ゲスト
(ka0000)
アマリリス~首吊り自殺と夜逃げ
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/03/21 22:00
- 完成日
- 2016/04/05 01:35
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ここは、蒸気工業都市フマーレの山中にあるセル鉱山。
「え……まだ掘るんですか?」
現場を取り仕切っていた若き鉱山技師のハミル・タグは目を丸めた。
無理もない。
以前に、鉱床から産出される鉄鉱石の質の悪さは報告済み。横に掘り進めるなど各種手立てを施しても良質な鉱脈にはたどり着けなかった。これ以上やっても見込みは薄いと考えている。
「そうじゃ。せっかく吸血鬼も退治したし、手に負えなかった作業員たちもその危機を乗り越えようやく一つにまとまったし前より勤勉になった」
ここの開発を提案した山師、ノーザン・ウエストがまくし立てる。
「そんなことを言っても鉄鉱石で採算が取れる見込みは薄いですよ。もっとほかの鉱石なら……」
「今はCAMやら魔導トラックやらの開発で鉄鉱石は超売り手市場。ほかの鉱石なんぞで採算は取れんわい。……それに何より、引ける訳がなかろう。ワシも、まだ若いお前もここで失敗は許されん」
にらみをきかせハミルを黙らせるノーザン。過日、事業主のグリス・オムによそから持ってきた良質の鉄鉱石を見せペテンにかけ、事業を続行させた悪事は黙ったままだ。
「自分の評判は次の実績で示せばいいだけです。それより資金的に苦しいはずですよ。鉄鉱石を運ぶ業者からも支払いがあるからやるけど、もうグリス氏も長くは持たないだろうって……」
「まだ坑道にガスや落盤などの事故はなかろう。もう少しだけ良質の鉄鉱石が出ればあとは量で何とかなる。負債はひどいが、なあに、事業主のグリスは村長だ。村の広大な農場の水門権利を抵当に入れて新たな融資を引き込んだ。これでグリスが亡くなりでもしない限り……」
後日の晩、フマーレ郊外にあるグリスの屋敷で悲鳴が挙がった。
「だ、旦那様!」
立ちすくむメイドの目の前に、ぶらんと振り子のように揺れる影。
事業主の、無念の姿がそこにあった。もちろん、もう動くことはない。
は、とメイド。
足元に残された遺書に気付いた。
文面を読んだメイドはすぐに駆け出した。
「奥様、奥様ーっ!」
メイドに呼ばれたグリス氏夫人のセリアが部屋に来たとき、声もなく立ち尽くした。そして執事たちに下ろされた夫の遺体に駆け寄りひとしきり涙するとすぐに威厳を取り戻した。
「急いで娘と息子を起こして。今、屋敷にいるのはアマリリス商会さんですね。運がいい……お願いしていた鉱山街の定期警備はもういいから、私たちの警備をお願いします。すぐここへ呼んでください。借金取りからこの屋敷がマークされているのは知っています。気付かれる前にひとまず隠れるのです」
「そ、それからどうなさるので?」
「いったん身を隠し敵を味方を見分けます。とにかく、村にはまだ水門の権利は私にあるので自由にさせないよう伝えて」
そう、村の水門の権利。
または農業調整池の権利と言ってもいい。
村の広大な水田などの農地に水を行き渡らせるために整備し、これをもって地域の権力闘争に終止符を打ち一まとめにした、村長家の権力の象徴。グリス・オムは、先祖代々受け継がれてきたこの権利を抵当に入れた直後に、それまで協力的だった鉄鉱石受け入れ業者からの鉄鉱石値下げ交渉――それはほぼ撤退を視野に入れた交渉だった――に衝撃を受け、首を吊ったのだ。
グリス氏は知っている。
いや、知ってしまった。
先祖が村を、付近で猛威を振るった吸血鬼歪虚に一族の娘を生贄に差し出してまで守っていたことを。
グリス氏は、それをすべて台無しにしてしまった。
いわば、先祖が身を挺して守って来た村を売ってしまったのだ。もちろん買い戻せばいいのだろうが、その手段が途絶えた。
死んで侘びを入れた、ということだろう。
遺書には、「すまない」とだけ書いてあったという。
「十歳にもならない娘と息子だけは、何とか――」
それが残されたセリア・オムの願いであった。
こうして、アムたちアマリリス商会に雇われたハンターたちは馬車の護衛任務に就くことになる。
が、夜明け後についに某所山中で追っ手に追い付かれた。
合計十六人の盗賊たちが馬に乗って追いすがって来たのだ。
「止まれ! 夫人と子供たちを戻してもらおうか」
遠く追いすがる盗賊からの声が聞こえる。
果たしてどうしたものか。
ここは、蒸気工業都市フマーレの山中にあるセル鉱山。
「え……まだ掘るんですか?」
現場を取り仕切っていた若き鉱山技師のハミル・タグは目を丸めた。
無理もない。
