ゲスト
(ka0000)
【歪誕】ありがちな失踪
マスター:月宵

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 8日
- 締切
- 2016/03/28 15:00
- 完成日
- 2016/04/06 06:22
このシナリオは1日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
音が聴こえる。最初は、大雨でも降っている音。でも違うことは僕でもわかった……だって、悲鳴。あれが族長達が忌む物。みんな壊した、今も聴こえる。
瓦礫に挟まり動けない。おこっていることが意味わからなかった。ただ、怖くて声なんかでない。
でもみんな真っ赤なんだ、音もしなくなってたんだ!
消えない、消えない。いくら耳をおさえても!! あの音は消えない! どれだけ泣いても、音は聴こえる。
今もまた………タスケテ…
『――望なら――。――てやる』
『安心しろ。嘘はつけねぇんだ』
「わああ!」
彼、ヴァーシュラは寝慣れないベッドから悪夢より飛び起きた。脂汗と涙に綺麗な筈の毛布はぐちゃぐちゃだ。
「ヴァーシュラ? 大丈夫か」
「……うん」
扉越しの声に、本当の声も出せず質問に肯定する。
「そうか。少し出てくる、遅くはならないつもりだ」
「うん」
…………。
●
「そう……そんなことが」
「お役に立てたでしょうか?」
男は、机で対峙した女性に伺いをたてた。
「ええ、アタシも似たケースに出会ったから」
男の名は、ウコン。つい先日歪虚に襲撃され集落は壊滅。現在ハンターソサエティに厄介になるため、集落から離れた宿屋にて泊まっている。充分休んだ後、ソサエティの職員と合流する予定だ。
女性の方は自らをメティと名乗るハンターであった。彼女もまた、とある歪虚の事件に巻き込まれたクチである。
ハンターである彼女は、とある存在を追っていた。その過程でウコンの話をソサエティにて聞き、ここまで彼を訪ねてきたのだ。
「なら、オントに集落を襲わせたのはソイツですね!」
「落ち着いて。飛躍しすぎよ?」
人間を歪虚化する存在。更にその歪虚を倒した後、何かが発見される流れが全く同じなのだ。
「その人影に会った者からは、歪虚を倒したと聞いた。それこそ、口封じだろう?」
「けど……それだったら…」
何かを言いかけるメティだが、口をつぐんだ。この質問を彼にぶつけた所で解決はしない。
それより何より、彼女にウコンが疲れている事がわかっていた。聞いた話、今唯一の生き残りである男子と寝泊りしている。血縁関係はないらしい。
「あのその男の子には、今会えるかしら……?」
何となくだが、今のウコンに聞くより有益な情報を聞けるような気がした。
「ヴァーシュラにか……一度本人に聞いてみます」
●
それからウコンが確認して直ぐであった。ベッドから、部屋から、宿屋から、町から、ヴァーシュラの姿を見失ったのは……
「ヴァーシュラ! どこなんだ!?」
「ウコンさん、さっき馬車が男の子を……」
共に探すのを手伝ってくれていたメティが、ウコンの傍らに駆け付ける。そして、ヴァーシュラを運んだとする馬車の御者に会えば、思わず胸ぐらを掴みこう叫ぶ。
「どうして、子供を一人で乗せたのですか!?」
「アタタタ……そうは言ってもね、商売だから。お金も持っていましたし」
(食事用に持たせた金が仇になるなんて!!)
「そんな事言っている場合じゃないわ。それで、彼は一体何処へ向かうと?」
一子触発をメティが止めて、御者の男が行き先を話して行くとみるみる内にウコンの顔色が変わる。
「そこは聖域じゃないか!」
オウム返しにメティが質問すると、そこが集落内で聖域と呼ばれる広大な森だと言うことをウコンは応えた。
「木々の精霊様が住む森。と言いましても、雑魔も生息していますし、前から、梟の様な強い歪虚も」
何故あんな所へ……聖域は探知の機器や磁石等も役にたたない。迷えば生きて帰れる保証は、覚醒者でも低いのだ。少年が入る意味を今のウコンには、理解できなかった。
「ハンターを連れてきます! 急いでその子を見つけないと」
自分は、ヴァーシュラが帰ってきた時の為にここに残るそうだ。
「ああ、早く探さないと」
そう言ってから、ウコンは馬車を待たせることにした。メティは、ハンターソサエティへと走った。
きっと、ウコンとハンター達が聖域とやらに着く時は夜になるのだろう。
(この感じ前にも……っ)
治りかけの左足を擦りながら彼女は必死に走った。
何故なら、彼女の弟は行方知れずになって数日……歪虚になって発見されたのだから……
瓦礫に挟まり動けない。おこっていることが意味わからなかった。ただ、怖くて声なんかでない。
でもみんな真っ赤なんだ、音もしなくなってたんだ!
