ゲスト
(ka0000)
【AP】黒猫エイプリルと夢の遊園地
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/08 12:00
- 完成日
- 2016/04/12 22:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
目を覚ましたあなたの前に、一匹の黒猫がいた。
置物のようにお座りして、好奇心旺盛な目でこちらを見ている。
周囲を見渡す。見たことのない場所だ。賑やかな音楽に彩られ、広場では緑豊かな木々が揺れ、奥には大きな観覧車が優雅に回っている。
空は暗く夜だというのに、様々な照明によってまるで日中のように周りは明るい。宝石箱というには輝きすぎていて、少し眩しいほどだ。
「ようこそにゃ。ここはニャーこと黒猫エイプリルの経営する遊園地にゃ」
エイプリルと名乗った黒猫は当たり前のように二本足で立ち、両手を腰に当てた。堂々とした態度に、あなたは呆気にとられる。
「何にゃ? 人間の言葉を話すのが不思議? そんなの愚問にゃ。ニャーはエイプリルだからにゃ。ニャフフ」
目を細め、口元に手を当てた独特の笑い方だった。あまりに常識離れしている。あなたは疑問をそのまま声に出す。
「ここはどこかって? さっき教えたにゃ。遊園地にゃ。ただし現実ではない、夢の世界のだけどにゃ」
エイプリルの大きな金色の瞳が、楽しそうな輝きを放つ。
「脱出する方法は簡単にゃ。決められた時間以内に、ニャーを捕まえるのにゃ。追いかけっこにゃ。ニャフフ」
エイプリルの背後に存在するのは広大な遊園地。全体は巨大な正方形で、均等に四等分された各ブロックに分かれている。
出入口となるゲートを抜けて右側へ行くと迷路ゾーン。乾いたオレンジの土の上が舞台となる。行く手を遮るのは高さ二メートルほどの石の壁。エイプリルは言う。迷い込んだら出てこれないにゃよと。
左側は休憩所もかねた様々な花々の咲く広場。ベンチなど体を休めるスペースがあり、使われていないのに設備の整った屋台がある。さらにはヒーローショーでも開催できそうなステージまで。
右上には、なんともおどろおどろしい洋館がある。一階建てだが敷地面積はかなり大きい。中庭や裏庭まであり、そこだけ闇が深いかのように薄暗い。見るからにお化け屋敷という感じである。
左上にはメリーゴーランドやジェットコースター、さらには回るコーヒーカップにゴーカートのコースまであった。最奥に大きな観覧車が、存在感たっぷりに設置されている。
「どうにゃ。これぞまさしく夢の遊園地にゃ。お前たちはニャーによって招待されたのにゃ。感謝するにゃ。にゃ? ニャーを捕まえられなかったらどうなるか? そんなの決まってるにゃ。夢から覚めて、勝手に現実世界へ戻るのにゃ」
エイプリルの話が本当であれば、夢の世界に閉じ込められる心配はなさそうだ。しかし、とあなたは思う。それなら別に追いかけっこをしなくてもいいのではないかと。
素直に伝えてみたところ、黒猫のエイプリルは愕然として冷や汗を流し始めた。
「にゃ、にゃ、んにゃにゃ。そ、そうだにゃ。ニャーを時間内に捕まえられないと、観覧車からドヤ顔で見下ろされてしまうのにゃ。これは屈辱にゃ。絶対嫌なはずなのにゃ! 避けるためにはニャーを捕まえてみせるのにゃ!」
ついてこいとばかりに、二本足で立っているエイプリルはあなたを勢いよく手招きする。
「最初の関門は迷路にゃ。次にお化け屋敷。そのあとでちょっと休憩して、最後は乗物スペースにゃ。ニャーが観覧車へ乗り込むまでの間に捕まえられたら、そっちの勝ちにゃ。さあ、勝負にゃ!」
そう言うとエイプリルは、光煌めく遊園地の中へと黒い身を躍らせた。
目を覚ましたあなたの前に、一匹の黒猫がいた。
置物のようにお座りして、好奇心旺盛な目でこちらを見ている。
周囲を見渡す。見たことのない場所だ。賑やかな音楽に彩られ、広場では緑豊かな木々が揺れ、奥には大きな観覧車が優雅に回っている。
空は暗く夜だというのに、様々な照明によってまるで日中のように周りは明るい。宝石箱というには輝きすぎていて、少し眩しいほどだ。
「ようこそにゃ。ここはニャーこと黒猫エイプリルの経営する遊園地にゃ」
エイプリルと名乗った黒猫は当たり前のように二本足で立ち、両手を腰に当てた。堂々とした態度に、あなたは呆気にとられる。
「何にゃ? 人間の言葉を話すのが不思議? そんなの愚問にゃ。ニャーはエイプリルだからにゃ。ニャフフ」
