ゲスト
(ka0000)
タスカービレの赤い霧
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/13 19:00
- 完成日
- 2016/04/26 00:10
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●前口上
農業推進地ジェオルジに、タスカービレという村があった。
ところがこの村、奥まった場所に位置していた。特に主要道から外れ、どこにも通り抜けできないどん詰まりであるため、発展から取り残され若者が流出し急速に活気を失っていた。
この状況の打開策として、新種の茶葉生産に踏み切った。生産性の向上と新たな価値観を求めたが、これに失敗。廃村へ一直線かと思われたとき、吉報が舞い込んだ。
リアルブルーの戦艦「サルバトーレ・ロッソ」の北方戦線投入に伴う居住民下鑑と、その移民である。同盟諸国が移民を受け入れるに当たり、この受け皿となる地域が募られた。
タスカービレは、新種の茶葉生産の流れから緑茶、白茶(ぱいちゃ)生産に舵を切り、日系・中華系ロッソ人の受け入れに特化。
結構な人が集まり、村は活気を取り戻しつつあった。
また、魔術師協会広報室から資金的援助があり村を護る流派も誕生。
以降、ユニオン人員増強を気にする魔術師協会広報室が何かと気に掛けてくるのだった。
●本編
「おかしい」
タスカービレの奥の森で、村人の猟師が難しい顔をしていた。
手には、短弓。
森の中でも取り回しがしやすいタイプである。
「そろそろウサギなんかがこのあたりに出てもいい頃なんだが……」
きょろ、と見回し呟く。
が、小動物や鳥たちの気配はない。
タスカービレは農地として良好で、住民の大半は農業を営んでいる。猟師の数は少なく、代々弓の技術を伝えている。
ただしその技術はあくまで小動物の狩猟。この地方に出没する、好戦的で立体的な接近戦を得意とする「鬼ザル」に対抗できる手段ではなかった。銃を使うにしろ、戦闘技術が必要だった。先日、刀と銃を使う刀剣流派「青竜紅刃流」を立ち上げた理由である。
それはともかく。
「また鬼ザルがこのあたりに出るようにでもなったか……ん?」
猟師、木々の奥の方が赤くなっていることに気付いた。
光のようでなし、まるで赤く色づいた霧ででもあるようだ、と慎重に近寄ると……。
「うわ……本当に赤い霧じゃないか」
愕然とする猟師。
目の前には確かに赤い濃霧が立ちこめていた。
もちろん奥まで見通せない。
色が白ければ普通の濃霧でしかない。赤く色付いただけでここまで禍々しくなるのか、というほど異彩を放っていた。
「ふ、不吉じゃ……」
猟師、一目散に村へと戻って行った。
しばらく後。
「ひい……」
村の者を連れて猟師が戻ると、初めて目の当たりにした人は皆総毛立っていた。
「い、移動しとる……」
猟師は先ほどとの違いに気付いたようだ。
「何?」
「村の方にジリジリ動いているかもしれない……広がっているだけかもしれんが」
村人を振り返り震える猟師。
「な、何だって」
「お、おい。あれ」
このとき、村人の一人が周囲を舞う蝶々に気付いた。
蝶々はひら、と赤い霧をかすめて……いや、一瞬霧の中に入って見えなくなった。すぐに出てきてそのまま別方向に飛び去ったが。
「なあ。中はどうなってるんだろうな?」
誰ともなしに言った。
「お前、行ってみろよ」
「な……お前が行けばいいだろう」
誰かが声を荒げた。
「やめろ、押すな!」
「ひ、引っ張るんじゃない!」
もみ合う横では。
「……よし、俺が行く」
「何だと。じゃあ俺が行く」
「待てよ、行くのは俺だ」
「押すなよ、絶対押すなよ!」
……なんだかもうグダグダだが、運良く入っていく者はいなかった。
そんなこんなで、村を護る剣術流派、青竜紅刃流の道場たるログハウスに猟師たちが駆け込んだ。
先日、抜刀術など教わった門下生が立ち会い稽古など励んでいたが、この話に「どうしよう」と顔を見合わせる。
「とりあえず、師範たちにすぐ連絡して調べてもらおう」
というわけでイ寺鑑(kz0175)とともに現地に赴き、森にはびこる赤い霧の正体を調査し不安を取り除く人員、求ム。
農業推進地ジェオルジに、タスカービレという村があった。
ところがこの村、奥まった場所に位置していた。特に主要道から外れ、どこにも通り抜けできないどん詰まりであるため、発展から取り残され若者が流出し急速に活気を失っていた。
この状況の打開策として、新種の茶葉生産に踏み切った。生産性の向上と新たな価値観を求めたが、これに失敗。廃村へ一直線かと思われたとき、吉報が舞い込んだ。
リアルブルーの戦艦「サルバトーレ・ロッソ」の北方戦線投入に伴う居住民下鑑と、その移民である。同盟諸国が移民を受け入れるに当たり、この受け皿となる地域が募られた。
タスカービレは、新種の茶葉生産の流れから緑茶、白茶(ぱいちゃ)生産に舵を切り、日系・中華系ロッソ人の受け入れに特化。
結構な人が集まり、村は活気を取り戻しつつあった。
また、魔術師協会広報室から資金的援助があり村を護る流派も誕生。
