ゲスト
(ka0000)
【龍鉱】龍鉱石を探しに森、山沿、洞窟へ!
マスター:瑞木雫

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/05 22:00
- 完成日
- 2016/03/19 22:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
―――龍鉱石とは。北方王国リグ・サンガマ西部、カム・ラディ遺跡周辺地域で採掘できる『死んだ龍が石となったマテリアル鉱石』のことである。
その龍鉱石が秘めている力は、素晴らしい優れものだった。
転移門の強化、それからカム・ラディ遺跡のバリア機能の復活の鍵となる他に―――、
今迄ならばじっくりと浄化ルートを作らなければならなかった汚染領域で、なんと龍鉱石の欠片さえ身に着ければ活動できるというものなのだ。
『イニシャライザー』と呼ぶそれは、今回、探索を引き受けたハンター達にもネックレス状にして配られる。
なので、これから向かって貰う領域は汚染されているが、安心して活動することができるだろう。
そして、出来るだけ多く龍鉱石を回収してほしい。
なぜなら龍鉱石は『使い捨て』のもの。
安全域を拡大し人類が前進する為には出来るだけ多く……いや、膨大な量を掻き集める必要があるからだった。
●いざ!
「よし、分かってるな皆。龍鉱石をとにかく沢山集める! それが今回の目的だ!」
男が言うと、総勢100名は居るハンター達は『応』と答えた。とにかく龍鉱石を集めて集めて集めまくる! それが今回の我らの最大の使命!
そうして100名は早速、龍鉱石を採掘できる『水晶の森』、『山沿い』、『洞窟』へと分かれ、捜索することとなったのだった!
●水晶の森
草木や岩がクリスタルのように輝いて、陽を浴びれば眩く煌めきわたる。幻想的な美しい森の景観は見ているだけで、心が癒されるかもしれない。その刹那、ギアン・アナスタージ(kz0165)が見つけたのは、龍の彫像のような石だった。
「……これも龍鉱石、か……?」
龍鉱石を食い入るように、ギアンは見つめていた。クリスタルのような結晶の龍鉱石なら、先程から見掛けていたが。ギアンにとって龍っぽい形を残した龍鉱石を見るのは初めてだった。後になって知ったが、龍鉱石は龍の死体が石化したもの……この状態で発見される事もあるらしい。
「……ひとまず、運ぶか」
今回の探索は多くの龍鉱石を持ち帰る為に団体で訪れており、大きな荷台も運んできている。なので手がいっぱいになっても、集めた龍鉱石の警護班に一旦預ける事が出来るのだ。
そうしてギアンはこの龍鉱石を警護班に一旦預け、探索を再開する。
●山沿い
―――龍鉱石は水晶の森以外にも、採掘することができる。
例えば山沿い。
なんなら道端に落ちている場合もある位なのだが、もし削らなければ持ち運べないようならば削ってしまっても問題無い。
確かに特別大きいものであるならばそのままである方がイニシャライザー化させた時に周辺の汚染を無効化させる効力を期待できる為、壊さない方がいいのだが――
そうでなければ気にしなくて大丈夫である。
因みにカム・ラディ遺跡の周辺には龍鉱石があるだけではない―――。
ジャンルカ・アルベローニ(kz0164)は煙草を吹かしていると、何かの気配を察知して目の色が変わった。
そしてにぃっと笑う。
「良かった。暴れ足りねェって思ってたんだ」
獲物を見付けたようなジャンルカの鋭い眼光が狙っていた先には、リザードマンが徘徊していた。カム・ラディ遺跡周辺には敵がこのように歩き回っている。採掘が目的であったとしても戦闘も避けては通れないかもしれない―――。
どうやら強敵は今の所発見されていないようだが、敵と遭遇する可能性はある事を念頭に入れるといいだろう。
●洞窟
出入り口から光が射すだけで暗いが、奥に進む度に美しく発光する青が際立ってくる。
闇を照らす水晶――
そんな水晶に紛れ、龍鉱石もちらほらと散らばっているようだった。
此処は昔、龍の住処だったのだろうか。
それは分からないが、採掘には悪くない場所であるようだ。
――ただ。
「くそっ、なんなんだよ!」
ヴァレーリオ(kz0139)は蝙蝠雑魔に追いかけ回されていた。
どうやら今は蝙蝠雑魔の巣窟にされてしまっているらしい。
払いのけるように逃げ回っていたが、
「うわっ!」
盛大にこけてからは総攻撃を喰らっていた。
―――龍鉱石とは。北方王国リグ・サンガマ西部、カム・ラディ遺跡周辺地域で採掘できる『死んだ龍が石となったマテリアル鉱石』のことである。
その龍鉱石が秘めている力は、素晴らしい優れものだった。
転移門の強化、それからカム・ラディ遺跡のバリア機能の復活の鍵となる他に―――、
今迄ならばじっくりと浄化ルートを作らなければならなかった汚染領域で、なんと龍鉱石の欠片さえ身に着ければ活動できるというものなのだ。
『イニシャライザー』と呼ぶそれは、今回、探索を引き受けたハンター達にもネックレス状にして配られる。
なので、これから向かって貰う領域は汚染されているが、安心して活動することができるだろう。
そして、出来るだけ多く龍鉱石を回収してほしい。
なぜなら龍鉱石は『使い捨て』のもの。
安全域を拡大し人類が前進する為には出来るだけ多く……いや、膨大な量を掻き集める必要があるからだった。
●いざ!
「よし、分かってるな皆。龍鉱石をとにかく沢山集める! それが今回の目的だ!」
男が言うと、総勢100名は居るハンター達は『応』と答えた。とにかく龍鉱石を集めて集めて集めまくる! それが今回の我らの最大の使命!
そうして100名は早速、龍鉱石を採掘できる『水晶の森』、『山沿い』、『洞窟』へと分かれ、捜索することとなったのだった!
●水晶の森
草木や岩がクリスタルのように輝いて、陽を浴びれば眩く煌めきわたる。幻想的な美しい森の景観は見ているだけで、心が癒されるかもしれない。その刹那、ギアン・アナスタージ(kz0165)が見つけたのは、龍の彫像のような石だった。
「……これも龍鉱石、か……?」
龍鉱石を食い入るように、ギアンは見つめていた。クリスタルのような結晶の龍鉱石なら、先程から見掛けていたが。ギアンにとって龍っぽい形を残した龍鉱石を見るのは初めてだった。後になって知ったが、龍鉱石は龍の死体が石化したもの……この状態で発見される事もあるらしい。
「……ひとまず、運ぶか」
今回の探索は多くの龍鉱石を持ち帰る為に団体で訪れており、大きな荷台も運んできている。なので手がいっぱいになっても、集めた龍鉱石の警護班に一旦預ける事が出来るのだ。
そうしてギアンはこの龍鉱石を警護班に一旦預け、探索を再開する。
●山沿い
―――龍鉱石は水晶の森以外にも、採掘することができる。
例えば山沿い。
なんなら道端に落ちている場合もある位なのだが、もし削らなければ持ち運べないようならば削ってしまっても問題無い。
確かに特別大きいものであるならばそのままである方がイニシャライザー化させた時に周辺の汚染を無効化させる効力を期待できる為、壊さない方がいいのだが――
そうでなければ気にしなくて大丈夫である。
因みにカム・ラディ遺跡の周辺には龍鉱石があるだけではない―――。
ジャンルカ・アルベローニ(kz0164)は煙草を吹かしていると、何かの気配を察知して目の色が変わった。
そしてにぃっと笑う。
「良かった。暴れ足りねェって思ってたんだ」
獲物を見付けたようなジャンルカの鋭い眼光が狙っていた先には、リザードマンが徘徊していた。カム・ラディ遺跡周辺には敵がこのように歩き回っている。採掘が目的であったとしても戦闘も避けては通れないかもしれない―――。
どうやら強敵は今の所発見されていないようだが、敵と遭遇する可能性はある事を念頭に入れるといいだろう。
●洞窟
出入り口から光が射すだけで暗いが、奥に進む度に美しく発光する青が際立ってくる。
闇を照らす水晶――
そんな水晶に紛れ、龍鉱石もちらほらと散らばっているようだった。
此処は昔、龍の住処だったのだろうか。
それは分からないが、採掘には悪くない場所であるようだ。
――ただ。
「くそっ、なんなんだよ!」
ヴァレーリオ(kz0139)は蝙蝠雑魔に追いかけ回されていた。
どうやら今は蝙蝠雑魔の巣窟にされてしまっているらしい。
払いのけるように逃げ回っていたが、
「うわっ!」
盛大にこけてからは総攻撃を喰らっていた。
リプレイ本文
●龍鉱石を入手せよ!
――龍鉱石を見つけまくり回収しまくる!