目を細め、口元に手を当てた独特の笑い方だった。あまりに常識離れしている。あなたは疑問をそのまま声に出す。
「ここはどこかって? さっき教えたにゃ。遊園地にゃ。ただし現実ではない、夢の世界のだけどにゃ」
エイプリルの大きな金色の瞳が、楽しそうな輝きを放つ。
「脱出する方法は簡単にゃ。決められた時間以内に、ニャーを捕まえるのにゃ。追いかけっこにゃ。ニャフフ」
エイプリルの背後に存在するのは広大な遊園地。全体は巨大な正方形で、均等に四等分された各ブロックに分かれている。
出入口となるゲートを抜けて右側へ行くと迷路ゾーン。乾いたオレンジの土の上が舞台となる。行く手を遮るのは高さ二メートルほどの石の壁。エイプリルは言う。迷い込んだら出てこれないにゃよと。
左側は休憩所もかねた様々な花々の咲く広場。ベンチなど体を休めるスペースがあり、使われていないのに設備の整った屋台がある。さらにはヒーローショーでも開催できそうなステージまで。
右上には、なんともおどろおどろしい洋館がある。一階建てだが敷地面積はかなり大きい。中庭や裏庭まであり、そこだけ闇が深いかのように薄暗い。見るからにお化け屋敷という感じである。
左上にはメリーゴーランドやジェットコースター、さらには回るコーヒーカップにゴーカートのコースまであった。最奥に大きな観覧車が、存在感たっぷりに設置されている。
「どうにゃ。これぞまさしく夢の遊園地にゃ。お前たちはニャーによって招待されたのにゃ。感謝するにゃ。にゃ? ニャーを捕まえられなかったらどうなるか? そんなの決まってるにゃ。夢から覚めて、勝手に現実世界へ戻るのにゃ」
エイプリルの話が本当であれば、夢の世界に閉じ込められる心配はなさそうだ。しかし、とあなたは思う。それなら別に追いかけっこをしなくてもいいのではないかと。
素直に伝えてみたところ、黒猫のエイプリルは愕然として冷や汗を流し始めた。
「にゃ、にゃ、んにゃにゃ。そ、そうだにゃ。ニャーを時間内に捕まえられないと、観覧車からドヤ顔で見下ろされてしまうのにゃ。これは屈辱にゃ。絶対嫌なはずなのにゃ! 避けるためにはニャーを捕まえてみせるのにゃ!」
ついてこいとばかりに、二本足で立っているエイプリルはあなたを勢いよく手招きする。
「最初の関門は迷路にゃ。次にお化け屋敷。そのあとでちょっと休憩して、最後は乗物スペースにゃ。ニャーが観覧車へ乗り込むまでの間に捕まえられたら、そっちの勝ちにゃ。さあ、勝負にゃ!」
そう言うとエイプリルは、光煌めく遊園地の中へと黒い身を躍らせた。
リプレイ本文
●
姿を消した黒猫エイプリルを追いかける前に、その場から忽然と姿を消した者がいる。星野 ハナ(ka5852)だ。
「好きなものが出てくる屋台があるなら、小腹を満たすに決まってますぅ!」
エイプリルを捕まえるという当初の目的を真っ先に忘れ、屋台のある自然公園を目指してひとりで疾風のごとく突っ走る。
目当ての屋台を見つけると、飛びつかんばかりの勢いでハナは食べたいものを強く願う。
「満漢全席! できますかぁ!」
文字どおり、ポンという感じでハナの目の前に何十種類あるかわからない料理が出現した。
「うまっ……うま~! っこれは胃袋滾りますよぅ!」
■
「黒猫エイプリルの方は……放っておいて遊園地を楽しみましょうか。とはいえ、彼に勝ったと思われるのは少々、嫌ですね。観覧車から降りてきたところで、上下関係というものを叩き込みましょうか」
あえてエイプリルを追わなかったエルバッハ・リオン(ka2434)が、最初に立ち寄ったのはおどろおどろしい洋館――お化け屋敷だった。
一番乗りかと思いきや、お化け屋敷の入口には央崎 遥華(ka5644)がいた。
「いかにもな洋館! あー……このゴシックホラーな雰囲気、いい……」
目の前の洋館を見上げる遥華は、まるで想い人を見つめる乙女のごとくうっとりしていた。
あちこち見て回ろうと思い視線を下げていくと、この場にやってきていたエルバッハと唐突に目が合った。
「……ひきました?」
「いえ、特に。それより入らないのですか?」
「そ、そうですね。エイプリルくん? ちゃん? がまだですけど、先にお化け屋敷で待ってましょう。うふふ」
遥華の浮かべた笑顔は、とても幸せそうだった。
■
「わー、わー、エイプリルさんが言ってる観覧車ってあのおっきな車輪? 初めて見るものばっかり。お星様みたいにキラキラしてる」
好奇心と興奮に瞳を輝かせるシルフェ・アルタイル(ka0143)が、猛ダッシュでエイプリルを追いかける。
背中が見えるなり捕まえるのではなく、横を並走する。
「エイプリルさん! シルも一緒に捕まる役やるー!」