以前に、鉱床から産出される鉄鉱石の質の悪さは報告済み。横に掘り進めるなど各種手立てを施しても良質な鉱脈にはたどり着けなかった。これ以上やっても見込みは薄いと考えている。
「そうじゃ。せっかく吸血鬼も退治したし、手に負えなかった作業員たちもその危機を乗り越えようやく一つにまとまったし前より勤勉になった」
ここの開発を提案した山師、ノーザン・ウエストがまくし立てる。
「そんなことを言っても鉄鉱石で採算が取れる見込みは薄いですよ。もっとほかの鉱石なら……」
「今はCAMやら魔導トラックやらの開発で鉄鉱石は超売り手市場。ほかの鉱石なんぞで採算は取れんわい。……それに何より、引ける訳がなかろう。ワシも、まだ若いお前もここで失敗は許されん」
にらみをきかせハミルを黙らせるノーザン。過日、事業主のグリス・オムによそから持ってきた良質の鉄鉱石を見せペテンにかけ、事業を続行させた悪事は黙ったままだ。
「自分の評判は次の実績で示せばいいだけです。それより資金的に苦しいはずですよ。鉄鉱石を運ぶ業者からも支払いがあるからやるけど、もうグリス氏も長くは持たないだろうって……」
「まだ坑道にガスや落盤などの事故はなかろう。もう少しだけ良質の鉄鉱石が出ればあとは量で何とかなる。負債はひどいが、なあに、事業主のグリスは村長だ。村の広大な農場の水門権利を抵当に入れて新たな融資を引き込んだ。これでグリスが亡くなりでもしない限り……」
後日の晩、フマーレ郊外にあるグリスの屋敷で悲鳴が挙がった。
「だ、旦那様!」
立ちすくむメイドの目の前に、ぶらんと振り子のように揺れる影。
事業主の、無念の姿がそこにあった。もちろん、もう動くことはない。
は、とメイド。
足元に残された遺書に気付いた。
文面を読んだメイドはすぐに駆け出した。
「奥様、奥様ーっ!」
メイドに呼ばれたグリス氏夫人のセリアが部屋に来たとき、声もなく立ち尽くした。そして執事たちに下ろされた夫の遺体に駆け寄りひとしきり涙するとすぐに威厳を取り戻した。
「急いで娘と息子を起こして。今、屋敷にいるのはアマリリス商会さんですね。運がいい……お願いしていた鉱山街の定期警備はもういいから、私たちの警備をお願いします。すぐここへ呼んでください。借金取りからこの屋敷がマークされているのは知っています。気付かれる前にひとまず隠れるのです」
「そ、それからどうなさるので?」
「いったん身を隠し敵を味方を見分けます。とにかく、村にはまだ水門の権利は私にあるので自由にさせないよう伝えて」
そう、村の水門の権利。
または農業調整池の権利と言ってもいい。
村の広大な水田などの農地に水を行き渡らせるために整備し、これをもって地域の権力闘争に終止符を打ち一まとめにした、村長家の権力の象徴。グリス・オムは、先祖代々受け継がれてきたこの権利を抵当に入れた直後に、それまで協力的だった鉄鉱石受け入れ業者からの鉄鉱石値下げ交渉――それはほぼ撤退を視野に入れた交渉だった――に衝撃を受け、首を吊ったのだ。
グリス氏は知っている。
いや、知ってしまった。
先祖が村を、付近で猛威を振るった吸血鬼歪虚に一族の娘を生贄に差し出してまで守っていたことを。
グリス氏は、それをすべて台無しにしてしまった。
いわば、先祖が身を挺して守って来た村を売ってしまったのだ。もちろん買い戻せばいいのだろうが、その手段が途絶えた。
死んで侘びを入れた、ということだろう。
遺書には、「すまない」とだけ書いてあったという。
「十歳にもならない娘と息子だけは、何とか――」
それが残されたセリア・オムの願いであった。
こうして、アムたちアマリリス商会に雇われたハンターたちは馬車の護衛任務に就くことになる。
が、夜明け後についに某所山中で追っ手に追い付かれた。
合計十六人の盗賊たちが馬に乗って追いすがって来たのだ。
「止まれ! 夫人と子供たちを戻してもらおうか」
遠く追いすがる盗賊からの声が聞こえる。
果たしてどうしたものか。
リプレイ本文
●
グリス氏夫人のセリア・オムと二人の子どもを乗せた幌馬車が森の中の広い道を急いでいる。
夜通し走ったので三人とも疲弊している。長女のポーラと長男のルイスは起きていることができずに座ったまま眠ってしまった。それまで同乗するリラ(ka5679)が何かと気に掛け親身になって話して心配を取り除いていたのだが、心労もたまっていた。
「ジェオルジ方面に向かっているけど、当てはあるのかしら?」
同乗するケイ(ka4032)が聞いてみる。西方地域各地を渡り歩いているので土地鑑はあるつもりだ。
「ええ。遠縁に当たる者がいます。そこを頼って子どもたちを盾に取られないようにして、あとは……」
「あとは?」
リラが言い淀んだセリアに反応して心配そうにのぞき込んだ。
「私一人で戻って……何とか」
「ん? 待って」
言葉を絞り出すセリアを止めたケイ。覆い布もない馬車後部から外を見た。
