ゲスト
(ka0000)
【幻魂】追憶の炎
マスター:とりる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/14 07:30
- 完成日
- 2016/03/27 08:47
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●魂が遺したもの
蛇の戦士シバが遺した霊闘士の技。
ハンター達は、幻獣の森に住む大幻獣『ナーランギ』より技の正体は霊闘士の奥義であると教えられる。
奥義を習得できるのは、厳しい試練を潜り抜けた霊闘士のみ。覚悟を決めたハンター達は辺境各地に点在する『魂の道』に向かって歩き出した。
●『強さ』を求めて
ネレイド村・族長の家――。
ミサキの他に近衛隊の四人(ヴァイン、アリサ、リリレル、ミリレル)が集っていた。
「皆、シバ様のことは聞いてるよね」
ミサキが言うと近衛隊の面々は神妙な面持ちで頷いた。
「部族会議から直接私に来た情報なんだけど、シバ様が最期に放った『奥義』を習得する試練に臨む場所……『魂の道』、それがネレイド村の近くにもあるらしいんだ」
ミサキは一度目を閉じ、すぅと深呼吸し、また目をぱっと見開き、ただの少女でない『族長の顔』で口を開く。
「大幻獣『ナーランギ』と『シャレーヌ』が言うには、『奥義は[祖霊への命を掛けた同化]が必要。それは文字通りの意味であり、マテリアルの大量放出によって死や再起不能を来す危険を孕む』んだって」
それを聞いたアリサ、リリレル、ミリレルはごくりと唾を飲み込む。一方、ヴァインの視線は一直線にミサキの瞳へ向けられている。
「私は『魂の道』へ行こうと思う。これからの歪虚との戦いには奥義がきっと必要になる。ネレイド族の再興にも」
ミサキは四人の顔を見回した。
「近衛隊の皆、私に付いて来てくれる?」
「問う必要はありません、ミサキ様。我ら近衛隊はいつもミサキ様と共にあります」
ヴァインは即答。他の三人も深く頷いた。
「……ふぅ、ありがと。そう答えてくれるとは思ったんだけどさ、個人のこともあるから……聞いておかないと少し不安で」
えへへと頬をかくミサキ。やっと張りつめていた場の空気が緩む。
「水くさいですよミサキ様!」
「そうよ! 私達は一心同体なのよ!」
「そうなのです! ミサキ様は気負う癖があるのです!」
アリサ、リリレル、ミリレルはぷくぅと頬を膨らます。
「ごめんごめん。私もまだまだだなぁ……。というわけで早速準備して出発しようと思う。ハンターさんも募ってね。……そんな感じだから、ミレーヌ、村のことは頼んだ」
「かしこまりました、ミサキ様。お気をつけて」
家の入口で控えていたネレイド族戦闘部隊・第一小隊長であるおっとりとした雰囲気の女性、ミレーヌ・ネレイドが微笑む。
「それじゃあ行こう! 『魂の道』へ!」
●追憶の炎
ハンターと合流したネレイド族の一行はひたすらに海岸線を歩いていた。
「情報ではこの辺りなんだけど」
「ミサキ様、あれではありませんか?」
ヴァインが指差したのは海蝕洞。長年の隆起によって持ち上がったのか、海中からでなくても入ることが出来そうだ。
海に慣れたネレイド族が先導して、一行は洞窟の内部へ……。
***
洞窟の中は真っ暗であった。たいまつやライトが無ければ視界を確保できないほどに。
「どこまで続いてるんだろ、この洞窟……」
洞窟に入ってもう数時間は歩いたのではないかと思う。……と、もう少し歩くと、開けた場所に出た。
「ここは――」
ミサキがそう口にした瞬間、びゅう! と大きな風が吹き、不思議な事にたいまつはおろかライトの照明さえも消え、辺りが暗闇に包まれる。
何事かと一同が思う間もなく、今度は開けた場所全体がまばゆい光に包まれた――
***
まぶしさに思わず目を閉じたミサキが次に見たのは……赤だった。それは燃え盛る炎の赤。
続いて耳に飛び込んできたのは悲鳴と怒号。
そこは――怠惰の軍勢に蹂躙される村。そしてその村はミサキ達ネレイド族には見覚えがあった。
「ミサキ様! ここは!」
「わかってるよ……ヴァイン……ここは………………ネレイド村だ!!」
突然のことにハンター達は混乱していたがネレイド族の五名には理解できた。ここは、『過去の』ネレイド村。
ミサキ達が成人の儀式のために留守にしていた際、歪虚――怠惰の軍勢に襲われて壊滅的な被害を受けたネレイド村。
その時の光景が何故か映し出されている……いや、ここに、『有る』。音だけではない。炎の熱を感じることが出来た。
村の四方を怠惰の巨人の軍勢に囲まれ、今は亡きネレイド族の戦士達が必死に応戦している。
「ミサキ様! 加勢しましょう! ここまま見ているわけにはいきません!」
ヴァインの声。ハンター達も武器を抜く。
