ゲスト
(ka0000)
呪われし老狼と甲冑の歪虚
マスター:真太郎

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/18 15:00
- 完成日
- 2016/04/25 19:13
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
私はハナ。
辺境で暮らす少数部族カリハの1人です。
でもカリハは私を含めてもう5人しかいません。
私の部族は歪虚に襲われ、私の家族以外は全て殺されたからです。
命辛々森まで逃げ延びた私達でしたが、今度はそこで1頭の獣に襲われそうになりました。
2mくらいの灰色の毛をした狼の幻獣です。
その森はその幻獣の縄張りであったため、私達は殺されそうになったのです。
でも私が必死に助けてくれるように訴えると、幻獣は攻撃を止めてくれました。
後になってから分かった事ですが、私にシャーマンとしての素質があったため言葉、というか、想いが幻獣に届いたんだそうです。
それから私達家族と幻獣ボロウとの奇妙な共同生活が始まりました。
一旦は見逃されたとはいえ、自分達よりも大きな幻獣がそばにいる中での生活です。最初は毎日ビクビクしながら暮らしていました。
なにせ幻獣は私達を見張っているのか毎日姿を見せましたから。
でも姿を見せるだけで襲ってはこなかったんです。
そして何日か暮らすと辺りにいる幻獣はボロウ1人だけだと分かってきました。
もしかしたら幻獣も1人で寂しかったんじゃないか?
そんな風に思った私は幻獣に歩み寄ってみようと思ったんです。
家族に話すと反対されるのが分かっていましたからコッソリですけど。
最初は恐々と距離を詰めて、近づいても大丈夫だと分かったらタッチしてすぐ逃げる。
そんな風に近づいていって、触っても大丈夫だと分かってからは近くで話しかけるのが日課になりました。
ボロウも最初はうっとうしそうにしていましたけど、嫌がってはいないようでした。
当時から不思議とボロウのそういう気持ちが分かったんです。
やがて両親にこの事がバレて思いっきり怒られてしまいました。
でもおじいちゃんとおばあちゃんは私の話を聞いて、私にシャーマンとしての素質がある事に気づいたんです。
それから私はシャーマンの修行を始めました。
シャーマンになればもっとボロウと仲良くなれると思ったからです。
そして修行を続けるとボロウの言葉が少しずつ分かるようになってきました。
ボロウの名が分かったのもこの頃です。
そして更に修行を積む事でボロウの境遇も分かりました。
ボロウの群れも歪虚に襲われて仲間は全て死に、ボロウは群れで生き残った最後の1頭でした。
そう、私達は似た境遇だったのです。
だからボロウは私達は殺さず見逃してくれたのでしょう。
本人は『単なる気まぐれだ』って言ってますけど。
ボロウとの共同生活は半年続きました。
これからもずっとボロウと暮らすのだと思っていました。
なのに……。
森に大きな甲冑を身にまとった巨人が何人もの巨人を引き連れてやってきたのです。
その者たちが放つ禍々しい気配から歪虚だとすぐに分かりました。
歪虚が再び私達に災厄を振り撒きにやってきたのです。
『久しぶりだな狼』
甲冑の歪虚に話しかけれたボロウは牙を剥きだしにして唸りました。
ボロウから今まで感じた事のない敵意と憎悪が伝わってきます。
『結局生き残ったのはお前だけか? だが、その分憎しみは凝縮しているようだ』
甲冑のせいで表情は分かりませんが、歪虚の声音はすごく楽しそうでした。
そしてボロウからは何故か悲しみが伝わってきました。
『それにずいぶんと弱っているな。隠さなくったって分かる。なにせ部下が結界を素通りできるくらいだ。お前の命ももう長くはないのだろう。
クククッ、きっとお前は良い歪虚になるだろう』
ボロウが歪虚になる?
私には甲冑の歪虚が何を言っているのか分かりません。
でもこのままボロウと話させていてはいけない事は分かります。
一刻も早くボロウと家族を連れて歪虚から逃げなくてはいけません。
「逃げようボロウ!」
私はボロウの背中の毛を掴んでひっぱりました。
しかしボロウは私の手を振り切って歪虚に襲い掛かります。
そして伝えてきました。
私達だけ逃げるようにと。
でもボロウを置いて逃げるなんてできる訳がありません。
でも非力な私達では巨人の歪虚と戦う事なんてできません。
私達にできる事。
それは助けを求める事だけでした。
「みんなー! お願い! 力を貸して!」
私は森にいるパルムを呼び集めました。
そして誰か助けてくれる人を探すように頼んで四方に放ったのです。
両親も無線機で救助を呼びかけ始めました。
誰か助けて!
助けて!
ボロウを助けて!