以降、ユニオン人員増強を気にする魔術師協会広報室が何かと気に掛けてくるのだった。
●本編
「おかしい」
タスカービレの奥の森で、村人の猟師が難しい顔をしていた。
手には、短弓。
森の中でも取り回しがしやすいタイプである。
「そろそろウサギなんかがこのあたりに出てもいい頃なんだが……」
きょろ、と見回し呟く。
が、小動物や鳥たちの気配はない。
タスカービレは農地として良好で、住民の大半は農業を営んでいる。猟師の数は少なく、代々弓の技術を伝えている。
ただしその技術はあくまで小動物の狩猟。この地方に出没する、好戦的で立体的な接近戦を得意とする「鬼ザル」に対抗できる手段ではなかった。銃を使うにしろ、戦闘技術が必要だった。先日、刀と銃を使う刀剣流派「青竜紅刃流」を立ち上げた理由である。
それはともかく。
「また鬼ザルがこのあたりに出るようにでもなったか……ん?」
猟師、木々の奥の方が赤くなっていることに気付いた。
光のようでなし、まるで赤く色づいた霧ででもあるようだ、と慎重に近寄ると……。
「うわ……本当に赤い霧じゃないか」
愕然とする猟師。
目の前には確かに赤い濃霧が立ちこめていた。
もちろん奥まで見通せない。
色が白ければ普通の濃霧でしかない。赤く色付いただけでここまで禍々しくなるのか、というほど異彩を放っていた。
「ふ、不吉じゃ……」
猟師、一目散に村へと戻って行った。
しばらく後。
「ひい……」
村の者を連れて猟師が戻ると、初めて目の当たりにした人は皆総毛立っていた。
「い、移動しとる……」
猟師は先ほどとの違いに気付いたようだ。
「何?」
「村の方にジリジリ動いているかもしれない……広がっているだけかもしれんが」
村人を振り返り震える猟師。
「な、何だって」
「お、おい。あれ」
このとき、村人の一人が周囲を舞う蝶々に気付いた。
蝶々はひら、と赤い霧をかすめて……いや、一瞬霧の中に入って見えなくなった。すぐに出てきてそのまま別方向に飛び去ったが。
「なあ。中はどうなってるんだろうな?」
誰ともなしに言った。
「お前、行ってみろよ」
「な……お前が行けばいいだろう」
誰かが声を荒げた。
「やめろ、押すな!」
「ひ、引っ張るんじゃない!」
もみ合う横では。
「……よし、俺が行く」
「何だと。じゃあ俺が行く」
「待てよ、行くのは俺だ」
「押すなよ、絶対押すなよ!」
……なんだかもうグダグダだが、運良く入っていく者はいなかった。
そんなこんなで、村を護る剣術流派、青竜紅刃流の道場たるログハウスに猟師たちが駆け込んだ。
先日、抜刀術など教わった門下生が立ち会い稽古など励んでいたが、この話に「どうしよう」と顔を見合わせる。
「とりあえず、師範たちにすぐ連絡して調べてもらおう」
というわけでイ寺鑑(kz0175)とともに現地に赴き、森にはびこる赤い霧の正体を調査し不安を取り除く人員、求ム。
リプレイ本文
●
「あっ、先生!」
「師範、お待ちしてました!」
タスカービレに到着した一行を青竜紅刃流の門下生たちが出迎えた。
「偵察だけで誰も踏み込んでないね?」
イ寺鑑(kz0175)がまず確認。
「はいっ!」
「師範たちが来るまで絶対に誰も赤い霧に踏み込むなと村人に言って聞かせました」
「……この前話した『殺す技術』をちゃんと理解してるようですね」
頷く弟子たちに、多由羅(ka6167)が鑑の横からさらっと言った。弟子たちが「自らを生かす」選択をしていたことに満足しているのだ。
「迂闊に踏み込まないで何よりだよ」
軽く安堵したのは、天道 遮那(ka6113)。
安堵してから、ちらと横を見る。
「赤い霧ねー、うーん、燃えて来たじゃーん」
そこには未知なる減少にそわそわしているゾファル・G・初火(ka4407)がいた。前回と違って激しくやる気になっている。というか、踏み込みたくて踏み込みたくて仕方ない。
「迂闊に踏み込むならゾファルくらい強くならないとね~」
ウーナ(ka1439)、遮那の内心を代弁する。
「強ぉても迂闊に入らん方がよろしおすなぁ」
ついでに静玖(ka5980)、はんなりと念を押しておく。
「あ。うち、静玖いいますぇ~よろしゅうに」
誰、という顔の門下生たちにゆったり挨拶なども。
「私は雹という。宜しく頼む」
「あ……私は澪。宜しく……」
一緒にいる雹(ka5978)が兄で、双子姉妹の静玖に隠れ気味に挨拶したのが澪(ka6002)だ。
「とにかく、敵は霧の中心にいるに違いないじゃーん?」
「まずは地図とペグ……大きな鉄釘みたいなの、ない?」
やることは簡単、と胸を張るゾファルに村人に準備品を手配するウーナ。
「これが周辺地図か……。霧の広がる方向に指向性が無ければ円上に広がってると思うから、その中心に元凶があるはずだね」
遮那がゾファルと地図を覗き込む。
「しかし、集まって来るね」
鑑がそう言ったのは、門下生ではない村人たちも来たから。
「元々この村を守る為の剣術師範。村人が気になるのも自然でしょう」
表情もなく整然と応じる多由羅だが、何かに感付いて瞬きした。
そちらには遮那がいる。近寄った村娘たちと話をしている。
