ゲスト
(ka0000)
リベルタース~堕落者と暴食たち
マスター:草なぎ

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/04/21 19:00
- 完成日
- 2016/04/22 17:54
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国西方リベルタース地方。黒大公ベリアルの前線基地イスルダ島に近いことからも王国で最も歪虚の攻撃が激しい地域である。沿岸部では、目下シヴァ (kz0187)関連の雑魔掃討作戦が行われていた。
リンスファーサ・ブラックホーク(kz0188)上級騎士卿は、ハルトフォート砦で眠れない夜を過ごしていた。ハルトフォートの上級武官である彼女にとっても、沿岸部の雑魔の広大な増加を抑えきれなかったのは悔やまれた。ハンターの力を何とか借りたとはいえ、二の轍は踏むまいと、敵要塞の監視と雑魔の掃討の巡回強化は今後通常任務に入ってくるだろう。
「…………」
リンスファーサはベッドから起き上がると、外套を羽織って砦の中を歩き出した。物見台に上がると、司令官のラーズスヴァンがいた。
「司令官」
「リンスか。どうしたこんな夜更けに」
「司令官こそ」
「眠れんのか?」
「色々、考えてしまいまして……」
「お前でもそんなことがあるのか。まあ座れ」
小柄なドワーフの司令官は、ラウンドテーブルの向かいに手を差し出すと、エールをあおって軽く笑った。
翌朝――。
リンスファーサはいつも通り出勤すると、いの一番に件の沿岸部の状況を確認した。現地との連絡を担当している兵士らが詰める場所へ赴くと、直接状況を確認する。その言葉を厳しい顔で受け止めると、また歩き出した。いざとなれば作戦会議などにも出席する彼女であるが、普段は自身と兵士達の鍛錬、訓練に務めている。
騎士たちや傭兵たちはすでに稽古を始めていて、訓練用の武器を手に打ち合い、魔法を使う者は相応の訓練を重ねていた。
リンスファーサも挨拶を交わすと、そのまま兵たちと汗を流す。
その報告が飛び込んで来たのは昼ごろだった。歪虚の群れがまた発生したという。沿岸部とは逆。砦の東であった。リベルタースではよくあることだ。この時リンスファーサは自分で行こうとしたが部下に止められた。
「卿、今は沿岸で何が起きるか分かりませんよ。あなたはここにいた方が良い」
「それは分かっているが……」
リンスファーサは拳を堅く握りしめた。吐息する。
「まあ、落ち着いて下さいよ。ちょっと俺たちとハンターで出張ってきますから。まあ、すでに他にも動いているかもしれませんがね」
実際その通りであったが。すでにリゼリオにも連絡が行っていた。リンスファーサは後追いではあったが、通信機で状況を確認するのだった。
時をしばらく遡り、リベルタース某所、汚染地域……。
堕落者のハンドラムは、死人の雑魔の群れを率いていた。ハンドラムはもはや人間ではない。人間を越える力を求め、単純な方法を選んだ。歪虚になること。
「くっくっく……これで、俺も後世の歴史に名を残してやる。まずは生まれ育った村から血祭りにしてやるか! 行くぞ者ども!」
ガオオオオオオオオオオ――! 死人たちが咆哮する。
ハンドラムは死者の行軍を開始した。
ロロアル村。ここは、ハンドラムが生まれ育った村だった。ハンドラムがもめごとを起こして村人を殴り倒して出て行ったことはちょっとした噂になっていた。殴られた方の怒りも収まると、あとはただ、またか……という思いでみな放置していた。ハンドラムがいなくなって静かになった。彼は何かに付けトラブルメーカーだった。生来気性の激しい男で、と言って怠け者でろくに働きもしていなかったから。それでも家族はまだ心配していた。そして、ハンドラムの面倒をよく見ていた鍛冶職人のジロヌ。
「ハンドラムの奴……ちゃんと帰ってくるだろうか」
ジロヌは、ハンドラムの父アランと酒場で話していた。
「すまないなジロヌ。放蕩息子の面倒まで見てくれていたのに」
「いつかきっと、あいつも分かる日が来るよ。まあ、まだ若いからな。手持ちの金が無くなったら帰って来るさ」
「お前ももっと厳しく鍛えてやってくれても良いんだぞ」
「それはそれで……また俺も疲れるからな。俺は所詮赤の他人なんだから」
ジロヌは肩をすくめた。
「俺が甘やかしすぎたか……。とは言えもう殴って聞かせる年でもないしな。俺に何が出来る……」
アランは冷えたグラスのしずくをなぞって吐息した。
そこへ駆け込んで来たアランのもう一人の息子、バレール。
「お父さん! 大変だ!」
「どうしたバレール」
「兄さんが帰って来た! に、兄さん魔物になっちまったよ!」
バレールの言葉に、二人の男は顔を見合わせる。
「とにかく……急いでハンターオフィスに連絡しないと! 歪虚の群れが近づいてるんだ!」
物見台の鐘がけたたましく鳴る。
