ゲスト
(ka0000)
【龍鉱】赤金鱗竜殺しの勲
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/20 22:00
- 完成日
- 2016/03/29 02:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「これはこれは……実に興味深い」
ある日のカム・ラディ遺跡。この日遺跡には客人達がやって来ていた。彼らは遺跡に転移するやいなや壁を、床を、石柱を丹念に調べ始める。そして傷を発見するとそれを舐め回す様につぶさに観察し始める。
彼らの正体は魔術師協会の人間たちである。彼らはこの遺跡に残された文章を調査し、リグ・サンガマに住んだ人々が我々に教えてくれることを拾い上げる。そしてその情報をこれからの戦いに向けて役立てようという算段だった。
といっても、遺跡の損傷は激しい。意味のあるレベルで文章が残っている方がレアケースだ。
そんな中、奇跡的に一つながりの文章が残っている部分が発見された。協会の人々は早速解読を開始する。
●
「どれどれ、読んでみましょう」
協会の人間の中で最長老と思しき者が壁の前にひざまづき、目を凝らして読み始める。加齢に伴い戦闘能力は落ちたかもしれないが、齢とともに蓄えたその頭の中の知識はそれを補って余りあるものだった。
「なになに……『夜の帳の中、赤金色に輝く鱗を持った竜が来襲せり。彼の竜の名はロンヴオル』」
「ちょっと待ってください」
その言葉に、助手として付いていた者がレポートをめくり始める。程なくして彼は目当てのレポートを発見した。
「これですね。つい先日赤金色の鱗を持つ竜がこの遺跡を襲いました」
「偶然ということがあるかもしれませんな。続きを読んでからでも遅くない。……『人は矢で、槍で、剣でもって立ち向かったものの、その全ては鱗の前に阻まれ傷を与えることは叶わず』」
「まさか!」
そこまで聞いて助手は素っ頓狂な声を上げる。彼の手にしたレポートには、この遺跡を襲った竜もまた、その強靭な鱗でハンター達の攻撃をことごとく跳ね返した事が載っていた。
「ふむ……何せこの竜は歪虚。我々とは別の理に生きている者。ならばリグ・サンガマが滅びた時に生きていた竜が今も生きて活動していることは十分考えられますな」
「しかしかつての人々も倒せなかった、先日の襲撃でも撤退させることは出来たといえ討伐はできなかった、と考えると我々はどうすれば……」
「こういう時こそ先人の知恵を借りましょう」
そして彼は文章の先を読み進める。
「……『ただ一度、暁の空に竜が吠える時、鏃は胸の鱗の、その隙間に刺さりし。彼の鱗は怒りと共に開かれる。その奥底に我々が残した一矢有り』」
「つまりかつての人々も一撃だけは与えたということですか」
「そうなりますな。そして……『この文を読む者達よ、彼の竜の胸に再びその鏃を突き立てよ。さすれば無敵の竜も地に落ちん』……そこにもう一度攻撃を与えれば……」
「恐らく、倒せる」
その時、人はリグ・サンガマの人々が時を超えて贈った、ロンヴオルに対抗するための切り札を手に入れた。
●
夜明け前、太陽がもうすぐその顔を出そうとしていたその時、遺跡に向かって空を駆ける影があった。いや、赤金色に輝くその鱗は影にはならない。
ロンヴオルは怒りに打ち震えていた。矮小なる人がこの竜に傷を与えたというのだから。先日遺跡に襲った時、この竜は偵察程度の考えで持って来ていた。しかし今回は違う。己の爪と炎の息で、遺跡に屯する矮小なる存在を皆殺しにしてやろう、そう考えていた。
そしてその竜の強欲な考えが命を奪うことになろうとは、ロンヴオルはこの時思いつきもしなかった。
「これはこれは……実に興味深い」
ある日のカム・ラディ遺跡。この日遺跡には客人達がやって来ていた。彼らは遺跡に転移するやいなや壁を、床を、石柱を丹念に調べ始める。そして傷を発見するとそれを舐め回す様につぶさに観察し始める。
彼らの正体は魔術師協会の人間たちである。彼らはこの遺跡に残された文章を調査し、リグ・サンガマに住んだ人々が我々に教えてくれることを拾い上げる。そしてその情報をこれからの戦いに向けて役立てようという算段だった。
といっても、遺跡の損傷は激しい。意味のあるレベルで文章が残っている方がレアケースだ。
そんな中、奇跡的に一つながりの文章が残っている部分が発見された。協会の人々は早速解読を開始する。
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「どれどれ、読んでみましょう」
協会の人間の中で最長老と思しき者が壁の前にひざまづき、目を凝らして読み始める。加齢に伴い戦闘能力は落ちたかもしれないが、齢とともに蓄えたその頭の中の知識はそれを補って余りあるものだった。
