ゲスト
(ka0000)
街角メルヘン~ミステリ・クラブの夜会
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/15 22:00
- 完成日
- 2016/03/29 01:19
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ここは、極彩色の街「ヴァリオス」のとある大通り。
「なあ、初華ちゃん。おじさんとお酒飲みに行こう」
街角屋台「Pクレープ」の店頭で中年男性客が身をぐぐっとと乗り出してそんなことを言っている。
「え?! ええと、私、まだお酒は……」
店員の南那初華(kz0135)、腰を引いて身じろぎ……というかお尻をわずかに振りながら返す。
これが良くなかった。
「何? 酒を飲んだことがない? それはいかん。お酒はいいぞ、人生の潤滑油だ。どれ、おじちゃんが酒の飲み方を教えてあげようか」
いつなら予定が空いてるのか、いやいっそ今晩はどうか、今夜は寝かせんぞぅがはは、などと鼻息荒く一人盛り上がる中年親父客。どうやら助平親父のようで。
――どかっ。
その時、助平親父の前に割り込みカウンターに肘を付く人影が。
「よう、チョコクレープ一つだ」
禿頭の、見るからに柄の悪そうな男である。
「あ、いらっしゃいませ。ご注文ありがとうございます。そちらのお客様、お待たせしました。ママレードのクレープです。ありがとうございました~」
一瞬怯んだ親父客。初華はこの隙を見逃さず焼けたクレープを手渡した。
さらに横から声が。
「その娘の中年ファンは多いよ、手出しは控えといた方がいいねぇ」
Pクレープの隣に構える自転車修理屋台に座る自称戦場詩人、ダイン・グラマンが親父客に釘を差す。
「分かっとるわい。じゃから目につかんよう酒場にでもと思ったのに……」
「あんだと?」
禿頭の男、振り返って睨む。
「ひっ! 初華ちゃん、悪いこと言わんからこういうチンピラとは付き合うんじゃないぞ!」
親父客、それだけ言い残しクレープを手に消えた。禿頭の男は自嘲気味に、「んなこた言われんでもわかってるよ」とつぶやき見送る。
「すまんね。もう俺が注意したくらいじゃ聞きもしなくなってね」
ダイン、常連客でもある禿頭のチンピラに感謝する。
「お前らもチンピラ相手にゃ強く出ても一般人にゃ弱いってか。時と場合によっちゃあ俺らよりああいうのが手に負えんぜ?」
やれやれ、と禿頭の男。
「その……ありがと。最近、ああいったお客さんが増えてきて……」
もじもじしつつ感謝する初華だが、この言葉に荒げた声が返ってくる。
「バカやろう、お前が隙だらけだからだ! 誘う気がないならウブっぽい感じをやめろ」
「でも私、ホントにお酒飲んだことないもん。こっちではお酒飲んでいい年齢みたいだけど」
リアルブルーでは「お酒は二十歳を過ぎてから」。こっちでは十五歳以上くらいならいいらしい。
「だからまずそういうバカ正直な様子をだなぁ……」
「初華、今度Pクレープの仲間と飲みに行ったらどうだい? あの客たち、「初華が初めてお酒を教えてもらった人」になりたいんだろうし」
言い合いの横からダインが根本的解決策を提示する。
「そんなものに価値があるの?」
「おっさんのロマンじゃないのかねえ。俺には興味ないがねぇ」
目をひんむく初華にぼんやりと教えてやるダイン。
「ダメだ」
おっと。
禿頭のチンピラは納得しないぞ。
「酒は最初が肝心だ。安っぽい場所で安っぽい酒を飲むと安っぽい女にしかならねえ。どうせ飲むんなら、一流の場所で一流の酒を飲むんだ」
「そ、そんなことゆったって……」
「ま、数日待ってろ。当たりつけてくるからよ」
というわけで後日。
「これ……」
「ミステリ・クラブ例会の招待状? ……パーティーの名前はともかく会場は一流どころだねぇ」
禿頭のチンピラ客の持ってきた物に初華とダインが釘付けになる。
「紳士淑女の好事家の集う夜会だ。不思議な話や冒険譚、奇譚にゴシップ、エログロな話なんかを持ち寄ってそれぞれ交流している。……集まる奴らは全員目元だけを覆う仮面を着けて正体を隠しているが、ヴァリオス商工会の会員がほとんどで一流どころも多い。ここなら一流の酒を飲めるし、一流の雰囲気に触れることもできるだろう。楽しんで来るといい」
事情通らしく声を落として話すチンピラだった。
そんなこんなで、南那初華と一緒に仮面夜会「ミステリ・クラブ」に仮面を着けて出席し、禿頭の男を通じて人手を募った「アマリリス商会」の「バモス」という人物に会場各所で交わされていた話を報告する人、求ム。
「なあ、初華ちゃん。おじさんとお酒飲みに行こう」
街角屋台「Pクレープ」の店頭で中年男性客が身をぐぐっとと乗り出してそんなことを言っている。
「え?! ええと、私、まだお酒は……」
