ゲスト
(ka0000)
【龍鉱】坊ちゃん剣士、旅に出る
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/10 19:00
- 完成日
- 2016/03/17 17:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●頼む
グラズヘイム王国の中央でも北東寄りにある小さな町フォークベリーのエクラ教会の隣の家の住人は久々に在宅していた。
「……先生、男の人が来ました」
弟子のルゥルは外で遊んでいたらしく、服のあちこちに泥を付けている。
「……抽象的だな……名前位聞けと教えたはずじゃ!」
「……シャーが来たと言えって」
「……ああ、珍しいのう、マークの方でなくこっちに来るとは」
マーナは居間に通すように指示した。マークとは隣のエクラ教会の司祭の名前である。
入ってきたのは、中肉中背の働き盛りと言う年齢の男だ。
「久しぶりじゃ、元気そうで何より」
マーナはにこやかに迎える。
「久しぶりも何も、私が司祭を尋ねて来てもあなたがいないというし、ついでに顔を見せてもいないのはあなただ」
言い返され、マーナは笑う。
「その通りじゃ、で、わしに話とは? 領主殿」
領主であるシャールズ・ベリンガーは溜息を洩らした。
「まだハンターを続けているんだろう?」
「まあ、依頼はあまり受けないが、植物採集やらは一人の方がいいからのう」
「……そこで、カム・ラディ遺跡に行ってくれないか?」
マーナはシャールズの口から出た地名に驚いた。
「研究熱でも出たか、古都の領主でもあるまいし」
「……いや、まったく関係ないな。……息子が……リシャールが……依頼を受けて行くと言い張っているんだ」
シャールズは疲れた顔をした。
「……いや、覚醒者だったと言うことすら初耳じゃが」
「……あの子は病弱で頭はいいが、あまり、荒事には関わらせないで来たんだ」
「……いや、うん、リシャールの方が跡取りじゃったなぁ?」
長女や次男、次女がいる事を考える。長子であれば長女だが、長女自身が「跡取りになることに興味なし」とあっさり長男に押し付けているため。
「カム・ラディの拠点で炊き出しとしても危険じゃろう?」
「それが、これを見てくれ」
マーナは乾いた笑いを漏らし、依頼内容の写しを返した。その時にはシャールズと同じ、疲れたような表情になる。
「止められないのか?」
「監禁すれば」
「……まさか、わしに『スリープクラウド』かけろと?」
「いや、本当に監禁すれば……親子間がこじれる処の騒ぎではなくなる」
シャールズは冷静だった、困惑している様子でも。
「どうしたいんじゃ?」
「あなたについていってもらいたいんだ」
「……」
マーナは「ぬしが行けばいい」と言いかけるが、さすがに止まった。領主に出かけられるといろいろ問題が生じる。
「いかにもっ、というハンターの知り合いはおらぬのか」
「マーナ……頼むっ」
「すまない、お前の子を」
マーナは目頭を押さえた。
「……諦めないでくれっ」
「……まあ、聖導士か機導師だろう……なら……」
「舞刀士だ」
「……すまない」
「だから、諦めないでくれっ」
確実に前衛だ。マーナはかつての仲間を考えてみる、隣家のエクラ司祭、弟子ルゥルの母親と今は領主のシャールズ。
(わしがこやつの立場でもわしのところに来るな……何かあった場合……)
マーナは思案する。
「……危なくない方に誘導するとかは?」
「たぶん、本人は納得しない」
領主とはかくあるべきという教育と、父親は凄腕のハンターだったという妻の誇張を聞いて育った息子が引くわけがなかった。そして、妙に両親に反発をしているというのだ。
(あのおっとり坊やの反抗期……命がけなのは気のせいではあるまい)
マーナは溜息をもらす。
「……分かった。できる限りのことはしよう、すまない」
「諦めないでくれ」
シャールズはうめいた。
●遺跡
カム・ラディ遺跡にハンターたちは集まる。
その中に真新しい防具を身に付けたリシャール・ベリンガーの姿もある。
「……シャーにどこか似ておるの、やっぱり」
マーナはシャールズと出会った時のことを思い出していた。
「……先生? まさか、父上に言われて……」
「来たんじゃが」
「私は帰りません! だって、やるべきことはやらないとならないんです」
「止めに来たわけではない……が、ぬしが無茶をしないよう、引き際を誤らないように来たのじゃ」
「……うっ」
「領内のゴブリン退治でもまずはしておればよかったのだ」
「ゴブリンだって多くいると危険です」
「分かっているならなおさらじゃ」
マーナは叱る。あの町近辺でそれほど雑魔やゴブリンを見なかったとはいえ、彼が継ぐかもしれない領内の事なのだ。
「私だってやれると証明したくて……」
マーナはうなずいた。
「ほれ、まずは挨拶じゃ。先輩どもにな」
ハンターは不審げにマーナを見る。