「なになに……『夜の帳の中、赤金色に輝く鱗を持った竜が来襲せり。彼の竜の名はロンヴオル』」
「ちょっと待ってください」
その言葉に、助手として付いていた者がレポートをめくり始める。程なくして彼は目当てのレポートを発見した。
「これですね。つい先日赤金色の鱗を持つ竜がこの遺跡を襲いました」
「偶然ということがあるかもしれませんな。続きを読んでからでも遅くない。……『人は矢で、槍で、剣でもって立ち向かったものの、その全ては鱗の前に阻まれ傷を与えることは叶わず』」
「まさか!」
そこまで聞いて助手は素っ頓狂な声を上げる。彼の手にしたレポートには、この遺跡を襲った竜もまた、その強靭な鱗でハンター達の攻撃をことごとく跳ね返した事が載っていた。
「ふむ……何せこの竜は歪虚。我々とは別の理に生きている者。ならばリグ・サンガマが滅びた時に生きていた竜が今も生きて活動していることは十分考えられますな」
「しかしかつての人々も倒せなかった、先日の襲撃でも撤退させることは出来たといえ討伐はできなかった、と考えると我々はどうすれば……」
「こういう時こそ先人の知恵を借りましょう」
そして彼は文章の先を読み進める。
「……『ただ一度、暁の空に竜が吠える時、鏃は胸の鱗の、その隙間に刺さりし。彼の鱗は怒りと共に開かれる。その奥底に我々が残した一矢有り』」
「つまりかつての人々も一撃だけは与えたということですか」
「そうなりますな。そして……『この文を読む者達よ、彼の竜の胸に再びその鏃を突き立てよ。さすれば無敵の竜も地に落ちん』……そこにもう一度攻撃を与えれば……」
「恐らく、倒せる」
その時、人はリグ・サンガマの人々が時を超えて贈った、ロンヴオルに対抗するための切り札を手に入れた。
●
夜明け前、太陽がもうすぐその顔を出そうとしていたその時、遺跡に向かって空を駆ける影があった。いや、赤金色に輝くその鱗は影にはならない。
ロンヴオルは怒りに打ち震えていた。矮小なる人がこの竜に傷を与えたというのだから。先日遺跡に襲った時、この竜は偵察程度の考えで持って来ていた。しかし今回は違う。己の爪と炎の息で、遺跡に屯する矮小なる存在を皆殺しにしてやろう、そう考えていた。
そしてその竜の強欲な考えが命を奪うことになろうとは、ロンヴオルはこの時思いつきもしなかった。
リプレイ本文
●
ロンヴオルはその時、ほくそ笑んでいた。己に最大の屈辱を……いや、その昔に一度受けただけと同じ屈辱を与えた者達に報いを与える機会に恵まれたのだから。
「ご自慢の鱗の再メッキは、ちゃんと済ませてきたか? メッキが剥がれて地金を晒す前に、俺たちが暴いてやるぜ!」
アーサー・ホーガン(ka0471)は吠える。その姿を見て、ロンヴオルは矮小なる存在の戯言など聞くに値しないと思ってはいたが、彼から立ち上る赤いオーラは竜の眼を引いていた。
まずはこの者から血祭りに上げるのも悪くない。何より馬鹿正直に真正面から突っ込んできたかと思うと、手にしたハンマーを地面に突き立て寄りかかり、無防備な状態だ。ならば望み通り先に焼き殺してやろう、と竜はその周りに居る者達もまとめて燃え盛る炎の息を吹き付ける。
「ついこの間戦ったばかりだけど、また会う事になるとはね。今度は絶対に逃がさないから……!」
バイクを走らせていたアイビス・グラス(ka2477)はブレスを見ると急加速をかけ、一気に射程の外へ行く。緑色の髪は確かこの前も居たなと思ったが、臆病風に吹かれて逃げ出したか。まあ真正面から突っ込んで消し炭に変わるよりはマシだろうがな、と竜は目もくれない。
「夜明けまで時間がそう無いのでさっさと怒らせないとな」
一方同じくバイクに跨っていたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は一気にアクセルを開く。何を血迷ったのか、こちらは死にに来たか。そういえばこの前は我が尻尾に一刀を入れていたな。自慢の一太刀だったのだろうが、傷一つ付いていないことに絶望したのだろう。その程度で済まし、アーサーがどうなったのだろうか炎の後へ突っ込んでいく。
「火加減が弱ぇぜ? 俺を焼くには足りねぇな!」
だが炎が晴れた時そこには殆ど傷を受けていないアーサーの姿があった。余裕の表情を浮かべ挑発をしてくるそれを見てロンヴオルは苛立っていた。恐れを知らぬ身の程知らずめ、我が爪で切り裂いてやろう。そして竜は振りかぶる。
そして己の体の下をくぐり懐に飛び込んでいたアルトの事など、竜は気にも留めないのであった。
●
「無敵と言われると打ち破りたくなるのが人の性。さあ、その鍍金が落ちる時です!」