店員の南那初華(kz0135)、腰を引いて身じろぎ……というかお尻をわずかに振りながら返す。
これが良くなかった。
「何? 酒を飲んだことがない? それはいかん。お酒はいいぞ、人生の潤滑油だ。どれ、おじちゃんが酒の飲み方を教えてあげようか」
いつなら予定が空いてるのか、いやいっそ今晩はどうか、今夜は寝かせんぞぅがはは、などと鼻息荒く一人盛り上がる中年親父客。どうやら助平親父のようで。
――どかっ。
その時、助平親父の前に割り込みカウンターに肘を付く人影が。
「よう、チョコクレープ一つだ」
禿頭の、見るからに柄の悪そうな男である。
「あ、いらっしゃいませ。ご注文ありがとうございます。そちらのお客様、お待たせしました。ママレードのクレープです。ありがとうございました~」
一瞬怯んだ親父客。初華はこの隙を見逃さず焼けたクレープを手渡した。
さらに横から声が。
「その娘の中年ファンは多いよ、手出しは控えといた方がいいねぇ」
Pクレープの隣に構える自転車修理屋台に座る自称戦場詩人、ダイン・グラマンが親父客に釘を差す。
「分かっとるわい。じゃから目につかんよう酒場にでもと思ったのに……」
「あんだと?」
禿頭の男、振り返って睨む。
「ひっ! 初華ちゃん、悪いこと言わんからこういうチンピラとは付き合うんじゃないぞ!」
親父客、それだけ言い残しクレープを手に消えた。禿頭の男は自嘲気味に、「んなこた言われんでもわかってるよ」とつぶやき見送る。
「すまんね。もう俺が注意したくらいじゃ聞きもしなくなってね」
ダイン、常連客でもある禿頭のチンピラに感謝する。
「お前らもチンピラ相手にゃ強く出ても一般人にゃ弱いってか。時と場合によっちゃあ俺らよりああいうのが手に負えんぜ?」
やれやれ、と禿頭の男。
「その……ありがと。最近、ああいったお客さんが増えてきて……」
もじもじしつつ感謝する初華だが、この言葉に荒げた声が返ってくる。
「バカやろう、お前が隙だらけだからだ! 誘う気がないならウブっぽい感じをやめろ」
「でも私、ホントにお酒飲んだことないもん。こっちではお酒飲んでいい年齢みたいだけど」
リアルブルーでは「お酒は二十歳を過ぎてから」。こっちでは十五歳以上くらいならいいらしい。
「だからまずそういうバカ正直な様子をだなぁ……」
「初華、今度Pクレープの仲間と飲みに行ったらどうだい? あの客たち、「初華が初めてお酒を教えてもらった人」になりたいんだろうし」
言い合いの横からダインが根本的解決策を提示する。
「そんなものに価値があるの?」
「おっさんのロマンじゃないのかねえ。俺には興味ないがねぇ」
目をひんむく初華にぼんやりと教えてやるダイン。
「ダメだ」
おっと。
禿頭のチンピラは納得しないぞ。
「酒は最初が肝心だ。安っぽい場所で安っぽい酒を飲むと安っぽい女にしかならねえ。どうせ飲むんなら、一流の場所で一流の酒を飲むんだ」
「そ、そんなことゆったって……」
「ま、数日待ってろ。当たりつけてくるからよ」
というわけで後日。
「これ……」
「ミステリ・クラブ例会の招待状? ……パーティーの名前はともかく会場は一流どころだねぇ」
禿頭のチンピラ客の持ってきた物に初華とダインが釘付けになる。
「紳士淑女の好事家の集う夜会だ。不思議な話や冒険譚、奇譚にゴシップ、エログロな話なんかを持ち寄ってそれぞれ交流している。……集まる奴らは全員目元だけを覆う仮面を着けて正体を隠しているが、ヴァリオス商工会の会員がほとんどで一流どころも多い。ここなら一流の酒を飲めるし、一流の雰囲気に触れることもできるだろう。楽しんで来るといい」
事情通らしく声を落として話すチンピラだった。
そんなこんなで、南那初華と一緒に仮面夜会「ミステリ・クラブ」に仮面を着けて出席し、禿頭の男を通じて人手を募った「アマリリス商会」の「バモス」という人物に会場各所で交わされていた話を報告する人、求ム。
リプレイ本文
●
黒い礼服やドレスに身を包み、仮面を着けた男女8人がカツカツと回廊を行く。
「立派な建物だな」
シンプルな作りのダークスーツ「ミスタースミス」に身を包んだ鞍馬 真(ka5819)が呟いた。少し珍しそうにしている。
「ほへえ、真さん、こういうところに慣れっこだと思ってた」
ゴシックドレス姿で少し腰の引けている南那初華(kz0135)が返す。
「気後れする必要はありませんよ」
執事服を着た真田 天斗(ka0014)が初華に声を掛け落ち着かせる。
「そーそー、天斗の言う通りだよ。パティも仮面夜会なんて、初めて」
ドレス「テンタシオン」に身を包んだパティことパトリシア=K=ポラリス(ka5996)はドキドキワクワク。
初華、この様子を見て思い出す。
「ふぁっ、クレープ屋サンの定員さん?」
先ほど出会ったときパティはそう言って驚き、嬉しそうにしたのだ。