消えない、消えない。いくら耳をおさえても!! あの音は消えない! どれだけ泣いても、音は聴こえる。
今もまた………タスケテ…
『――望なら――。――てやる』
『安心しろ。嘘はつけねぇんだ』
「わああ!」
彼、ヴァーシュラは寝慣れないベッドから悪夢より飛び起きた。脂汗と涙に綺麗な筈の毛布はぐちゃぐちゃだ。
「ヴァーシュラ? 大丈夫か」
「……うん」
扉越しの声に、本当の声も出せず質問に肯定する。
「そうか。少し出てくる、遅くはならないつもりだ」
「うん」
…………。
●
「そう……そんなことが」
「お役に立てたでしょうか?」
男は、机で対峙した女性に伺いをたてた。
「ええ、アタシも似たケースに出会ったから」
男の名は、ウコン。つい先日歪虚に襲撃され集落は壊滅。現在ハンターソサエティに厄介になるため、集落から離れた宿屋にて泊まっている。充分休んだ後、ソサエティの職員と合流する予定だ。
女性の方は自らをメティと名乗るハンターであった。彼女もまた、とある歪虚の事件に巻き込まれたクチである。
ハンターである彼女は、とある存在を追っていた。その過程でウコンの話をソサエティにて聞き、ここまで彼を訪ねてきたのだ。
「なら、オントに集落を襲わせたのはソイツですね!」
「落ち着いて。飛躍しすぎよ?」
人間を歪虚化する存在。更にその歪虚を倒した後、何かが発見される流れが全く同じなのだ。
「その人影に会った者からは、歪虚を倒したと聞いた。それこそ、口封じだろう?」
「けど……それだったら…」
何かを言いかけるメティだが、口をつぐんだ。この質問を彼にぶつけた所で解決はしない。
それより何より、彼女にウコンが疲れている事がわかっていた。聞いた話、今唯一の生き残りである男子と寝泊りしている。血縁関係はないらしい。
「あのその男の子には、今会えるかしら……?」
何となくだが、今のウコンに聞くより有益な情報を聞けるような気がした。
「ヴァーシュラにか……一度本人に聞いてみます」
●
それからウコンが確認して直ぐであった。ベッドから、部屋から、宿屋から、町から、ヴァーシュラの姿を見失ったのは……
「ヴァーシュラ! どこなんだ!?」
「ウコンさん、さっき馬車が男の子を……」
共に探すのを手伝ってくれていたメティが、ウコンの傍らに駆け付ける。そして、ヴァーシュラを運んだとする馬車の御者に会えば、思わず胸ぐらを掴みこう叫ぶ。
「どうして、子供を一人で乗せたのですか!?」
「アタタタ……そうは言ってもね、商売だから。お金も持っていましたし」
(食事用に持たせた金が仇になるなんて!!)
「そんな事言っている場合じゃないわ。それで、彼は一体何処へ向かうと?」
一子触発をメティが止めて、御者の男が行き先を話して行くとみるみる内にウコンの顔色が変わる。
「そこは聖域じゃないか!」
オウム返しにメティが質問すると、そこが集落内で聖域と呼ばれる広大な森だと言うことをウコンは応えた。
「木々の精霊様が住む森。と言いましても、雑魔も生息していますし、前から、梟の様な強い歪虚も」
何故あんな所へ……聖域は探知の機器や磁石等も役にたたない。迷えば生きて帰れる保証は、覚醒者でも低いのだ。少年が入る意味を今のウコンには、理解できなかった。
「ハンターを連れてきます! 急いでその子を見つけないと」
自分は、ヴァーシュラが帰ってきた時の為にここに残るそうだ。
「ああ、早く探さないと」
そう言ってから、ウコンは馬車を待たせることにした。メティは、ハンターソサエティへと走った。
きっと、ウコンとハンター達が聖域とやらに着く時は夜になるのだろう。
(この感じ前にも……っ)
治りかけの左足を擦りながら彼女は必死に走った。
何故なら、彼女の弟は行方知れずになって数日……歪虚になって発見されたのだから……
リプレイ本文
皆がメティに連れられ、依頼を聞き各自準備を行うディヤー・A・バトロス(ka5743)は、ウコン達の泊まった宿屋へと向かった。
「おや、久しぶりじゃの。怪我は、まだかの」
「ええ、こっちの傷は後少し……ね」
ヴァーシュラの部屋をさぐりながら、メティの話を聞いていた。
「うむ、あの屋敷を出た何者か。恐らくじゃが、ヴァーシュラの話に出てきたものであろう」
沈黙。だがそこには『やはり』と言う言葉をメティが感じている様な気がした。
「メティ殿。これを借りてよいかの」
ディヤーが手にしたのは、ぐっしょりと濡れたシーツであった。恐らく、濡らしたのはヴァーシュラに違いない。
一枚のシーツを重くするほどの想いを、彼は背負こんでいたのだろう。
「ええ、後で彼に伝えるわ……どうかお願いするわ、弟のような話はもうイヤなの」
●
聖域へは、二班に別れて探すこととなった。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法ニンジャ☆テレカ~! 何かあったらこれで連絡しあって、効率良く捜索進めちゃいましょう」
奇妙な登場音楽と共にルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、符をみんなに渡した。
それは口伝符。もしもの時の為の連絡手段となるだろう。札を受け取りながら、ウコンならびにハンター達はそれぞれの入り口に向かった。
(…何かが起こってしまう前に、間に合えば良いが)
鞍馬 真(ka5819)は、LEDライトを片手に思うところがあった。ヴァーシュラは、前にあった依頼の被害者。その唯一の目撃者、と言ってもおかしくない。その悲惨な集落跡を彼も目撃したのだ。
笛の音と共に見送るものを、これ以上増やしたくはない。
「どうか無事でいて……」
わんこを抱え、ランタンを片手に一人思うのはクアンタ(ka4214)だ。
「行きましょう」
「はい! プロカードゲーマーとしては放って何ておけないもの!」
「…………」
三人がそれぞれの決意を持って聖域に踏み出し、クオン・サガラ(ka0018)がそれから少し下がった位置を歩く。この一件は、ただの失踪事件ではない。どこかでそんな考えがクオンにはあった。誰も口には出さないが、どこかで有り得る可能性なのだ。
今は、真相が見えない限り行動は慎重にかつ真意を晒さない様、なるべく顔には出さないでおこう。
(最悪…討伐も?)