「わしはこやつの保護者の代わりにここにきておるだけじゃ。一応、これの家庭教師をやったことがあるからの、だから先生と呼ばれておる」
ハンターの目から見て、マーナは名こそ知られていないがそれなりに戦ってきた人物だと感じられる。
「命がけの状況とは思うがの、ハンターのイロハも知らぬひよっこを頼むぞ?」
マーナの言葉に少し怒っていた顔のリシャールの中に、ハンターは「ひよっこ」を見た。
グラズヘイム王国の中央でも北東寄りにある小さな町フォークベリーのエクラ教会の隣の家の住人は久々に在宅していた。
「……先生、男の人が来ました」
弟子のルゥルは外で遊んでいたらしく、服のあちこちに泥を付けている。
「……抽象的だな……名前位聞けと教えたはずじゃ!」
「……シャーが来たと言えって」
「……ああ、珍しいのう、マークの方でなくこっちに来るとは」
マーナは居間に通すように指示した。マークとは隣のエクラ教会の司祭の名前である。
入ってきたのは、中肉中背の働き盛りと言う年齢の男だ。
「久しぶりじゃ、元気そうで何より」
マーナはにこやかに迎える。
「久しぶりも何も、私が司祭を尋ねて来てもあなたがいないというし、ついでに顔を見せてもいないのはあなただ」
言い返され、マーナは笑う。
「その通りじゃ、で、わしに話とは? 領主殿」
領主であるシャールズ・ベリンガーは溜息を洩らした。
「まだハンターを続けているんだろう?」
「まあ、依頼はあまり受けないが、植物採集やらは一人の方がいいからのう」
「……そこで、カム・ラディ遺跡に行ってくれないか?」
マーナはシャールズの口から出た地名に驚いた。
「研究熱でも出たか、古都の領主でもあるまいし」
「……いや、まったく関係ないな。……息子が……リシャールが……依頼を受けて行くと言い張っているんだ」
シャールズは疲れた顔をした。
「……いや、覚醒者だったと言うことすら初耳じゃが」
「……あの子は病弱で頭はいいが、あまり、荒事には関わらせないで来たんだ」
「……いや、うん、リシャールの方が跡取りじゃったなぁ?」
長女や次男、次女がいる事を考える。長子であれば長女だが、長女自身が「跡取りになることに興味なし」とあっさり長男に押し付けているため。
「カム・ラディの拠点で炊き出しとしても危険じゃろう?」
「それが、これを見てくれ」
マーナは乾いた笑いを漏らし、依頼内容の写しを返した。その時にはシャールズと同じ、疲れたような表情になる。
「止められないのか?」
「監禁すれば」
「……まさか、わしに『スリープクラウド』かけろと?」
「いや、本当に監禁すれば……親子間がこじれる処の騒ぎではなくなる」
シャールズは冷静だった、困惑している様子でも。
「どうしたいんじゃ?」
「あなたについていってもらいたいんだ」
「……」
マーナは「ぬしが行けばいい」と言いかけるが、さすがに止まった。領主に出かけられるといろいろ問題が生じる。
「いかにもっ、というハンターの知り合いはおらぬのか」
「マーナ……頼むっ」
「すまない、お前の子を」
マーナは目頭を押さえた。
「……諦めないでくれっ」
「……まあ、聖導士か機導師だろう……なら……」
「舞刀士だ」
「……すまない」
「だから、諦めないでくれっ」
確実に前衛だ。マーナはかつての仲間を考えてみる、隣家のエクラ司祭、弟子ルゥルの母親と今は領主のシャールズ。
(わしがこやつの立場でもわしのところに来るな……何かあった場合……)
マーナは思案する。
「……危なくない方に誘導するとかは?」
「たぶん、本人は納得しない」
領主とはかくあるべきという教育と、父親は凄腕のハンターだったという妻の誇張を聞いて育った息子が引くわけがなかった。そして、妙に両親に反発をしているというのだ。
(あのおっとり坊やの反抗期……命がけなのは気のせいではあるまい)
マーナは溜息をもらす。
「……分かった。できる限りのことはしよう、すまない」
「諦めないでくれ」
シャールズはうめいた。
●遺跡
カム・ラディ遺跡にハンターたちは集まる。
その中に真新しい防具を身に付けたリシャール・ベリンガーの姿もある。
「……シャーにどこか似ておるの、やっぱり」
マーナはシャールズと出会った時のことを思い出していた。
「……先生? まさか、父上に言われて……」
「来たんじゃが」
「私は帰りません! だって、やるべきことはやらないとならないんです」
「止めに来たわけではない……が、ぬしが無茶をしないよう、引き際を誤らないように来たのじゃ」
「……うっ」
「領内のゴブリン退治でもまずはしておればよかったのだ」
「ゴブリンだって多くいると危険です」
「分かっているならなおさらじゃ」
マーナは叱る。あの町近辺でそれほど雑魔やゴブリンを見なかったとはいえ、彼が継ぐかもしれない領内の事なのだ。
「私だってやれると証明したくて……」
マーナはうなずいた。
「ほれ、まずは挨拶じゃ。先輩どもにな」
ハンターは不審げにマーナを見る。
