森に潜む熊の雑魔夫婦

マスター:なちゅい

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/12 22:00
完成日
2016/04/16 15:38

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●雑魔討伐も返り討ちに……
 グラズヘイム王国にも春が訪れている。
 暖かくなったことで、王国内も活気が出てきた。別の組織に配属になったりと新しい風が組織へと吹き込んできたり、有望なる新人を組織に迎え入れたりする。
 しかしながら、新人というのは、無茶をしやすいものだ。手早く戦績を残そうと考える者は、後先考えずに行動し、痛い目を見ることも多い。
 それが痛い目で済むのならば、まだいいだろう。時として、大怪我、生涯付きまとうほどの傷を負う事態になることすらある。

 リンダールの森。
 ここに、聖堂戦士団のとある小隊の姿があった。
 この森に熊の雑魔が現れたという証言があり、その小隊は討伐に出向いてきたのだ。雑魔の数は2体。おそらくは夫婦なのだろう。揃って雑魔になったのは、幸か不幸か。
 小隊はこの討伐に当たったものの、半数が新兵。戦闘経験が豊富なのは隊長くらいだった。だが、この隊長もまた、指揮経験に乏しく。
「くそ……」
 隊長は深く傷ついた部下の姿に、地面を強く殴りつけた。
 統制がうまく取れず、バラバラに隊員が攻めた結果、突出した一人が続けて狙われ、その隊員が深手を負ってしまった。
 雑魔は討伐には至らなかった。他の隊員がなんとか撃退はしたものの、目的は討伐だ。任務としては失敗と言わざるを得ない。
 悔しいが、このまま隊員を連れて雑魔捜索というわけにもいかない。隊長は已む無く、隊員に対して撤退指示を出したのだった。

 王都イルダーナ。
 街中を歩いていたのは、仕事帰りのファリーナ・リッジウェイ。彼女は聖堂戦士団の新人だ。日々、雑用に追われ、さらに聖導士として力を高めることにも余念がなく、忙しない日々を送る。
 そんな彼女はさらにハンターとして、手隙の間にできる依頼はないかと考えてハンターズソサエティを訪れていたものの。
「こんなに……」
 その依頼の数に頭を抱えてしまう。その1つ1つに目をやるだけでも大変だ。
 そして、彼女はある依頼に目を留めた。それは、聖堂戦士団の同僚達が取り逃がしたという雑魔討伐の依頼。
 そこにやってきたのは、依頼を探しにやってきたハンターだ。ファリーナはなんとなく気になり、そのハンターへと声を掛けた。
「何か仕事をお探しですか?」
 いやいや、あんたはソサエティのスタッフじゃないだろうとツッコミがくるが、彼女はお構いなしにハンターと会話を始める。
「それなら、これをお願いできれば、嬉しいのですが……」
 ファリーナは、自分が目を留めていた雑魔依頼を差し出す。
 残念ながら、彼女は日程の都合で、この討伐には参加できない。ただ、同じ聖堂戦士団の同僚を傷つけた雑魔を許してはおけないとハンター達に訴える。
「私の分まで、どうかよろしくお願いいたします!」
 彼女は丁寧に頭を下げる。別に依頼者でもないのにと、カウンター内でスタッフが呆れていたのだった。

リプレイ本文

●堕ちた熊の夫婦
 リンダールの森へと向かう5人のハンター達。
 てくてくとあるくエニグマ(ka3688)が突然、「あー」と叫ぶ。
「あー、やべぇ蜂蜜忘れたやべぇしぬ。オレサマに流れる蜂蜜という蜂蜜が蒸発しちま……うわ、覚醒も出来ねぇ」
 愕然とするエニグマ。しかしながら、仲間が蜂蜜をたくさん用意してくれていたこともあり、分けてもらっていたようだ。
「くまーん。喋れない熊なんて、ただのくまさっ」
 玉兎 小夜(ka6009)はそんな熊っぽいドワーフを一瞥してから語る。今回の相手は、番いの熊型雑魔だ。
「悲しみが来るときは、単騎ではやってこない。かならず軍団で押し寄せる……だったかな」
 テノール(ka5676)はふと、リアルブルーの著名な劇作家の言葉を思い出す。ちなみに、シェイクスピアの言葉だ。
「せめてもの救いは、番いで一緒に堕ちたことだろうか?」
 どちらかが遺されれば、必ず悲しみに淵に沈んでしまう。そういう意味では幸運だったといえるが、果たして、雑魔と成り果てた状態でその言葉は当てはまるのか。
「んー……。雑魔とはいえ……夫婦を襲うっていうのは、微妙に気が引けるけど。まあ、運が悪かったと思って諦めてもらうしかないわね」
 桜 肉彦と名づけた馬に乗るアルスレーテ・フュラー(ka6148)は、すでに割り切っている様子。テノールもまた、歪虚と成り果てたという熊達の駆除を参戦しているわけだが、元は野生動物。本心では、必要以上に苦しめたくはないと考えている。
「雑魔でなくとも、熊は強いもんね。気合い入れていこうね」
 ユウキ(ka5861)は仲間達へと檄を飛ばす。その身体能力は雑魔でなくとも、事実通常の人間を上回るのだ。油断するわけにはいかぬと、ハンター達は気を引き締めるのである。