その頃戦場の後ろで行動していたのが八代 遥(ka4481)だ。彼女はまずこちらまで竜が来るのを食い止めるべく、呪文を唱える。すると土が壁と化し竜と彼女達の間にそびえ立つ。
壁が並び身を守る場所を確保した所で、竜はアーサーに向けてブレスを放っていた。熱気はここまで来る。しかし土壁一枚あれば何の影響もない。
「北の寒さには暖房器具として丁度いいんじゃないですか?」
そんな軽口を叩く遥。
(古より生きる竜の歪虚か……自身の絶対優位を保って戦う臆病な性格と言えば聞こえがいいが、逆に言えば慎重で用心深い。そして遺跡に記された過去から現在まで生き残ったのは事実。ここで奴に手傷を与えても逃がしてしまったら、力を蓄える為に隠れることもありえる……確実に仕留めないとな)
一方彼女の前で構えていたのはヴァイス(ka0364)だった。彼はさらにその前でぶつかり合ったアーサーと竜を見つめながら、矢を放っていた。目や口などに矢を放ち竜との戦いを支援し、そしていざというときは己が盾になる。その信念の元彼はここに立っていた。
●
「弱点を突いて逃げられたら2度と討伐の機会はねえ」
その頃、戦場の左側からジャック・エルギン(ka1522)が一団と間合いを外して竜に向かっていた。彼自身と愛馬は水を滴らせている。ブレスに対抗するための策だ。手には弓。そしてつがえた矢の先端には何か付いている。
「何が何でも、この一戦で仕留めねーとな」
「魔術師協会もたまにゃ仕事すんだな。しっかし怒らせる、ねえ」
戦いが始まる前、ジャックは協会からの報告に目を通して考え込んでいた。自分ならどういった時に怒るのか。
「何か良い案……なあこのレポート用のインク壺、俺にくれね?」
そこでジャックは何を思ったのか、インク壺を数個調査員から譲り受ける。魔術的に合成された一品であるそれは吸い込まれそうな漆黒の液体を湛えている。
そう、ジャックが矢の先に付けていたのはこのインク壺だった。
「よっしゃあ! 一発カマしてやろうぜ!!」
矢が放たれる。それは一直線に戦場を飛び、矢は翼に当たる。矢は鱗に弾かれるが、インク壺は確かに割れ、光り輝く鱗に黒い染みを付けた。
「何をされりゃ怒るか、俺なら自慢の一張羅を台無しにされた時だ!」
しかし、竜はまるで気にも留めない。ロンヴオルはただ、目の前に居るアーサーをまず血祭りにあげることを考えていた。
●
「どんな強敵にも弱点は必ずある。好機も来る。それを必ず掴もう」
ザレム・アズール(ka0878)は戦場の右側へバイクを走らせていた。そして竜に近づくと、やおら叫ぶ。
「この前の臆病者とはお前か」
だが竜は反応しない。
「泣いて逃げたんだって?」
「地上に降りて直接刃を交えられないとは」
「さてはドラゴンじゃないな。チキンだなチキン」
ロンヴオルはその時、矮小な人間風情が何か吠えていると感じていた。うるさい蝿は一つ叩いておいた方がいい。尻尾を振ってザレムに叩きつけ、爪はアーサーを襲う。
尻尾は窪地に身を潜め、咄嗟にかわす。しかし避けきれない。ならばと防壁を展開し身を守るザレム。だが、これで竜の体は地面に近づいた。ここなら狙える。
そしてその事は図らずも別の者が証明した。振り上げられた爪にワイヤーが絡まる。
「お前の相手はこっちよ、ロンヴオルッ!」
爪はワイヤーを無理やり外し、そのままアーサーの肩口を抉る。会心の一撃のはずだった。しかし、アイビスによって反らされた爪はその命を奪うことは叶わなかった。
さらに、アイビスは動く。そのまま竜の体に飛び移り、流れるような左右のパンチを連打する。
「ドラゴンハント……こういう喰うか喰われるかって依頼も楽しいわね。私も随分こっちの世界に染まったみたいだわ、フフフ」
そして遥の産み出した土壁の後ろでマリィア・バルデス(ka5848)が純白の神々しい拳銃を構えていた。この銃は神に仇為す者を罰すると言われている銃である。彼女はそれを構え、土壁から窪地、窪地から枯れ木、そしてまた土壁と素早く動いて狙われないようにしつつ、牽制の銃弾を放つ。それは確かに竜の眼に迫る。竜にしてみれば眼を閉じてしまえば鱗が弾いてくれる。だが、その一瞬の視界の遮りが戦況を変えた。
アイビスの拳がまともに竜の顎に突き刺さる。顔が逸れる。その時感じた痛烈な衝撃。目を開かなくともロンヴオルは感じていた。前回、矮小なる人間に付けられた翼の傷。それに刃を突き立てられていたことに。空を羽ばたく翼に飛び移り一撃を与えることをする者を、竜は知っていた。うっとうしい蝿、と認識していた相手。しかしアルトのその一撃は竜を苛立たせる。さらに眼を開いた時、そこで見たものは、傷つきながらも心臓を指差しここを狙えと言わんばかりのアーサーの顔だった。
その表情はロンヴオルを激怒させた。そして、彼の竜の知らぬまま、その胸の逆鱗は開き始めていた。
●
『ふざけるな、ニンゲン!』