「これは……そういうことなの……」
「ええ……恐らくは……」
手斧を握り締めるミサキの肩にヴァインが片手を置く。華奢な肩はぷるぷると震えていた。……アリサ、リリレル、ミリレルも武器を構えて既に戦闘態勢。
「試練って……こういうことなの……!?」
ミサキは両手に斧を持ち、奥歯を噛み締めて怠惰の巨人に飛び掛かる。
変えられない過去に打ち勝つ。それがネレイド族に課せられた試練だった。
蛇の戦士シバが遺した霊闘士の技。
ハンター達は、幻獣の森に住む大幻獣『ナーランギ』より技の正体は霊闘士の奥義であると教えられる。
奥義を習得できるのは、厳しい試練を潜り抜けた霊闘士のみ。覚悟を決めたハンター達は辺境各地に点在する『魂の道』に向かって歩き出した。
●『強さ』を求めて
ネレイド村・族長の家――。
ミサキの他に近衛隊の四人(ヴァイン、アリサ、リリレル、ミリレル)が集っていた。
「皆、シバ様のことは聞いてるよね」
ミサキが言うと近衛隊の面々は神妙な面持ちで頷いた。
「部族会議から直接私に来た情報なんだけど、シバ様が最期に放った『奥義』を習得する試練に臨む場所……『魂の道』、それがネレイド村の近くにもあるらしいんだ」
ミサキは一度目を閉じ、すぅと深呼吸し、また目をぱっと見開き、ただの少女でない『族長の顔』で口を開く。
「大幻獣『ナーランギ』と『シャレーヌ』が言うには、『奥義は[祖霊への命を掛けた同化]が必要。それは文字通りの意味であり、マテリアルの大量放出によって死や再起不能を来す危険を孕む』んだって」
それを聞いたアリサ、リリレル、ミリレルはごくりと唾を飲み込む。一方、ヴァインの視線は一直線にミサキの瞳へ向けられている。
「私は『魂の道』へ行こうと思う。これからの歪虚との戦いには奥義がきっと必要になる。ネレイド族の再興にも」
ミサキは四人の顔を見回した。
「近衛隊の皆、私に付いて来てくれる?」
「問う必要はありません、ミサキ様。我ら近衛隊はいつもミサキ様と共にあります」
ヴァインは即答。他の三人も深く頷いた。
「……ふぅ、ありがと。そう答えてくれるとは思ったんだけどさ、個人のこともあるから……聞いておかないと少し不安で」
えへへと頬をかくミサキ。やっと張りつめていた場の空気が緩む。
「水くさいですよミサキ様!」
「そうよ! 私達は一心同体なのよ!」
「そうなのです! ミサキ様は気負う癖があるのです!」
アリサ、リリレル、ミリレルはぷくぅと頬を膨らます。
「ごめんごめん。私もまだまだだなぁ……。というわけで早速準備して出発しようと思う。ハンターさんも募ってね。……そんな感じだから、ミレーヌ、村のことは頼んだ」
「かしこまりました、ミサキ様。お気をつけて」
家の入口で控えていたネレイド族戦闘部隊・第一小隊長であるおっとりとした雰囲気の女性、ミレーヌ・ネレイドが微笑む。
「それじゃあ行こう! 『魂の道』へ!」
●追憶の炎
ハンターと合流したネレイド族の一行はひたすらに海岸線を歩いていた。
「情報ではこの辺りなんだけど」
「ミサキ様、あれではありませんか?」
ヴァインが指差したのは海蝕洞。長年の隆起によって持ち上がったのか、海中からでなくても入ることが出来そうだ。
海に慣れたネレイド族が先導して、一行は洞窟の内部へ……。
***
洞窟の中は真っ暗であった。たいまつやライトが無ければ視界を確保できないほどに。
「どこまで続いてるんだろ、この洞窟……」
洞窟に入ってもう数時間は歩いたのではないかと思う。……と、もう少し歩くと、開けた場所に出た。
「ここは――」
ミサキがそう口にした瞬間、びゅう! と大きな風が吹き、不思議な事にたいまつはおろかライトの照明さえも消え、辺りが暗闇に包まれる。
何事かと一同が思う間もなく、今度は開けた場所全体がまばゆい光に包まれた――
***
まぶしさに思わず目を閉じたミサキが次に見たのは……赤だった。それは燃え盛る炎の赤。
続いて耳に飛び込んできたのは悲鳴と怒号。
そこは――怠惰の軍勢に蹂躙される村。そしてその村はミサキ達ネレイド族には見覚えがあった。
「ミサキ様! ここは!」
「わかってるよ……ヴァイン……ここは………………ネレイド村だ!!」
突然のことにハンター達は混乱していたがネレイド族の五名には理解できた。ここは、『過去の』ネレイド村。
ミサキ達が成人の儀式のために留守にしていた際、歪虚――怠惰の軍勢に襲われて壊滅的な被害を受けたネレイド村。
その時の光景が何故か映し出されている……いや、ここに、『有る』。音だけではない。炎の熱を感じることが出来た。
村の四方を怠惰の巨人の軍勢に囲まれ、今は亡きネレイド族の戦士達が必死に応戦している。
「ミサキ様! 加勢しましょう! ここまま見ているわけにはいきません!」
ヴァインの声。ハンター達も武器を抜く。
