玉蜀黍畑を邪魔する敵 ~廃墟の集落~

マスター:天田洋介

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/07 19:00
完成日
2016/04/14 22:56

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 グラズヘイム王国・古都【アークエルス】東方の森に、かつてナガケと呼ばれる集落が存在した。
 集落の主な産業は豚、牛、馬を育てる畜産だったのだが、幻獣の獅子鷹『メニュヨール』によって崩壊してしまう。家畜の仔攫いが激増したからだ。
 ナガケ集落は解散の憂き目に遭い、青年ガローア・ラグアは父親のマガンタと共に放浪の身となる。
 父が亡くなってからも根無し草な生き方を続けてきたガローア。だが覚悟を決めた彼はハンターの力を借りてメニュヨール退治に成功した。
 その後、ガローアは古都でドワーフの青年『ベッタ』と出会う。意気投合した二人は集落復興に動きだす。
 ベッタの故郷周辺に棲息していた幻の青と呼ばれていた幻獣の肉質はとても素晴らしかった。リアルブルーの高級和牛霜降り肉を彷彿とさせる。そこで幻の青の名を改めて『シモフリ』と呼称することとなった。
 シモフリ六頭を放牧場に連れて帰り、オークの樹木が並ぶ放牧場に放つ。しばらくは森での生活と同じように樹木の上で棲みついた。だが危険がなければ地表で暮らすことがわかる。また好物は木の実だが、玉蜀黍の粒にも旺盛な食欲をみせた。
 シモフリ六頭の他に乳牛一頭と鶏の雌鳥六羽も飼うことにする。これで毎日新鮮な牛乳と鶏卵が手に入るようになった。
 木の実不足に備えて春からの玉蜀黍畑の開墾を開始。その頃、紅の兎のような幻獣二体に柵を壊される事態が発生した。
 それが過ぎ去ったかと思えば雑魔の巨大蜂が飛来。雑魔蜂はハンター達の知恵と行動力によって巣ごと退治される。
 森が紅葉に染まる頃、ある商人一家を集落に泊まった。よい機会と考えたガローアはハンターに野生のシモフリを狩ってきてもらう。
 ハンターの手によって調理されたシモフリ料理を味わった一家はいたく気に入ってくれる。市場にだす際には是非に声をかけてくれといわれた。
 シモフリの仔がたくさん産まれてから日が経つ。ガローアが放牧場で作業をしていると以前に柵を壊して姿を消した赤い兎二羽を見つける。
 やせ細って倒れている姿を見て放ってはおけなかった。住処に連れて行って看病。作業の手伝いをしにハンター一行が現れてまもなくある一団が集落へやってくる。
 森で迷ったと一団は語った。だがハンター達の機転で正体が賊だとわかる。暴虐は事前に抑えられ、集落は救われた。
 順調に仔シモフリが育つ。普通の餌が食べられるようになった頃にガローアとベッタが気づく。甘くてクセの少ないシモフリの乳を使えばおいしい食材ができるのではないかと。
 チーズ、バター、ヨーグルトが完成。古都【アークエルス】での商売を考えるものの、かといって二人が集落から移るわけにもいかなかった。


 灰色だった景色が緑に染まり、春の訪れを感じさせるようになる。
 厩舎で育てていた仔シモフリが放牧場に放たれた。日が暮れる前に小屋へと戻されるが、樹木の上で寝るようになればそれもいらなくなるだろう。
「みんな元気だね」
 ガローアは放牧場でゴロゴロと転がる仔シモフリ達を眺めて頬を綻ばせた。
「ガローア、ちょいとええか?」
 明るいガローアとは反対にベッタの表情は沈んでいる。
「古都から帰ってきたばかりでどうかしたの?」
「ええ取引先を探せなかったんは確かなんやが、それよりも大変なことが起きたんや」
 ガローアはベッタに連れられて集落の外れにある小屋を訪ねた。玉蜀黍の粒を保存していたのだが荒らされている。床にたくさんの粒が散らばっていた。
「食い散らかしているね。また強盗とか?」
「いや、犯人はわかっとるで。ほら、泥の足跡を見てみれば一発や」
 ベッタが指さした先をガローアが屈んで見つめる。床の一部に熊の足跡があった。
「そういえば冬の冬眠から熊が目覚める時期か」
「そうや。一階に降ろしといた分だけやられたんは不幸中の幸いやな。殆どは鼠対策として二階に運んどいて正解やったわ」
 玉蜀黍の粒はシモフリの飼料だけでなく、もうすぐ畑に蒔く分も保存している。このままだと畑での農作業中に熊と遭遇する危険性がでてきた。
 春は命芽吹く季節ではあるが、収穫の意味ではとても寂しい。腹を空かせているはずなのでこの時期の熊はとても凶暴である。
「ハンターに粒蒔きの手伝いを頼もうと思っていたけど」
「熊の方も何とかしてもろた方がよさそうや」
 ガローアとベッタが決める。
 三日後、ガローアが馬車で古都へと向かう。ハンターズソサエティーの支部に立ち寄って依頼した。熊を何とかした後で玉蜀黍畑の粒蒔きを手伝ってもらいたいと。

