ゲスト
(ka0000)
【AP】ドリームブックス
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/07 19:00
- 完成日
- 2016/04/13 02:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「最近、本がよく床に落ちているのだけれど。いったいどうしたんでしょうか」
ヴァリオス魔術学院資料館の館員セリオ・テカリオが、ちょっと小首をかしげました。
マナーの悪い閲覧者がいるものだとも思ったのですが、なんだか少し違うようです。
他にも、小閲覧室でずっと眠りこけていたという閲覧者も多くなっています。
閉館時間になっても眠ったままなので、とても迷惑です。
しかたないので、丁寧に物理的な魔法(?)で叩き起こすわけですが、なんだかやたら疲れているようで、外に追い出すのも一苦労です。
さすがにちょっと不自然なのですが、春先なので、こういうこともあるのでしょう。そりゃあ、セリオでも、この季節はぽかぽかしてちょっと眠たくなってしまいます。
少しだけ、歪虚の仕業とも思いましたが、さすがにこの資料館に簡単に忍び込めるはずがありません。
『取り越し苦労ですよお~』
案内係魔道書のディアーリオ君が、お気楽に頁に文字を浮かべました。
「そうならいいんだけど。いちおう、ハンターにも見回ってもらいましょうか。どのみち、眠りこけてる閲覧者は、他の閲覧者に迷惑だから、定期的に起こしてもらわないとね」
セリオ館員の手配で、資料館内の見回りのハンターたちがやってきました。
ところが、どうしたことでしょう。その肝心のハンターたちもが、眠り込んでいる事件が発生したのです。
いったい、彼らはどんな夢を見ているのでしょうか……。
ヴァリオス魔術学院資料館の館員セリオ・テカリオが、ちょっと小首をかしげました。
マナーの悪い閲覧者がいるものだとも思ったのですが、なんだか少し違うようです。
他にも、小閲覧室でずっと眠りこけていたという閲覧者も多くなっています。
閉館時間になっても眠ったままなので、とても迷惑です。
しかたないので、丁寧に物理的な魔法(?)で叩き起こすわけですが、なんだかやたら疲れているようで、外に追い出すのも一苦労です。
さすがにちょっと不自然なのですが、春先なので、こういうこともあるのでしょう。そりゃあ、セリオでも、この季節はぽかぽかしてちょっと眠たくなってしまいます。
少しだけ、歪虚の仕業とも思いましたが、さすがにこの資料館に簡単に忍び込めるはずがありません。
『取り越し苦労ですよお~』
案内係魔道書のディアーリオ君が、お気楽に頁に文字を浮かべました。
「そうならいいんだけど。いちおう、ハンターにも見回ってもらいましょうか。どのみち、眠りこけてる閲覧者は、他の閲覧者に迷惑だから、定期的に起こしてもらわないとね」
セリオ館員の手配で、資料館内の見回りのハンターたちがやってきました。
ところが、どうしたことでしょう。その肝心のハンターたちもが、眠り込んでいる事件が発生したのです。
いったい、彼らはどんな夢を見ているのでしょうか……。
リプレイ本文
●浦島太郎
「ここは、どこだぁ?」
いつの間にか砂浜の上に立っていた鵤(ka3319)です。
確か、資料館の警備をしていたはずなのですが……。
そういえば、床に落ちていたリアルブルーの民話本を開いたような気がします。
見れば、子供たちが何かを虐めています。
ぼかすか、ぼかすか。
亀……の甲羅を背負った女の子のようです。何かの修行でしょうか?
「こらこら、子供たちぃ、そういうことはやめるんだよぉ」
ぼかすか、ぼかすか。
やめません。人の話を聞かない子たちのようです。
ずどん!