「これは……そういうことなの……」
「ええ……恐らくは……」
手斧を握り締めるミサキの肩にヴァインが片手を置く。華奢な肩はぷるぷると震えていた。……アリサ、リリレル、ミリレルも武器を構えて既に戦闘態勢。
「試練って……こういうことなの……!?」
ミサキは両手に斧を持ち、奥歯を噛み締めて怠惰の巨人に飛び掛かる。
変えられない過去に打ち勝つ。それがネレイド族に課せられた試練だった。
リプレイ本文
●覚悟
過去のネレイド村。怠惰の軍勢に蹂躙されるネレイド村。
紅蓮の炎が舞う中に突如として放り出された一行は激しく混乱していた。ネレイド族の五名は、特に……。
「縁もゆかりもねえ筈なのによ……こんな粗雑(クルード)な光景は本当、好きになれねえよな!!」
そんな中でまず声を上げたのはキー=フェイス(ka0791)。
「おい、嬢ちゃん達……答えろ! ここを守ってたこいつらは最後、どうやって負けた!?」
動揺を隠せずにいるネレイド族の五名にやや荒らしい口調で尋ねる。
彼は……確定の敗戦、不変の過去を乗り越えることが試練だというなら、負け方に解法があると推測したらしい。
「……わ、わからないよ。あのとき……私達は……成人の儀式から村に戻ったら既に壊滅状態で……怠惰の軍勢は退いた後で……皆死んじゃってて……族長も……」
ミサキは頭を抱えながらぷるぷると身を震わせる。当時のトラウマが掘り起こされてしまったようだ。
それに代わってヴァインが答えた。
「あとから生き残った者に聞いた話ですが、当時のネレイド族の戦士はなんとか怠惰の軍勢を退けることに成功したものの、全員が戦死したようです」
そう語るヴァインの表情も硬く、悔しさが浮かんでいた。
そこへルーエル・ゼクシディア(ka2473)が割って入った。
「ひとまず落ち着こう。霊闘士の試練……この場所が過去のネレイド村で間違いないんだね?」
優しい口調でミサキに声をかけた。ミサキは深く頷く。
ハンターとネレイド族の五名は素早く状況を整理することに。
「こんな状況だけど……俺はオウガ。よろしくな!」
オウガ(ka2124)が元気よく挨拶。
「俺は……シバのじっちゃんの最後を戦った」
「そう……でしたね。目的はシバ様が残し、大幻獣が示した魂の道の試練をクリアすることでした……」
ミサキは少し落ち着きを取り戻す。
「求めてる奥義を、俺は相手としてこの目で間近にみてるんだ。じっちゃんに誓ったんだ、必ず受け継ぐってだからどんな試練でも、乗り越えてみせるぜ!」
(シバ様の、霊闘士の奥義の証人に、なれるでしょうか)
ミオレスカ(ka3496)はそっと目を閉じて胸に手を当てる。
「ひとりではありません、私にも、何人ものマテリアルが集まっています。この試練、必ずこなして見せましょう」
「私はアイラ。宜しくね」
アイラ(ka3941)も改めて挨拶。
(シバのおじいちゃんの奥義……受け継ぐよ。きっとね!)
そしてアイラは直接的な面識はないがシバのことを知っているというネレイド族の五名へ、彼女達を勇気付けるためにも、彼の最後を戦い看取った一人として伝える。
シバの生き様と、彼が最期に使った奥義についてアイラは語った。
ネレイド族の……否、戦友としてミサキ達の助勢にと考え、今回同行した米本 剛(ka0320)は。
「この状況……試練の内容は過去の打倒……ということですかな」
米本はふむりとあごに手を当てる。
「人によっては心を抉る『過去』でしょうし、個人的には趣味が悪いと思います……が、勇壮と聞いた旧ネレイド族と精強であると知っている現ネレイド族、そして我々ハンターが居るのです……何の不安がありましょうか?」
励ますように彼は熱く語る。ミサキは「そうですね……ありがとうございます」と頭を下げた。ミサキの瞳に精気が戻る。
「状況は最悪ですが最高、戦友を信じて自分は己が役目に死力を尽くしましょう!」
声を張り上げる米本。エイエイオー! と腕を突き上げる。
「ハッハ、過去の打倒とは……ならば今こそが好機って所でしょうかね」
(ミサキさん方ならば必ずや突破出来る試練だと……自分は確信していますよ?)
米本は戦意を取り戻した彼女の横顔にちらりと目をやる。
「うん。みんなの背中をまもって、さいごまでがんばるよ」
ドワーフの色白で小柄な少年、ノノトト(ka0553)は米本の言葉にこくりと頷く。しかしその表情には不安が窺えた。
改めての挨拶を済ませ、過去のネレイド族へ加勢する方針で固まった一行は移動を開始する。
(学校に行く前の小せぇ頃から、俺は英雄ってのに憧れていた)
歩を進めながらボルディア・コンフラムス(ka0796)は思案。
(だが、その英雄ってのはどんなヤツのことをいうんだ? 誰よりも敵を倒したヤツか? ピンチの時に駆けつけるヤツか? 戦って死んだヤツか?)