「天斗さんはさすがだけど……パティさんもすごいよね~。まったく物怖じしてないし」
しみじみこぼす初華。
「そんなコトないヨ。それよりそろそろ春のジャムのクレープ?」
「それは楽しみですね」
パティの言葉に、品の良い黒い礼装姿のGacrux(ka2726)が初華に微笑した。
「ほへ? ガクさんまで! え、ええと……ジャム作り頑張らなくちゃ」
「それにしても、最初のお酒が大事なのはわかるけどその為に夜会か。愛されてるなあ、初華さん」
「あんもう、アルバさん。からかわれてるだけだよぅ」
初華、表情を覗き込んできた白いスーツのアルバ・ソル(ka4189)に慌てて返す
「どっちにしても、たまにはこういうのも悪くないよね」
仁川 リア(ka3483)が黒い鳥の形をした仮面を外してにこやかに。
「あ。リアさん、仮面は外しちゃダメよ」
初華、ぎょっとする。
「大丈夫。会場に入る前だから外したんだよ」
リアの方は自信満々にこたえ仮面を着ける。
「それに、旅先で聞いたんだけど、リアルブルーのえいこくしんしってこんな格好なんでしょ?」
「ええー、そうだったかなぁ?」
話の弾む二人。
これを見てゴシックドレス姿の娘が噴き出した。
「初華さん、すっかり緊張がとけてるし~」
蝶の仮面を外し、メルクーア(ka4005)が笑っている。
「べ、別に緊張してなかったよぅ」
「それなら良かった。お酒は気構えずに飲むのが一番だからね~」
「では、入りましょう」
初華が言い返し、メルクーアが再び仮面を着けたところで天斗が会場への両開き扉をあけ放つのだった。
●
「ほ、ほへぇ……」
目の前に広がった光景に初華、茫然とした。
仮面を着けた紳士淑女がそこかしこに立ち、優雅にグラスを傾け、上品に笑っているのだ。
豪華なシャンデリアの下で、誰もが高貴な立ち居振る舞い。
明らかに上流という雰囲気が伝わって来る。
ただし!
「異様な雰囲気だな」
「たしかに、なかなかないね」
真の呟きにアルバの薄い笑み。二人ともこういった趣味はなかったようで。
「ワクワクしてきたヨ!」
そんな中パティはハイヒールの踵を上げてそわそわ。
「うふん♪」
メルクーアも爪先立ちでお目めうっとり。
「面白そうだなぁ」
あああっ!
リアまでなんかゲームを前にした子どものようにワクワクした顔をしてるぞ。
「じゃ、俺は会場の方を見て回りますので初華は酒を楽しんできて下さい」
Gacruxは三人の前を悠然と横切ると、初華に紳士的な礼をした。
「え? 一人で大丈夫?」
「なに、噂話の収集ならお任せを…。ゴシップやナンセンスな話題は大好物ですよ」
心配する初華に、背中越しに答えるGacrux。頼れる姿を見せる。
動じない者はもう一人。
「初華さん、まずはこちらへ」
天斗がGacruxとは別方向へ初華を促す。
「なるほど。依頼主か」
真、その方向にアマリリスの刺繍付きハンカチを胸ポケットに飾った男を発見し納得した。
「全員だと目立ちますのでここにいてください」
というわけで、天斗が初華を伴ってアマリリス商会のバモスの元へ。
「今回はお招き頂きありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
右の二の腕を水平にして礼をする天斗を見習い、初華もスカートの裾を少し広げて一礼。
「期待してます」
バモス、手短に言い微笑する。
「誰かに仕える仕事を長くしている人物ですね」
「ほ、ほへぇ、そうなの?」
辞した後、感心したように言う天斗。そんな姿に感心する初華だが、天斗はすでに近くのテーブルからサンドイッチとミルクを取っていた。
「ほへ?」
「空腹だとお酒の回りが早いですから。それにこういった立食パーティーでは料理よりも会話ですから」
「あ、ありがと。天斗さん」
「そうそう。悪酔いするから、まずは先に軽くなにか食べましょ♪」
ミルクを手にしたとき、メルクーアも寄って来た。すでに一口大のチーズを皿に取っている。
「最初はここら辺が宜しいでしょうね」
そしてシャンパンを。
無邪気に飲み干す初華。
そして笑顔。
どうやら美味しかったらしい。
「次のお酒はパティが持って来るね。……甘くテ、あんまり強くないのをくださいナー」
パティはみんなのために、と給仕目掛けてらんらんら~ん♪
(まずいな)
ここで真が一歩引いた。
周りを見ると、輪が大きな場所に人が集まる。
逆に一人のところにも人が来る。
目立つのは良くない、と判断し、こっそりと抜けた。
情報収集に出るのが皆のためと判断した。
「それじゃ、初めてのお酒楽しんでね。僕は僕でやりたい事あるんだよね」
リアも軽く手を振り離れた。
こちらは明らかに困難を楽しみとして立ち向かうため、といった顔つき。
(いろんな人がいる)
真は真で、リアの様子を楽しそうに見送りつつ別の場所へと消えた。
●
さて、Gacrux。