「何やら厄介な感じだしね、此処は僕達に任せてなるべく近寄らないようにしてね」
優しく応じる遮那。村娘たちはその様子にきゃいきゃいしている。
そして鑑を改めて見る。
「が、頑張ってね」
小さな女の子が興味深そうに近寄っていた。
転じて、多由羅自身はというと。
「……気のせいか村人の私を見る目に怖れが強い気がします」
村人の視線を受けてはいるのだが、すべて遠巻き。期待の眼差しではあるのだが、距離を置かれている。
「まあ、これから『斬りに行く』身ですし……」
ぽそ、とつぶやいた一言に遠巻きにしていた人たちが、びくっ。柔らかい口調だが表現が直接的なので、ギャップに驚いているというかなんというか。
それはそれとして、雹が村人から鉄釘を受け取ったウーナに近寄る。
「あ、目印をつけるんだね? 色紙を用意してきたよ」
「ありがと、雹。赤い霧だけに赤色はないね」
ウーナの言葉に静玖がくすくす微笑しながら顔を寄せる。
「見えんなりますよってなぁ。皆はんの位置、音色の違う鈴で確認するいうのはどうやろか」
静玖、からんりりんころんなど音をさせて鈴各種を差し出した。その数、六つ。
「それはいいね」
ウーナ、ちりんと一つ受け取る。
「お、サンキューじゃん」
続けてかろん、とゾファル。
「静玖は気が利くね。……澪はこれでいいかい?」
「……」
からん、と雹が一つ取り、澪にりりんと鳴る鈴を手渡す。澪、無言で頷き両手で受け取った。
「二つ足りないような気がしますが」
かりん、多由良が受け取り静玖を見る。
「僕は数珠を代わりにしてもいいけど」
ころん、と遮那が最後の一つを手にしつつ、何もない鑑を見た。
「うちは鉾先舞鈴で代用や。それに雹兄ぃと澪と一緒にこうしますぇ。鑑はんは……誰か霧の外におった方がええよって」
静玖は長いリボンを取り出し両端をそれぞれ雹と澪につなぐ手振りをした。鑑は霧の外で待機だ。
●
そして森の中。
「……なんだ、この罠みたいなのは」
目の前に立ち込める赤い濃霧に鑑が呆れたような声を出した。
明らかに自然現象ではない。
「…不吉ですね」
多由羅が息を吐いた。
無理もない。霧の中はまったく見えないのだ。入れば視程は伸ばした手の少し先というくらいの覚悟が必要だ。
「そういえば濃霧に巻かれて同じ場所をぐるぐるって、リングワンだリングっていうんだっけ?」
それだけは避けないとねー、とウーナ。
「命綱にもなりますし、長いロープか紐をここから張っていきましょうか?」
ウーナと多由羅がそんな会話。
そこへ、雹と静玖、澪が戻って来た。
「これほどの霧とは」
「かなり広ぅなってますぇ」
「……」
雹と静玖がしゃべり、澪が遮那の広げる地図を指差す。
「うーん、こんな感じかな?」
「……ん」
ざっくりと範囲を書き込んだ遮那に、満足そうにうなずく澪。
「となると……、多分元凶はこの辺りにあるのかも」
顔を上げた遮那の前に、ゾファル。
にっ、と不敵に微笑する。
「そこを目指してまっすぐ行けよ、行けば分かるさ、じゃん?」
「まあ、それしかないでしょう。少し外れても命綱があります。もしも中心から外れても敵に切られるかもしれません。逆に誘いになります」
早く行きたがり―なゾファルに命綱がむしろいい具合に敵の的になるかもとみる多由羅。
「じゃ、中心を目指して一緒に円陣を組んで移動だね」
「俺様ちゃん先頭だぜ。ソウルトーチで光って敵を引き付けるじゃん?」
遮那の言葉にゾファルが騎馬に乗る。
「森の中で大丈夫でしょうかね?」
「霧の中に巨大な影が浮かんだ時の敵の対応も見物だね」
多由羅の心配に、ウーナの言葉。
こうして、ゾファル先頭、右翼に雹・澪・静玖組、左翼に前方遮那と後方多由羅、最後尾に進路記録を取るウーナを置いた四角形に近い陣形で突入した。
「これは……」
遮那、霧に入って言葉を失った。
想像以上に視線が届かない。右手前方にゾファルの明かりがぼんやり見えるが、それ以外は……。
「おっと」
突然視界に入った枝を屈んで避ける。
森の中なのでまっすぐ進めない。
もちろん足元も道はない。草や低木を分けて進んでいる。困難極まりない。
「くれぐれもはぐれないようにね」
声を掛けるが返事は返ってこない。かろん、こりん、ちりんなどの鈴の音が響くのみ。声に対して敵が襲ってくるかもしれないので控えているのだ。
遮那、それ以上は何も言わず、後から分かるように踏み分けた雑草を後から分かるように根元からしっかり踏んで置いたり地面に線を書くなどして進む。
遮那の声が響いた時、右翼。
「静玖。そこなんかある」
澪、異変に気付き足元を指差す。
「なんか引きずってはるなぁ」
静玖の見立て。
「道しるべになるかもしれないね」
拾った枝でつつきながら右手を注意していた雹もやってきて言う。視界が狭いので三人仲良く身を寄せて下を見ていたり。
引きずった方向は、進んでいる方向と一致している。
「静玖、花丸で」
「はなまる、了解やぇ」
澪と静玖は地図に書き書き。
「敵は獲物を捕まえてから引きずっていくかもしれない」
雹、情報共有すべく霧の中で声を出しておく。
が、この時すでに敵の術中にあったといっても過言ではなかったのだ!