●雑魔のおびき寄せ
 程無く、リンダールの森にたどり着いたメンバー達。
「森の熊さん討伐、ね」
 改めて、目的を口にするアルスレーテは馬から下りる。
 王都を発つ前に、テノールが依頼者から付近の情報、そして、熊との遭遇地点は聞いていた。その地点に向かうのだが、熊がどこをうろついているか分からないし、巣穴の場所も定かではない。敵を引き付ける必要がありそうだ。
 そこで、エニグマがどや顔で仲間達も前でポージングする。
「オレサマの出番だな!」
 まるごとくまさんを着て、熊の子供の振りをしていたエニグマ。しかしながら、メンバー達は一時彼を見た後、事も無げに小夜が一言。
「敵は基本、匂いのする食べ物で惹き付け……かな」
 小夜はこの為に、豚のモツを用意していた。多少、その匂いが彼女にも染み付いているのが、気になるところではある。ただ、それはそれで敵を引き寄せることができそうだ。
 また、近場にいたアルスレーテは何を思ったのか、自身の馬、肉彦に目をやると…………。
「悪いわね、肉彦。死んで新鮮な生肉になるのよ」
 鉄扇を開いて馬の足目掛けて牽制の一打を浴びせ、即座に鉄扇を閉じた後、その扇で螺旋を描くようにして胴へと突き出す。
 肉彦は血を流して横倒しになる。しばらくすると、完全に動かなくなってしまった。
 仲間達が唖然とするなか、アルスレーテはその肉を切り分け、淡白にこう呟く。
「食材はやっぱり、新鮮なものがいいわよね」
 彼女は熊を釣り易いようにと、その生肉に蜂蜜をトッピングしていた。

 ショッキングな光景を目の当たりにしたハンター達は、依頼者が雑魔と遭遇した場所へと移動していく。
 その場所から、テノールは持ってきた蜂蜜を一定間隔で垂らしながら歩いていた。
「これで誘われてくれればいいのだがな」
 同時に連れてきた2匹のドーベルマン達の聴覚と嗅覚も当てにするテノールだが。どうしても近場にある生肉の匂いが気になるようで、策敵に集中できずにいたようだ。
 ある程度広い場所を見つけた一行は、その中心に用意した豚のモツと、蜂蜜まみれの生肉を置く。
 そして、ハンター達は近場に隠れて様子を窺う。メンバー達は木陰に、あるいは木の上に登って全方向を警戒する。
 雑魔はどこから現れるか分からない。ユウキは狼狽えないで即対応出来る様に心構えをする。念の為にと、地面についている可能性のある足跡や血痕がないかと捜索を行っていた。
 小夜も隠密スキルで気配を抑え、枝の上で敵の出現を待つ。ただ、体に染み込んだモツの匂いが若干気になる。
(あ、私の匂い消してないけど……。まぁ、モツ臭いし大丈夫かな)
「居たよっ」
 仲間に向けて声を上げるユウキ。広場へと近づいてくる熊2匹は、肉を目にして食らいつく。
「兎と熊、真の森の王者がどっちか思い知らせてやる!」
 小夜がそのうちのオス熊へと跳びかかる。狙うは首だ。木から飛び降りた彼女は腰を捻った低い大勢で構え、 斬魔刀「祢々切丸」で地面を削り上げるようにして熊を切りつけた。
「真の森の王者は、このヴォーパルバニーだああああっ」
 摩擦によって燃え上がる刀身。その描く軌跡が赤く光る。
 しかし、さすがに一撃で落ちるほど、熊雑魔も柔ではなかった。
(仕留められないか……。まあ、ヘイトは稼げただろうし)
 彼女はバックステップでその場から飛びのく。
 一方で斬撃と炎を浴びた熊は苦しみ悶える。その隣のメス熊が怒り狂い、ハンター目掛けて豪腕で薙ぎ払う。
 繰り出されてきたそれを、エニグマは瞬脚で回避して見せた。
「隠し切れねぇオレサマのプリティナイスガイオーラが仇になったってか」
 エニグマは舌打ちしながらも、熊を見据える。
「夫婦かなんか知らねえけど、平穏に暮らせるだけでよかったろうに……。そんなテメエらに悪夢に悪夢を提供! NOW!」
 襲い掛かってきた雑魔と対するべく、覚醒したハンター達は武器を抜いて攻め込んでいくのである。

