ゲスト
(ka0000)
宇宙のロマンはそうそう、ない
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/23 07:30
- 完成日
- 2014/08/30 03:11
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
宇宙人という存在を知っているだろうか。リアルブルーには、空高く上った先に、宇宙と呼ばれる空間が広がっているという。宇宙には、いくつかの星があり、我々のような生命体が住んでいるらしい。
「そして、これがその生命体について聞いたときに、描いてもらった絵だ!」
興奮ぎみに私が絵を見せると、集まった村民は驚きと不安の声をあげた。どよめきが静まってきたところで、私はニッと笑って村民に問いかけた。
「どうかね、諸君。そっくりであろう?」
再度どよめく村民を満足げに眺める。全員が私に、対処を求める視線を送ってくる。これが実に心地よい。
「諸君。諸君らは実に運がよい。そうであろう?」
私の言葉をうまく飲み込めないのか、村民は見上げてくるばかり。これだから田舎者は、という言葉をぐっと飲み込む。
「なぜならば、あの空の向こう側に住むという生命体との接触を見ることが出来るからだ! 君たちはクリムゾンウェストで初めて、宇宙人とのコンタクトに成功するのだから!」
村民の中には不安そうに私を見上げてくるものがいる。不要な気持ちだ。
何故ならば、
「私はこの日のために、かの者達の言語について思考を進めていた。いうなれば、宇宙人スペシャリストだ」
なお、実際に文字を見たり声を聞いたりはしたことがない。だが、古文書の中に渦巻く言葉には宇宙的大法則があることに私は気づいてしまったのだ。この理論は正しいと自負している。
「しからば、見ておれい!」
壇上から飛び降り、私は颯爽と村を出る。
向かう先は、村民が遺跡と呼ぶ岩のオブジェクトが並べられた場所だ。円形状に並べられたオブジェクトの中央に、奴らは端然と存在していた。
潰れまんじゅうのような頭から、無数の触手を生やした奇妙な生命体だ。まんじゅうのソコから生えた触手が、脚のようにまっすぐ地面に伸びていた。私は、海でクラゲなる生命体を見たことがある。その姿によく似ていた。
違う点があるとすれば、彼らは水に浮いているわけではなかった。かといって中に浮かんでいるわけでもない。しっかりと、地に足つけて立っていたのだ。
「やはり、宇宙人っ」
私は興奮気味に、彼らの元へかけ出した。
どこが目かはわからないが、私に気づいてこちらを振り向いたような気がした。まずは敵意がないことを説明すべく、宇宙語で話しかける。
「■■■■■■■■■■!」
宇宙言語のため、文字化ができないのが悔やまれる。
この独特の発音によって、彼らは私を攻撃し……てきたではないか!?
触手が私の体へ当たると同時に、強烈なしびれを巻き起こした。おまけに地面へもぐらせていたらしい触手が、土の刺となって私に襲いかかってきた。
「あひゃぁあああ!?」
情けないことに、しびれる体をフルに動かして遺跡から脱することに集中せざるを得なかった。村へと帰ってきた私を、村民は大慌てで寝室へと連れて行ってくれた。
ろれつの回らない私を心配し、多くの村民が赴いてくれた。初コンタクトは失敗に終わったが、私はあきらめない旨を伝えたが、うまく伝わっただろうか……。
●
「宇宙人だと村からの使者は言っていました。が、どう考えても雑魔です」
スタッフはそういうと、端的に雑魔について村民の語った情報を述べた。
おそらく地上で生息できるように進化したクラゲの雑魔であろうということだ。触手を地面に潜らせ、土をまとわせて槍のように刺突するという。
また、麻痺毒を持っているそうなので注視が必要だ。
問題は倒した後だという。
「一応、宇宙人説を説いている宇宙人研究者がいるらしいので、注意してください。具体的には、宇宙の危機とか倒したことによる軋轢を避けていただけると今後が楽です」
下手に喧伝されると、後々差し支える可能性があるのだという。
ツチクラゲ討伐はきっちり行い、煩わしい事後処理もとい研究者説得も行ってほしいとのことだ。
「すべてはプラズマの影響だったんだよとかいっておいてくださいな」