「わしはこやつの保護者の代わりにここにきておるだけじゃ。一応、これの家庭教師をやったことがあるからの、だから先生と呼ばれておる」
ハンターの目から見て、マーナは名こそ知られていないがそれなりに戦ってきた人物だと感じられる。
「命がけの状況とは思うがの、ハンターのイロハも知らぬひよっこを頼むぞ?」
マーナの言葉に少し怒っていた顔のリシャールの中に、ハンターは「ひよっこ」を見た。
リプレイ本文
●実力
ザレム・アズール(ka0878)はリシャールの中に過去の自分を見る。家族とのかかわり、ハンターとしての心構えなど、伝えたい気持ちがあふれる。それを抑えるだけの力を彼はすでに有してはいるから、竹刀を取り出し告げる。
「君の実力を見せてもらってもいいかな?」
緊張しているリシャールはつい保護者であるマーナを見てしまうが、にやにやとしてみているだけで答えはくれない。
リシャールは自分で判断して竹刀を手に対峙する。
(ハンターは外見だけで実力を見極めることは難しいが……「ひよっこ」と呼ばれて怒るようなら向上心は人並みにあるんだろうな)
イーディス・ノースハイド(ka2106)はこの仲間同士の手合わせを見つめる。彼女自身が王国騎士団の従騎士だったこともあり、少年を頼もしくも不安げにも感じる。
「リシャールが相談できると思える相手がいないからの暴走なのよ。だから、出来ればマーナさんには保護者じゃなくてハンターの先達になってほしいかなって思ったの」
マリィア・バルデス(ka5848)の言葉にマーナは苦笑する。
「家庭教師していた手前、どうも説教臭くなる。主らにその座は渡す、その方が効果的じゃ」
この答えにマリィアは弁が立つ彼女に苛立ちも生じるが、理解できてしまうためうなずいた。
パシッ。
竹刀の音が響く。
「決着はついたな。さて……リシャールはなかなか悔しそうな顔をしているな」
榊 兵庫(ka0010)は武術を修めて来たこともあり、この様子は興味深かった。
「……戦うために自ら刃を取るという考え、私は祝福いたします。戦神の加護を持って私もお守りいたしましょう。それと、マーナさんも万が一の為いてくださると安心かと」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)は戦神を信仰するシスターとしてリシャールに声をかける。彼の親に言われ保護者と言う名目のマーナの立場も尊重した。
「リシャール君だね。私はティリル(ka5672)。同じ東方のクラスですし、よろしくお願いしますね。援護を主体とする符術師と前衛特化の舞刀士は相性バッチリなんですよ。連携を意識して、一緒にがんばりましょう。それがプロです!」
ティリルはリシャールの前に出て、跳ねるように告げた。
「えっ、はい、よろしくお願いします」
リシャールは弾む物から目を逸らす。
「はやてもいますわ! どうぞよろしくお願いしますね」
八劒 颯(ka1804)はにこやかにリシャールに挨拶する。
リシャールの顔は気の毒なほど真っ赤であり、視線はさまよっている。
「ん? 格好がけしからん! と言うことでしょうか? 実用的に防御を度外した装備ですからねぇ、お勧めはしませんよ。大型ドリルを使うためにはこうするしかなかったんですよ」
颯は理由を話す、出会ってしまったドリルという武器について。
「さて、行こうか」
兵庫はリシャールの背を押した。
親睦なら歩きながらでもできる。見回りでもあるため危険も伴う地域に行くが、会話の全てがいけない事ではないのだ。
●教訓
警備で歩き回る間に、もしも敵にあった時を考え役割を分担していく。
「前衛と後衛を基準として、リシャールには前衛を突破した物から後衛を守ってもらいたい」
兵庫が告げると、緊張で強張った顔でリシャールはうなずく。
「これ、普通のハンターなら単独なら死ぬと思うわ。どうしてできると思ったのか根拠を聞きたいわね」
マリィアが厳しい口調でリシャールに問う。保護者の耳に問答を聞かせるつもりもある。
「……うっ……勢いです」
少しの間の後、リシャールは消えるような小さな声で答えた。
マリィアがちらりとマーナを見る。
「依頼に合わせてパーティを組むわ。まず、依頼に合わせたパーティの組み方から学びなさい」
「はい」
リシャールは神妙に返答した。
「今回は私達もいて独りじゃないのよ、そんな顔しなくて平気なのよ」
ティリルがリシャールを励ますように腕を取り、胸に抱く。
「う、うわあ」
「そうですよ、仲間というのは分担して立ち向かうものです。攻撃メーン、盾で仲間を守ってくださる方、はやては電撃攻撃が得意ですわ」
颯がリシャールの前で振り返りつつ言う。
「……あっ」
「こら、リシャール、抵抗しないと。鼻血でるとか、鼻の下伸びているとかそのうち言われるぞ」
ザレムが気付いてティリルを引き離す。
「え? ええっ!? わ、私はそんな顔していましたか?」
リシャールは顔を触りながらおろおろしている。彼の中にある大人像は父親であり、こういう時毅然としているのが常だ。
