ゲスト
(ka0000)
アマリリス~持ち逃げ山師と盗賊
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/04/20 22:00
- 完成日
- 2016/05/03 03:33
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●あらすじ
蒸気工業都市フマーレ近くの山中に、新たにセル鉱山と呼ばれる採掘場ができた。CAMなどの増産を背景に需要の高まった鉄鉱石産出を目的とし、後発ながらも工業都市の至近で輸送経費が比較的抑えられると期待が掛けられ各業種が参入した。
しかし、産出される鉄鉱石の質は上がらず、精製業者を中心に不満続出。
また、事業主のグリス・オムはここの開発を進言した山師の甘言に乗り莫大な借金をしたタイミングで運搬や精製の業者から組織的な値上げ交渉を突きつけられた。借金のため自らが村長を務める村の水源の権利を抵当に入れた直後のことだ。先祖が生け贄として一族の女性を差し出してまで付近の歪虚から村を守っていたことが明るみになったこともあわせ、グリスは自責の念に駆られて自殺した。
関係する誰もが、後は水源の権利や残された不動産など財産の奪い合いに発展すると思っていた。
●本編
「ご覧の通り、セル鉱山はアマリリス商会がまるごと買い取りました」
グリス氏の屋敷に関係者を集めたアマリリス商会のアムは背筋を伸ばして言い放った。ほら、とサインなど必要な手続きを終えた書類も突き出す。アムの背後には護衛としてモータルが、参謀としてバモスが控えている。
そして何より、故人となったグリス氏の妻、セリア・オムが座っていた。
ハンターに護衛され屋敷からいったん夜逃げして、まだ幼さのある娘と息子を遠い縁者に預け安心したこともあり表情は穏やかである。
これを見た業者たち。
「ち、農村まるまる一つ手に入れるのも悪くなかったのに」
「小娘が偉そうに」
「まあ、お手並み拝見といきましょう。ただ買い取ればいいという物件ではないですよ」
密かなざわめきもあったが落ち着いた。。
「それよりなぜあんな零細商会が……資金はどこから流れて……」
「おい、調べがついたぞ。あの娘、マッケレル海商の娘だ」
「何、マッケレルだと?」
「バックはあの新興海商のマッケレルか!」
実はアマリリスを名乗るアムの本名は、アムアリス・マッケレル。海商マッケレル家の家出娘だ。ちなみに、アマリリス商会の背後にいて本当に資金を投入したのは闇の商人たるベンド商会で、彼らの言うことは間違いだったりするが。
一方、アムの言葉は続いている。
「買い取りに伴い事業再編をします。もしも取り引きを希望しない方がいればご退席ください。残る支払いも済ませますので」
無論、忌々しく思うものの退席する者はいない。
アム、一呼吸おいてにこり。
「ひき続きのご愛顧、感謝します。では……」
そして新たなセル鉱山の計画を話すのだった。
それは、CAMなどに使われる高品質のガラス需要をターゲットに、これまでも少なくない量を産出していた珪石や水晶の産出に切り替える内容で、場内のうるさ方を唸らせるに足るものだった。
その頃、セル鉱山街では。
「なあ。ここ、一体どうなるんだ?」
「知るかよ。結局俺らみたいなチンピラの行くとこはどうせこうなる運命だろうぜ。けっ!」
採掘は中止で、当然作業はストップ。
いろんな場所からかき集められたちんぴらや半端者で構成された作業員たちは激しく不満を募らせていた。吸血鬼歪虚の襲撃以来、一体感が出て勤勉になったところでの肩透かし。それぞれ、これまでの己の人生を重ね合わせ怒りを溜め込むだけ溜め込むという状態である。
そんな中。
「おい、ノーザンの野郎がいねえぞ」
「数人引き連れて夜明け前に出掛けたぞ。今のうちに最低限の生活物資を買い込んで来るって言って」
「え?」
これを採掘責任者のハミル・タグが聞きとがめた。
「それはこれから来るアマリリス商会に任せてノーザンさんとはこれから大切な話があるから必ずいるようにって話……まさかッ!」
ハミル、嫌な予感がして金庫を調べた。
「やっぱり! お金を持ち逃げしてる」
叫ぶと不満を溜めていた作業員たちが爆発した!
「やろう!」
「あのエセ山師めッ!」
「ワルの上前ハネるたァええ度胸しとるやないか」
たちまちここに来る前の素顔に戻る作業員たち。
ここでッ!
