花見の茶会の狂騒曲

マスター:紡花雪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/04/16 19:00
完成日
2016/04/24 00:04

みんなの思い出

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オープニング

●春の楽しみ方
 自由都市同盟領、極彩色の街「ヴァリオス」。
 その美しく鮮やかな街並みの中に、一軒の貴族風の館がある。『銀林檎館』という喫茶室だ。
 銀林檎館は現在、春を迎える観花会の準備に忙しいようだ。その準備を取り仕切っているのは銀林檎館のメイド、レイメ・ルアンスール(kz0151)である。喫茶室にメイドとは不思議な話だが、銀林檎館は貴族のサロン風であるため、ウエイトレスよりもメイドのほうがしっくりくると、女主人・マルジョレーナが決めたのだ。
 銀林檎館では、毎年春に花を観て楽しむ茶会を催している。例年は、上得意客やヴァリオスの常連客を中心に招待していたのだが、今年は少し趣旨を変えようと女主人が言い出した。
「――今年は、ハンターが主賓よ!」
「ハンター、ですか? それはとても楽しそうですが、皆さまお忙しいのでは?」
「忙しいからこそ、ご招待するのよ! だって、戦いが続いてばかりでは心が休まるときがないでしょ? これからの銀林檎館は、ハンターの癒しの場所とならなけらばならないのよ!」
「そうですね。ほんのひとときでも、花を観てなごんでいただければ嬉しいですね」
 ――こうしたやりとりがあり、レイメは観花会の準備に取り掛かることになったのだ。

●花見会直前の問題
 いっそう暖かくなり、銀林檎館の庭にも色とりどりの花が咲き始めていた。今年は、東方から取り寄せた薄紅色の花木を植え付けたこともあり、しとやかな華やぎが増している。
 レイメはハンターオフィスに都合のつくハンターにぜひ観花会に参加して欲しいとの依頼を出し、その他の上得意客の招待名簿をまとめていた。
 そのとき、新たな問題が持ち上がった。持ちこんだのは、マルジョレーナである。
「な……なんという……」
 いつもどおり銀林檎館のすべての仕切りをレイメに任せ、買い付けの旅に出ているマルジョレーナからの手紙を受け取り、レイメは言葉を失いかけた。

『――ところで観花会の件だけど、準備は捗ってる? 招待客の選択も大事よ? というわけで、楽しくなるかと思って、奏楽団を招待しておいたわ。「春酔楽団」っていう、若い女性ばかり四人の奏楽団なんだけど、ほんとうに楽しいのよ! なんと、全員が酒豪! 宴会に乱入して、演奏したり歌ったり踊ったり自由なのが売りなのよ。別名「酔いどれ楽団」! 私は当日までに戻れそうにないけど、彼女たちのこともよろしくね~』

 レイメは卒倒しそうになりながらも、できるだけ冷静に考えることにした。
 穏やかで和やかな観花会。それが、レイメの思い描いていたものだ。もし、楽団とはいえ、酔っ払った女性たちが好き勝手にし始めるようなことがあっては、花を観るどころではない。
 これは、主賓であるはずのハンターたちの助けを借りるしかないと、レイメは依頼に項目を書き加えるためにハンターオフィスへ急いだ。