●
「ん?」
最初に気付いたのは、先頭を行くゾファルだった。
――しゅるる……。
「あっぶねーじゃん!」
叫んでギガースアックスを掲げた。何かが柄に巻き付く。
――ひひーん!
異変を感じた戦馬がいななく。
それが合図だった。
「これ、触手じゃんか!」
たちまち絡んでくる蔓のような触手。ゾファルは馬上で力任せに斧を振り絡んだ蔓と格闘を始めた。
これより少し前、左翼。
遮那、足を止めた。
「……何か居るね」
音で気配を感じた。
ひゅん、と何かが飛んでくる音に合わせ降魔刀一閃。
「……赤い、蔦?」
切り落とした物を見下ろし呟くのだった。
「え?」
多由羅は反応が遅れた。
気付くと触手に絡まれていた。
無理もない。
触手は赤い霧と同色。
直観的に気付くことができないとあっという間に巻き付かれる。その点、先頭のゾファルは比較的直観に長けていた。
「ぐっ」
首に巻き付く前に左手を挟み、何とか窒息狙いを免れた。
そのまま触手は引き倒そうとするが……。
「ちょうどいいですね……敵に襲われました。このまま食らいつきます!」
何と、触手の引く方に突進を始めたではないか。
ウーナはこの時、目印の鉄釘を木に打ち付けていた。
しかし。
「何かな、これ? ……わっ!」
枝に絡んでいた赤い蔦に気付く。直観が高いのも幸いした。喉を狙われたが左腕を出してこちらに巻き付かせると、樹の幹に押し付けオートマチック「チェイサー」の接射でぶっちぎり。
ここで、かりんかりんかりん……と激しい音。多由羅の鈴である。同時に彼女の叫び。
「多由羅……あぁもう面倒くさい!」
緊急時にこんなことしてられるか、と鉄釘などマーキングの道具を放り投げて鈴の音のした方へと走る。
こちら、右翼。
「この音は……多由良はん?」
見えない中、静玖が仲間の鈴の音に気付く。
「いくよ、澪。静玖、援護を頼む」
激しく鳴る鈴に緊急事態を感じた雹、走る。
「はい……兄様」
澪も兄を追う。霧で見えなくなったが聞こえる鈴の音で分かる。つながったリボンもぴんと張らない。静玖も走っているのだ。見えない絆をしっかり感じる。
こうして全員が走った。
先頭は多由羅。
引き込む触手の力に合わせるように、時折突然目の前に迫る枝を避けつつ……。
「あっ!」
気付いた時には遅かった!
