ゲスト
(ka0000)
【AP】裏生徒会長サチコVS偽魔法少女
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/11 22:00
- 完成日
- 2016/04/19 17:50
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
ここは関東近郊にあるクライズ学園。
街をまるごと飲み込む形で存在し、様々な生徒が通っている。異文化交流もとい異世界交流を推奨し、クリムゾンウェストからも多くの学生が通う。
これは、そんなもしかしたらの世界のお話。
クリムゾンウェストとリアルブルーが真に交差し、文化交流を果たした世界。
●
サチコ・W・ルサスールは、クラウズ学園の「裏」生徒会長である。
裏生徒会の目的は、特に無い。なぜなら、サチコが何か格好いいという理由だけで、創りだした組織だからだ。
紆余曲折を経て、旧校舎の一室を充てがわれた。サチコはそこを根城にして、のんびり過ごしている。時折、表の生徒会から厄介事を押し付けられることもあった。
そして、今……サチコは表生徒会から呼び出しを食らっていた。
「前置きとかいいので、私が呼び出された理由を教えて下さい……」
ため息混じりに生徒会のふかっとしたソファに腰掛けながら、サチコは生徒会長に問いかけた。遡ること30分前、サチコは放課後のゆるやかな時間を図書館で借りた『魔法少女☆ハッピースール』に費やそうとしていた。
だが、学校中に響き渡るチャイムとともにサチコは生徒会に呼び出された。その手には、いまだに『魔法少女☆ハッピースール』が握られている。
生徒会長システィーヌはサチコの本に一瞬視線をやると、
「ちょうどよいですね」
と意図の読めない発言をした。
サチコが片眉を上げる中、システィーヌは続けていう。
「裏生徒会長に是非とも捕まえていただきたい奴らがいるのです」
やや遠い目をしながら、システィーヌは語り始める。
ここ一週間で発生している、とあるHENTAI的事件のことを……。
●
事件1、×月××日、新校舎某教室にて――。
田中(仮名)さんは、忘れ物を取りに夕方の教室にきた。特に問題なく忘れ物を回収し、教室を出ようとした時、それに気づいたという。
「お嬢さん、お困りですかな?」
それは魔法少女の服を着込んだ、どう見積もっても20代後半の男性であった。きゅるりんとポーズを決めて、魔法少女男は田中さんに近づく。
小さな悲鳴を上げて、後ずさる田中さんに魔法少女男は再び告げた。
「何か、お困りですかな?」
「い、いえ、もう解決しました……」
「そうですか。もし、何か困りごとがあれば私を呼びなさい」
すね毛の生えた脚をスカートから伸ばし、魔法少女男は名乗りを上げた。
「我が名はハッピースール。見ての通り、魔法少女だよ☆」
魔法少女男はそう言うと、意気揚々と教室を出て行ったという。
事件2。×月×2日、新校舎屋上にて――。
その日、山本(仮名)くんは数名の不良によって粛清されていた。
そこへ現れたのが、事件1と同じ魔法少女男だった。
「おい、貴様ら何をしているっ!」
ポーズを決めて現れた魔法少女男に、不良たちは難癖を付けて襲いかかろうとした。すると魔法少女男の後ろから、色違いの魔法少女服を纏った男たちが姿を表した。年齢はバラバラだが、全員が成人済みのようであった。
「私たちは、魔法少女――ハッピースール!」
全員でポーズを決めて、不良たちをのしていく。山本くんが気がついたときには、不良はボロ雑巾のようにされて連行されていったという……。
●
「他にもいくつか魔法少女を纏った男たちによる事件が相次いでいます」
「……えー」
サチコはシスティーヌと同じ渋面を作っていた。
「本来であれば、生徒会が排斥せねばならない事案なのですが……」
システィーヌはちらりと横にいる副生徒会長を見た。一つ咳払いをして、副生徒会長が言葉を引き継ぐ。
「このような変態的事案は、裏の仕事だと進言が相次ぎましたので」
「私たちは便利屋ではありませんし、ましてや、汚れ仕事専任ではありませんわ!」
ぐるるとサチコはがなるが、副生徒会長はツンとした態度で取り合わない。一方のシスティーヌは申し訳無さそうに告げる。
「私も、今回の件は非常に心苦しいのです。ですが」
「ですが?」
「誰かに託すのなら、同じく魔法少女を愛する者。つまり、あなたに魔法少女と呼ぶにもおぞましい変態どもを討伐して欲しいのですわ!」
システィーヌはサチコの持つ魔法少女本に手を添えて、言い切った。サチコは胸が熱くなるのを感じ、システィーヌの手を握り返した。
「わかりましたわ! このサチコ・W・ルサスール、同志として必ずや倒してみせますわ!」
興奮気味に事件ファイルを受け取ったサチコは、足早に生徒会室を退出した。
副会長は「素晴らしい演技でした。まったく魔法少女などに現を……」と溜息混じりに告げる。ふと、システィーヌを見れば手には『魔法少女☆ハッピースール ファンブック』が握られていた。
「会長?」
副会長の静かな問いかけにシスティーヌは気づかない。握りしめたファンブックを熱のこもった視線で見つめ、一言告げる。
「私も、魔法少女になりたかったわ……」
副会長は天井を仰ぎ見て、眉間にしわ寄せ、目頭を強く押さえるのだった。
●
「さぁ、やりますわよ!」
サチコは旧校舎に作られた裏生徒会室に入ると、ホワイトボードにこう記した。
偽魔法少女討伐大作戦!