(幸い、緊張はほぐれたようだが……敵意ある生き物に会う前は味方のそっちが強敵か)
兵庫はリシャールの様子を見て苦笑する。素直な少年らしい行動は微笑ましくもある。
「ああ、胸が問題ですね」
状況見ていたアデリシアが指摘するとティリルは照れたように笑った。
「……まあ、鎧やら防寒着は着ているがな」
イーディスは溜息を洩らした、身長から目線が行きやすいというのはなんとなく分かるが。リシャールは年齢の割には細く、小柄である。
「そろそろ、危険なところに出る……」
ザレムは注意を促す。見回り範囲は広いし、ハンターが多い所から離れて行けばいくほど敵対勢力は現れる。
この瞬間、リシャールをからかうようなしぐさも見えた面々の雰囲気は変わった。
否応なく緊張が増す。
訓練では決して味わうことのない空気であり、リシャールはゴクリと唾を飲み込む。
(父上もおっしゃったし……もし、何かあれば兵を率いなければいけないんだ、私も)
初陣である事には違いなく、リシャールの瞬きは減る。
「……落ち着け。俺だって駆け出しの頃があったんだ。勢いで来たとは言うが、父のような誉や己の実力を測りたい、次期領主としてふさわしくなりたい、君は思ったんじゃないのか? ……君は戦力だ。俺たちは君を必要なら守るし、君も後衛を守らないといけない」
ザレムはリシャールの肩に触れると、震えが伝わる。
「依頼は数多くある上ここを選んだ。巡り巡ってグラズヘイムに被害が出る事もあるんだ、ここを守らないと」
イーディスの言葉にリシャールはうなずく。貴族として何をするか、は父母や家庭教師に入った先生たちから教え込まれている。
「死んだり怪我をすれば、あなたの家族も依頼人だって泣くのよ? 何より、あなた自身が泣くに泣けない状態になる。そうならないためにも、自分で考え行動なさい」
マリィアの言葉は厳しいが、リシャールは事実だと分かるためぐっと胸を突かれた。
「そうだね! これはお守りだよ! 効果抜群だから大事にしてね!」
ティリルは戦闘準備も兼ねて符に加護をつけ、リシャールの背中に張りつけた。
「……誰だって命のやりとりは怖い物だ。お前は自分ができることを行ってくれればいい。期待しているぞ」
兵庫はリシャールのもう一つの肩に軽く手を載せた。
「初実戦なら、まず見ることも重要ですね。それをすれば生き残れます! はやてたちがいるのですから」
はやては胸を張り、ドリルを見せる。
「私達と決めたことを守りつつ、臨機応変が必要です。見る……そうです、把握しきれなくなったら退きなさい」
アデリシアが告げたときに見たリシャールの顔は、決心した剣士の表情であった。
●戦闘
開けているところに翼を休めるワイバーンが二体、リザードマンが十五体いるのが見えた。
「前に出過ぎない事」
「はいっ」
ザレムに言われてリシャールは返事をする。
「マーナさん、リシャールさんにウィンドガストとストーンアーマーも頼むの」
「……ふむ、了解した」
ティリルに言われてマーナはリシャールに魔法をかける。
「ん? あいつらに気付かれたか?」
兵庫が指摘する。
ワイバーンが飛び上がり、リザードマンが武器を構えている。
ハンターがいるあたりの天井は高くはないが低くもない状況だが、ワイバーンのいるところは飛べるほど高いようだ。
「ワイバーンも逃がすより、倒した方が良いですよね。さあ、あなたの相手はこちらですよー」
颯が一気に駆け抜ける。
「まずは私が相手だ!」
イーディスは前に出るとともにソウルトーチを発動させる。
リザードマンの目には彼女の炎のようなマテリアルがちらつく。
「神よ、我に加護を」
アデリシアは手にする武器にホーリーセイバーをかけ振るう。
「もう一体のワイバーンは……こちらが引きつけよう」
マリィアは移動しつつ、射程を定める。翼を狙う、墜落させるために。
戦闘、命のやり取りが開始された。
マーナは戦場でありながら、のんびりとしている。ハンターたちの腕前を信じているし、手を出すこともないと分かっているためだった。
リシャールには魔法のかけ直しが必要であり、遮蔽物がいるようなら頼まれているためストーンウォールも唱える準備はある。
「お手並み拝見じゃのう、リシャールは。それにしても彼らがリシャールに思っている気持ちはそのままわしにも当てはまるのじゃな」
初めてハンターとして出たときの事、駆け出しだったリシャールの父シャールズとの出会いなどを思い出さずにはいられなかった。
「弓持ちをまずは狙うぞ」
兵庫はリザードマンを薙ぎ払いながら仲間に声をかける。天井を見ればワイバーンもいる為、意識は四方八方に必要だ。
「それが妥当だ」
アデリシアのワイヤーウィップがしなり敵を討つ。
「壁として受けつつ、確実に撃破する」
イーディスはリザードマンの目を引いていると意識しつつ、カウンター攻撃に切り替える。
足止め等をしてもすり抜けることができれば中衛以降に敵は来る。
「来た奴を狙え」
ザレムはデルタレイを放ち、リシャールに告げる。
「はいっ」