リプレイ本文


 早朝にナガケ集落へ着いたハンター一行は放牧場を見学する。仔シモフリ達が遊ぶ姿をガローアやベッタと一緒に眺めた。
「アオタロウ、くすぐったいです」
 草むらに座ったミオレスカ(ka3496)の膝に仔シモフリのアオタロウが寝転がる。
「可愛いシモフリ達が増えて嬉しいと思ってた矢先に熊か……。餌場として覚えられると厄介だな」
 屈んだザレム・アズール(ka0878)がアオタロウの背中を撫でた。毛足がとても長くてふわりと触り心地がよい。
「しっかし、熊かァ……冬眠明けにコッチにくるたァ、哀れなもンだ」
 万歳丸(ka5665)は頬をかきながら緑濃くなった森の景色に目をやった。
「やっと軌道に乗って来たばかりの所で……熊の被害が本格化……なんてことは避けないといけませんものね」
「そないになったら大変矢で」
 明王院 雫(ka5738)とベッタは集落の将来を心配する。
 放牧場の次は玉蜀黍を保管している小屋へと向かう。現状を維持していたので床はそのままだ。
「足跡はたくさんついているが……一頭分だけか」
 ザレムが推測した熊の全長は一・二メートル前後。ガローアによれば玉蜀黍が麻袋ごと持ち去られている。複数の熊が背後にいても不思議ではなかった。
(クマ肉クマ肉♪)
 屈んで玉蜀黍の粒を拾うディーナ・フェルミ(ka5843)の心は躍る。玉蜀黍好きの熊ならきっと美味しいに違いないと。
「熊は蜂蜜が好きと聞いたことがある。天然蜂蜜で誘いだすのはどうだ? ここから離れた森の中に仕掛ければいいだろう」
「よい案ですね」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が天然蜂蜜の壺をガローアに見せる。
 粒蒔き前の畑も回った後、ハンター達は各自で動きだすのだった。


「罠にかかるとすれば夜だな。その対策もしておかないと」
「小屋の位置からして森のこちら側だろうか」
 ザレムとアルトは森に罠を仕掛ける。
 まずは手分けして熊の痕跡を探す。倒れている茂みや熊が身体を擦りつけた樹木などを見つけだした。
 ザレムは泥を塗した手で枝や縄を使い、バネ罠や括り罠を作っていく。
「段差近くで熊の跡を見つけたぞ」
『わかった。この周辺を探し終わったらそちらに向かおう』
 ザレムとアルトはトランシーバーでやり取りする。罠の近くにはアルトの蜂蜜も仕掛けておく。ディーナの意見も採り入れて玉蜀黍の粒も撒いた。

 万歳丸は柵の周囲に縄を張って鈴などの鳴り物を仕掛ける。自前の分だけでなくベッタが用意してくれた縄や木材も使った。
「今後も獣対策に使えるかもしれねェだろ?」
「あったほうが安心やで」
 一通りできあがったところで効果を試す。ベッタが見張り用の棟で待機。万歳丸が縄を揺らして音を鳴らす。戻ってきたベッタによれば鈴の音がはっきりと聞こえたという。
「これで安心だぜ。夜ならもっと遠くまで聞こェんだろ」
 万歳丸が熊鍋の予感に「せめて鬼の居ぬ間にしてりゃァなァ……」と呟くのだった。

 雫も鳴り物の設置を考えた一人だ。ガローアと一緒に縄を張って鳴子や鈴を取りつけていく。
「蓄えを食べてしまった熊については可哀想ですが……駆除するしかないと思います。ここを餌場と認識してしまった可能性が高いですし……」
「この辺りには熊はいなかったんだけどね」
「駆除したら……狩人達に引き取ってもらうのはどうでしょう?」
「あまりに多すぎたら古都で売ってこようとは思っている。毛皮はベッタがなめせるから任せるつもりだよ」
 二人は鳴り物とは別に小屋の周囲にいくつかの穴を掘る。熊を落とすための落とし穴であった。