此度の依頼の最重要にして最大の目的であるそれを胸に、ザレム・アズール(ka0878)は水晶の森を真っすぐ進んだ。
森は幻想的で壮麗である。だがその景観には今は目もくれない。美しい光景は採取の後に楽しめばいいと、双眼鏡とLEDライトを手にヤル気満々な様子で突き進んで、龍鉱石を捜索する。
その頃、不動シオン(ka5395)も水晶の森へと足を踏み入れていた。
(さて、どれほどの宝の山が手に入るのやら?)
カム・ラディ遺跡周辺地域で採掘出来るという『死んだ龍が石となったマテリアル鉱石』――冒険心半分で依頼に参加していたシオンは密かに心躍りつつ、それを探していたのだが………
シオンの目の前に現れたのは龍鉱石ではなく、リザードマンの集団だった。
「……よりにもよって貴様らが現れてくれたか」
事前にこの周辺にはリザードマンがよく徘徊しているとは聞いていたものの、御呼びではない相手の出現に溜息を漏らす。しかし血に飢えた狼の如き闘争心を剥き出しにさせた瞳の赤が鋭く発光し、紫焔を纏った。
「構わん、ついでに貴様らの首も手土産にしてやる!」
闘争心を剥き出しにさせつつリザードマンの懐に一気に飛び込むと、手の刀を渾身の力で振り下ろす!
今は龍鉱石の回収が最優先。戦闘は短時間でケリがつくように全力で挑むと、あっという間に集団を蹴散らし、決着がつくだろう。
「よし……これで暫くは収集に専念できそうだ」
シオンは呟くと龍鉱石の探索を再開した。大中小……大きさは問わず、発見次第に回収していこうという心持ちだ。
ひたすら懸命に集めていく――
ザレムも、人より秀でた鋭敏視覚と幸運を頼りに龍鉱石を捜索。
「見つけた」
まるでクリスタルの様で、形は様々であるけれど強い力を秘めるマテリアル鉱石――採掘したそれを手にしながら、ザレムはそろそろ警護班に龍鉱石を預けようかと考えていた。
効率がいいようにと用意したネコ車には既に龍鉱石が沢山積まれていたのだ。
(龍鉱石があれば汚染地域の「中」からも浄化の拠点とか作れるもんな……それは人類にとって大きな前進。だから時間の許す限り探し続けるぞ!)
ザレムは心の中で強く自分を奮い立たせ、熱心に取り組む。龍鉱石の力がどうしても必要な、人類の為に――!
●洞窟の川を渡った先
折角探索するのだ。龍鉱石を沢山見つけて回収したいと思う柊 真司(ka0705)の隣で、リーラ・ウルズアイ(ka4343)は飄々と微笑む。
「なんか面白そうだから真司に着いていくわ~」
――と言う訳で、真司とリーラは早速洞窟を進んで行くと、輝きを放つ水辺を発見。水は美しい青の色を帯び、発光している。この先にはどうやら誰も向かっていないらしい。
ならばまだ未回収の龍鉱石が存るかもしれないと、真司は考える。
「行くぞ」
「この向こうに? まあいいけど~」
リーラが魔法を掛けると、二人は水面の上を歩いていけるようになった。
幻想的な川の向こう――未だ誰も手を付ける事が出来なかった場所を探索する為、渡っていく。
そうして真司とリーラが川を渡り辿り着いた先は、寂然とした洞窟の奥部。闇の中に浮かぶ鉱石の輝きが美しい、壮麗な景観で。
直感を頼りに早速採掘に励む真司と、そんな彼をただ眺めているリーラ。
「まったく少しくらい手伝ってくれてもいいじゃねぇか」
「別にいいでしょ、私は面白そうだから着いて来ただけなんだから~」
リーラは探す気は無いという雰囲気を漂わしながら、持ってきた酒を飲み始める。そもそも実は、鉱石の探索には興味が無かったのだ。なので、たとえ文句を言われても気にしない心持ちなのである。
「しょうがねぇな……」
真司はこうなったら黙々と実質一人、探索を行うしかないと思っていたが――
しかし思わぬ形でリーラはゆっくりする事が出来なくなってしまった。
「ちょっと~、せっかく気分よく飲んでるんだから邪魔しないでよ」
洞窟を巣窟にしていた蝙蝠雑魔達が襲い掛かってくる為、リーラが魔力を込めた水球を飛ばして次々と迎撃していく。
真司も白銀の銃身から雪の弾丸を撃って援護。そうして二人であっという間に蝙蝠雑魔達を片付けた。
「まだ敵は潜んでいるだろうな、注意していこうぜ。………ん?」
その時、真司はトンネルのような抜け穴を発見した。美しく光る鉱石の道。その中を進んでいくと、最奥の行き止まりには――龍鉱石が沢山埋もれていた。
「これ全部持って帰るの?」
「当然だろ」
真司はリーラに即答すると埋もれていた龍鉱石を隈なく回収した。そうして、持参した鞄がいっぱいに膨れ上がる程、詰め込んでいく。
●姉妹のようなお友達
紅媛=アルザード(ka6122)は、不安げな顔をしていた。と言うのは、早速依頼を受けてはみたものの、少し心細かったのだ。紅媛は東方から訪れたばかりで、此処には知り合いが居ないのである。
しかし、そんな折に――、
「1人ならあたしと一緒にどー?」
声を掛けたのが、アリア(ka2394)だった。
「あたしはアリア。こっちはシエロ。よろしくね」
肩に留まる海鳥の友達・シエロの喉元を撫でつつ微笑むアリアは、陽気で明るい少女。初対面の筈だけれど、紅媛はアリアの雰囲気に癒されて、とても落ち着いた。
「私は紅媛だ。よろしくな♪」
口調も敬語ではなく、自然と砕けた口調で。気付くと、いつの間にかすっかり仲良くなっていたことだろう。
――そんな二人が探索した先は、水晶の森。
「うわあ……綺麗! きゃは♪」
キラキラ輝く水晶の世界を、アリアはくるくると回る。見るもの聞くもの珍しいもの……なんでも興味津々で、走って行ってしまうのを、紅媛は一生懸命追いかけた。
「そんなに楽しいのか?」
紅媛が声を掛けると、アリアは「うんっ」と花を咲かせるように笑った。
じっとしているよりも、何でも見て聞いて触って見たい――
「その方が楽しいよ♪」
アリアの眩しい無邪気さに、紅媛もついつい微笑みを浮かべながら。
目利きと運を頼りに突き進むアリアと、迷わないように来た道を記憶する紅媛。
数々の美的な景観と巡り逢っていく。
きっと宝物の様に美しく素晴らしい、未知なるものと出逢う好奇心を刺激されて楽しいと心躍る。
「そろそろお昼にしよう」
紅媛は作って来たお弁当を、アリアにも渡した。中身はおにぎりである。
「ありがとう! 具はなにかな~♪」
わくわくしながらひとくち。
「あっ、ハンバーグ!」
「どうだ?」
「美味しい!」
「……そうか、良かった」
美味しそうに頬張るアリアを眺めつつ、紅媛は目を細めて。
(なんだか妹ができたみたいだ)
紅媛は親しみを込めて、そう思う。
「声を掛けてくれてありがとな。知り合いも居ないし心細かったから……アリアが声を掛けてくれた時、とても落ち着いたんだ」
紅媛がぽつりとお礼を零すと、アリアはにっこりと笑った。
おにぎりを食べ終わった後もきっと、どきどきわくわくするような冒険を二人で一緒に楽しむのだろう――。
●大活躍の警護班
収拾した大量の龍鉱石の警護を任されている班。エルバッハ・リオン(ka2434)やアルスレーテ・フュラー(ka6148)が属する警護班の活躍はめざましいものだった。
「龍鉱石の採掘ですか。ここまで労力をかける以上は、たくさん採掘できるといいのですが。まあ、私は警護の方を頑張りましょうか」
エルバッハは装備の兜の位置を整えながら呟いた。アルスレーテも、ナイフで切り分けたパンにツナを挟んだものを食べながら、探索に向かう仲間を見送る。
「あちこち巡って探索ってのはめんどいからね。みんな、探索は任せるわ」
運動不足解消のついでに参加したが、常に動き回らなければならない探索班に就くのは億劫だったようで、警護班に就いた様子。
この周辺はリザードマンがよく目撃されているような地域だ。それゆえ、大型荷台に龍鉱石を大量に乗せている分かなり目立ってしまうのは仕方無いらしく、幾度となくリザードマンが頻繁に姿を表していた。
――しかし。
『!?』
徘徊していた集団の先頭に居たリザードマンは、驚くような顔をした。
アルスレーテが空になったツナ缶を勢いよくぶつけたのだ。
「もう。お昼のタイミングで来ないで欲しいわー」
彼女が呟いているその隙に、エルバッハはリザードマンの集団付近にスリープクラウドを出現させる。
「警護を任されている以上、此処を通しません」
胸元には赤薔薇の紋様が刻まれ、そこから棘の模様が躰を巻きつくように浮かび上がっていた。
凍える冷氷の矢、鋭い風の魔法で――
エルバッハの圧倒的な戦力で迎撃し、リザードマンを一切近寄せずに一掃していく。
アルスレーテも金銀の粒が煌めく北斗七星が描かれた扇を棍のような形状にし、駆けつけ、そのまま大きく力を溜め、抉るような突きを放って穿った。
『――!』
リザードマンは手も足も出ず、次々と倒れていく。そんな鮮やかな撃退ぶりに、彼女達は警護班の仲間から拍手が送られていた。
「この周辺のリザードマンは大したことありませんね」
エルバッハが一息つきつつ、
「まぁ、ちょっとは良い運動になったわね」
アルスレーテが地面に転がっているツナ缶を回収。投げたごみはちゃんと拾うのである。
こうして皆が集めた龍鉱石は一度も危機に陥る事無く、鉄壁の守備で守られているのだった――。
●山沿いの龍鉱石
黒曜 葵璃瑚(ka3506)は採掘に自信があった。
「石集めですか! 部族での日々が懐かしいです……! 張り切って探しますよーっ!」
何故なら故郷ではよく武器や祭具の為に黒曜石を探す事が多く、慣れているのである。わくわくしている葵璃瑚は山沿いをバイクで走り、出来るだけ大きな鉱石を捜すと、その直感は冴えわたる。
「これは……!」
岩に張り付く大サイズの龍鉱石を発見! それになんと、付近にも龍鉱石が沢山!