辺境で暮らす少数部族カリハの1人です。
でもカリハは私を含めてもう5人しかいません。
私の部族は歪虚に襲われ、私の家族以外は全て殺されたからです。
命辛々森まで逃げ延びた私達でしたが、今度はそこで1頭の獣に襲われそうになりました。
2mくらいの灰色の毛をした狼の幻獣です。
その森はその幻獣の縄張りであったため、私達は殺されそうになったのです。
でも私が必死に助けてくれるように訴えると、幻獣は攻撃を止めてくれました。
後になってから分かった事ですが、私にシャーマンとしての素質があったため言葉、というか、想いが幻獣に届いたんだそうです。
それから私達家族と幻獣ボロウとの奇妙な共同生活が始まりました。
一旦は見逃されたとはいえ、自分達よりも大きな幻獣がそばにいる中での生活です。最初は毎日ビクビクしながら暮らしていました。
なにせ幻獣は私達を見張っているのか毎日姿を見せましたから。
でも姿を見せるだけで襲ってはこなかったんです。
そして何日か暮らすと辺りにいる幻獣はボロウ1人だけだと分かってきました。
もしかしたら幻獣も1人で寂しかったんじゃないか?
そんな風に思った私は幻獣に歩み寄ってみようと思ったんです。
家族に話すと反対されるのが分かっていましたからコッソリですけど。
最初は恐々と距離を詰めて、近づいても大丈夫だと分かったらタッチしてすぐ逃げる。
そんな風に近づいていって、触っても大丈夫だと分かってからは近くで話しかけるのが日課になりました。
ボロウも最初はうっとうしそうにしていましたけど、嫌がってはいないようでした。
当時から不思議とボロウのそういう気持ちが分かったんです。
やがて両親にこの事がバレて思いっきり怒られてしまいました。
でもおじいちゃんとおばあちゃんは私の話を聞いて、私にシャーマンとしての素質がある事に気づいたんです。
それから私はシャーマンの修行を始めました。
シャーマンになればもっとボロウと仲良くなれると思ったからです。
そして修行を続けるとボロウの言葉が少しずつ分かるようになってきました。
ボロウの名が分かったのもこの頃です。
そして更に修行を積む事でボロウの境遇も分かりました。
ボロウの群れも歪虚に襲われて仲間は全て死に、ボロウは群れで生き残った最後の1頭でした。
そう、私達は似た境遇だったのです。
だからボロウは私達は殺さず見逃してくれたのでしょう。
本人は『単なる気まぐれだ』って言ってますけど。
ボロウとの共同生活は半年続きました。
これからもずっとボロウと暮らすのだと思っていました。
なのに……。
森に大きな甲冑を身にまとった巨人が何人もの巨人を引き連れてやってきたのです。
その者たちが放つ禍々しい気配から歪虚だとすぐに分かりました。
歪虚が再び私達に災厄を振り撒きにやってきたのです。
『久しぶりだな狼』
甲冑の歪虚に話しかけれたボロウは牙を剥きだしにして唸りました。
ボロウから今まで感じた事のない敵意と憎悪が伝わってきます。
『結局生き残ったのはお前だけか? だが、その分憎しみは凝縮しているようだ』
甲冑のせいで表情は分かりませんが、歪虚の声音はすごく楽しそうでした。
そしてボロウからは何故か悲しみが伝わってきました。
『それにずいぶんと弱っているな。隠さなくったって分かる。なにせ部下が結界を素通りできるくらいだ。お前の命ももう長くはないのだろう。
クククッ、きっとお前は良い歪虚になるだろう』
ボロウが歪虚になる?
私には甲冑の歪虚が何を言っているのか分かりません。
でもこのままボロウと話させていてはいけない事は分かります。
一刻も早くボロウと家族を連れて歪虚から逃げなくてはいけません。
「逃げようボロウ!」
私はボロウの背中の毛を掴んでひっぱりました。
しかしボロウは私の手を振り切って歪虚に襲い掛かります。
そして伝えてきました。
私達だけ逃げるようにと。
でもボロウを置いて逃げるなんてできる訳がありません。
でも非力な私達では巨人の歪虚と戦う事なんてできません。
私達にできる事。
それは助けを求める事だけでした。
「みんなー! お願い! 力を貸して!」
私は森にいるパルムを呼び集めました。
そして誰か助けてくれる人を探すように頼んで四方に放ったのです。
両親も無線機で救助を呼びかけ始めました。
誰か助けて!
助けて!
ボロウを助けて!
