ゲスト
(ka0000)
祝祭の格闘試合
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/08/24 12:00
- 完成日
- 2014/08/29 18:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●祝祭の日
楽しげな音楽が鳴り人々が集まってくる。
屋台で作られる食べ物のおいしそうな匂いが漂よい、酒を飲んで陽気になった人々が歌い始める。
とある村では年に一度の祭りが開かれていた。
この祭りは、本来村の守護精霊として祭られているご神体に対して恵みを感謝し、一年の収穫を捧げるといういわれがある。
が、多くの人々にとってそんなことはどうでもいい。精霊に感謝して酒を飲み、精霊に感謝して歌を歌い、精霊に感謝して楽しく過ごす。そういったものだと認識されていた。
●神に捧げる腕試し
祭りを楽しむ人々の声は、日が暮れるとひときわ大きくなっていた。
村の広場の真ん中に人々が集まる。二重三重に囲まれた人だかりの真ん中は6m程度の正方形に木の柵で囲まれ、その中で二人の人間が殴り合い、掴みあっていた。
今行われているのはこの村祭りのメインイベントである格闘試合。腕自慢達が集まり、柵の中で一対一で闘う。ノックアウトかギブアップで勝負が決まり勝者は讃えられる。ルールは生身で闘うこと、柵の外にいる人間は一切手を出してはならないこと。この二つのみ。飛び入り歓迎という実に原始的なものだった。
もちろんこんなルールだと怪我人も多く出る。だが、そのシンプルな闘いは人々を熱狂させる。これこそ男らしさを示す一番の舞台だと言うわけでこの村の人々だけでなく、近隣からも腕自慢達が集まる一大イベントとなっていた。
●チャンピオン登場
格闘試合は進み、いよいよチャンピオンが登場すると盛り上がりはさらに一段と増していた。チャンピオンは挑戦者の参加を呼び掛ける。二回り大きな体の挑戦者が柵の中に入り闘いが始まる。挑戦者は腕を振り回し、チャンピオンを叩きのめそうとするが、チャンピオンは華麗な動きでその攻撃をかわしていく。
「どうした?俺はまだ一発も殴られてないぜ?」
チャンピオンが挑発する。挑戦者は怒りのままに大きく腕を上げる。その次の瞬間、ドドドドドッ、という肉体を叩く音と共に眼にもとまらぬ5発のパンチが撃ち込まれた。
挑戦者はパンチを受け、固まったように動きを止める。ややあって体がゆっくりと前に傾いていき、ズズーン……と大きな音と共に挑戦者は地面に倒れ伏せていた。
「は、準備運動にもなりゃしねぇ。どうだい?誰でもかかって来なよ!俺は誰でも歓迎するぜ!」
倒れた敗者を見下ろしながら、勝った青髪の女は次の対戦者を求めていた。
楽しげな音楽が鳴り人々が集まってくる。
屋台で作られる食べ物のおいしそうな匂いが漂よい、酒を飲んで陽気になった人々が歌い始める。
とある村では年に一度の祭りが開かれていた。
この祭りは、本来村の守護精霊として祭られているご神体に対して恵みを感謝し、一年の収穫を捧げるといういわれがある。
が、多くの人々にとってそんなことはどうでもいい。精霊に感謝して酒を飲み、精霊に感謝して歌を歌い、精霊に感謝して楽しく過ごす。そういったものだと認識されていた。
●神に捧げる腕試し
祭りを楽しむ人々の声は、日が暮れるとひときわ大きくなっていた。
村の広場の真ん中に人々が集まる。二重三重に囲まれた人だかりの真ん中は6m程度の正方形に木の柵で囲まれ、その中で二人の人間が殴り合い、掴みあっていた。
今行われているのはこの村祭りのメインイベントである格闘試合。腕自慢達が集まり、柵の中で一対一で闘う。ノックアウトかギブアップで勝負が決まり勝者は讃えられる。ルールは生身で闘うこと、柵の外にいる人間は一切手を出してはならないこと。この二つのみ。飛び入り歓迎という実に原始的なものだった。
もちろんこんなルールだと怪我人も多く出る。だが、そのシンプルな闘いは人々を熱狂させる。これこそ男らしさを示す一番の舞台だと言うわけでこの村の人々だけでなく、近隣からも腕自慢達が集まる一大イベントとなっていた。
●チャンピオン登場
格闘試合は進み、いよいよチャンピオンが登場すると盛り上がりはさらに一段と増していた。チャンピオンは挑戦者の参加を呼び掛ける。二回り大きな体の挑戦者が柵の中に入り闘いが始まる。挑戦者は腕を振り回し、チャンピオンを叩きのめそうとするが、チャンピオンは華麗な動きでその攻撃をかわしていく。
「どうした?俺はまだ一発も殴られてないぜ?」
チャンピオンが挑発する。挑戦者は怒りのままに大きく腕を上げる。その次の瞬間、ドドドドドッ、という肉体を叩く音と共に眼にもとまらぬ5発のパンチが撃ち込まれた。