「俺、知ってるぞ。山師の奴と一緒だったの、『黄昏一団』だ!」
「なにィ」
「おい、黄昏一団のアジトなら知ってるぜ」
「よっしゃ、案内せぇ。自衛団、得物取れ。アム嬢からなんかありゃあ死ぬ気で守れって言われてんだ。いま戦わずにいつ戦うよ?!」
「待て。待ってくれ。せめてアムさんたちの到着を待って……」
ハミルは止めるが、すでに悪党時代の風貌に戻ってしまった彼らを止められるわけがない。
うらー、と武器を手に出ていく自衛団。
「……安心しろ、全て説明してやる」
ここで新たな人物が。
「ここはもともと3つの盗賊団から目をつけられてたんだよ。俺ら『灰猫一味』と、黄色いバンダナの『黄昏一団』、そしていま奴らを煽動した『山の牙団』だ。……協力してくれりゃあ、金を取り戻してやる」
この男、二つの盗賊とここの自衛団で黄昏一団を潰すという計画を持ち掛けるのだった。
蒸気工業都市フマーレ近くの山中に、新たにセル鉱山と呼ばれる採掘場ができた。CAMなどの増産を背景に需要の高まった鉄鉱石産出を目的とし、後発ながらも工業都市の至近で輸送経費が比較的抑えられると期待が掛けられ各業種が参入した。
しかし、産出される鉄鉱石の質は上がらず、精製業者を中心に不満続出。
また、事業主のグリス・オムはここの開発を進言した山師の甘言に乗り莫大な借金をしたタイミングで運搬や精製の業者から組織的な値上げ交渉を突きつけられた。借金のため自らが村長を務める村の水源の権利を抵当に入れた直後のことだ。先祖が生け贄として一族の女性を差し出してまで付近の歪虚から村を守っていたことが明るみになったこともあわせ、グリスは自責の念に駆られて自殺した。
関係する誰もが、後は水源の権利や残された不動産など財産の奪い合いに発展すると思っていた。
●本編
「ご覧の通り、セル鉱山はアマリリス商会がまるごと買い取りました」
グリス氏の屋敷に関係者を集めたアマリリス商会のアムは背筋を伸ばして言い放った。ほら、とサインなど必要な手続きを終えた書類も突き出す。アムの背後には護衛としてモータルが、参謀としてバモスが控えている。
そして何より、故人となったグリス氏の妻、セリア・オムが座っていた。
ハンターに護衛され屋敷からいったん夜逃げして、まだ幼さのある娘と息子を遠い縁者に預け安心したこともあり表情は穏やかである。
これを見た業者たち。
「ち、農村まるまる一つ手に入れるのも悪くなかったのに」
「小娘が偉そうに」
「まあ、お手並み拝見といきましょう。ただ買い取ればいいという物件ではないですよ」
密かなざわめきもあったが落ち着いた。。
「それよりなぜあんな零細商会が……資金はどこから流れて……」
「おい、調べがついたぞ。あの娘、マッケレル海商の娘だ」
「何、マッケレルだと?」
「バックはあの新興海商のマッケレルか!」
実はアマリリスを名乗るアムの本名は、アムアリス・マッケレル。海商マッケレル家の家出娘だ。ちなみに、アマリリス商会の背後にいて本当に資金を投入したのは闇の商人たるベンド商会で、彼らの言うことは間違いだったりするが。
一方、アムの言葉は続いている。
「買い取りに伴い事業再編をします。もしも取り引きを希望しない方がいればご退席ください。残る支払いも済ませますので」
無論、忌々しく思うものの退席する者はいない。
アム、一呼吸おいてにこり。
「ひき続きのご愛顧、感謝します。では……」
そして新たなセル鉱山の計画を話すのだった。
それは、CAMなどに使われる高品質のガラス需要をターゲットに、これまでも少なくない量を産出していた珪石や水晶の産出に切り替える内容で、場内のうるさ方を唸らせるに足るものだった。
その頃、セル鉱山街では。
「なあ。ここ、一体どうなるんだ?」
「知るかよ。結局俺らみたいなチンピラの行くとこはどうせこうなる運命だろうぜ。けっ!」
採掘は中止で、当然作業はストップ。
いろんな場所からかき集められたちんぴらや半端者で構成された作業員たちは激しく不満を募らせていた。吸血鬼歪虚の襲撃以来、一体感が出て勤勉になったところでの肩透かし。それぞれ、これまでの己の人生を重ね合わせ怒りを溜め込むだけ溜め込むという状態である。
そんな中。
「おい、ノーザンの野郎がいねえぞ」
「数人引き連れて夜明け前に出掛けたぞ。今のうちに最低限の生活物資を買い込んで来るって言って」
「え?」
これを採掘責任者のハミル・タグが聞きとがめた。
「それはこれから来るアマリリス商会に任せてノーザンさんとはこれから大切な話があるから必ずいるようにって話……まさかッ!」
ハミル、嫌な予感がして金庫を調べた。
「やっぱり! お金を持ち逃げしてる」
叫ぶと不満を溜めていた作業員たちが爆発した!
「やろう!」
「あのエセ山師めッ!」
「ワルの上前ハネるたァええ度胸しとるやないか」
たちまちここに来る前の素顔に戻る作業員たち。
ここでッ!