リプレイ本文
ハナ達家族の救援をパルムや無線で聞きつけた6人のハンターが現場に駆けつけてきた。
「あはっ、ホントに歪虚が幻獣を襲ってますねー」
葛音 水月(ka1895)が妙に楽しげに甲冑の歪虚と幻獣ボロウの戦闘を眺める。
「バルツァーが珍しく気を荒立てたから、なんか面白い相手と戦えそうな気がしてたんだが……興奮した理由はあの幻獣か? それともあの甲冑か?」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)が自分の幻獣イェシドのバルツァーに跨ったまま相手を値踏みする。
「狼の幻獣……あれはイェジド? それとも別の?」
保・はじめ(ka5800)はボロウを観察したが、イェシドより一回り小さく見える。おそらく別の種だろう。
「詳しい事情は分かりませんけど、ここは幻獣を守って戦いましょう」
マヘル・ハシバス(ka0440)は別の依頼を終えた後で疲れはていたが、魔導槍を構える。
スティード・バック(ka4930)は戦場の脇で一丸になって隠れているハナ達を見つけると、大声で呼びかけた。
「よく短慮を起こさず助けを呼んだな。お前の良き友の無事は決まったようなものだ。
そしてそこでただ見ているだけの木っ端ども、退屈しのぎになってやろう。なに、二度と退屈を感じなくて済むようになる」
更にボロウと家族の安全を確保するため敵にも呼びかけ、自分達に注意を向けさせる。
「いくぞバルツァー!」
そして幻獣のバルツァーに乗るエヴァンスが先陣を切って突っ込み、戦闘を開始した。
「甲冑さんは、エヴァンスさんに任せますねー。僕は他のをやらせてもらいますからー」
「連戦は少々辛いのですけど、やるしかありませんね」
水月は『瞬客』で、マヘルが『ジェットブーツ』でエヴァンスの後に続く。
八原 篝(ka3104)は甲冑歪虚を狙撃できるポイントを探して移動は始める。
(あの幻獣は手助けなんて望んでないかもしれないけど、あんなに必死に助けてって言われたら助けないわけにはいかないわよ)
ハンター達が行動を開始すると3体のオーガが迎え撃とうと矢を番え始めた。
「遅いです」
だが保の『禹歩』の加護を受けているマヘルの『デルタレイ』が先に発動し、放たれた光の矢が3体のオーガを貫く。
オーガは傷つきながらも矢を放ったが、バルツァーは巧みに避けるとオーガの1体にチャージを仕掛けて吹き飛ばす。
バルツァーはオーガを突破して更に進み、そのままトロルに襲いかかった。
「こいつらは任せたぞバルツァー」
エヴァンスはバルツァーの背を蹴ってトロルを飛び越えた。
すると甲冑歪虚がボロウにハルバードを振り下ろそうとする光景がエヴァンスの目に飛び込んでくる。
エヴァンスはボロウの眼前に飛び込んで『カウンターアタック』を発動し、間一髪ハルバードをグレートソードで受け止めた。
突然の乱入者を警戒したのか、ボロウがエヴァンスに向かってグルルと唸り声を上げる。
「おいおい、今助けてやっただろ。俺は味方だよ。ほら、お前の仲間の幻獣とも友達だ。だから後ろからガブリとか止めてくれよ」
言葉は通じていないだろうが、とりあえずボロウが襲ってくる様子はない。
「さて、甲冑着こんだ歪虚の兄さん。幻獣よりもっと強いやつを相手にした方が楽しいとは思わねぇか?」
『私は強いやつと戦いたいだなどと思う戦闘狂ではないが、邪魔をするなら容赦はしない』
甲冑歪虚はエヴァンスとボロウから距離をとると、盾を前面に翳してハルバードを構えた。
「そうこなくっちゃな」
そうしてエヴァンスが気を引いた隙に篝が甲冑歪虚を狙撃する。
だが機敏に反応した甲冑歪虚に盾で受け止められ、ほとんどダメージを与えた様子もない。
しかし篝が放ったのは『寒夜』で冷気を纏った弾丸だ。
例え防がれても冷気で甲冑歪虚の動きを鈍らせた事ができるのだった。
『む! これは……』
その隙をエヴァンスが逃すはずもなく、グレートソードを振りかぶって斬りかかる。
甲冑歪虚は辛うじて盾で防いだが、盾は大きくへこみ、殺しきれなかった衝撃で甲冑歪虚もふらつく。
「ほぉ、俺の一撃に耐えたか。そこそこできるみたいだな。だが、いつまで耐えられるかな?」
今の攻撃で甲冑歪虚の力量をだいたい掴んだエヴァンスは更に攻め立てた。
エヴァンスの攻撃を受けるたびに甲冑歪虚の盾は歪み、どんどんと追い詰められてゆく。
『この、馬鹿力め!』
甲冑歪虚は不意にハルバードをエヴァンスに投げつけた。
エヴァンスは剣で打ち払ったが、その間に甲冑歪虚は距離をとる。
そして篝の位置からは甲冑歪虚が盾の裏から何か取り出そうとする仕草が見てとれた。
(隠し武器? それなら奇襲性の高い……投擲武器か銃器)
篝は瞬時にそう判断した。
「何か撃ってくるわ。気をつけて!」
篝が警告を発するのと甲冑歪虚が銃を取り出すのはほぼ同時だった。
エヴァンスは銃弾を防ぐためにグレートソードを眼前に掲げながら突っ込んだ。