どうやら穴場を発見したようだ。
早速葵璃瑚は張り切って、採取を始めた。クォークリオ族の誇りと共に託された斧で付近の岩を砕く。
そうしてこの付近にある龍鉱石を全て回収すると、バイクにロープで繋げていた。手で持てる量は限られている――一度に多く持ち運べるようにと考えたという訳だ。
しかしそんな折に、敵と遭遇。
「……っ!!」
――リザードマンは集団だった。葵璃瑚を取り囲み、襲い掛かろうとする。
だが、それを阻止するはレイオス・アクアウォーカー(ka1990)の弾丸。
レイオスは駆け寄りながら左右の手に刀を持ち、リザードマンの攻撃を受け止め反撃を行った後、前面の敵を薙ぎ払う。
「今の内に行くんだ。俺の通って来た道ならリザードマンを片付けてきたし、暫く安全だと思うぜ!」
葵璃瑚はパワフルで力任せにリザードマンを斧で叩き込んだ後、こくりと頷く。
「あっ、ありがとうございます……!」
葵璃瑚がバイクに乗り、お礼を言って恩に着ると、レイオスは頼もしい笑みを返した。
龍鉱石を引きずりながら去っていく葵璃瑚を追わせないように、レイオスは立ちはだかり、刃先をリザードマンに向けて。
「お前達の相手は俺だ」
レイオスの力はリザードマン等相手ではなく、瞬く間に撃滅していく。
その強さを恐れるリザードマン達――
「――待て!」
そうして逃走を図るリザードマン達を追い掛けていった先で、レイオスが見た物は――。
「……!!」
凛々しき姿を封じ込めたような、手で持ち運べる位の龍の彫像――
「まさかお宝のありかを案内してくれるなんてな、トカゲ野郎!」
レイオスは偶然にも自分を此処まで連れてやって来たリザードマンにある意味感謝しつつ、力の限り猛威を振るった。
必ず人類の役に立つ強き力をもたらしてくれる龍鉱石を持ち帰る為に――!
●洞窟の調査
「洞窟なら私にとっては故郷も同じだ。元々あった地質と、そこから結晶化した状態から構造を推測してみよう。はるか昔、この洞窟がどういう風に形作られたのかを、な」
バルドゥル(ka5417)が呟くと、同行するティリル(ka5672)が頷いた。
「洞窟なら龍族の住居があるかもしれません。そこさえ見つければ亡骸が見つかるやも。 小さな鉱石は後回しにして探索を優先しましょう」
バルドゥルとティリルが探索しているのは洞窟。その昔龍の住処だったのかもしれないと思われる、とても広くとても深い洞窟だ。
最深に進む度闇が深まるが、同時に青く光る鉱石の蛍光が強くなっていく。
――この洞窟は一体、どうやって出来たものなのだろうか。
溶食作用、地下水脈の流れによる削磨作用、地下水脈の枯渇による出現、風食作用、火山作用、地滑りなどの裂開作用……
そういった自然の力のものなのか。
或いは、龍を信仰する人々の手か、龍族の業か。
バルドゥルは洞窟の構造をじっくり観察しながら考察して、遥か昔に生きた龍に想いを馳せる。
ティリルは闇雲に探すのではなく龍が居た場所を予測しつつ、洞窟を吹き抜けていく風の音が聴こえて予感した。
前方には陽の光が射しこんでいるのが窺え、天井に穴が空いているのをティリルは見つめる。
「もしかしたらこの穴は、龍族が出入りしていたものかもしれません」
「なるほど……ならばこの近くで見つけられるかもしれないな」
――そうして更に進んでいくならば……、
遂に、見つけた。
最深部の空洞に欠片となって無数に散らばり、埋まっている龍鉱石を。
「見つけましたね、龍鉱石を」
それは美しい輝きを放つクリスタルのようだが、龍の原型も垣間見えるような石だった。
「ああ。欠片となってしまっていたのは残念だが……」
特別大きければ使える用途は広がるらしいが、龍鉱石は砕けていても問題なく秘めた力を使用する事が出来る。
なので二人は協力しながら、この欠片を全て回収する事にした。
「聖導士とはいえ、ドワーフだ。そこそこの力もある。スコップでの力仕事くらいはやらせてもらおう」
バルドゥルが岩を砕き、採掘する。そして採れた石からは、ティリルが龍鉱石を回収した。
此処に居た龍が過去にどう生きてきたか――それは分からないが、今、龍の力が必要だから。
●ドタバタ!洞窟採掘
「龍鉱石か、実に面白い」
「にいさ! 発掘だべさ! オラ頑張るべさ!」
帳 金哉(ka5666)と凰牙(ka5701)は洞窟を探索していた。
此処が龍の巣穴なのだとしたら奥の方がより大きいものが取れるだろう――その金哉は予測は当たり、早速龍鉱石を発見した。
「流石にいさだべ!」
金哉を兄貴分として慕っている凰牙は心から感心しつつ、自分も、と張り切る。
「にいさ! 見ててだべ! オラ頑張って集めるべさ!」
勇猛果敢な戦士のオーラを放つ凰牙。
「おい凰、ハメを外すなよ。あまり張り切って粉に――」
と、金哉が声を掛けようとするも既に遅かったようで……
ドゴォォォン!
力強く岩を砕き、洞窟内に凄まじい音を響かせ、煙が舞った。
金哉は驚いて目を丸くするが――
そんな煙の中から、凰牙が笑顔で出てくる。
「にいさ! 見るだべさ! オラこんなに取っただよ!」
両手にはいっぱいの龍鉱石を抱いている。
どうやら結果はオーライだったらしい。金哉はこれに思わず、微笑みながら。
「おお、なかなかようけ採れたではないか。流石我が弟分じゃ」
金哉に褒められて破顔する凰牙。
「そっちどうー? 何か凄い音がしてたけど……。あ、凄い! こんなに!」
金哉と凰牙に声を掛けたのは、同じ探索班の央崎 枢(ka5153)。
凰牙が抱えている龍鉱石の量を見て、驚いた。
「俺も頑張るよ」
と、枢は探索を再開しようとその場から一旦離れて……
すると、何やら蝙蝠雑魔が飛び交う光景を発見した。
よく見て見ると――
「まさか、人が……!」
人が倒れている。枢は大変だ、と太陽の力を秘めた魔剣を構えた。
踏み込んで真上から回転し、蝙蝠雑魔を振り払う風のように夜闇を切り裂く赤き光の軌道――。
切り裂かれた蝙蝠雑魔は消滅。
周りに居た蝙蝠雑魔達は一斉に逃げるように飛んでいく。
「大丈夫か?」
「……っ」
倒れていた人物は息をしていた。
その時、「何かあったのか?」と凰牙が駆けつけ、枢から事情を聴くと安堵する。
「無事で良かったな。俺は凰牙ってんだ、よろしくだ!」
「ヴァ……ヴァ―レリオだ」
挨拶をされたので挨拶を返す倒れている人。
するとその名を聴いた刹那、枢はある人物を想い出す。
「ヴァレーリオさんってたしか……姉さんがアイドル活動した時のマネージャーさんだったっけ?」
男は顔が青褪めた。
(うわ、もしかしてすげえ恥ずかしい所見られちまってねえかこれ……!?)