「俺、知ってるぞ。山師の奴と一緒だったの、『黄昏一団』だ!」
「なにィ」
「おい、黄昏一団のアジトなら知ってるぜ」
「よっしゃ、案内せぇ。自衛団、得物取れ。アム嬢からなんかありゃあ死ぬ気で守れって言われてんだ。いま戦わずにいつ戦うよ?!」
「待て。待ってくれ。せめてアムさんたちの到着を待って……」
ハミルは止めるが、すでに悪党時代の風貌に戻ってしまった彼らを止められるわけがない。
うらー、と武器を手に出ていく自衛団。
「……安心しろ、全て説明してやる」
ここで新たな人物が。
「ここはもともと3つの盗賊団から目をつけられてたんだよ。俺ら『灰猫一味』と、黄色いバンダナの『黄昏一団』、そしていま奴らを煽動した『山の牙団』だ。……協力してくれりゃあ、金を取り戻してやる」
この男、二つの盗賊とここの自衛団で黄昏一団を潰すという計画を持ち掛けるのだった。
リプレイ本文
●
盗賊「黄昏一団」のアジトを目掛け騎馬が森の道を急ぐ。
「……今の、きっと見張り小屋といったところですわね」
ステラ・フォーク(ka0808)が激しい騎乗でもゆったりした口調で通りがかりに見えた廃墟について仲間に聞く。
「だろうな。アジトが近いともいうだろう。……よし、あれだな」
一緒に疾駆するエメラルド・シルフィユ(ka4678)が木々の向こうに開けた場所と密集する集落を確認した。騒ぎの声も聞こえる。一気に速度を上げた。
「ほかの方は間に合うでしょうか?」
「知らん。……が、間に合わせるだろう。もう始まってるなら私たちは突っ込むしかないだろう」
ステラとエメラルドは二人で正面たる南側から突入している。ほかの仲間は別行動だ。
「そうですわね」
迷いがなくなったステラ、うつむき瞳を閉じた後に顔を上げる。その瞳の中に魔法陣が浮き上がっている。
ステラの覚悟も決まった。
「よし、集落に突っ込むぞ!」
ひひん、と戦馬がエメラルドの気合に応じ家屋の並ぶ地帯へと速度を上げた。
「黄昏一団とやら、大人しく出てこい!」
「戦況は優位……奥へ奥へと騒ぎが遠のいてますわね」
「よし、行くぞ!」
大通りと思われる道をさらに行く。やがて、味方の「灰猫一味」、「山の牙団」と思われる、黄色い頭巾をしていない集団と黄色い頭巾をした一団が戦っている背中が見えた。エメラルド、加速。
「鉱山から助太刀に来た! 神のお導きと思え!」
馬上で振りかぶったロングソード「クリスタルマスター」が水晶の輝きを見せる。振り下ろされた刃に受け損なって吹っ飛ぶ敵の短刀。「うおお」と味方盗賊からの声。守りに徹していた敵に手を焼いていたようだが一気に情勢が変わる。
変わるが、しかし!
「囲まれたようですわ」
後ろからのステラの声。見回す瞳の中の魔法陣がらんと輝く。
「何?」
「左右からですが……左手2、3……6人ですわね。とりあえず、こちらに向かってくる足音は」
「よし。ステラ、援護頼む」
ステラは耳で感じた情報を伝えるや、オートマチック「スターベイション」の銃口をまだ何もない路地の奥へと向ける。そこに黄色い頭巾の男が現れるや否やトリガーを引く。飢えた銀狼をモチーフにした銃が吠えた!
「おわっ!」
「おまえら、やられたくなければついて来い!」
敵がひるんで展開が遅れた隙にエメラルドが声を上げる。数人引き連れて先手を取り返し暴れまくる。
「反対側も来ましたわね」
ステラ、ちゃんと耳に集中している。左手からの敵に銃撃。
「灰色のお前ら、行くぞ」
エメラルド、今度は反対に向く。山の牙を残し灰猫を連れて新手に対応するつもりだ。
「ここから突撃したら的になりますぜ?」
「援護射撃はステラがする。共闘だろうが、つべこべ言わずに行くぞ!」
エメラルド、有無を言わせない。
●
時は遡り、東側。
「まさか鉱山が盗賊どもに狙われてたとはねー。しかも内部に潜入してたとか」
天竜寺 詩(ka0396)が戦馬で回り込んでいる。
「どきっ、盗賊団だらけの鉱山労働…。…いえ、何でもありません…」
サクラ・エルフリード(ka2598)も愛馬で続く。
やがてアジトの集落がはっきり見えた。騒ぎも聞こえて来る。
「とにかくノーザンから金を取り戻して、盗賊団に奪われないようにしないと!」
「こちら側から一気に突撃と行きましょうか…。こっちから出てくる気がなくなるように…」
かくんと進路変更して加速する二人。
東側の路地は狭く見通しが悪い。
「おい、鉱山員ども。戦闘はいいから金を持ち出した奴を絶対に見逃すなよ。この俺様が絶対に止めてやるからな!」
「灰猫の頭目さんよ、取り返した後はどうすんだよ!」
「山分けに決まってんだろ……その代りこの機会にぶっ潰す『黄昏一団』のお宝も山分けだ。取り分は減りゃしねぇから手ぇ抜くなよ!」
そんな声とともに銃声と数人の集団が出てきた。
「あっ、詩さんにサクラさん!」
「やってるね、みんな!」
詩、見知った顔が無事で喜ぶ。
「おう、灰猫のポルタチェーネだ。そっちからは逃げてねぇな?」
「逃がすはずはありません。……すでに混沌としてますが、もっと混沌に陥れましょう……」
サクラ、言い終わらずに動いた。
人影が一つ、こちらに逃れてきたのだ。
戦馬が一瞬の加速を見せ、霊槍「グングニル」の鋭い突き!