しかし甲冑歪虚の銃はエヴァンスを向いていない。銃口の先にいるのはボロウだ。
『狼を助けなくていいのか?』
「くっ!」
エヴァンスは強引に進路を変えて銃の射線に飛び込む。
「撃ち落す!」
篝はすぐに『妨害射撃』を行ったが外れ、放たれた銃弾はエヴァンスが辛うじてグレートソードで受け止めた。
「ずいぶんと卑怯な手を使うんだな」
『私は戦闘狂ではないと言っただろう。勝てるならどんな手も使う』
甲冑歪虚は移動しつつも狙いをボロウから外さないため、エヴァンスはボロウの前から動けなくなった。
その頃、トロルに襲い掛かったバルツァーは他の2体のトロルに包囲されようとしていた。
「やらせません!」
しかし保がその2体のトロルに『地縛符』を発動。足元を泥状に固めて捕らえ、移動できなくする。
「久しぶりに見るかもな巨人さんですねー」
水月が足を捕らわれていないトロルに気安く接近すると、斧が振り下ろされてきた。
しかし水月は完全に見切って避けると『瞬影』を発動。
自身の身長よりは遥かに大きい2mのパイルバンカーでトロルの脚に大穴を穿つ。
「うはっ! 凄い反動ー」
更にバンカーの反動を利用して向きを変え、逆の脚も穿った。
巨体ゆえトロルの脚はちぎれなかったが、立っていられなくなり両膝をついた。
トロルは膝をついたまま横薙ぎに斧を振るったが、水月は大きく跳躍して避けつつ『立体攻撃』を発動。
「おっとっと! やっぱり重いなー」
バンカーの重量に振り回されないようにバランスを取りながらトロルの頭の上に着地し、パイルを真下に向ける。
「はじけろー」
放たれたパイルは頭蓋骨を突き破って頭を貫通し、トロルを絶命させた。
目の前の獲物が倒れたので、バルツァーが別のトロルに襲い掛かろうと駆け出した。
「あ! バルツァー、今そっちに行くと……」
水月が止める前にバルツァーは保の『地縛符』に踏み込んで動けなくなった。
結界は不可視なのでバルツァーには分からなかったのだ。
『!?』
バルツァーが目を白黒させてもがくが、やっぱり動けず、悲しそうな目で水月を見てくる。
「あ~あ……。まぁ仕方ないから君はそこにいて、敵は僕らに任せてよー」
水月は保から結界の範囲を聞くと、範囲外からトロルに届く位置に移動し、腕を伸ばしながらパイルバンカーでトロルを攻撃。
トロルも腕を伸ばして反撃するという、奇妙な光景の戦闘が開始される。
「こんな事なら飛び道具も持ってくればよかったかなー」
水月は軽口を叩きながらもトロルの斧をひょいとかわして『瞬影』を発動。
カウンターで腕にパイルを突き立て、更に腕が伸びて前に出ていた顔にもパイルを発射。
腕と顔面を破砕されたトロルは足を固定されたまま息絶えたのだった。
保はオーガも『地縛符』で足止めするつもりだったが、今からではスティードも巻き込んでしまうため諦め、代わりに『風雷陣』を発動して3体のオーガの頭上から稲妻を降らせる。
しかし当たったのはバルツァーのチャージで吹き飛ばされたオーガだけで、他は避けられた。
しかも当たったオーガもまだ生きており、上半身だけ起こして矢を放ち、保の腕に突き刺さる。
「くっ!」
保は傷を押さえながら動けないトロルを盾にしようと走り出す。
オーガは保を追って矢を射ろうとしたが、スティードが懐に飛び込み『闘心高揚』を発動。精霊に祈りを捧げて全身のマテリアルを高揚させる。
「もう一度寝てろ!」
そしてナックルを顔面に叩き込んだ。
鼻が折れて顔面血塗れになったオーガは仰向けに倒れ、そのまま動かなくなる。
だが、その間に別のオーガがスティードの後ろから攻撃を仕掛けた。
避けそこなったスティードは剣を脇腹に受け、体がくの字に曲がる。
「ぐふっ!!」
体が吹き飛ばされそうな程の衝撃だったが踏ん張って耐え、笑みを浮かべて相手を見据えた。
「やってくれたな。こちらも出し惜しみなしでいくぞ!」
スティードは『クラッシュブロウ』を発動。
精霊だけではなく祖霊の力もその身に宿し、更に威力を増した一撃を叩き込む。
オーガは盾で受け止めたが、威力を殺しきれず腕の骨が折れ、盾がぶらんと垂れ下がる。
対してオーガはカウンター気味に剣を振り下ろしてスティードの頭を打ち、吹き出した血が顔を濡らす。
だが、スティードの笑みは更に深くなった。
この殴り合いが楽しくてたまらなくなったからだ。
スティードは再度『クラッシュブロウ』を発動。
「喰らえっ!!」
盾が下がってがら空きになった腹にナックルを抉りこむ。
ナックルは腹を突き破って内臓を抉り、それが致命傷となってオーガは事切れた。
「先の依頼は仲間の活躍のお陰で退屈だったが、今回は本気の戦いができたな」
一方、トロルで矢の射線を遮った保だが、別のオーガが追ってきていた。
保は少し屈んでトロルの股の間からオーガの位置を把握し、『地縛符』で足止めする。
そして新たに抜いた符を空中に放ち『風雷陣』を発動。
オーガは頭上から降り注いだ稲妻を喰らって黒焦げになり、そのまま絶命した。