「きゃあ~」
いきなり砂浜に銃痕が穿たれて、子供たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。
「言って聞かないから」
ふっと、銃口の煙を口で吹き飛ばして鵤が言いました。大人げありません。
「助けていただいてありがとうございます」
亀の甲羅を背負ったYA・シャオuがぺこりと頭を下げました。
「なんで、甲羅を背負ってるの?」
「お礼に、竜宮城に御案内します」
「なんで、甲羅を背負ってるの?」
「さあ、どうぞ背中に」
「なんで、甲羅を……」
「さあ、早く……って、その銃はしまって……ください……な……」
「俺の……話を……聞いてくれたら……な」
魔導拳銃剣を間において押し合いながら、にこやかに二人が会話を交わしました。
「ここが竜宮城です」
結局、竜宮城にやってきてしまった鵤です。
「よいしょっと」
少女が亀の甲羅を外して、黒ゴスロリ衣装の乙姫に衣装チェンジします。
「みんな、おもてなしして……」
パンパンと手を叩くと、人魚が食べ物を運んできて舞い踊ります。
「これはいい」
鵤はおねえちゃんにお酌をしてもらい、肴を食べさせてもらって、飲めや歌えの酒池肉林。最高です。
はたして、どれくらいの時間、いえ年月が経ったのでしょうか。
「じゃあ、そろそろこの箱を持っていってくださいね」
そう言って、乙姫が玉手箱を渡しました。
「嫌だ、もっとここにいる」
「延長はありません」
「やだ」
「ええい、さっさと帰って、老いの絶望に苛まれなさい!」
いつまでも居座ろうとする鵤に、さすがに夢魔である少女がキレました。
「持ってけ泥棒!」
無理矢理玉手箱を押しつけようとします。
「だが、断る!」
鵤が玉手箱を投げ返しました。そのとき、紐が緩んで蓋が開き、ボンと、竜宮城全体が白い煙につつまれました。
「けほけほ、あれ? なんで寝てたんだ?」
閲覧室の机に突っ伏していた鵤が、不思議そうに無精髭をなでつけました。
●絵本
「ふわふわー、もこもこー」
長毛種の子ウサギや子犬や仔猫に埋もれてユピテール・オーク(ka5658)が恍惚としながら言いました。
「でも、なんでこんなとこにいるんだろー、まー、いいかあー」
そう言って、ユピテールがふわもこの中にあおむけに倒れました。真っ白いふわもこの中で、真っ赤にミニスカサンタ衣装のユピテールは鮮やかに目立ちます。
「重い、潰れたらどうするのよ!」
寝そべったユピテールを押しのけるようにして、ふわもこの中から白い甘ロリ姿の少女が飛び出してきました。
「私がいなかったら、確実に何匹か潰れてたわよ」
「だって、気持ちがいいんだもの」
脚や腕の露出が多いため、素肌に触れるふわもこが、それはそれは気持ちいいのです。特に、むきだしのおへそのあたりがたまりません。
「それは、あんただって同じじゃないの」
少女の衣装を見て、ユピテールが言いました。お互いに、服の縁はふわもこしていて、ぼんぼんのような動物の子供たちと変わりがありません。
「このふわもこがいいのよ」
そう言って、適当なふわもこを手にとって、つつーっと少女の肌の上にすべらせます。
「ちょ、ちょっとぉ!?」
少しぞくぞくして、慌ててYA・シャオuが身を退きました。
「まったく、どういう趣味の夢なのよ」
ふわもこに溺れるならば、溺れるがいいと、少女もふわもこを一匹掴んで、ユピテールの肌の上ですべらせました。
「くしゅぐったい……」
「きゃん」
「うさうさ」
もう、もふもふまみれで、何がなんだか分からなくなります。
「ええい、これじゃ、こっちがたまらないわ!」
いいかげんにしろとばかりに、少女が叫びました。
「うーん、もふもふ、もふもふ……、はっ、もふもふはどこ? もふもふ~」
目を覚ましたユピテールは、空中で手をワキワキさせてもふもふを探しました。
●騎士皇の冒険
「ここは……、見たことがある気がする風景だな……」
間違いなく帝国領内だと思いながらも、微妙な違和感を覚えながら仁川 リア(ka3483)は歩いていきました。
帝国各地は、ずいぶんと歩き回ったはずなのですが、どうにも土地の雰囲気が違います。
「そこの蛮族、我が前に平伏すがいい!」
突然、漆黒の鎧を着けた少女が、木陰から飛び出してきて叫びました。
「誰、君?」
「ええと、我が名はグラズヘイム王国が騎士、ナイトハルト・モンドシャッテであるぞ」
何やら、ガントレットに貼りつけたメモを棒読みしながら、少女が答えました。