挑戦者はパンチを受け、固まったように動きを止める。ややあって体がゆっくりと前に傾いていき、ズズーン……と大きな音と共に挑戦者は地面に倒れ伏せていた。
「は、準備運動にもなりゃしねぇ。どうだい?誰でもかかって来なよ!俺は誰でも歓迎するぜ!」
倒れた敗者を見下ろしながら、勝った青髪の女は次の対戦者を求めていた。
リプレイ本文
●スーズリー・アイアンアックス(ka1687) vs シャリファ・アスナン(ka2938)
最初に現れたのは小柄な女性だった。
「まっすぐ行ってぶっとばす! 右ストレートでぶっとばす!」
柵の中に入ると右拳を突き出すスーズリー。しかし観客からは失笑が漏れる。ドワーフらしく筋肉質で骨太の体のスーズリーだが、いかんせん体格が小さい。それにこれから殴り合いを繰り広げるとは思えない顔立ち。観客は全く期待してなかった。
「……強そうな人だね」
スーズリーのアピールを見て、小さな影が飛び出す。影は柵を飛び越しながら一回転。スーズリーに挑むのはシャリファだった。
「……シャリファだよ、宜しくね」
事ここに来て観客からはブーイングが飛ぶ。曰く女子供はすっこんでろ。小柄なだけでなく、とても格闘に耐えられると思えないシャリファの細い体に聞くに耐えない罵詈雑言が飛ぶ。
だが、リング上で対峙する二人には関係ない。勝負することを同意し、互いに頷く。
スーズリーはどう戦うか考えていた。結論はドワーフらしく大振りパンチの一撃に全てをかける。
シャリファは戦いたくてうずうずしていた。そして決意する。始まると同時に問答無用で突撃だ。
こんな二人が戦うとどうなるかは自明の理だ。始まると同時に、中央へ向けて飛び出す両者。中央でぶつかると、同時に拳を繰り出す。
バキィッ!
大きな音が鳴り、互いのパンチが顔面を捉える。拳がめり込み顔を歪ませる両者。
だが、スーズリーの攻撃はこれで止まらない。小柄ということはつまり腕が短いという事だ。リーチに関しては不利だが、回転の速い連打を打ち込める。左右のパンチを連打していくスーズリー。
一方、シャリファは上回るスピードを生かし、スーズリーのパンチをかわしていく。左右にひらり、ひらりと動くと、返す刀でキックを打ち込むシャリファ。
「やろう……いいキックをもってやがる。まるで鉄のぼうでなぐられたみたいだ」
痛みに顔をゆがめるスーズリー。だが、スーズリーは己のタフネスを信じ、喰らいながらもなお、パンチを打ち込んでいく。
対するシャリファは時には飛び上がり、時には上体を反らしてスーズリーの攻撃をかわしていく。結果、スーズリーのパンチをかわし続けるシャリファと、シャリファに蹴られ続けるスーズリーという構図が出来上がる。
その状態になっても、スーズリーは体ごと押し込むように前進し連打するる。シャリファはかわしながら知らず知らず後退し――背中が柵に当たった。
リング隅にシャリファを追い詰めたスーズリーはかわしきれない所へ無慈悲にパンチを連打する。思い切り殴られるシャリファ。鼻の奥で鉄錆の匂いがする。だが、その一発で腹を決めた。シャリファは構えを取り直すと全身にマテリアルを巡らせる。
そこに続けて繰り出されるスーズリーのパンチ。シャリファはもらいながらも、カミソリのように鋭い一撃をがら空きのスーズリーの顔に繰り出す。
ドゴォッ! と強烈な音が鳴り、思わず膝を付くスーズリー。最初は文句を言っていた観客も、激しい戦いに盛り上がり、そして最後は皆が熱狂していた。互いのプライドを掛けた殴り合い。それに男も女も関係ないという事か。
スーズリーは顔を拭う。手にはべったりと赤いものが付く。スーズリーの顔は鮮血に汚れていた。散々蹴られ殴られ、全身が痛いはずだが不思議と痛みを感じない。闘いに興奮しながら、スーズリーは一息吸う。筋肉が膨張し、さらに一回り力強さを感じさせるスーズリーの肉体。
スーズリーは立ち上がるとさらに回転速度を上げたパンチを打ち込んでいく。そのパンチを時にかわし、時に喰らいながらもキックを返すシャリファ。シャリファのキックをもらい顔に痣を作りながら、拳を叩きつけるスーズリー。殴られ血を飛び散らせながら、鋭いキックを、パンチをねじ込むシャリファ。中央で一歩も退かず打ち合う二人。お互いの攻撃が交差するたび、観客の歓声は一層大きくなる。
「これでとどめだ!」
何十発と攻撃を受けつつ、ふたたびシャリファを追い詰めたスーズリーは必殺の右パンチを繰り出す。唸りを上げて襲い掛かる豪腕。
「……ボクのとっておきを見せるよ」
追い詰められたシャリファは何を思ったのか、後ろに向かって高く飛ぶ。飛び上がったシャリファは柵の最上段を踏み、その反動でさらに高く跳躍、空中で一回転してスーズリーの脳天目掛けて踵を振り下ろす!