そして、参考資料を読むのだと言わんばかりに『魔法少女☆ハッピースール』を読みふけるのだった。
ここは関東近郊にあるクライズ学園。
街をまるごと飲み込む形で存在し、様々な生徒が通っている。異文化交流もとい異世界交流を推奨し、クリムゾンウェストからも多くの学生が通う。
これは、そんなもしかしたらの世界のお話。
クリムゾンウェストとリアルブルーが真に交差し、文化交流を果たした世界。
●
サチコ・W・ルサスールは、クラウズ学園の「裏」生徒会長である。
裏生徒会の目的は、特に無い。なぜなら、サチコが何か格好いいという理由だけで、創りだした組織だからだ。
紆余曲折を経て、旧校舎の一室を充てがわれた。サチコはそこを根城にして、のんびり過ごしている。時折、表の生徒会から厄介事を押し付けられることもあった。
そして、今……サチコは表生徒会から呼び出しを食らっていた。
「前置きとかいいので、私が呼び出された理由を教えて下さい……」
ため息混じりに生徒会のふかっとしたソファに腰掛けながら、サチコは生徒会長に問いかけた。遡ること30分前、サチコは放課後のゆるやかな時間を図書館で借りた『魔法少女☆ハッピースール』に費やそうとしていた。
だが、学校中に響き渡るチャイムとともにサチコは生徒会に呼び出された。その手には、いまだに『魔法少女☆ハッピースール』が握られている。
生徒会長システィーヌはサチコの本に一瞬視線をやると、
「ちょうどよいですね」
と意図の読めない発言をした。
サチコが片眉を上げる中、システィーヌは続けていう。
「裏生徒会長に是非とも捕まえていただきたい奴らがいるのです」
やや遠い目をしながら、システィーヌは語り始める。
ここ一週間で発生している、とあるHENTAI的事件のことを……。
●
事件1、×月××日、新校舎某教室にて――。
田中(仮名)さんは、忘れ物を取りに夕方の教室にきた。特に問題なく忘れ物を回収し、教室を出ようとした時、それに気づいたという。
「お嬢さん、お困りですかな?」
それは魔法少女の服を着込んだ、どう見積もっても20代後半の男性であった。きゅるりんとポーズを決めて、魔法少女男は田中さんに近づく。
小さな悲鳴を上げて、後ずさる田中さんに魔法少女男は再び告げた。
「何か、お困りですかな?」
「い、いえ、もう解決しました……」
「そうですか。もし、何か困りごとがあれば私を呼びなさい」
すね毛の生えた脚をスカートから伸ばし、魔法少女男は名乗りを上げた。
「我が名はハッピースール。見ての通り、魔法少女だよ☆」
魔法少女男はそう言うと、意気揚々と教室を出て行ったという。
事件2。×月×2日、新校舎屋上にて――。
その日、山本(仮名)くんは数名の不良によって粛清されていた。
そこへ現れたのが、事件1と同じ魔法少女男だった。
「おい、貴様ら何をしているっ!」
ポーズを決めて現れた魔法少女男に、不良たちは難癖を付けて襲いかかろうとした。すると魔法少女男の後ろから、色違いの魔法少女服を纏った男たちが姿を表した。年齢はバラバラだが、全員が成人済みのようであった。
「私たちは、魔法少女――ハッピースール!」
全員でポーズを決めて、不良たちをのしていく。山本くんが気がついたときには、不良はボロ雑巾のようにされて連行されていったという……。
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「他にもいくつか魔法少女を纏った男たちによる事件が相次いでいます」
「……えー」
サチコはシスティーヌと同じ渋面を作っていた。
「本来であれば、生徒会が排斥せねばならない事案なのですが……」
システィーヌはちらりと横にいる副生徒会長を見た。一つ咳払いをして、副生徒会長が言葉を引き継ぐ。
「このような変態的事案は、裏の仕事だと進言が相次ぎましたので」
「私たちは便利屋ではありませんし、ましてや、汚れ仕事専任ではありませんわ!」
ぐるるとサチコはがなるが、副生徒会長はツンとした態度で取り合わない。一方のシスティーヌは申し訳無さそうに告げる。
「私も、今回の件は非常に心苦しいのです。ですが」
「ですが?」
「誰かに託すのなら、同じく魔法少女を愛する者。つまり、あなたに魔法少女と呼ぶにもおぞましい変態どもを討伐して欲しいのですわ!」
システィーヌはサチコの持つ魔法少女本に手を添えて、言い切った。サチコは胸が熱くなるのを感じ、システィーヌの手を握り返した。
「わかりましたわ! このサチコ・W・ルサスール、同志として必ずや倒してみせますわ!」
興奮気味に事件ファイルを受け取ったサチコは、足早に生徒会室を退出した。
副会長は「素晴らしい演技でした。まったく魔法少女などに現を……」と溜息混じりに告げる。ふと、システィーヌを見れば手には『魔法少女☆ハッピースール ファンブック』が握られていた。
「会長?」
副会長の静かな問いかけにシスティーヌは気づかない。握りしめたファンブックを熱のこもった視線で見つめ、一言告げる。
「私も、魔法少女になりたかったわ……」
副会長は天井を仰ぎ見て、眉間にしわ寄せ、目頭を強く押さえるのだった。
●
「さぁ、やりますわよ!」
サチコは旧校舎に作られた裏生徒会室に入ると、ホワイトボードにこう記した。
偽魔法少女討伐大作戦!