●熊雑魔との戦い
 オス熊は小夜が跳びかかり、気を引いている。
 その間に、他のメンバー達はメスの熊へと狙いを定めていた。
「熊、か」
 テノールは2匹の犬を下がらせ、敵の姿を観察する。
(毛皮に加えて脂肪と筋肉がたっぷりついてるから、打撃を内部まで浸透させるのがつらそうだな)
 効率よく敵を狩る為に。彼は敵の顔に注目する。
 鼻や額。人間で言うなら、Tゾーンと呼ばれている部分。ここは頭蓋骨に守られてはいるが、敢えてここを狙うことで脳震盪を起こさせようと考える。
 拳を大きく振りかぶり、眉間目掛けてナックル「セルモクラスィア」で殴りつける。
「たっぷり運動しないとね」
 続けて、アルスレーテは蒼く色の変わった瞳でメス熊を捉え、鉄扇を舞わせながらも、さっと閉じた後で抉りこむような突きで毛皮に覆われた熊の皮膚を貫く。飛び散る血だが、雑魔と成り果てたからなのか、宙でそのまま消え失せてしまう。
 一方、オス熊を襲撃した小夜。
「ヘイヘイ、くまたん。こんなもんかい?」
 オス熊の気を引く彼女は、全身の筋肉を弛緩させ、敵の攻撃の防御に回る。
「だが、時間を稼ぐのはいいが、別に首を落としてしまっても構わんのだろうっ?」
 熊の食らいつきを受け流しつつ、彼女はにやりと笑った。
 この間に、メス熊を倒さねばならない。エニグマはメス熊の死角に回りながらも、敵の足を狙って腕につけた爪で薙ぎ払う。
「アタシ、上乗りたいんだけどォー★」
 きらりと目を光らせるエニグマ。彼は自身の狙うその瞬間を待つ。
 ユウキは、仲間と可能な限り連携を図る。先の聖堂戦士団小隊が連携を取れず、やむなく撤退したという話を耳にしていたからだ。
(ボクらもそうならない様にしないと)
 そうなると、気になるのは、孤立している小夜ではあるが。彼女が危機に瀕する前にメス熊を撃破せねばならない。
 また、彼女の元に行かぬようにと、ユウキは炎のようなオーラを纏い、メス熊の注意を引く。
「キミの相手はこっちだよっ!」
 そして、剣にマテリアルを篭め、ユウキは力の限り目の前の雑魔を切りつけていった。