「ん?」
同じ頃、馬車の前を護衛していたエメラルド・シルフィユ(ka4678)も何かに感付いていた。
「おい、追手が来たかもしれんぞ」
戦馬を駆りつつ瞳を細め横に声を掛ける。
そこには、戦馬「まーちゃん」に乗った星野 ハナ(ka5852)がいた。
「はぁ」
ハナ、どうも浮かない様子。
「ちょっとハナ。あんた、大丈夫?」
同じく戦馬に乗った天竜寺 舞(ka0377)が怪訝そうにする。
「今は速度落としてるからいいけど、そんなんじゃ……」
「はぁ……」
舞に気合を入れるように厳しく言われても生返事。
ハナ、屋敷を脱出した時を思い返していた。
「私はリラ。リラ=エゴロフです。宜しくお願いしますね」
翌朝の鉱山入りから予定変更して護衛任務に就いた時、リラは元気よくそう自己紹介して幌馬車に乗り込んだ。
「何で首吊らなけりゃなんないのよ、まったく」
舞はぶつくさ言いウエィブした銀色の髪をクシャリとかきながら戦馬を用意していた。
「夜逃げだなんて中々大変じゃない?」
ケイは慣れている風に軽やかに馬車に飛び乗った。
「とにかく急ぎましょう。……二人は分かれますか?」
サクラ・エルフリード(ka2598)はアマリリス商会の二人と一緒にいた。
「うん、自分は外を護る。『危ない橋を渡れ、誰かのために』」
「サクラ、このバカが無駄に危ない橋を渡らないようお願いね」
座右の銘を口にして馬に乗るモータル。一方のアムは馬車に。
「門は開けて来ました。急ぎましょう」
戻って来た真田 天斗(ka0014)が手際よく周りの準備も整えたようだ。
「……はぁ」
そんな中、一人ハナだけが意気消沈していた。
(借金、踏み倒すつもりでしょうかぁ)
ぼんやりと、そんなことを思う。
その時。
「事態はよく分からないがとにかく身を隠して交渉の窓口を一本化するのだな? 任せておけ」
エメラルドは頼まれたことに全力を注ぐつもりだ。張り上げた声にも揺るぎがない。
「ま、まずは無事に落ち着いてから、だね」
舞も準備は済んだようだ。
「大丈夫。少し屋敷を離れるだけです。ほら、お父さんも毎日忙しかったでしょう?」
馬車の中からはリラの努めて明るい声がする。子ども二人にこの時間から急いで出掛ける理由を納得させているのだ。どうやら自殺までは話してないらしい。
(そうですかぁ)
ハナ、これで一応納得いった。
時は戻る。
「ハナ、気付かないの? 後ろから蹄の音が近付いてんのよ!」
舞の言葉。
もちろんハナ、気付いている。
おそらく、追手からは逃げられない。
だから思う。
(騙した奴が1番悪い。でもね……)
「行ってくる」
エメラルド、一気に下げた。
(借金踏み倒すついでに督促人をしばき倒したら、同レベルじゃないのかなぁ)
ハナはもやもやしつつ天を仰ぐ。出掛けは逃げる理由に納得しただけ。
今度は、おそらく倒すか足止めすることになる追っ手に武器を振り上げる理由が見つからないのだ。
「……リラ、前を頼む」
一方下げたエメラルド、馬車の中に呼び掛けた。
「分かりました、エメラルドさん。……あ、起こしちゃいましたか? 大丈夫です。ぜったい、ぜーったいに私達が守りますから!」
リラ、馬車の中で動くと子どもたちが目覚めた様子。不安そうな瞳を受けたリラ、よいしょと御者席の背もたれをまたぎつつ振り返り、心からの笑顔を返した。
そして御者席に収まった。
「少し代わってください。前の安全は守りますから」
そう言って御者と手綱を代わり落ち着かせた。その横をエメラルドが下がっていく。
もちろん、ハナは仲間のこの気配も背中で感じている。
「あー、空がすっごく青いですぅ…」
もやもや、未だ晴れず。
●
この少し前、馬車後方を護る三人。
「来ましたか」
戦馬に乗った天斗が呟く。
「このまま何事もなく……とは行かなかったですね…」
同じく、戦馬を駆るサクラが頷いた。
「え?」
馬に乗って一緒に行くモータルは何も気付かない。騎乗戦闘や馬車の護衛などの経験はない。
「そのうち聞こえます」
サクラが説明した直後。
「止まれ! 夫人と子供たちを戻してもらおうか」
長かった直線の後方に、ようやく敵影が見えた。
もうちょっと直線は続く。
「紳士的ですね……ん?」
あいさつ代わりの矢でも飛んでくるかと思った天斗、ここですぐ横に脇道があったことに気付いた。
――ひゅん……とすっ。
「来ましたね……モータルは前に…」
天斗が呟いた直後の矢に面を引き締めるサクラ。「でも」と指示に戸惑うモータル。「すぐに前の三人も来ますから」と任務交代を促すとようやくモータルも納得して前に出た。
――ひゅん……とすっ。
地面に突き刺さった矢の音は前衛も気付いた。
「早速来たね」
舞、馬車を見る。
いや、見たのは他のものだった。
(グリス氏は自分が死ねば責任を果たせるとでも思ったのか?)