そして、参考資料を読むのだと言わんばかりに『魔法少女☆ハッピースール』を読みふけるのだった。
リプレイ本文
●
「準備が整いましたわ!」
クライズ学園旧校舎、裏生徒会室に本をたたむ音が響く。
音の主、サチコは、単に魔法少女本を読み終えただけだった。
「それでは、サチコさんはいつもどおり仲間と情報を集めてください」
おもむろに切り出したのは、裏生徒会の会計役を担う最上 風(ka0891)だった。
デジタルカメラをいじる風に、サチコは小首を傾げる。
「風さんは一緒に来ませんの?」
「風は頭脳派ですからねー。足よりも頭で情報をかせぎますよー」
決して、面倒というわけではありませんからと付け加える。
サチコは、なるほど、と納得した。
「それでは、そちらはお任せしますわ!」
「はーい」
風の返事を背中に受け、サチコは裏生徒会室を出る。
旧校舎を出たサチコの元に、同級生の天竜寺 詩(ka0396)が駆け寄ってくるのが見えた。小脇にハッピースールの本を抱えている。
「サチコさん、話を聞いたよ」
話、と問い返すサチコに詩は頷く。
「ファンとしてイメージを壊されるような真似は許せないよ。ちょっと階段から転げ落ちちゃって怪我しちゃってるけど……大丈夫だから協力させて!」
視線を本に向け、サチコは話を理解した。
こうして詩を仲間に加え、サチコは情報収集へと赴く。
「ハッピースールの偽物が出没してるって噂だけど見たこと無い?」
詩はクラスメイトを手始めに、聞きこみを始めた。彼らがどれぐらいで現れて、どっちへ去っていったのか。また事件などが起こる前後に不審な人物とかを見なかったか。
「あとで、情報を整理しないとね」
「……予想以上に噂が立っていますわね」
魔法少女の噂もそうだが、裏生徒会が討伐に乗り出したという噂も混ざっていた。
「お、いたいた」
中庭を歩いていると、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が近づいてきた。足下まで伸びるロングスカートの古風な不良学生だ。
その姿を見ると、サチコは小さく頭を下げた。
「えと、番長連合のボルディアさんでしたっけ。ご無沙汰……してます」
「番長連合は俺が番長王になったとき、即時解散したんだ」
ボルディアは肩をすくめた。番長連合は解散したが、つながり自体が消えたわけじゃない。人海戦術を利用して情報収集も手早く可能だ。
やや歯切れの悪いサチコの肩に腕を回して、ボルディアは告げる。
「水臭ェこというな。一度肩を並べて戦った仲だろう。お前はもうダチだよ」
「そういうことでしたら、おねがいしますわ」
「任された。んじゃ、情報集まったら、また来るぜ」
すぐにアジトもわかるはず、とボルディアは意気揚揚と去っていく。
その背中を見送るサチコ達……を見つめる影があった。
「その話、俺も協力させてもらおうか」
「え」
振り返れば、神出鬼没な用務員ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)の姿があった。
彼曰く、「避けられたり、後ろ指を指される」たくないという。仕事柄、学園のいたるところに現れるヴォーイを魔法少女一味ではないかと疑う向きがあるらしい。
サチコは曖昧な笑みを浮かべ、「あー」とわからないでもない声を出した。
「魔法少女よりヒーローだろ、常識的に考えて」
「その意見には賛同しかねますわ!」
ヴォーイの言葉にサチコは過敏に反応するが、方向性の違いはあれ正義を貫くことに違いはないのだと納得させた。
「OBのつながりを探ってみるよ。それに……気になることもあるしな」
「気になること?」
「確認できたら報告するさ。また、後でな」
思案顔のヴォーイを見送り、サチコたちは次の場所へ移動をするのだった。
●
「やはり、面白いことになりそうですわね」
サチコたちが足で情報を稼いでいる頃、高等部2年、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)は学園のカフェテリアでタブレットを操作していた。
くすりと笑みを浮かべ、『噂の魔法少女について情報求ム』と学内掲示板に書き込みを行う。飲み物を口に運び、情報が集まるのを待つ。
サチコが詩とともに情報収集をしているとき、彼女もまた協力を買って出たのだった。心から今回の事件の解決を願っているのだと告げたが……実際は面白そうだからという動機だったりする。
「もう少し時間がかかりそうかしら」
掲示板の書き込みを確認し、ヴァルナは傍らの本に手を伸ばす。ハッピースールの本だ。参考程度に暇な間に読む用に買ってきたものだ。
敵を知り己を知れば……の精神である。
「あら、可愛らしい格好ですね」
挿絵をしげしげと眺めながら、ヴァルナはタブレットを操作する。何かがカートに入り、何かの決済が済んだような気がしたが……何を購入したのかはヴァルナ本人しかしらないのである。
●
一方その頃、表の生徒会室では風が資料を請求して読みふけっていた。