宇宙人という存在を知っているだろうか。リアルブルーには、空高く上った先に、宇宙と呼ばれる空間が広がっているという。宇宙には、いくつかの星があり、我々のような生命体が住んでいるらしい。
「そして、これがその生命体について聞いたときに、描いてもらった絵だ!」
興奮ぎみに私が絵を見せると、集まった村民は驚きと不安の声をあげた。どよめきが静まってきたところで、私はニッと笑って村民に問いかけた。
「どうかね、諸君。そっくりであろう?」
再度どよめく村民を満足げに眺める。全員が私に、対処を求める視線を送ってくる。これが実に心地よい。
「諸君。諸君らは実に運がよい。そうであろう?」
私の言葉をうまく飲み込めないのか、村民は見上げてくるばかり。これだから田舎者は、という言葉をぐっと飲み込む。
「なぜならば、あの空の向こう側に住むという生命体との接触を見ることが出来るからだ! 君たちはクリムゾンウェストで初めて、宇宙人とのコンタクトに成功するのだから!」
村民の中には不安そうに私を見上げてくるものがいる。不要な気持ちだ。
何故ならば、
「私はこの日のために、かの者達の言語について思考を進めていた。いうなれば、宇宙人スペシャリストだ」
なお、実際に文字を見たり声を聞いたりはしたことがない。だが、古文書の中に渦巻く言葉には宇宙的大法則があることに私は気づいてしまったのだ。この理論は正しいと自負している。
「しからば、見ておれい!」
壇上から飛び降り、私は颯爽と村を出る。
向かう先は、村民が遺跡と呼ぶ岩のオブジェクトが並べられた場所だ。円形状に並べられたオブジェクトの中央に、奴らは端然と存在していた。
潰れまんじゅうのような頭から、無数の触手を生やした奇妙な生命体だ。まんじゅうのソコから生えた触手が、脚のようにまっすぐ地面に伸びていた。私は、海でクラゲなる生命体を見たことがある。その姿によく似ていた。
違う点があるとすれば、彼らは水に浮いているわけではなかった。かといって中に浮かんでいるわけでもない。しっかりと、地に足つけて立っていたのだ。
「やはり、宇宙人っ」
私は興奮気味に、彼らの元へかけ出した。
どこが目かはわからないが、私に気づいてこちらを振り向いたような気がした。まずは敵意がないことを説明すべく、宇宙語で話しかける。
「■■■■■■■■■■!」
宇宙言語のため、文字化ができないのが悔やまれる。
この独特の発音によって、彼らは私を攻撃し……てきたではないか!?
触手が私の体へ当たると同時に、強烈なしびれを巻き起こした。おまけに地面へもぐらせていたらしい触手が、土の刺となって私に襲いかかってきた。
「あひゃぁあああ!?」
情けないことに、しびれる体をフルに動かして遺跡から脱することに集中せざるを得なかった。村へと帰ってきた私を、村民は大慌てで寝室へと連れて行ってくれた。
ろれつの回らない私を心配し、多くの村民が赴いてくれた。初コンタクトは失敗に終わったが、私はあきらめない旨を伝えたが、うまく伝わっただろうか……。
●
「宇宙人だと村からの使者は言っていました。が、どう考えても雑魔です」
スタッフはそういうと、端的に雑魔について村民の語った情報を述べた。
おそらく地上で生息できるように進化したクラゲの雑魔であろうということだ。触手を地面に潜らせ、土をまとわせて槍のように刺突するという。
また、麻痺毒を持っているそうなので注視が必要だ。
問題は倒した後だという。
「一応、宇宙人説を説いている宇宙人研究者がいるらしいので、注意してください。具体的には、宇宙の危機とか倒したことによる軋轢を避けていただけると今後が楽です」
下手に喧伝されると、後々差し支える可能性があるのだという。
ツチクラゲ討伐はきっちり行い、煩わしい事後処理もとい研究者説得も行ってほしいとのことだ。
「すべてはプラズマの影響だったんだよとかいっておいてくださいな」
リプレイ本文
●
円形状に巨石が並べられた遺跡を前に、ハンターたちは立ち止まった。
内部に見えるクラゲの姿をした雑魔を見つけ、慎重に戦闘態勢にうつるためだ。
「確かにあれは……それっぽい、ですね」
アリス・ナイトレイ(ka0202)のいうそれとは、宇宙人のことである。依頼内容にあったとおり、宇宙人として主張するものがいるのも頷けた。
「宇宙人……そして、ストーンヘンジ状の遺跡……我が愛しのオカルトの匂いがするな……ククク……」
怪しげな笑みをこぼす久延毘 大二郎(ka1771)に、アリスは苦笑する。