グシャァッ!
重力を乗せた必殺の踵落しが見事にスーズリーの脳天を捉えていた。だが、同時にスーズリーの全身全霊を込めたフルスイングがシャリファの顎を打ち抜いていた。
「……きゅう」
折り重なるように二人の体が倒れる。死闘の結末は相打ち。ダブルKOという幕切れだった。
倒れた二人に金の雨が降り注ぐ。激闘を繰り広げた両者への観客からの最高の評価。だが、二人はその声に気付くことは無かった。
●虎丸 陽一(ka1971) vs Axel Kmetsch(ka3019)
「この大会で格好良く目立てば女の子からキャーキャー言われちゃって、オレにも念願のかわいい彼女が……」
柵の内側に入りながら、虎丸が誰にも聞こえないような小さな声で呟いていた。その本心は村の人々に知られたら袋叩きにあってもおかしくない邪なもの。だと言っても、そう思ったんだから仕方が無い。かといってそう思っていて勝てるほど甘くはなさそうだ。
「うす、誰が相手でも絶対に負けられないっす!」
というわけで虎丸は大きな声で気合を入れなおす。
「まだまだ鍛え中だが、お相手よろしく頼む」
そんな虎丸の真意を知ってか知らずか、Axelが虎丸に答えて柵の中へ。Axelは自らを鍛えるため村を出てハンターになった青年だ。しかも今回はAxelにとって初めての依頼になる。
「初任務が腕試しとは……腕が鳴る!気合い充分で挑ませてもらおう」
となると、過多ともいえるぐらい気合が入るのは当然だ。Axelは今回にあわせて、あらかじめ自主練習を重ねてきた。さらに、戦いに集中し闘争心を高める。準備は完璧と言っていい。
「うす、俺の『虎丸拳』を受けて立つっす!」
虎丸はAxelに対しそう堂々と宣言する。彼の『虎丸拳』という言葉に観客はざわめき立つ。実のところこれは虎丸の我流であり思いつきなのだが、未知の格闘技の使い手、それは観客の期待を煽るのに十分だった。
ざわめきが収まらない中、Axelが一つうなずく。それが闘いの始まりを告げる合図となった。
「行くっすよ!」
先に攻めたのは虎丸だ。一歩踏み込むと、構えた左手を拳を握らず突き出す。空手で言うところの掌底打ちだ。Axelはその攻撃に、とっさに両手を顔の前に上げガードする。だが、受けたAxelの体が2メートルほど吹き飛ばされる。足下に土煙が上がる。相手を吹き飛ばすほどの一撃に、感嘆の声を上げる観客達。
今の攻撃の正体、それは掌底を当てると同時にウィンドスラッシュを放つものだ。だが、そうと知ってか知らずか、派手な一撃に観客は大喜びだ。
盛り上がる観客に気を良くした虎丸は続けて、右の掌底を突き出す。掌が直撃し、Axelの体を吹き飛ばす――と思われた瞬間、Axelは円を描くようにその一撃をかわし、そのまま回転しながら裏拳を打ち込む。今度は虎丸が両手を十字に構えてその一撃を受ける。ズサーッ、と吹き飛ばされる虎丸。
格闘技の技というより、まるで舞い踊るような一撃。観客席は一瞬静まり返る。盛り下がっているわけでわない。あまりの美しさに、観客は息を飲んでいたのだ。
「遊んでる訳ではない、これが俺が居た村の武道、真剣だ!」
Axelは一度構えを取ると、ステップを踏み出す。Axelが足を動かすと、Axelの体は回転し遠心力を乗せた攻撃が放たれる。それも一度ではない、Axelが舞うたびに、攻撃が二度三度と繰り出される。虎丸はガードを固めAxelの連続攻撃を受けるが、とうとうこらえきれず一撃を喰らってしまう。吹き飛ばされ、柵に背中を打ち付ける虎丸。
「やっぱこれじゃ勝てないか」
虎丸は痛みをこらえ体を起こすと上着とリストバンドを脱ぎ捨てる。ドサッ。落ちたそれらは、その重さで地面に沈み込む。もちろんこれらがこんなに重いわけが無い。虎丸は重りを仕込んでいたのだ。