リプレイ本文

●春の庭は晴れやかで
 その日は、暖かな日差しに恵まれた。
 極彩色の街『ヴァリオス』は同盟領有数の賑やかな街である。だが喫茶室『銀林檎館』は貴族風の館を模して造られており、その庭も広く美しく整えられている。
 芝生の広場には茶会の用意がされていて、うねった石畳の小径沿いには大輪の鮮やかな花が並んでいる。東方から取り寄せたという薄紅色の花木は、四阿の脇に並んでいた。
 その庭先で、レイメ・ルアンスール(kz0151)が、到着した招待客を迎えている。招待客のほとんどは銀林檎館と普段から付き合いのある上得意客のようだが、今年はそこにハンターたちも加わるのだ。
「春……皆が色めき立つ、生命の芽吹く季節、ね」
 赤やオレンジのフリルがまるで炎のように揺れるドレスで現れたのは、ケイ・R・シュトルツェ(ka0242)である。料理や菓子作りが得意な彼女は、手製のさまざまなスイーツを持参しているようだ。
「やあ、今日は会えて嬉しいよ!」
 銀の装飾が施された上品な礼装の革鎧を纏っているのは、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)だ。彼女もまた特製のハーブ入りクッキーとハーブティーの茶葉を持参している。
「たまにはこんなすてきなお館でおしゃべりを楽しみながらのお花見も良いわね」
 のんびりとふわふわした口調のエルフの女性は、リアリュール(ka2003)である。彼女は、ペットの柴犬フォーリィを連れての参加だ。
「きゃーっ、パティちゃん久しぶりなの! これ、この前の依頼で作った熊ジャーキーなのプレゼントなの!」
 明るい声を上げて、旧知のハンターに飛び付いてハグをしているのは、ディーナ・フェルミ(ka5843)だ。彼女は、黒地の厚いローブをまとっている。
「おまねきいただき、ありがとダヨ♪」
 春色の着物を華やかに着こなしているのは、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)だ。友人のディーナと楽しく会話を弾ませて、レイメには花の名前や謂れを聞いている。
「お誘いおおきに、楽しませてもらいますな♪」
 春の色の髪と金色の瞳が印象的な春日(ka5987)は、観花の茶会に招待されたことを嬉しく思いながら、主催である銀林檎館の代表代行であるレイメに挨拶と礼を伝えていた。
「ハンターの皆さま、お忙しい中お集まりいただいてありがとうございます。残念ながら、主人のマルジョレーナ・ドルーエットは他地域での買い付け交渉のために不在ですが、精一杯のおもてなしを申しつかっております。また、お菓子やお茶などのお心遣い、とても感謝しております。本日はどうか、ごゆっくりとお楽しみください」
 レイメが両手でスカートを掴んで丁寧なお辞儀をし、ハンターたちは春の花が咲き誇る庭へと案内されていった。

●ゆったり観花の茶会
 赤、白、黄色、紫、ピンク……春の花はとても色鮮やかだ。そして、東方から取り寄せた薄紅色の花木も、穏やかな風に花びらを舞い散らせて風流な様子を見せている。
 花々の歓迎に目移りしながら、ケイは優しく穏やかな時間の流れを感じていた。
「そうそう、スイーツを持参したの。食べてくれると嬉しいわ」
 桜を象ったクッキーやフルーツを使ったケーキやゼリー、春らしい手作りスイーツをテーブルに並べている。
「こんにちは、カルメリーオ夫人。先日はどうも。またお困りの際にはいつでもお声掛けください」
 以前、カルメリーオ宝飾商会の新作披露展示会の警備をしたことのあるイルムは、女主人のイオラナ・カルメリーオと話を弾ませていた。またレイメにも頼もしい言葉を掛けて、彼女を和ませている。
 リアリュールはフォーリィと連れ立って、ゆっくりと庭の花を見て回っている。だが決してひとりでいるわけではなく、その時々で近くの客と楽しく会話をしていた。世界では戦いやいろいろな難事があるが、彼女は花から優しさや元気を分けてもらえる気がしていた。
 テーブルに並んだスイーツや茶に舌鼓を打ちながら、ディーナは友人やレイメと話をしていた。彼らから見たヴァリオスはどのような街なのか。どういった生活が営まれているのか。それを知ることが、彼女の力になる。
「ハンターとして守ったことの中に、みんなの幸せがちゃんとはいってたんだなぁって思えるの」
 あちらこちらとくるくる歩き回るパトリシアは、花や庭の風景を楽しんでいた。時折周囲を見回しては、ひとりでいる人や何か困ったような様子の人を見つけては、優しく話しかけていた。美味しい紅茶を手に、会話も弾むようだ。
 東方からでてきたばかりだという春日は、この同盟でどのような花が見られるのか、東方で見たことがあるのか、初めて見るのか、とても興味深く庭を鑑賞している。その楽しそうな笑顔は、自然と周囲を幸せな気持ちにさせるようだ。
 和やかな雰囲気で、花の香りと笑い声がこぼれる庭に、突如奏楽の音が響き始める。それに気が付いたレイメは、急いで新たな客人を迎えに行った――。