英雄とは何を指すのか――。
(俺は……)
ボルディアの顔には迷いが浮かんでいるようにも見えた……。
●心の戦い
(自分は『誰かを生かす戦い』を目指す者、敵がたとえ……怠惰の巨人であってもそれは変わりません)
堅牢な鎧に身を、そして心を覚悟で固めた米本は思う。
(この盾と身体がどれだけ厄介かを正面からぶつかって証明してみせましょうぞ! 絶対に膝は折らない……その気合をもって当たらせて頂きます)
彼は真っ先に盾を構えて押され気味な戦線へ身を投じ、過去のネレイド族の戦士達に加勢をする。
「暴れるのは自分を突破してからにして頂きましょうか……ね!」
続くのは戦斧を振り上げたボルディア。
「こんな幻影の炎なんかより、この俺をもっと熱く、もっと燃やしてみせろォ!」
雄叫びを上げて突撃し、迫りくる怠惰の軍勢へ怯みもせずに戦斧を振るい続ける。
(お話ン中だと、英雄ってのはぜってーに負けねぇんだ。だが現実は、どこぞの皇帝やら騎士団長みてぇにクソ強ぇ奴等でさえも、負ける時ゃ負ける)
正面からブン殴る。
(なら、アイツ等は英雄じゃないのか? 違う。シバは、あのジジイは死んだから敗者か?)
斧の重さと遠心力を持って真っ向から巨人へ力づくで挑む。
(違う、アイツは紛れも無く『英雄』だった! たった一人で歪虚と戦い続けたアイツが英雄でなくて、誰が英雄だ!)
力を託し……空へ還った誇り高き戦士を想い、ボルディアは一心不乱に戦斧を巨人へとぶつけた。
***
「いくよ! オウガくん。助けよう、皆を!」
「おう! シバのじっちゃんが見てるかもしれない! 格好悪いところなんか晒せるか!」
アイラとオウガは連携して巨人に立ち向かう。
「我武者羅に武器を振るっても雑兵が数匹増えるだけだ。考えろ、実行しろ、てめえらネレイド族が満足する、最高の負け方を!!」
フェイスはネレイド族を激励しつつ提案。現族長が胸を張って過去の英霊に手向けられる戦を出来るように……不器用ながら彼なりの優しさである。
(この試練は一体何をさせようとしてるのか……過去のやり直し? そうだとしたらこの歪虚達を殲滅しないと、だけど)
ルーエルは皆に続いて加勢を開始。パイルバンカーを巨人へ打ち込む。
(その間に、何か見えてくるものがあるかもしれない)
戦いながら現ネレイド族の五名へ当時の村の地形を尋ね、把握しておく。
また、聖導士として、最前線で戦う仲間へ【ヒール】による回復の支援を行う。
「これは、過去を変えられる? ……そんなはずは、ないですね。しかし、逃げるわけには行きません。皆さんと同じように」
ミオレスカはそんな想いを胸に、【制圧射撃】を用いて近寄る敵に足止めをし、次に【レイターコールドショット】で敵の弱体化を図る。
***
ノノトトは――盾と鉄パイプを構えて仲間の背後を守っているが――
(みんな頑張ってるけど、ボクはこわいよ。足だってふるえてるし、泣きそうだもん。勝てるかどうかわからないし、試練に認められるかどうかもわからないよ)
やはり恐れがあった。
(ボクとそんなに歳が変わらないミサキさんが族長で、村を背負って生きてる。ほんとにすごい人だと思う)
ミサキがその小さな肩に背負ってきたものを目の当たりにし、尊敬に値すると思う。
(パーティーを組んでるハンターの人達も、覚悟を決めてがんばろうとしてるボクはああいう風になれないかもしれない)
勇猛に戦う仲間達。自分は――。
(でも、諦めるのだけはいやだ。この、目の前に見えるむかしのネレイド村みたいに、ボクの故郷がなっちゃうのはいやだ)
真なる想い。
(今まで会った人達……ううん、会ったことのない人達の故郷も、こうなっちゃだめだ)
切なる想い。
(こうなっちゃったら、人も村も思い出もぐちゃぐちゃになっちゃう。ぐちゃぐちゃになって泣く人の顔は、きらいだ)
そのようになってしまうのは嫌だと心の底から感じた。
(試練にうちかって、戦いを終わらせて、村を守って……世界を平和にできる人には、ボクはなれないかもしれない。でも、そんな強い人の背中を守ることはできるかもしれない)
自分の中でモヤモヤしていたものが晴れてゆく……。
「背中をまかせられるような、人になりたい」
ノノトトの瞳に、光が宿った。
●続・心の戦い
米本、フェイスは戦闘を継続。ノノトトは仲間の背後を只管に守り続ける。
ボルディアは戦斧を振るいながら自らへの問いかけを続けていた。
(シバは死んだが、思いは俺らが継いでいる。だから俺等が負けない限り、シバも負けちゃいねぇ)
ふと、彼女は気付く。
(……そうか。英雄の条件ってのは、勝敗や生死は関係ねぇ。どれだけ多くの人間を勇気づけられるか、だ)
「なら、俺ができる事は一つだよな」
誰よりも紅い炎で。
誰よりも先陣を切って。
どんな攻撃にも屈さず、生命を燃やして立ち続ける。
