることができないという側面もあったかもしれないが。
　移動した剣機に追従するハンターたち。そのハンターたちに機導砲を発射しようとする剣機。だが、着地の段階で足がガクリと折れ、機動砲がそれる。
　そこに、Ｈｏｌｌｏｗと紋次郎のデルタレイが突き刺さる。
「2発目は撃たせないわ！」
　再度機導砲を発射しようとした剣機の横合いから、ロベリアがエレクトリックショックを使用。チャージによる射程延長が功を奏し命中、麻痺による影響で発射の阻止に成功した。だが、薙ぎ払うように振るわれた剣の尾に斬り飛ばされる。
「防御障壁を……届きませんか」
　咄嗟に防御障壁を使おうとしたＨｏｌｌｏｗ。チャージを行っていたものの、このスキルでは防御スキルに影響を及ぼさない。障壁を届かせることはできなかった。
　短い悲鳴の後地面を転がったロベリア。
「……レポートは、病院で書くことに……なりそうね……」
　その言葉を最後に、ロベリアは気を失った。そこに止めを刺そうと剣機が尾を振り下ろす。だが、陽掴飛びを使い割って入ったクレール。
「……これが最後の、太陽……！」
　先程と同じようにカウンターで気味の攻撃。自身の身と引き換えに剣機の動きを止めた。
「待たせた！」
　そこに王仁丸の声が響き、走り込む。そして、勢いそのまま機導剣を振るう。
「喰らえぇっ！！」
　王仁丸の声とともに振るわれた機導剣。それは通常より大型となり剣機を切り裂く。その出力は、普段王仁丸が使う機導剣の3倍程度に相当すると思われ、剣機正面に大きな傷を残す。
「フルチャージまでいけば、まずまずってところか」
　苦しむ素振りを見せる剣機。
「この機を逃すわけにはいきません。押し切りましょう」
　Ｈｏｌｌｏｗはそう言ってデルタレイを撃ち込む。紋次郎もデルタレイを、夕姫も機導砲を撃ち込み攻め立てる。
ここまでなんとか耐えてきた剣機だったが、やはりこれまでのダメージが大きかったのだろう。これで倒れ、ゾンビ部分が崩れ去る。機械部分も小爆発を起こす。周囲を巻き込むような類ではない。だが、何か痕跡が残されるようなことはない。そういう爆発だった。
「……考え様によっては、実戦検証が新型剣機ってこの上ない実証になるわね」
「特に俺みたいな新米が使うとなれば、な」
　疲れを見せる夕姫に王仁丸が言った。
　こうして、剣機を討伐したハンターたち。被害は少なくなかったものの、死者が出ることは無く、またクロウが依頼していたスキルの試験を行うことも出来た。結果は大成功と言って過言ではない。とはいえ、怪我人もいる。ハンターたちは速やかに怪我人を抱え帰路についた。
「チャージ中に攻撃が出来るのはいいわね」
「あぁ。それに持ち替えに関しては影響がなさそうだ。その点もいい」
　帰路の最中、夕姫と紋次郎がスキルに関する意見を述べる。その間、Ｈｏｌｌｏｗと王仁丸は周辺の警戒を欠かさない。今は気を失っている4人もおそらく同様の違和感を持っていただろう。
　すなわち、何故この場に都合よく剣機が現れ襲ってきたのか。ということだ。
「偽の依頼に釣られたのか、内通者がいるのか……」
　とは紋次郎の言葉だ。
（戻ったら内部調査を行う必要があるのかもしれないな）
　そうクロウは考えたのだった。

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「……まぁこんなものか」
　帰路についたハンターたちを上空から見ていた少年は呟いた。攻撃するつもりは無い。こちらもあくまでテストだったのだから。
「でも、これで気付かれたかもなぁ。先輩は鈍いようで鋭いときもあるし……一応、引き上げるように進言はしとくかな」
　そう言うと、少年を背に乗せたリンドヴルムも帰路についた。
　クロウと錬金術師組合に関わる戦いは、まだ始まったばかりだった。