蘇る昔日の、伝え聞いた自らの記憶。
出掛けにも吐き捨てた、納得いかない気持ち。
もちろん、自分の時とは状況が違う。
(死んだ先祖より先ず残される家族の事を考えろっての。全く親父なんて……)
違うがしかし。
「ろくでなしの自分勝手ばかりだよ!」
思わず口に出た。
もちろん、言ってしまったことには気付いている。
だから思いっきり下がった。心にスイッチが入ったのだ。
上がって来たモータルとすれ違う。
「モータル、車輪をやられないよう十分気を付けて! それとハナの様子がおかしいから気にしてあげて」
「わ、分かった。舞さんも気を付けて」
かわした言葉で猛る気分も落ち着いた。モータルの気遣いある言葉に感謝する。
もう記憶は追わない。
そして、戦馬を走らせるのもやめた。
そして先頭まで上がったモータル。
「ハナさん?」
「……さっきの、なんですぅ?」
舞に言われたように声を掛けると、むしろ喧嘩を売られたような不機嫌な表情が返って来た。
「え? 追手の矢が……」
「上等ですぅ」
ハナ、いつもな感じに戻った!
そのまますごい勢いで下がっていく。
もちろん、矢の音には気付いていた。モータルと交わした言葉で状況が確定すると、完全にスイッチが入ったのだ。
「え、ええと……いいのかな?」
首をひねりつつも前に一人残るモータルだった。
●
こちら、モータルが行った直後の後衛二人。
「敵は馬で十騎以上…ですかね…」
サクラ、銀の長髪をなびかせ振り向き確認する。
「いや、今脇道にかなりの数がそれましたね」
天斗、先に気付いていた脇道を見遣りながら言う。
「どういうことですか…」
「自信を持って逸れたのだから先回りの道でしょう。そして彼らはこの界隈に詳しいということ」
「借金取りは直接追って来ずに、こっちを根城にする盗賊に声を掛けたということでしょうか……」
「そうですね。遠慮はいらないということです。……先ずは後方の敵を片付けましょう。幸いあちらは半分に減ってくれましたから」
ひゅん、ひゅんと話している間にも矢が飛んでくる。やや狙いを絞り始めている。
「止まらねぇと次は当てるぞ!」
敵は威嚇しつつ迫って来る。こちらは馬車がいるのでどうしても速度で劣る。
「向こうが勝手にふた手に分かれてくれたのはよかったですね…。まずは、後ろの8騎を撃退しましょう…」
サクラ、そう言って減速。
ただし、シェルバックラ―をしっかりと構えている。
この誘いに追っ手ども、乗った。
ひゅんひゅんとサクラに射線が集中する。これを盾で受け切る。いや、二の腕などをかすめていった。これは自らの身よりも馬の防御を優先したためだ。
「的が小さい人間より馬の方が当て易いです。今回は逃げ切る事が大切ですから相手の移動手段を奪っていきましょう」
この隙に敵に対し一列後方となった天斗が深紅のフレイムボウを引き絞り、狙いを定めてはなった。
「馬さえいなくなれば追っては来れないでしょう…? 申し訳ないですが、足を止めさせて貰います…!」
一呼吸遅れてサクラが霊槍「グングニル」を構えた。が、迸ったのはホーリーライト。光弾がすっ飛んでいく。
――ストン、パアッ!
二人の攻撃が敵の馬を襲う。
実は、黄色いバンダナで頭を覆った敵以外の盗賊を狙っていた。
「な、なんで前の目立つ奴らが狙われない?」
それ以外の盗賊の呟きである。
「騎乗戦闘は思った以上に集中力を要します。心に乱れが有れば速度や攻撃精度が落ちるものです」
天斗、徹底して三グループいるとみられる敵の二グループに攻撃を集中した。
「おのれ……」
もちろん、敵も怒って本格的に射撃を……。
「おわっ!」
馬車の中からの一撃が弓を構えた敵を撃った。
一体だれの攻撃かというと……。
「よくぞ来たわね。でも残念、ここでリタイアよ」
ケイだ。
身を低くしてスナイパーライフル「バベル13」を構えている。
その目がさらに光る。
続いて突撃してくる一騎に気付いたのだ。サクラの光弾で盾を吹っ飛ばされながらも果敢に攻め上がって来る。
「当たらなければどうということは……なんて顔つきしてるわね。生きのいいのもいるじゃない」
でもね、と間を空けて二発を撃った。
――ガゥン、ガゥン!