●
聖域の入口にて、ザレム・アズール(ka0878)は篝火を設置していた。聖域内部は、レーダーの類いは使えない。この篝火の煙があれば、もしもの帰りの道標になるだろう。
「ザレム殿は無理をされるな」
「ザレムくん、大変なら言ってくださいねぇ?荷物持ちますよぅ」
「無茶はしないつもりだ。ウコン、貴方もな」
彼からの返事はない。気に病むな、と言っても無理な話なのだろう。
「疑り深いって言われちゃうとそれまでなんですけどぉ」
と前おいてから星野 ハナ(ka5852)がウコンに問う。聖域は本当に、未だ聖域のままなのか、と。
「オントがその憎悪を聖域に向けてないって言いきれますぅ?」
「わかりません。しかし、我先にと集落を襲ったようです」
恨みは、ヒトにあった。ウコンは短くそう語る。
「……そっかぁ」
こうして、ザレム達は聖域へ踏み出し……
「まさか、ヴァーシュラが失踪するとはな。聖域で何をするつもりか知らないが急がないと嫌な予感がするぜ……っておい」
柊 真司(ka0705)が折角急いていた足を止める。目の前には大きな大きな壁、行き止まりであった。
それはまさに断崖絶壁。ロープなどで登るのは、難しい話だろう。
「ここは避けていこう」
中央に位置するザレムの提案に、否定的なものはいなかった。
「けど、どう行きますぅ?」
「ワシに任せるのじゃ」
「俺に任せておけ」
真司は何かを確認するよう照明を動かし、ディヤーは姉弟子から借りてきた犬に先程のシーツを嗅がせた。
「「よし、こっちだ!」じゃ!」
ディヤーは犬を追って、真司は自らの直感を信じて、同じ道を指し示す。
犬はともかく、っと何とも言えない気持ちになりつつも、他の面子も後に続くのであった。
ハナは道すがら、常に生命感知を使ってヴァーシュラの居場所を探っていた。
「う~ん、反応いっぱいだよぉ」
聖域のあちらこちらと反応があり、夜であるためか、動いていない反応も多い。それがヴァーシュラであるかを確認する術がない。
「この森、雑魔以外にも普通の小動物もいますから」
恐らく、彼らも反応しているのだろう、とウコンは語ったのだ。
●
「皆のもの、隠れるのじゃ」
いくらか道を歩いたところで、ザレムの猟犬シバとディヤーの犬が唸る。
歪虚だ。
急ぎ草むらの影で屈み、戦闘の回避を試みる一同。狼型の雑魔が草音を踏み締める音が、真夜中に響く。
ディヤーは考えた。もし見つかった場合、自らがここに残り皆を次へ進めるように導こう、と。
(一刻を争うのじゃろ?それに、精霊が火を嫌うのならワシはおらんほうがいい)
あの一匹だけであったとは思えない。
後数歩すれば気付かれる、そんな時であった。何を思ったか、雑魔は方向を180度変え、尾をハンター達へ向けて遠くに消えてしまった。
犬達が落ち着いたのを確認し、全員は草影を抜ける。
「何だったんだ?」
「今は先を急ぎましょう」
訝しむザレム。しかし、ウコンが言うように今はそんなことを気にしている場合ではない。
●
こちらはクアンタ達の組だが、彼らには拍子抜けする程にここまで何もなかった。
背後ではルンルンが、自らの歩いた場所を忘れぬよう札を石の下に敷いておいた。
「ニンジャの知恵なのです」
と胸をはり一言。
本人曰く忍者らしく、ゴシキマイ、が良かったそうだが……
何もない。しかし、仮にも聖域と名付けられていた場所だ、何もない筈もない。そう誰よりも慎重であったクオンは警戒し、超聴覚と超嗅覚を持ったクアンタがそれに気付いた。
彼女は獣耳を動かし、気配に気付く。だが、皆に声をかける前に巨大な鉤爪が頬の隣を通り過ぎる。
クアンタの視線の先、鈍く光るものが彼女の目に映った。
(っ……今、翼に)
「クアンタ殿!」
いつの間にか、そう現せる物の如くそこに梟型の歪虚がいたのだ。
フォォ゛ォオ
轟く声に全員は鼓膜を震わせていれば、草むらより狼型の歪虚が出現したのだ。全員が直ぐ様交戦に入る。
それなりに身を隠して進んでいた彼らを造作もなく見つけたのだ、逃げたとしても追ってくるのは目に見えている。
恐らく、何かしらでハンター達を感知したのだろう。
「えいっ!」
最初に攻撃を放ったのは、後方に控えていたクオン。ショットアンカーより、雷撃を射出。しかし、それは軌道を読みきっていたかのように梟には回避される。
次いで射られたのは真の貫徹の矢。
「……早いな」
これもまたかわされる。幾ら明かりがあると言えど、煌々と言うわけではない。