「次はこいつを」
保は目の前の動けないトロルに倒す事にした。
トロルの斧が届かない位置にいるので安全に倒せる。
はずだったが、トロルは斧を投げつけてきた。
「うわっ!」
幸い斧は外れたが、トロルは地面の土を固め始めた。
次はそれを投げるつもりらしい。
「させません!」
マヘルが『デルタレイ』の光でトロルを撃ち貫いたが、まだ倒れない。
「しぶといですね」
保が『風雷陣』で稲妻を浴びせると、ようやく倒れてくれた。
「ふぅ……動けないからといって油断してはいけませんね」
その頃、甲冑歪虚との戦闘は、篝の攻撃は盾で防がれると決定打に欠け、エヴァンスは斬り込むとボロウが撃たれるため動けない、という膠着状態になっていた。
その膠着状態の中、不意に傷ついていたボロウが気力を振り絞って甲冑歪虚に襲い掛かった。
当然、甲冑歪虚は発砲。
だが。
「攻撃は通させません」
マヘルが『防御障壁』を発動。ボロウの体が光の防御壁で覆われる。
光の防御壁は銃弾に当たって砕け散ったが、その分威力は減少。
銃弾はボロウの体も貫いたが致命傷には至らなかった。
甲冑歪虚はボロウの攻撃を盾で防いだが、その間に盾とは逆の右側から篝で銃弾を浴びせかける。
更にエヴァンスがグレートソードを腰だめに構えながら接近。
しかし甲冑歪虚が盾を構え直す方が速い。
「背中借りるぜ」
だがエヴァンスはボロウの背中を踏み台にして盾の上から覗いている甲冑歪虚の首を狙ってグレートソードを一閃。
甲冑歪虚の頭が鮮血を上げながら飛び、体が後ろに傾いで仰向けに倒れる。
「卑怯者の末路だ」
エヴァンスは倒れた甲冑歪虚を睥睨すると、ボロウに向き直った。
「背中踏んで悪かったな。傷は大丈夫か?」
だがその直後に発砲音が鳴り、エヴァンスの脚が撃ち抜かれた。
「なにっ!?」
振り返ると銃を構えた甲冑歪虚が起き上がり、自分の頭を拾っていた。
『勝ったと思ったか? だが私は不死身だ。この程度では死なない。とはいえ部下もやられた上にこの状態では不利だな。今日のところは退くとしよう』
甲冑歪虚の盾から何かが落ちて割れ、そこから煙が噴き出した。
「煙幕か!」
篝は煙の中の甲冑歪虚に向かって銃を乱射したが、当たったかどうかは分からない。
『それと、お前達はその狼を幻獣だと思ってるようだが、違うぞ。お前達はそいつを助けた事を後悔するだろう』
そして煙が晴れると、もうそこに甲冑歪虚の姿はなかった。
甲冑歪虚が去り、周囲に敵がいなくなった事が分かると水月は保に呼びかけた。
「保さーん。バルツァーが可哀想な事になってるから術を解除してあげてー」
「すみません。結界は張った術者本人でも解除できないんです。効果が切れるまで待つか自分でレジストするしかないんです」
「あらら~、だってさバルツァー」
バルツァーが憮然とした顔で水月を見る。
「文句なら君をトロルにけしかけたご主人様に言いなよー」
そのご主人様は。
「ま、あと少しで術の切れる時間だ。それまで我慢しろ」
と言って慰める事しかできなかった。
もちろんそれでバルツァーの機嫌がよくなったりはしなかったが。
「本当にありがとうございました! もう、ホントに、なんとお礼を言ったらいいか……」
改めてハンター達が家族の下に向かうと、ハナが涙混じりにお礼を言ってきた。
「礼など不要だ。今回最も大きな働きをしたのは、我々ではなくカリハの皆なのだから。むしろ胸を張るといい」
スティードが霊闘士らしい物言いで家族を称えた。
「いえ、そんな。皆さんのお陰です」
「それより狼さんは元気ですかー?」
「はい。怪我はしましたけど命に別状はありません。元気です」
水月の問いにハナがボロウの背中の毛を撫でながら答える。
「ところで皆さんはこれからもここで暮らすつもりなのですか? あの甲冑がまた来るかもしれませんよ」
「私は人里に移り住む事をお勧めするわ。ここは危ないし不便だし、それに寂しいじゃない?」
マヘルが気になっている事を尋ね、篝が助言すると、家族は表情を曇らせた。
「危険な事は分かっていますけど、ここはボロウの森なんです。ボロウはここを離れては暮らせません。ボロウが離れられないなら私はここで暮らします。だって、ボロウは家族ですから」
ハナは弱り顔で、でもハッキリと告げた。
「気高きもの、良い友に巡り会ったな。感謝と養生をすることだ」
スティードはハナの言葉に感銘を受け、ボロウを労った。
「え? なにボロウ」
ふとハナが首を傾げる。
他の者には分からないが、どうやらボロウがハナに何か話しかけたらしい。
「森を離れろ。人里に行け。どうしてそんなこと言うの?」
困惑顔をしたハナが何度も尋ねたが、ボロウは黙して語ろうとしなかった。
「あはっ、ホントに歪虚が幻獣を襲ってますねー」
葛音 水月(ka1895)が妙に楽しげに甲冑の歪虚と幻獣ボロウの戦闘を眺める。