「思い出した。『騎士皇の冒険』を開いて、そして……。ここは物語の中なのか?」
「もちろん」
いとも簡単に、少女が肯定しました。
「なんと、君があの有名な騎士皇なんだ!? で、僕は蛮族じゃないんだが……」
お話で読んでいたのとは違うイメージの騎士皇にちょっと驚きながらリアが言いました。
「そうか、では、我が配下として、蛮族平定に協力せい」
「まあ、剣術には自信あるから、それも面白いかなあ」
なんとなく、特に騎士皇に興味を持って、リアが言いました。どうやら、まだ騎士皇となる前、蛮族を平定している時代の話のようです。
「ならばよし。では、さっそく、あれを倒してもらおうか」
そう言うと、騎士皇がリアの後ろを指さしました。いつの間にか、そこに巨大な歪虚が立っていました。
「ちょっと、さすがにこれを一人では……」
城の塔ほどの高さのある歪虚を見あげて、さすがにリアが絶句しました。でかすぎて、全体の形すらよく分かりません。これは、ゴーレムかCAMを持ち出すような相手です。
「でも、さすがに騎士皇の前で尻込みはできないかな」
フラーメ・ルージュを抜くと、リアは果敢にも歪虚に立ちむかっていきました。とはいえ、あまりにも無謀です。普通に考えたら、たった一人では敵うはずがありません。
「普通に考えたらだよね」
そもそも、ここが本の中だとしても、『騎士皇の冒険』の中には、こんな歪虚なんて出てきてはいません。だいたいにして、リアだって、本来の物語の登場人物ではありません。多分、騎士皇を名乗るあの少女も……。
だとしたら、条件はすべて同じ、いえ、ゲストキャラとしてはみんな同じ対等の立場ではないでしょうか。なら勝てます。いえ、そう思った方が勝つのです。
「さあて、僕の素晴らしい剣技、見せてあげるよ」
すれ違い様に、リアがヒットアンドアウェイで歪虚の下肢部を突き刺しました。傷口から炎が噴きあがり、巨大な歪虚がバランスを崩してゆらゆらとゆれました。
「そんな、馬鹿な……」
ここで永遠に戦い続けるか、何度もやられるという敗北のループになるはずがと、少女が唖然とします。
「さあ、一緒に戦おう!」
そう言うと、リアは少女の手を引いて歪虚に立ちむかっていきました。
「ちょ、ちょっとお!?」
そのまま、何度も歪虚を攻撃します。
ぷすぷすぷす!
さしも巨大な歪虚も、ついに立っていられなくなりました。
そして、二人の上に倒れてきたのです。
「えっ!?」
「ちょっとお!?」
「うわあ……あ!?」
『騎士皇の冒険』を枕に寝ていたリアが飛び起きました。
「この本、こんな内容だったっけ?」
そう言うと、リアは、慌てて手の中の本を読み返し始めました。
●紅の世界の魔法史
「それでは、今日の講義を始めさせていただきます」
広い講堂で、大きな黒板……のような物を持ち出す指示棒でツンツンしながら少女が言いました。ぴっちりとした黒い服に、黒いコートを羽織っています。
いつの間にか、天央 観智(ka0896)は椅子に座って少女の講義を聞いていました。
今行われている講義は、どうやら『紅の世界の魔法史』という物のようです。そういえば、同じタイトルの本を観智も読んでいたような気がします。
「……のように、負のマテリアルによる歪みを利用した強大な力、まあ、常人には理解できない偉大な力によってこの世界を平定したのだ」
自慢げに少女が説明します。トントンと黒板を叩くと、そこに過去の物らしき映像が浮かびあがりました。一体の歪虚が、村を、町を魔法で蹂躙していきます。
「このように、魔法という物は、非常に強力な物です。これに逆らうなど愚の骨頂。分かりましたか?」
「はーい」
観智が手を挙げました。質問です。
「なんでしょう」
「でも、席巻できてませんよねえ」
「コホン、次行きます」
そう言うと、少女がまたコンコンと黒板を叩きました。
黒板に映っていた映像が変わります。
先ほどとは別の場所で、同じ歪虚が魔法で町を蹂躙していました。
「このように、魔法という物は、非常に強力な物です。これに逆らうなど愚の骨頂。分かりましたか?」
「はーい」
観智が手を挙げました。質問です。
「なんでしょう」
「でも、殲滅できてませんよねえ」
「ええい、ああ言えばこう言う!」
そう言うと、少女がまたコンコンと黒板を叩きました。
「しょせん、歴史などただのループなのです。今日の勝者は明日の敗者。それは歴史が証明しています。さあ、あなたも明日の敗者に……」
「じゃあ、今日は勝者」
「違うでしょうが!」
少女が、思いっきり黒板を杖で叩きました。
ピシッ!