「俺にはそれができる。それしかできねぇ。そうやって絶対に諦めねぇヤツが、俺の『英雄』だ!」
***
(ひとりの力は小さくても、未熟でも、弱いわけでもないです)
ミオレスカは射撃を続けながら思う。
(これがシバ様のこなした試練なら、私達は、みんなの力でシバ様よりも、強くなることだってできるはずです)
皆の力ならばきっと。
(幻影の中でも、遠くから願っている仲間の想いも、届いてきます)
ミオレスカの胸には確かに……遠くにいる仲間の想いが響いていた。
(私は、ただ生き残るよりも、強い力を得るよりも、どこでも、誰とでもみんなで一緒に美味しいご飯を食べられる世界を目指したい)
それが彼女の、ミオレスカの願い。
「そのために、みんなを信じて、私も精一杯、やれる事をやる」
***
過去のネレイド族に加勢してからどれくらい経っただろうか。怠惰の軍勢は一向に数を減らす気配を見せない。
ルーエルはこの状況に唇を噛んだ。
(ネレイドの人達は特に苦しいよね。気持ちは痛いほど分かる……でも僕達は生きなければならないから)
ルーエルは【レクイエム】を歌ったのちに後退を提案。
「これは後退だけど、前に向かって歩いてる。未来へ進んでるはずだよ」
「嫌」
「えっ」
「私は嫌だよ、ルーエルさん。未来は……この試練はたぶん、逃げてしまったら乗り越えられない」
「……」
ミサキの答えに、ルーエルはその端正な顔を真剣なものにする。
「そうだね。逃げちゃダメだ」
ルーエルは再びパイルバンカーを構えた。
「数が、多い……」
逃げないと、とアイラは思う。
だが彼女の視界には仲間と、戦っているネレイド族の戦士達の姿。
アイラは逃げて命を繋げるかどうかを考え、必死に探る。思考する。
しかし逃げた結果がどうなるかが、彼女の頭に浮かんだ。それで他の人達を見捨てる事になってしまうなら――
「嫌……それだけは絶対に駄目だ」
(怖いけど、それは嫌。それをしたら、いまは命は助かっても、あたしが自分であたしを殺してしまう。知り合いでなくても、皆、必死で頑張ってるんだから)
レイピアを振るいながらアイラは思う。
仲間を、故郷を蹂躙されるネレイド族の人たちの思いはどんなものだろう。
気持ちを思い、その怒りを理解しよう。憎しみを受け入れよう……。
目を逸らさずに起こっている事を直視して。
その上で、乗り越えよう。
「皆、助けるよ!」
流される事無く、それがどれだけ凄惨なものであったとしても。
「死なせたく、ない。皆必死で戦ってる」
心の底からそのように思う。
「投げ出していい命なんて無いの! 生きよう、絶対に!」
(あの時のシバは凄かった。俺達に何かを見せて託そうと本気で相対したでも、俺は……技とかどうとかよりもシバ本人に圧倒された)
オウガはシバとの死闘を思い返す。
(俺は……魅せられた。死を間近に感じながら、それを最後まで燃やせる……俺は、こんな男になりたいって思った)
魂を最後の一片まで燃やし尽くした戦士を想う。
(死ぬのが怖くないなんていえない。俺にも守りたいものがある。帰りを待っててくれる人がいる。だから死ぬのは怖いけど……)
死ぬのは怖い。生ある者なら誰だってそうだ。
(それでも命を懸けなきゃいけない時はある。誰かの為に、自分の為に、その命を守らないといけない)
それでこそ、戦士。
(理不尽に怒り、抗わなきゃいけない。死を恐れて、死にたくないって思うから――)
「それを超えて挑む事に価値があるんだ!!」
オウガは腹の底から声を出し、張り上げた。
――そのとき、最初この光景に飛ばされたときのように辺りがまばゆい光に包まれた。
●答え
一行が目を開けると、そこには晴れやかな表情のネレイド族の戦士達が立っていた。
怠惰の軍勢の姿は無く、村を焼いていた炎も消えている。
一人の戦士がハンター達の前へ歩み出た。
「族長!!」
ミサキが声を上げる。……この人物は巨人との戦いの中で壮絶な死を遂げたネレイド族の前族長らしい。
「ハンターの皆さん、ありがとう。これで村は救われた」
前族長は穏やかな笑みを浮かべてそう言った。ミサキは思わずその人物に飛びつく。前族長は優しく抱き留めた。
「……だがなミサキ、過去によって変えられるものは自分の気持ちだけだ」
再び辺りが光に包まれようとしている。
「待って! 行かないで! 族長!」
「ミサキよ、ネレイド族の戦士達よ、強くあれ。ハンターの皆さん、どうかこの子らにお力添えください。それでは――」
***
一行が気付くと、そこは元の洞窟内の開けた場所だった。照明の光も戻っている。
「……族長、私、もっと強くなる。なってみせる」
瞳に涙を浮かべるミサキの手には、祖霊の欠片が握られていた――。
「全く、シリアスってのは性に合わねえんだが……あいつの顔、早く見たいな」