「それにしても、随分と懐かしい宇宙人像な気がします」
否定はしないという表情で、大二郎は目の前の何かをじっと見つめる。
「はー、宇宙ねえ……。この空ン上に、なモンが広がってるって言われても、ピンとこねえな」
「そうだよね」
「まあ、ワケわかんねえ生物なら目の前にいるけどよ」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)とテルヒルト(ka0963)はそんなやりとりをしながら、目の前のクラゲを見つめていた。
「クラゲなら、お酒に合うって聞いたけどあれは食べられるのかな?」
テルヒルトの目には、どうにも食欲を削ぐ色合いにしか見えなかった。半透明な土色の物体が、美味しいものになるとは思えない。
「宇宙人いるものならボクも会ってみたいものだ」
ボルディアたちのやりとりを耳にしていた星見 香澄(ka0866)が、笑いかけながら告げる。
「まがい物には用はないけどね」
香澄には、クラゲたちが宇宙人と思えなかった。
「宇宙人のう? 確か……異なる星の者じゃったか?」
そう口を開いたのは、ガイウス=フォン=フェルニアス(ka2612)だ。
「雑魔の由来については、諸説あるが。よく分からんと言うのが現状じゃ」
滔々と雑魔と宇宙人について考えるところ述べてみる。
「もしかしたら、クリムゾンウェスト以外からの来訪者の意味なら、当たってるかもしれないがな。ワシには分からぬのう」
結局、結論はわからないのだ。
ガイウスの話を聞きながら、ロイド・ブラック(ka0408)が難しい顔をする。
「前提が間違っていれば……その過程が正しければ正しい程、結論は間違う事となる」
宇宙人と雑魔の関係性等、誰もわからない。
とりあえず、雑魔であるのは間違いないのだ。
「ウチュウジンというものはイマイチ理解できないけど、ワァーシンとよく似ているみたいだ」
イーディス・ノースハイド(ka2106)はそういったものの、姿形は似ていたとしても力の差は見て取れた。それでも、
「あの人が、うっかり近づいたら大変だね。なるべく相手がウチュウジンでないと理解してもらわないと、今後危ない場面に出会う可能性は否定できないね」
そして、今、目の前で群れている雑魔も危険であることに変わりはない。
ぐっと盾と剣を握りなおす。
「行きましょう」
アリスの言葉を合図に、戦闘が始まる。
●
「さて、どのように動くか」
クラゲどもがこちらに気づくか気づかないかの距離で、ロイドは弓を引いた。
弧を描きながら矢は、最も近くにいたクラゲに刺さる。
まんじゅうのような頭に矢をさしたまま、クラゲがこちらに気づいたように見えた。
「機先を制するのは、大事であろう」
ロイドに続いて、大二郎も同じクラゲに狙いをつける。
意識を集中させ、鋭い風を放つ。風に翻弄されるように蠢くクラゲは、その一撃で触手をいくつも失った。
その隙をついて、前衛組が接近を狙う。
脚にマテリアルを集中させ、まず接近を果たしたのはテルヒルトだ。
「やっぱり、食べるのは嫌かな?」
近づいて漂う土の香を嗅ぎながら、剣をふるう。
なめらかな動きで肉厚な刃が、深々と突き刺さる。
反撃するように、触手がテルヒルトへと伸びていく。
「そうはさせないよ」
割って入ってきたのは、イーディスだ。
幅広い盾でテルヒルトを隠すように、庇う。触手はその守りを崩せなかった。
続けとばかりに、ボルディアが大剣を振り下ろす。
だが、クラゲは触手を失い、身を軽くしたのかふらりとかわす。
「っと、こいつかっ」
構え直す隙をついて、地面から土の槍が飛び出してきた。ボルディアたちが聞いていた、研究者を襲ったのと同じ攻撃だろう。
見渡すと、複数体が土の中へ触手を潜らせながら移動している。
「結構伸びるようだね」
同じく土の槍を、頭に受けた香澄が地面を見返す。明らかにクラゲの元々の触手の長さより、距離が伸びている。
ところどころ、脈打つような跡が垣間見える。
「これは……」
アリスは敵の攻撃に惑わされ、集中を途切らせてしまう。
放った風の刃は、クラゲのいた地面に傷跡をつけるだけだった。
悔しげなアリスへ向かって地面から、槍が射出された。
「ぼさっしてはいかんじゃろう」
だが、その槍をガイウスが庇いに入る。盾で防いでみせるが、別の位置からもガイウスを狙った触手が飛んできていた。
身体にかすかな痺れを感じながら、自身の身体にマテリアルを循環させ傷を治す。