「ぐあっ!」
「一発目はけん制。二発目はさらに高速……どうかしら?」
回避に自信を見せていた敵、ケイの言葉を聞くこともなく落馬した。
この時、サクラ。
「前からもきっとすぐきます」
「な、なんだと?」
後ろに来たエメラルドに先回りした敵の存在を知らせる。
「くっ……なにもせずに離れるのは辛いが」
ぐっと自分を抑え再び前へ。自分の兵装をわきまえているともいう。
同時期、わざと狙わなかった黄色バンダナの一団が肉薄していた。もともと射撃武器を持っていなかったので残していたともいう。
「捕えた! この近さで撃てるものなら撃ってみろ!」
撃て、という挑発である。一撃さえかわせば勝ちだとショートソードを軽快に振り上げている。実際、速度の変化を変えていいタイミングで突っ込んでいた。
が、しかし。
――パシッ! ヒヒィン……。
「な、横からだとッ!」
バンダナの盗賊、剣を振り上げたまま無様に体勢を崩して落馬した。というか、馬が足から崩れたのだ。
(ごめんね)
とは、舞の馬に向けた心の謝罪。
隠の徒で気配を消して道の端に寄って待ち受けていたのだ。
次の瞬間。
「…やられたら殺(や)り返すのは当然ですよぅ。みんなまとめてブッコロですぅ!」
ハナが鬼気迫る形相で下がって来た。
陰陽符「降魔結界」が赤く光る。
静の一撃の後は、ド派手な動の一撃ッ!
「おわっ」
「うわっ」
地縛符、地縛符っ!
この時、馬車の前では!
●
「おら、止まれぇっ!」
前方に先回りした八騎がぎりぎり回り込んできた。
ギリギリなので避ける余裕もない。
「右にもう少しよせろ! 左で私がくいとめる」
エメラルド、間に合った!
ロングソード「クリスタルマスター」が透き通る煌きとともに円弧を描く。
「貴様等の相手は私だっ!」
上がって来た勢いのまま、体当たりするように激しく打ち込む。当然敵は吹っ飛ぶ。
そう。
エメラルド、蹴散らす戦いを仕掛けている。先に戦えなかった分も入っているので回り込んだ敵はとんだとばっちりだ。
もちろん右に寄って来る敵もいる。
「近づけさせません!」
これはリラが気功波で撃退。
「くそっ!」
モータルも右で健闘している。
が、前方の戦いは一瞬の交錯。エメラルドは広く暴れる戦術で多くを阻害したが一人を逃した。
「……アム、この布の先を両手でしっかり持ってて」
「え? いいけど」
アム、ケイに言われた通り手渡された厚手の布を持った。
次の瞬間。
「よっ、と」
ケイ、馬車の後ろから幌の支柱とアムで固定された布に身を預け三点支持の状態を保ち思いっきり身を外に投げ出した。
そして小筒「鳴鵺」を構える。
「ビビらせた方が勝ちね」
コンパクトに構え、エメラルドの猛攻を抜けた一騎を狙った。
その銃声、鵺の鳴き声のように不気味に甲高く響いた。
「ぐはっ!」
落馬した敵がケイの下を抜けていく。
いや、立ち上がってナイフを振り上げたぞ?
「まだだ!」
「そこまでにしてもらいましょう」
どすっ、と背後からの攻撃で倒れる敵。
天斗のロケットナックルだ。
戻って来た拳を装填して振り返る。
「馬車には近づけさせませんよ」
再び、しつこい後方の敵へナックルを構えるのだった。
そして反対側。
何と、モータルを抜けた敵がついに御者席に取り付いていた!
「来ないで! って言ってます!!」
リラ、手綱を御者に預けると反対側から跳躍!
「どわっ!」
乗り込んで来ようとした敵に飛翔撃。蹴り一発で敵を吹っ飛ばすと……。
「リラさん!」
「よっ、と」
リラ、モータルの馬に見事に飛び乗った。
「馬だけじゃなくあんたらも痛い目に遭いたいって?」
「痛い目に遭いたくなければ道を開けてください…。あいたいのならば遠慮はしませんが…」
最後方では、一番後ろになっていた舞とサクラが敵の攻撃を受けながらも再度追ってくることのないように念入りに痛めつけていた。
●
「ありがとうございます。本当に、本当に頼もしい人に恵まれました」
当てのある地域まで来るとセリア夫人は深々と礼を言った。
「ねえ、モータル。ベンドさんとやらに相談できない?」
舞がさらに安心してもらうべく聞いてみた。
「え? えーと」
「もちろん。いい報告が来れば守ってあげられるわ」
返事をしたのはアムだった。
その後ろでリラが子供たち二人に向き合っていた。
「何かあったら呼んでください。必ず力になりにいきますから」
「そうそう。お母さんにはあんた達しかいないんだから、しっかり支えてあげなよ」
二人と指切りをしているリラの後ろからぽむと肩を叩く舞。
ほかの仲間は来た道を振り返っていた。
「諦めましたかね…」
「疑心暗鬼を誘いましたからね」
サクラと天斗の会話の通り、それ以上の追撃はなかった。
グリス氏夫人のセリア・オムと二人の子どもを乗せた幌馬車が森の中の広い道を急いでいる。
夜通し走ったので三人とも疲弊している。長女のポーラと長男のルイスは起きていることができずに座ったまま眠ってしまった。それまで同乗するリラ(ka5679)が何かと気に掛け親身になって話して心配を取り除いていたのだが、心労もたまっていた。
「ジェオルジ方面に向かっているけど、当てはあるのかしら?」