「行くぜ、スラッシュキーック!」
身軽になった虎丸は大きく踏み込みながら横蹴りを繰り出す。先ほどまでとは比べ物にならないほどの鋭い一撃に、Axelは受けきれず腹部に直撃をもらってしまう。弾き飛ばされ、柵に叩きつけられるAxel。
「負けそうでも闘志を捨てたら終わりだ、こんなところで挫ける根性なら村を出ていない」
痛烈なダメージに体が重い。だが闘志は衰えていない。Axelは口元をぬぐうと、再び構えを取る。
虎丸は手ごたえを感じたのか、もう一度構えを取ると右足を少し上げる。その右足に光が集まると、虎丸は再び横蹴りを繰り出す。キックに合わせてマジックアローを撃ち込む必殺の一撃。
光をたなびかせ、突き出された蹴りはしかしAxelの体を捕らえる事は無かった。舞い踊るように動くと大きく体を沈みこませるAxel。虎丸の足はAxelの頭上を通り過ぎていく。Axelはその体勢のまま虎丸の側頭部に蹴りを一撃。一発では止まらない。続けざまの後ろ回し蹴り。最後にバク宙でその体を宙に舞わせると、Axelのつま先が虎丸の顎先を捕らえる。Axelが着地した瞬間、虎丸の体は地面に大の字になって倒れていた。
●ソフィア =リリィホルム(ka2383) vs 佐々加瀬 穹(ka2929)
次に名乗り出たのは、やはり小柄な少女だった。
「格闘大会とか初めてだし、頑張るよっ!」
ソフィアはグローブをはめた拳を二、三度打ち付けてリングに入る。
果たして相手は誰か――そう観客が思った時、疾る一つの影。
観客に己を見せ付けるように一回りするとひょいと柵の上に降り立つその姿は異様だった。
ゆったりとした浴衣をまとい顔には狐面。ミステリアスな姿に観客はどよめく。穹は狐面の下で狙い通り行った事に喜んでいた。そしてさらに演出を重ねる。懐から、運よく道すがら手に入れた扇子を取り出すと開いて優雅に一礼し、挑発するように手招き。そしてふわりと側転したかと思うと見事に着地。それが開始の合図になった。
まずは挨拶とばかりに素早いパンチを応酬する。互いに間合いを探り、軽く拳を突き出す。相手のパンチはかわし反撃。反撃をまたも捌き打ち返す。
ひとしきりパンチの交換が終わると一度間合いを離して向かい合う両者。二人は間合いを保ったまま相手の隙を伺う。軽くステップを踏みチャンスを狙うソフィア。しっかりと大地を踏みしめ、攻撃に対応しようとする穹。緊張感が辺りを支配する。観客達も固唾を飲んで見守る。
永遠に続くかと思われた時を破ったのはソフィアだった。ステップを止めるとニコリと微笑み、両腕に力を入れる。
「魂の炉に火をくべよっ! 華焔纏いて我は鋼の道を往く!」
ソフィアがそう叫んだ次の瞬間、彼女の両拳が燃え上がる。本当の炎ではなく、その焔は幻影。しかし焔は彼女の闘志を表すかのように激しく燃え盛る。
そのまま銃弾のようにソフィアは突進する。速度を乗せて拳を打ち込む。拳は炎を棚引かせ狐面に叩きつけられる。
衝撃を受けたたらを踏んで後退する穹。面が剥がれ、穹の顔が露になる。口元に血がにじんでいた。
穹は唇を噛み、細く息を吐き出す。次の刹那、穹の胸元に赤く『霽』の文字が浮かんだ。そして対抗するように、水が滴る様に見える穹の拳。
ソフィアはその姿を見ると、再び加速して突進する。
「光烈十臥!」
さらに加速した回し蹴りが穹の側頭部に命中しようとしていた。穹の頭部に迫り来るソフィアの左足。だが、左足は穹の頭を捉えなかった。穹は大きく踏み込み、腕を首に回す。蹴りを掻い潜った穹は思い切り右足を振るい、軸足を払う。大外刈り。ソフィアの体はふわりと宙を舞い、墜落する。
後頭部をしたたかに打ち付け頭を抑えるソフィアを穹は見逃さない。ソフィアの体を投げ落とした穹はそのまま彼女の上に乗る。洗練された柔道技の次は喧嘩殺法。上から何度も拳を振り下ろし追撃する穹。