「何ニャ!? ほ、本気で言ってるのニャ!?」
にこにこ笑顔で頷くシルフェ。楽しく遊びたいという気持ちが、オーラみたいに全身から滲み出している。
追いかけさせてハンターと遊ぼうと考えていたエイプリルと目的は同じ。提案を拒む必要はなかった。
ピンと伸びたヒゲを右手で摩りながら、エイプリルはぴょんとシルフェの頭に乗った。
「では、まず迷路に向かうのニャ!」
■
ひとりぶらぶらと歩いていた龍崎・カズマ(ka0178)は、足を止めて考え込むように腕を組んだ。
「どうにも場違いな感じがするな。嫌じゃねえんだけどな。もっと相応しい奴が――あン?」
騒々しい雰囲気を感じてそちらを見れば、シルフェとエイプリルが戯れていた。
シルフェという同行の友を得て気を良くしたらしいエイプリルの声が、夜風に乗ってカズマの元まで届く。
「普段は一匹ぼっちだから、誰かと一緒は楽しいのニャ。ニャフフ」
カズマは自らの足元へ視線を落とし、金色の髪を右手でポリポリと掻いた。
「あの黒猫……エイプリルっつったか。もしかしたら、皆で楽しみたいだけなのかもな。……不器用な奴だ」
人のことは言えねえかもしれねえけどな。口の中で呟きつつ、カズマは靴先の向きを変えた。エイプリルの方へ。
■
「遊園地か、懐かしいな。リアルブルーにいた小さい頃、迷子になったのを今も鮮明に覚えてるよ」
当時を思い出し、央崎 枢(ka5153)は微かな笑みを浮かべた。
大はしゃぎして迷子になった枢は、寂しさと不安で泣いてしまった。助けに来てくれたのは姉の遥華だった。
しかしその後、見つけてくれた遥華も枢を先導して迷子になるというおまけ付きではあったが。
それでも大切な思い出だ。遥華にも覚えてるか聞いてみようと、枢は後ろを振り返る。
「いつの間にかいなくなってるね。まさか迷子でもないだろうし、別行動でも――お、猫みーっけ」
視界に黒猫が飛び込んできたまではよかったが、そのエイプリルが乗っている人物を目にして枢はポカンとする。
「何でシルフェの頭に乗ってんだ? あれは捕まえたうちに入らないのか。あっ! 転ばないように気をつけろよー? あと壁は登らないように!」
きちんと聞こえていたらしい。守ってくれるかどうかはともかく、シルフェが元気一杯に「はーい」と返事をした。
楽しそうにはしゃぐひとりと一匹の姿に、枢は苦笑する。あの子らを見てると小さい頃を思い出すね、と。
■
「皆、お揃いだな。せっかくだから、一時休戦して一緒に出口を探そう」
迷路の入口で待っていたザレム・アズール(ka0878)は、エイプリルとシルフェ、それに枢の姿を見つけるなり提案した。
何がなんでも捕まえられたくないというより、遊びたいを主な目的としているエイプリルは仕方ないニャと言いつつ応じてくれた。
それはよかったとザレムは笑顔を作る。一緒に出口を探すというのは実は建前で、エイプリルと楽しく遊びたいと考えていた。
だからこそあえて地図を手にせず、ザレムが先頭で迷路へ入った。
「意外と複雑な迷路だな。だが心配はいらないぞ。迷ったりしないように、分かれ道には目印を置いてきたからな。ニボシなんだが、食べないように――」
「エイプリルさん。お魚さんがあるよー。はい、あーん」
「――遅かったみたいだな」
振り向いたザレムが見たのは、シルフェが楽しそうに頭から降りたエイプリルへニボシを食べさせている光景だった。
どうやらニボシと聞いたエイプリルが催促し、シルフェに食べさせてもらったようだ。
「まあ、いいじゃねえか。迷路だってんだから、迷いながら遊んでやるとしようぜ」
ザレムの肩に軽く手を置いたのは、迷路の中で一行に追いついてきたカズマだった。
■
館の中は薄暗く、様々な光に彩られている園内よりも視界は悪かった。ランプは持たされていないため、足元に注意しながらエルバッハは歩く。
出口を探し歩くエルバッハを驚かせようと、至るところから人形が飛び出してくる。今は猫吸血鬼の人形が、目を赤色に光らせて牙を剥いている最中だ。
「人形ですか。意外と精巧にできていますね」
じっくり観察したあとで、猫吸血鬼と目を合わせる。相手は一生懸命だが、エルバッハは微塵も恐怖を感じてはいなかった。
身振り手振りでどうして驚かないのか、猫吸血鬼が尋ねてくる。
「まあ、今まで潜り抜けてきた死線からすれば、この程度の脅かしはどうということはないです」
きっぱりと言い切られた猫吸血鬼を始め、他の脅かし役の猫人形たちは揃ってしょぼーんと肩を落として帰っていった。
■
「――はっ! ついついうっかり夢中になって本を読んでしまいました」