同乗するケイ(ka4032)が聞いてみる。西方地域各地を渡り歩いているので土地鑑はあるつもりだ。
「ええ。遠縁に当たる者がいます。そこを頼って子どもたちを盾に取られないようにして、あとは……」
「あとは?」
リラが言い淀んだセリアに反応して心配そうにのぞき込んだ。
「私一人で戻って……何とか」
「ん? 待って」
言葉を絞り出すセリアを止めたケイ。覆い布もない馬車後部から外を見た。
「ん?」
同じ頃、馬車の前を護衛していたエメラルド・シルフィユ(ka4678)も何かに感付いていた。
「おい、追手が来たかもしれんぞ」
戦馬を駆りつつ瞳を細め横に声を掛ける。
そこには、戦馬「まーちゃん」に乗った星野 ハナ(ka5852)がいた。
「はぁ」
ハナ、どうも浮かない様子。
「ちょっとハナ。あんた、大丈夫?」
同じく戦馬に乗った天竜寺 舞(ka0377)が怪訝そうにする。
「今は速度落としてるからいいけど、そんなんじゃ……」
「はぁ……」
舞に気合を入れるように厳しく言われても生返事。
ハナ、屋敷を脱出した時を思い返していた。
「私はリラ。リラ=エゴロフです。宜しくお願いしますね」
翌朝の鉱山入りから予定変更して護衛任務に就いた時、リラは元気よくそう自己紹介して幌馬車に乗り込んだ。
「何で首吊らなけりゃなんないのよ、まったく」
舞はぶつくさ言いウエィブした銀色の髪をクシャリとかきながら戦馬を用意していた。
「夜逃げだなんて中々大変じゃない?」
ケイは慣れている風に軽やかに馬車に飛び乗った。
「とにかく急ぎましょう。……二人は分かれますか?」
サクラ・エルフリード(ka2598)はアマリリス商会の二人と一緒にいた。
「うん、自分は外を護る。『危ない橋を渡れ、誰かのために』」
「サクラ、このバカが無駄に危ない橋を渡らないようお願いね」
座右の銘を口にして馬に乗るモータル。一方のアムは馬車に。
「門は開けて来ました。急ぎましょう」
戻って来た真田 天斗(ka0014)が手際よく周りの準備も整えたようだ。
「……はぁ」
そんな中、一人ハナだけが意気消沈していた。
(借金、踏み倒すつもりでしょうかぁ)
ぼんやりと、そんなことを思う。
その時。
「事態はよく分からないがとにかく身を隠して交渉の窓口を一本化するのだな? 任せておけ」
エメラルドは頼まれたことに全力を注ぐつもりだ。張り上げた声にも揺るぎがない。
「ま、まずは無事に落ち着いてから、だね」
舞も準備は済んだようだ。
「大丈夫。少し屋敷を離れるだけです。ほら、お父さんも毎日忙しかったでしょう?」
馬車の中からはリラの努めて明るい声がする。子ども二人にこの時間から急いで出掛ける理由を納得させているのだ。どうやら自殺までは話してないらしい。
(そうですかぁ)
ハナ、これで一応納得いった。
時は戻る。
「ハナ、気付かないの? 後ろから蹄の音が近付いてんのよ!」
舞の言葉。
もちろんハナ、気付いている。
おそらく、追手からは逃げられない。
だから思う。
(騙した奴が1番悪い。でもね……)
「行ってくる」
エメラルド、一気に下げた。
(借金踏み倒すついでに督促人をしばき倒したら、同レベルじゃないのかなぁ)
ハナはもやもやしつつ天を仰ぐ。出掛けは逃げる理由に納得しただけ。
今度は、おそらく倒すか足止めすることになる追っ手に武器を振り上げる理由が見つからないのだ。
「……リラ、前を頼む」
一方下げたエメラルド、馬車の中に呼び掛けた。
「分かりました、エメラルドさん。……あ、起こしちゃいましたか? 大丈夫です。ぜったい、ぜーったいに私達が守りますから!」
リラ、馬車の中で動くと子どもたちが目覚めた様子。不安そうな瞳を受けたリラ、よいしょと御者席の背もたれをまたぎつつ振り返り、心からの笑顔を返した。
そして御者席に収まった。
「少し代わってください。前の安全は守りますから」
そう言って御者と手綱を代わり落ち着かせた。その横をエメラルドが下がっていく。
もちろん、ハナは仲間のこの気配も背中で感じている。
「あー、空がすっごく青いですぅ…」
もやもや、未だ晴れず。
●
この少し前、馬車後方を護る三人。
「来ましたか」
戦馬に乗った天斗が呟く。
「このまま何事もなく……とは行かなかったですね…」
同じく、戦馬を駆るサクラが頷いた。
「え?」
馬に乗って一緒に行くモータルは何も気付かない。騎乗戦闘や馬車の護衛などの経験はない。
「そのうち聞こえます」
サクラが説明した直後。
「止まれ! 夫人と子供たちを戻してもらおうか」
長かった直線の後方に、ようやく敵影が見えた。
もうちょっと直線は続く。
「紳士的ですね……ん?」
あいさつ代わりの矢でも飛んでくるかと思った天斗、ここですぐ横に脇道があったことに気付いた。
――ひゅん……とすっ。
「来ましたね……モータルは前に…」
天斗が呟いた直後の矢に面を引き締めるサクラ。「でも」と指示に戸惑うモータル。「すぐに前の三人も来ますから」と任務交代を促すとようやくモータルも納得して前に出た。
――ひゅん……とすっ。
地面に突き刺さった矢の音は前衛も気付いた。
「早速来たね」
舞、馬車を見る。
いや、見たのは他のものだった。
(グリス氏は自分が死ねば責任を果たせるとでも思ったのか?)