「浅かったかな」
前線ではテルヒルトは顔を渋らせていた。
とどめを刺すつもりで放った一撃は、かすかに急所を外したらしい。
まだ抵抗できるのか、そのクラゲはロイドの弓を避けてみせる。
香澄の放った機導砲の光もクラゲはすらりとかわす。だが、三度目はない。
「確実に、仕留めなくてはな」
冷静に大二郎が狙いをつけていた。風に切り刻まれ、クラゲは土の上に落下する。土塊になったかのように、身がくしゃりと崩れる。
撃破を確認し、ボルディアとイーディスが次なるクラゲへと接近を図る。
突き出る触手は、傾向を把握したボルディアには届かず、イーディスへは響かない。
続くテルヒルトも、縦横無尽の動きで土槍を避けきった。
「全く、しつこいのう」
射程を維持するために、移動していたアリスを庇い立てガイウスは告げる。
どいつの触手がはわからないが、後衛を狙っているようだ。
痺れる身体を奮い立たせ、ガイウスはより守りやすい立ち位置へ移るのだった。
●
アリスが巻き起こした風が、クラゲを大いに切り裂く。
風が去ると、瞬脚によって急接近したテルヒルトが刃を振るう。一匹倒せば、動きはだいたいわかるものだ。
卒なく近づいたボルディアが大剣を振り下ろし、頭部分を深く斬りつける。触手の数本も同時に落とされて土に帰っていった。
「たまには、攻勢に出ないとね」
守りの体勢は崩さず、イーディスがクラゲを刺突する。剣を引き抜けば、さらりと崩れ落ちた。さっと身を翻せば、無数の触手がイーディスを狙っていたらしい。地中へ潜る触手の姿があった。
「突き故に麻痺毒は先端と判断したが……果たして、正か否か」
別の箇所では、土からつきだした触手を機導剣で焼き切るロイドの姿があった。手で掴んでみたが、ピリッとした感触を覚え即座に手放す。
一本は切り落とせたが、それまでだ。
「違ったか」
自らの仮説が違い、低くつぶやく。手に痺れが残ったのを感じ、テルヒルトへ運動を支えるマテリアルを注入する。
そのテルヒルトは、突き出る触手を避けながら次なる獲物を狙っていた。
「大丈夫ですか?」
先ほどまで自らを守っていたガイウスにアリスが問いかける。
頷くガイウスはマテリアルを循環させて、体力を回復させていた。そうしながら、戦場をすぅっと見渡す。各個撃破はうまくいっているようだ。
「問題ない。戦況は優勢じゃが……油断はできんのう!」
咄嗟に放った光が、香澄を覆う。どうやら、複数の触手が同時に襲いかかったらしい。回避を試みるが、間に合わない。ガイウスのプロテクションが、香澄の身が削られるのを緩和する。
「やられっぱなしとは、いかないからね」
一条の光が剣となって、触手を切り落とす。さすがに数が多いと、反応してしまうのだろうか。少し距離のあるところで、クラゲが震えるのが見えた。
「ボクが撃って怯ませる、その隙に一気に畳み込もう」
テルヒルトが向かっていた。ここまでくれば一気に決めていきたい。
痺れる身体に鞭打ちながら、魔導砲をぶっ放す。光に撃たれながら、クラゲは向かい来るテルヒルトへと触手を伸ばす。
だが、届かない。
逆に大二郎が、アリスが、風の刃を浴びせかける。ロイドの魔導砲が、クラゲを掠める。
接近を果たしたテルヒルトが、まずは一撃を加える。触手を失い、崩れかけた身体が、ゆらりと揺れた。
「触手を失えば、フツーにぶった切って終わりだな」
重い音を響かせて、ボルディアが一刀両断にした。
●
ここまでくれば、多勢に無勢。
クラゲに勝ち目はないのは見えていた。だが、そんな戦況判断をする能力は持ち合わせていないのか抵抗は続ける。
「無駄ね」
無常にもクラゲの攻撃はイーディスの盾によって阻まれる。
ここまで蓄積していたダメージも、ガイウスによって治癒が施されていた。
「今度はもっと美味しそうな色をしてよね」
クラゲにはどうしようもない要望を押し付けながら、テルヒルトの刃が光る。切っ先をそのまま流し、後方から放たれていた鋭い風にクラゲを巻き込む。
ほろほろと崩れ落ちるクラゲの身体が、風によって巻き上げられて霧散した。
「残るは一匹ですね」
アリスはその一匹を見やる。哀れ残された一匹は、ここにきて逃亡を試みていた。
抵抗をやめるように土から触手を放ち、ふわふわと浮いてハンターの隙間を探す。
ここだと思った場所があったのか、速度を上げるが……。
「逃げられると思ったか?」
ロイドが放った矢が行く手を阻む。