「ひ、ひぃぃ……」
戸板に刺さる槍にびびった黄色い頭巾の男が尻餅をつく。
「どうして一人でこっちに来たのかな?」
「ち、中央を包囲するよう指示を受けたがこんなんもう負け戦だ。俺だけ逃げようとしたんだよ」
「よし、逆包囲をするよ。ついて来て!」
詩の決断。彼女を慕いついて行く鉱山員。
時に、中央ではエメラルドが左右に味方を振り分けていたところだ。
「ちょっと面倒だから一気にいくよ!」
「背後を取られた? うわっ!」
詩、前方に敵が見えるとリュミエールボウを掲げセイクリッドフラッシュ。光で一気に攻撃し敵を混乱に陥れる。
一方、サクラ。
「痛い目にあいたいならいくらでも来なさい…。相手になりますが…手加減はしませんから覚悟してくださいね…」
ぶうん、ぶうん……。
先の一人に続き逃げてきた敵に向かいグンニグルを派手に振り回していた。
もちろん、北側を緩めている。
灰猫のボスが北に移動するのもちゃんと感付いていた。
こちら、西側。
「馬でない方がいいだろう、行くぞ」
鞍馬 真(ka5819)がメイスンとともに馬から下りて街区へと突っ込んだ。
「派手に暴れる、でしたか?」
「そうだ……こういう風にな!」
確認するメイスンに実践してみる真。魔導拳銃剣「エルス」を引き抜き銃声を轟かせた。
「何だ、こっちからもか?」
黄色い頭巾をした盗賊が振り返る。近寄ってみると「あ、お嬢といつも一緒の……」との声。セル鉱山の作業員がメイスンに気付いたのだ。
「ん、味方か? おう、山の牙のツァンナだ。雑魚はいいからとにかく黄昏のジョルノを探しな。おそらくそっちの金を持ち逃げしたヤツも一緒のはずだ」
どうやら山の牙団のポスと一緒に行動しているらしい。
「それより北に追い込め。すでにここは包囲した!」
ぱぁん、と銃を鳴らしいつもの彼らしくないほどに大げさに戦う。これを見てツァンナ、「ちっ」と舌打ちしている。真はこれに気付くが、あえて何も言わずに戦う。
「どうです、皆さん?」
「おお、メイスン。敵は狭い路地を利用して力任せにくる奴ばかりだ」
メイスンと鉱山作業員の会話を聞いた真、試作振動刀「オートMURAMASA」を改めて構えた。
「いいだろう。力任せなら負けん!」
どかっ、と敵の隠れた塀に振動刀を斬りつける。すぐに特殊モーターの回転音が響き塀をバリバリと砕いていく。
「ひ、ひいぃ」
隠れていた黄色頭巾の男、慌てて出てくると北へと逃げる。
「隠れても無駄です!」
気付けばメイスンもハンマーで敵の潜伏する塀にどかり。土壁を砕き北への背走を促す。
「……すごく混沌としているな」
破壊と悲鳴の交錯する様相に思わずこぼす真。
「真さんのその武器が一番混沌としてますよ」
メイスは、あれだけ派手に暴れて他人事みたいに言いますね、と汗たら~。
とにかく、西での騒ぎも大きくなった。
●
この時、アジトの北にある森で。
「God damn it! 先客がいるのか?」
魔導バイク「ソーペルデュ」を森に隠して移動してきたフォークス(ka0570)が吐き捨てていた。
「あっちに灰色装束の奴らに……こっちに狼マークの奴ら。まるで開店したピザ屋の前と一緒じゃねぇか」
フォークス、思いっきり呆れる。
灰猫陣営も山の牙陣営も、北に脱出してくる黄昏一団を狙っていたのだ。
「どうするか……」
隠れて思案する。
手には、 オート「サイレント66」。信頼できるサイレンサーだ。
このまま気配を消したまま敵を屠ることもできるだろう。
「所属問わず殺すのでもあたいは全く困らないんだけどな」
なんとなく、それは面白くない。何より、逃げてきた奴を撃つ、と決めていたのだ。ピザ屋のカウンターで目当てのピザがSoled outしてたのと同じくらいやる気が出ない。
逡巡しているとアジトの方から声が聞こえた。
「おい、急げ。お前もどさくさに紛れて一団の金を持ち逃げしたんだ。逃げるしかないんだよ!」
ひぃ、はぁと大きなバックパックを背負った男たちがやって来た。黄色い頭巾の三人を一人の男が率いている。
瞬間、潜伏組に緊張が走った。
ざざざ、と森に入ったとこで……。
――ぱすっ、ぱすっ!
「ひっ」
「おわっ」
灰猫と山の牙の狙撃班が動いた。
「あっ!」
「て、てめえら!」
逃走してきた者たちを倒したところで、双方がその存在に気付いた。
「やれっ!」
「ぐわっ!」
たちまち銃弾が入り乱れる。
木立の中を移動する気配が途中で止まったり、どさりと何かが倒れる音がしたり。
静かな戦いの後、生き残った者は――。
「ちっ。俺一人か」
ほぼ移動しなかった山の牙の一人が立ち上がった。もう、誰も撃って来ない。彼が勝利したのだ。
安心して大きな荷物を背負った死体に近付こうとした時!