蘇る昔日の、伝え聞いた自らの記憶。
出掛けにも吐き捨てた、納得いかない気持ち。
もちろん、自分の時とは状況が違う。
(死んだ先祖より先ず残される家族の事を考えろっての。全く親父なんて……)
違うがしかし。
「ろくでなしの自分勝手ばかりだよ!」
思わず口に出た。
もちろん、言ってしまったことには気付いている。
だから思いっきり下がった。心にスイッチが入ったのだ。
上がって来たモータルとすれ違う。
「モータル、車輪をやられないよう十分気を付けて! それとハナの様子がおかしいから気にしてあげて」
「わ、分かった。舞さんも気を付けて」
かわした言葉で猛る気分も落ち着いた。モータルの気遣いある言葉に感謝する。
もう記憶は追わない。
そして、戦馬を走らせるのもやめた。
そして先頭まで上がったモータル。
「ハナさん?」
「……さっきの、なんですぅ?」
舞に言われたように声を掛けると、むしろ喧嘩を売られたような不機嫌な表情が返って来た。
「え? 追手の矢が……」
「上等ですぅ」
ハナ、いつもな感じに戻った!
そのまますごい勢いで下がっていく。
もちろん、矢の音には気付いていた。モータルと交わした言葉で状況が確定すると、完全にスイッチが入ったのだ。
「え、ええと……いいのかな?」
首をひねりつつも前に一人残るモータルだった。
●
こちら、モータルが行った直後の後衛二人。
「敵は馬で十騎以上…ですかね…」
サクラ、銀の長髪をなびかせ振り向き確認する。
「いや、今脇道にかなりの数がそれましたね」
天斗、先に気付いていた脇道を見遣りながら言う。
「どういうことですか…」
「自信を持って逸れたのだから先回りの道でしょう。そして彼らはこの界隈に詳しいということ」
「借金取りは直接追って来ずに、こっちを根城にする盗賊に声を掛けたということでしょうか……」
「そうですね。遠慮はいらないということです。……先ずは後方の敵を片付けましょう。幸いあちらは半分に減ってくれましたから」
ひゅん、ひゅんと話している間にも矢が飛んでくる。やや狙いを絞り始めている。
「止まらねぇと次は当てるぞ!」
敵は威嚇しつつ迫って来る。こちらは馬車がいるのでどうしても速度で劣る。
「向こうが勝手にふた手に分かれてくれたのはよかったですね…。まずは、後ろの8騎を撃退しましょう…」
サクラ、そう言って減速。
ただし、シェルバックラ―をしっかりと構えている。
この誘いに追っ手ども、乗った。
ひゅんひゅんとサクラに射線が集中する。これを盾で受け切る。いや、二の腕などをかすめていった。これは自らの身よりも馬の防御を優先したためだ。
「的が小さい人間より馬の方が当て易いです。今回は逃げ切る事が大切ですから相手の移動手段を奪っていきましょう」
この隙に敵に対し一列後方となった天斗が深紅のフレイムボウを引き絞り、狙いを定めてはなった。
「馬さえいなくなれば追っては来れないでしょう…? 申し訳ないですが、足を止めさせて貰います…!」
一呼吸遅れてサクラが霊槍「グングニル」を構えた。が、迸ったのはホーリーライト。光弾がすっ飛んでいく。
――ストン、パアッ!
二人の攻撃が敵の馬を襲う。
実は、黄色いバンダナで頭を覆った敵以外の盗賊を狙っていた。
「な、なんで前の目立つ奴らが狙われない?」
それ以外の盗賊の呟きである。
「騎乗戦闘は思った以上に集中力を要します。心に乱れが有れば速度や攻撃精度が落ちるものです」
天斗、徹底して三グループいるとみられる敵の二グループに攻撃を集中した。
「おのれ……」
もちろん、敵も怒って本格的に射撃を……。
「おわっ!」
馬車の中からの一撃が弓を構えた敵を撃った。
一体だれの攻撃かというと……。
「よくぞ来たわね。でも残念、ここでリタイアよ」
ケイだ。
身を低くしてスナイパーライフル「バベル13」を構えている。
その目がさらに光る。
続いて突撃してくる一騎に気付いたのだ。サクラの光弾で盾を吹っ飛ばされながらも果敢に攻め上がって来る。
「当たらなければどうということは……なんて顔つきしてるわね。生きのいいのもいるじゃない」
でもね、と間を空けて二発を撃った。
――ガゥン、ガゥン!