「いやあ、最近はめっきり面白い話も減ったねぇ」
「そうでございますわね。このクラブも結構重ねましたし」
周りの仮面紳士や仮面淑女はそんな囁きをかわしておほほほほ。
「……停滞気味なんですかね」
Gacrux、やや難しい顔をする。放っておいても会話の弾む状況ではないらしい。
仕方ない、と傍にいた給仕から珍しそうな酒を二つもらい突入。
「退屈されてるようですね。このお酒はどうです?」
「あら。先ほどいただきましたが……少し色が違いますかしら?」
運よく違うカクテルだったようだ。
「運命を感じますね。……酒の肴に、とある商会の護送事件の話などいかが?」
自ら過去依頼に関わったグローリー商会の犯人護送の一件を切り出した。
「ほぅ」
「まぁ」
反応は良い。
「そういえば商会と言えば」
話題がつながった。にやりと内心笑むGacrux。
「鉄鉱石の需要が伸びとるが……その陰で特殊ガラスの需要も伸びる」
「CAMとか言いましたかしら?」
「鉄鉱石の主導権の奪い合いが落ち着けば次はそちらに移る。先手を打つのも手だがリスクも高い。面白くなるぞ」
「関係者以外は見物ですわね」
「対岸の火事ほど面白いものはないからのぅ」
げっげっげっ、とその場の者たち。
下衆の集まりですねぇ、などと思いつつ心に留めるGacruxだった。
こちら、リア。
「やぁ、僕は旅するハンターこと……おっと、ここでは匿名の方が良さそうだね」
一人佇む仮面紳士に近寄りそんな挨拶をかましていた。
「別に匿名ではなくていいのさ。本名を堂々と晒す者もいる」
「え? それどういう意味?」
リア、少し子どもっぽく無邪気な反応をした。……実は素が出たとも言うが。
「普段、嘘の名前で詐欺まがいの仕事をしてるから、ここでくらいは自分でありたい、と仮面を被ってるらしい」
紳士、笑う。
「詐欺まがいの仕事をしなければいいんじゃない?」
「贋作を家宝にしている人に、こんなものに価値はないとは言えないものだよ……例えば」
思わず話に引き込まれて詳しく聞いてしまうリア。
(なるほど。話し上手な人が集まってるよね)
感心して、次の場所に。
「ちょっとお話大丈夫かな? お酒飲むのに1人じゃつまんなくてさ」
今度は仮面の女性に話し掛けてみた。
「あら……え? 旅する何? 面白い人。これまでどんな旅をしてきたの、匿名さん」
くすくす笑ってリアの話に食いつく。
「ええと、ボラ族というのがいてね……」
奇抜で分かりやすいものを、と思い巡らせ「ボラ族」を出した。
そして気付く。
(あの時は浴衣で、今回はえいこくしんしだね)
結構、いろんな格好してるな、とか。
ともかく、聞き上手もここには集まるようで。
聞き上手はここにもいる。
「フマーレの奥の新興鉱山が面白いらしいわ」
「ああ、伝説の巨人が出たり吸血鬼がでたり、だろ?」
話の輪に加わり、ふんふんと興味深げに頷く男がいる。
真だ。
影のようにひっそり加わり、話に水を差さないようひっそりと酒を飲みつつ聞き入っている。
「それも面白いですけど、取引業者が事業を見限り事業主の破産を密かに待ってるらしいですわ」
「死肉に群がるハイエナどもはけしからんですなぁ」
わはは、と周りの笑い声。
「待って……どうする?」
真、ここで口を挟んだ。
にまあ、と得意げに見返す仮面淑女。
「事業主は地主さんですわ。権利を手に入れれば労せず一定の収入が懐の中」
ちら、と懐というか胸元を開いて白い肌を妖艶に晒す。
「どう? 魅力的な話でしょ?」
ぐぐっ、とそのまま真に迫る。
「そ、そうだな」
真は鼻の下を伸ばすでもなくむしろ困るが、我慢して話に食いついている風を装う。むせるほどの色香が近い。
役得などとは思っていないのが真らしく、それを見抜いた女性も楽しそうにうふんと迫る。
●
時は遡り、初華。
「これはどこの産地の物かしら?」
「くす……ジェオルジ産のワインですよ」
給仕に聞いたところ、棒読みセリフに失笑された。遠くで見守っていたメルクーアが、あちゃ~、と目を覆っていたり。
「ああん~。メルクーアさん、私、くやしい~」
戻った初華がメルクーアにひしと泣きつく。教わった通りに聞いたのに失敗気味だった自分が悔しい。
「はいはい。知ったかぶりするよりはいいわよ。棒読み台詞がいけなかっただけだし」
ぽむぽむと抱きとめながらメルクーアが慰める。
「その点、彼女は素晴らしいですね」
天斗が横を見る。
そこでは。
――くんくん、ツーン。
パティが給仕の持つ酒に鼻を寄せて、顔をしかめ仰け反っていた。
続いて隣のグラス。
――くんくん……。
「コレ、これくださいな~」
どうやら甘くてきつくない酒を選んだらしい。
で、戻って来る。
「梅酒とチョコのお酒、持ってきたヨー」
「わぁい」
「あ、無理して飲まない方がいいわよー」
陽気な声に、ぐっと飲み干しパティの酒を取る初華。これをメルクーアが咎めた。