「バルツァーが珍しく気を荒立てたから、なんか面白い相手と戦えそうな気がしてたんだが……興奮した理由はあの幻獣か? それともあの甲冑か?」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)が自分の幻獣イェシドのバルツァーに跨ったまま相手を値踏みする。
「狼の幻獣……あれはイェジド? それとも別の?」
保・はじめ(ka5800)はボロウを観察したが、イェシドより一回り小さく見える。おそらく別の種だろう。
「詳しい事情は分かりませんけど、ここは幻獣を守って戦いましょう」
マヘル・ハシバス(ka0440)は別の依頼を終えた後で疲れはていたが、魔導槍を構える。
スティード・バック(ka4930)は戦場の脇で一丸になって隠れているハナ達を見つけると、大声で呼びかけた。
「よく短慮を起こさず助けを呼んだな。お前の良き友の無事は決まったようなものだ。
そしてそこでただ見ているだけの木っ端ども、退屈しのぎになってやろう。なに、二度と退屈を感じなくて済むようになる」
更にボロウと家族の安全を確保するため敵にも呼びかけ、自分達に注意を向けさせる。
「いくぞバルツァー!」
そして幻獣のバルツァーに乗るエヴァンスが先陣を切って突っ込み、戦闘を開始した。
「甲冑さんは、エヴァンスさんに任せますねー。僕は他のをやらせてもらいますからー」
「連戦は少々辛いのですけど、やるしかありませんね」
水月は『瞬客』で、マヘルが『ジェットブーツ』でエヴァンスの後に続く。
八原 篝(ka3104)は甲冑歪虚を狙撃できるポイントを探して移動は始める。
(あの幻獣は手助けなんて望んでないかもしれないけど、あんなに必死に助けてって言われたら助けないわけにはいかないわよ)
ハンター達が行動を開始すると3体のオーガが迎え撃とうと矢を番え始めた。
「遅いです」
だが保の『禹歩』の加護を受けているマヘルの『デルタレイ』が先に発動し、放たれた光の矢が3体のオーガを貫く。
オーガは傷つきながらも矢を放ったが、バルツァーは巧みに避けるとオーガの1体にチャージを仕掛けて吹き飛ばす。
バルツァーはオーガを突破して更に進み、そのままトロルに襲いかかった。
「こいつらは任せたぞバルツァー」
エヴァンスはバルツァーの背を蹴ってトロルを飛び越えた。
すると甲冑歪虚がボロウにハルバードを振り下ろそうとする光景がエヴァンスの目に飛び込んでくる。
エヴァンスはボロウの眼前に飛び込んで『カウンターアタック』を発動し、間一髪ハルバードをグレートソードで受け止めた。
突然の乱入者を警戒したのか、ボロウがエヴァンスに向かってグルルと唸り声を上げる。
「おいおい、今助けてやっただろ。俺は味方だよ。ほら、お前の仲間の幻獣とも友達だ。だから後ろからガブリとか止めてくれよ」
言葉は通じていないだろうが、とりあえずボロウが襲ってくる様子はない。
「さて、甲冑着こんだ歪虚の兄さん。幻獣よりもっと強いやつを相手にした方が楽しいとは思わねぇか?」
『私は強いやつと戦いたいだなどと思う戦闘狂ではないが、邪魔をするなら容赦はしない』
甲冑歪虚はエヴァンスとボロウから距離をとると、盾を前面に翳してハルバードを構えた。
「そうこなくっちゃな」
そうしてエヴァンスが気を引いた隙に篝が甲冑歪虚を狙撃する。
だが機敏に反応した甲冑歪虚に盾で受け止められ、ほとんどダメージを与えた様子もない。
しかし篝が放ったのは『寒夜』で冷気を纏った弾丸だ。
例え防がれても冷気で甲冑歪虚の動きを鈍らせた事ができるのだった。
『む! これは……』
その隙をエヴァンスが逃すはずもなく、グレートソードを振りかぶって斬りかかる。
甲冑歪虚は辛うじて盾で防いだが、盾は大きくへこみ、殺しきれなかった衝撃で甲冑歪虚もふらつく。
「ほぉ、俺の一撃に耐えたか。そこそこできるみたいだな。だが、いつまで耐えられるかな?」
今の攻撃で甲冑歪虚の力量をだいたい掴んだエヴァンスは更に攻め立てた。
エヴァンスの攻撃を受けるたびに甲冑歪虚の盾は歪み、どんどんと追い詰められてゆく。
『この、馬鹿力め!』
甲冑歪虚は不意にハルバードをエヴァンスに投げつけた。
エヴァンスは剣で打ち払ったが、その間に甲冑歪虚は距離をとる。
そして篝の位置からは甲冑歪虚が盾の裏から何か取り出そうとする仕草が見てとれた。
(隠し武器? それなら奇襲性の高い……投擲武器か銃器)
篝は瞬時にそう判断した。
「何か撃ってくるわ。気をつけて!」
篝が警告を発するのと甲冑歪虚が銃を取り出すのはほぼ同時だった。
エヴァンスは銃弾を防ぐためにグレートソードを眼前に掲げながら突っ込んだ。
しかし甲冑歪虚の銃はエヴァンスを向いていない。銃口の先にいるのはボロウだ。
『狼を助けなくていいのか?』
「くっ!」
エヴァンスは強引に進路を変えて銃の射線に飛び込む。
「撃ち落す!」
篝はすぐに『妨害射撃』を行ったが外れ、放たれた銃弾はエヴァンスが辛うじてグレートソードで受け止めた。