最後の抵抗と地中へと触手を送り込む。
だが、放った触手はイーディスの盾によって弾かれてしまった。
打つ手はない、いや、その触手すらも香澄が撃った一条の光が無情にも消し飛ばした。
「終わりのようじゃな」
遠くから香澄やイーディスを光で包んでいたガイウスが告げる。
翻弄されるクラゲは、なされるがままだ。ボルディアの切っ先がクラゲから離れる。
そして、クラゲの身体は地面へと溶け消えていた。
●
「君たちも宇宙人と接触を図ったのだな。全くもって、羨ましい限りだ!」
開口一番、その男は高らかに告げた。
異様な熱意を前にして、アリスは
(ああ……なるほど、変な方向に夢中になっちゃったんですね)
と悟った。だが、この場はその熱意を下げてもらわなければならない。
幸いなことに、この研究者が目覚めたのは戦闘が終わってからのことだった。
「私たちが赴いた時には、それらしい姿はありませんでした」
「そのとおりだ。私達が着いた時には既に宇宙人はどこにも見当たらなかった。彼らは帰るべき場所に帰ったのではないだろうか?」
大二郎が口裏を合わせて、帰還したのだと説き伏せようとする。だが、男は声を荒らげて、
「それはない! 彼らはあそこに根付こうとしていた」
と主張してきた。
ごちゃごちゃと反論しかけた男に、ボルディアが青筋を立てるがそれを香澄が抑える。
「一時的な中継地点という可能性はどうだろうか。私にはあの遺跡が怪しいと思う。実は、あれは彼らにしか使えない転移装置のような物なのでは?」
大二郎の説を聞き、男はふむと溜飲を下げた。腑に落ちるところがあったのだろう。
「だとすれば、彼らは遥か昔から『ここ』に来ていた事になる……この仮説、貴方はどう思う?」
続けて大二郎に問われ、男はさもありなんという感じで頷いてみせた。
なお、テルヒルトはとりあえず頷いて
「なるほどね」
とその場をつないでいた。ただし頭の上には疑問符が点灯している。
とりあえず、今回は帰還したのだということで納得したようだ。
しかし、この研究者が他の機会に何らかの事態に巻き込まれない可能性はない。
続いて、そのあたりを説き伏せておく必要性がある。
端緒を開いたのは香澄だった。
「ボクたちが見れなかった宇宙人、先生が発見者なのかい?」
「そうだとも」
誇らしげにいう男にイーディスが告げる。
「でも、異種族との関係は全部が全部友好的な訳ではないよ」
むっと男は、表情を曇らせる。
「生態的に相反する存在といったトコロかな、それに無茶をして死んでしまえば平和的なウチュウジンとの接触も果たせなくなってしまうのではないかな?」
「そもそも環境の違う異星に降り立つのだから何かしら防護装備がなくてはおかしくあるまい?」
イーディスの言葉をロイドが次いでおく。
男は、ぐぬぬと唸りを見せる。反論することはできないようだ。
ここで意固地になられても困るので、香澄がとりなす。
「先生ならまた発見できるさ、その際は呼んでくれないかな。ボクも宇宙人には興味あるんだ。素晴らしい研究頑張ってほしいね」
「奴らと交信することができるのであれば、その道はさがしてもよいのではないのかのう?」
ガイウスも何となく意見を挟んでおく、その一つ一つを男は咀嚼する。
香澄が最後に、
「ただし、友好的かはわからないからそこは気をつけてくれ、その際ボディガードくらいさせてもらうさ」
と告げると、そのときはよろしく頼むと答えていた。
「さて、と」
研究者が納得した声を聞き、大二郎はそっと村を出る。
「……方便として言ったことではあるが、本当に宇宙人の転移装置なのかも知れないしな」
自分の中で結論付けるため、大二郎は遺跡へ向かう。
後々、調査隊が訪れるかもしれない。それはそれとして、自分なりの結論を持ちたいのだ。
この世は謎に満ちている。
それだけは、確かなのだろう。
円形状に巨石が並べられた遺跡を前に、ハンターたちは立ち止まった。
内部に見えるクラゲの姿をした雑魔を見つけ、慎重に戦闘態勢にうつるためだ。
「確かにあれは……それっぽい、ですね」
アリス・ナイトレイ(ka0202)のいうそれとは、宇宙人のことである。依頼内容にあったとおり、宇宙人として主張するものがいるのも頷けた。
「宇宙人……そして、ストーンヘンジ状の遺跡……我が愛しのオカルトの匂いがするな……ククク……」
怪しげな笑みをこぼす久延毘 大二郎(ka1771)に、アリスは苦笑する。