ロンヴオルは己の怒りを知らしめるため吠える。その声は矮小なる存在には理解できぬだろう。連中はただの遠吠えとでも思い畏怖することを知らない。それが益々苛立たしい。
『先ほどから猪口才な真似をッ!』
ロンヴオルはその翼を一つ羽ばたかせる。体を少し浮かせるとそこには後側から矢を、銃弾を、魔法を放っていた連中が見える。いいからお前達は黙れ、と一気に息を吸い込むと、怒りを表す炎の吐息を解き放つ。
「ブレスといえば、その竜を代表する攻撃とも言えるが……ぬるいな」
だが、その怒りはつい先程までうっとうしい蝿だと思っていたがそこに居たことを失念させていた。アルトの一撃が顎の下から突き上げられる。その次の刹那、炎が吹き出される。だがその軌道は逸れていた。
それでもブレスは一団を襲う。
「貴方を倒したいと望む。これもまた強欲の一つの形でしょうか……」
だが、炎の吐息が迫った時そこにファイアーボールが打ち込まれた。遥の放った火球は炎の中に吸い込まれていき、次の瞬間反応して爆発する。爆風が髪をなびかせる。その風が、彼女の火球が炎の勢いを和らげたことを意味していた。
そしてここまで勢いを削がれたファイアブレスなど、ヴァイスにとってはそよ風の様な物だった。盾を一つ構えるだけで受け止めてみせる。無論彼の背後に居る遥とマリィアにも届かなかった。
「壁一枚後ろの女も焼けないなんて、ぬるいブレスですね!」
遥はロンヴオルを煽る。相手が人語を理解しているかは怪しいものだが――実際理解はしていなかったのだが――それでも怒りを巻き起こすために、挑発を行う。
「これだけ邪魔してるんだから……そろそろ怒ってちょうだい、トカゲちゃん」
そして守られたマリィアはすかさず銃弾を打ち込む。これは竜を穿つためではない。今まさに振り上げられた爪を、翻った翼を防ぐための銃弾だ。ロンヴオルが翼をはためかせ、うっとうしい蝿を叩き落とそうとする。それを防ぐ銃弾が打ち込まれる。それにも止まらず、竜は翼を羽ばたかせた。流石のアルトもこれを受けて地面に落ちる。しかし彼女は身を翻し着地してみせた。妨害の銃弾が彼女の着地をアシストしたのか。
そして爪が迫る。一撃目の爪をハンマーで受け止めるアーサー。翼を閉じ、地面に引かれる竜の肉体から繰り出される爪にはその竜の体重が全て乗っている。たとえ受け止めたとしても、爪は腕に食い込み傷つける。
しかしアーサーはまだ倒れない。どうしたんだ、と余裕の表情で挑発する。だが、そこに二撃目の爪が迫っていた。己の怒りを乗せた一撃。あまりの速さに受け止めることも叶わず、その爪は寸分違わず急所を貫く。
そしてその一撃でアーサーは血の海に沈んでいった。
●
ロンヴオルはその時、ご満悦であった。確かに己の爪で一人を血祭りにあげたのだから。
『どうだ、ニンゲン共よ! 俺を恐れろ! 敬え!』
しかし、ハンター達の反応はロンヴオルの思うものではなかった。一人仲間が倒れても、矮小なる存在は尚も己に届かぬ刃を突き立てようと無駄な努力をし続けている。良い気分は一瞬にして怒りへと変わる。体温が上がる。
だが、その体温を下げる様な事が起こったのだった。正のマテリアルから生み出された冷気が矢となってロンヴオルに迫る。そしてその冷気は翼に張り付く。そこにあったのは、前回付けられた傷。他の全てをその赤金色の鱗が守っても、この一点はそうではなかった。冷気が体内に染みこみ、思うように体が動かない。
「私の攻撃じゃ倒せなくてもね……倒す機会は作ってみせる!」
そしてアイビスは再び竜の体に飛び移り、眼を狙ってパンチを連打する。彼女の小さな拳は、しかし竜の眼を閉じさせる。瞼を閉じたまま、怒り狂い爪を振り回すロンヴオル。
ジャックは咄嗟に反応し、剣を構えて一気に突っ込む。その勢いのまま振り回される爪にその剣を叩きつける。暴れまわる爪が暴風雨の様に過ぎ去り、彼の体を傷つけたが、ともかく爪は抑えられた。しかし受けてみて分かった。竜の爪は更に力を増している。そう、ロンヴオルの怒りを表すかのように。
爪をひとしきり振り回したロンヴオルは瞼を再び開く。そこで竜が眼にしたものは、なんともやる気の無さそうな女の姿だった。
「今度は逃げるなよ?」
このうるさい蝿め、何を言っているのかわからんが、その態度は許しがたい。次は貴様を血祭りにあげてやる。
しかしロンヴオルのその思いは叶わなかった。なぜならロンヴオルは二度とその眼で何が起こっているかを見ることは無かったのだから。
ジャックは一旦間合いを離し、矢を放つ。そう、インク壺が括りつけられた矢だ。その矢は今開いたばかりの眼へと向かう。それは眼球を逸れて、その上に当たる。しかし割れたインク壺が撒き散らした黒い液体が、竜の眼を塗りつぶした。
ニンゲンよ、何をした! 貴様、貴様ら……!