生徒会顧問の数学教師ヴァイス(ka0364)は、風に資料を手渡すと肩眉を上げた。何かと騒動を引き起こす裏生徒会。そのメンバーを観察するように眺める。
「あまりじろじろ見ていると、訴えますよ―?」
風が見上げざまに告げた。
「読み終わったら、会長に声をかけてくれ。俺はちょっと出かけてくる」
裏生徒会だけに任せるわけにはいかない。監視役としてサチコたちに合流すべくヴァイスは生徒会室を出て行った。
それを見計らったように、風が動き出す。
「一通りは呼んだのですが、生徒会長さんからもお話を聞かせていただけますか?」
ファイルを閉じ、システィーヌに視線を送る。システィーヌもちょうど執務が一段落したところらしく、筆を置いた。
応接用ソファに腰掛け、何が聞きたいのですか、とシスティーヌは問う。
「風をはじめ、今回の参加メンバーは魔法少女に疎い人もいますからねー。ぜひとも、ご教授を願いたいと思いまして」
「え」
「ダメですか?」
副会長が止めに入る前に、風は畳み掛ける。
「ぜひとも、会長さんから直接サチコさんに魔法少女の口上を教えていただきたく。にせものを呼び出すには、本物の魔法少女がいるほうがいいと思うのですよ」
そのために、ぜひともシスティーヌの力が必要だとゴリ押しする。
「会長さん、サチコさんを、真の魔法少女にするために、ご協力願えませんか。学園のために」
「……し、仕方ありませんわね。そこまで言われてしまっては」
副会長が止めようとするが、風がこれを「副会長も裏生徒会だけに任せておくわけにはいきませんよねー」と不安を煽って防ぐ……もとい、一緒にこさせるよう交渉する。
「取り込み中だったかな」
ノックはしたんだけど、とここで鈴胆 奈月(ka2802)が生徒会室に入ってきた。
外で話を聞いていた奈月は、しれっと会話に介入を試みる。
「二人にはぜひ、同行してほしい。安全は保証する」
奈月はいつもの表情で、告げる。
「魔法少女を置いても、裏生徒会の活動をしっかりと確認して欲しいんだ。活動内容とか、人とか……ダメかな?」
「……わかりました。同行しましょう」
奈月の言葉に思うところがあるのか、副会長は同行を許可する。
サチコたちに合流するべく生徒会室を出た風は、奈月に今回は前向きみたいだと尋ねた。
「間違ってもあれらと同類に見られたくはないからな」
同じ覚醒者として討つ必要感じ、奈月はやる気を見せていた。すでに情報をサボタージュ仲間から集めているらしい。二人は一度、裏生徒会室に戻るのだった。
●
ヴァルナが見せる画面を前に、
「わー、本格的な衣装だねー」と夢路 まよい(ka1328)は声を上げた。
いつのまに合流したのか、まよいがサチコと詩の傍にいたのだ。特に気にもせず、友達だからいいかという形でここまで連れて来ていた。
「なるほど、こりゃいかんな」
厳しい表情でヴァイスがいう。画面には、ネットに寄せられた偽魔法少女の写真が出ていた。見るからにHENTAIである。
「こんな目立つんなら、嫌でもアジトがわかるわな……」
呆れ顔で告げるのは、ボルディアだ。不良仲間から寄せられた情報で、即座にアジトの位置は特定された。奈月の情報、詩が得た証言を合わせてほぼ確定である。
「目撃者の話だと、連絡要員はいないみたい」
「それについちゃ、俺に情報がある」
扉を開けて颯爽登場したのはヴォーイだ。彼の調査によれば、小動物と視界を共有する術があるらしい。現場には、鳥の羽根や動物の毛らしき残留物が残されていた。
「ほぼ、間違いないぜ」
なお、彼が小動物と話したり地面をくまなく探索する姿を見せたために、別の噂がたつのだが……それはまた別のお話。
「決まりだな」
「目には目を歯には歯を……囮作戦結構だね!」
詩の言葉に全員が頷く。なお、ここにはサチコの姿はない。
なぜなら、囮役は囮だと知らされていないほうがよいからである……。
●
新校舎の一角、放置された資料室にサチコは連れ込まれていた。システィーヌや副会長を連れた風と奈月の姿もある。二人は、裏生徒会室の面々から情報を受けてここを誘導場所と決めていた。
「ねぇねぇ、サチコも魔法少女にきょ~みあるの?」
不意にサチコに声をかけたのは、いつのまに現れたのか、まよいであった。
サチコが、「え」と気恥ずかしそうな声を上げたのに合わせて畳み掛ける。
「それならいっそ、魔法少女になっちゃえばいいんじゃない?」
自分とお揃いの服で着飾ろうとふりふりの服を見せてくる。押されるがまま、サチコは着替えさせられる。奈月と副会長は外を向いて待機を命じられた。
「もう、なっていませんわ!」
「……会長?」
「決め台詞はどうしますの。恰好だけでは、いけませんわよ」
「会長!?」
副会長の叫び虚しく会長も釣られるがままに、サチコの着替えを手伝い始める。言葉の端々に興奮が感じられ……シャッター音にも気づかなかった。
「流石、会長さん。魔法少女にも非常に詳しいのですねー。まるで、魔法少女マニアのようです」
静かに風は副会長に近づく。彼にだけ聞こえる声で、