ソフィアは体を小さく亀のように固めて穹の拳を耐えるが、ガードの上から体力を削られていく。このままでは。そう思い、掌底を穹の胸元へ打ち込む。
「烈火竜咆!」
両手からエネルギーを拡散させ、穹の体を押しやるソフィア。その隙に間合いを取って仕切りなおす。
もう一度向かい合う両者。そして先に動いたのはやはりソフィアだった。三たび突進すると拳を乱打する。袂をはためかせ、大きく動いて交わした穹は対抗するように拳を打ち込む。拳は虹色の軌跡を残しソフィアの体をえぐる。体をくの字に曲げながらも歯を食いしばり拳を打ち返すソフィア。
辺りはすっかり暗くなっていた。暗闇の中、虹色に輝く拳と赤く輝く拳が交錯する。四つの拳が残す軌跡はまるで花火の様に美しかった。
赤い火が大きく円を描く。ソフィアは力を込め大振りのパンチを打ち込む。穹はその拳をかいくぐると腕をソフィアの腕に絡め、一気に背負い投げる。
もう一度宙を舞うソフィアの体。だが、ソフィアは空中で穹の腕を払うとくるりと一回転して着地して見せた。
「桜花月煌が彩る我が旅路の果てを見よ!」
地面に降り立ったソフィアはそう叫ぶ。燃え上がる焔は、赤から桃色へと色を変える。舞い散る火の粉はまるで桜の花弁のよう。
「奥義。月華焔舞・散桜!」
火の粉を舞わせながら、左右の高速蹴りが繰り出される。穹の脇腹に脚がめり込む。最後にソフィアは両手を突き出し穹の腹部に叩きつける。両手からは光の剣が現れ、穹の体を抜け後ろに突き出す。
まるで彫像のように固まる両者。ソフィアはゆっくりと両手を引き戻す。支えを失った穹の体が前に傾き、両膝を地面に着く。
何度か咳をすると、穹は両膝をつけたまま両手を上げる。降参の意思表示。華麗な戦いはソフィアの勝利で決着が付いた。
「……疲れ、た」
懐から二本の扇子を取り出すと開いて観客に投げ込み、穹はそう呟いた。
●闘い終えて
三つの闘いが終わった。だが闘いはまだまだ続く。
敗れたとはいえ、観客の受けを取った虎丸は満足していた。だが、虎丸はここで一つ気付く。
「……あれ? オレはなんの為に大会に出たんだっけ?」
闘いは時に人を童心に帰す。すっかりエキサイトしていた虎丸はそもそもの目的を忘れていたのだった
一方、Axelの元に蒼髪の女が近づく。
「お前強いな。なんならもう一度やらないか?」
「男女構わず戦おう。女性でも強い奴は強い」
闘いは続く。祝祭の夜は更けていくのであった。
最初に現れたのは小柄な女性だった。
「まっすぐ行ってぶっとばす! 右ストレートでぶっとばす!」
柵の中に入ると右拳を突き出すスーズリー。しかし観客からは失笑が漏れる。ドワーフらしく筋肉質で骨太の体のスーズリーだが、いかんせん体格が小さい。それにこれから殴り合いを繰り広げるとは思えない顔立ち。観客は全く期待してなかった。
「……強そうな人だね」
スーズリーのアピールを見て、小さな影が飛び出す。影は柵を飛び越しながら一回転。スーズリーに挑むのはシャリファだった。
「……シャリファだよ、宜しくね」
事ここに来て観客からはブーイングが飛ぶ。曰く女子供はすっこんでろ。小柄なだけでなく、とても格闘に耐えられると思えないシャリファの細い体に聞くに耐えない罵詈雑言が飛ぶ。
だが、リング上で対峙する二人には関係ない。勝負することを同意し、互いに頷く。
スーズリーはどう戦うか考えていた。結論はドワーフらしく大振りパンチの一撃に全てをかける。
シャリファは戦いたくてうずうずしていた。そして決意する。始まると同時に問答無用で突撃だ。
こんな二人が戦うとどうなるかは自明の理だ。始まると同時に、中央へ向けて飛び出す両者。中央でぶつかると、同時に拳を繰り出す。
バキィッ!