初対面ながらも遠からずな枢との出会いがこんな形になるなんて、と男は羞恥心で精神的に瀕死になるが、枢は気付いていない。
「なんじゃ、騒がしかったのう」
気になって様子を見に来る金哉。
その手には――
「にいさ!?」
「おぉ……!」
凰牙と枢と男は驚いた。金哉は両手で持つのがやっとな大きな龍鉱石を抱えている。
流石だ、格好良い、と凰牙は目を輝かせ、熱い賛辞を贈っていた。
金哉は、実はというと、『兄は常に弟の前を行かねばならぬ』と些か本気になって真剣に探索していたのだと言う事は包み隠しつつ……
石となった龍に、密かに想いを馳せていた。
(――龍は強く、死後もこうして人の役に立つ、……か)
金哉は龍鉱石に視線を落とす。青き光は派手でこそ無いが、遥かなる時を超えても尚消えぬ想いがそこにあるかのような、芯の力強さを感じる。
「……主は何を想い生き、死んだのかの」
金哉は誰に聞かせるという訳でもなく、死して石となった龍の欠片にそっと問うていた。
●andante
(綺麗……でも、静かで寂しい……)
幻想的な眩い森。静穏な風。【andante】が探索する水晶の森は美し過ぎるがゆえに、エステル・クレティエ(ka3783)は閑寂を感じていた。……しかし。
「ふふ、行きましょう。エステルちゃん」
ルナ・レンフィールド(ka1565)が微笑み、エステルは安心感を抱きながら目を細める。皆と一緒で良かった、――と、心から想いながら。
「本日は宜しくお願い致しますの」
小鳥遊 蘇芳(ka2743)が深々とお辞儀すると、浅黄 小夜(ka3062)もぺこりと返す。
「此方こそ……よろしゅう……お頼申します……」
蘇芳は【andante】の皆と初対面である。少し緊張しているようにも見える蘇芳を、小夜や皆は温かく歓迎していた。
「さて、貴重な男手だ、力仕事は任せてくれ! リステルさん、頑張ろうぜ!」
藤堂研司(ka0569)が言うと、リステル=胤・エウゼン(ka3785)が頷く。
「ええ。力仕事はお任せを。研司さんは一緒に、頑張りましょう」
採掘や石を運ぶのは結構力が居る仕事だ――皆にとって、とても頼りになるだろう。
そうしてルナは先ず、耳を澄ませた。静かに風の音を聴いて、まるで水晶の光が奏でているかのような、透明なキラキラした音に乗せて運ばれてくるマテリアルの気配を感じようとして――
「恐らくこっち、です」
なんとなくマテリアルに導かれるかのように歩んでいくと、龍鉱石の欠片が幾つも埋もれてある場所へと繋がった。
「おぉ……これが龍鉱石……」
リステルは感嘆を漏らしながら見つめる。死した龍が結晶化して高純度マテリアル鉱石になる――何とも興味深い。そして出来るだけ沢山集めようと心に想う。それが死した龍の供養になる、そんな気がして。
彼らは早速採取を始めた。そして各々、想う事があった――。
(龍鉱石は……死した龍が変じたもの……命の石の様な物、とか……)
小夜は龍鉱石を手に取り、考える。
(なら白龍や黒龍はどうして……龍鉱石にならんかったんやろう……。守る為に、命を……マテリアルを、使い果たした……から?)
浮かび上がってくる疑問。そもそもマテリアルとは何だろう。どこからどうやって存在するものなのだろう。解らない事ばかりで、知りたい事ばかりだ。
この探索が、何かの答えに繋がる一歩になればいいなと願いながら、観察したものをスケッチに残して……。
水晶の様な草木を見付けると、エステルはそっと触れた。
――元からそうなのか、何かの現象で姿を変え、時を止めてしまったのか……。
不思議に思いながら、博識そうなリステルと話しつつ、龍鉱石の採取の傍ら観察する。
「そろそろお昼にしない?」
研司は明るく云った。
実は今朝から張り切ってお弁当作りをしてきている彼。
用意も周到で、テント製のレジャーシートを広げ、丹精込めて作ったお弁当を披露する。
おにぎり、タコさんウインナー、卵焼き、お煮しめ、お漬物etc!
そして疲れた体に沁みる、レモンの蜂蜜漬けも用意する真心ぶり。
「凄い……」
(料理……私も上手くなりたいな)
目を輝かせながら思わず感激するエステル。
隣を覗くと、
「おにぎりと……卵焼きと……たこさん、ウィンナーと……たくあん……全部、作ってきてくれたんですね……」
小夜が嬉しそうに双眸を細めていた。その横顔は幸せそうで、エステルは密かに微笑ましく思いながら、皆にお茶を注いだ。
「あの、良ければ召し上がりませんこと?」
蘇芳が少しどきどきしながら出したのは、塩漬けした桜の葉に包んだ餅菓子……桜餅だった。
疲れた時には甘いものと塩辛いものが良いと思って作ってきたそうだ。
皆から美味しそうだと見つめられ、些か表情には出ていないが、嬉しい蘇芳。
――実は、同年代とこういう風にお話したり、一緒に何かをしたり、お弁当食べた経験がなく……。だから、心温まる程、幸せで。
リステルも温かい料理を、と芋幹縄を持って来ていた。
芋幹縄はお湯の中に千切って入れるだけで味噌汁にする事ができる。北方の水晶の森は肌寒いのもあり、ほっと暖まることだろう。
仲間と食べる美味しいお弁当は格別の味。
楽しく話が弾み、採取の疲れも癒され、長閑で暖まるひとときを共有して、皆で料理を完食。和気藹々とゆったり過ごしていた。
そんな時である。
――ガサガサ。
水晶色の、背の高い茂みが揺れた。
「……!」
皆を護ろうと、蘇芳とルナは咄嗟に構える。
――此処はリザードマンがよく徘徊していると聞いて居る。もしかすると……。
そう思い、蘇芳は漆黒の双眼が茜色に染まった。
黒揚羽蝶の幻影が周囲を飛び交って、警戒するように茂みを見つめる。
ルナも音楽記号が沸き上がる光の螺旋が体を包み込み、右手に淡い燐光が纏った。
――が。
ガサッ。
「あ……」
何と出てきたのは敵ではなくて――
その顔に見覚えがあるリステルは、声を掛ける。
「ギアンさん? お久しぶりです、お元気でしたか?」
「ぼちぼちだ」
彼は料理界の彗星と呼ばれる男。
リステルや研司の知人であるらしく……。
「そうだったんですね……よかった」
ルナや皆は、ほっとした。
全く人騒がせな料理人である。
「ギアンさん、もし良ければこういった携帯食の開発も検討頂けませんか?」
「携帯食?」
そういえば先日の郷祭で同盟は蒼世界に習い缶詰を――と、リステルとギアンが料理界の深い話をしている頃。
「何時も森で吹く笛……この森なら少し響き方が違うかも……?」
エステルは仄かに好奇心を沸かせ、そっと笛を、奏でる。
澄んだ美しい音色が森に流れ、水晶に響く。風に乗り、楚々とした笛音は遠くへと運んでいく。
幻想的な雰囲気にゆったりと、身を任せるように――
ルナもリュートを静かに合わせて。
「綺麗……」
小夜は思わず、目を伏せ、聴き心地のいいその音を楽しむ。
「本当だね……」
研司も、うんと頷きながら浸りながら。
研司も、蘇芳も、小夜も、リステルも、ギアンも――
全員が彼女達の音色に聞き惚れていた。
死して尚、力を秘めた龍達が眠る森。
此処で奏でるメロディーはもしかしたら、特別な音のように聞こえるかもしれない。