「え? だ、だって次から次に食べ物もお酒も来るし……」
ぎくっ、と動きを止めた初華の横に、天斗が執事よろしくメーンのムニエルを差し出していた。それまではきっちり、前菜を三皿。
「せっかくですから、食事も一流を体験してもらいます……あとは肉類の主菜ですね」
天斗、涼やかに言う。
あまりにもグッドタイミングで出るので初華も酒が進んでしまっていたのだ。
この時、優雅な音楽が流れた。
「いい機会ですから、社交術も一流を。……私めと踊ってくれませんか? レディ」
アルバが礼儀正しく手を差し出していた。
初華、導かれるように手を取ると……。
「ほへ?」
気付けば優雅に踊っていた。
アルバのエスコートで、くるり、くるり。
「おや、あの娘さん……」
その姿に気付いたおっさんがいる。
「どうされましたか?」
天斗が気付いてすかさず詰め寄る。完璧な笑顔で他意は見せない。
「いや、雰囲気の似た娘がおっての。屋台の店員じゃが……」
「そういえば最近天気がいいですね。その分疲れますが甘いものはいいですよね」
まさか、と思いかまをかける。
「おお。クレープなんぞうまいよの」
当たりですか、と内心脱力する天斗だったり。
さて、ダンスを終えた初華。
「お酒には詳しくないのだけれど……果汁を使った甘口で、あまり強くないお酒をいただける?」
「かしこまりました」
カウンターで給仕伝えた。今度は優雅に決まった。
「うふん♪ そうそう。……さっきのダンスで淑女ぽくなったかしらね~」
指導したメルクーアはバーボンをダブルで。グラスを揺らし色味を楽しみつつ、ちびりと味わう。いい気分でアルバの方を向く。
「そちらのお嬢さん、おじさんとダンスはいかがかの?」
ここで仮面中年から初華に声が。
「悪いね。こちらのツレなんだよ」
アルバがすかさずカット。初華の方は「あれ? 店で会ったことあるかなぁ」とか首をひねっていたり。
「イイなぁ、パ…ワタシも欲しいなァ…」
パティは、ふらふらと美味しいものを求めていた。
あっちに行ってはうふふと会話に交ざってその場の皿からおすそ分けをもらって。
こっちに寄っては名前は秘密だけどUSAから来ましたー、とか自己紹介して気に入られてこっちではこれが美味しいからとか教えてもらったり。
「美味しいなァ、楽しいなァ、ふへへ」
ちびちびやってても回数が多くなってすでにふわふわ。気持ちいい感じ。
そのままベランダで腰掛ける。
しばらくすると初華たちもやって来た。
「うふふ~」
「はいはい。気持ちよくなってきたら、そこで飲むのを止めて、酔いを醒ました方がいいわよー。……こんな風に」
メルクーア、パティに気付く。
「かわいいドレスは好きだケド、ハイヒールは苦手なんダヨー」
みんなそろって仲良く座り、足ぶらん。
会話は弾み、ポカポカした身体に風と、裸足の足裏から冷たさが気持ちよく――。
●
「今日はありがとうございました」
例会後、別の酒場でバモスと落ち合った。
「あら、本格的に飲まないの?」
メルクーアが強い酒を手に皆に聞いた。
「ええと、まぁ、これが好きなんだよね。このお酒が…」
軽い酒を手にリアが照れ笑い。メルクーアの横では初華が酔いつぶれてテーブルにうつ伏せ。
「お酒は気楽に飲む方が好きだなぁ」
真はのほほんとそんなことを。
「そうだヨネー」
パティも同調。真、こんな感じにいろいろ聞き出した様子。
「アマリリス商会、だったね?」
「おや、ご存じで?」
アルバの言葉にバモスが隠しもせず。どうやらアルバ、関係者がその商会を知っているらしい。
「ある鉱山の産出物で新たな商売がしたい、というのも薄々伝わってそうですね」
「それでしたら」
バモスが言ったところで、Gacruxが口を開いた。大いに重要な情報らしく、バモスの満足度は高かった。
「う、ううん……お酒…」
ここで初華のうわ言。
「……もう彼女はおネムですか?」
「皆さんに愛されていて幸せですね……」
Gacruxが微笑し、天斗が反語のような響きで呟くのだった。
酔いつぶれた初華は、天斗がおんぶして帰ったという。
黒い礼服やドレスに身を包み、仮面を着けた男女8人がカツカツと回廊を行く。
「立派な建物だな」
シンプルな作りのダークスーツ「ミスタースミス」に身を包んだ鞍馬 真(ka5819)が呟いた。少し珍しそうにしている。
「ほへえ、真さん、こういうところに慣れっこだと思ってた」
ゴシックドレス姿で少し腰の引けている南那初華(kz0135)が返す。
「気後れする必要はありませんよ」
執事服を着た真田 天斗(ka0014)が初華に声を掛け落ち着かせる。
「そーそー、天斗の言う通りだよ。パティも仮面夜会なんて、初めて」
ドレス「テンタシオン」に身を包んだパティことパトリシア=K=ポラリス(ka5996)はドキドキワクワク。
初華、この様子を見て思い出す。