フェイスはふうと息をつき安堵しながら、好意を寄せている女性を顔を思い浮かべた。
「帰って来たんですね、私達」
「あたし……過去のネレイド族の人達を救えなかった……」
「仕方がない。言ってただろ、過去によって変えられるのは自分の気持ちだけだって。ネレイド族の皆は、変われたみたいだ」
ミオレスカ、アイラ、オウガはそのように口にする。
ともあれ一行は『魂の道』の試練を達成し、帰路へつくのだった……。
過去のネレイド村。怠惰の軍勢に蹂躙されるネレイド村。
紅蓮の炎が舞う中に突如として放り出された一行は激しく混乱していた。ネレイド族の五名は、特に……。
「縁もゆかりもねえ筈なのによ……こんな粗雑(クルード)な光景は本当、好きになれねえよな!!」
そんな中でまず声を上げたのはキー=フェイス(ka0791)。
「おい、嬢ちゃん達……答えろ! ここを守ってたこいつらは最後、どうやって負けた!?」
動揺を隠せずにいるネレイド族の五名にやや荒らしい口調で尋ねる。
彼は……確定の敗戦、不変の過去を乗り越えることが試練だというなら、負け方に解法があると推測したらしい。
「……わ、わからないよ。あのとき……私達は……成人の儀式から村に戻ったら既に壊滅状態で……怠惰の軍勢は退いた後で……皆死んじゃってて……族長も……」
ミサキは頭を抱えながらぷるぷると身を震わせる。当時のトラウマが掘り起こされてしまったようだ。
それに代わってヴァインが答えた。
「あとから生き残った者に聞いた話ですが、当時のネレイド族の戦士はなんとか怠惰の軍勢を退けることに成功したものの、全員が戦死したようです」
そう語るヴァインの表情も硬く、悔しさが浮かんでいた。
そこへルーエル・ゼクシディア(ka2473)が割って入った。
「ひとまず落ち着こう。霊闘士の試練……この場所が過去のネレイド村で間違いないんだね?」
優しい口調でミサキに声をかけた。ミサキは深く頷く。
ハンターとネレイド族の五名は素早く状況を整理することに。
「こんな状況だけど……俺はオウガ。よろしくな!」
オウガ(ka2124)が元気よく挨拶。
「俺は……シバのじっちゃんの最後を戦った」
「そう……でしたね。目的はシバ様が残し、大幻獣が示した魂の道の試練をクリアすることでした……」
ミサキは少し落ち着きを取り戻す。
「求めてる奥義を、俺は相手としてこの目で間近にみてるんだ。じっちゃんに誓ったんだ、必ず受け継ぐってだからどんな試練でも、乗り越えてみせるぜ!」
(シバ様の、霊闘士の奥義の証人に、なれるでしょうか)
ミオレスカ(ka3496)はそっと目を閉じて胸に手を当てる。
「ひとりではありません、私にも、何人ものマテリアルが集まっています。この試練、必ずこなして見せましょう」
「私はアイラ。宜しくね」
アイラ(ka3941)も改めて挨拶。
(シバのおじいちゃんの奥義……受け継ぐよ。きっとね!)
そしてアイラは直接的な面識はないがシバのことを知っているというネレイド族の五名へ、彼女達を勇気付けるためにも、彼の最後を戦い看取った一人として伝える。
シバの生き様と、彼が最期に使った奥義についてアイラは語った。
ネレイド族の……否、戦友としてミサキ達の助勢にと考え、今回同行した米本 剛(ka0320)は。
「この状況……試練の内容は過去の打倒……ということですかな」
米本はふむりとあごに手を当てる。
「人によっては心を抉る『過去』でしょうし、個人的には趣味が悪いと思います……が、勇壮と聞いた旧ネレイド族と精強であると知っている現ネレイド族、そして我々ハンターが居るのです……何の不安がありましょうか?」
励ますように彼は熱く語る。ミサキは「そうですね……ありがとうございます」と頭を下げた。ミサキの瞳に精気が戻る。
「状況は最悪ですが最高、戦友を信じて自分は己が役目に死力を尽くしましょう!」
声を張り上げる米本。エイエイオー! と腕を突き上げる。
「ハッハ、過去の打倒とは……ならば今こそが好機って所でしょうかね」
(ミサキさん方ならば必ずや突破出来る試練だと……自分は確信していますよ?)
米本は戦意を取り戻した彼女の横顔にちらりと目をやる。
「うん。みんなの背中をまもって、さいごまでがんばるよ」
ドワーフの色白で小柄な少年、ノノトト(ka0553)は米本の言葉にこくりと頷く。しかしその表情には不安が窺えた。
改めての挨拶を済ませ、過去のネレイド族へ加勢する方針で固まった一行は移動を開始する。
(学校に行く前の小せぇ頃から、俺は英雄ってのに憧れていた)
歩を進めながらボルディア・コンフラムス(ka0796)は思案。
(だが、その英雄ってのはどんなヤツのことをいうんだ? 誰よりも敵を倒したヤツか? ピンチの時に駆けつけるヤツか? 戦って死んだヤツか?)