「ここでトラップカード発動…じゃあさよならです」
ルンルンの放つ地縛符。泥塊が沸き上がり、足を踏み入れた狼型の歪虚を絡めとる。
しかし、梟型は空を舞い。地面の影響は受けないようだ。
「邪魔ですっ!」
クアンタはワイヤーを発射。地面に触れないならば、落としてしまえと言う発想だ。
しかし、それも当たれば可能な策と言えよう。
一刃すら加えられないまま、数十秒の時が過ぎようとしたその時だった……
――アンタ殿!―――じゃ。
声が走る。それも耳ではない、頭にだ。それは別れたディヤーからのエレメンタルコールであった。
「ディヤーくんからです」
梟が嘶き新たな手下を呼ばんとする声を遮るように、クアンタがそれを大声で伝えた。
「なんだって?」
「今、目的地に着いた。けど、予定が狂って探す場所が一つずれてしまったと言ってました」
真は考えた。ジェットブーツを装備している自分なら、確かに梟を撒いて目的地にたどり着けるだろうと。
しかし、この梟をヴァーシュラにのいる辺りに近付けて良いものか。まだ少年はみつかっていないのだ。
(良いわけないな……となれば、やることは)
「ルンルン向こうに伝えて欲しい。梟と交戦、排除を優先する、だな」
「わかりました! 助け合いのニンジャ☆テレカ」
●邂逅
ディヤー達はルンルンの符の連絡を受けてから、更に二組に散った。
「ウコンさん、ヴァーシュラくんが見つかったら、怒る以外の事もしてあげて下さいねぇ」
「は……はい」
ハナの一言に、何とも煮え切らない答えのウコン。
(寧ろ何を言えばいいかすら、わかってねぇ気がする)
そんな一抹の不安を抱きつつも、真司はウコンとディヤーと共に、ハナはザレムと共に失踪した彼を探すことにしたのだ。
●邂逅
「ヴァーシュラくん、殺されに行ったような気がするんですよねぇ…」
「藪から棒だな」
「だって精霊に復讐を願うだけならウコンさんと一緒に来ればいいじゃないですかぁ」
かわいい声色に潜むハナの真意に、ザレムは肯定も否定もしない。考えたくはない。が、前回の戸惑う彼を、耳をひたすらおさえ続ける喚く彼を見てしまっているのだ。
グルルルル…
シバの様子がおかしい。何かにとてつもない怖れを抱いている。
同時にハナも気付く。感知をしているのに、目の前のそれは映らない。
ザレムが後方に控えつつ、臨戦態勢に入る。まだ遠くてわからないが、人型だろう。
「ガキの迎えかぁ……クフフフ」
此方に気付いた。すると、人影は踵を返して青年男性の声でこう言う。
「ガキに伝えとけ、いつでも待っているってなぁ!!」
瞬間だった。人影が光った。瞬間何かが風を巻き上げ飛び立つ。月明かりのない夜空に、ただ白だけが浮かび上がる。
その風圧は、かつて彼らが集落前で感じたそれであった。
「私がここに来たのは…ヴァーシュラくんの保護と歪虚をブッコロするためですぅ!」
ハナが幾多の符を虚空に放ち、それらは飛影に向かい極光を穿たんと発光する。
眩い攻撃が終われば、それをものともせず影は立ち去るのであった。
「う、うそでしょお?」
●
ヴァーシュラを見つけたのは、真司であった。と言うのも、ウコン曰く聖域の奥にはいくつか祠と言うものがあるらしく、そこを探すとその傍らに座っていたのだ。
「やっと見つけたぜ。出掛けるなら一声掛けないと残された奴が心配するだろ?」
「っ……」
彼は喋らない。黙って出ていったことを怒られると思って怖れているのか、はたまた別の理由か真司にはわからない。
ヴァーシュラに抵抗の意思はない。どうやら強引な手段に出る必要はないと、彼は胸を撫で下ろした。
合流したのは同じくディヤーとウコン。胸を撫で下ろし、安心するディヤー。
「あーあー、聞こえるかの。彼を発見したぞ」
それとは違い、真司が心配した通り、ウコンは何を話すか決めあぐねている。
やがて、ハナとザレムが口伝符の知らせを聞いて合流した。
「ヴァーシュラくん、悔しくないですぅ。折角生き残ったのに歪虚の影に囚われて命まで捧げるなんてぇ」
ハナの言葉に、この人は何が言いたいんだ、と言う戸惑いをヴァーシュラは見せる。
「怖いなら、哀しいなら、悔しいなら…全部まとめて引き受けますよぅ。私が歪虚をブッコロしますぅ。だから生きて一緒に帰りましょぉ。その気持ちを全部怒りに変えて、一緒に生き抜いてみませんかぁ」
気持ちを目一杯入れた説得に、ヴァーシュラはこう告げた。
「どうして怒るの?」