鋭い一撃は弱っているリザードマンに当たる。但し、敵の攻撃を食らう可能性を意味もしている。
「守りもあるけど、出来れば後ろに下がろうね」
ティリルはいざとなったときのために符を用意し、リシャールに声をかけた。
「ワイバーンは落とす」
翼を狙うようにマリィアはマテリアルを込めて銃撃をした。
「こんな攻撃もありますわ」
颯はジェットブーツで壁めがけ飛び、ワイバーンに向かってドリルを突きだした。
ワイバーンは逃げるよも、敵を狙うことを選んだ。近寄った颯に向かって爪を振り下ろす。よけきれずに食らうが、想定の範囲内だ。
「この程度は問題ないですわ」
数がいる為、一度の攻撃で倒せるわけではないリザードマン達の攻撃を全体が食らうこととなる。
「瑞鳥符……え、にっちに来る!?」
「ティリルさん」
リシャールはあわてた声を上げる。守らなくてはいけないティリルが攻撃を受けたのはショックだった。
「動揺している場合ではない、君はまず自分の事に集中すること」
「そうだよ、この程度はまだどうにでもなるよ?」
ザレムに注意され、ティリルになだめられる。
「はい」
リシャールは目の前の敵に集中をした。一人ではない、そして、一人一人の力が必要だと自然と自覚した。
リザードマンを倒したころ、ワイバーンが落ちてきた。
「一気に行かないとな『狼牙一式』」
兵庫は槍を構えると鋭い突きを伴う攻撃をする。
「デルタレイ……」
ザレムの攻撃の後、リシャールが刀を突き立てる。
「びりびり電撃どりる!」
颯の声と共にワイバーンに一撃がたたきこまれる。
「カウンター狙いより、一気に行った方がいいか?」
ワイバーンの様子をうかがいながらイーディスは剣を振るう。
「そうだね! 一気に」
ティリルも符を使い雷を落とす。
「遠慮していたら逃げられる、攻撃される」
マリィアは銃弾を叩きこんだ。
「さすがに……怪我は治していった方がいいな」
アデリシアは少し下がって、ワイバーンの攻撃を多く食らっていた颯に神の力を願った。
反撃もないわけではなかった。空を飛べなくともワイバーンの攻撃は当たれば痛い思いをする。
ワイバーンの動きが鈍っているため、ハンターたち回避もでき大事にはならなかった。
ハンターたちは再び冷静に、攻撃をした。
●感想は?
戦いが終わり、静寂が響く。
「はあ、はあ……」
リシャールが肩で息をしている。
「結構、ヒール使いましたので……」
アデリシアは少しずつは癒して来ていたし、リシャールはティリルやザレムもいたため、それなりに怪我をしているが、問題なさそうだった。初陣につきものの多少の苦境はなさそうだが、それなりに得た物あるような顔に見える。
「無事で良かったよ、怪我はない?」
ティリルが家族にするようにギュッとリシャールを胸に抱いた。
「わあああ」
「あっ」
ティリルはまたやってしまったと思う。
リシャールが元から戦いの熱で赤かったところに違う赤さが加わる。
「敵がいるかもしれないのに、楽しそうに騒ぐな」
兵庫はたしなめるが、口元が思わず笑っている。
「す、すみません」
「龍鉱石あるかな……こいつら暴れたし、ちょこっとでも見つかれば今後の活動に役立つよな?」
ザレムが周囲の壁を見る。仲間もそういえばと言う風に、周囲を警戒するついでに確認する。
「……あれ?」
ザレムが指さすところに一部崩れた所があった。
「本当にちょこっとだな」
マリィアは楽しそうに笑みを浮かべ、リシャールを見る。
リシャールは初めて見る物質に驚きを隠せないようだ。目は丸く、何か言おうと口を開いたまま止まっている。
「これがすごいエネルギーを持っているんですよね……」
「小さいですけれど、重要な物ですわ」
リシャールに颯は答える。
「さて……敵の数はいささか多かったけれど、リシャール君はどうだったのかな?」
龍鉱石を回収している間、イーディスに問いかけられる。
「え、はい……ありがとうございました」
「え?」
「あの、私がいかに未熟か分かりました」
イーディスはうなずいた。成長するためには気付きが必要であるし、その先の行動にかかる。
「まずはできるところからしていくのが必要だと……」
ワイバーンを斬ったときに手に伝わった痛みを思わず見る。
「手ごたえ……だな。剣をはじめとした武器は全て自分に還ってくる」
兵庫が武術の事を語る。
「そうですね……」
「そういえば、こちらでは珍しいクラスだけど、縁があったってことだよね?」
「……私はうまく剣を振るえなかったんです。一通り武器の使い方は教わったんですが。一宿一飯の恩義と言うことで教えてくれた旅の人がいて、それが私の手にしっくりきたんです」
ティリルはなるほどとうなずいた。
「さあ、帰ろう。君はまだすることあるからね」
「みなさんだって」
「君の場合は、立派なハンターになって領主になることもあるだろう?」
ザレムに言われ、リシャールは目をぱちくりした。
「……はいっ」
リシャールの返事が響いた。