「それにしても、随分と懐かしい宇宙人像な気がします」
否定はしないという表情で、大二郎は目の前の何かをじっと見つめる。
「はー、宇宙ねえ……。この空ン上に、なモンが広がってるって言われても、ピンとこねえな」
「そうだよね」
「まあ、ワケわかんねえ生物なら目の前にいるけどよ」
ボルディア・コンフラムス(ka0796)とテルヒルト(ka0963)はそんなやりとりをしながら、目の前のクラゲを見つめていた。
「クラゲなら、お酒に合うって聞いたけどあれは食べられるのかな?」
テルヒルトの目には、どうにも食欲を削ぐ色合いにしか見えなかった。半透明な土色の物体が、美味しいものになるとは思えない。
「宇宙人いるものならボクも会ってみたいものだ」
ボルディアたちのやりとりを耳にしていた星見 香澄(ka0866)が、笑いかけながら告げる。
「まがい物には用はないけどね」
香澄には、クラゲたちが宇宙人と思えなかった。
「宇宙人のう? 確か……異なる星の者じゃったか?」
そう口を開いたのは、ガイウス=フォン=フェルニアス(ka2612)だ。
「雑魔の由来については、諸説あるが。よく分からんと言うのが現状じゃ」
滔々と雑魔と宇宙人について考えるところ述べてみる。
「もしかしたら、クリムゾンウェスト以外からの来訪者の意味なら、当たってるかもしれないがな。ワシには分からぬのう」
結局、結論はわからないのだ。
ガイウスの話を聞きながら、ロイド・ブラック(ka0408)が難しい顔をする。
「前提が間違っていれば……その過程が正しければ正しい程、結論は間違う事となる」
宇宙人と雑魔の関係性等、誰もわからない。
とりあえず、雑魔であるのは間違いないのだ。
「ウチュウジンというものはイマイチ理解できないけど、ワァーシンとよく似ているみたいだ」
イーディス・ノースハイド(ka2106)はそういったものの、姿形は似ていたとしても力の差は見て取れた。それでも、
「あの人が、うっかり近づいたら大変だね。なるべく相手がウチュウジンでないと理解してもらわないと、今後危ない場面に出会う可能性は否定できないね」
そして、今、目の前で群れている雑魔も危険であることに変わりはない。
ぐっと盾と剣を握りなおす。
「行きましょう」
アリスの言葉を合図に、戦闘が始まる。
●
「さて、どのように動くか」
クラゲどもがこちらに気づくか気づかないかの距離で、ロイドは弓を引いた。
弧を描きながら矢は、最も近くにいたクラゲに刺さる。
まんじゅうのような頭に矢をさしたまま、クラゲがこちらに気づいたように見えた。
「機先を制するのは、大事であろう」
ロイドに続いて、大二郎も同じクラゲに狙いをつける。
意識を集中させ、鋭い風を放つ。風に翻弄されるように蠢くクラゲは、その一撃で触手をいくつも失った。
その隙をついて、前衛組が接近を狙う。
脚にマテリアルを集中させ、まず接近を果たしたのはテルヒルトだ。
「やっぱり、食べるのは嫌かな?」
近づいて漂う土の香を嗅ぎながら、剣をふるう。
なめらかな動きで肉厚な刃が、深々と突き刺さる。
反撃するように、触手がテルヒルトへと伸びていく。
「そうはさせないよ」
割って入ってきたのは、イーディスだ。
幅広い盾でテルヒルトを隠すように、庇う。触手はその守りを崩せなかった。
続けとばかりに、ボルディアが大剣を振り下ろす。
だが、クラゲは触手を失い、身を軽くしたのかふらりとかわす。
「っと、こいつかっ」
構え直す隙をついて、地面から土の槍が飛び出してきた。ボルディアたちが聞いていた、研究者を襲ったのと同じ攻撃だろう。
見渡すと、複数体が土の中へ触手を潜らせながら移動している。
「結構伸びるようだね」
同じく土の槍を、頭に受けた香澄が地面を見返す。明らかにクラゲの元々の触手の長さより、距離が伸びている。
ところどころ、脈打つような跡が垣間見える。
「これは……」
アリスは敵の攻撃に惑わされ、集中を途切らせてしまう。
放った風の刃は、クラゲのいた地面に傷跡をつけるだけだった。
悔しげなアリスへ向かって地面から、槍が射出された。
「ぼさっしてはいかんじゃろう」
だが、その槍をガイウスが庇いに入る。盾で防いでみせるが、別の位置からもガイウスを狙った触手が飛んできていた。
身体にかすかな痺れを感じながら、自身の身体にマテリアルを循環させ傷を治す。
「浅かったかな」