「あれ、演技ではなくて素ですよねー?」と問いかけるのだった。副会長のバツが悪そうな顔に視線を向け、カメラをちらつかせる。
彼のため息が聞こえてくるようであった……。
「これ、小さいですわ! ちょ、無理やり着せないで……」
サチコの声が悲鳴に変わり始めた。まよいの用意した服は、まよい用のサイズのためサチコには小さいのだ。切れたとしてもアチラコチラの露出が激しいものになる。
泣き声も混じり始めた時、端の方でネズミがまばたきをした。
刹那――。
「そこまでだ! いたいけない少女をイヂメる悪党ども!」と空き教室の扉を開けて奴らが入ってきた。魔法少女の衣装に身をまとった集団だ。
だが、彼らはそこから先の口上を述べる前に、教室内へ突き入れられた。
「逃げ場は塞がせてもらうぜ?」
ボルディアが素早い連撃で男どもを突き飛ばしたのだ。もう片側の扉からは、ヴァルナが姿をあらわす。
どこから取り出したのか、身長と同じぐらいの金属ハリセンを持っていた。どこから取り出したのか、という奈月の疑問に、
「乙女の身体と服には秘密がいっぱいなんです」と笑って答える。
ハリセンならば、抜けれるかと男どもが目配せしたのを見て、笑みを深める。
「そうそう、刃は付いていないので安心していいですよ」といいながら、壁を突く。少しばかり壁から破片がこぼれ落ちた。
「これでも壁に穴を開けるぐらいは出来ますけども……自称魔法少女の皆さんは覚醒者ですから問題ありませんよね」
「壮観……だな。悪い意味で」
ヴァルナの登場に合わせて、奈月も振り返る。振り返ればHENTAIたちがいた。
いつでも戦えるように懐中時計とナイフを手にする。
「さて、おとなしく縛についてもらおうか」
ロッカーから飛び出してきたヴォーイが、サチコに蝙蝠外套を被せてハリセンとロープを取り出す。
偽魔法少女たちは、ならば窓からと窓へ向かおうとしたのだが……。
「もう、ハッピースールは可愛い子たちばかりなんだから! イメージ崩さないでよね!」と怒り心頭の詩が姿を現し、弓をひく。
トドメとばかりに、窓辺に一人の男……が姿を表した。
「窓からも脱出させはせんよ」
ヴァイス……が、なぜか魔法少女の衣装を着込んで立っていた。目には目を歯には歯を作戦の言葉をそのまま体現してしまったのだ。
「お前は、何だ!」
「ま……マジカル。そう、マジカルプリンセス☆システィだ!」
「人の名前使わないで下さいます!?」
偽魔法少女の言葉にヴァイスは咄嗟に答え、システィーヌから罵声を浴びた。
実際、システィーヌのことが思い浮かんだので使ったとは口が裂けても言えない。
「マジカルプリンセスの力、受けてみろ!」
ヴァイスは聞かなかったことにした。
こうして、始まった偽魔法少女VS裏生徒会有志連合の戦いは圧巻を極めた。
偽魔法少女たちは連携した動きで脱出を図る。それを舞が光の杭を打ち込んで動きを阻害する。ボルディア、ヴァイス、ヴァルナ、ヴォーイの前衛四人組の苛烈な攻撃を前に、またたく間に体力が削られていった。
「来世で女子に生まれてからやり直してくれ」と奈月らの言葉も刺さる。
最終的には、
「そう……その姿があなたたちの夢だったんだね」
まよいが両手を上げて、薄い霧を発生させる。
「でもね、夢ならもっと素敵なのを私が見せたげる! 果てなき夢路に迷えっ……スリープクラウドッ!!」
眠り誘う霧に抵抗すら出来ない夢見る男どもは、全身傷だらけの中、夢に落ちるのだった。
●
「オイ、いい年した男がこんなヒラヒラしたもん着てンじゃねぇ」
偽魔法少女(ヴァイス含)は逃げられないようロープに縛られ、ボルディアの説教を受けていた。
「人助けしようってテメェ等の気概は認めてやる。後は、その嗜好を治すだけだな」
言い訳しようと口を開けば、ボルディアは拳を机に叩きこみ睨みを利かす。全員が反省の色を示し始めた頃、風が近づいた。
「ジロさん。反省しているのなら、サチコさんのもとで学園のために働きませんか」
「そうそう折角なら、裏生徒会長を魔法少女としてプロデュースするってのもアリだろ」
プロデュースと唱え直す彼らもまんざらではないようだった。
「とりあえず、生徒会長。あなたから解散宣言を出してくれ。あと、そっちの顧問は任せた」
システィーヌは咳払いをすると、偽魔法少女軍団に解散命令を下した。個々の処罰は後ほど、と正式に引き受けるようだ。
なお、ヴァイスは副会長に引きずられていった。
「こうして、偽魔法少女は倒されて学園に平和が戻りました。サチコとシスティーヌが魔法少女として活躍するのですが、それはまた、別のお話」
「ちょっと、勝手なこといわないでくれます!?」
「そうですわ!」
まよいが空に向けて告げる言葉に、両生徒会長が過敏に反応する。その後ろ姿を見ながら、詩は楽しそうだなと笑みを浮かべ、ヴァルナはそっと魔法少女コスを二着発注するのだった。
「準備が整いましたわ!」
クライズ学園旧校舎、裏生徒会室に本をたたむ音が響く。
音の主、サチコは、単に魔法少女本を読み終えただけだった。