エルバッハと一緒に応接室へ案内される際、遥華は猫執事に書斎の場所を聞いた。
猫執事が行方不明になったのをきっかけに、エルバッハと別行動をして書斎に入った。
本棚に並ぶ数多くの本を数冊手に取り、室内の椅子に座った遥華はティータイムを楽しむかのように読み耽ってしまったのである。
読み終えた本を棚に戻していると、入口付近から扉の開く音がした。
「あら。どなたかいらっしゃったみたいですね」
書斎を出て廊下から出入口を見ると、カズマ、シルフェそれにエイプリルが丁度、館へ入ってきたところだった。
■
ドアのすぐ近くにある客間を開けると、タキシードを着て口髭を生やした猫が二本足で立っていた。
「お、こいつが猫執事か。確かついていけばよかったんだよな」
ズカズカと館内を進んでいくカズマの後ろを、おっかなびっくりといった感じでシルフェとエイプリルが歩く。
皆様、ようこそいらっしゃいました――。
透き通るような女性の声。闇の中にボウっと浮かぶ白い影。さらには人魂のように揺れる金色の塊。
「でぇぇえたぁぁニャァァァ!」
鼻水まで垂らして、エイプリルは失神しそうになった。
だがすぐに「私です、私」という声がした。エイプリルが勝手に幽霊だと思ったのは遥華だったのである。
「遥華はどうして洋館の主みたいになってるのニャ。心臓が止まるかと思ったニャ」
なんとか冷静さを取り戻したエイプリルは、適当なところに手を置いてため息を吐いた。
棚か何かだと思っていたら、エイプリルが手を置いていたのは禍々しい猫吸血鬼だった。
エイプリルが悲鳴を上げる前に、笑みを浮かべた遥華が「歓迎ありがとう」と猫吸血鬼にお礼を言った。
「あ、怖くなったらおいでー。抱っこするから♪」
「だ、誰がそんな――」
エイプリルの台詞の途中で、落雷でもしたかのような大きな物音が鳴った。
いきなりの勢いのある物音には弱かったらしく、遥華とエイプリルは無意識に抱き合う形になった。
ややしてから、両者同時に現在の状態に気づく。
「こ、これはスキンシップなのニャ!」
「そ、そうですね。今のはハグです!」
まだまだ遊び足りない遥華とエイプリルは、慌てて離れた。
■
エイプリルがお化け屋敷で騒いでる頃、自然公園には人が集まりつつあった。
「あれぇ、ザレムくんも来てたですぅ? お料理、凄く美味しいですぅ」
見ればお化け屋敷を回ってきたというエルバッハも、屋台のひとつで食事をしていた。
「たまには食べ放題、飲み放題というのもいいですね」
適当に飲み食いをしつつ、形良い唇からほうと満足げな息を吐く。
屋台の設備を自由に使えるというのもあり、料理のできるザレムは食べるよりも先に調理を開始する。
完成した料理から希望者に振舞っていく。その中にはハナの姿もあった。
「……何コレ、うまっ!?」
「星野は食べっぷりが良いな。料理人冥利に尽きるよ」
頬を赤らめたハナが、ザレムをじーっと見つめる。
「……ザレムくんとザレムくんの料理に惚れちゃったのでぇ、ザレムくん私とお付き合いしませんかぁ」
「それは……告白というやつか。じゃあ、まずは互いの相性を確かめるために、一緒にどこかへ行くか」
思いもよらない返事だったのか、ま、まじでと驚くハナ。
なんだか奇妙な雰囲気になる中、ザレムの前で屋台の鉄板がじゅうと鳴った。上には調理中の焼きそばがある。
「ああっ、焼きそばが焦げてしまう。ほら、星野、皿を出せっ!」
お皿お皿と慌てたハナは、近くにあった適当なのを掴むと急いでザレムに差し出した。
「ンニャ?」
それは皿ではなくエイプリルだった。
焼きそばに集中していたザレムが気づいた頃にはもう遅く。大きく開かれたエイプリルの口へ出来立てが投入された。
熱々のを一気に頬張れば、味わう以前の問題が発生するのは当たり前。黒猫なのに顔を真っ赤にしたエイプリルが地面を転げ回る。
そこへにおいにつられた枢もやってきた。
「いいにおいがするな。焼きそばか。ホットドッグとかも出てくるかな」
エイプリルと一緒にお化け屋敷を回ったカズマや遥華、シルフェもおり、皆でしばしの休憩をとることになった。
■
楽しい時間は過ぎ去るのも早い。閉園時間が迫る中、シルフェはエイプリルと一緒に観覧車へ乗っていた。
高く高く舞い上がるように夜空へ登っていく観覧車の中で、正面に座っているエイプリルに笑いかける。
「ありがとね。見たことない物いっぱいで楽しかった! エイプリルさんは楽しかった?」
「楽しかったニャー。一生分の幸せを、今夜で失ってもいいくらいだニャ」