●春に酔う
 レイメが客人の出迎えに行ってからしばらくして、また奏楽の音が春の庭に響き始めた。軽やかで滑らかで、楽しげな音楽だ。
 客人の誰かが、「春酔楽団」の名前を口にした。バイオリン奏者のミナ、リュート奏者のニンファ、竪琴奏者のラケレ、横笛奏者のヴァーネの女性四人で構成された楽団である。奏楽の腕前は一流で、宴の席を渡り歩く彼女たちは――今日も一杯ひっかけての登場だ。
 奏楽の合間にきゃらきゃらと笑い声を立てていたミナが、突然調子っぱずれに歌いだす。それに呼応するように、音楽がぐわんとうねるように揺らぎ始めた。
 ケイの耳にも、素敵な旋律だがどこか浮わついた奏楽が届いていた。春酔楽団が飲酒で気分良くなっているのだと気付き、がちゃがちゃと騒ぎ始めた彼女たちに自ら近付いていった。
「ねぇ、あたしも混ぜてくれない? その素敵な音楽に、あたしの声を乗せてみたいの。これでも蒼の世界では『歌姫』なんて呼ばれてたのよ」
「そうなのぉ……? じゃ、その綺麗な声で、歌ってよぉ~」
「ええ、もちろん」
 そしてケイは、ミナとともに歌い始めた。
 イルムは春酔楽団の女性たちをにこにこと眺めながら演奏を聴いていたが、ケイが歌い始めたのを見て、自分もそこに加わることにした。アコーディオンでの伴奏ならばできるのだが、楽団員が道から逸れた行動を取らないように彼女たちの相手をすることにした。
「――おっと。君の手は煩わせないさ。ボクが代わりに取ってあげるよ、ラケレ君」
 イルムは、酒に酔うと力加減ができなくなるというラケレが椅子を引きずり始めたのを見て、すかさず彼女に手を貸して竪琴とともにその椅子に座らせた。
「む……? あら、ありがと~」
 同じく他の招待客とともに演奏を聴いて堪能していたリアリュールもまた、楽団員たちに酒酔いの気配を感じて、彼女たちの演奏に加わることにした。バイオリンの構えを外して歌うことに熱中しているミナの代わりに、ニンファ、ラケレ、ヴァーネの奏楽に乗せるようにしてバイオリンを奏でる。音階は気にせず、軽やかにステップを踏みながら楽しく奏で踊るのだ。
 それに触発されたヴァーネが、横笛の手を休めて手を打ち鳴らしながら踊りだす。
「宴も盛り上がってまいりましたの。こちら、春酔楽団の皆さまなの拍手なの」
 ざわつき始めた会場の意識をまとめるために、ディーナが笑顔で客人たちを誘導する。ハンターたちと春酔楽団に大きな拍手が沸き起こる。そしてディーナは、前日までに予習しておいた簡単に真似できそうなステップを客人に披露し、ケイとミナの歌に合わせるようにヴァーネの手を取って踊り出した。ヴァーネもとても嬉しそうだ。
「ありがと~、こんなに楽しい宴会は久しぶりよ~」
 奏楽の音が弾むように楽しさを増して周囲を巻き込み始めた頃、パトリシアは、ニンファがリュートを置きざりにして近くの客人に自分の酒を無理やりに勧めているのに気が付いた。すかさず歩み寄って、ニンファを優しく抱きしめる。
 パトリシアの優しい抱擁で、はっと落ち着いたらしいニンファは、酒の入った瓶をテーブルに置いた。
「ニンファもみんなも、無理せず楽しめたらイイナ」
「うん……そうだね。ちょっと、飲みすぎちゃったのかな」
 あとはエスコート上手なイルムを頼りにして、パトリシアとニンファも楽しく演奏と歌と踊りに興じている一団に混ざることにした。
 この奏楽と歌は即興なのだろうか。少なくとも、春日が知る東方の音楽とは少し異なっている。
「これは、何ていう曲なんやろか?」
 知らない歌や知らない踊りを知ることは楽しい。春日は、竪琴を爪弾きながらイルムと会話していたラケレに話しかけた。
「んー……『春のうた』かなぁ? でもお嬢さんと話してると、東方っぽい曲が弾きたくなっちゃう! ねぇ、何か歌って?」
 それぞれに知らない歌を教えあうのはとても素敵なことだ。春日が故郷の歌を歌い出すと、それに合わせる竪琴の音調が変わり、それに気が付いた他の楽団員たちも東方を思わせる曲調へと奏楽を変調させていった。
 誰からともなく、東方から取り寄せたという花木に目を移していた。柔らかい日差しと風に舞う薄紅色の花びらに、ほうっと溜息が漏れる。