英雄とは何を指すのか――。
(俺は……)
ボルディアの顔には迷いが浮かんでいるようにも見えた……。
●心の戦い
(自分は『誰かを生かす戦い』を目指す者、敵がたとえ……怠惰の巨人であってもそれは変わりません)
堅牢な鎧に身を、そして心を覚悟で固めた米本は思う。
(この盾と身体がどれだけ厄介かを正面からぶつかって証明してみせましょうぞ! 絶対に膝は折らない……その気合をもって当たらせて頂きます)
彼は真っ先に盾を構えて押され気味な戦線へ身を投じ、過去のネレイド族の戦士達に加勢をする。
「暴れるのは自分を突破してからにして頂きましょうか……ね!」
続くのは戦斧を振り上げたボルディア。
「こんな幻影の炎なんかより、この俺をもっと熱く、もっと燃やしてみせろォ!」
雄叫びを上げて突撃し、迫りくる怠惰の軍勢へ怯みもせずに戦斧を振るい続ける。
(お話ン中だと、英雄ってのはぜってーに負けねぇんだ。だが現実は、どこぞの皇帝やら騎士団長みてぇにクソ強ぇ奴等でさえも、負ける時ゃ負ける)
正面からブン殴る。
(なら、アイツ等は英雄じゃないのか? 違う。シバは、あのジジイは死んだから敗者か?)
斧の重さと遠心力を持って真っ向から巨人へ力づくで挑む。
(違う、アイツは紛れも無く『英雄』だった! たった一人で歪虚と戦い続けたアイツが英雄でなくて、誰が英雄だ!)
力を託し……空へ還った誇り高き戦士を想い、ボルディアは一心不乱に戦斧を巨人へとぶつけた。
***
「いくよ! オウガくん。助けよう、皆を!」
「おう! シバのじっちゃんが見てるかもしれない! 格好悪いところなんか晒せるか!」
アイラとオウガは連携して巨人に立ち向かう。
「我武者羅に武器を振るっても雑兵が数匹増えるだけだ。考えろ、実行しろ、てめえらネレイド族が満足する、最高の負け方を!!」
フェイスはネレイド族を激励しつつ提案。現族長が胸を張って過去の英霊に手向けられる戦を出来るように……不器用ながら彼なりの優しさである。
(この試練は一体何をさせようとしてるのか……過去のやり直し? そうだとしたらこの歪虚達を殲滅しないと、だけど)
ルーエルは皆に続いて加勢を開始。パイルバンカーを巨人へ打ち込む。
(その間に、何か見えてくるものがあるかもしれない)
戦いながら現ネレイド族の五名へ当時の村の地形を尋ね、把握しておく。
また、聖導士として、最前線で戦う仲間へ【ヒール】による回復の支援を行う。
「これは、過去を変えられる? ……そんなはずは、ないですね。しかし、逃げるわけには行きません。皆さんと同じように」
ミオレスカはそんな想いを胸に、【制圧射撃】を用いて近寄る敵に足止めをし、次に【レイターコールドショット】で敵の弱体化を図る。
***
ノノトトは――盾と鉄パイプを構えて仲間の背後を守っているが――
(みんな頑張ってるけど、ボクはこわいよ。足だってふるえてるし、泣きそうだもん。勝てるかどうかわからないし、試練に認められるかどうかもわからないよ)
やはり恐れがあった。
(ボクとそんなに歳が変わらないミサキさんが族長で、村を背負って生きてる。ほんとにすごい人だと思う)
ミサキがその小さな肩に背負ってきたものを目の当たりにし、尊敬に値すると思う。
(パーティーを組んでるハンターの人達も、覚悟を決めてがんばろうとしてるボクはああいう風になれないかもしれない)
勇猛に戦う仲間達。自分は――。
(でも、諦めるのだけはいやだ。この、目の前に見えるむかしのネレイド村みたいに、ボクの故郷がなっちゃうのはいやだ)
真なる想い。
(今まで会った人達……ううん、会ったことのない人達の故郷も、こうなっちゃだめだ)
切なる想い。
(こうなっちゃったら、人も村も思い出もぐちゃぐちゃになっちゃう。ぐちゃぐちゃになって泣く人の顔は、きらいだ)
そのようになってしまうのは嫌だと心の底から感じた。
(試練にうちかって、戦いを終わらせて、村を守って……世界を平和にできる人には、ボクはなれないかもしれない。でも、そんな強い人の背中を守ることはできるかもしれない)
自分の中でモヤモヤしていたものが晴れてゆく……。
「背中をまかせられるような、人になりたい」
ノノトトの瞳に、光が宿った。
●続・心の戦い
米本、フェイスは戦闘を継続。ノノトトは仲間の背後を只管に守り続ける。
ボルディアは戦斧を振るいながら自らへの問いかけを続けていた。
(シバは死んだが、思いは俺らが継いでいる。だから俺等が負けない限り、シバも負けちゃいねぇ)
ふと、彼女は気付く。
(……そうか。英雄の条件ってのは、勝敗や生死は関係ねぇ。どれだけ多くの人間を勇気づけられるか、だ)
「なら、俺ができる事は一つだよな」
誰よりも紅い炎で。
誰よりも先陣を切って。
どんな攻撃にも屈さず、生命を燃やして立ち続ける。
「俺にはそれができる。それしかできねぇ。そうやって絶対に諦めねぇヤツが、俺の『英雄』だ!」
***
(ひとりの力は小さくても、未熟でも、弱いわけでもないです)
ミオレスカは射撃を続けながら思う。
(これがシバ様のこなした試練なら、私達は、みんなの力でシバ様よりも、強くなることだってできるはずです)
皆の力ならばきっと。
(幻影の中でも、遠くから願っている仲間の想いも、届いてきます)