「Hasta la vista,baby!」
ざっ、と満を持して立ち上がったフォークスが高加速射撃の早打ち。
「おわっ!」
ふっとぶ山の牙。
「……悪く思うな。ハンターの間は体制側なんでネ」
にぃぃ、と会心の笑みを浮かべて美味しいところだけを取ったフォークスがとんとんと銃床で自分の肩を叩き余裕をぶっこく。
「っとと。こっからがヘビーな仕事だな」
ずりずりと金目の荷物だけを森に隠し、仲間にトランシーバーで連絡。
派手にやってた仲間のおかげでかなり楽に仕事が済んだ。
よし、とアジトの方を見るとアサルトライフルをメーンに据えて突っ込んだ。
●
フォークス、アジトの集落に突入して事態を知った。
黄昏団の首領、ジョルノが山の牙ボスのツァンナに迫られ、遠目から灰猫の頭であるポルタチェーネの狙撃に遭い、ついに倒れていたのだ。
三陣営の綱引きがここで崩れる。
「黄昏のジョルノ、打ち取ったぞ……ぐあっ!」
勝ち誇るツァンナだったが、早速ポルタチェーネに裏切られ狙撃された。ポルタチェーネ、逃げる。
「野郎!」
直観的にヤバいと感じたフォークス、ポルタチェーネを撃った。気疲れ反撃の一撃を肩に食い、双方痛み分けとなり隠れることとなる。
「黄昏は崩れたぞ、灰猫に下れ」
「次は灰猫だ。山の牙、根性見せろ!」
ここで共闘関係が崩れた。
ほかの場所ではどうだろう。
「お前ら、邪魔なんだよ!」
西ではやや勢力の多かった山の牙の一団が手当たり次第に暴れはじめた。メイスンや鉱山メンバーが負傷する。
「ん?」
後ろで縛った黒髪をなびかせ北に行こうとしていた真、これを見咎め足を止める。
ぎらり、と山の牙たちを見る。
「お前も北には行かせねぇぜ!」
たぎる様子のまま多勢で真に迫る。
これを見た真、いや、傷口に手を当てたメイスンたちも見た真、すうっと表情が消えた。
「邪魔はそっちだろう」
冷静な言葉。
だが、動きは苛烈。
右手の試作振動刀がうなりをあげ、左手のエルス直剣モードがぎらんと光る。
二刀流で手広く振り回す、振り回す。
「おわ……ぐっ!」
だが、誰も大量出血しない。
「別に血の雨を降らせに来た訳ではないからな……ふんっ!」
大振りの剣でけん制し、間合いを詰めて体当たり。これで次々と裏切り者たちを無力化していった。
こちら、南。
「お前ら、共闘するんじゃなかったのか!?」
馬上で一喝する姿は、エメラルド。
「うるせえ、誰がそんな約束守るかよ!」
「お前、盗賊じゃ三日とやってらんねぇぜ? 盗賊舐めんなよ!」
黄昏が崩れたと知り、仲間割れし始めたのだが矛先はすべてエメラルドに向かっていた。少しいた鉱山メンバーはこのおかげで難を逃れることとなったが。
――ざざっ!
一斉に向かってくる剣。
しかし、白い光がひと薙ぎしこれらを振り払う。
エメラルドのホーリーセイバーだ。
「商会もお前達と同じでな……」
ゆらり、と態勢を整えるエメラルド。うつむき加減の様子が物凄い威圧感を纏う。
そして顔を上げたッ!
「舐められたら終わりという事をよく理解して貰おうか!」
エメラルド、猛る。
右・左と容赦なくぶん回される刃。
敵の山の牙と灰猫は腰が引けながらも我が身を護るだけとなる。
このちょっと前、サクラ。
「これだけ混乱してると目標がこっちに来てると見つけるのも一苦労です……」
北に移動しついに裏切った盗賊団のボスやノーザンを探すが、うまくいかない。
「ボスならこっちですわよ」
ステラ、この混乱の中超感覚でしっかりと会話を拾っていた。
やがて山の牙ボスのツァンナを発見。手負いである。
「サクラさん、お願いします」
構えたオートマチック「スターベイション」がボスの足を止めた。
「とりあえず、眠ってもらいます」
グンニグルを振りかぶるサクラ。すうっと胸がすくような――というか、小さくなったのだがこれは纏う鎧の中の彼女だけの秘密。槍なのにフォースクラッシュでぶん殴る。
「ぐはっ!」
「とりあえず殴っておくのが一番です」
これでツァンナ、ノックアウト。
そして、詩。
「ノーザンを探してたんだけど……」
逃げてきたポルタチェーネとばったり顔を合わせた。
「ちっ。どいつもこいつも」
「撃たせないよ!」
銃を構えたところにジャッジメントの光の杭を打ち込む。
動きを一瞬止まった敵にすかさずセイクリッドフラッシュ。
「どうだ!」
詩の怒涛の攻撃に、敵は戦意を失い巧みに逃げた。
●
戦い終わって。
「おい。とりあえずこの金、鉱山街に運ぶぞ!」
エメラルド、残った盗賊を束ねてノーザンの持ち出した金と黄昏一団の溜め込んでいた金を運ばせた。
「ちっ、なんで俺らが」
「つべこべ言うな! 何ならお前らも鉱山で働いて根性鍛え直すといい」
舐められることなく、ひとまず手下にすることに成功したようだ。
「持ち逃げしようとすると酷いよ! このお金は鉱山の人達の物なんだから!」
詩も厳しく一喝し目を光らせる。
「こいつら、どうする?」