「あっ!」
黒板が砕けると共に、世界が砕けました。
「……はっ!! ……夢、ですか……。いえ……よい夢を見せていただきました。ありがとうございます」
手許にあった本に、ぺこりとお辞儀をする観智でした。
●七つの星
「乾いてる……」
地面を見て、シャルア・レイセンファード(ka4359)がつぶやきました。
いったい自分は何を……、そう、確か、病気の母親のために水を探しに行く途中だったはずです。もうずっと雨が降らなくて、村は干ばつ状態なのでした。
「うん、間違いない……」
手に持っている柄杓を見て、シャルアが自分にうなずきました。
それにしても、水はどこにあるのでしょうか。とにかく、水を探して先に進みましょう。
てくてくてくてく、てくてくてくてく。
ありません。いったいどこにあるのでしょう。なんだか、自分自身が喉が渇いてクラクラしてきました。
しくしくしく……。
泣いていると、なんだか、ちょっと気が遠くなってきました。
ばったり。
はっ、どうやら気を失っていたようです。不思議なことに、柄杓の中に水がたまっていました。
「これで、水を持って帰れる。これも、普段の行いがいいせいね」
急いで村へと帰ります。
「おみず、おみずー……」
途中で、黒いマントを頭からすっぽりと被った少女が声をかけてきました。
「ええと……」
どうしようかと、シャルアが悩みます。この水は、母親に持っていかないといけないのですが……。
「どうぞ……」
一口だけならと、シャルアが水を少女に分け与えました。
「ありがとー」
一気飲みです。少女は、水をすべて飲んでしましました。
「か、辛い!!」
思わず少女が叫びました。柄杓の中の水は、なぜか塩水だったようです。もしかして、シャルアの涙だったのでしょうか。
「み、みみず~!」
少女が叫ぶと、柄杓からピューと水が溢れてきました。ついでに、星が七つ柄杓の中から飛び出してきます。いったい、この柄杓はどうなっているのでしょうか。
そう思っている間に、溢れ出た水にシャルアが流されていきました。
「あれ? 変な夢を見たようなあ。でも、ところどころ違ってましたあ。どうしてなんでしょう?」
閲覧室でいつの間にか眠りこけていたシャルアが、ゆっくりと顔をあげてつぶやきました。
●不思議の国
「見回りって言ってもだなあ、何にもないじゃないかあ」
アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)が、のんびりと資料館の廊下を歩いていました。
「こんなところに本が落ちてる……やあ、懐かしいなあ」
廊下で、アルヴィンが童話の本を拾いました。そのときです。
「遅れる、遅れる!」
突然、アルヴィンの目の前を、黒兎の着ぐるみを着た少女が駆けていきました。
「なんだなんだあ?」
追いかけていくと、忽然と廊下に開いた穴に、黒兎が吸い込まれるようにして落ちていきます。
「あおあっ!?」
アルヴィンも、忽然と足許に開いた穴に、黒兎に続いて吸い込まれていきました。
「お、落ちる……」
薄ぼんやりとした光の中で、どこまでもどこまでも落ちていきます。見下ろすと、少し下の方に黒兎の着ぐるみから顔だけのぞかせた少女の姿がありました。
ひょいひょいと、少女がアルヴィンの顔あたりを指さします。横を見ると、何かの小瓶が一緒に落ちてきていました。スピードが同じなのか、まるで宙に浮かんでいるように見えます。
手に取ると、『私を飲んで』とラベルに書いてありました。
「いいだろうさあ」
躊躇することなく、アルヴィンが水薬を飲みました。
ボン!