「お前は最早狩られる側だ」
つい先程までやる気無さそうにしていたアルトの雰囲気は、既に変わっていた。彼女の視線の先には、開かれた逆鱗。
その声に反応してハンター達は飛び出す。特に、ザレムはこの時を待っていた。バイクのエンジンを一気に噴かせ、そのままロンヴオルの肉体に乗り上げ走らせる。
「……さすがザレム」
マリィアは思わずそう漏らしていた。
そんなザレムを追い抜いて竜の体を駆け上がっていく影が一つ。アルトだ。彼女はそのまま駆け上がり竜の目元へ辿り着くと、鍔鳴りが二度鳴った。
「グウォォォォッッ!!」
竜の咆哮が一帯に轟く。一瞬の内に放たれたアルトのに連撃は確かにロンヴオルの二つの眼を斬り裂いていた。
そしてザレムはたどり着いた。逆鱗が開かれた竜の胸元に。
すかさず彼はワンドをそこに突き刺す。さらにその上に盾を叩きつける。ワンドは楔となり、逆鱗をハンター達の元へと晒す。
「振り払われる前にだ! 何があってもだ!」
ロンヴオルの怒りは頂点へと達し、一帯に濃密な死の匂いを撒き散らす。振り回される爪に触れればその身は一瞬の内に引きちぎられるだろう。そしてその爪はザレムの体を斬り裂いていた。
しかしザレムはまだ倒れていなかった。その爪を受け止めるため、光の防壁を作り出す。その雷撃が竜の体を弾いた。
ヴァイスは引き絞った矢を放つ。しかし、それは僅かに上に逸れ鱗に当たる。
ジャックも矢を放つ。今度はインク壺が付けられていない、急所を貫くための矢だ。だが、それは僅かに下に逸れ鱗に弾かれる。
「……来たっ!」
だが、そこにマリィアが居た。
「あれが逆鱗……狙ってやろうじゃないっ!」
照準を合わせ、引き金を引く。銃声と共に放たれた弾丸は一直線に戦場を駆け抜け、ただ一点、逆鱗の間に飛び込む。そこには先人が残した鏃がまだ残っていた。そこに弾丸が滑り込み、時を経て出会った二つの矢が竜の体内へと入っていった。
ロンヴオルの断末魔の叫びが戦場に轟く。最後の一撃がザレムの体を貫く。そしてそれを止める力はもう彼には残されていなかった。竜の胸元から弾き飛ばされた肉体が地面に落ちる。
その時、地平線から太陽が姿を現した。光が戦場を照らしだす。しかしその光を受けてそびえ立つはずだったロンヴオルの姿はもうそこには無かった。確かにハンター達は、見事赤金鱗竜を討伐してみせたのだ。
命脈が尽きた歪虚の肉体は、風に吹かれ崩れ散っていく。
「……これでドラゴンスレイヤー、とかいうやつになれたのかしらね?」
マリィアのその言葉も、風に吹かれて消えるのであった。
ロンヴオルはその時、ほくそ笑んでいた。己に最大の屈辱を……いや、その昔に一度受けただけと同じ屈辱を与えた者達に報いを与える機会に恵まれたのだから。
「ご自慢の鱗の再メッキは、ちゃんと済ませてきたか? メッキが剥がれて地金を晒す前に、俺たちが暴いてやるぜ!」
アーサー・ホーガン(ka0471)は吠える。その姿を見て、ロンヴオルは矮小なる存在の戯言など聞くに値しないと思ってはいたが、彼から立ち上る赤いオーラは竜の眼を引いていた。
まずはこの者から血祭りに上げるのも悪くない。何より馬鹿正直に真正面から突っ込んできたかと思うと、手にしたハンマーを地面に突き立て寄りかかり、無防備な状態だ。ならば望み通り先に焼き殺してやろう、と竜はその周りに居る者達もまとめて燃え盛る炎の息を吹き付ける。
「ついこの間戦ったばかりだけど、また会う事になるとはね。今度は絶対に逃がさないから……!」
バイクを走らせていたアイビス・グラス(ka2477)はブレスを見ると急加速をかけ、一気に射程の外へ行く。緑色の髪は確かこの前も居たなと思ったが、臆病風に吹かれて逃げ出したか。まあ真正面から突っ込んで消し炭に変わるよりはマシだろうがな、と竜は目もくれない。
「夜明けまで時間がそう無いのでさっさと怒らせないとな」
一方同じくバイクに跨っていたアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は一気にアクセルを開く。何を血迷ったのか、こちらは死にに来たか。そういえばこの前は我が尻尾に一刀を入れていたな。自慢の一太刀だったのだろうが、傷一つ付いていないことに絶望したのだろう。その程度で済まし、アーサーがどうなったのだろうか炎の後へ突っ込んでいく。
「火加減が弱ぇぜ? 俺を焼くには足りねぇな!」
だが炎が晴れた時そこには殆ど傷を受けていないアーサーの姿があった。余裕の表情を浮かべ挑発をしてくるそれを見てロンヴオルは苛立っていた。恐れを知らぬ身の程知らずめ、我が爪で切り裂いてやろう。そして竜は振りかぶる。