前線ではテルヒルトは顔を渋らせていた。
とどめを刺すつもりで放った一撃は、かすかに急所を外したらしい。
まだ抵抗できるのか、そのクラゲはロイドの弓を避けてみせる。
香澄の放った機導砲の光もクラゲはすらりとかわす。だが、三度目はない。
「確実に、仕留めなくてはな」
冷静に大二郎が狙いをつけていた。風に切り刻まれ、クラゲは土の上に落下する。土塊になったかのように、身がくしゃりと崩れる。
撃破を確認し、ボルディアとイーディスが次なるクラゲへと接近を図る。
突き出る触手は、傾向を把握したボルディアには届かず、イーディスへは響かない。
続くテルヒルトも、縦横無尽の動きで土槍を避けきった。
「全く、しつこいのう」
射程を維持するために、移動していたアリスを庇い立てガイウスは告げる。
どいつの触手がはわからないが、後衛を狙っているようだ。
痺れる身体を奮い立たせ、ガイウスはより守りやすい立ち位置へ移るのだった。
●
アリスが巻き起こした風が、クラゲを大いに切り裂く。
風が去ると、瞬脚によって急接近したテルヒルトが刃を振るう。一匹倒せば、動きはだいたいわかるものだ。
卒なく近づいたボルディアが大剣を振り下ろし、頭部分を深く斬りつける。触手の数本も同時に落とされて土に帰っていった。
「たまには、攻勢に出ないとね」
守りの体勢は崩さず、イーディスがクラゲを刺突する。剣を引き抜けば、さらりと崩れ落ちた。さっと身を翻せば、無数の触手がイーディスを狙っていたらしい。地中へ潜る触手の姿があった。
「突き故に麻痺毒は先端と判断したが……果たして、正か否か」
別の箇所では、土からつきだした触手を機導剣で焼き切るロイドの姿があった。手で掴んでみたが、ピリッとした感触を覚え即座に手放す。
一本は切り落とせたが、それまでだ。
「違ったか」
自らの仮説が違い、低くつぶやく。手に痺れが残ったのを感じ、テルヒルトへ運動を支えるマテリアルを注入する。
そのテルヒルトは、突き出る触手を避けながら次なる獲物を狙っていた。
「大丈夫ですか?」
先ほどまで自らを守っていたガイウスにアリスが問いかける。
頷くガイウスはマテリアルを循環させて、体力を回復させていた。そうしながら、戦場をすぅっと見渡す。各個撃破はうまくいっているようだ。
「問題ない。戦況は優勢じゃが……油断はできんのう!」
咄嗟に放った光が、香澄を覆う。どうやら、複数の触手が同時に襲いかかったらしい。回避を試みるが、間に合わない。ガイウスのプロテクションが、香澄の身が削られるのを緩和する。
「やられっぱなしとは、いかないからね」
一条の光が剣となって、触手を切り落とす。さすがに数が多いと、反応してしまうのだろうか。少し距離のあるところで、クラゲが震えるのが見えた。
「ボクが撃って怯ませる、その隙に一気に畳み込もう」
テルヒルトが向かっていた。ここまでくれば一気に決めていきたい。
痺れる身体に鞭打ちながら、魔導砲をぶっ放す。光に撃たれながら、クラゲは向かい来るテルヒルトへと触手を伸ばす。
だが、届かない。
逆に大二郎が、アリスが、風の刃を浴びせかける。ロイドの魔導砲が、クラゲを掠める。
接近を果たしたテルヒルトが、まずは一撃を加える。触手を失い、崩れかけた身体が、ゆらりと揺れた。
「触手を失えば、フツーにぶった切って終わりだな」
重い音を響かせて、ボルディアが一刀両断にした。
●
ここまでくれば、多勢に無勢。
クラゲに勝ち目はないのは見えていた。だが、そんな戦況判断をする能力は持ち合わせていないのか抵抗は続ける。
「無駄ね」
無常にもクラゲの攻撃はイーディスの盾によって阻まれる。
ここまで蓄積していたダメージも、ガイウスによって治癒が施されていた。
「今度はもっと美味しそうな色をしてよね」
クラゲにはどうしようもない要望を押し付けながら、テルヒルトの刃が光る。切っ先をそのまま流し、後方から放たれていた鋭い風にクラゲを巻き込む。
ほろほろと崩れ落ちるクラゲの身体が、風によって巻き上げられて霧散した。
「残るは一匹ですね」
アリスはその一匹を見やる。哀れ残された一匹は、ここにきて逃亡を試みていた。
抵抗をやめるように土から触手を放ち、ふわふわと浮いてハンターの隙間を探す。
ここだと思った場所があったのか、速度を上げるが……。
「逃げられると思ったか?」
ロイドが放った矢が行く手を阻む。
最後の抵抗と地中へと触手を送り込む。