 鳴り物設置の後、万歳丸は鍬を担いで畑へと出向く。
「オラオラオラッ!!」
 黄金色の≪氣≫を纏って大地に鍬を振り下ろす。鬼神の如く畝を作りあげていく凄まじさにガローアとベッタが口をあんぐりとさせる。
「東方ではじっと一か所で暮らすことなんて殆どなかったからなァ。こういうのも、たまには悪くねェ……」
 休憩時、水を飲んだ万歳丸はガローアから受け取った布で汗を拭う。

「罠はみなさんに任せて、私たちはこちらをがんばりましょう」
「大きく育って欲しいの」
 玉蜀黍の粒を撒いたのはミオレスカとディーナだ。受粉しやすいようわざと密集させるので畝に二列、一個所に三粒ずつ埋めていく。
 畑全体の一割弱は人が食べるための甘い品種を育てる。残りはシモフリや牛鶏に食べさせるための家畜用だ。
「アオタロウのためにも、がんばらないと」
「秋には美味しい玉蜀黍が食べられそうですね」
 種を埋めた土の上に桶で汲んできた水を撒く。ミオレスカとディーナは丁寧に仕事をこなしていった。

 やがて日が暮れる。ハンター達は交代で小屋を見張りながら一夜を過ごす。しかし何事も起こらなかった。
 翌日に点検したところ、どの罠にも熊が近づいた様子はない。蜂蜜と粒を追加して後は畑仕事を手伝う。
 何度か鈴の音や鳴子が鳴ったが狸や狐、リスの仕業だ。時には猪や鹿も。放牧場に現れる野生動物は想像していたよりも多い。
 激しく鈴の音が鳴り響いたのは三日目の夜更けであった。


 遠くから熊の遠吠えが届く。
「起きて下さい」
「熊が現れたようだ」
 見張り番のミオレスカとザレムは方角を確認してから寝ていた仲間達を起こす。
 月明かりでそれなりに明るかったものの、向かう先は森の中である。ガローアが用意したランタンに火を灯して野外へと駆けだす。
 覚醒は済ませていた。玉蜀黍の小屋を横切り、熊に襲われていないのを確かめてから集落の外へ。暗い森の中を突き進む。
(できることならば殺したくはない。服従してくれたのなら、家に連れ帰ってもいいんだが……まあ無理か)
 アルトは木々の間をすり抜けながらそのようなことを考えた。
「ここから先は慎重に行こう」
 そろそろというところでザレムが仲間に声をかけてランタンを用意した布で覆い隠す。二度目の遠吠えが聞こえる。目的地に近づいてからランタンの布を外すと、蜂蜜と粒に誘われた熊が罠に引っかかっていた。
「冬眠明けってこたァ、力がでねェンじゃねェかと思ってたら、どうしてどうして……」
 鬼神を纏った万歳丸が籠手を填めた腕を構えたところで、影がもう一つ現れた。熊は二頭いたのである。
「……だめか」
 アルトが一歩前にでて威嚇してみても熊二頭は怯まない。鋭い牙と爪を剥きだしにしてきた。踏鳴で踏み込んで一瞬のうちに熊の懐へ。剣閃連華の刃で刻み込む。
「怪力無双、万歳丸……推して参るぜ! 俺が作った畝には一歩も近づけねェぞコラァ!」
 万歳丸も相手との間を縮地瞬動で一瞬のうちに詰める。飛びあがりの一撃で罠にかかっていない熊を吹き飛ばし、大樹の幹へと張りつけた。
「えいっ!」
 突っ込んだディーナは熊二頭の間に立って輝く。セイクリッドフラッシュの衝撃に耐えられなくなった熊二頭が膝を折った。
「逃がすわけにはいきません……」
 雫は起きあがって向かってきた熊一頭を強撃でいなす。
 止めはザレムのデルタレイだ。三角形の光から放たれた光条が熊二頭を完全に仕留めきる。
「手早く解体してしまいましょう」
「鹿の解体はよくやったけど熊は久しぶりなの。腕が鳴るの」
 ミオレスカとディーナが熊二頭の解体を開始した。
 まずは血抜き。喉や手首、足先などに切れ目を入れてから、仲間に手伝ってもらって逆さまに吊す。
 血が抜けたところで小川へ持っていく。縄で繋いでから水中に沈めた。血抜きもそうだが残った体温をどれだけ早く逃がすかで肉の味が決まる。
 冷えるのを待っていると、集落の方から鳴り物の音が聞こえた。急いで戻ってみると三頭の小熊が柵近くの穴に落ちている。
「あの熊の子でしょうね」
 ミオレスカが一頭を抱きかかえた。歩けるようだが生後からまだ大して経っていないようだ。
「親熊が持ち帰った玉蜀黍を食べたかも知れませんが、場所も、またそれが何処にあったのかは知らないと思います」
 ミオレスカの意見が仲間達に受け入れられる。アルト、雫と一緒に小熊三頭を集落から離れた断崖の向こう側まで連れて行くことにした。解体中の熊二頭はザレム、万歳丸、ディーナに任せ、夜空が白んだ頃に馬車で出発。彼女達が戻ってきたのは夕方であった。