ザレム・アズール(ka0878)はリシャールの中に過去の自分を見る。家族とのかかわり、ハンターとしての心構えなど、伝えたい気持ちがあふれる。それを抑えるだけの力を彼はすでに有してはいるから、竹刀を取り出し告げる。
「君の実力を見せてもらってもいいかな?」
緊張しているリシャールはつい保護者であるマーナを見てしまうが、にやにやとしてみているだけで答えはくれない。
リシャールは自分で判断して竹刀を手に対峙する。
(ハンターは外見だけで実力を見極めることは難しいが……「ひよっこ」と呼ばれて怒るようなら向上心は人並みにあるんだろうな)
イーディス・ノースハイド(ka2106)はこの仲間同士の手合わせを見つめる。彼女自身が王国騎士団の従騎士だったこともあり、少年を頼もしくも不安げにも感じる。
「リシャールが相談できると思える相手がいないからの暴走なのよ。だから、出来ればマーナさんには保護者じゃなくてハンターの先達になってほしいかなって思ったの」
マリィア・バルデス(ka5848)の言葉にマーナは苦笑する。
「家庭教師していた手前、どうも説教臭くなる。主らにその座は渡す、その方が効果的じゃ」
この答えにマリィアは弁が立つ彼女に苛立ちも生じるが、理解できてしまうためうなずいた。
パシッ。
竹刀の音が響く。
「決着はついたな。さて……リシャールはなかなか悔しそうな顔をしているな」
榊 兵庫(ka0010)は武術を修めて来たこともあり、この様子は興味深かった。
「……戦うために自ら刃を取るという考え、私は祝福いたします。戦神の加護を持って私もお守りいたしましょう。それと、マーナさんも万が一の為いてくださると安心かと」
アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)は戦神を信仰するシスターとしてリシャールに声をかける。彼の親に言われ保護者と言う名目のマーナの立場も尊重した。
「リシャール君だね。私はティリル(ka5672)。同じ東方のクラスですし、よろしくお願いしますね。援護を主体とする符術師と前衛特化の舞刀士は相性バッチリなんですよ。連携を意識して、一緒にがんばりましょう。それがプロです!」
ティリルはリシャールの前に出て、跳ねるように告げた。
「えっ、はい、よろしくお願いします」
リシャールは弾む物から目を逸らす。
「はやてもいますわ! どうぞよろしくお願いしますね」
八劒 颯(ka1804)はにこやかにリシャールに挨拶する。
リシャールの顔は気の毒なほど真っ赤であり、視線はさまよっている。
「ん? 格好がけしからん! と言うことでしょうか? 実用的に防御を度外した装備ですからねぇ、お勧めはしませんよ。大型ドリルを使うためにはこうするしかなかったんですよ」
颯は理由を話す、出会ってしまったドリルという武器について。
「さて、行こうか」
兵庫はリシャールの背を押した。
親睦なら歩きながらでもできる。見回りでもあるため危険も伴う地域に行くが、会話の全てがいけない事ではないのだ。
●教訓
警備で歩き回る間に、もしも敵にあった時を考え役割を分担していく。
「前衛と後衛を基準として、リシャールには前衛を突破した物から後衛を守ってもらいたい」
兵庫が告げると、緊張で強張った顔でリシャールはうなずく。
「これ、普通のハンターなら単独なら死ぬと思うわ。どうしてできると思ったのか根拠を聞きたいわね」
マリィアが厳しい口調でリシャールに問う。保護者の耳に問答を聞かせるつもりもある。
「……うっ……勢いです」
少しの間の後、リシャールは消えるような小さな声で答えた。
マリィアがちらりとマーナを見る。
「依頼に合わせてパーティを組むわ。まず、依頼に合わせたパーティの組み方から学びなさい」
「はい」
リシャールは神妙に返答した。
「今回は私達もいて独りじゃないのよ、そんな顔しなくて平気なのよ」
ティリルがリシャールを励ますように腕を取り、胸に抱く。
「う、うわあ」
「そうですよ、仲間というのは分担して立ち向かうものです。攻撃メーン、盾で仲間を守ってくださる方、はやては電撃攻撃が得意ですわ」
颯がリシャールの前で振り返りつつ言う。
「……あっ」
「こら、リシャール、抵抗しないと。鼻血でるとか、鼻の下伸びているとかそのうち言われるぞ」
ザレムが気付いてティリルを引き離す。
「え? ええっ!? わ、私はそんな顔していましたか?」
リシャールは顔を触りながらおろおろしている。彼の中にある大人像は父親であり、こういう時毅然としているのが常だ。
(幸い、緊張はほぐれたようだが……敵意ある生き物に会う前は味方のそっちが強敵か)
兵庫はリシャールの様子を見て苦笑する。素直な少年らしい行動は微笑ましくもある。
「ああ、胸が問題ですね」
状況見ていたアデリシアが指摘するとティリルは照れたように笑った。
「……まあ、鎧やら防寒着は着ているがな」
イーディスは溜息を洩らした、身長から目線が行きやすいというのはなんとなく分かるが。リシャールは年齢の割には細く、小柄である。