(集めた龍鉱石で少しでも多くの人の助けになるといいな……)
自分達が収集した龍鉱石に視線を落としつつ、ルナは密かに、想い抱いていた。
●【千鳥】の探索
(水晶の森か。北の国だけあって寒いな……)
一青 蒼牙(ka6105)は北方の寒さを肌に感じると、自分の事より先に考えるのは鎬鬼(ka5760)のこと。
「鎬鬼様。風邪引かないようにちゃんと上着着て――」
蒼牙は鎬鬼の役に立ち守りたいと常に思っている。ゆえに心配なのだ。……が、当の鎬鬼は好奇心で目を輝かせていた。
「きらきらしてすげえ! 水晶お持ち帰りしちゃダメ?」
「ああ、ダメですよ! 観光しに来たわけじゃないので、ちゃんと龍鉱石を探さないと……」
マシロビ(ka5721)が慌てて鎬鬼を引き止める。
「わ、わーってるって、石堀りに来たんだもんな!」
勿論依頼である事は忘れていないと頷き、
「よし、とにかく沢山集めっぞ!」
と、鎬鬼は燃える。
「そうですね。ガンバって龍鉱石を探しに行きましょう。沢山必要みたいですしね」
マシロビも云って、さてその龍鉱石はどう探そうかと話に上ると――
「汚染から身を守ってくれるってんだから、こう、気分がよくなる方にいっぱいあるんじゃねーかな」
「もしくはこれですね……」
マシロビが提案したのは占術。ダウジング的に探すというものである。
「とはいえ占いですし、当たるも八卦当たらぬも八卦、気休め程度ですけれども……」
少々悩むように零すが、
「マシロビ姉、頼りにしてんぜ!」
鎬鬼はにっと笑った。
マシロビは当たるといいんですけれど……、と呟きつつダウジングを行うと――西の方角を指す。
「西の方角、ですね」
「よっしゃー! ガンガン行くぞー!」
鎬鬼はその方角へ猛進する。即興で勇ましげな歌を歌いながら――
蒼牙も、表面には出さずとも鎬鬼が転ばぬようにと細心の注意を払いながらついていく。――龍鉱石なんて別に興味は無い。皆が欲しいって言うならまあ、付き合ってやらないこともないというだけで。
と、そんなふうにクールだった蒼牙だったが……
「……って、あ! あれ龍鉱石じゃないか!? あっちも!!」
マシロビの占術が大当たりし、龍鉱石を目の当たりにすると淡い蒼の双眸がきらきら輝く。
鎬鬼も大喜びの様子。
――が。
「こらこら。はしゃぐなはしゃぐな」
瑞華(ka5777)が鎬鬼を引き戻し、
「鎬鬼さん! 蒼牙さん!」
マシロビも蒼牙を連れ戻す。
そして注意しようとするが――
「あんまり騒がしくしていると敵が……」
「何だよ。お前心配性……って本当に出た!」
人の気配を感じてやって来たのか、既に彼らをリザードマンの集団が囲っていた。
今にも襲い掛かってきそうな雰囲気を漂わせつつ、じりじりと近寄ってくるリザードマンの集団。
咄嗟に蒼牙が鎬鬼を匿うように前に立ち、更に前でマシロビと瑞華が武器を構える。
「あああ、やっぱり……仕方ないですし倒しちゃいましょう」
「これはこれは……楽しくなってきた」
マシロビは先ず後方へ下がる。そして今にも襲い掛かってきそうなリザードマンを目掛け、一瞬の内に符を支度し火の精霊力を宿し、焼き焦がした。
一方先程まで穏やかな雰囲気を纏わせていた瑞華も、好戦的な一面を露わにする。
刀に血のような赤い燐光を舞わせながら、
「さぁさぁ、この俺と遊んでくれるか?」
間合いを詰めて一気に――リザードマンを貫き切り裂く。
「蒼牙、ちゃっちゃとヤっちまうぞ! 俺の行く手を邪魔する奴はーー俺にぶっ飛ばされちまえ♪」
鎬鬼も活き活きと抉るような突きを放つ――が、背後には鎬鬼に攻撃しようとするリザードマンが一体。
しかしそうはさせないと食い止める蒼牙は、青いオーラを立ち上らせながら敵を鋭く睨みつける。
「このトカゲ野郎! 鎬鬼様に手出すなんていい度胸だ! 全・員! ぶちのめす!」
体内を循環させるように気を練り、強烈な一打を真っすぐと打ち込む――!
彼らはリザードマンを次々と倒していき、再び水晶の森は平穏さを取り戻す。
そして龍鉱石の採掘再開――。
各々収集を始め、瑞華も採掘するが……
「……言うなれば……此処は龍の墓場か……。荒らす事は、少々胸が痛むな……」
この石は、死した龍のものなのだと思うと、顔を曇らせる。
「瑞兄はやさしーな」
鎬鬼がにかっと笑って言った。
聞かれていたとは知らず目を丸くして、取り直すように苦笑する瑞華。
「しかし、死者より今を生きる者が優先だ。……俺達は、今生きているのだからな」
そう言って、鎬鬼と、採掘中のマシロビ、蒼牙を見て、目を伏せた。
鎬鬼はそんな瑞華にそっと、頷いていた。
●
こうして龍鉱石はハンターの頑張りのお蔭もあって、充分に収集する事が出来た。彼らが集めた一つ一つが、大きな一歩に繋がったという事は間違いない。
そして彼らの戦い……そして想いは、【龍奏】へと続く――。
――龍鉱石を見つけまくり回収しまくる!
此度の依頼の最重要にして最大の目的であるそれを胸に、ザレム・アズール(ka0878)は水晶の森を真っすぐ進んだ。
森は幻想的で壮麗である。だがその景観には今は目もくれない。美しい光景は採取の後に楽しめばいいと、双眼鏡とLEDライトを手にヤル気満々な様子で突き進んで、龍鉱石を捜索する。
その頃、不動シオン(ka5395)も水晶の森へと足を踏み入れていた。
(さて、どれほどの宝の山が手に入るのやら?)
カム・ラディ遺跡周辺地域で採掘出来るという『死んだ龍が石となったマテリアル鉱石』――冒険心半分で依頼に参加していたシオンは密かに心躍りつつ、それを探していたのだが………
シオンの目の前に現れたのは龍鉱石ではなく、リザードマンの集団だった。
「……よりにもよって貴様らが現れてくれたか」
事前にこの周辺にはリザードマンがよく徘徊しているとは聞いていたものの、御呼びではない相手の出現に溜息を漏らす。しかし血に飢えた狼の如き闘争心を剥き出しにさせた瞳の赤が鋭く発光し、紫焔を纏った。
「構わん、ついでに貴様らの首も手土産にしてやる!」
闘争心を剥き出しにさせつつリザードマンの懐に一気に飛び込むと、手の刀を渾身の力で振り下ろす!
今は龍鉱石の回収が最優先。戦闘は短時間でケリがつくように全力で挑むと、あっという間に集団を蹴散らし、決着がつくだろう。
「よし……これで暫くは収集に専念できそうだ」
シオンは呟くと龍鉱石の探索を再開した。大中小……大きさは問わず、発見次第に回収していこうという心持ちだ。
ひたすら懸命に集めていく――
ザレムも、人より秀でた鋭敏視覚と幸運を頼りに龍鉱石を捜索。
「見つけた」
まるでクリスタルの様で、形は様々であるけれど強い力を秘めるマテリアル鉱石――採掘したそれを手にしながら、ザレムはそろそろ警護班に龍鉱石を預けようかと考えていた。
効率がいいようにと用意したネコ車には既に龍鉱石が沢山積まれていたのだ。
(龍鉱石があれば汚染地域の「中」からも浄化の拠点とか作れるもんな……それは人類にとって大きな前進。だから時間の許す限り探し続けるぞ!)
ザレムは心の中で強く自分を奮い立たせ、熱心に取り組む。龍鉱石の力がどうしても必要な、人類の為に――!