フォークスは捕えたツァンナたちに銃をちらちら見せながら背中越しに顎をしゃくっていた。
「突き出すところに突き出せばいい」
真が言葉少なに言い放つ。彼としてはメイスンたちの治療手伝いの方が大切だ。
一方、ノーザンは死亡。黄昏のジョルノも死亡していた。
「腕や太腿を狙うなんてことはしなかったのですわね」
自分の価値観との違いに肩を落とすステラ。
「盗賊と持ち逃げしようとした人ですしね……」
サクラ、仕方ないですとステラに寄り添うのだった。
後、行き場を失った盗賊を鉱山街が受け入れ、生産能力がアップすることに。黄昏一団の資金も入って余裕もできた。
盗賊「黄昏一団」のアジトを目掛け騎馬が森の道を急ぐ。
「……今の、きっと見張り小屋といったところですわね」
ステラ・フォーク(ka0808)が激しい騎乗でもゆったりした口調で通りがかりに見えた廃墟について仲間に聞く。
「だろうな。アジトが近いともいうだろう。……よし、あれだな」
一緒に疾駆するエメラルド・シルフィユ(ka4678)が木々の向こうに開けた場所と密集する集落を確認した。騒ぎの声も聞こえる。一気に速度を上げた。
「ほかの方は間に合うでしょうか?」
「知らん。……が、間に合わせるだろう。もう始まってるなら私たちは突っ込むしかないだろう」
ステラとエメラルドは二人で正面たる南側から突入している。ほかの仲間は別行動だ。
「そうですわね」
迷いがなくなったステラ、うつむき瞳を閉じた後に顔を上げる。その瞳の中に魔法陣が浮き上がっている。
ステラの覚悟も決まった。
「よし、集落に突っ込むぞ!」
ひひん、と戦馬がエメラルドの気合に応じ家屋の並ぶ地帯へと速度を上げた。
「黄昏一団とやら、大人しく出てこい!」
「戦況は優位……奥へ奥へと騒ぎが遠のいてますわね」
「よし、行くぞ!」
大通りと思われる道をさらに行く。やがて、味方の「灰猫一味」、「山の牙団」と思われる、黄色い頭巾をしていない集団と黄色い頭巾をした一団が戦っている背中が見えた。エメラルド、加速。
「鉱山から助太刀に来た! 神のお導きと思え!」
馬上で振りかぶったロングソード「クリスタルマスター」が水晶の輝きを見せる。振り下ろされた刃に受け損なって吹っ飛ぶ敵の短刀。「うおお」と味方盗賊からの声。守りに徹していた敵に手を焼いていたようだが一気に情勢が変わる。
変わるが、しかし!
「囲まれたようですわ」
後ろからのステラの声。見回す瞳の中の魔法陣がらんと輝く。
「何?」
「左右からですが……左手2、3……6人ですわね。とりあえず、こちらに向かってくる足音は」
「よし。ステラ、援護頼む」
ステラは耳で感じた情報を伝えるや、オートマチック「スターベイション」の銃口をまだ何もない路地の奥へと向ける。そこに黄色い頭巾の男が現れるや否やトリガーを引く。飢えた銀狼をモチーフにした銃が吠えた!
「おわっ!」
「おまえら、やられたくなければついて来い!」
敵がひるんで展開が遅れた隙にエメラルドが声を上げる。数人引き連れて先手を取り返し暴れまくる。
「反対側も来ましたわね」
ステラ、ちゃんと耳に集中している。左手からの敵に銃撃。
「灰色のお前ら、行くぞ」
エメラルド、今度は反対に向く。山の牙を残し灰猫を連れて新手に対応するつもりだ。
「ここから突撃したら的になりますぜ?」
「援護射撃はステラがする。共闘だろうが、つべこべ言わずに行くぞ!」
エメラルド、有無を言わせない。
●
時は遡り、東側。
「まさか鉱山が盗賊どもに狙われてたとはねー。しかも内部に潜入してたとか」
天竜寺 詩(ka0396)が戦馬で回り込んでいる。
「どきっ、盗賊団だらけの鉱山労働…。…いえ、何でもありません…」
サクラ・エルフリード(ka2598)も愛馬で続く。
やがてアジトの集落がはっきり見えた。騒ぎも聞こえて来る。
「とにかくノーザンから金を取り戻して、盗賊団に奪われないようにしないと!」
「こちら側から一気に突撃と行きましょうか…。こっちから出てくる気がなくなるように…」
かくんと進路変更して加速する二人。
東側の路地は狭く見通しが悪い。
「おい、鉱山員ども。戦闘はいいから金を持ち出した奴を絶対に見逃すなよ。この俺様が絶対に止めてやるからな!」
「灰猫の頭目さんよ、取り返した後はどうすんだよ!」
「山分けに決まってんだろ……その代りこの機会にぶっ潰す『黄昏一団』のお宝も山分けだ。取り分は減りゃしねぇから手ぇ抜くなよ!」
そんな声とともに銃声と数人の集団が出てきた。
「あっ、詩さんにサクラさん!」
「やってるね、みんな!」
詩、見知った顔が無事で喜ぶ。
「おう、灰猫のポルタチェーネだ。そっちからは逃げてねぇな?」
「逃がすはずはありません。……すでに混沌としてますが、もっと混沌に陥れましょう……」
サクラ、言い終わらずに動いた。
人影が一つ、こちらに逃れてきたのだ。
戦馬が一瞬の加速を見せ、霊槍「グングニル」の鋭い突き!