大きな音が鳴り、互いのパンチが顔面を捉える。拳がめり込み顔を歪ませる両者。
だが、スーズリーの攻撃はこれで止まらない。小柄ということはつまり腕が短いという事だ。リーチに関しては不利だが、回転の速い連打を打ち込める。左右のパンチを連打していくスーズリー。
一方、シャリファは上回るスピードを生かし、スーズリーのパンチをかわしていく。左右にひらり、ひらりと動くと、返す刀でキックを打ち込むシャリファ。
「やろう……いいキックをもってやがる。まるで鉄のぼうでなぐられたみたいだ」
痛みに顔をゆがめるスーズリー。だが、スーズリーは己のタフネスを信じ、喰らいながらもなお、パンチを打ち込んでいく。
対するシャリファは時には飛び上がり、時には上体を反らしてスーズリーの攻撃をかわしていく。結果、スーズリーのパンチをかわし続けるシャリファと、シャリファに蹴られ続けるスーズリーという構図が出来上がる。
その状態になっても、スーズリーは体ごと押し込むように前進し連打するる。シャリファはかわしながら知らず知らず後退し――背中が柵に当たった。
リング隅にシャリファを追い詰めたスーズリーはかわしきれない所へ無慈悲にパンチを連打する。思い切り殴られるシャリファ。鼻の奥で鉄錆の匂いがする。だが、その一発で腹を決めた。シャリファは構えを取り直すと全身にマテリアルを巡らせる。
そこに続けて繰り出されるスーズリーのパンチ。シャリファはもらいながらも、カミソリのように鋭い一撃をがら空きのスーズリーの顔に繰り出す。
ドゴォッ! と強烈な音が鳴り、思わず膝を付くスーズリー。最初は文句を言っていた観客も、激しい戦いに盛り上がり、そして最後は皆が熱狂していた。互いのプライドを掛けた殴り合い。それに男も女も関係ないという事か。
スーズリーは顔を拭う。手にはべったりと赤いものが付く。スーズリーの顔は鮮血に汚れていた。散々蹴られ殴られ、全身が痛いはずだが不思議と痛みを感じない。闘いに興奮しながら、スーズリーは一息吸う。筋肉が膨張し、さらに一回り力強さを感じさせるスーズリーの肉体。
スーズリーは立ち上がるとさらに回転速度を上げたパンチを打ち込んでいく。そのパンチを時にかわし、時に喰らいながらもキックを返すシャリファ。シャリファのキックをもらい顔に痣を作りながら、拳を叩きつけるスーズリー。殴られ血を飛び散らせながら、鋭いキックを、パンチをねじ込むシャリファ。中央で一歩も退かず打ち合う二人。お互いの攻撃が交差するたび、観客の歓声は一層大きくなる。
「これでとどめだ!」
何十発と攻撃を受けつつ、ふたたびシャリファを追い詰めたスーズリーは必殺の右パンチを繰り出す。唸りを上げて襲い掛かる豪腕。
「……ボクのとっておきを見せるよ」
追い詰められたシャリファは何を思ったのか、後ろに向かって高く飛ぶ。飛び上がったシャリファは柵の最上段を踏み、その反動でさらに高く跳躍、空中で一回転してスーズリーの脳天目掛けて踵を振り下ろす!
グシャァッ!
重力を乗せた必殺の踵落しが見事にスーズリーの脳天を捉えていた。だが、同時にスーズリーの全身全霊を込めたフルスイングがシャリファの顎を打ち抜いていた。
「……きゅう」
折り重なるように二人の体が倒れる。死闘の結末は相打ち。ダブルKOという幕切れだった。
倒れた二人に金の雨が降り注ぐ。激闘を繰り広げた両者への観客からの最高の評価。だが、二人はその声に気付くことは無かった。
●虎丸 陽一(ka1971) vs Axel Kmetsch(ka3019)
「この大会で格好良く目立てば女の子からキャーキャー言われちゃって、オレにも念願のかわいい彼女が……」
柵の内側に入りながら、虎丸が誰にも聞こえないような小さな声で呟いていた。その本心は村の人々に知られたら袋叩きにあってもおかしくない邪なもの。だと言っても、そう思ったんだから仕方が無い。かといってそう思っていて勝てるほど甘くはなさそうだ。
「うす、誰が相手でも絶対に負けられないっす!」
というわけで虎丸は大きな声で気合を入れなおす。
「まだまだ鍛え中だが、お相手よろしく頼む」
そんな虎丸の真意を知ってか知らずか、Axelが虎丸に答えて柵の中へ。Axelは自らを鍛えるため村を出てハンターになった青年だ。しかも今回はAxelにとって初めての依頼になる。
「初任務が腕試しとは……腕が鳴る!気合い充分で挑ませてもらおう」
となると、過多ともいえるぐらい気合が入るのは当然だ。Axelは今回にあわせて、あらかじめ自主練習を重ねてきた。さらに、戦いに集中し闘争心を高める。準備は完璧と言っていい。