●洞窟の川を渡った先
折角探索するのだ。龍鉱石を沢山見つけて回収したいと思う柊 真司(ka0705)の隣で、リーラ・ウルズアイ(ka4343)は飄々と微笑む。
「なんか面白そうだから真司に着いていくわ~」
――と言う訳で、真司とリーラは早速洞窟を進んで行くと、輝きを放つ水辺を発見。水は美しい青の色を帯び、発光している。この先にはどうやら誰も向かっていないらしい。
ならばまだ未回収の龍鉱石が存るかもしれないと、真司は考える。
「行くぞ」
「この向こうに? まあいいけど~」
リーラが魔法を掛けると、二人は水面の上を歩いていけるようになった。
幻想的な川の向こう――未だ誰も手を付ける事が出来なかった場所を探索する為、渡っていく。
そうして真司とリーラが川を渡り辿り着いた先は、寂然とした洞窟の奥部。闇の中に浮かぶ鉱石の輝きが美しい、壮麗な景観で。
直感を頼りに早速採掘に励む真司と、そんな彼をただ眺めているリーラ。
「まったく少しくらい手伝ってくれてもいいじゃねぇか」
「別にいいでしょ、私は面白そうだから着いて来ただけなんだから~」
リーラは探す気は無いという雰囲気を漂わしながら、持ってきた酒を飲み始める。そもそも実は、鉱石の探索には興味が無かったのだ。なので、たとえ文句を言われても気にしない心持ちなのである。
「しょうがねぇな……」
真司はこうなったら黙々と実質一人、探索を行うしかないと思っていたが――
しかし思わぬ形でリーラはゆっくりする事が出来なくなってしまった。
「ちょっと~、せっかく気分よく飲んでるんだから邪魔しないでよ」
洞窟を巣窟にしていた蝙蝠雑魔達が襲い掛かってくる為、リーラが魔力を込めた水球を飛ばして次々と迎撃していく。
真司も白銀の銃身から雪の弾丸を撃って援護。そうして二人であっという間に蝙蝠雑魔達を片付けた。
「まだ敵は潜んでいるだろうな、注意していこうぜ。………ん?」
その時、真司はトンネルのような抜け穴を発見した。美しく光る鉱石の道。その中を進んでいくと、最奥の行き止まりには――龍鉱石が沢山埋もれていた。
「これ全部持って帰るの?」
「当然だろ」
真司はリーラに即答すると埋もれていた龍鉱石を隈なく回収した。そうして、持参した鞄がいっぱいに膨れ上がる程、詰め込んでいく。
●姉妹のようなお友達
紅媛=アルザード(ka6122)は、不安げな顔をしていた。と言うのは、早速依頼を受けてはみたものの、少し心細かったのだ。紅媛は東方から訪れたばかりで、此処には知り合いが居ないのである。
しかし、そんな折に――、
「1人ならあたしと一緒にどー?」
声を掛けたのが、アリア(ka2394)だった。
「あたしはアリア。こっちはシエロ。よろしくね」
肩に留まる海鳥の友達・シエロの喉元を撫でつつ微笑むアリアは、陽気で明るい少女。初対面の筈だけれど、紅媛はアリアの雰囲気に癒されて、とても落ち着いた。
「私は紅媛だ。よろしくな♪」
口調も敬語ではなく、自然と砕けた口調で。気付くと、いつの間にかすっかり仲良くなっていたことだろう。
――そんな二人が探索した先は、水晶の森。
「うわあ……綺麗! きゃは♪」
キラキラ輝く水晶の世界を、アリアはくるくると回る。見るもの聞くもの珍しいもの……なんでも興味津々で、走って行ってしまうのを、紅媛は一生懸命追いかけた。
「そんなに楽しいのか?」
紅媛が声を掛けると、アリアは「うんっ」と花を咲かせるように笑った。
じっとしているよりも、何でも見て聞いて触って見たい――
「その方が楽しいよ♪」
アリアの眩しい無邪気さに、紅媛もついつい微笑みを浮かべながら。
目利きと運を頼りに突き進むアリアと、迷わないように来た道を記憶する紅媛。
数々の美的な景観と巡り逢っていく。
きっと宝物の様に美しく素晴らしい、未知なるものと出逢う好奇心を刺激されて楽しいと心躍る。
「そろそろお昼にしよう」
紅媛は作って来たお弁当を、アリアにも渡した。中身はおにぎりである。
「ありがとう! 具はなにかな~♪」
わくわくしながらひとくち。
「あっ、ハンバーグ!」
「どうだ?」
「美味しい!」
「……そうか、良かった」
美味しそうに頬張るアリアを眺めつつ、紅媛は目を細めて。
(なんだか妹ができたみたいだ)
紅媛は親しみを込めて、そう思う。
「声を掛けてくれてありがとな。知り合いも居ないし心細かったから……アリアが声を掛けてくれた時、とても落ち着いたんだ」
紅媛がぽつりとお礼を零すと、アリアはにっこりと笑った。
おにぎりを食べ終わった後もきっと、どきどきわくわくするような冒険を二人で一緒に楽しむのだろう――。
●大活躍の警護班
収拾した大量の龍鉱石の警護を任されている班。エルバッハ・リオン(ka2434)やアルスレーテ・フュラー(ka6148)が属する警護班の活躍はめざましいものだった。
「龍鉱石の採掘ですか。ここまで労力をかける以上は、たくさん採掘できるといいのですが。まあ、私は警護の方を頑張りましょうか」
エルバッハは装備の兜の位置を整えながら呟いた。アルスレーテも、ナイフで切り分けたパンにツナを挟んだものを食べながら、探索に向かう仲間を見送る。
「あちこち巡って探索ってのはめんどいからね。みんな、探索は任せるわ」
運動不足解消のついでに参加したが、常に動き回らなければならない探索班に就くのは億劫だったようで、警護班に就いた様子。
この周辺はリザードマンがよく目撃されているような地域だ。それゆえ、大型荷台に龍鉱石を大量に乗せている分かなり目立ってしまうのは仕方無いらしく、幾度となくリザードマンが頻繁に姿を表していた。
――しかし。
『!?』
徘徊していた集団の先頭に居たリザードマンは、驚くような顔をした。
アルスレーテが空になったツナ缶を勢いよくぶつけたのだ。
「もう。お昼のタイミングで来ないで欲しいわー」
彼女が呟いているその隙に、エルバッハはリザードマンの集団付近にスリープクラウドを出現させる。
「警護を任されている以上、此処を通しません」
胸元には赤薔薇の紋様が刻まれ、そこから棘の模様が躰を巻きつくように浮かび上がっていた。
凍える冷氷の矢、鋭い風の魔法で――
エルバッハの圧倒的な戦力で迎撃し、リザードマンを一切近寄せずに一掃していく。
アルスレーテも金銀の粒が煌めく北斗七星が描かれた扇を棍のような形状にし、駆けつけ、そのまま大きく力を溜め、抉るような突きを放って穿った。
『――!』
リザードマンは手も足も出ず、次々と倒れていく。そんな鮮やかな撃退ぶりに、彼女達は警護班の仲間から拍手が送られていた。
「この周辺のリザードマンは大したことありませんね」
エルバッハが一息つきつつ、
「まぁ、ちょっとは良い運動になったわね」
アルスレーテが地面に転がっているツナ缶を回収。投げたごみはちゃんと拾うのである。
こうして皆が集めた龍鉱石は一度も危機に陥る事無く、鉄壁の守備で守られているのだった――。
●山沿いの龍鉱石
黒曜 葵璃瑚(ka3506)は採掘に自信があった。
「石集めですか! 部族での日々が懐かしいです……! 張り切って探しますよーっ!」
何故なら故郷ではよく武器や祭具の為に黒曜石を探す事が多く、慣れているのである。わくわくしている葵璃瑚は山沿いをバイクで走り、出来るだけ大きな鉱石を捜すと、その直感は冴えわたる。
「これは……!」
岩に張り付く大サイズの龍鉱石を発見! それになんと、付近にも龍鉱石が沢山!
どうやら穴場を発見したようだ。
早速葵璃瑚は張り切って、採取を始めた。クォークリオ族の誇りと共に託された斧で付近の岩を砕く。
そうしてこの付近にある龍鉱石を全て回収すると、バイクにロープで繋げていた。手で持てる量は限られている――一度に多く持ち運べるようにと考えたという訳だ。
しかしそんな折に、敵と遭遇。
「……っ!!」
――リザードマンは集団だった。葵璃瑚を取り囲み、襲い掛かろうとする。
だが、それを阻止するはレイオス・アクアウォーカー(ka1990)の弾丸。
レイオスは駆け寄りながら左右の手に刀を持ち、リザードマンの攻撃を受け止め反撃を行った後、前面の敵を薙ぎ払う。
「今の内に行くんだ。俺の通って来た道ならリザードマンを片付けてきたし、暫く安全だと思うぜ!」
葵璃瑚はパワフルで力任せにリザードマンを斧で叩き込んだ後、こくりと頷く。
「あっ、ありがとうございます……!」
葵璃瑚がバイクに乗り、お礼を言って恩に着ると、レイオスは頼もしい笑みを返した。
龍鉱石を引きずりながら去っていく葵璃瑚を追わせないように、レイオスは立ちはだかり、刃先をリザードマンに向けて。
「お前達の相手は俺だ」
レイオスの力はリザードマン等相手ではなく、瞬く間に撃滅していく。
その強さを恐れるリザードマン達――
「――待て!」
そうして逃走を図るリザードマン達を追い掛けていった先で、レイオスが見た物は――。
「……!!」
凛々しき姿を封じ込めたような、手で持ち運べる位の龍の彫像――
「まさかお宝のありかを案内してくれるなんてな、トカゲ野郎!」
レイオスは偶然にも自分を此処まで連れてやって来たリザードマンにある意味感謝しつつ、力の限り猛威を振るった。
必ず人類の役に立つ強き力をもたらしてくれる龍鉱石を持ち帰る為に――!