突然霧から現れる枝に注意するあまり足元が疎かになっていたのだ。
気付くと……。
「なんですか、この不気味な巨大植物は……」
地面に広く咲く真っ赤な花――ラフレシア、という種に近い形状をしている――の肉厚な花びらの先がぱっくりと口を開け、多由羅の下半身に噛みついていたのだ。
「くっ……共に――」
多由羅、初めて見る不気味な植物に一瞬ひるんだ。
だが、それは長くない。
「共に死にましょう――」
いつもの冷静さを取り戻し、刀を逆手持ちにすると食い付いた花びらに突き刺し切り裂いた。これで簡単に脱出できた。
ほんの少し遅れて本体に到達したゾファルも足をやられていた。
「黒船をやらせるわけにはいかないじゃん!」
といっても彼女の場合は騎乗していた愛馬に食いつかれたのだが。
むしろ怒ったゾファル、飛び降りながらギガースアックスをダウンスイング。強烈な一発を食らわし相棒を助け出した。
この後、歪虚ラフレシアの周囲には霧の中に隠されていた触手多数が戻って来ていた。
「相手はボクだ。かかってくるといい」
雹、敢然と戻って来た触手に立ちふさがる。右手にはめたグローブ「スキアタキオン」の色は影の色。構えを取り左手を前にすると触手が巻き付こうとかかって来る。それに影のように不可視の拳が撃ち込まれる。赤いステルス触手と影の拳の一騎打ちだ。
「雹兄ぃ。次は……」
静玖は下がり目から真紅の呪符を一枚。鉾先舞鈴を持つ手を交差させ、放つ。
「光るよってそっちにやっ」
光の胡蝶となり飛んでいく。
「静玖、結界符を」
「澪、そっちに行った。束でかかって来るぞ」
澪は納刀の構えで待っていたが、ついに触手が襲ってきた。
「っ…」
言葉は、ない。
ただ、太刀「鬼斬丸」が清らかな音とともに鞘走った。
いや、りりん、という鈴の音も交っていたか。
「……」
「束になってかかって来ても同じだ」
澪が抜刀で着地した隙を、雹の螺旋突が突っ込んできてフォローする。チン、と音を立てて刀を仕舞う澪に、雹が次なる攻撃に備えつつ背中合わせ。波状攻撃を軽快する。
この時、静玖の結界符の光がきらめいた。
「みんな、同士討ちには気をつけて!」
遮那は多由羅の背後に到達し、「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ」と真言詠唱。薬師瑠璃光如来回復呪で傷をいやす。
「感謝します」
多由良の言葉に、轟く銃声。
「カンだけど、あっち側の花びらも捲れて来るよ!」
ウーナが先制射撃して前転で突っ込んできた。
「無茶しますね?」
「こう視界が届かないとガンもカタナ使いしないとね」
念入りに花びらをバラバラにしていた多由羅の微笑。「チェイサー」と「アレニスカ」の二丁拳銃のウーナはクローズコンバットでべらりと捲れて向こうから花びらの先の口を大開きして襲ってくる敵に格闘近接射撃。
さらに遮那が顔を上げた。もう片方の、最後の花びらが捲れて襲ってくる。
「違いない……それに」
パンジャ「ホーリーライト」を構え目を細める。
「……この距離だったら同士討ちはない」
同じく愛染明王天弓呪の光弾で打ち抜く。
「これで止めじゃーん!」
地面に突き刺さった巨大斧をようやく抜いたゾファル、再び振りかぶり最後に残ったラフレシアの中心にどかりと重い一発をお見舞いするのだった。
かろん、と乾いた音が鳴ったという。
霧は、晴れた。
●
「ま、ためになる敵だったよ」
討伐後に村に帰ると、ウーナは詳しく住民に説明した。後の話になるが、魔術師協会広報部にもしっかりと伝えたという。
「だから……至近距離での射撃を鍛えるよ。いつものやり方で!」
サバイバルで、類似事例の発生を想定し特訓開始。門下生も嬉々としてついて行く。
「いちお、地鎮祭やないけど清め舞い踊りたァおすな」
静玖は鉾先舞鈴を手に、にこり。
「現地では軽く払っておいたけどね」
雹、龍笛「松風」を風流に鳴らす。
「では」
澪、刀を抜いて剣舞に入る。しゃらん、と玉かんざしの音。もう鈴は外している。静玖も澪の対に入って、舞う。
「いいね。……防御の方はどうかな?」
遮那はじっくりと個人指導。
「重く大きい武器でいいんじゃねーの? 自分を武器込みで大きく見せて相手を威圧すりゃいいじゃん」
横ではゾファルが早さに馴染めない、それでも村は守りたいという大柄な力自慢の少年に教えていた。
「自分は「紅刃の型」。いいか、威圧して「戦わずして勝つ」。まずはこれじゃん!」
いいことを教えている、と遮那は思う。だから門下生に言った。
「僕みたいに魔法を使える人は、銃の代わりに魔法を使うのも有りだよ」
そんな中、多由羅は少し距離を置いて痛めた足の様子を診ていた。
鑑が近寄った。
「どう?」
「イ寺様……やはり優しく教えても血の匂いは拭えないという事でしょうかね」
どうやら足よりも心に少し傷があるようだ。
その時、人影。
見上げると村人たちだった。