「ぐあっ!」
「一発目はけん制。二発目はさらに高速……どうかしら?」
回避に自信を見せていた敵、ケイの言葉を聞くこともなく落馬した。
この時、サクラ。
「前からもきっとすぐきます」
「な、なんだと?」
後ろに来たエメラルドに先回りした敵の存在を知らせる。
「くっ……なにもせずに離れるのは辛いが」
ぐっと自分を抑え再び前へ。自分の兵装をわきまえているともいう。
同時期、わざと狙わなかった黄色バンダナの一団が肉薄していた。もともと射撃武器を持っていなかったので残していたともいう。
「捕えた! この近さで撃てるものなら撃ってみろ!」
撃て、という挑発である。一撃さえかわせば勝ちだとショートソードを軽快に振り上げている。実際、速度の変化を変えていいタイミングで突っ込んでいた。
が、しかし。
――パシッ! ヒヒィン……。
「な、横からだとッ!」
バンダナの盗賊、剣を振り上げたまま無様に体勢を崩して落馬した。というか、馬が足から崩れたのだ。
(ごめんね)
とは、舞の馬に向けた心の謝罪。
隠の徒で気配を消して道の端に寄って待ち受けていたのだ。
次の瞬間。
「…やられたら殺(や)り返すのは当然ですよぅ。みんなまとめてブッコロですぅ!」
ハナが鬼気迫る形相で下がって来た。
陰陽符「降魔結界」が赤く光る。
静の一撃の後は、ド派手な動の一撃ッ!
「おわっ」
「うわっ」
地縛符、地縛符っ!
この時、馬車の前では!
●
「おら、止まれぇっ!」
前方に先回りした八騎がぎりぎり回り込んできた。
ギリギリなので避ける余裕もない。
「右にもう少しよせろ! 左で私がくいとめる」
エメラルド、間に合った!
ロングソード「クリスタルマスター」が透き通る煌きとともに円弧を描く。
「貴様等の相手は私だっ!」
上がって来た勢いのまま、体当たりするように激しく打ち込む。当然敵は吹っ飛ぶ。
そう。
エメラルド、蹴散らす戦いを仕掛けている。先に戦えなかった分も入っているので回り込んだ敵はとんだとばっちりだ。
もちろん右に寄って来る敵もいる。
「近づけさせません!」
これはリラが気功波で撃退。
「くそっ!」
モータルも右で健闘している。
が、前方の戦いは一瞬の交錯。エメラルドは広く暴れる戦術で多くを阻害したが一人を逃した。
「……アム、この布の先を両手でしっかり持ってて」
「え? いいけど」
アム、ケイに言われた通り手渡された厚手の布を持った。
次の瞬間。
「よっ、と」
ケイ、馬車の後ろから幌の支柱とアムで固定された布に身を預け三点支持の状態を保ち思いっきり身を外に投げ出した。
そして小筒「鳴鵺」を構える。
「ビビらせた方が勝ちね」
コンパクトに構え、エメラルドの猛攻を抜けた一騎を狙った。
その銃声、鵺の鳴き声のように不気味に甲高く響いた。
「ぐはっ!」
落馬した敵がケイの下を抜けていく。
いや、立ち上がってナイフを振り上げたぞ?
「まだだ!」
「そこまでにしてもらいましょう」
どすっ、と背後からの攻撃で倒れる敵。
天斗のロケットナックルだ。
戻って来た拳を装填して振り返る。
「馬車には近づけさせませんよ」
再び、しつこい後方の敵へナックルを構えるのだった。
そして反対側。
何と、モータルを抜けた敵がついに御者席に取り付いていた!
「来ないで! って言ってます!!」
リラ、手綱を御者に預けると反対側から跳躍!
「どわっ!」
乗り込んで来ようとした敵に飛翔撃。蹴り一発で敵を吹っ飛ばすと……。
「リラさん!」
「よっ、と」
リラ、モータルの馬に見事に飛び乗った。
「馬だけじゃなくあんたらも痛い目に遭いたいって?」
「痛い目に遭いたくなければ道を開けてください…。あいたいのならば遠慮はしませんが…」
最後方では、一番後ろになっていた舞とサクラが敵の攻撃を受けながらも再度追ってくることのないように念入りに痛めつけていた。
●
「ありがとうございます。本当に、本当に頼もしい人に恵まれました」
当てのある地域まで来るとセリア夫人は深々と礼を言った。
「ねえ、モータル。ベンドさんとやらに相談できない?」
舞がさらに安心してもらうべく聞いてみた。
「え? えーと」
「もちろん。いい報告が来れば守ってあげられるわ」
返事をしたのはアムだった。
その後ろでリラが子供たち二人に向き合っていた。
「何かあったら呼んでください。必ず力になりにいきますから」
「そうそう。お母さんにはあんた達しかいないんだから、しっかり支えてあげなよ」
二人と指切りをしているリラの後ろからぽむと肩を叩く舞。
ほかの仲間は来た道を振り返っていた。
「諦めましたかね…」
「疑心暗鬼を誘いましたからね」
サクラと天斗の会話の通り、それ以上の追撃はなかった。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/18 21:55:32 |
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仕事の時間です 真田 天斗(ka0014) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/03/21 14:32:35 |