「そろそろ、危険なところに出る……」
ザレムは注意を促す。見回り範囲は広いし、ハンターが多い所から離れて行けばいくほど敵対勢力は現れる。
この瞬間、リシャールをからかうようなしぐさも見えた面々の雰囲気は変わった。
否応なく緊張が増す。
訓練では決して味わうことのない空気であり、リシャールはゴクリと唾を飲み込む。
(父上もおっしゃったし……もし、何かあれば兵を率いなければいけないんだ、私も)
初陣である事には違いなく、リシャールの瞬きは減る。
「……落ち着け。俺だって駆け出しの頃があったんだ。勢いで来たとは言うが、父のような誉や己の実力を測りたい、次期領主としてふさわしくなりたい、君は思ったんじゃないのか? ……君は戦力だ。俺たちは君を必要なら守るし、君も後衛を守らないといけない」
ザレムはリシャールの肩に触れると、震えが伝わる。
「依頼は数多くある上ここを選んだ。巡り巡ってグラズヘイムに被害が出る事もあるんだ、ここを守らないと」
イーディスの言葉にリシャールはうなずく。貴族として何をするか、は父母や家庭教師に入った先生たちから教え込まれている。
「死んだり怪我をすれば、あなたの家族も依頼人だって泣くのよ? 何より、あなた自身が泣くに泣けない状態になる。そうならないためにも、自分で考え行動なさい」
マリィアの言葉は厳しいが、リシャールは事実だと分かるためぐっと胸を突かれた。
「そうだね! これはお守りだよ! 効果抜群だから大事にしてね!」
ティリルは戦闘準備も兼ねて符に加護をつけ、リシャールの背中に張りつけた。
「……誰だって命のやりとりは怖い物だ。お前は自分ができることを行ってくれればいい。期待しているぞ」
兵庫はリシャールのもう一つの肩に軽く手を載せた。
「初実戦なら、まず見ることも重要ですね。それをすれば生き残れます! はやてたちがいるのですから」
はやては胸を張り、ドリルを見せる。
「私達と決めたことを守りつつ、臨機応変が必要です。見る……そうです、把握しきれなくなったら退きなさい」
アデリシアが告げたときに見たリシャールの顔は、決心した剣士の表情であった。
●戦闘
開けているところに翼を休めるワイバーンが二体、リザードマンが十五体いるのが見えた。
「前に出過ぎない事」
「はいっ」
ザレムに言われてリシャールは返事をする。
「マーナさん、リシャールさんにウィンドガストとストーンアーマーも頼むの」
「……ふむ、了解した」
ティリルに言われてマーナはリシャールに魔法をかける。
「ん? あいつらに気付かれたか?」
兵庫が指摘する。
ワイバーンが飛び上がり、リザードマンが武器を構えている。
ハンターがいるあたりの天井は高くはないが低くもない状況だが、ワイバーンのいるところは飛べるほど高いようだ。
「ワイバーンも逃がすより、倒した方が良いですよね。さあ、あなたの相手はこちらですよー」
颯が一気に駆け抜ける。
「まずは私が相手だ!」
イーディスは前に出るとともにソウルトーチを発動させる。
リザードマンの目には彼女の炎のようなマテリアルがちらつく。
「神よ、我に加護を」
アデリシアは手にする武器にホーリーセイバーをかけ振るう。
「もう一体のワイバーンは……こちらが引きつけよう」
マリィアは移動しつつ、射程を定める。翼を狙う、墜落させるために。
戦闘、命のやり取りが開始された。
マーナは戦場でありながら、のんびりとしている。ハンターたちの腕前を信じているし、手を出すこともないと分かっているためだった。
リシャールには魔法のかけ直しが必要であり、遮蔽物がいるようなら頼まれているためストーンウォールも唱える準備はある。
「お手並み拝見じゃのう、リシャールは。それにしても彼らがリシャールに思っている気持ちはそのままわしにも当てはまるのじゃな」
初めてハンターとして出たときの事、駆け出しだったリシャールの父シャールズとの出会いなどを思い出さずにはいられなかった。
「弓持ちをまずは狙うぞ」
兵庫はリザードマンを薙ぎ払いながら仲間に声をかける。天井を見ればワイバーンもいる為、意識は四方八方に必要だ。
「それが妥当だ」
アデリシアのワイヤーウィップがしなり敵を討つ。
「壁として受けつつ、確実に撃破する」
イーディスはリザードマンの目を引いていると意識しつつ、カウンター攻撃に切り替える。
足止め等をしてもすり抜けることができれば中衛以降に敵は来る。
「来た奴を狙え」
ザレムはデルタレイを放ち、リシャールに告げる。
「はいっ」
鋭い一撃は弱っているリザードマンに当たる。但し、敵の攻撃を食らう可能性を意味もしている。
「守りもあるけど、出来れば後ろに下がろうね」
ティリルはいざとなったときのために符を用意し、リシャールに声をかけた。
「ワイバーンは落とす」
翼を狙うようにマリィアはマテリアルを込めて銃撃をした。
「こんな攻撃もありますわ」
颯はジェットブーツで壁めがけ飛び、ワイバーンに向かってドリルを突きだした。