「ずいぶんと卑怯な手を使うんだな」
『私は戦闘狂ではないと言っただろう。勝てるならどんな手も使う』
甲冑歪虚は移動しつつも狙いをボロウから外さないため、エヴァンスはボロウの前から動けなくなった。
その頃、トロルに襲い掛かったバルツァーは他の2体のトロルに包囲されようとしていた。
「やらせません!」
しかし保がその2体のトロルに『地縛符』を発動。足元を泥状に固めて捕らえ、移動できなくする。
「久しぶりに見るかもな巨人さんですねー」
水月が足を捕らわれていないトロルに気安く接近すると、斧が振り下ろされてきた。
しかし水月は完全に見切って避けると『瞬影』を発動。
自身の身長よりは遥かに大きい2mのパイルバンカーでトロルの脚に大穴を穿つ。
「うはっ! 凄い反動ー」
更にバンカーの反動を利用して向きを変え、逆の脚も穿った。
巨体ゆえトロルの脚はちぎれなかったが、立っていられなくなり両膝をついた。
トロルは膝をついたまま横薙ぎに斧を振るったが、水月は大きく跳躍して避けつつ『立体攻撃』を発動。
「おっとっと! やっぱり重いなー」
バンカーの重量に振り回されないようにバランスを取りながらトロルの頭の上に着地し、パイルを真下に向ける。
「はじけろー」
放たれたパイルは頭蓋骨を突き破って頭を貫通し、トロルを絶命させた。
目の前の獲物が倒れたので、バルツァーが別のトロルに襲い掛かろうと駆け出した。
「あ! バルツァー、今そっちに行くと……」
水月が止める前にバルツァーは保の『地縛符』に踏み込んで動けなくなった。
結界は不可視なのでバルツァーには分からなかったのだ。
『!?』
バルツァーが目を白黒させてもがくが、やっぱり動けず、悲しそうな目で水月を見てくる。
「あ~あ……。まぁ仕方ないから君はそこにいて、敵は僕らに任せてよー」
水月は保から結界の範囲を聞くと、範囲外からトロルに届く位置に移動し、腕を伸ばしながらパイルバンカーでトロルを攻撃。
トロルも腕を伸ばして反撃するという、奇妙な光景の戦闘が開始される。
「こんな事なら飛び道具も持ってくればよかったかなー」
水月は軽口を叩きながらもトロルの斧をひょいとかわして『瞬影』を発動。
カウンターで腕にパイルを突き立て、更に腕が伸びて前に出ていた顔にもパイルを発射。
腕と顔面を破砕されたトロルは足を固定されたまま息絶えたのだった。
保はオーガも『地縛符』で足止めするつもりだったが、今からではスティードも巻き込んでしまうため諦め、代わりに『風雷陣』を発動して3体のオーガの頭上から稲妻を降らせる。
しかし当たったのはバルツァーのチャージで吹き飛ばされたオーガだけで、他は避けられた。
しかも当たったオーガもまだ生きており、上半身だけ起こして矢を放ち、保の腕に突き刺さる。
「くっ!」
保は傷を押さえながら動けないトロルを盾にしようと走り出す。
オーガは保を追って矢を射ろうとしたが、スティードが懐に飛び込み『闘心高揚』を発動。精霊に祈りを捧げて全身のマテリアルを高揚させる。
「もう一度寝てろ!」
そしてナックルを顔面に叩き込んだ。
鼻が折れて顔面血塗れになったオーガは仰向けに倒れ、そのまま動かなくなる。
だが、その間に別のオーガがスティードの後ろから攻撃を仕掛けた。
避けそこなったスティードは剣を脇腹に受け、体がくの字に曲がる。
「ぐふっ!!」
体が吹き飛ばされそうな程の衝撃だったが踏ん張って耐え、笑みを浮かべて相手を見据えた。
「やってくれたな。こちらも出し惜しみなしでいくぞ!」
スティードは『クラッシュブロウ』を発動。
精霊だけではなく祖霊の力もその身に宿し、更に威力を増した一撃を叩き込む。
オーガは盾で受け止めたが、威力を殺しきれず腕の骨が折れ、盾がぶらんと垂れ下がる。
対してオーガはカウンター気味に剣を振り下ろしてスティードの頭を打ち、吹き出した血が顔を濡らす。
だが、スティードの笑みは更に深くなった。
この殴り合いが楽しくてたまらなくなったからだ。
スティードは再度『クラッシュブロウ』を発動。
「喰らえっ!!」
盾が下がってがら空きになった腹にナックルを抉りこむ。
ナックルは腹を突き破って内臓を抉り、それが致命傷となってオーガは事切れた。
「先の依頼は仲間の活躍のお陰で退屈だったが、今回は本気の戦いができたな」
一方、トロルで矢の射線を遮った保だが、別のオーガが追ってきていた。
保は少し屈んでトロルの股の間からオーガの位置を把握し、『地縛符』で足止めする。
そして新たに抜いた符を空中に放ち『風雷陣』を発動。
オーガは頭上から降り注いだ稲妻を喰らって黒焦げになり、そのまま絶命した。
「次はこいつを」
保は目の前の動けないトロルに倒す事にした。
トロルの斧が届かない位置にいるので安全に倒せる。
はずだったが、トロルは斧を投げつけてきた。
「うわっ!」
幸い斧は外れたが、トロルは地面の土を固め始めた。