「えへへ。あ、そうだ。この千羽鶴を半分こしない? お友達の証拠。また逢えたらすぐわかるように」
エイプリルの耳に、シルフェは千羽鶴のアクセサリをつけてあげた。
「ニャフフ。これでニャーとシルフェは親友ニャ!」
「うんっ!」
頷いたあとで、思い出したようにシルフェはエイプリルに告げる。
「観覧車に乗ったんだから、一緒に見下ろそ? ここからならきっとゆーえんちの光がキラキラして宝石箱みたいだよ」
最後の一幕を彩るように光る矢と小さな炎が夜空を彩る。外で打ち上げてくれているのは遥華だった。
シルフェとエイプリルは、揃って観覧車から外をドヤ顔で見下ろした。
ひとりと一匹の様子を、よく見えるようにと両手を眉の位置に当てた枢が眺めていた。
「おーおー、いい顔してるわ。楽しめたかい? 黒猫。お前が望んだ夢の遊園地だ。そっから見る景色は最高だろ」
優しげな声で呟いた枢は、途中でん? と目を細める。エイプリルたちの観覧車の外に人影が見えたせいだ。
その人影はカズマだった。観覧車の外側から強引にドアを開ける。
いきなりの乱入者となったカズマの姿に、シルフェもエイプリルもビックリする。
「どうせ時間が過ぎたら戻るんだろう? だったら空から遊ぶ皆の姿を確認するといいさ」
両手でがっしりとエイプリルを掴んだカズマは、そのまま空中へダイブした。呆然とするシルフェを置いて。
結構な高さから落ちる途中で、カズマはエイプリルに声をかける。
「お前自身は楽しかったか? 俺は……そうだな、楽しかったと思うぜ。こうやって皆が笑ってるんなら、俺はそれに十分喜べる」
「ニャーは笑ってないニャ! 泣きそうだニャ! 猫殺しー!」
大急ぎでカズマの両腕から逃げ出したエイプリル。体を捻って着地体勢をとる。
さすがは夢というべきか、エイプリルだけでなくカズマなんとか無事に着地できた。
ふうと額に浮かんだ冷や汗を拭うエイプリルの前に、今度はエルバッハが立った。胸元に浮かんだ真紅の薔薇を模した紋様が、覚醒状態なのを証明している。
「さて調子に乗ったことを謝罪するか、それとも地獄を見るか。どちらがいいですか?」
例えようのない威圧感を放出するエルバッハの前で、すでに号泣中のエイプリルが許しを懇願する。
「地獄はもう見たので勘弁してほしいニャ!」
「最後のアトラクションは凄かったみたいだな。……そろそろ時間か。楽しかった、またな!」
枢が手を振り、近くにいたザレムが手を伸ばしてエイプリルの頭を撫でる。
「お別れは寂しいが、仕方ないな。いつか会いに行くよ。俺の家の猫と一緒にさ。今回はありがとう」
遥華に加えハナ、観覧車から戻ってきたシルフェ、カズマも別れの言葉を告げ、エイプリルの遊園地は幕を閉じた。
●
気がつくとハンターたちはただっぴろい草原にいた。
誰もが何をしていたか思い出せない中、遥華が「あっ」と声を上げた。
「なんだか可愛らしい黒猫さんがいます」
大きくニャーと鳴いた小さな黒猫はすぐにハンターたちへ背を向けたが、立ち去り際に一度だけ振り返った。
微笑みかけられたシルフェには、確かに見えたような気がした。
金色の瞳をした黒猫の片耳に、自分のとよく似た千羽鶴の耳飾りが一瞬だけ浮かんで消えたのを。
姿を消した黒猫エイプリルを追いかける前に、その場から忽然と姿を消した者がいる。星野 ハナ(ka5852)だ。
「好きなものが出てくる屋台があるなら、小腹を満たすに決まってますぅ!」
エイプリルを捕まえるという当初の目的を真っ先に忘れ、屋台のある自然公園を目指してひとりで疾風のごとく突っ走る。
目当ての屋台を見つけると、飛びつかんばかりの勢いでハナは食べたいものを強く願う。
「満漢全席! できますかぁ!」
文字どおり、ポンという感じでハナの目の前に何十種類あるかわからない料理が出現した。
「うまっ……うま~! っこれは胃袋滾りますよぅ!」
■
「黒猫エイプリルの方は……放っておいて遊園地を楽しみましょうか。とはいえ、彼に勝ったと思われるのは少々、嫌ですね。観覧車から降りてきたところで、上下関係というものを叩き込みましょうか」
あえてエイプリルを追わなかったエルバッハ・リオン(ka2434)が、最初に立ち寄ったのはおどろおどろしい洋館――お化け屋敷だった。
一番乗りかと思いきや、お化け屋敷の入口には央崎 遥華(ka5644)がいた。
「いかにもな洋館! あー……このゴシックホラーな雰囲気、いい……」
目の前の洋館を見上げる遥華は、まるで想い人を見つめる乙女のごとくうっとりしていた。
あちこち見て回ろうと思い視線を下げていくと、この場にやってきていたエルバッハと唐突に目が合った。