「ひ、ひぃぃ……」
戸板に刺さる槍にびびった黄色い頭巾の男が尻餅をつく。
「どうして一人でこっちに来たのかな?」
「ち、中央を包囲するよう指示を受けたがこんなんもう負け戦だ。俺だけ逃げようとしたんだよ」
「よし、逆包囲をするよ。ついて来て!」
詩の決断。彼女を慕いついて行く鉱山員。
時に、中央ではエメラルドが左右に味方を振り分けていたところだ。
「ちょっと面倒だから一気にいくよ!」
「背後を取られた? うわっ!」
詩、前方に敵が見えるとリュミエールボウを掲げセイクリッドフラッシュ。光で一気に攻撃し敵を混乱に陥れる。
一方、サクラ。
「痛い目にあいたいならいくらでも来なさい…。相手になりますが…手加減はしませんから覚悟してくださいね…」
ぶうん、ぶうん……。
先の一人に続き逃げてきた敵に向かいグンニグルを派手に振り回していた。
もちろん、北側を緩めている。
灰猫のボスが北に移動するのもちゃんと感付いていた。
こちら、西側。
「馬でない方がいいだろう、行くぞ」
鞍馬 真(ka5819)がメイスンとともに馬から下りて街区へと突っ込んだ。
「派手に暴れる、でしたか?」
「そうだ……こういう風にな!」
確認するメイスンに実践してみる真。魔導拳銃剣「エルス」を引き抜き銃声を轟かせた。
「何だ、こっちからもか?」
黄色い頭巾をした盗賊が振り返る。近寄ってみると「あ、お嬢といつも一緒の……」との声。セル鉱山の作業員がメイスンに気付いたのだ。
「ん、味方か? おう、山の牙のツァンナだ。雑魚はいいからとにかく黄昏のジョルノを探しな。おそらくそっちの金を持ち逃げしたヤツも一緒のはずだ」
どうやら山の牙団のポスと一緒に行動しているらしい。
「それより北に追い込め。すでにここは包囲した!」
ぱぁん、と銃を鳴らしいつもの彼らしくないほどに大げさに戦う。これを見てツァンナ、「ちっ」と舌打ちしている。真はこれに気付くが、あえて何も言わずに戦う。
「どうです、皆さん?」
「おお、メイスン。敵は狭い路地を利用して力任せにくる奴ばかりだ」
メイスンと鉱山作業員の会話を聞いた真、試作振動刀「オートMURAMASA」を改めて構えた。
「いいだろう。力任せなら負けん!」
どかっ、と敵の隠れた塀に振動刀を斬りつける。すぐに特殊モーターの回転音が響き塀をバリバリと砕いていく。
「ひ、ひいぃ」
隠れていた黄色頭巾の男、慌てて出てくると北へと逃げる。
「隠れても無駄です!」
気付けばメイスンもハンマーで敵の潜伏する塀にどかり。土壁を砕き北への背走を促す。
「……すごく混沌としているな」
破壊と悲鳴の交錯する様相に思わずこぼす真。
「真さんのその武器が一番混沌としてますよ」
メイスは、あれだけ派手に暴れて他人事みたいに言いますね、と汗たら~。
とにかく、西での騒ぎも大きくなった。
●
この時、アジトの北にある森で。
「God damn it! 先客がいるのか?」
魔導バイク「ソーペルデュ」を森に隠して移動してきたフォークス(ka0570)が吐き捨てていた。
「あっちに灰色装束の奴らに……こっちに狼マークの奴ら。まるで開店したピザ屋の前と一緒じゃねぇか」
フォークス、思いっきり呆れる。
灰猫陣営も山の牙陣営も、北に脱出してくる黄昏一団を狙っていたのだ。
「どうするか……」
隠れて思案する。
手には、 オート「サイレント66」。信頼できるサイレンサーだ。
このまま気配を消したまま敵を屠ることもできるだろう。
「所属問わず殺すのでもあたいは全く困らないんだけどな」
なんとなく、それは面白くない。何より、逃げてきた奴を撃つ、と決めていたのだ。ピザ屋のカウンターで目当てのピザがSoled outしてたのと同じくらいやる気が出ない。
逡巡しているとアジトの方から声が聞こえた。
「おい、急げ。お前もどさくさに紛れて一団の金を持ち逃げしたんだ。逃げるしかないんだよ!」
ひぃ、はぁと大きなバックパックを背負った男たちがやって来た。黄色い頭巾の三人を一人の男が率いている。
瞬間、潜伏組に緊張が走った。
ざざざ、と森に入ったとこで……。
――ぱすっ、ぱすっ!
「ひっ」
「おわっ」
灰猫と山の牙の狙撃班が動いた。
「あっ!」
「て、てめえら!」
逃走してきた者たちを倒したところで、双方がその存在に気付いた。
「やれっ!」
「ぐわっ!」
たちまち銃弾が入り乱れる。
木立の中を移動する気配が途中で止まったり、どさりと何かが倒れる音がしたり。
静かな戦いの後、生き残った者は――。
「ちっ。俺一人か」
ほぼ移動しなかった山の牙の一人が立ち上がった。もう、誰も撃って来ない。彼が勝利したのだ。
安心して大きな荷物を背負った死体に近付こうとした時!