「それでは、サチコさんはいつもどおり仲間と情報を集めてください」
おもむろに切り出したのは、裏生徒会の会計役を担う最上 風(ka0891)だった。
デジタルカメラをいじる風に、サチコは小首を傾げる。
「風さんは一緒に来ませんの?」
「風は頭脳派ですからねー。足よりも頭で情報をかせぎますよー」
決して、面倒というわけではありませんからと付け加える。
サチコは、なるほど、と納得した。
「それでは、そちらはお任せしますわ!」
「はーい」
風の返事を背中に受け、サチコは裏生徒会室を出る。
旧校舎を出たサチコの元に、同級生の天竜寺 詩(ka0396)が駆け寄ってくるのが見えた。小脇にハッピースールの本を抱えている。
「サチコさん、話を聞いたよ」
話、と問い返すサチコに詩は頷く。
「ファンとしてイメージを壊されるような真似は許せないよ。ちょっと階段から転げ落ちちゃって怪我しちゃってるけど……大丈夫だから協力させて!」
視線を本に向け、サチコは話を理解した。
こうして詩を仲間に加え、サチコは情報収集へと赴く。
「ハッピースールの偽物が出没してるって噂だけど見たこと無い?」
詩はクラスメイトを手始めに、聞きこみを始めた。彼らがどれぐらいで現れて、どっちへ去っていったのか。また事件などが起こる前後に不審な人物とかを見なかったか。
「あとで、情報を整理しないとね」
「……予想以上に噂が立っていますわね」
魔法少女の噂もそうだが、裏生徒会が討伐に乗り出したという噂も混ざっていた。
「お、いたいた」
中庭を歩いていると、ボルディア・コンフラムス(ka0796)が近づいてきた。足下まで伸びるロングスカートの古風な不良学生だ。
その姿を見ると、サチコは小さく頭を下げた。
「えと、番長連合のボルディアさんでしたっけ。ご無沙汰……してます」
「番長連合は俺が番長王になったとき、即時解散したんだ」
ボルディアは肩をすくめた。番長連合は解散したが、つながり自体が消えたわけじゃない。人海戦術を利用して情報収集も手早く可能だ。
やや歯切れの悪いサチコの肩に腕を回して、ボルディアは告げる。
「水臭ェこというな。一度肩を並べて戦った仲だろう。お前はもうダチだよ」
「そういうことでしたら、おねがいしますわ」
「任された。んじゃ、情報集まったら、また来るぜ」
すぐにアジトもわかるはず、とボルディアは意気揚揚と去っていく。
その背中を見送るサチコ達……を見つめる影があった。
「その話、俺も協力させてもらおうか」
「え」
振り返れば、神出鬼没な用務員ヴォーイ・スマシェストヴィエ(ka1613)の姿があった。
彼曰く、「避けられたり、後ろ指を指される」たくないという。仕事柄、学園のいたるところに現れるヴォーイを魔法少女一味ではないかと疑う向きがあるらしい。
サチコは曖昧な笑みを浮かべ、「あー」とわからないでもない声を出した。
「魔法少女よりヒーローだろ、常識的に考えて」
「その意見には賛同しかねますわ!」
ヴォーイの言葉にサチコは過敏に反応するが、方向性の違いはあれ正義を貫くことに違いはないのだと納得させた。
「OBのつながりを探ってみるよ。それに……気になることもあるしな」
「気になること?」
「確認できたら報告するさ。また、後でな」
思案顔のヴォーイを見送り、サチコたちは次の場所へ移動をするのだった。
●
「やはり、面白いことになりそうですわね」
サチコたちが足で情報を稼いでいる頃、高等部2年、ヴァルナ=エリゴス(ka2651)は学園のカフェテリアでタブレットを操作していた。
くすりと笑みを浮かべ、『噂の魔法少女について情報求ム』と学内掲示板に書き込みを行う。飲み物を口に運び、情報が集まるのを待つ。
サチコが詩とともに情報収集をしているとき、彼女もまた協力を買って出たのだった。心から今回の事件の解決を願っているのだと告げたが……実際は面白そうだからという動機だったりする。
「もう少し時間がかかりそうかしら」
掲示板の書き込みを確認し、ヴァルナは傍らの本に手を伸ばす。ハッピースールの本だ。参考程度に暇な間に読む用に買ってきたものだ。
敵を知り己を知れば……の精神である。
「あら、可愛らしい格好ですね」
挿絵をしげしげと眺めながら、ヴァルナはタブレットを操作する。何かがカートに入り、何かの決済が済んだような気がしたが……何を購入したのかはヴァルナ本人しかしらないのである。
●
一方その頃、表の生徒会室では風が資料を請求して読みふけっていた。
生徒会顧問の数学教師ヴァイス(ka0364)は、風に資料を手渡すと肩眉を上げた。何かと騒動を引き起こす裏生徒会。そのメンバーを観察するように眺める。
「あまりじろじろ見ていると、訴えますよ―?」
風が見上げざまに告げた。
「読み終わったら、会長に声をかけてくれ。俺はちょっと出かけてくる」
裏生徒会だけに任せるわけにはいかない。監視役としてサチコたちに合流すべくヴァイスは生徒会室を出て行った。