「……ひきました?」
「いえ、特に。それより入らないのですか?」
「そ、そうですね。エイプリルくん? ちゃん? がまだですけど、先にお化け屋敷で待ってましょう。うふふ」
遥華の浮かべた笑顔は、とても幸せそうだった。
■
「わー、わー、エイプリルさんが言ってる観覧車ってあのおっきな車輪? 初めて見るものばっかり。お星様みたいにキラキラしてる」
好奇心と興奮に瞳を輝かせるシルフェ・アルタイル(ka0143)が、猛ダッシュでエイプリルを追いかける。
背中が見えるなり捕まえるのではなく、横を並走する。
「エイプリルさん! シルも一緒に捕まる役やるー!」
「何ニャ!? ほ、本気で言ってるのニャ!?」
にこにこ笑顔で頷くシルフェ。楽しく遊びたいという気持ちが、オーラみたいに全身から滲み出している。
追いかけさせてハンターと遊ぼうと考えていたエイプリルと目的は同じ。提案を拒む必要はなかった。
ピンと伸びたヒゲを右手で摩りながら、エイプリルはぴょんとシルフェの頭に乗った。
「では、まず迷路に向かうのニャ!」
■
ひとりぶらぶらと歩いていた龍崎・カズマ(ka0178)は、足を止めて考え込むように腕を組んだ。
「どうにも場違いな感じがするな。嫌じゃねえんだけどな。もっと相応しい奴が――あン?」
騒々しい雰囲気を感じてそちらを見れば、シルフェとエイプリルが戯れていた。
シルフェという同行の友を得て気を良くしたらしいエイプリルの声が、夜風に乗ってカズマの元まで届く。
「普段は一匹ぼっちだから、誰かと一緒は楽しいのニャ。ニャフフ」
カズマは自らの足元へ視線を落とし、金色の髪を右手でポリポリと掻いた。
「あの黒猫……エイプリルっつったか。もしかしたら、皆で楽しみたいだけなのかもな。……不器用な奴だ」
人のことは言えねえかもしれねえけどな。口の中で呟きつつ、カズマは靴先の向きを変えた。エイプリルの方へ。
■
「遊園地か、懐かしいな。リアルブルーにいた小さい頃、迷子になったのを今も鮮明に覚えてるよ」
当時を思い出し、央崎 枢(ka5153)は微かな笑みを浮かべた。
大はしゃぎして迷子になった枢は、寂しさと不安で泣いてしまった。助けに来てくれたのは姉の遥華だった。
しかしその後、見つけてくれた遥華も枢を先導して迷子になるというおまけ付きではあったが。
それでも大切な思い出だ。遥華にも覚えてるか聞いてみようと、枢は後ろを振り返る。
「いつの間にかいなくなってるね。まさか迷子でもないだろうし、別行動でも――お、猫みーっけ」
視界に黒猫が飛び込んできたまではよかったが、そのエイプリルが乗っている人物を目にして枢はポカンとする。
「何でシルフェの頭に乗ってんだ? あれは捕まえたうちに入らないのか。あっ! 転ばないように気をつけろよー? あと壁は登らないように!」
きちんと聞こえていたらしい。守ってくれるかどうかはともかく、シルフェが元気一杯に「はーい」と返事をした。
楽しそうにはしゃぐひとりと一匹の姿に、枢は苦笑する。あの子らを見てると小さい頃を思い出すね、と。
■
「皆、お揃いだな。せっかくだから、一時休戦して一緒に出口を探そう」
迷路の入口で待っていたザレム・アズール(ka0878)は、エイプリルとシルフェ、それに枢の姿を見つけるなり提案した。
何がなんでも捕まえられたくないというより、遊びたいを主な目的としているエイプリルは仕方ないニャと言いつつ応じてくれた。
それはよかったとザレムは笑顔を作る。一緒に出口を探すというのは実は建前で、エイプリルと楽しく遊びたいと考えていた。
だからこそあえて地図を手にせず、ザレムが先頭で迷路へ入った。
「意外と複雑な迷路だな。だが心配はいらないぞ。迷ったりしないように、分かれ道には目印を置いてきたからな。ニボシなんだが、食べないように――」
「エイプリルさん。お魚さんがあるよー。はい、あーん」
「――遅かったみたいだな」
振り向いたザレムが見たのは、シルフェが楽しそうに頭から降りたエイプリルへニボシを食べさせている光景だった。
どうやらニボシと聞いたエイプリルが催促し、シルフェに食べさせてもらったようだ。
「まあ、いいじゃねえか。迷路だってんだから、迷いながら遊んでやるとしようぜ」
ザレムの肩に軽く手を置いたのは、迷路の中で一行に追いついてきたカズマだった。
■
館の中は薄暗く、様々な光に彩られている園内よりも視界は悪かった。ランプは持たされていないため、足元に注意しながらエルバッハは歩く。