そして己の体の下をくぐり懐に飛び込んでいたアルトの事など、竜は気にも留めないのであった。
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「無敵と言われると打ち破りたくなるのが人の性。さあ、その鍍金が落ちる時です!」
その頃戦場の後ろで行動していたのが八代 遥(ka4481)だ。彼女はまずこちらまで竜が来るのを食い止めるべく、呪文を唱える。すると土が壁と化し竜と彼女達の間にそびえ立つ。
壁が並び身を守る場所を確保した所で、竜はアーサーに向けてブレスを放っていた。熱気はここまで来る。しかし土壁一枚あれば何の影響もない。
「北の寒さには暖房器具として丁度いいんじゃないですか?」
そんな軽口を叩く遥。
(古より生きる竜の歪虚か……自身の絶対優位を保って戦う臆病な性格と言えば聞こえがいいが、逆に言えば慎重で用心深い。そして遺跡に記された過去から現在まで生き残ったのは事実。ここで奴に手傷を与えても逃がしてしまったら、力を蓄える為に隠れることもありえる……確実に仕留めないとな)
一方彼女の前で構えていたのはヴァイス(ka0364)だった。彼はさらにその前でぶつかり合ったアーサーと竜を見つめながら、矢を放っていた。目や口などに矢を放ち竜との戦いを支援し、そしていざというときは己が盾になる。その信念の元彼はここに立っていた。
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「弱点を突いて逃げられたら2度と討伐の機会はねえ」
その頃、戦場の左側からジャック・エルギン(ka1522)が一団と間合いを外して竜に向かっていた。彼自身と愛馬は水を滴らせている。ブレスに対抗するための策だ。手には弓。そしてつがえた矢の先端には何か付いている。
「何が何でも、この一戦で仕留めねーとな」
「魔術師協会もたまにゃ仕事すんだな。しっかし怒らせる、ねえ」
戦いが始まる前、ジャックは協会からの報告に目を通して考え込んでいた。自分ならどういった時に怒るのか。
「何か良い案……なあこのレポート用のインク壺、俺にくれね?」
そこでジャックは何を思ったのか、インク壺を数個調査員から譲り受ける。魔術的に合成された一品であるそれは吸い込まれそうな漆黒の液体を湛えている。
そう、ジャックが矢の先に付けていたのはこのインク壺だった。
「よっしゃあ! 一発カマしてやろうぜ!!」
矢が放たれる。それは一直線に戦場を飛び、矢は翼に当たる。矢は鱗に弾かれるが、インク壺は確かに割れ、光り輝く鱗に黒い染みを付けた。
「何をされりゃ怒るか、俺なら自慢の一張羅を台無しにされた時だ!」
しかし、竜はまるで気にも留めない。ロンヴオルはただ、目の前に居るアーサーをまず血祭りにあげることを考えていた。
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「どんな強敵にも弱点は必ずある。好機も来る。それを必ず掴もう」
ザレム・アズール(ka0878)は戦場の右側へバイクを走らせていた。そして竜に近づくと、やおら叫ぶ。
「この前の臆病者とはお前か」
だが竜は反応しない。
「泣いて逃げたんだって?」
「地上に降りて直接刃を交えられないとは」
「さてはドラゴンじゃないな。チキンだなチキン」
ロンヴオルはその時、矮小な人間風情が何か吠えていると感じていた。うるさい蝿は一つ叩いておいた方がいい。尻尾を振ってザレムに叩きつけ、爪はアーサーを襲う。
尻尾は窪地に身を潜め、咄嗟にかわす。しかし避けきれない。ならばと防壁を展開し身を守るザレム。だが、これで竜の体は地面に近づいた。ここなら狙える。
そしてその事は図らずも別の者が証明した。振り上げられた爪にワイヤーが絡まる。
「お前の相手はこっちよ、ロンヴオルッ!」
爪はワイヤーを無理やり外し、そのままアーサーの肩口を抉る。会心の一撃のはずだった。しかし、アイビスによって反らされた爪はその命を奪うことは叶わなかった。
さらに、アイビスは動く。そのまま竜の体に飛び移り、流れるような左右のパンチを連打する。
「ドラゴンハント……こういう喰うか喰われるかって依頼も楽しいわね。私も随分こっちの世界に染まったみたいだわ、フフフ」
そして遥の産み出した土壁の後ろでマリィア・バルデス(ka5848)が純白の神々しい拳銃を構えていた。この銃は神に仇為す者を罰すると言われている銃である。彼女はそれを構え、土壁から窪地、窪地から枯れ木、そしてまた土壁と素早く動いて狙われないようにしつつ、牽制の銃弾を放つ。それは確かに竜の眼に迫る。竜にしてみれば眼を閉じてしまえば鱗が弾いてくれる。だが、その一瞬の視界の遮りが戦況を変えた。