「これ、薬草じゃ」
差し伸べられた手。
縮まった距離を感じ、多由羅の顔がほころんだ。
「あっ、先生!」
「師範、お待ちしてました!」
タスカービレに到着した一行を青竜紅刃流の門下生たちが出迎えた。
「偵察だけで誰も踏み込んでないね?」
イ寺鑑(kz0175)がまず確認。
「はいっ!」
「師範たちが来るまで絶対に誰も赤い霧に踏み込むなと村人に言って聞かせました」
「……この前話した『殺す技術』をちゃんと理解してるようですね」
頷く弟子たちに、多由羅(ka6167)が鑑の横からさらっと言った。弟子たちが「自らを生かす」選択をしていたことに満足しているのだ。
「迂闊に踏み込まないで何よりだよ」
軽く安堵したのは、天道 遮那(ka6113)。
安堵してから、ちらと横を見る。
「赤い霧ねー、うーん、燃えて来たじゃーん」
そこには未知なる減少にそわそわしているゾファル・G・初火(ka4407)がいた。前回と違って激しくやる気になっている。というか、踏み込みたくて踏み込みたくて仕方ない。
「迂闊に踏み込むならゾファルくらい強くならないとね~」
ウーナ(ka1439)、遮那の内心を代弁する。
「強ぉても迂闊に入らん方がよろしおすなぁ」
ついでに静玖(ka5980)、はんなりと念を押しておく。
「あ。うち、静玖いいますぇ~よろしゅうに」
誰、という顔の門下生たちにゆったり挨拶なども。
「私は雹という。宜しく頼む」
「あ……私は澪。宜しく……」
一緒にいる雹(ka5978)が兄で、双子姉妹の静玖に隠れ気味に挨拶したのが澪(ka6002)だ。
「とにかく、敵は霧の中心にいるに違いないじゃーん?」
「まずは地図とペグ……大きな鉄釘みたいなの、ない?」
やることは簡単、と胸を張るゾファルに村人に準備品を手配するウーナ。
「これが周辺地図か……。霧の広がる方向に指向性が無ければ円上に広がってると思うから、その中心に元凶があるはずだね」
遮那がゾファルと地図を覗き込む。
「しかし、集まって来るね」
鑑がそう言ったのは、門下生ではない村人たちも来たから。
「元々この村を守る為の剣術師範。村人が気になるのも自然でしょう」
表情もなく整然と応じる多由羅だが、何かに感付いて瞬きした。
そちらには遮那がいる。近寄った村娘たちと話をしている。
「何やら厄介な感じだしね、此処は僕達に任せてなるべく近寄らないようにしてね」
優しく応じる遮那。村娘たちはその様子にきゃいきゃいしている。
そして鑑を改めて見る。
「が、頑張ってね」
小さな女の子が興味深そうに近寄っていた。
転じて、多由羅自身はというと。
「……気のせいか村人の私を見る目に怖れが強い気がします」
村人の視線を受けてはいるのだが、すべて遠巻き。期待の眼差しではあるのだが、距離を置かれている。
「まあ、これから『斬りに行く』身ですし……」
ぽそ、とつぶやいた一言に遠巻きにしていた人たちが、びくっ。柔らかい口調だが表現が直接的なので、ギャップに驚いているというかなんというか。
それはそれとして、雹が村人から鉄釘を受け取ったウーナに近寄る。
「あ、目印をつけるんだね? 色紙を用意してきたよ」
「ありがと、雹。赤い霧だけに赤色はないね」
ウーナの言葉に静玖がくすくす微笑しながら顔を寄せる。
「見えんなりますよってなぁ。皆はんの位置、音色の違う鈴で確認するいうのはどうやろか」
静玖、からんりりんころんなど音をさせて鈴各種を差し出した。その数、六つ。
「それはいいね」
ウーナ、ちりんと一つ受け取る。
「お、サンキューじゃん」
続けてかろん、とゾファル。
「静玖は気が利くね。……澪はこれでいいかい?」
「……」
からん、と雹が一つ取り、澪にりりんと鳴る鈴を手渡す。澪、無言で頷き両手で受け取った。
「二つ足りないような気がしますが」
かりん、多由良が受け取り静玖を見る。
「僕は数珠を代わりにしてもいいけど」
ころん、と遮那が最後の一つを手にしつつ、何もない鑑を見た。
「うちは鉾先舞鈴で代用や。それに雹兄ぃと澪と一緒にこうしますぇ。鑑はんは……誰か霧の外におった方がええよって」
静玖は長いリボンを取り出し両端をそれぞれ雹と澪につなぐ手振りをした。鑑は霧の外で待機だ。
●
そして森の中。
「……なんだ、この罠みたいなのは」
目の前に立ち込める赤い濃霧に鑑が呆れたような声を出した。
明らかに自然現象ではない。
「…不吉ですね」
多由羅が息を吐いた。
無理もない。霧の中はまったく見えないのだ。入れば視程は伸ばした手の少し先というくらいの覚悟が必要だ。
「そういえば濃霧に巻かれて同じ場所をぐるぐるって、リングワンだリングっていうんだっけ?」
それだけは避けないとねー、とウーナ。
「命綱にもなりますし、長いロープか紐をここから張っていきましょうか?」
ウーナと多由羅がそんな会話。
そこへ、雹と静玖、澪が戻って来た。