「ふぁっ、クレープ屋サンの定員さん?」
先ほど出会ったときパティはそう言って驚き、嬉しそうにしたのだ。
「天斗さんはさすがだけど……パティさんもすごいよね~。まったく物怖じしてないし」
しみじみこぼす初華。
「そんなコトないヨ。それよりそろそろ春のジャムのクレープ?」
「それは楽しみですね」
パティの言葉に、品の良い黒い礼装姿のGacrux(ka2726)が初華に微笑した。
「ほへ? ガクさんまで! え、ええと……ジャム作り頑張らなくちゃ」
「それにしても、最初のお酒が大事なのはわかるけどその為に夜会か。愛されてるなあ、初華さん」
「あんもう、アルバさん。からかわれてるだけだよぅ」
初華、表情を覗き込んできた白いスーツのアルバ・ソル(ka4189)に慌てて返す
「どっちにしても、たまにはこういうのも悪くないよね」
仁川 リア(ka3483)が黒い鳥の形をした仮面を外してにこやかに。
「あ。リアさん、仮面は外しちゃダメよ」
初華、ぎょっとする。
「大丈夫。会場に入る前だから外したんだよ」
リアの方は自信満々にこたえ仮面を着ける。
「それに、旅先で聞いたんだけど、リアルブルーのえいこくしんしってこんな格好なんでしょ?」
「ええー、そうだったかなぁ?」
話の弾む二人。
これを見てゴシックドレス姿の娘が噴き出した。
「初華さん、すっかり緊張がとけてるし~」
蝶の仮面を外し、メルクーア(ka4005)が笑っている。
「べ、別に緊張してなかったよぅ」
「それなら良かった。お酒は気構えずに飲むのが一番だからね~」
「では、入りましょう」
初華が言い返し、メルクーアが再び仮面を着けたところで天斗が会場への両開き扉をあけ放つのだった。
●
「ほ、ほへぇ……」
目の前に広がった光景に初華、茫然とした。
仮面を着けた紳士淑女がそこかしこに立ち、優雅にグラスを傾け、上品に笑っているのだ。
豪華なシャンデリアの下で、誰もが高貴な立ち居振る舞い。
明らかに上流という雰囲気が伝わって来る。
ただし!
「異様な雰囲気だな」
「たしかに、なかなかないね」
真の呟きにアルバの薄い笑み。二人ともこういった趣味はなかったようで。
「ワクワクしてきたヨ!」
そんな中パティはハイヒールの踵を上げてそわそわ。
「うふん♪」
メルクーアも爪先立ちでお目めうっとり。
「面白そうだなぁ」
あああっ!
リアまでなんかゲームを前にした子どものようにワクワクした顔をしてるぞ。
「じゃ、俺は会場の方を見て回りますので初華は酒を楽しんできて下さい」
Gacruxは三人の前を悠然と横切ると、初華に紳士的な礼をした。
「え? 一人で大丈夫?」
「なに、噂話の収集ならお任せを…。ゴシップやナンセンスな話題は大好物ですよ」
心配する初華に、背中越しに答えるGacrux。頼れる姿を見せる。
動じない者はもう一人。
「初華さん、まずはこちらへ」
天斗がGacruxとは別方向へ初華を促す。
「なるほど。依頼主か」
真、その方向にアマリリスの刺繍付きハンカチを胸ポケットに飾った男を発見し納得した。
「全員だと目立ちますのでここにいてください」
というわけで、天斗が初華を伴ってアマリリス商会のバモスの元へ。
「今回はお招き頂きありがとうございます」
「あ、ありがとうございます」
右の二の腕を水平にして礼をする天斗を見習い、初華もスカートの裾を少し広げて一礼。
「期待してます」
バモス、手短に言い微笑する。
「誰かに仕える仕事を長くしている人物ですね」
「ほ、ほへぇ、そうなの?」
辞した後、感心したように言う天斗。そんな姿に感心する初華だが、天斗はすでに近くのテーブルからサンドイッチとミルクを取っていた。
「ほへ?」
「空腹だとお酒の回りが早いですから。それにこういった立食パーティーでは料理よりも会話ですから」
「あ、ありがと。天斗さん」
「そうそう。悪酔いするから、まずは先に軽くなにか食べましょ♪」
ミルクを手にしたとき、メルクーアも寄って来た。すでに一口大のチーズを皿に取っている。
「最初はここら辺が宜しいでしょうね」
そしてシャンパンを。
無邪気に飲み干す初華。
そして笑顔。
どうやら美味しかったらしい。
「次のお酒はパティが持って来るね。……甘くテ、あんまり強くないのをくださいナー」
パティはみんなのために、と給仕目掛けてらんらんら~ん♪
(まずいな)
ここで真が一歩引いた。
周りを見ると、輪が大きな場所に人が集まる。
逆に一人のところにも人が来る。
目立つのは良くない、と判断し、こっそりと抜けた。
情報収集に出るのが皆のためと判断した。
「それじゃ、初めてのお酒楽しんでね。僕は僕でやりたい事あるんだよね」
リアも軽く手を振り離れた。
こちらは明らかに困難を楽しみとして立ち向かうため、といった顔つき。
(いろんな人がいる)
真は真で、リアの様子を楽しそうに見送りつつ別の場所へと消えた。