アイビスの拳がまともに竜の顎に突き刺さる。顔が逸れる。その時感じた痛烈な衝撃。目を開かなくともロンヴオルは感じていた。前回、矮小なる人間に付けられた翼の傷。それに刃を突き立てられていたことに。空を羽ばたく翼に飛び移り一撃を与えることをする者を、竜は知っていた。うっとうしい蝿、と認識していた相手。しかしアルトのその一撃は竜を苛立たせる。さらに眼を開いた時、そこで見たものは、傷つきながらも心臓を指差しここを狙えと言わんばかりのアーサーの顔だった。
その表情はロンヴオルを激怒させた。そして、彼の竜の知らぬまま、その胸の逆鱗は開き始めていた。
●
『ふざけるな、ニンゲン!』
ロンヴオルは己の怒りを知らしめるため吠える。その声は矮小なる存在には理解できぬだろう。連中はただの遠吠えとでも思い畏怖することを知らない。それが益々苛立たしい。
『先ほどから猪口才な真似をッ!』
ロンヴオルはその翼を一つ羽ばたかせる。体を少し浮かせるとそこには後側から矢を、銃弾を、魔法を放っていた連中が見える。いいからお前達は黙れ、と一気に息を吸い込むと、怒りを表す炎の吐息を解き放つ。
「ブレスといえば、その竜を代表する攻撃とも言えるが……ぬるいな」
だが、その怒りはつい先程までうっとうしい蝿だと思っていたがそこに居たことを失念させていた。アルトの一撃が顎の下から突き上げられる。その次の刹那、炎が吹き出される。だがその軌道は逸れていた。
それでもブレスは一団を襲う。
「貴方を倒したいと望む。これもまた強欲の一つの形でしょうか……」
だが、炎の吐息が迫った時そこにファイアーボールが打ち込まれた。遥の放った火球は炎の中に吸い込まれていき、次の瞬間反応して爆発する。爆風が髪をなびかせる。その風が、彼女の火球が炎の勢いを和らげたことを意味していた。
そしてここまで勢いを削がれたファイアブレスなど、ヴァイスにとってはそよ風の様な物だった。盾を一つ構えるだけで受け止めてみせる。無論彼の背後に居る遥とマリィアにも届かなかった。
「壁一枚後ろの女も焼けないなんて、ぬるいブレスですね!」
遥はロンヴオルを煽る。相手が人語を理解しているかは怪しいものだが――実際理解はしていなかったのだが――それでも怒りを巻き起こすために、挑発を行う。
「これだけ邪魔してるんだから……そろそろ怒ってちょうだい、トカゲちゃん」
そして守られたマリィアはすかさず銃弾を打ち込む。これは竜を穿つためではない。今まさに振り上げられた爪を、翻った翼を防ぐための銃弾だ。ロンヴオルが翼をはためかせ、うっとうしい蝿を叩き落とそうとする。それを防ぐ銃弾が打ち込まれる。それにも止まらず、竜は翼を羽ばたかせた。流石のアルトもこれを受けて地面に落ちる。しかし彼女は身を翻し着地してみせた。妨害の銃弾が彼女の着地をアシストしたのか。
そして爪が迫る。一撃目の爪をハンマーで受け止めるアーサー。翼を閉じ、地面に引かれる竜の肉体から繰り出される爪にはその竜の体重が全て乗っている。たとえ受け止めたとしても、爪は腕に食い込み傷つける。
しかしアーサーはまだ倒れない。どうしたんだ、と余裕の表情で挑発する。だが、そこに二撃目の爪が迫っていた。己の怒りを乗せた一撃。あまりの速さに受け止めることも叶わず、その爪は寸分違わず急所を貫く。
そしてその一撃でアーサーは血の海に沈んでいった。
●
ロンヴオルはその時、ご満悦であった。確かに己の爪で一人を血祭りにあげたのだから。
『どうだ、ニンゲン共よ! 俺を恐れろ! 敬え!』
しかし、ハンター達の反応はロンヴオルの思うものではなかった。一人仲間が倒れても、矮小なる存在は尚も己に届かぬ刃を突き立てようと無駄な努力をし続けている。良い気分は一瞬にして怒りへと変わる。体温が上がる。
だが、その体温を下げる様な事が起こったのだった。正のマテリアルから生み出された冷気が矢となってロンヴオルに迫る。そしてその冷気は翼に張り付く。そこにあったのは、前回付けられた傷。他の全てをその赤金色の鱗が守っても、この一点はそうではなかった。冷気が体内に染みこみ、思うように体が動かない。
「私の攻撃じゃ倒せなくてもね……倒す機会は作ってみせる!」
そしてアイビスは再び竜の体に飛び移り、眼を狙ってパンチを連打する。彼女の小さな拳は、しかし竜の眼を閉じさせる。瞼を閉じたまま、怒り狂い爪を振り回すロンヴオル。