●洞窟の調査
「洞窟なら私にとっては故郷も同じだ。元々あった地質と、そこから結晶化した状態から構造を推測してみよう。はるか昔、この洞窟がどういう風に形作られたのかを、な」
バルドゥル(ka5417)が呟くと、同行するティリル(ka5672)が頷いた。
「洞窟なら龍族の住居があるかもしれません。そこさえ見つければ亡骸が見つかるやも。 小さな鉱石は後回しにして探索を優先しましょう」
バルドゥルとティリルが探索しているのは洞窟。その昔龍の住処だったのかもしれないと思われる、とても広くとても深い洞窟だ。
最深に進む度闇が深まるが、同時に青く光る鉱石の蛍光が強くなっていく。
――この洞窟は一体、どうやって出来たものなのだろうか。
溶食作用、地下水脈の流れによる削磨作用、地下水脈の枯渇による出現、風食作用、火山作用、地滑りなどの裂開作用……
そういった自然の力のものなのか。
或いは、龍を信仰する人々の手か、龍族の業か。
バルドゥルは洞窟の構造をじっくり観察しながら考察して、遥か昔に生きた龍に想いを馳せる。
ティリルは闇雲に探すのではなく龍が居た場所を予測しつつ、洞窟を吹き抜けていく風の音が聴こえて予感した。
前方には陽の光が射しこんでいるのが窺え、天井に穴が空いているのをティリルは見つめる。
「もしかしたらこの穴は、龍族が出入りしていたものかもしれません」
「なるほど……ならばこの近くで見つけられるかもしれないな」
――そうして更に進んでいくならば……、
遂に、見つけた。
最深部の空洞に欠片となって無数に散らばり、埋まっている龍鉱石を。
「見つけましたね、龍鉱石を」
それは美しい輝きを放つクリスタルのようだが、龍の原型も垣間見えるような石だった。
「ああ。欠片となってしまっていたのは残念だが……」
特別大きければ使える用途は広がるらしいが、龍鉱石は砕けていても問題なく秘めた力を使用する事が出来る。
なので二人は協力しながら、この欠片を全て回収する事にした。
「聖導士とはいえ、ドワーフだ。そこそこの力もある。スコップでの力仕事くらいはやらせてもらおう」
バルドゥルが岩を砕き、採掘する。そして採れた石からは、ティリルが龍鉱石を回収した。
此処に居た龍が過去にどう生きてきたか――それは分からないが、今、龍の力が必要だから。
●ドタバタ!洞窟採掘
「龍鉱石か、実に面白い」
「にいさ! 発掘だべさ! オラ頑張るべさ!」
帳 金哉(ka5666)と凰牙(ka5701)は洞窟を探索していた。
此処が龍の巣穴なのだとしたら奥の方がより大きいものが取れるだろう――その金哉は予測は当たり、早速龍鉱石を発見した。
「流石にいさだべ!」
金哉を兄貴分として慕っている凰牙は心から感心しつつ、自分も、と張り切る。
「にいさ! 見ててだべ! オラ頑張って集めるべさ!」
勇猛果敢な戦士のオーラを放つ凰牙。
「おい凰、ハメを外すなよ。あまり張り切って粉に――」
と、金哉が声を掛けようとするも既に遅かったようで……
ドゴォォォン!
力強く岩を砕き、洞窟内に凄まじい音を響かせ、煙が舞った。
金哉は驚いて目を丸くするが――
そんな煙の中から、凰牙が笑顔で出てくる。
「にいさ! 見るだべさ! オラこんなに取っただよ!」
両手にはいっぱいの龍鉱石を抱いている。
どうやら結果はオーライだったらしい。金哉はこれに思わず、微笑みながら。
「おお、なかなかようけ採れたではないか。流石我が弟分じゃ」
金哉に褒められて破顔する凰牙。
「そっちどうー? 何か凄い音がしてたけど……。あ、凄い! こんなに!」
金哉と凰牙に声を掛けたのは、同じ探索班の央崎 枢(ka5153)。
凰牙が抱えている龍鉱石の量を見て、驚いた。
「俺も頑張るよ」
と、枢は探索を再開しようとその場から一旦離れて……
すると、何やら蝙蝠雑魔が飛び交う光景を発見した。
よく見て見ると――
「まさか、人が……!」
人が倒れている。枢は大変だ、と太陽の力を秘めた魔剣を構えた。
踏み込んで真上から回転し、蝙蝠雑魔を振り払う風のように夜闇を切り裂く赤き光の軌道――。
切り裂かれた蝙蝠雑魔は消滅。
周りに居た蝙蝠雑魔達は一斉に逃げるように飛んでいく。
「大丈夫か?」
「……っ」
倒れていた人物は息をしていた。
その時、「何かあったのか?」と凰牙が駆けつけ、枢から事情を聴くと安堵する。
「無事で良かったな。俺は凰牙ってんだ、よろしくだ!」
「ヴァ……ヴァ―レリオだ」
挨拶をされたので挨拶を返す倒れている人。
するとその名を聴いた刹那、枢はある人物を想い出す。
「ヴァレーリオさんってたしか……姉さんがアイドル活動した時のマネージャーさんだったっけ?」
男は顔が青褪めた。
(うわ、もしかしてすげえ恥ずかしい所見られちまってねえかこれ……!?)
初対面ながらも遠からずな枢との出会いがこんな形になるなんて、と男は羞恥心で精神的に瀕死になるが、枢は気付いていない。
「なんじゃ、騒がしかったのう」
気になって様子を見に来る金哉。
その手には――
「にいさ!?」
「おぉ……!」
凰牙と枢と男は驚いた。金哉は両手で持つのがやっとな大きな龍鉱石を抱えている。
流石だ、格好良い、と凰牙は目を輝かせ、熱い賛辞を贈っていた。
金哉は、実はというと、『兄は常に弟の前を行かねばならぬ』と些か本気になって真剣に探索していたのだと言う事は包み隠しつつ……
石となった龍に、密かに想いを馳せていた。
(――龍は強く、死後もこうして人の役に立つ、……か)
金哉は龍鉱石に視線を落とす。青き光は派手でこそ無いが、遥かなる時を超えても尚消えぬ想いがそこにあるかのような、芯の力強さを感じる。
「……主は何を想い生き、死んだのかの」
金哉は誰に聞かせるという訳でもなく、死して石となった龍の欠片にそっと問うていた。
●andante
(綺麗……でも、静かで寂しい……)
幻想的な眩い森。静穏な風。【andante】が探索する水晶の森は美し過ぎるがゆえに、エステル・クレティエ(ka3783)は閑寂を感じていた。……しかし。
「ふふ、行きましょう。エステルちゃん」
ルナ・レンフィールド(ka1565)が微笑み、エステルは安心感を抱きながら目を細める。皆と一緒で良かった、――と、心から想いながら。
「本日は宜しくお願い致しますの」
小鳥遊 蘇芳(ka2743)が深々とお辞儀すると、浅黄 小夜(ka3062)もぺこりと返す。
「此方こそ……よろしゅう……お頼申します……」
蘇芳は【andante】の皆と初対面である。少し緊張しているようにも見える蘇芳を、小夜や皆は温かく歓迎していた。
「さて、貴重な男手だ、力仕事は任せてくれ! リステルさん、頑張ろうぜ!」
藤堂研司(ka0569)が言うと、リステル=胤・エウゼン(ka3785)が頷く。
「ええ。力仕事はお任せを。研司さんは一緒に、頑張りましょう」
採掘や石を運ぶのは結構力が居る仕事だ――皆にとって、とても頼りになるだろう。
そうしてルナは先ず、耳を澄ませた。静かに風の音を聴いて、まるで水晶の光が奏でているかのような、透明なキラキラした音に乗せて運ばれてくるマテリアルの気配を感じようとして――
「恐らくこっち、です」
なんとなくマテリアルに導かれるかのように歩んでいくと、龍鉱石の欠片が幾つも埋もれてある場所へと繋がった。
「おぉ……これが龍鉱石……」
リステルは感嘆を漏らしながら見つめる。死した龍が結晶化して高純度マテリアル鉱石になる――何とも興味深い。そして出来るだけ沢山集めようと心に想う。それが死した龍の供養になる、そんな気がして。
彼らは早速採取を始めた。そして各々、想う事があった――。
(龍鉱石は……死した龍が変じたもの……命の石の様な物、とか……)
小夜は龍鉱石を手に取り、考える。
(なら白龍や黒龍はどうして……龍鉱石にならんかったんやろう……。守る為に、命を……マテリアルを、使い果たした……から?)
浮かび上がってくる疑問。そもそもマテリアルとは何だろう。どこからどうやって存在するものなのだろう。解らない事ばかりで、知りたい事ばかりだ。
この探索が、何かの答えに繋がる一歩になればいいなと願いながら、観察したものをスケッチに残して……。
水晶の様な草木を見付けると、エステルはそっと触れた。
――元からそうなのか、何かの現象で姿を変え、時を止めてしまったのか……。
不思議に思いながら、博識そうなリステルと話しつつ、龍鉱石の採取の傍ら観察する。
「そろそろお昼にしない?」
研司は明るく云った。
実は今朝から張り切ってお弁当作りをしてきている彼。
用意も周到で、テント製のレジャーシートを広げ、丹精込めて作ったお弁当を披露する。
おにぎり、タコさんウインナー、卵焼き、お煮しめ、お漬物etc!