すると、アルヴィンの着ていた服が一瞬にしてふりふりのエプロンドレスに替わっていました。
「なんだあ、これはあ!」
スカートがお猪口にならないように、慌てて裾を押さえます。
「やれやれ、はしたないお嬢さんだねえ」
木の枝の上に座っているおばあさんが、優しい声でアルヴィンに言いました。ふわりとスカートが広がって、落ちている感覚が希薄になります。でも、地面があると言う感覚はありません。
「僕は、男だよ」
なんだか見覚えのあるおばあさんにむかって、アルヴィンが答えました。
「嘘は、裁判に呼ばれるぞ」
「ねむねむねむ……」
帽子を被った男の子と、ティポットの中の飼いうさぎが言いました。
なんだか、昔懐かしい人たちとの記憶が混ざっているようです。
そう分かってしまうと、なんだか落ち着いて楽しく話ができるような気がします。たとえ、現在絶賛落下中だろうが、スカート姿だろうが平気です。
「ええい、楽しすぎるの禁止!」
穴の底の方から、少女の声が聞こえてきました。
「ス、スカート!?」
アルヴィンは、慌てて腰のあたりに手をやってズボンを確認しました。
「まあ、いい夢だったのかな?」
●夢の終わり
「まったく、なんて変な夢を見る奴らばかりなの。もうやってられないわ」
そう台詞を残すと、YA・シャオuは暗闇の中にポツンと現れたドアを開いて出ていきました。微かに軋みながらドアが閉じると、部屋は穏やかな暗闇と静寂に戻りました。
「ここは、どこだぁ?」
いつの間にか砂浜の上に立っていた鵤(ka3319)です。
確か、資料館の警備をしていたはずなのですが……。
そういえば、床に落ちていたリアルブルーの民話本を開いたような気がします。
見れば、子供たちが何かを虐めています。
ぼかすか、ぼかすか。
亀……の甲羅を背負った女の子のようです。何かの修行でしょうか?
「こらこら、子供たちぃ、そういうことはやめるんだよぉ」
ぼかすか、ぼかすか。
やめません。人の話を聞かない子たちのようです。
ずどん!
「きゃあ~」
いきなり砂浜に銃痕が穿たれて、子供たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。
「言って聞かないから」
ふっと、銃口の煙を口で吹き飛ばして鵤が言いました。大人げありません。
「助けていただいてありがとうございます」
亀の甲羅を背負ったYA・シャオuがぺこりと頭を下げました。
「なんで、甲羅を背負ってるの?」
「お礼に、竜宮城に御案内します」
「なんで、甲羅を背負ってるの?」
「さあ、どうぞ背中に」
「なんで、甲羅を……」
「さあ、早く……って、その銃はしまって……ください……な……」
「俺の……話を……聞いてくれたら……な」
魔導拳銃剣を間において押し合いながら、にこやかに二人が会話を交わしました。
「ここが竜宮城です」
結局、竜宮城にやってきてしまった鵤です。
「よいしょっと」
少女が亀の甲羅を外して、黒ゴスロリ衣装の乙姫に衣装チェンジします。
「みんな、おもてなしして……」
パンパンと手を叩くと、人魚が食べ物を運んできて舞い踊ります。
「これはいい」
鵤はおねえちゃんにお酌をしてもらい、肴を食べさせてもらって、飲めや歌えの酒池肉林。最高です。
はたして、どれくらいの時間、いえ年月が経ったのでしょうか。
「じゃあ、そろそろこの箱を持っていってくださいね」
そう言って、乙姫が玉手箱を渡しました。
「嫌だ、もっとここにいる」
「延長はありません」
「やだ」
「ええい、さっさと帰って、老いの絶望に苛まれなさい!」
いつまでも居座ろうとする鵤に、さすがに夢魔である少女がキレました。
「持ってけ泥棒!」
無理矢理玉手箱を押しつけようとします。
「だが、断る!」
鵤が玉手箱を投げ返しました。そのとき、紐が緩んで蓋が開き、ボンと、竜宮城全体が白い煙につつまれました。
「けほけほ、あれ? なんで寝てたんだ?」
閲覧室の机に突っ伏していた鵤が、不思議そうに無精髭をなでつけました。
●絵本
「ふわふわー、もこもこー」
長毛種の子ウサギや子犬や仔猫に埋もれてユピテール・オーク(ka5658)が恍惚としながら言いました。
「でも、なんでこんなとこにいるんだろー、まー、いいかあー」
そう言って、ユピテールがふわもこの中にあおむけに倒れました。真っ白いふわもこの中で、真っ赤にミニスカサンタ衣装のユピテールは鮮やかに目立ちます。