ジャックは咄嗟に反応し、剣を構えて一気に突っ込む。その勢いのまま振り回される爪にその剣を叩きつける。暴れまわる爪が暴風雨の様に過ぎ去り、彼の体を傷つけたが、ともかく爪は抑えられた。しかし受けてみて分かった。竜の爪は更に力を増している。そう、ロンヴオルの怒りを表すかのように。
爪をひとしきり振り回したロンヴオルは瞼を再び開く。そこで竜が眼にしたものは、なんともやる気の無さそうな女の姿だった。
「今度は逃げるなよ?」
このうるさい蝿め、何を言っているのかわからんが、その態度は許しがたい。次は貴様を血祭りにあげてやる。
しかしロンヴオルのその思いは叶わなかった。なぜならロンヴオルは二度とその眼で何が起こっているかを見ることは無かったのだから。
ジャックは一旦間合いを離し、矢を放つ。そう、インク壺が括りつけられた矢だ。その矢は今開いたばかりの眼へと向かう。それは眼球を逸れて、その上に当たる。しかし割れたインク壺が撒き散らした黒い液体が、竜の眼を塗りつぶした。
ニンゲンよ、何をした! 貴様、貴様ら……!
「お前は最早狩られる側だ」
つい先程までやる気無さそうにしていたアルトの雰囲気は、既に変わっていた。彼女の視線の先には、開かれた逆鱗。
その声に反応してハンター達は飛び出す。特に、ザレムはこの時を待っていた。バイクのエンジンを一気に噴かせ、そのままロンヴオルの肉体に乗り上げ走らせる。
「……さすがザレム」
マリィアは思わずそう漏らしていた。
そんなザレムを追い抜いて竜の体を駆け上がっていく影が一つ。アルトだ。彼女はそのまま駆け上がり竜の目元へ辿り着くと、鍔鳴りが二度鳴った。
「グウォォォォッッ!!」
竜の咆哮が一帯に轟く。一瞬の内に放たれたアルトのに連撃は確かにロンヴオルの二つの眼を斬り裂いていた。
そしてザレムはたどり着いた。逆鱗が開かれた竜の胸元に。
すかさず彼はワンドをそこに突き刺す。さらにその上に盾を叩きつける。ワンドは楔となり、逆鱗をハンター達の元へと晒す。
「振り払われる前にだ! 何があってもだ!」
ロンヴオルの怒りは頂点へと達し、一帯に濃密な死の匂いを撒き散らす。振り回される爪に触れればその身は一瞬の内に引きちぎられるだろう。そしてその爪はザレムの体を斬り裂いていた。
しかしザレムはまだ倒れていなかった。その爪を受け止めるため、光の防壁を作り出す。その雷撃が竜の体を弾いた。
ヴァイスは引き絞った矢を放つ。しかし、それは僅かに上に逸れ鱗に当たる。
ジャックも矢を放つ。今度はインク壺が付けられていない、急所を貫くための矢だ。だが、それは僅かに下に逸れ鱗に弾かれる。
「……来たっ!」
だが、そこにマリィアが居た。
「あれが逆鱗……狙ってやろうじゃないっ!」
照準を合わせ、引き金を引く。銃声と共に放たれた弾丸は一直線に戦場を駆け抜け、ただ一点、逆鱗の間に飛び込む。そこには先人が残した鏃がまだ残っていた。そこに弾丸が滑り込み、時を経て出会った二つの矢が竜の体内へと入っていった。
ロンヴオルの断末魔の叫びが戦場に轟く。最後の一撃がザレムの体を貫く。そしてそれを止める力はもう彼には残されていなかった。竜の胸元から弾き飛ばされた肉体が地面に落ちる。
その時、地平線から太陽が姿を現した。光が戦場を照らしだす。しかしその光を受けてそびえ立つはずだったロンヴオルの姿はもうそこには無かった。確かにハンター達は、見事赤金鱗竜を討伐してみせたのだ。
命脈が尽きた歪虚の肉体は、風に吹かれ崩れ散っていく。
「……これでドラゴンスレイヤー、とかいうやつになれたのかしらね?」
マリィアのその言葉も、風に吹かれて消えるのであった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/20 09:14:59 |
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モアさんに聞いてみよう アルト・ヴァレンティーニ(ka3109) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/03/15 19:47:36 |
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さあ竜狩りの時間だ アルト・ヴァレンティーニ(ka3109) 人間(クリムゾンウェスト)|21才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/03/20 21:21:24 |