●春の花と幸せ
 賑やかながら、会場が一体となって春の茶会を楽しんでいる様子に、レイメはほっと胸を撫で下ろしていた。奏楽に合わせた歌と踊りはまだ続いていたが、初めの激しく弾む小刻みなものではなく、時折東方の匂いを感じさせる穏やかなものに変わっていた。酔いどれ楽団はもはや酒瓶を置き去りにして、周囲を巻き込む奏楽に夢中になっている。
 ケイは歌う。
 ――舞い踊る、舞い上がる、命の煌めき。限りない魂の輝き。
 ここで偶々出逢った縁、笑顔、色、それらはずっと心に残ってどこまでも続いていくものなのだと、ケイは感じていた。幸せそうな皆を見て、その幸せが未来まで続くように、彼女はまた戦いの地に赴くのだろう。
 代わる代わる春酔楽団の4人の間を行き来していたイルムは、さりげなく彼女たちの酒瓶を遠ざけていた。
「さあ、皆。花を愛でようじゃないか」
 これほどたくさ咲き誇っている庭の花を、ほうっておくのはもったいない。楽団員たちもそれに倣って優しい音楽を奏でる。イルムはその紳士的な振る舞いで、うまく彼女たちを魅了してしまったようだ。
 バイオリンの演奏を一旦終わらせたリアリュールは、客人たちから大きな拍手を受けた。そしてあっという間に彼らに囲まれ、一緒に茶と菓子を楽しむことになった。そばには常にフォーリィがいて、一緒に優しい時間を過ごしている。
 前日まで、宴会芸の本を片手に予習していたディーナは、皆が知っているような流行り歌を歌ったり、春酔楽団について調べておいた情報などを披露して、客人たちと楽しく談笑していた。
「パティ、お花占いできますよ♪」
 パトリシアは、風に舞った色とりどりの花びらを拾い集め、テーブルにそれらを散らしていた。タロットカードと同じ要領で花びらを混ぜ、客に選んでもらう。そして、レイメから教わった花の名前と謂れを汲みとって、優しい気持ちで花びらの意味を読み解くのだ。この場に集った人々の、良き春の思い出になるようにと、パトリシアは心から願っていた。
「楽器の演奏、習うてみるのも楽しそぉかも」
 春酔楽団とハンターたちが合わさった奏楽を楽しんだ春日は、自身に新たな興味が芽生えるのを感じていた。いつも笑みを絶やさない春日に、周囲もまた笑顔になる。楽しい気持ちは伝わるのだ。茶会の終わりまで仲良く楽しく過ごせるようにと、春日は仲間や客人たちとの会話を楽しむことにした。
「これほど盛況の茶会は、これまでで初めてでした。お酒のいたずらに一時はどうなることかと思案いたしましたが、ハンターの皆さまのおかげで、他のお客様も今までにない経験をされたことと思います。本当にありがとうございます」
 レイメが膝を折って頭を下げる。館の主人の不在を再度詫びながらも、彼女自身もまたこの茶会を楽しんでいる雰囲気が伝わってきた。
 華やかな色彩の花。新緑の優しさ。流れる奏楽。そして、街の人々とのふれあい。それらがハンターたちの心をほんのひとときでも癒すものであったならば、この観花の茶会は成功したといえるのではないだろうか――。

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MVP一覧

  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレka5113
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリスka5996

重体一覧

参加者一覧

  • 夢を魅せる歌姫
    ケイ・R・シュトルツェ(ka0242
    人間(蒼)|21才|女性|猟撃士
  • よき羊飼い
    リアリュール(ka2003
    エルフ|17才|女性|猟撃士
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 太陽を写す瞳
    春日(ka5987
    人間(紅)|17才|女性|符術師
  • 金色のもふもふ
    パトリシア=K=ポラリス(ka5996
    人間(蒼)|19才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/04/15 07:45:39
アイコン 花と奏でる狂騒曲
イルム=ローレ・エーレ(ka5113
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2016/04/16 18:14:23