ハナは言葉に詰まってしまった。そう、彼はまだ、恨みと言うものが、報復と言うものがわかっていないのだ。いや、実は知っていたのかも知れない。けどそれは、全て恐怖と言う感情で塗り潰されてしまったのだろう。あの事件のせいで。
次に話かけたのはザレムだ。彼は何故、ここに来たのか質問した。
「絶望したら……来い、って」
ザレムはそれは誰が、いつ、と問おうとして口を閉じた。今、また記憶の蓋を抉じ開けたら
彼はまた壊れかけてしまう。
(それに察しはついている)
当てはまるのは一人しかいない。
「君の辛さも痛みも、耐え難いものかもしれない。けど、君が選ぼうとしてる選択は、もっと大勢の人に君と同じ辛さを齎すよ」
「…わかんない。けど怖い。まだ聴こえる…」
「どうしたらいいのかを一緒に考えよう」
悲しさや辛さはゆっくり減らしていける、そう言って裂かれまだ動きのぎこちない体躯でヴァーシュラの肩を擦った。
そこで初めてザレムの姿に気付き、少年は声をあらげる。
「命がかかっていたんだ寝てられん。そして、俺はヴァーシュラを諦めない」
●
当たりはしないものの、梟にとって彼らの攻撃は目障りなものでしかなかった。
反撃の鎌鼬が、詠唱間近であったルンルンに襲いかかる。
「キャァ…ァ゛」
運悪く頭を掠めた一撃に、彼女の体を吹っ飛び打ちつけられ、夥しい赤を聖域に残す。
「ルンルンさん!」
同時に飛び掛かる狼型の雑魔。しかし、こちらは運よく辺りどころが悪く、ルンルンを傷付けることは叶わない。
「シューリンガーリリカルクルクルマジカル!!」
狙いすました稲妻が、狼を頭上から灼いて後には何も残さない。倒れるルンルンに駆け寄り、クオンが治癒を行っていく。
敵が決して強いワケではない。ただ、条件が悪すぎたのだ。クアンタとしては、ヴァーシュラが見つかった今逃走したいのだが、ここは梟のホーム。
(どうすれば逃げきれるでしょうか)
――聴こえる?
困り果てていた時だ。真の口伝符が力を放ち、頭の中へ声が注ぎ込まれる。
「ヴァーシュラ! みんな、心配していたぞ」
真の声に、一同が彼に注目する。
「よかった……ヴァーシュラくん…」
泣きでもしたのか、喉を枯らしながら声の主はこう言った。
――少し、西行くと洞窟の抜け道ある。そこから逃げて――
「わかった。きみたちも無事で」
真は言葉をそのまま伝えてから、全員は西へと走った。後から梟も追い掛けてくるが気にしていられない。
やがて、真は洞窟と言うには低い入口、そして子供の者と思われる足跡を発見し、そこへみんなを先導するように潜り込んだ。
殿であったクアンタは一度だけ、梟へと振り返る。
「……」
「クアンタさん、早く!」
「……はい」
本当はもっと強かった筈。
だが、梟は弱体化していたのだ。それは古い弾によって抉られた片翼。
何故銃弾がそこにあったか。それは集落襲撃者の追放理由、を見れば自ずと気付いてしまうだろう。現にクアンタは何とも言い難い気持ちで、この場を去ったのだから……
……「コイツぁもう、無理そうか。となると次はアイツかぁ」
「おや、久しぶりじゃの。怪我は、まだかの」
「ええ、こっちの傷は後少し……ね」
ヴァーシュラの部屋をさぐりながら、メティの話を聞いていた。
「うむ、あの屋敷を出た何者か。恐らくじゃが、ヴァーシュラの話に出てきたものであろう」
沈黙。だがそこには『やはり』と言う言葉をメティが感じている様な気がした。
「メティ殿。これを借りてよいかの」
ディヤーが手にしたのは、ぐっしょりと濡れたシーツであった。恐らく、濡らしたのはヴァーシュラに違いない。
一枚のシーツを重くするほどの想いを、彼は背負こんでいたのだろう。
「ええ、後で彼に伝えるわ……どうかお願いするわ、弟のような話はもうイヤなの」
●
聖域へは、二班に別れて探すこととなった。
「ジュゲームリリカルクルクルマジカル…ルンルン忍法ニンジャ☆テレカ~! 何かあったらこれで連絡しあって、効率良く捜索進めちゃいましょう」
奇妙な登場音楽と共にルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)は、符をみんなに渡した。
それは口伝符。もしもの時の為の連絡手段となるだろう。札を受け取りながら、ウコンならびにハンター達はそれぞれの入り口に向かった。
(…何かが起こってしまう前に、間に合えば良いが)