「ちょいと行ってくるで。おいらの分、とっておいてな」
 一頭分の熊肉を売り払うためにベッタが馬車で古都へと出かけていく。
 ディーナは何頭分でも大丈夫なのにと残念がったが、食べきれないとガローアが判断したからである。
 その後、ガローアは畑へ。ハンター達は二手に分かれた。畑仕事を手伝うのは万歳丸、アルト、雫の三名。ザレム、ミオレスカ、ディーナの三名は熊一頭分の処理に取りかかった。

「あ? 種や粒なんかしらねェ!! 読みにくいしよォ。それより俺ァ身体を動かしてェンだ!!!」
「まったく、しょうがないな」
 今日も凄まじい勢いで鍬を振るう万歳丸。できあがっていく畝に粒を蒔いたのはアルトである。
 ガローアが鍬を入れた後、畝に粒を埋めていったのは雫だ。
「次に玉蜀黍の種を保管する場所は住処の近くにするつもりだよ」
「いいと思います。できるだけ野生動物を駆除しなければならないのは避けたほうがよいですし」
 雫がガローアに頷く。
 畑仕事は順調で数日中に終わりそうである。

「これはラッキーアイテムだからな」
 ザレムはガローアに頼んで熊の爪を一本もらっていた。
 昨晩の解体で取りだした数々の骨は後日のために干しておく。先に取りかかったのは脂肪の加工だ。
 鍋で煮込んで脂分を取りだす。不純物を取り除いたところで瓶詰めにした。灯りの燃料にも使えるし、さらに加工すれば石鹸にもなる。
 皮のなめしはベッタに任せることにした。彼が以前に加工したシモフリの剥製は応接間の壁に飾られている。その青い毛並みは非常に美しかった。

「乾燥させるとすごく固くなるけど焼いたって同じだもの。携帯食用のジャーキーをたくさん作るの」
 ディーナが取りかかったのは熊肉のジャーキー作りだ。
 調味液に浸けて風通しのよい日陰で乾燥。保存性を優先して冷燻で仕上げる。一部は味を優先して温燻にしてみた。
 畑仕事を挟みつつ、翌日には野性味溢れる熊ジャーキーが完成する。
「うん。とても美味しいの」
 一緒に作ったザレムやミオレスカと試食。ディーナは頬を綻ばせた。

(毛皮はガローアさんが立派に仕上げてくれることでしょう。きっと高く売れますね)
 ミオレスカは調理場にて包丁を振るいながら鼻歌を唄う。
「これならリゼリオに戻るまで充分に持つはずです」
 自分の分も含めてハンター仲間が持ち帰る分の熊肉を切り分けた。外側に塩を塗り、全体を軽く燻っておく。
 後は布にくるんで冷所に保存しておけば大丈夫。外側を軽く削れば熟成した生の熊肉がリゼリオでも使える手筈である。