次はそれを投げるつもりらしい。
「させません!」
マヘルが『デルタレイ』の光でトロルを撃ち貫いたが、まだ倒れない。
「しぶといですね」
保が『風雷陣』で稲妻を浴びせると、ようやく倒れてくれた。
「ふぅ……動けないからといって油断してはいけませんね」
その頃、甲冑歪虚との戦闘は、篝の攻撃は盾で防がれると決定打に欠け、エヴァンスは斬り込むとボロウが撃たれるため動けない、という膠着状態になっていた。
その膠着状態の中、不意に傷ついていたボロウが気力を振り絞って甲冑歪虚に襲い掛かった。
当然、甲冑歪虚は発砲。
だが。
「攻撃は通させません」
マヘルが『防御障壁』を発動。ボロウの体が光の防御壁で覆われる。
光の防御壁は銃弾に当たって砕け散ったが、その分威力は減少。
銃弾はボロウの体も貫いたが致命傷には至らなかった。
甲冑歪虚はボロウの攻撃を盾で防いだが、その間に盾とは逆の右側から篝で銃弾を浴びせかける。
更にエヴァンスがグレートソードを腰だめに構えながら接近。
しかし甲冑歪虚が盾を構え直す方が速い。
「背中借りるぜ」
だがエヴァンスはボロウの背中を踏み台にして盾の上から覗いている甲冑歪虚の首を狙ってグレートソードを一閃。
甲冑歪虚の頭が鮮血を上げながら飛び、体が後ろに傾いで仰向けに倒れる。
「卑怯者の末路だ」
エヴァンスは倒れた甲冑歪虚を睥睨すると、ボロウに向き直った。
「背中踏んで悪かったな。傷は大丈夫か?」
だがその直後に発砲音が鳴り、エヴァンスの脚が撃ち抜かれた。
「なにっ!?」
振り返ると銃を構えた甲冑歪虚が起き上がり、自分の頭を拾っていた。
『勝ったと思ったか? だが私は不死身だ。この程度では死なない。とはいえ部下もやられた上にこの状態では不利だな。今日のところは退くとしよう』
甲冑歪虚の盾から何かが落ちて割れ、そこから煙が噴き出した。
「煙幕か!」
篝は煙の中の甲冑歪虚に向かって銃を乱射したが、当たったかどうかは分からない。
『それと、お前達はその狼を幻獣だと思ってるようだが、違うぞ。お前達はそいつを助けた事を後悔するだろう』
そして煙が晴れると、もうそこに甲冑歪虚の姿はなかった。
甲冑歪虚が去り、周囲に敵がいなくなった事が分かると水月は保に呼びかけた。
「保さーん。バルツァーが可哀想な事になってるから術を解除してあげてー」
「すみません。結界は張った術者本人でも解除できないんです。効果が切れるまで待つか自分でレジストするしかないんです」
「あらら~、だってさバルツァー」
バルツァーが憮然とした顔で水月を見る。
「文句なら君をトロルにけしかけたご主人様に言いなよー」
そのご主人様は。
「ま、あと少しで術の切れる時間だ。それまで我慢しろ」
と言って慰める事しかできなかった。
もちろんそれでバルツァーの機嫌がよくなったりはしなかったが。
「本当にありがとうございました! もう、ホントに、なんとお礼を言ったらいいか……」
改めてハンター達が家族の下に向かうと、ハナが涙混じりにお礼を言ってきた。
「礼など不要だ。今回最も大きな働きをしたのは、我々ではなくカリハの皆なのだから。むしろ胸を張るといい」
スティードが霊闘士らしい物言いで家族を称えた。
「いえ、そんな。皆さんのお陰です」
「それより狼さんは元気ですかー?」
「はい。怪我はしましたけど命に別状はありません。元気です」
水月の問いにハナがボロウの背中の毛を撫でながら答える。
「ところで皆さんはこれからもここで暮らすつもりなのですか? あの甲冑がまた来るかもしれませんよ」
「私は人里に移り住む事をお勧めするわ。ここは危ないし不便だし、それに寂しいじゃない?」
マヘルが気になっている事を尋ね、篝が助言すると、家族は表情を曇らせた。
「危険な事は分かっていますけど、ここはボロウの森なんです。ボロウはここを離れては暮らせません。ボロウが離れられないなら私はここで暮らします。だって、ボロウは家族ですから」
ハナは弱り顔で、でもハッキリと告げた。
「気高きもの、良い友に巡り会ったな。感謝と養生をすることだ」
スティードはハナの言葉に感銘を受け、ボロウを労った。
「え? なにボロウ」
ふとハナが首を傾げる。
他の者には分からないが、どうやらボロウがハナに何か話しかけたらしい。
「森を離れろ。人里に行け。どうしてそんなこと言うの?」
困惑顔をしたハナが何度も尋ねたが、ボロウは黙して語ろうとしなかった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/14 09:13:47 |
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相談卓 保・はじめ(ka5800) 鬼|23才|男性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/04/18 01:11:23 |