鞍馬 真(ka5819)は、LEDライトを片手に思うところがあった。ヴァーシュラは、前にあった依頼の被害者。その唯一の目撃者、と言ってもおかしくない。その悲惨な集落跡を彼も目撃したのだ。
笛の音と共に見送るものを、これ以上増やしたくはない。
「どうか無事でいて……」
わんこを抱え、ランタンを片手に一人思うのはクアンタ(ka4214)だ。
「行きましょう」
「はい! プロカードゲーマーとしては放って何ておけないもの!」
「…………」
三人がそれぞれの決意を持って聖域に踏み出し、クオン・サガラ(ka0018)がそれから少し下がった位置を歩く。この一件は、ただの失踪事件ではない。どこかでそんな考えがクオンにはあった。誰も口には出さないが、どこかで有り得る可能性なのだ。
今は、真相が見えない限り行動は慎重にかつ真意を晒さない様、なるべく顔には出さないでおこう。
(最悪…討伐も?)
●
聖域の入口にて、ザレム・アズール(ka0878)は篝火を設置していた。聖域内部は、レーダーの類いは使えない。この篝火の煙があれば、もしもの帰りの道標になるだろう。
「ザレム殿は無理をされるな」
「ザレムくん、大変なら言ってくださいねぇ?荷物持ちますよぅ」
「無茶はしないつもりだ。ウコン、貴方もな」
彼からの返事はない。気に病むな、と言っても無理な話なのだろう。
「疑り深いって言われちゃうとそれまでなんですけどぉ」
と前おいてから星野 ハナ(ka5852)がウコンに問う。聖域は本当に、未だ聖域のままなのか、と。
「オントがその憎悪を聖域に向けてないって言いきれますぅ?」
「わかりません。しかし、我先にと集落を襲ったようです」
恨みは、ヒトにあった。ウコンは短くそう語る。
「……そっかぁ」
こうして、ザレム達は聖域へ踏み出し……
「まさか、ヴァーシュラが失踪するとはな。聖域で何をするつもりか知らないが急がないと嫌な予感がするぜ……っておい」
柊 真司(ka0705)が折角急いていた足を止める。目の前には大きな大きな壁、行き止まりであった。
それはまさに断崖絶壁。ロープなどで登るのは、難しい話だろう。
「ここは避けていこう」
中央に位置するザレムの提案に、否定的なものはいなかった。
「けど、どう行きますぅ?」
「ワシに任せるのじゃ」
「俺に任せておけ」
真司は何かを確認するよう照明を動かし、ディヤーは姉弟子から借りてきた犬に先程のシーツを嗅がせた。
「「よし、こっちだ!」じゃ!」
ディヤーは犬を追って、真司は自らの直感を信じて、同じ道を指し示す。
犬はともかく、っと何とも言えない気持ちになりつつも、他の面子も後に続くのであった。
ハナは道すがら、常に生命感知を使ってヴァーシュラの居場所を探っていた。
「う~ん、反応いっぱいだよぉ」
聖域のあちらこちらと反応があり、夜であるためか、動いていない反応も多い。それがヴァーシュラであるかを確認する術がない。
「この森、雑魔以外にも普通の小動物もいますから」
恐らく、彼らも反応しているのだろう、とウコンは語ったのだ。
●
「皆のもの、隠れるのじゃ」
いくらか道を歩いたところで、ザレムの猟犬シバとディヤーの犬が唸る。
歪虚だ。
急ぎ草むらの影で屈み、戦闘の回避を試みる一同。狼型の雑魔が草音を踏み締める音が、真夜中に響く。
ディヤーは考えた。もし見つかった場合、自らがここに残り皆を次へ進めるように導こう、と。
(一刻を争うのじゃろ?それに、精霊が火を嫌うのならワシはおらんほうがいい)
あの一匹だけであったとは思えない。
後数歩すれば気付かれる、そんな時であった。何を思ったか、雑魔は方向を180度変え、尾をハンター達へ向けて遠くに消えてしまった。
犬達が落ち着いたのを確認し、全員は草影を抜ける。
「何だったんだ?」
「今は先を急ぎましょう」
訝しむザレム。しかし、ウコンが言うように今はそんなことを気にしている場合ではない。
●
こちらはクアンタ達の組だが、彼らには拍子抜けする程にここまで何もなかった。
背後ではルンルンが、自らの歩いた場所を忘れぬよう札を石の下に敷いておいた。
「ニンジャの知恵なのです」
と胸をはり一言。
本人曰く忍者らしく、ゴシキマイ、が良かったそうだが……
何もない。しかし、仮にも聖域と名付けられていた場所だ、何もない筈もない。そう誰よりも慎重であったクオンは警戒し、超聴覚と超嗅覚を持ったクアンタがそれに気付いた。
彼女は獣耳を動かし、気配に気付く。だが、皆に声をかける前に巨大な鉤爪が頬の隣を通り過ぎる。