 激しく続く攻防。小夜は攻撃をステップで避けつつも隙を見はからう。
「ホントは首を落としたいんだけどね……今は我慢……できるかっ。攻撃できるなら狙いは首だぁっ!」
 だが、刃は残念ながら空を切ってしまう。そして、熊は大きく口を開き、彼女の肩口へと食らいついてきた。
「……!」
 しかしながら、そこで、メス熊が仲間達の攻撃によって悲鳴を上げた。オス熊はその瞬間、伴侶の危機に気づいてそちらを振り返って駆け出そうとする。
 もちろん、その隙を見過ごす小夜ではない。彼女はすかさず刀を振り上げた。
「兎を前に逃げるとかっ。長寿タイプだけどもう遅い!」
 オス熊の首に刃が食い込む。しかしながら、彼女1人で抑える状況では、手傷を負わせた程度でしかない。
 その間に、テノールは練り上げていたマテリアルを一気に放出した。気功波はメス熊の頭を貫く。揺らぐ巨体はゆっくりと倒れ、地面に落ちる前に霧のように消えてなくなった。
「次だ」
 事も無げに、テノールはもう1体の敵に向き直る。
 伴侶を失ったオス熊は怒りに身を任せ、自身を追ってきた小夜へと飛びついてきた。小夜は躱すことが出来ずに捕まってしまう。
 熊は抱きつき、力の限り締め付ける。その一撃は非常に強力で、彼女の体力を大きく削ぎ落とす。
「くっ……!」
 何とか拘束からは逃れたものの。その身のこなしで敵の攻撃を躱すことはあったが、幾度か攻撃を避けられずに喰らっており、ダメージが蓄積してきている。
 手数の都合もあってか、仲間からの回復は当てに出来ない状況。かなり厳しい。
「……っ、危ない!」
 小夜の危機を察したユウキは守る為にと盾をしっかりと構え、オス熊の次なる一撃に備える。これ以上、彼女を傷つけさせるわけには行かないと。
 アルスレーテは時に踊るようにして立ち回り、攻撃を仕掛けていたのだが、さすがに仲間が危険な状況では自重せざるを得ない。
 攻撃を続けるハンター達。テノールは相手の隙を突き、竜巻返しをと考えたが、そこでスキルの設定がないことに気づく。
 オス熊はその一瞬を見計らって彼の体に抱きつき、全力で締め上げた。
「く……!」
 苦しむテノール。しかし、エニグマが足を狙うと、体勢を崩して熊は倒れてしまう。テノールも難を逃れたようだ。
「もらうわよ」
 倒れる熊へと近寄ったアルスレーテはすかさずオス熊の関節を極めてしまい、動きを封じた。
 仲間達の攻撃が続く中、エニグマは狙っていた敵の頭へと馬乗りになる。彼は爪を敵の後頭部の首根っこに爪を引っ掛け、地面に向けて重心をかけようとした。
 頭がモゲればとも思ったが。未だ熊の首と胴体は繋がっており、敵はしつこく暴れ続けている。
 ただ、ユウキに守ってもらった小夜は、十分攻撃の為の時間を稼いでもらった。
「ヴォーパルバニーが、その首、刻み刈り獲らん!」
 彼女は残っていた力を振り絞り、熊の首を見事に切り落とす。首と胴体に裂かれたオス熊は、弾けるようにして消えてなくなったのだった。

●雑魔討伐を終えて
 無事、雑魔を倒したハンター達。
 すでに、アルスレーテの姿はこの場にはない。森の入り口に倒れる馬の墓を作りに向かったのだ。
 エニグマは、敵が消えた場所へと小さな墓を作り始める。
「だってオレ、くまさんだいすきだもん」
 彼はそう主張し、近場に咲いていた白い花を墓前に添えた。
「番いで暮らしていたのなら、子供はいたのだろうか?」
 テノールがその墓を見下ろしつつ呟く。残らぬ死体の心配は無用ではあるが、子供が残されていたなら話は別。保護できればと周辺を探すが、この近辺にはもういないのか、そもそも子供がいないのか……。新たな悲劇がないことを、テノールは願うばかりだ。
「それじゃ、後は完了報告に行かないとね」
 ユウキが仲間達へとそう促す。そういえば、この1件について案じていた聖堂戦士団の少女がいたろうか。
 王都に帰ったら、彼女にもこの経過について報告しようとハンター達は考えながら、リンダールの森を後にしていくのだった。

依頼結果

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参加者一覧

  • 《破天荒》な黒い熊
    エニグマ(ka3688
    ドワーフ|6才|男性|疾影士
  • ―絶対零度―
    テノール(ka5676
    人間(紅)|26才|男性|格闘士
  • 守護ドワーフ
    ユウキ(ka5861
    ドワーフ|14才|女性|闘狩人
  • 兎は今日も首を狩る
    玉兎 小夜(ka6009
    人間(蒼)|17才|女性|舞刀士
  • お約束のツナサンド
    アルスレーテ・フュラー(ka6148
    エルフ|27才|女性|格闘士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/11 22:05:28
アイコン 相談卓
エニグマ(ka3688
ドワーフ|6才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/04/12 13:26:58

 
 
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