 その日の夕食メニューはあっと言う間に決まる。ザレムが「熊といえば?」と訊ねると、ディーナとミオレスカが「鍋!」と答えたからだ。ちなみに他の仲間も鍋を希望する者は多かった。
 外出中のベッタには後日食べてもらうとして、頭数は七名。せっかくなので三種類の熊鍋を用意する。
「前に使ったお醤油が……ありました。それとシモフリ乳のチーズも使ってコクをだしましょう」
 ミオレスカの熊鍋は醤油を使いながらも洋風仕立てだ。
 ザレムは鍋の用意の前に熊肉の削ぎ切りにする。
「こいつは焼くとして、あと、野菜たっぷりの熊鍋か」
 ザレムは葉物野菜や茸類も足しての熊鍋を仕上げていく。煮すぎるとかたくなるので熊肉の投入は慎重に。肉を焼くのも畑仕事の仲間が戻ってきてからだ。
 ディーナが使う調理台にはたくさんの酒瓶が並んでいる。
「お酒を入れて鍋の具にするの」
 ディーナが鍋に酒をなみなみと注ぐ。その様子を水を飲むために調理場へやってきたガローアが眺めていた。
「熊の鍋は、お酒じゃんじゃん使った方が美味しいの。ガローアは、お酒好き?」
「好きだよ。美味しそうだ。ベッタ、きっと悔しがるな。奴が戻ってきたら、もう一度作ってもらえる?」
 ディーナはガローアに笑顔で「うん♪」答えるのだった。

 日暮れ頃、全員が居間のテーブルを囲んで夕食の時間となった。
「体を温めて美容効果もバッチリなの」
 椀を手にしたディーナがガローアに熊鍋を取り分けてくれる。
「……へぇ~、お酒を使うとこんな味になるんだ」
 ガローアはさっそく熊肉から頂く。臭みがなくて柔らかい。
「明日の畑分も英気養いましょうなの」
 ディーナもあんぐりと頂いて頬をモグモグと動かす。
「やっぱり肉はうめェぜ!」
「たくさんありますからね」
 万歳丸がかっ食らう姿を見てからミオレスカも熊肉も頬張った。味見したときよりも、より深い味に仕上がっていた。
「焼き肉もいけるぞ」
「ほう、これは」
 ザレムに勧められてアルトが熊肉焼きを味わう。野趣溢れる味だが凄く美味しい。
「せっかくの命です。無駄にはできませんから」
「命は紡いでいかないとね」
 雫がガローアに頷いてから熊肉料理を食べ始める。
「牛か、刻令術の農機具の導入も、考えたいですね」
「乳牛はいるんだけどね」
 ミオレスカの言葉にガローアが悩む。彼女の言うとおり、玉蜀黍以外にも農作物を育てるとすれば確かに必要である。
「私達も、いつもお手伝いできるわけでもないので、えっと、お嫁さん、など?」
「お、お嫁さん?!」
 ミオレスカの何気ない一言にガローアは顔を真っ赤に染めさせたのだった。


 翌日からは全員で畑仕事に精をだす。
「何だかちょっぴりツルツル感なの♪」
 ディーナがご機嫌な様子で粒を蒔いていく。彼女だけでなく全員が熊鍋を食べたおかげで調子がよかった。
 夕方にはベッタが戻ってくる。熊肉は想像していたよりも高い値で売れたとのこと。さらに熊の毛皮の予約もとれたという。
「こないにうまい熊鍋、初めてや! 焼き肉も柔らこうて。どないしたらこないにできるんや?」
 ベッタも熊肉料理に舌鼓を打つ。
 畑仕事が終わってハンター達は帰路に就くこととなる。
「バイト先に持って行って鍋にでもしようか」
 アルトはずしりと重い袋を馬車へと運び入れた。中身は熊肉だ。
「熊の毛皮がどう仕上がるか楽しみだ。それにしてもシモフリの青い毛皮はとても綺麗だったな」
 御者のザレムが手綱をしならせて出発。ガローアとベッタに見送られる。
「玉蜀黍、秋が楽しみですね」
「すげェたくさん育っているぜ、間違いねェ!」
 ミオレスカと万歳丸が玉蜀黍を話題にした。
「熊の生肉の他に、ジャーキーをもらったの。みんな食べる?」
 ディーナが仲間達に熊肉ジャーキーを分ける。食べると噛めば噛むほどに旨味が口の中で広がった。
「小熊達を遠くにやれたことはなによりでした……」
 雫が森の道を振り返りながら、そう呟く。
 古都に辿り着いたハンター一行は借りた馬車を返却。転移門からリゼリオへと戻るのだった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士
  • 撫子の花
    明王院 雫(ka5738
    人間(蒼)|34才|女性|闘狩人
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/06 17:05:08
アイコン たま……を……する敵
万歳丸(ka5665
鬼|17才|男性|格闘士(マスターアームズ)
最終発言
2016/04/07 13:05:42