「重い、潰れたらどうするのよ!」
寝そべったユピテールを押しのけるようにして、ふわもこの中から白い甘ロリ姿の少女が飛び出してきました。
「私がいなかったら、確実に何匹か潰れてたわよ」
「だって、気持ちがいいんだもの」
脚や腕の露出が多いため、素肌に触れるふわもこが、それはそれは気持ちいいのです。特に、むきだしのおへそのあたりがたまりません。
「それは、あんただって同じじゃないの」
少女の衣装を見て、ユピテールが言いました。お互いに、服の縁はふわもこしていて、ぼんぼんのような動物の子供たちと変わりがありません。
「このふわもこがいいのよ」
そう言って、適当なふわもこを手にとって、つつーっと少女の肌の上にすべらせます。
「ちょ、ちょっとぉ!?」
少しぞくぞくして、慌ててYA・シャオuが身を退きました。
「まったく、どういう趣味の夢なのよ」
ふわもこに溺れるならば、溺れるがいいと、少女もふわもこを一匹掴んで、ユピテールの肌の上ですべらせました。
「くしゅぐったい……」
「きゃん」
「うさうさ」
もう、もふもふまみれで、何がなんだか分からなくなります。
「ええい、これじゃ、こっちがたまらないわ!」
いいかげんにしろとばかりに、少女が叫びました。
「うーん、もふもふ、もふもふ……、はっ、もふもふはどこ? もふもふ~」
目を覚ましたユピテールは、空中で手をワキワキさせてもふもふを探しました。
●騎士皇の冒険
「ここは……、見たことがある気がする風景だな……」
間違いなく帝国領内だと思いながらも、微妙な違和感を覚えながら仁川 リア(ka3483)は歩いていきました。
帝国各地は、ずいぶんと歩き回ったはずなのですが、どうにも土地の雰囲気が違います。
「そこの蛮族、我が前に平伏すがいい!」
突然、漆黒の鎧を着けた少女が、木陰から飛び出してきて叫びました。
「誰、君?」
「ええと、我が名はグラズヘイム王国が騎士、ナイトハルト・モンドシャッテであるぞ」
何やら、ガントレットに貼りつけたメモを棒読みしながら、少女が答えました。
「思い出した。『騎士皇の冒険』を開いて、そして……。ここは物語の中なのか?」
「もちろん」
いとも簡単に、少女が肯定しました。
「なんと、君があの有名な騎士皇なんだ!? で、僕は蛮族じゃないんだが……」
お話で読んでいたのとは違うイメージの騎士皇にちょっと驚きながらリアが言いました。
「そうか、では、我が配下として、蛮族平定に協力せい」
「まあ、剣術には自信あるから、それも面白いかなあ」
なんとなく、特に騎士皇に興味を持って、リアが言いました。どうやら、まだ騎士皇となる前、蛮族を平定している時代の話のようです。
「ならばよし。では、さっそく、あれを倒してもらおうか」
そう言うと、騎士皇がリアの後ろを指さしました。いつの間にか、そこに巨大な歪虚が立っていました。
「ちょっと、さすがにこれを一人では……」
城の塔ほどの高さのある歪虚を見あげて、さすがにリアが絶句しました。でかすぎて、全体の形すらよく分かりません。これは、ゴーレムかCAMを持ち出すような相手です。
「でも、さすがに騎士皇の前で尻込みはできないかな」
フラーメ・ルージュを抜くと、リアは果敢にも歪虚に立ちむかっていきました。とはいえ、あまりにも無謀です。普通に考えたら、たった一人では敵うはずがありません。
「普通に考えたらだよね」
そもそも、ここが本の中だとしても、『騎士皇の冒険』の中には、こんな歪虚なんて出てきてはいません。だいたいにして、リアだって、本来の物語の登場人物ではありません。多分、騎士皇を名乗るあの少女も……。
だとしたら、条件はすべて同じ、いえ、ゲストキャラとしてはみんな同じ対等の立場ではないでしょうか。なら勝てます。いえ、そう思った方が勝つのです。
「さあて、僕の素晴らしい剣技、見せてあげるよ」
すれ違い様に、リアがヒットアンドアウェイで歪虚の下肢部を突き刺しました。傷口から炎が噴きあがり、巨大な歪虚がバランスを崩してゆらゆらとゆれました。
「そんな、馬鹿な……」
ここで永遠に戦い続けるか、何度もやられるという敗北のループになるはずがと、少女が唖然とします。
「さあ、一緒に戦おう!」
そう言うと、リアは少女の手を引いて歪虚に立ちむかっていきました。
「ちょ、ちょっとお!?」
そのまま、何度も歪虚を攻撃します。
ぷすぷすぷす!