「Hasta la vista,baby!」
ざっ、と満を持して立ち上がったフォークスが高加速射撃の早打ち。
「おわっ!」
ふっとぶ山の牙。
「……悪く思うな。ハンターの間は体制側なんでネ」
にぃぃ、と会心の笑みを浮かべて美味しいところだけを取ったフォークスがとんとんと銃床で自分の肩を叩き余裕をぶっこく。
「っとと。こっからがヘビーな仕事だな」
ずりずりと金目の荷物だけを森に隠し、仲間にトランシーバーで連絡。
派手にやってた仲間のおかげでかなり楽に仕事が済んだ。
よし、とアジトの方を見るとアサルトライフルをメーンに据えて突っ込んだ。
●
フォークス、アジトの集落に突入して事態を知った。
黄昏団の首領、ジョルノが山の牙ボスのツァンナに迫られ、遠目から灰猫の頭であるポルタチェーネの狙撃に遭い、ついに倒れていたのだ。
三陣営の綱引きがここで崩れる。
「黄昏のジョルノ、打ち取ったぞ……ぐあっ!」
勝ち誇るツァンナだったが、早速ポルタチェーネに裏切られ狙撃された。ポルタチェーネ、逃げる。
「野郎!」
直観的にヤバいと感じたフォークス、ポルタチェーネを撃った。気疲れ反撃の一撃を肩に食い、双方痛み分けとなり隠れることとなる。
「黄昏は崩れたぞ、灰猫に下れ」
「次は灰猫だ。山の牙、根性見せろ!」
ここで共闘関係が崩れた。
ほかの場所ではどうだろう。
「お前ら、邪魔なんだよ!」
西ではやや勢力の多かった山の牙の一団が手当たり次第に暴れはじめた。メイスンや鉱山メンバーが負傷する。
「ん?」
後ろで縛った黒髪をなびかせ北に行こうとしていた真、これを見咎め足を止める。
ぎらり、と山の牙たちを見る。
「お前も北には行かせねぇぜ!」
たぎる様子のまま多勢で真に迫る。
これを見た真、いや、傷口に手を当てたメイスンたちも見た真、すうっと表情が消えた。
「邪魔はそっちだろう」
冷静な言葉。
だが、動きは苛烈。
右手の試作振動刀がうなりをあげ、左手のエルス直剣モードがぎらんと光る。
二刀流で手広く振り回す、振り回す。
「おわ……ぐっ!」
だが、誰も大量出血しない。
「別に血の雨を降らせに来た訳ではないからな……ふんっ!」
大振りの剣でけん制し、間合いを詰めて体当たり。これで次々と裏切り者たちを無力化していった。
こちら、南。
「お前ら、共闘するんじゃなかったのか!?」
馬上で一喝する姿は、エメラルド。
「うるせえ、誰がそんな約束守るかよ!」
「お前、盗賊じゃ三日とやってらんねぇぜ? 盗賊舐めんなよ!」
黄昏が崩れたと知り、仲間割れし始めたのだが矛先はすべてエメラルドに向かっていた。少しいた鉱山メンバーはこのおかげで難を逃れることとなったが。
――ざざっ!
一斉に向かってくる剣。
しかし、白い光がひと薙ぎしこれらを振り払う。
エメラルドのホーリーセイバーだ。
「商会もお前達と同じでな……」
ゆらり、と態勢を整えるエメラルド。うつむき加減の様子が物凄い威圧感を纏う。
そして顔を上げたッ!
「舐められたら終わりという事をよく理解して貰おうか!」
エメラルド、猛る。
右・左と容赦なくぶん回される刃。
敵の山の牙と灰猫は腰が引けながらも我が身を護るだけとなる。
このちょっと前、サクラ。
「これだけ混乱してると目標がこっちに来てると見つけるのも一苦労です……」
北に移動しついに裏切った盗賊団のボスやノーザンを探すが、うまくいかない。
「ボスならこっちですわよ」
ステラ、この混乱の中超感覚でしっかりと会話を拾っていた。
やがて山の牙ボスのツァンナを発見。手負いである。
「サクラさん、お願いします」
構えたオートマチック「スターベイション」がボスの足を止めた。
「とりあえず、眠ってもらいます」
グンニグルを振りかぶるサクラ。すうっと胸がすくような――というか、小さくなったのだがこれは纏う鎧の中の彼女だけの秘密。槍なのにフォースクラッシュでぶん殴る。
「ぐはっ!」
「とりあえず殴っておくのが一番です」
これでツァンナ、ノックアウト。
そして、詩。
「ノーザンを探してたんだけど……」
逃げてきたポルタチェーネとばったり顔を合わせた。
「ちっ。どいつもこいつも」
「撃たせないよ!」
銃を構えたところにジャッジメントの光の杭を打ち込む。
動きを一瞬止まった敵にすかさずセイクリッドフラッシュ。
「どうだ!」
詩の怒涛の攻撃に、敵は戦意を失い巧みに逃げた。
●
戦い終わって。
「おい。とりあえずこの金、鉱山街に運ぶぞ!」
エメラルド、残った盗賊を束ねてノーザンの持ち出した金と黄昏一団の溜め込んでいた金を運ばせた。
「ちっ、なんで俺らが」
「つべこべ言うな! 何ならお前らも鉱山で働いて根性鍛え直すといい」
舐められることなく、ひとまず手下にすることに成功したようだ。
「持ち逃げしようとすると酷いよ! このお金は鉱山の人達の物なんだから!」
詩も厳しく一喝し目を光らせる。
「こいつら、どうする?」
フォークスは捕えたツァンナたちに銃をちらちら見せながら背中越しに顎をしゃくっていた。
「突き出すところに突き出せばいい」
真が言葉少なに言い放つ。彼としてはメイスンたちの治療手伝いの方が大切だ。
一方、ノーザンは死亡。黄昏のジョルノも死亡していた。
「腕や太腿を狙うなんてことはしなかったのですわね」
自分の価値観との違いに肩を落とすステラ。
「盗賊と持ち逃げしようとした人ですしね……」
サクラ、仕方ないですとステラに寄り添うのだった。
後、行き場を失った盗賊を鉱山街が受け入れ、生産能力がアップすることに。黄昏一団の資金も入って余裕もできた。
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/19 19:01:44 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/04/20 20:57:40 |