それを見計らったように、風が動き出す。
「一通りは呼んだのですが、生徒会長さんからもお話を聞かせていただけますか?」
ファイルを閉じ、システィーヌに視線を送る。システィーヌもちょうど執務が一段落したところらしく、筆を置いた。
応接用ソファに腰掛け、何が聞きたいのですか、とシスティーヌは問う。
「風をはじめ、今回の参加メンバーは魔法少女に疎い人もいますからねー。ぜひとも、ご教授を願いたいと思いまして」
「え」
「ダメですか?」
副会長が止めに入る前に、風は畳み掛ける。
「ぜひとも、会長さんから直接サチコさんに魔法少女の口上を教えていただきたく。にせものを呼び出すには、本物の魔法少女がいるほうがいいと思うのですよ」
そのために、ぜひともシスティーヌの力が必要だとゴリ押しする。
「会長さん、サチコさんを、真の魔法少女にするために、ご協力願えませんか。学園のために」
「……し、仕方ありませんわね。そこまで言われてしまっては」
副会長が止めようとするが、風がこれを「副会長も裏生徒会だけに任せておくわけにはいきませんよねー」と不安を煽って防ぐ……もとい、一緒にこさせるよう交渉する。
「取り込み中だったかな」
ノックはしたんだけど、とここで鈴胆 奈月(ka2802)が生徒会室に入ってきた。
外で話を聞いていた奈月は、しれっと会話に介入を試みる。
「二人にはぜひ、同行してほしい。安全は保証する」
奈月はいつもの表情で、告げる。
「魔法少女を置いても、裏生徒会の活動をしっかりと確認して欲しいんだ。活動内容とか、人とか……ダメかな?」
「……わかりました。同行しましょう」
奈月の言葉に思うところがあるのか、副会長は同行を許可する。
サチコたちに合流するべく生徒会室を出た風は、奈月に今回は前向きみたいだと尋ねた。
「間違ってもあれらと同類に見られたくはないからな」
同じ覚醒者として討つ必要感じ、奈月はやる気を見せていた。すでに情報をサボタージュ仲間から集めているらしい。二人は一度、裏生徒会室に戻るのだった。
●
ヴァルナが見せる画面を前に、
「わー、本格的な衣装だねー」と夢路 まよい(ka1328)は声を上げた。
いつのまに合流したのか、まよいがサチコと詩の傍にいたのだ。特に気にもせず、友達だからいいかという形でここまで連れて来ていた。
「なるほど、こりゃいかんな」
厳しい表情でヴァイスがいう。画面には、ネットに寄せられた偽魔法少女の写真が出ていた。見るからにHENTAIである。
「こんな目立つんなら、嫌でもアジトがわかるわな……」
呆れ顔で告げるのは、ボルディアだ。不良仲間から寄せられた情報で、即座にアジトの位置は特定された。奈月の情報、詩が得た証言を合わせてほぼ確定である。
「目撃者の話だと、連絡要員はいないみたい」
「それについちゃ、俺に情報がある」
扉を開けて颯爽登場したのはヴォーイだ。彼の調査によれば、小動物と視界を共有する術があるらしい。現場には、鳥の羽根や動物の毛らしき残留物が残されていた。
「ほぼ、間違いないぜ」
なお、彼が小動物と話したり地面をくまなく探索する姿を見せたために、別の噂がたつのだが……それはまた別のお話。
「決まりだな」
「目には目を歯には歯を……囮作戦結構だね!」
詩の言葉に全員が頷く。なお、ここにはサチコの姿はない。
なぜなら、囮役は囮だと知らされていないほうがよいからである……。
●
新校舎の一角、放置された資料室にサチコは連れ込まれていた。システィーヌや副会長を連れた風と奈月の姿もある。二人は、裏生徒会室の面々から情報を受けてここを誘導場所と決めていた。
「ねぇねぇ、サチコも魔法少女にきょ~みあるの?」
不意にサチコに声をかけたのは、いつのまに現れたのか、まよいであった。
サチコが、「え」と気恥ずかしそうな声を上げたのに合わせて畳み掛ける。
「それならいっそ、魔法少女になっちゃえばいいんじゃない?」
自分とお揃いの服で着飾ろうとふりふりの服を見せてくる。押されるがまま、サチコは着替えさせられる。奈月と副会長は外を向いて待機を命じられた。
「もう、なっていませんわ!」
「……会長?」
「決め台詞はどうしますの。恰好だけでは、いけませんわよ」
「会長!?」
副会長の叫び虚しく会長も釣られるがままに、サチコの着替えを手伝い始める。言葉の端々に興奮が感じられ……シャッター音にも気づかなかった。
「流石、会長さん。魔法少女にも非常に詳しいのですねー。まるで、魔法少女マニアのようです」
静かに風は副会長に近づく。彼にだけ聞こえる声で、
「あれ、演技ではなくて素ですよねー?」と問いかけるのだった。副会長のバツが悪そうな顔に視線を向け、カメラをちらつかせる。
彼のため息が聞こえてくるようであった……。
「これ、小さいですわ! ちょ、無理やり着せないで……」
サチコの声が悲鳴に変わり始めた。まよいの用意した服は、まよい用のサイズのためサチコには小さいのだ。切れたとしてもアチラコチラの露出が激しいものになる。
泣き声も混じり始めた時、端の方でネズミがまばたきをした。