さしも巨大な歪虚も、ついに立っていられなくなりました。
そして、二人の上に倒れてきたのです。
「えっ!?」
「ちょっとお!?」
「うわあ……あ!?」
『騎士皇の冒険』を枕に寝ていたリアが飛び起きました。
「この本、こんな内容だったっけ?」
そう言うと、リアは、慌てて手の中の本を読み返し始めました。
●紅の世界の魔法史
「それでは、今日の講義を始めさせていただきます」
広い講堂で、大きな黒板……のような物を持ち出す指示棒でツンツンしながら少女が言いました。ぴっちりとした黒い服に、黒いコートを羽織っています。
いつの間にか、天央 観智(ka0896)は椅子に座って少女の講義を聞いていました。
今行われている講義は、どうやら『紅の世界の魔法史』という物のようです。そういえば、同じタイトルの本を観智も読んでいたような気がします。
「……のように、負のマテリアルによる歪みを利用した強大な力、まあ、常人には理解できない偉大な力によってこの世界を平定したのだ」
自慢げに少女が説明します。トントンと黒板を叩くと、そこに過去の物らしき映像が浮かびあがりました。一体の歪虚が、村を、町を魔法で蹂躙していきます。
「このように、魔法という物は、非常に強力な物です。これに逆らうなど愚の骨頂。分かりましたか?」
「はーい」
観智が手を挙げました。質問です。
「なんでしょう」
「でも、席巻できてませんよねえ」
「コホン、次行きます」
そう言うと、少女がまたコンコンと黒板を叩きました。
黒板に映っていた映像が変わります。
先ほどとは別の場所で、同じ歪虚が魔法で町を蹂躙していました。
「このように、魔法という物は、非常に強力な物です。これに逆らうなど愚の骨頂。分かりましたか?」
「はーい」
観智が手を挙げました。質問です。
「なんでしょう」
「でも、殲滅できてませんよねえ」
「ええい、ああ言えばこう言う!」
そう言うと、少女がまたコンコンと黒板を叩きました。
「しょせん、歴史などただのループなのです。今日の勝者は明日の敗者。それは歴史が証明しています。さあ、あなたも明日の敗者に……」
「じゃあ、今日は勝者」
「違うでしょうが!」
少女が、思いっきり黒板を杖で叩きました。
ピシッ!