「うす、俺の『虎丸拳』を受けて立つっす!」
虎丸はAxelに対しそう堂々と宣言する。彼の『虎丸拳』という言葉に観客はざわめき立つ。実のところこれは虎丸の我流であり思いつきなのだが、未知の格闘技の使い手、それは観客の期待を煽るのに十分だった。
ざわめきが収まらない中、Axelが一つうなずく。それが闘いの始まりを告げる合図となった。
「行くっすよ!」
先に攻めたのは虎丸だ。一歩踏み込むと、構えた左手を拳を握らず突き出す。空手で言うところの掌底打ちだ。Axelはその攻撃に、とっさに両手を顔の前に上げガードする。だが、受けたAxelの体が2メートルほど吹き飛ばされる。足下に土煙が上がる。相手を吹き飛ばすほどの一撃に、感嘆の声を上げる観客達。
今の攻撃の正体、それは掌底を当てると同時にウィンドスラッシュを放つものだ。だが、そうと知ってか知らずか、派手な一撃に観客は大喜びだ。
盛り上がる観客に気を良くした虎丸は続けて、右の掌底を突き出す。掌が直撃し、Axelの体を吹き飛ばす――と思われた瞬間、Axelは円を描くようにその一撃をかわし、そのまま回転しながら裏拳を打ち込む。今度は虎丸が両手を十字に構えてその一撃を受ける。ズサーッ、と吹き飛ばされる虎丸。
格闘技の技というより、まるで舞い踊るような一撃。観客席は一瞬静まり返る。盛り下がっているわけでわない。あまりの美しさに、観客は息を飲んでいたのだ。
「遊んでる訳ではない、これが俺が居た村の武道、真剣だ!」
Axelは一度構えを取ると、ステップを踏み出す。Axelが足を動かすと、Axelの体は回転し遠心力を乗せた攻撃が放たれる。それも一度ではない、Axelが舞うたびに、攻撃が二度三度と繰り出される。虎丸はガードを固めAxelの連続攻撃を受けるが、とうとうこらえきれず一撃を喰らってしまう。吹き飛ばされ、柵に背中を打ち付ける虎丸。
「やっぱこれじゃ勝てないか」
虎丸は痛みをこらえ体を起こすと上着とリストバンドを脱ぎ捨てる。ドサッ。落ちたそれらは、その重さで地面に沈み込む。もちろんこれらがこんなに重いわけが無い。虎丸は重りを仕込んでいたのだ。
「行くぜ、スラッシュキーック!」
身軽になった虎丸は大きく踏み込みながら横蹴りを繰り出す。先ほどまでとは比べ物にならないほどの鋭い一撃に、Axelは受けきれず腹部に直撃をもらってしまう。弾き飛ばされ、柵に叩きつけられるAxel。
「負けそうでも闘志を捨てたら終わりだ、こんなところで挫ける根性なら村を出ていない」
痛烈なダメージに体が重い。だが闘志は衰えていない。Axelは口元をぬぐうと、再び構えを取る。
虎丸は手ごたえを感じたのか、もう一度構えを取ると右足を少し上げる。その右足に光が集まると、虎丸は再び横蹴りを繰り出す。キックに合わせてマジックアローを撃ち込む必殺の一撃。
光をたなびかせ、突き出された蹴りはしかしAxelの体を捕らえる事は無かった。舞い踊るように動くと大きく体を沈みこませるAxel。虎丸の足はAxelの頭上を通り過ぎていく。Axelはその体勢のまま虎丸の側頭部に蹴りを一撃。一発では止まらない。続けざまの後ろ回し蹴り。最後にバク宙でその体を宙に舞わせると、Axelのつま先が虎丸の顎先を捕らえる。Axelが着地した瞬間、虎丸の体は地面に大の字になって倒れていた。
●ソフィア =リリィホルム(ka2383) vs 佐々加瀬 穹(ka2929)
次に名乗り出たのは、やはり小柄な少女だった。
「格闘大会とか初めてだし、頑張るよっ!」
ソフィアはグローブをはめた拳を二、三度打ち付けてリングに入る。
果たして相手は誰か――そう観客が思った時、疾る一つの影。
観客に己を見せ付けるように一回りするとひょいと柵の上に降り立つその姿は異様だった。
ゆったりとした浴衣をまとい顔には狐面。ミステリアスな姿に観客はどよめく。穹は狐面の下で狙い通り行った事に喜んでいた。そしてさらに演出を重ねる。懐から、運よく道すがら手に入れた扇子を取り出すと開いて優雅に一礼し、挑発するように手招き。そしてふわりと側転したかと思うと見事に着地。それが開始の合図になった。
まずは挨拶とばかりに素早いパンチを応酬する。互いに間合いを探り、軽く拳を突き出す。相手のパンチはかわし反撃。反撃をまたも捌き打ち返す。