クアンタの視線の先、鈍く光るものが彼女の目に映った。
(っ……今、翼に)
「クアンタ殿!」
いつの間にか、そう現せる物の如くそこに梟型の歪虚がいたのだ。
フォォ゛ォオ
轟く声に全員は鼓膜を震わせていれば、草むらより狼型の歪虚が出現したのだ。全員が直ぐ様交戦に入る。
それなりに身を隠して進んでいた彼らを造作もなく見つけたのだ、逃げたとしても追ってくるのは目に見えている。
恐らく、何かしらでハンター達を感知したのだろう。
「えいっ!」
最初に攻撃を放ったのは、後方に控えていたクオン。ショットアンカーより、雷撃を射出。しかし、それは軌道を読みきっていたかのように梟には回避される。
次いで射られたのは真の貫徹の矢。
「……早いな」
これもまたかわされる。幾ら明かりがあると言えど、煌々と言うわけではない。
「ここでトラップカード発動…じゃあさよならです」
ルンルンの放つ地縛符。泥塊が沸き上がり、足を踏み入れた狼型の歪虚を絡めとる。
しかし、梟型は空を舞い。地面の影響は受けないようだ。
「邪魔ですっ!」
クアンタはワイヤーを発射。地面に触れないならば、落としてしまえと言う発想だ。
しかし、それも当たれば可能な策と言えよう。
一刃すら加えられないまま、数十秒の時が過ぎようとしたその時だった……
――アンタ殿!―――じゃ。
声が走る。それも耳ではない、頭にだ。それは別れたディヤーからのエレメンタルコールであった。
「ディヤーくんからです」
梟が嘶き新たな手下を呼ばんとする声を遮るように、クアンタがそれを大声で伝えた。
「なんだって?」
「今、目的地に着いた。けど、予定が狂って探す場所が一つずれてしまったと言ってました」
真は考えた。ジェットブーツを装備している自分なら、確かに梟を撒いて目的地にたどり着けるだろうと。
しかし、この梟をヴァーシュラにのいる辺りに近付けて良いものか。まだ少年はみつかっていないのだ。
(良いわけないな……となれば、やることは)
「ルンルン向こうに伝えて欲しい。梟と交戦、排除を優先する、だな」
「わかりました! 助け合いのニンジャ☆テレカ」
●邂逅
ディヤー達はルンルンの符の連絡を受けてから、更に二組に散った。
「ウコンさん、ヴァーシュラくんが見つかったら、怒る以外の事もしてあげて下さいねぇ」
「は……はい」
ハナの一言に、何とも煮え切らない答えのウコン。
(寧ろ何を言えばいいかすら、わかってねぇ気がする)
そんな一抹の不安を抱きつつも、真司はウコンとディヤーと共に、ハナはザレムと共に失踪した彼を探すことにしたのだ。
●邂逅
「ヴァーシュラくん、殺されに行ったような気がするんですよねぇ…」
「藪から棒だな」
「だって精霊に復讐を願うだけならウコンさんと一緒に来ればいいじゃないですかぁ」
かわいい声色に潜むハナの真意に、ザレムは肯定も否定もしない。考えたくはない。が、前回の戸惑う彼を、耳をひたすらおさえ続ける喚く彼を見てしまっているのだ。
グルルルル…
シバの様子がおかしい。何かにとてつもない怖れを抱いている。
同時にハナも気付く。感知をしているのに、目の前のそれは映らない。
ザレムが後方に控えつつ、臨戦態勢に入る。まだ遠くてわからないが、人型だろう。
「ガキの迎えかぁ……クフフフ」
此方に気付いた。すると、人影は踵を返して青年男性の声でこう言う。
「ガキに伝えとけ、いつでも待っているってなぁ!!」
瞬間だった。人影が光った。瞬間何かが風を巻き上げ飛び立つ。月明かりのない夜空に、ただ白だけが浮かび上がる。
その風圧は、かつて彼らが集落前で感じたそれであった。
「私がここに来たのは…ヴァーシュラくんの保護と歪虚をブッコロするためですぅ!」
ハナが幾多の符を虚空に放ち、それらは飛影に向かい極光を穿たんと発光する。
眩い攻撃が終われば、それをものともせず影は立ち去るのであった。
「う、うそでしょお?」
●
ヴァーシュラを見つけたのは、真司であった。と言うのも、ウコン曰く聖域の奥にはいくつか祠と言うものがあるらしく、そこを探すとその傍らに座っていたのだ。
「やっと見つけたぜ。出掛けるなら一声掛けないと残された奴が心配するだろ?」
「っ……」
彼は喋らない。黙って出ていったことを怒られると思って怖れているのか、はたまた別の理由か真司にはわからない。
ヴァーシュラに抵抗の意思はない。どうやら強引な手段に出る必要はないと、彼は胸を撫で下ろした。