●
さて、Gacrux。
「いやあ、最近はめっきり面白い話も減ったねぇ」
「そうでございますわね。このクラブも結構重ねましたし」
周りの仮面紳士や仮面淑女はそんな囁きをかわしておほほほほ。
「……停滞気味なんですかね」
Gacrux、やや難しい顔をする。放っておいても会話の弾む状況ではないらしい。
仕方ない、と傍にいた給仕から珍しそうな酒を二つもらい突入。
「退屈されてるようですね。このお酒はどうです?」
「あら。先ほどいただきましたが……少し色が違いますかしら?」
運よく違うカクテルだったようだ。
「運命を感じますね。……酒の肴に、とある商会の護送事件の話などいかが?」
自ら過去依頼に関わったグローリー商会の犯人護送の一件を切り出した。
「ほぅ」
「まぁ」
反応は良い。
「そういえば商会と言えば」
話題がつながった。にやりと内心笑むGacrux。
「鉄鉱石の需要が伸びとるが……その陰で特殊ガラスの需要も伸びる」
「CAMとか言いましたかしら?」
「鉄鉱石の主導権の奪い合いが落ち着けば次はそちらに移る。先手を打つのも手だがリスクも高い。面白くなるぞ」
「関係者以外は見物ですわね」
「対岸の火事ほど面白いものはないからのぅ」
げっげっげっ、とその場の者たち。
下衆の集まりですねぇ、などと思いつつ心に留めるGacruxだった。
こちら、リア。
「やぁ、僕は旅するハンターこと……おっと、ここでは匿名の方が良さそうだね」
一人佇む仮面紳士に近寄りそんな挨拶をかましていた。
「別に匿名ではなくていいのさ。本名を堂々と晒す者もいる」
「え? それどういう意味?」
リア、少し子どもっぽく無邪気な反応をした。……実は素が出たとも言うが。
「普段、嘘の名前で詐欺まがいの仕事をしてるから、ここでくらいは自分でありたい、と仮面を被ってるらしい」
紳士、笑う。
「詐欺まがいの仕事をしなければいいんじゃない?」
「贋作を家宝にしている人に、こんなものに価値はないとは言えないものだよ……例えば」
思わず話に引き込まれて詳しく聞いてしまうリア。
(なるほど。話し上手な人が集まってるよね)
感心して、次の場所に。
「ちょっとお話大丈夫かな? お酒飲むのに1人じゃつまんなくてさ」
今度は仮面の女性に話し掛けてみた。
「あら……え? 旅する何? 面白い人。これまでどんな旅をしてきたの、匿名さん」
くすくす笑ってリアの話に食いつく。
「ええと、ボラ族というのがいてね……」
奇抜で分かりやすいものを、と思い巡らせ「ボラ族」を出した。
そして気付く。
(あの時は浴衣で、今回はえいこくしんしだね)
結構、いろんな格好してるな、とか。
ともかく、聞き上手もここには集まるようで。
聞き上手はここにもいる。
「フマーレの奥の新興鉱山が面白いらしいわ」
「ああ、伝説の巨人が出たり吸血鬼がでたり、だろ?」
話の輪に加わり、ふんふんと興味深げに頷く男がいる。
真だ。
影のようにひっそり加わり、話に水を差さないようひっそりと酒を飲みつつ聞き入っている。
「それも面白いですけど、取引業者が事業を見限り事業主の破産を密かに待ってるらしいですわ」
「死肉に群がるハイエナどもはけしからんですなぁ」
わはは、と周りの笑い声。
「待って……どうする?」
真、ここで口を挟んだ。
にまあ、と得意げに見返す仮面淑女。
「事業主は地主さんですわ。権利を手に入れれば労せず一定の収入が懐の中」
ちら、と懐というか胸元を開いて白い肌を妖艶に晒す。
「どう? 魅力的な話でしょ?」
ぐぐっ、とそのまま真に迫る。
「そ、そうだな」
真は鼻の下を伸ばすでもなくむしろ困るが、我慢して話に食いついている風を装う。むせるほどの色香が近い。
役得などとは思っていないのが真らしく、それを見抜いた女性も楽しそうにうふんと迫る。
●
時は遡り、初華。
「これはどこの産地の物かしら?」
「くす……ジェオルジ産のワインですよ」
給仕に聞いたところ、棒読みセリフに失笑された。遠くで見守っていたメルクーアが、あちゃ~、と目を覆っていたり。
「ああん~。メルクーアさん、私、くやしい~」
戻った初華がメルクーアにひしと泣きつく。教わった通りに聞いたのに失敗気味だった自分が悔しい。
「はいはい。知ったかぶりするよりはいいわよ。棒読み台詞がいけなかっただけだし」
ぽむぽむと抱きとめながらメルクーアが慰める。
「その点、彼女は素晴らしいですね」
天斗が横を見る。
そこでは。
――くんくん、ツーン。
パティが給仕の持つ酒に鼻を寄せて、顔をしかめ仰け反っていた。
続いて隣のグラス。
――くんくん……。
「コレ、これくださいな~」
どうやら甘くてきつくない酒を選んだらしい。
で、戻って来る。
「梅酒とチョコのお酒、持ってきたヨー」
「わぁい」
「あ、無理して飲まない方がいいわよー」