出口を探し歩くエルバッハを驚かせようと、至るところから人形が飛び出してくる。今は猫吸血鬼の人形が、目を赤色に光らせて牙を剥いている最中だ。
「人形ですか。意外と精巧にできていますね」
じっくり観察したあとで、猫吸血鬼と目を合わせる。相手は一生懸命だが、エルバッハは微塵も恐怖を感じてはいなかった。
身振り手振りでどうして驚かないのか、猫吸血鬼が尋ねてくる。
「まあ、今まで潜り抜けてきた死線からすれば、この程度の脅かしはどうということはないです」
きっぱりと言い切られた猫吸血鬼を始め、他の脅かし役の猫人形たちは揃ってしょぼーんと肩を落として帰っていった。
■
「――はっ! ついついうっかり夢中になって本を読んでしまいました」
エルバッハと一緒に応接室へ案内される際、遥華は猫執事に書斎の場所を聞いた。
猫執事が行方不明になったのをきっかけに、エルバッハと別行動をして書斎に入った。
本棚に並ぶ数多くの本を数冊手に取り、室内の椅子に座った遥華はティータイムを楽しむかのように読み耽ってしまったのである。
読み終えた本を棚に戻していると、入口付近から扉の開く音がした。
「あら。どなたかいらっしゃったみたいですね」
書斎を出て廊下から出入口を見ると、カズマ、シルフェそれにエイプリルが丁度、館へ入ってきたところだった。
■
ドアのすぐ近くにある客間を開けると、タキシードを着て口髭を生やした猫が二本足で立っていた。
「お、こいつが猫執事か。確かついていけばよかったんだよな」
ズカズカと館内を進んでいくカズマの後ろを、おっかなびっくりといった感じでシルフェとエイプリルが歩く。
皆様、ようこそいらっしゃいました――。
透き通るような女性の声。闇の中にボウっと浮かぶ白い影。さらには人魂のように揺れる金色の塊。
「でぇぇえたぁぁニャァァァ!」
鼻水まで垂らして、エイプリルは失神しそうになった。
だがすぐに「私です、私」という声がした。エイプリルが勝手に幽霊だと思ったのは遥華だったのである。
「遥華はどうして洋館の主みたいになってるのニャ。心臓が止まるかと思ったニャ」
なんとか冷静さを取り戻したエイプリルは、適当なところに手を置いてため息を吐いた。
棚か何かだと思っていたら、エイプリルが手を置いていたのは禍々しい猫吸血鬼だった。
エイプリルが悲鳴を上げる前に、笑みを浮かべた遥華が「歓迎ありがとう」と猫吸血鬼にお礼を言った。
「あ、怖くなったらおいでー。抱っこするから♪」
「だ、誰がそんな――」
エイプリルの台詞の途中で、落雷でもしたかのような大きな物音が鳴った。
いきなりの勢いのある物音には弱かったらしく、遥華とエイプリルは無意識に抱き合う形になった。
ややしてから、両者同時に現在の状態に気づく。
「こ、これはスキンシップなのニャ!」
「そ、そうですね。今のはハグです!」
まだまだ遊び足りない遥華とエイプリルは、慌てて離れた。
■
エイプリルがお化け屋敷で騒いでる頃、自然公園には人が集まりつつあった。
「あれぇ、ザレムくんも来てたですぅ? お料理、凄く美味しいですぅ」
見ればお化け屋敷を回ってきたというエルバッハも、屋台のひとつで食事をしていた。
「たまには食べ放題、飲み放題というのもいいですね」
適当に飲み食いをしつつ、形良い唇からほうと満足げな息を吐く。
屋台の設備を自由に使えるというのもあり、料理のできるザレムは食べるよりも先に調理を開始する。
完成した料理から希望者に振舞っていく。その中にはハナの姿もあった。
「……何コレ、うまっ!?」
「星野は食べっぷりが良いな。料理人冥利に尽きるよ」
頬を赤らめたハナが、ザレムをじーっと見つめる。
「……ザレムくんとザレムくんの料理に惚れちゃったのでぇ、ザレムくん私とお付き合いしませんかぁ」
「それは……告白というやつか。じゃあ、まずは互いの相性を確かめるために、一緒にどこかへ行くか」
思いもよらない返事だったのか、ま、まじでと驚くハナ。
なんだか奇妙な雰囲気になる中、ザレムの前で屋台の鉄板がじゅうと鳴った。上には調理中の焼きそばがある。
「ああっ、焼きそばが焦げてしまう。ほら、星野、皿を出せっ!」
お皿お皿と慌てたハナは、近くにあった適当なのを掴むと急いでザレムに差し出した。
「ンニャ?」
それは皿ではなくエイプリルだった。
焼きそばに集中していたザレムが気づいた頃にはもう遅く。大きく開かれたエイプリルの口へ出来立てが投入された。
熱々のを一気に頬張れば、味わう以前の問題が発生するのは当たり前。黒猫なのに顔を真っ赤にしたエイプリルが地面を転げ回る。
そこへにおいにつられた枢もやってきた。