ミオレスカの胸には確かに……遠くにいる仲間の想いが響いていた。
(私は、ただ生き残るよりも、強い力を得るよりも、どこでも、誰とでもみんなで一緒に美味しいご飯を食べられる世界を目指したい)
それが彼女の、ミオレスカの願い。
「そのために、みんなを信じて、私も精一杯、やれる事をやる」
***
過去のネレイド族に加勢してからどれくらい経っただろうか。怠惰の軍勢は一向に数を減らす気配を見せない。
ルーエルはこの状況に唇を噛んだ。
(ネレイドの人達は特に苦しいよね。気持ちは痛いほど分かる……でも僕達は生きなければならないから)
ルーエルは【レクイエム】を歌ったのちに後退を提案。
「これは後退だけど、前に向かって歩いてる。未来へ進んでるはずだよ」
「嫌」
「えっ」
「私は嫌だよ、ルーエルさん。未来は……この試練はたぶん、逃げてしまったら乗り越えられない」
「……」
ミサキの答えに、ルーエルはその端正な顔を真剣なものにする。
「そうだね。逃げちゃダメだ」
ルーエルは再びパイルバンカーを構えた。
「数が、多い……」
逃げないと、とアイラは思う。
だが彼女の視界には仲間と、戦っているネレイド族の戦士達の姿。
アイラは逃げて命を繋げるかどうかを考え、必死に探る。思考する。
しかし逃げた結果がどうなるかが、彼女の頭に浮かんだ。それで他の人達を見捨てる事になってしまうなら――
「嫌……それだけは絶対に駄目だ」
(怖いけど、それは嫌。それをしたら、いまは命は助かっても、あたしが自分であたしを殺してしまう。知り合いでなくても、皆、必死で頑張ってるんだから)
レイピアを振るいながらアイラは思う。
仲間を、故郷を蹂躙されるネレイド族の人たちの思いはどんなものだろう。
気持ちを思い、その怒りを理解しよう。憎しみを受け入れよう……。
目を逸らさずに起こっている事を直視して。
その上で、乗り越えよう。
「皆、助けるよ!」
流される事無く、それがどれだけ凄惨なものであったとしても。
「死なせたく、ない。皆必死で戦ってる」
心の底からそのように思う。
「投げ出していい命なんて無いの! 生きよう、絶対に!」
(あの時のシバは凄かった。俺達に何かを見せて託そうと本気で相対したでも、俺は……技とかどうとかよりもシバ本人に圧倒された)
オウガはシバとの死闘を思い返す。
(俺は……魅せられた。死を間近に感じながら、それを最後まで燃やせる……俺は、こんな男になりたいって思った)
魂を最後の一片まで燃やし尽くした戦士を想う。
(死ぬのが怖くないなんていえない。俺にも守りたいものがある。帰りを待っててくれる人がいる。だから死ぬのは怖いけど……)
死ぬのは怖い。生ある者なら誰だってそうだ。
(それでも命を懸けなきゃいけない時はある。誰かの為に、自分の為に、その命を守らないといけない)
それでこそ、戦士。
(理不尽に怒り、抗わなきゃいけない。死を恐れて、死にたくないって思うから――)
「それを超えて挑む事に価値があるんだ!!」
オウガは腹の底から声を出し、張り上げた。
――そのとき、最初この光景に飛ばされたときのように辺りがまばゆい光に包まれた。
●答え
一行が目を開けると、そこには晴れやかな表情のネレイド族の戦士達が立っていた。
怠惰の軍勢の姿は無く、村を焼いていた炎も消えている。
一人の戦士がハンター達の前へ歩み出た。
「族長!!」
ミサキが声を上げる。……この人物は巨人との戦いの中で壮絶な死を遂げたネレイド族の前族長らしい。
「ハンターの皆さん、ありがとう。これで村は救われた」
前族長は穏やかな笑みを浮かべてそう言った。ミサキは思わずその人物に飛びつく。前族長は優しく抱き留めた。
「……だがなミサキ、過去によって変えられるものは自分の気持ちだけだ」
再び辺りが光に包まれようとしている。
「待って! 行かないで! 族長!」
「ミサキよ、ネレイド族の戦士達よ、強くあれ。ハンターの皆さん、どうかこの子らにお力添えください。それでは――」
***
一行が気付くと、そこは元の洞窟内の開けた場所だった。照明の光も戻っている。
「……族長、私、もっと強くなる。なってみせる」
瞳に涙を浮かべるミサキの手には、祖霊の欠片が握られていた――。
「全く、シリアスってのは性に合わねえんだが……あいつの顔、早く見たいな」
フェイスはふうと息をつき安堵しながら、好意を寄せている女性を顔を思い浮かべた。
「帰って来たんですね、私達」
「あたし……過去のネレイド族の人達を救えなかった……」
「仕方がない。言ってただろ、過去によって変えられるのは自分の気持ちだけだって。ネレイド族の皆は、変われたみたいだ」
ミオレスカ、アイラ、オウガはそのように口にする。
ともあれ一行は『魂の道』の試練を達成し、帰路へつくのだった……。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/13 14:18:28 |
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相談卓 米本 剛(ka0320) 人間(リアルブルー)|30才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/03/13 22:36:21 |