「これほどの霧とは」
「かなり広ぅなってますぇ」
「……」
雹と静玖がしゃべり、澪が遮那の広げる地図を指差す。
「うーん、こんな感じかな?」
「……ん」
ざっくりと範囲を書き込んだ遮那に、満足そうにうなずく澪。
「となると……、多分元凶はこの辺りにあるのかも」
顔を上げた遮那の前に、ゾファル。
にっ、と不敵に微笑する。
「そこを目指してまっすぐ行けよ、行けば分かるさ、じゃん?」
「まあ、それしかないでしょう。少し外れても命綱があります。もしも中心から外れても敵に切られるかもしれません。逆に誘いになります」
早く行きたがり―なゾファルに命綱がむしろいい具合に敵の的になるかもとみる多由羅。
「じゃ、中心を目指して一緒に円陣を組んで移動だね」
「俺様ちゃん先頭だぜ。ソウルトーチで光って敵を引き付けるじゃん?」
遮那の言葉にゾファルが騎馬に乗る。
「森の中で大丈夫でしょうかね?」
「霧の中に巨大な影が浮かんだ時の敵の対応も見物だね」
多由羅の心配に、ウーナの言葉。
こうして、ゾファル先頭、右翼に雹・澪・静玖組、左翼に前方遮那と後方多由羅、最後尾に進路記録を取るウーナを置いた四角形に近い陣形で突入した。
「これは……」
遮那、霧に入って言葉を失った。
想像以上に視線が届かない。右手前方にゾファルの明かりがぼんやり見えるが、それ以外は……。
「おっと」
突然視界に入った枝を屈んで避ける。
森の中なのでまっすぐ進めない。
もちろん足元も道はない。草や低木を分けて進んでいる。困難極まりない。
「くれぐれもはぐれないようにね」
声を掛けるが返事は返ってこない。かろん、こりん、ちりんなどの鈴の音が響くのみ。声に対して敵が襲ってくるかもしれないので控えているのだ。
遮那、それ以上は何も言わず、後から分かるように踏み分けた雑草を後から分かるように根元からしっかり踏んで置いたり地面に線を書くなどして進む。
遮那の声が響いた時、右翼。
「静玖。そこなんかある」
澪、異変に気付き足元を指差す。
「なんか引きずってはるなぁ」
静玖の見立て。
「道しるべになるかもしれないね」
拾った枝でつつきながら右手を注意していた雹もやってきて言う。視界が狭いので三人仲良く身を寄せて下を見ていたり。
引きずった方向は、進んでいる方向と一致している。
「静玖、花丸で」
「はなまる、了解やぇ」
澪と静玖は地図に書き書き。
「敵は獲物を捕まえてから引きずっていくかもしれない」
雹、情報共有すべく霧の中で声を出しておく。
が、この時すでに敵の術中にあったといっても過言ではなかったのだ!
●
「ん?」
最初に気付いたのは、先頭を行くゾファルだった。
――しゅるる……。
「あっぶねーじゃん!」
叫んでギガースアックスを掲げた。何かが柄に巻き付く。
――ひひーん!
異変を感じた戦馬がいななく。
それが合図だった。
「これ、触手じゃんか!」
たちまち絡んでくる蔓のような触手。ゾファルは馬上で力任せに斧を振り絡んだ蔓と格闘を始めた。
これより少し前、左翼。
遮那、足を止めた。
「……何か居るね」
音で気配を感じた。
ひゅん、と何かが飛んでくる音に合わせ降魔刀一閃。
「……赤い、蔦?」
切り落とした物を見下ろし呟くのだった。
「え?」
多由羅は反応が遅れた。
気付くと触手に絡まれていた。
無理もない。
触手は赤い霧と同色。
直観的に気付くことができないとあっという間に巻き付かれる。その点、先頭のゾファルは比較的直観に長けていた。
「ぐっ」
首に巻き付く前に左手を挟み、何とか窒息狙いを免れた。
そのまま触手は引き倒そうとするが……。
「ちょうどいいですね……敵に襲われました。このまま食らいつきます!」
何と、触手の引く方に突進を始めたではないか。
ウーナはこの時、目印の鉄釘を木に打ち付けていた。
しかし。
「何かな、これ? ……わっ!」
枝に絡んでいた赤い蔦に気付く。直観が高いのも幸いした。喉を狙われたが左腕を出してこちらに巻き付かせると、樹の幹に押し付けオートマチック「チェイサー」の接射でぶっちぎり。
ここで、かりんかりんかりん……と激しい音。多由羅の鈴である。同時に彼女の叫び。
「多由羅……あぁもう面倒くさい!」
緊急時にこんなことしてられるか、と鉄釘などマーキングの道具を放り投げて鈴の音のした方へと走る。
こちら、右翼。
「この音は……多由良はん?」
見えない中、静玖が仲間の鈴の音に気付く。
「いくよ、澪。静玖、援護を頼む」
激しく鳴る鈴に緊急事態を感じた雹、走る。
「はい……兄様」
澪も兄を追う。霧で見えなくなったが聞こえる鈴の音で分かる。つながったリボンもぴんと張らない。静玖も走っているのだ。見えない絆をしっかり感じる。
こうして全員が走った。
先頭は多由羅。
引き込む触手の力に合わせるように、時折突然目の前に迫る枝を避けつつ……。
「あっ!」
気付いた時には遅かった!