ワイバーンは逃げるよも、敵を狙うことを選んだ。近寄った颯に向かって爪を振り下ろす。よけきれずに食らうが、想定の範囲内だ。
「この程度は問題ないですわ」
数がいる為、一度の攻撃で倒せるわけではないリザードマン達の攻撃を全体が食らうこととなる。
「瑞鳥符……え、にっちに来る!?」
「ティリルさん」
リシャールはあわてた声を上げる。守らなくてはいけないティリルが攻撃を受けたのはショックだった。
「動揺している場合ではない、君はまず自分の事に集中すること」
「そうだよ、この程度はまだどうにでもなるよ?」
ザレムに注意され、ティリルになだめられる。
「はい」
リシャールは目の前の敵に集中をした。一人ではない、そして、一人一人の力が必要だと自然と自覚した。
リザードマンを倒したころ、ワイバーンが落ちてきた。
「一気に行かないとな『狼牙一式』」
兵庫は槍を構えると鋭い突きを伴う攻撃をする。
「デルタレイ……」
ザレムの攻撃の後、リシャールが刀を突き立てる。
「びりびり電撃どりる!」
颯の声と共にワイバーンに一撃がたたきこまれる。
「カウンター狙いより、一気に行った方がいいか?」
ワイバーンの様子をうかがいながらイーディスは剣を振るう。
「そうだね! 一気に」
ティリルも符を使い雷を落とす。
「遠慮していたら逃げられる、攻撃される」
マリィアは銃弾を叩きこんだ。
「さすがに……怪我は治していった方がいいな」
アデリシアは少し下がって、ワイバーンの攻撃を多く食らっていた颯に神の力を願った。
反撃もないわけではなかった。空を飛べなくともワイバーンの攻撃は当たれば痛い思いをする。
ワイバーンの動きが鈍っているため、ハンターたち回避もでき大事にはならなかった。
ハンターたちは再び冷静に、攻撃をした。
●感想は?
戦いが終わり、静寂が響く。
「はあ、はあ……」
リシャールが肩で息をしている。
「結構、ヒール使いましたので……」
アデリシアは少しずつは癒して来ていたし、リシャールはティリルやザレムもいたため、それなりに怪我をしているが、問題なさそうだった。初陣につきものの多少の苦境はなさそうだが、それなりに得た物あるような顔に見える。
「無事で良かったよ、怪我はない?」
ティリルが家族にするようにギュッとリシャールを胸に抱いた。
「わあああ」
「あっ」
ティリルはまたやってしまったと思う。
リシャールが元から戦いの熱で赤かったところに違う赤さが加わる。
「敵がいるかもしれないのに、楽しそうに騒ぐな」
兵庫はたしなめるが、口元が思わず笑っている。
「す、すみません」
「龍鉱石あるかな……こいつら暴れたし、ちょこっとでも見つかれば今後の活動に役立つよな?」
ザレムが周囲の壁を見る。仲間もそういえばと言う風に、周囲を警戒するついでに確認する。
「……あれ?」
ザレムが指さすところに一部崩れた所があった。
「本当にちょこっとだな」
マリィアは楽しそうに笑みを浮かべ、リシャールを見る。
リシャールは初めて見る物質に驚きを隠せないようだ。目は丸く、何か言おうと口を開いたまま止まっている。
「これがすごいエネルギーを持っているんですよね……」
「小さいですけれど、重要な物ですわ」
リシャールに颯は答える。
「さて……敵の数はいささか多かったけれど、リシャール君はどうだったのかな?」
龍鉱石を回収している間、イーディスに問いかけられる。
「え、はい……ありがとうございました」
「え?」
「あの、私がいかに未熟か分かりました」
イーディスはうなずいた。成長するためには気付きが必要であるし、その先の行動にかかる。
「まずはできるところからしていくのが必要だと……」
ワイバーンを斬ったときに手に伝わった痛みを思わず見る。
「手ごたえ……だな。剣をはじめとした武器は全て自分に還ってくる」
兵庫が武術の事を語る。
「そうですね……」
「そういえば、こちらでは珍しいクラスだけど、縁があったってことだよね?」
「……私はうまく剣を振るえなかったんです。一通り武器の使い方は教わったんですが。一宿一飯の恩義と言うことで教えてくれた旅の人がいて、それが私の手にしっくりきたんです」
ティリルはなるほどとうなずいた。
「さあ、帰ろう。君はまだすることあるからね」
「みなさんだって」
「君の場合は、立派なハンターになって領主になることもあるだろう?」
ザレムに言われ、リシャールは目をぱちくりした。
「……はいっ」
リシャールの返事が響いた。
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相談卓 榊 兵庫(ka0010) 人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/03/10 00:32:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/08 20:12:12 |