ひとしきりパンチの交換が終わると一度間合いを離して向かい合う両者。二人は間合いを保ったまま相手の隙を伺う。軽くステップを踏みチャンスを狙うソフィア。しっかりと大地を踏みしめ、攻撃に対応しようとする穹。緊張感が辺りを支配する。観客達も固唾を飲んで見守る。
永遠に続くかと思われた時を破ったのはソフィアだった。ステップを止めるとニコリと微笑み、両腕に力を入れる。
「魂の炉に火をくべよっ! 華焔纏いて我は鋼の道を往く!」
ソフィアがそう叫んだ次の瞬間、彼女の両拳が燃え上がる。本当の炎ではなく、その焔は幻影。しかし焔は彼女の闘志を表すかのように激しく燃え盛る。
そのまま銃弾のようにソフィアは突進する。速度を乗せて拳を打ち込む。拳は炎を棚引かせ狐面に叩きつけられる。
衝撃を受けたたらを踏んで後退する穹。面が剥がれ、穹の顔が露になる。口元に血がにじんでいた。
穹は唇を噛み、細く息を吐き出す。次の刹那、穹の胸元に赤く『霽』の文字が浮かんだ。そして対抗するように、水が滴る様に見える穹の拳。
ソフィアはその姿を見ると、再び加速して突進する。
「光烈十臥!」
さらに加速した回し蹴りが穹の側頭部に命中しようとしていた。穹の頭部に迫り来るソフィアの左足。だが、左足は穹の頭を捉えなかった。穹は大きく踏み込み、腕を首に回す。蹴りを掻い潜った穹は思い切り右足を振るい、軸足を払う。大外刈り。ソフィアの体はふわりと宙を舞い、墜落する。
後頭部をしたたかに打ち付け頭を抑えるソフィアを穹は見逃さない。ソフィアの体を投げ落とした穹はそのまま彼女の上に乗る。洗練された柔道技の次は喧嘩殺法。上から何度も拳を振り下ろし追撃する穹。
ソフィアは体を小さく亀のように固めて穹の拳を耐えるが、ガードの上から体力を削られていく。このままでは。そう思い、掌底を穹の胸元へ打ち込む。
「烈火竜咆!」
両手からエネルギーを拡散させ、穹の体を押しやるソフィア。その隙に間合いを取って仕切りなおす。
もう一度向かい合う両者。そして先に動いたのはやはりソフィアだった。三たび突進すると拳を乱打する。袂をはためかせ、大きく動いて交わした穹は対抗するように拳を打ち込む。拳は虹色の軌跡を残しソフィアの体をえぐる。体をくの字に曲げながらも歯を食いしばり拳を打ち返すソフィア。
辺りはすっかり暗くなっていた。暗闇の中、虹色に輝く拳と赤く輝く拳が交錯する。四つの拳が残す軌跡はまるで花火の様に美しかった。
赤い火が大きく円を描く。ソフィアは力を込め大振りのパンチを打ち込む。穹はその拳をかいくぐると腕をソフィアの腕に絡め、一気に背負い投げる。
もう一度宙を舞うソフィアの体。だが、ソフィアは空中で穹の腕を払うとくるりと一回転して着地して見せた。
「桜花月煌が彩る我が旅路の果てを見よ!」
地面に降り立ったソフィアはそう叫ぶ。燃え上がる焔は、赤から桃色へと色を変える。舞い散る火の粉はまるで桜の花弁のよう。
「奥義。月華焔舞・散桜!」
火の粉を舞わせながら、左右の高速蹴りが繰り出される。穹の脇腹に脚がめり込む。最後にソフィアは両手を突き出し穹の腹部に叩きつける。両手からは光の剣が現れ、穹の体を抜け後ろに突き出す。
まるで彫像のように固まる両者。ソフィアはゆっくりと両手を引き戻す。支えを失った穹の体が前に傾き、両膝を地面に着く。
何度か咳をすると、穹は両膝をつけたまま両手を上げる。降参の意思表示。華麗な戦いはソフィアの勝利で決着が付いた。
「……疲れ、た」
懐から二本の扇子を取り出すと開いて観客に投げ込み、穹はそう呟いた。
●闘い終えて
三つの闘いが終わった。だが闘いはまだまだ続く。
敗れたとはいえ、観客の受けを取った虎丸は満足していた。だが、虎丸はここで一つ気付く。
「……あれ? オレはなんの為に大会に出たんだっけ?」
闘いは時に人を童心に帰す。すっかりエキサイトしていた虎丸はそもそもの目的を忘れていたのだった
一方、Axelの元に蒼髪の女が近づく。
「お前強いな。なんならもう一度やらないか?」
「男女構わず戦おう。女性でも強い奴は強い」
闘いは続く。祝祭の夜は更けていくのであった。
依頼結果
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戦うよっ ソフィア =リリィホルム(ka2383) ドワーフ|14才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/08/21 00:49:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/19 11:05:14 |