だが、放った触手はイーディスの盾によって弾かれてしまった。
打つ手はない、いや、その触手すらも香澄が撃った一条の光が無情にも消し飛ばした。
「終わりのようじゃな」
遠くから香澄やイーディスを光で包んでいたガイウスが告げる。
翻弄されるクラゲは、なされるがままだ。ボルディアの切っ先がクラゲから離れる。
そして、クラゲの身体は地面へと溶け消えていた。
●
「君たちも宇宙人と接触を図ったのだな。全くもって、羨ましい限りだ!」
開口一番、その男は高らかに告げた。
異様な熱意を前にして、アリスは
(ああ……なるほど、変な方向に夢中になっちゃったんですね)
と悟った。だが、この場はその熱意を下げてもらわなければならない。
幸いなことに、この研究者が目覚めたのは戦闘が終わってからのことだった。
「私たちが赴いた時には、それらしい姿はありませんでした」
「そのとおりだ。私達が着いた時には既に宇宙人はどこにも見当たらなかった。彼らは帰るべき場所に帰ったのではないだろうか?」
大二郎が口裏を合わせて、帰還したのだと説き伏せようとする。だが、男は声を荒らげて、
「それはない! 彼らはあそこに根付こうとしていた」
と主張してきた。
ごちゃごちゃと反論しかけた男に、ボルディアが青筋を立てるがそれを香澄が抑える。
「一時的な中継地点という可能性はどうだろうか。私にはあの遺跡が怪しいと思う。実は、あれは彼らにしか使えない転移装置のような物なのでは?」
大二郎の説を聞き、男はふむと溜飲を下げた。腑に落ちるところがあったのだろう。
「だとすれば、彼らは遥か昔から『ここ』に来ていた事になる……この仮説、貴方はどう思う?」
続けて大二郎に問われ、男はさもありなんという感じで頷いてみせた。
なお、テルヒルトはとりあえず頷いて
「なるほどね」
とその場をつないでいた。ただし頭の上には疑問符が点灯している。
とりあえず、今回は帰還したのだということで納得したようだ。
しかし、この研究者が他の機会に何らかの事態に巻き込まれない可能性はない。
続いて、そのあたりを説き伏せておく必要性がある。
端緒を開いたのは香澄だった。
「ボクたちが見れなかった宇宙人、先生が発見者なのかい?」
「そうだとも」
誇らしげにいう男にイーディスが告げる。
「でも、異種族との関係は全部が全部友好的な訳ではないよ」
むっと男は、表情を曇らせる。
「生態的に相反する存在といったトコロかな、それに無茶をして死んでしまえば平和的なウチュウジンとの接触も果たせなくなってしまうのではないかな?」
「そもそも環境の違う異星に降り立つのだから何かしら防護装備がなくてはおかしくあるまい?」
イーディスの言葉をロイドが次いでおく。
男は、ぐぬぬと唸りを見せる。反論することはできないようだ。
ここで意固地になられても困るので、香澄がとりなす。
「先生ならまた発見できるさ、その際は呼んでくれないかな。ボクも宇宙人には興味あるんだ。素晴らしい研究頑張ってほしいね」
「奴らと交信することができるのであれば、その道はさがしてもよいのではないのかのう?」
ガイウスも何となく意見を挟んでおく、その一つ一つを男は咀嚼する。
香澄が最後に、
「ただし、友好的かはわからないからそこは気をつけてくれ、その際ボディガードくらいさせてもらうさ」
と告げると、そのときはよろしく頼むと答えていた。
「さて、と」
研究者が納得した声を聞き、大二郎はそっと村を出る。
「……方便として言ったことではあるが、本当に宇宙人の転移装置なのかも知れないしな」
自分の中で結論付けるため、大二郎は遺跡へ向かう。
後々、調査隊が訪れるかもしれない。それはそれとして、自分なりの結論を持ちたいのだ。
この世は謎に満ちている。
それだけは、確かなのだろう。
依頼結果
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サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 イーディス・ノースハイド(ka2106) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/08/22 23:25:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/18 13:01:21 |