陽気な声に、ぐっと飲み干しパティの酒を取る初華。これをメルクーアが咎めた。
「え? だ、だって次から次に食べ物もお酒も来るし……」
ぎくっ、と動きを止めた初華の横に、天斗が執事よろしくメーンのムニエルを差し出していた。それまではきっちり、前菜を三皿。
「せっかくですから、食事も一流を体験してもらいます……あとは肉類の主菜ですね」
天斗、涼やかに言う。
あまりにもグッドタイミングで出るので初華も酒が進んでしまっていたのだ。
この時、優雅な音楽が流れた。
「いい機会ですから、社交術も一流を。……私めと踊ってくれませんか? レディ」
アルバが礼儀正しく手を差し出していた。
初華、導かれるように手を取ると……。
「ほへ?」
気付けば優雅に踊っていた。
アルバのエスコートで、くるり、くるり。
「おや、あの娘さん……」
その姿に気付いたおっさんがいる。
「どうされましたか?」
天斗が気付いてすかさず詰め寄る。完璧な笑顔で他意は見せない。
「いや、雰囲気の似た娘がおっての。屋台の店員じゃが……」
「そういえば最近天気がいいですね。その分疲れますが甘いものはいいですよね」
まさか、と思いかまをかける。
「おお。クレープなんぞうまいよの」
当たりですか、と内心脱力する天斗だったり。
さて、ダンスを終えた初華。
「お酒には詳しくないのだけれど……果汁を使った甘口で、あまり強くないお酒をいただける?」
「かしこまりました」
カウンターで給仕伝えた。今度は優雅に決まった。
「うふん♪ そうそう。……さっきのダンスで淑女ぽくなったかしらね~」
指導したメルクーアはバーボンをダブルで。グラスを揺らし色味を楽しみつつ、ちびりと味わう。いい気分でアルバの方を向く。
「そちらのお嬢さん、おじさんとダンスはいかがかの?」
ここで仮面中年から初華に声が。
「悪いね。こちらのツレなんだよ」
アルバがすかさずカット。初華の方は「あれ? 店で会ったことあるかなぁ」とか首をひねっていたり。
「イイなぁ、パ…ワタシも欲しいなァ…」
パティは、ふらふらと美味しいものを求めていた。
あっちに行ってはうふふと会話に交ざってその場の皿からおすそ分けをもらって。
こっちに寄っては名前は秘密だけどUSAから来ましたー、とか自己紹介して気に入られてこっちではこれが美味しいからとか教えてもらったり。
「美味しいなァ、楽しいなァ、ふへへ」
ちびちびやってても回数が多くなってすでにふわふわ。気持ちいい感じ。
そのままベランダで腰掛ける。
しばらくすると初華たちもやって来た。
「うふふ~」
「はいはい。気持ちよくなってきたら、そこで飲むのを止めて、酔いを醒ました方がいいわよー。……こんな風に」
メルクーア、パティに気付く。
「かわいいドレスは好きだケド、ハイヒールは苦手なんダヨー」
みんなそろって仲良く座り、足ぶらん。
会話は弾み、ポカポカした身体に風と、裸足の足裏から冷たさが気持ちよく――。
●
「今日はありがとうございました」
例会後、別の酒場でバモスと落ち合った。
「あら、本格的に飲まないの?」
メルクーアが強い酒を手に皆に聞いた。
「ええと、まぁ、これが好きなんだよね。このお酒が…」
軽い酒を手にリアが照れ笑い。メルクーアの横では初華が酔いつぶれてテーブルにうつ伏せ。
「お酒は気楽に飲む方が好きだなぁ」
真はのほほんとそんなことを。
「そうだヨネー」
パティも同調。真、こんな感じにいろいろ聞き出した様子。
「アマリリス商会、だったね?」
「おや、ご存じで?」
アルバの言葉にバモスが隠しもせず。どうやらアルバ、関係者がその商会を知っているらしい。
「ある鉱山の産出物で新たな商売がしたい、というのも薄々伝わってそうですね」
「それでしたら」
バモスが言ったところで、Gacruxが口を開いた。大いに重要な情報らしく、バモスの満足度は高かった。
「う、ううん……お酒…」
ここで初華のうわ言。
「……もう彼女はおネムですか?」
「皆さんに愛されていて幸せですね……」
Gacruxが微笑し、天斗が反語のような響きで呟くのだった。
酔いつぶれた初華は、天斗がおんぶして帰ったという。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 6人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
- 見極めし黒曜の瞳
Gacrux(ka2726)
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/12 18:13:43 |
|
![]() |
【相談卓】 仁川 リア(ka3483) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/03/12 21:55:19 |