突然霧から現れる枝に注意するあまり足元が疎かになっていたのだ。
気付くと……。
「なんですか、この不気味な巨大植物は……」
地面に広く咲く真っ赤な花――ラフレシア、という種に近い形状をしている――の肉厚な花びらの先がぱっくりと口を開け、多由羅の下半身に噛みついていたのだ。
「くっ……共に――」
多由羅、初めて見る不気味な植物に一瞬ひるんだ。
だが、それは長くない。
「共に死にましょう――」
いつもの冷静さを取り戻し、刀を逆手持ちにすると食い付いた花びらに突き刺し切り裂いた。これで簡単に脱出できた。
ほんの少し遅れて本体に到達したゾファルも足をやられていた。
「黒船をやらせるわけにはいかないじゃん!」
といっても彼女の場合は騎乗していた愛馬に食いつかれたのだが。
むしろ怒ったゾファル、飛び降りながらギガースアックスをダウンスイング。強烈な一発を食らわし相棒を助け出した。
この後、歪虚ラフレシアの周囲には霧の中に隠されていた触手多数が戻って来ていた。
「相手はボクだ。かかってくるといい」
雹、敢然と戻って来た触手に立ちふさがる。右手にはめたグローブ「スキアタキオン」の色は影の色。構えを取り左手を前にすると触手が巻き付こうとかかって来る。それに影のように不可視の拳が撃ち込まれる。赤いステルス触手と影の拳の一騎打ちだ。
「雹兄ぃ。次は……」
静玖は下がり目から真紅の呪符を一枚。鉾先舞鈴を持つ手を交差させ、放つ。
「光るよってそっちにやっ」
光の胡蝶となり飛んでいく。
「静玖、結界符を」
「澪、そっちに行った。束でかかって来るぞ」
澪は納刀の構えで待っていたが、ついに触手が襲ってきた。
「っ…」
言葉は、ない。
ただ、太刀「鬼斬丸」が清らかな音とともに鞘走った。
いや、りりん、という鈴の音も交っていたか。
「……」
「束になってかかって来ても同じだ」
澪が抜刀で着地した隙を、雹の螺旋突が突っ込んできてフォローする。チン、と音を立てて刀を仕舞う澪に、雹が次なる攻撃に備えつつ背中合わせ。波状攻撃を軽快する。
この時、静玖の結界符の光がきらめいた。
「みんな、同士討ちには気をつけて!」
遮那は多由羅の背後に到達し、「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ」と真言詠唱。薬師瑠璃光如来回復呪で傷をいやす。
「感謝します」
多由良の言葉に、轟く銃声。
「カンだけど、あっち側の花びらも捲れて来るよ!」
ウーナが先制射撃して前転で突っ込んできた。
「無茶しますね?」
「こう視界が届かないとガンもカタナ使いしないとね」
念入りに花びらをバラバラにしていた多由羅の微笑。「チェイサー」と「アレニスカ」の二丁拳銃のウーナはクローズコンバットでべらりと捲れて向こうから花びらの先の口を大開きして襲ってくる敵に格闘近接射撃。
さらに遮那が顔を上げた。もう片方の、最後の花びらが捲れて襲ってくる。
「違いない……それに」
パンジャ「ホーリーライト」を構え目を細める。
「……この距離だったら同士討ちはない」
同じく愛染明王天弓呪の光弾で打ち抜く。
「これで止めじゃーん!」
地面に突き刺さった巨大斧をようやく抜いたゾファル、再び振りかぶり最後に残ったラフレシアの中心にどかりと重い一発をお見舞いするのだった。
かろん、と乾いた音が鳴ったという。
霧は、晴れた。
●
「ま、ためになる敵だったよ」
討伐後に村に帰ると、ウーナは詳しく住民に説明した。後の話になるが、魔術師協会広報部にもしっかりと伝えたという。
「だから……至近距離での射撃を鍛えるよ。いつものやり方で!」
サバイバルで、類似事例の発生を想定し特訓開始。門下生も嬉々としてついて行く。
「いちお、地鎮祭やないけど清め舞い踊りたァおすな」
静玖は鉾先舞鈴を手に、にこり。
「現地では軽く払っておいたけどね」
雹、龍笛「松風」を風流に鳴らす。
「では」
澪、刀を抜いて剣舞に入る。しゃらん、と玉かんざしの音。もう鈴は外している。静玖も澪の対に入って、舞う。
「いいね。……防御の方はどうかな?」
遮那はじっくりと個人指導。
「重く大きい武器でいいんじゃねーの? 自分を武器込みで大きく見せて相手を威圧すりゃいいじゃん」
横ではゾファルが早さに馴染めない、それでも村は守りたいという大柄な力自慢の少年に教えていた。
「自分は「紅刃の型」。いいか、威圧して「戦わずして勝つ」。まずはこれじゃん!」
いいことを教えている、と遮那は思う。だから門下生に言った。
「僕みたいに魔法を使える人は、銃の代わりに魔法を使うのも有りだよ」
そんな中、多由羅は少し距離を置いて痛めた足の様子を診ていた。
鑑が近寄った。
「どう?」
「イ寺様……やはり優しく教えても血の匂いは拭えないという事でしょうかね」
どうやら足よりも心に少し傷があるようだ。
その時、人影。
見上げると村人たちだった。
「これ、薬草じゃ」
差し伸べられた手。
縮まった距離を感じ、多由羅の顔がほころんだ。
依頼結果
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MVP一覧
- 機知の藍花
静玖(ka5980)
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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作戦相談卓 ウーナ(ka1439) 人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2016/04/13 00:32:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/11 01:12:23 |