刹那――。
「そこまでだ! いたいけない少女をイヂメる悪党ども!」と空き教室の扉を開けて奴らが入ってきた。魔法少女の衣装に身をまとった集団だ。
だが、彼らはそこから先の口上を述べる前に、教室内へ突き入れられた。
「逃げ場は塞がせてもらうぜ?」
ボルディアが素早い連撃で男どもを突き飛ばしたのだ。もう片側の扉からは、ヴァルナが姿をあらわす。
どこから取り出したのか、身長と同じぐらいの金属ハリセンを持っていた。どこから取り出したのか、という奈月の疑問に、
「乙女の身体と服には秘密がいっぱいなんです」と笑って答える。
ハリセンならば、抜けれるかと男どもが目配せしたのを見て、笑みを深める。
「そうそう、刃は付いていないので安心していいですよ」といいながら、壁を突く。少しばかり壁から破片がこぼれ落ちた。
「これでも壁に穴を開けるぐらいは出来ますけども……自称魔法少女の皆さんは覚醒者ですから問題ありませんよね」
「壮観……だな。悪い意味で」
ヴァルナの登場に合わせて、奈月も振り返る。振り返ればHENTAIたちがいた。
いつでも戦えるように懐中時計とナイフを手にする。
「さて、おとなしく縛についてもらおうか」
ロッカーから飛び出してきたヴォーイが、サチコに蝙蝠外套を被せてハリセンとロープを取り出す。
偽魔法少女たちは、ならば窓からと窓へ向かおうとしたのだが……。
「もう、ハッピースールは可愛い子たちばかりなんだから! イメージ崩さないでよね!」と怒り心頭の詩が姿を現し、弓をひく。
トドメとばかりに、窓辺に一人の男……が姿を表した。
「窓からも脱出させはせんよ」
ヴァイス……が、なぜか魔法少女の衣装を着込んで立っていた。目には目を歯には歯を作戦の言葉をそのまま体現してしまったのだ。
「お前は、何だ!」
「ま……マジカル。そう、マジカルプリンセス☆システィだ!」
「人の名前使わないで下さいます!?」
偽魔法少女の言葉にヴァイスは咄嗟に答え、システィーヌから罵声を浴びた。
実際、システィーヌのことが思い浮かんだので使ったとは口が裂けても言えない。
「マジカルプリンセスの力、受けてみろ!」
ヴァイスは聞かなかったことにした。
こうして、始まった偽魔法少女VS裏生徒会有志連合の戦いは圧巻を極めた。
偽魔法少女たちは連携した動きで脱出を図る。それを舞が光の杭を打ち込んで動きを阻害する。ボルディア、ヴァイス、ヴァルナ、ヴォーイの前衛四人組の苛烈な攻撃を前に、またたく間に体力が削られていった。
「来世で女子に生まれてからやり直してくれ」と奈月らの言葉も刺さる。
最終的には、
「そう……その姿があなたたちの夢だったんだね」
まよいが両手を上げて、薄い霧を発生させる。
「でもね、夢ならもっと素敵なのを私が見せたげる! 果てなき夢路に迷えっ……スリープクラウドッ!!」
眠り誘う霧に抵抗すら出来ない夢見る男どもは、全身傷だらけの中、夢に落ちるのだった。
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「オイ、いい年した男がこんなヒラヒラしたもん着てンじゃねぇ」
偽魔法少女(ヴァイス含)は逃げられないようロープに縛られ、ボルディアの説教を受けていた。
「人助けしようってテメェ等の気概は認めてやる。後は、その嗜好を治すだけだな」
言い訳しようと口を開けば、ボルディアは拳を机に叩きこみ睨みを利かす。全員が反省の色を示し始めた頃、風が近づいた。
「ジロさん。反省しているのなら、サチコさんのもとで学園のために働きませんか」
「そうそう折角なら、裏生徒会長を魔法少女としてプロデュースするってのもアリだろ」
プロデュースと唱え直す彼らもまんざらではないようだった。
「とりあえず、生徒会長。あなたから解散宣言を出してくれ。あと、そっちの顧問は任せた」
システィーヌは咳払いをすると、偽魔法少女軍団に解散命令を下した。個々の処罰は後ほど、と正式に引き受けるようだ。
なお、ヴァイスは副会長に引きずられていった。
「こうして、偽魔法少女は倒されて学園に平和が戻りました。サチコとシスティーヌが魔法少女として活躍するのですが、それはまた、別のお話」
「ちょっと、勝手なこといわないでくれます!?」
「そうですわ!」
まよいが空に向けて告げる言葉に、両生徒会長が過敏に反応する。その後ろ姿を見ながら、詩は楽しそうだなと笑みを浮かべ、ヴァルナはそっと魔法少女コスを二着発注するのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/10 00:24:22 |
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相談卓 最上 風(ka0891) 人間(リアルブルー)|10才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/04/11 20:27:27 |