「いいにおいがするな。焼きそばか。ホットドッグとかも出てくるかな」
エイプリルと一緒にお化け屋敷を回ったカズマや遥華、シルフェもおり、皆でしばしの休憩をとることになった。
■
楽しい時間は過ぎ去るのも早い。閉園時間が迫る中、シルフェはエイプリルと一緒に観覧車へ乗っていた。
高く高く舞い上がるように夜空へ登っていく観覧車の中で、正面に座っているエイプリルに笑いかける。
「ありがとね。見たことない物いっぱいで楽しかった! エイプリルさんは楽しかった?」
「楽しかったニャー。一生分の幸せを、今夜で失ってもいいくらいだニャ」
「えへへ。あ、そうだ。この千羽鶴を半分こしない? お友達の証拠。また逢えたらすぐわかるように」
エイプリルの耳に、シルフェは千羽鶴のアクセサリをつけてあげた。
「ニャフフ。これでニャーとシルフェは親友ニャ!」
「うんっ!」
頷いたあとで、思い出したようにシルフェはエイプリルに告げる。
「観覧車に乗ったんだから、一緒に見下ろそ? ここからならきっとゆーえんちの光がキラキラして宝石箱みたいだよ」
最後の一幕を彩るように光る矢と小さな炎が夜空を彩る。外で打ち上げてくれているのは遥華だった。
シルフェとエイプリルは、揃って観覧車から外をドヤ顔で見下ろした。
ひとりと一匹の様子を、よく見えるようにと両手を眉の位置に当てた枢が眺めていた。
「おーおー、いい顔してるわ。楽しめたかい? 黒猫。お前が望んだ夢の遊園地だ。そっから見る景色は最高だろ」
優しげな声で呟いた枢は、途中でん? と目を細める。エイプリルたちの観覧車の外に人影が見えたせいだ。
その人影はカズマだった。観覧車の外側から強引にドアを開ける。
いきなりの乱入者となったカズマの姿に、シルフェもエイプリルもビックリする。
「どうせ時間が過ぎたら戻るんだろう? だったら空から遊ぶ皆の姿を確認するといいさ」
両手でがっしりとエイプリルを掴んだカズマは、そのまま空中へダイブした。呆然とするシルフェを置いて。
結構な高さから落ちる途中で、カズマはエイプリルに声をかける。
「お前自身は楽しかったか? 俺は……そうだな、楽しかったと思うぜ。こうやって皆が笑ってるんなら、俺はそれに十分喜べる」
「ニャーは笑ってないニャ! 泣きそうだニャ! 猫殺しー!」
大急ぎでカズマの両腕から逃げ出したエイプリル。体を捻って着地体勢をとる。
さすがは夢というべきか、エイプリルだけでなくカズマなんとか無事に着地できた。
ふうと額に浮かんだ冷や汗を拭うエイプリルの前に、今度はエルバッハが立った。胸元に浮かんだ真紅の薔薇を模した紋様が、覚醒状態なのを証明している。
「さて調子に乗ったことを謝罪するか、それとも地獄を見るか。どちらがいいですか?」
例えようのない威圧感を放出するエルバッハの前で、すでに号泣中のエイプリルが許しを懇願する。
「地獄はもう見たので勘弁してほしいニャ!」
「最後のアトラクションは凄かったみたいだな。……そろそろ時間か。楽しかった、またな!」
枢が手を振り、近くにいたザレムが手を伸ばしてエイプリルの頭を撫でる。
「お別れは寂しいが、仕方ないな。いつか会いに行くよ。俺の家の猫と一緒にさ。今回はありがとう」
遥華に加えハナ、観覧車から戻ってきたシルフェ、カズマも別れの言葉を告げ、エイプリルの遊園地は幕を閉じた。
●
気がつくとハンターたちはただっぴろい草原にいた。
誰もが何をしていたか思い出せない中、遥華が「あっ」と声を上げた。
「なんだか可愛らしい黒猫さんがいます」
大きくニャーと鳴いた小さな黒猫はすぐにハンターたちへ背を向けたが、立ち去り際に一度だけ振り返った。
微笑みかけられたシルフェには、確かに見えたような気がした。
金色の瞳をした黒猫の片耳に、自分のとよく似た千羽鶴の耳飾りが一瞬だけ浮かんで消えたのを。
依頼結果
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MVP一覧
- 黒猫エイプリルの親友
シルフェ・アルタイル(ka0143)
重体一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 |
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遊園地で遊ぼう シルフェ・アルタイル(ka0143) 人間(クリムゾンウェスト)|10才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/04/07 23:55:31 |