そして疲れた体に沁みる、レモンの蜂蜜漬けも用意する真心ぶり。
「凄い……」
(料理……私も上手くなりたいな)
目を輝かせながら思わず感激するエステル。
隣を覗くと、
「おにぎりと……卵焼きと……たこさん、ウィンナーと……たくあん……全部、作ってきてくれたんですね……」
小夜が嬉しそうに双眸を細めていた。その横顔は幸せそうで、エステルは密かに微笑ましく思いながら、皆にお茶を注いだ。
「あの、良ければ召し上がりませんこと?」
蘇芳が少しどきどきしながら出したのは、塩漬けした桜の葉に包んだ餅菓子……桜餅だった。
疲れた時には甘いものと塩辛いものが良いと思って作ってきたそうだ。
皆から美味しそうだと見つめられ、些か表情には出ていないが、嬉しい蘇芳。
――実は、同年代とこういう風にお話したり、一緒に何かをしたり、お弁当食べた経験がなく……。だから、心温まる程、幸せで。
リステルも温かい料理を、と芋幹縄を持って来ていた。
芋幹縄はお湯の中に千切って入れるだけで味噌汁にする事ができる。北方の水晶の森は肌寒いのもあり、ほっと暖まることだろう。
仲間と食べる美味しいお弁当は格別の味。
楽しく話が弾み、採取の疲れも癒され、長閑で暖まるひとときを共有して、皆で料理を完食。和気藹々とゆったり過ごしていた。
そんな時である。
――ガサガサ。
水晶色の、背の高い茂みが揺れた。
「……!」
皆を護ろうと、蘇芳とルナは咄嗟に構える。
――此処はリザードマンがよく徘徊していると聞いて居る。もしかすると……。
そう思い、蘇芳は漆黒の双眼が茜色に染まった。
黒揚羽蝶の幻影が周囲を飛び交って、警戒するように茂みを見つめる。
ルナも音楽記号が沸き上がる光の螺旋が体を包み込み、右手に淡い燐光が纏った。
――が。
ガサッ。
「あ……」
何と出てきたのは敵ではなくて――
その顔に見覚えがあるリステルは、声を掛ける。
「ギアンさん? お久しぶりです、お元気でしたか?」
「ぼちぼちだ」
彼は料理界の彗星と呼ばれる男。
リステルや研司の知人であるらしく……。
「そうだったんですね……よかった」
ルナや皆は、ほっとした。
全く人騒がせな料理人である。
「ギアンさん、もし良ければこういった携帯食の開発も検討頂けませんか?」
「携帯食?」
そういえば先日の郷祭で同盟は蒼世界に習い缶詰を――と、リステルとギアンが料理界の深い話をしている頃。
「何時も森で吹く笛……この森なら少し響き方が違うかも……?」
エステルは仄かに好奇心を沸かせ、そっと笛を、奏でる。
澄んだ美しい音色が森に流れ、水晶に響く。風に乗り、楚々とした笛音は遠くへと運んでいく。
幻想的な雰囲気にゆったりと、身を任せるように――
ルナもリュートを静かに合わせて。
「綺麗……」
小夜は思わず、目を伏せ、聴き心地のいいその音を楽しむ。
「本当だね……」
研司も、うんと頷きながら浸りながら。
研司も、蘇芳も、小夜も、リステルも、ギアンも――
全員が彼女達の音色に聞き惚れていた。
死して尚、力を秘めた龍達が眠る森。
此処で奏でるメロディーはもしかしたら、特別な音のように聞こえるかもしれない。
(集めた龍鉱石で少しでも多くの人の助けになるといいな……)
自分達が収集した龍鉱石に視線を落としつつ、ルナは密かに、想い抱いていた。
●【千鳥】の探索
(水晶の森か。北の国だけあって寒いな……)
一青 蒼牙(ka6105)は北方の寒さを肌に感じると、自分の事より先に考えるのは鎬鬼(ka5760)のこと。
「鎬鬼様。風邪引かないようにちゃんと上着着て――」
蒼牙は鎬鬼の役に立ち守りたいと常に思っている。ゆえに心配なのだ。……が、当の鎬鬼は好奇心で目を輝かせていた。
「きらきらしてすげえ! 水晶お持ち帰りしちゃダメ?」
「ああ、ダメですよ! 観光しに来たわけじゃないので、ちゃんと龍鉱石を探さないと……」
マシロビ(ka5721)が慌てて鎬鬼を引き止める。
「わ、わーってるって、石堀りに来たんだもんな!」
勿論依頼である事は忘れていないと頷き、
「よし、とにかく沢山集めっぞ!」
と、鎬鬼は燃える。
「そうですね。ガンバって龍鉱石を探しに行きましょう。沢山必要みたいですしね」
マシロビも云って、さてその龍鉱石はどう探そうかと話に上ると――
「汚染から身を守ってくれるってんだから、こう、気分がよくなる方にいっぱいあるんじゃねーかな」
「もしくはこれですね……」
マシロビが提案したのは占術。ダウジング的に探すというものである。
「とはいえ占いですし、当たるも八卦当たらぬも八卦、気休め程度ですけれども……」
少々悩むように零すが、
「マシロビ姉、頼りにしてんぜ!」
鎬鬼はにっと笑った。
マシロビは当たるといいんですけれど……、と呟きつつダウジングを行うと――西の方角を指す。
「西の方角、ですね」
「よっしゃー! ガンガン行くぞー!」
鎬鬼はその方角へ猛進する。即興で勇ましげな歌を歌いながら――
蒼牙も、表面には出さずとも鎬鬼が転ばぬようにと細心の注意を払いながらついていく。――龍鉱石なんて別に興味は無い。皆が欲しいって言うならまあ、付き合ってやらないこともないというだけで。
と、そんなふうにクールだった蒼牙だったが……
「……って、あ! あれ龍鉱石じゃないか!? あっちも!!」
マシロビの占術が大当たりし、龍鉱石を目の当たりにすると淡い蒼の双眸がきらきら輝く。
鎬鬼も大喜びの様子。
――が。
「こらこら。はしゃぐなはしゃぐな」
瑞華(ka5777)が鎬鬼を引き戻し、
「鎬鬼さん! 蒼牙さん!」
マシロビも蒼牙を連れ戻す。
そして注意しようとするが――
「あんまり騒がしくしていると敵が……」
「何だよ。お前心配性……って本当に出た!」
人の気配を感じてやって来たのか、既に彼らをリザードマンの集団が囲っていた。
今にも襲い掛かってきそうな雰囲気を漂わせつつ、じりじりと近寄ってくるリザードマンの集団。
咄嗟に蒼牙が鎬鬼を匿うように前に立ち、更に前でマシロビと瑞華が武器を構える。
「あああ、やっぱり……仕方ないですし倒しちゃいましょう」
「これはこれは……楽しくなってきた」
マシロビは先ず後方へ下がる。そして今にも襲い掛かってきそうなリザードマンを目掛け、一瞬の内に符を支度し火の精霊力を宿し、焼き焦がした。
一方先程まで穏やかな雰囲気を纏わせていた瑞華も、好戦的な一面を露わにする。
刀に血のような赤い燐光を舞わせながら、
「さぁさぁ、この俺と遊んでくれるか?」
間合いを詰めて一気に――リザードマンを貫き切り裂く。
「蒼牙、ちゃっちゃとヤっちまうぞ! 俺の行く手を邪魔する奴はーー俺にぶっ飛ばされちまえ♪」
鎬鬼も活き活きと抉るような突きを放つ――が、背後には鎬鬼に攻撃しようとするリザードマンが一体。
しかしそうはさせないと食い止める蒼牙は、青いオーラを立ち上らせながら敵を鋭く睨みつける。
「このトカゲ野郎! 鎬鬼様に手出すなんていい度胸だ! 全・員! ぶちのめす!」
体内を循環させるように気を練り、強烈な一打を真っすぐと打ち込む――!
彼らはリザードマンを次々と倒していき、再び水晶の森は平穏さを取り戻す。
そして龍鉱石の採掘再開――。
各々収集を始め、瑞華も採掘するが……
「……言うなれば……此処は龍の墓場か……。荒らす事は、少々胸が痛むな……」
この石は、死した龍のものなのだと思うと、顔を曇らせる。
「瑞兄はやさしーな」
鎬鬼がにかっと笑って言った。
聞かれていたとは知らず目を丸くして、取り直すように苦笑する瑞華。
「しかし、死者より今を生きる者が優先だ。……俺達は、今生きているのだからな」
そう言って、鎬鬼と、採掘中のマシロビ、蒼牙を見て、目を伏せた。
鎬鬼はそんな瑞華にそっと、頷いていた。
●
こうして龍鉱石はハンターの頑張りのお蔭もあって、充分に収集する事が出来た。彼らが集めた一つ一つが、大きな一歩に繋がったという事は間違いない。
そして彼らの戦い……そして想いは、【龍奏】へと続く――。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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探索相談 浅黄 小夜(ka3062) 人間(リアルブルー)|16才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/03/05 21:19:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/04 00:19:53 |