合流したのは同じくディヤーとウコン。胸を撫で下ろし、安心するディヤー。
「あーあー、聞こえるかの。彼を発見したぞ」
それとは違い、真司が心配した通り、ウコンは何を話すか決めあぐねている。
やがて、ハナとザレムが口伝符の知らせを聞いて合流した。
「ヴァーシュラくん、悔しくないですぅ。折角生き残ったのに歪虚の影に囚われて命まで捧げるなんてぇ」
ハナの言葉に、この人は何が言いたいんだ、と言う戸惑いをヴァーシュラは見せる。
「怖いなら、哀しいなら、悔しいなら…全部まとめて引き受けますよぅ。私が歪虚をブッコロしますぅ。だから生きて一緒に帰りましょぉ。その気持ちを全部怒りに変えて、一緒に生き抜いてみませんかぁ」
気持ちを目一杯入れた説得に、ヴァーシュラはこう告げた。
「どうして怒るの?」
ハナは言葉に詰まってしまった。そう、彼はまだ、恨みと言うものが、報復と言うものがわかっていないのだ。いや、実は知っていたのかも知れない。けどそれは、全て恐怖と言う感情で塗り潰されてしまったのだろう。あの事件のせいで。
次に話かけたのはザレムだ。彼は何故、ここに来たのか質問した。
「絶望したら……来い、って」
ザレムはそれは誰が、いつ、と問おうとして口を閉じた。今、また記憶の蓋を抉じ開けたら
彼はまた壊れかけてしまう。
(それに察しはついている)
当てはまるのは一人しかいない。
「君の辛さも痛みも、耐え難いものかもしれない。けど、君が選ぼうとしてる選択は、もっと大勢の人に君と同じ辛さを齎すよ」
「…わかんない。けど怖い。まだ聴こえる…」
「どうしたらいいのかを一緒に考えよう」
悲しさや辛さはゆっくり減らしていける、そう言って裂かれまだ動きのぎこちない体躯でヴァーシュラの肩を擦った。
そこで初めてザレムの姿に気付き、少年は声をあらげる。
「命がかかっていたんだ寝てられん。そして、俺はヴァーシュラを諦めない」
●
当たりはしないものの、梟にとって彼らの攻撃は目障りなものでしかなかった。
反撃の鎌鼬が、詠唱間近であったルンルンに襲いかかる。
「キャァ…ァ゛」
運悪く頭を掠めた一撃に、彼女の体を吹っ飛び打ちつけられ、夥しい赤を聖域に残す。
「ルンルンさん!」
同時に飛び掛かる狼型の雑魔。しかし、こちらは運よく辺りどころが悪く、ルンルンを傷付けることは叶わない。
「シューリンガーリリカルクルクルマジカル!!」
狙いすました稲妻が、狼を頭上から灼いて後には何も残さない。倒れるルンルンに駆け寄り、クオンが治癒を行っていく。
敵が決して強いワケではない。ただ、条件が悪すぎたのだ。クアンタとしては、ヴァーシュラが見つかった今逃走したいのだが、ここは梟のホーム。
(どうすれば逃げきれるでしょうか)
――聴こえる?
困り果てていた時だ。真の口伝符が力を放ち、頭の中へ声が注ぎ込まれる。
「ヴァーシュラ! みんな、心配していたぞ」
真の声に、一同が彼に注目する。
「よかった……ヴァーシュラくん…」
泣きでもしたのか、喉を枯らしながら声の主はこう言った。
――少し、西行くと洞窟の抜け道ある。そこから逃げて――
「わかった。きみたちも無事で」
真は言葉をそのまま伝えてから、全員は西へと走った。後から梟も追い掛けてくるが気にしていられない。
やがて、真は洞窟と言うには低い入口、そして子供の者と思われる足跡を発見し、そこへみんなを先導するように潜り込んだ。
殿であったクアンタは一度だけ、梟へと振り返る。
「……」
「クアンタさん、早く!」
「……はい」
本当はもっと強かった筈。
だが、梟は弱体化していたのだ。それは古い弾によって抉られた片翼。
何故銃弾がそこにあったか。それは集落襲撃者の追放理由、を見れば自ずと気付いてしまうだろう。現にクアンタは何とも言い難い気持ちで、この場を去ったのだから……
……「コイツぁもう、無理そうか。となると次はアイツかぁ」
依頼結果
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 クアンタ(ka4214) 人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/03/27 23:23:23 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/03/27 20:08:04 |