「あっ!」
黒板が砕けると共に、世界が砕けました。
「……はっ!! ……夢、ですか……。いえ……よい夢を見せていただきました。ありがとうございます」
手許にあった本に、ぺこりとお辞儀をする観智でした。
●七つの星
「乾いてる……」
地面を見て、シャルア・レイセンファード(ka4359)がつぶやきました。
いったい自分は何を……、そう、確か、病気の母親のために水を探しに行く途中だったはずです。もうずっと雨が降らなくて、村は干ばつ状態なのでした。
「うん、間違いない……」
手に持っている柄杓を見て、シャルアが自分にうなずきました。
それにしても、水はどこにあるのでしょうか。とにかく、水を探して先に進みましょう。
てくてくてくてく、てくてくてくてく。
ありません。いったいどこにあるのでしょう。なんだか、自分自身が喉が渇いてクラクラしてきました。
しくしくしく……。
泣いていると、なんだか、ちょっと気が遠くなってきました。
ばったり。
はっ、どうやら気を失っていたようです。不思議なことに、柄杓の中に水がたまっていました。
「これで、水を持って帰れる。これも、普段の行いがいいせいね」
急いで村へと帰ります。
「おみず、おみずー……」
途中で、黒いマントを頭からすっぽりと被った少女が声をかけてきました。
「ええと……」
どうしようかと、シャルアが悩みます。この水は、母親に持っていかないといけないのですが……。
「どうぞ……」
一口だけならと、シャルアが水を少女に分け与えました。
「ありがとー」
一気飲みです。少女は、水をすべて飲んでしましました。
「か、辛い!!」
思わず少女が叫びました。柄杓の中の水は、なぜか塩水だったようです。もしかして、シャルアの涙だったのでしょうか。
「み、みみず~!」
少女が叫ぶと、柄杓からピューと水が溢れてきました。ついでに、星が七つ柄杓の中から飛び出してきます。いったい、この柄杓はどうなっているのでしょうか。
そう思っている間に、溢れ出た水にシャルアが流されていきました。
「あれ? 変な夢を見たようなあ。でも、ところどころ違ってましたあ。どうしてなんでしょう?」
閲覧室でいつの間にか眠りこけていたシャルアが、ゆっくりと顔をあげてつぶやきました。
●不思議の国
「見回りって言ってもだなあ、何にもないじゃないかあ」
アルヴィン = オールドリッチ(ka2378)が、のんびりと資料館の廊下を歩いていました。
「こんなところに本が落ちてる……やあ、懐かしいなあ」
廊下で、アルヴィンが童話の本を拾いました。そのときです。
「遅れる、遅れる!」
突然、アルヴィンの目の前を、黒兎の着ぐるみを着た少女が駆けていきました。
「なんだなんだあ?」
追いかけていくと、忽然と廊下に開いた穴に、黒兎が吸い込まれるようにして落ちていきます。
「あおあっ!?」
アルヴィンも、忽然と足許に開いた穴に、黒兎に続いて吸い込まれていきました。
「お、落ちる……」
薄ぼんやりとした光の中で、どこまでもどこまでも落ちていきます。見下ろすと、少し下の方に黒兎の着ぐるみから顔だけのぞかせた少女の姿がありました。
ひょいひょいと、少女がアルヴィンの顔あたりを指さします。横を見ると、何かの小瓶が一緒に落ちてきていました。スピードが同じなのか、まるで宙に浮かんでいるように見えます。
手に取ると、『私を飲んで』とラベルに書いてありました。
「いいだろうさあ」
躊躇することなく、アルヴィンが水薬を飲みました。
ボン!
すると、アルヴィンの着ていた服が一瞬にしてふりふりのエプロンドレスに替わっていました。
「なんだあ、これはあ!」
スカートがお猪口にならないように、慌てて裾を押さえます。
「やれやれ、はしたないお嬢さんだねえ」
木の枝の上に座っているおばあさんが、優しい声でアルヴィンに言いました。ふわりとスカートが広がって、落ちている感覚が希薄になります。でも、地面があると言う感覚はありません。
「僕は、男だよ」
なんだか見覚えのあるおばあさんにむかって、アルヴィンが答えました。
「嘘は、裁判に呼ばれるぞ」
「ねむねむねむ……」
帽子を被った男の子と、ティポットの中の飼いうさぎが言いました。
なんだか、昔懐かしい人たちとの記憶が混ざっているようです。
そう分かってしまうと、なんだか落ち着いて楽しく話ができるような気がします。たとえ、現在絶賛落下中だろうが、スカート姿だろうが平気です。
「ええい、楽しすぎるの禁止!」
穴の底の方から、少女の声が聞こえてきました。
「ス、スカート!?」
アルヴィンは、慌てて腰のあたりに手をやってズボンを確認しました。
「まあ、いい夢だったのかな?」
●夢の終わり
「まったく、なんて変な夢を見る奴らばかりなの。もうやってられないわ」
そう台詞を残すと、YA・シャオuは暗闇の中にポツンと現れたドアを開いて出ていきました。微かに軋みながらドアが閉じると、部屋は穏やかな暗闇と静寂に戻りました。
依頼結果
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面白かった! | 6人 |
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依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/07 04:49:13 |
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相談卓 仁川 リア(ka3483) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2016/04/07 18:09:00 |