堕落者ハンドラムが、ロロアル村に襲いかかろうとしていた。さすがの村人たちも恐れを成した。まさか歪虚になってしまうとは……。こうなってしまってはハンターの力を借りるしかない。そして、「あなたたち」はロロアル村に急ぎ向かうのだった。
リンスファーサ・ブラックホーク(kz0188)上級騎士卿は、ハルトフォート砦で眠れない夜を過ごしていた。ハルトフォートの上級武官である彼女にとっても、沿岸部の雑魔の広大な増加を抑えきれなかったのは悔やまれた。ハンターの力を何とか借りたとはいえ、二の轍は踏むまいと、敵要塞の監視と雑魔の掃討の巡回強化は今後通常任務に入ってくるだろう。
「…………」
リンスファーサはベッドから起き上がると、外套を羽織って砦の中を歩き出した。物見台に上がると、司令官のラーズスヴァンがいた。
「司令官」
「リンスか。どうしたこんな夜更けに」
「司令官こそ」
「眠れんのか?」
「色々、考えてしまいまして……」
「お前でもそんなことがあるのか。まあ座れ」
小柄なドワーフの司令官は、ラウンドテーブルの向かいに手を差し出すと、エールをあおって軽く笑った。
翌朝――。
リンスファーサはいつも通り出勤すると、いの一番に件の沿岸部の状況を確認した。現地との連絡を担当している兵士らが詰める場所へ赴くと、直接状況を確認する。その言葉を厳しい顔で受け止めると、また歩き出した。いざとなれば作戦会議などにも出席する彼女であるが、普段は自身と兵士達の鍛錬、訓練に務めている。
騎士たちや傭兵たちはすでに稽古を始めていて、訓練用の武器を手に打ち合い、魔法を使う者は相応の訓練を重ねていた。
リンスファーサも挨拶を交わすと、そのまま兵たちと汗を流す。
その報告が飛び込んで来たのは昼ごろだった。歪虚の群れがまた発生したという。沿岸部とは逆。砦の東であった。リベルタースではよくあることだ。この時リンスファーサは自分で行こうとしたが部下に止められた。
「卿、今は沿岸で何が起きるか分かりませんよ。あなたはここにいた方が良い」
「それは分かっているが……」
リンスファーサは拳を堅く握りしめた。吐息する。
「まあ、落ち着いて下さいよ。ちょっと俺たちとハンターで出張ってきますから。まあ、すでに他にも動いているかもしれませんがね」
実際その通りであったが。すでにリゼリオにも連絡が行っていた。リンスファーサは後追いではあったが、通信機で状況を確認するのだった。
時をしばらく遡り、リベルタース某所、汚染地域……。
堕落者のハンドラムは、死人の雑魔の群れを率いていた。ハンドラムはもはや人間ではない。人間を越える力を求め、単純な方法を選んだ。歪虚になること。
「くっくっく……これで、俺も後世の歴史に名を残してやる。まずは生まれ育った村から血祭りにしてやるか! 行くぞ者ども!」
ガオオオオオオオオオオ――! 死人たちが咆哮する。
ハンドラムは死者の行軍を開始した。
ロロアル村。ここは、ハンドラムが生まれ育った村だった。ハンドラムがもめごとを起こして村人を殴り倒して出て行ったことはちょっとした噂になっていた。殴られた方の怒りも収まると、あとはただ、またか……という思いでみな放置していた。ハンドラムがいなくなって静かになった。彼は何かに付けトラブルメーカーだった。生来気性の激しい男で、と言って怠け者でろくに働きもしていなかったから。それでも家族はまだ心配していた。そして、ハンドラムの面倒をよく見ていた鍛冶職人のジロヌ。
「ハンドラムの奴……ちゃんと帰ってくるだろうか」
ジロヌは、ハンドラムの父アランと酒場で話していた。
「すまないなジロヌ。放蕩息子の面倒まで見てくれていたのに」
「いつかきっと、あいつも分かる日が来るよ。まあ、まだ若いからな。手持ちの金が無くなったら帰って来るさ」
「お前ももっと厳しく鍛えてやってくれても良いんだぞ」
「それはそれで……また俺も疲れるからな。俺は所詮赤の他人なんだから」
ジロヌは肩をすくめた。
「俺が甘やかしすぎたか……。とは言えもう殴って聞かせる年でもないしな。俺に何が出来る……」
アランは冷えたグラスのしずくをなぞって吐息した。
そこへ駆け込んで来たアランのもう一人の息子、バレール。
「お父さん! 大変だ!」
「どうしたバレール」
「兄さんが帰って来た! に、兄さん魔物になっちまったよ!」
バレールの言葉に、二人の男は顔を見合わせる。
「とにかく……急いでハンターオフィスに連絡しないと! 歪虚の群れが近づいてるんだ!」
物見台の鐘がけたたましく鳴る。
堕落者ハンドラムが、ロロアル村に襲いかかろうとしていた。さすがの村人たちも恐れを成した。まさか歪虚になってしまうとは……。こうなってしまってはハンターの力を借りるしかない。そして、「あなたたち」はロロアル村に急ぎ向かうのだった。
リプレイ本文
リベルタース騎士ラザルドは、到着したハンターたちと合流して敬礼する。
「村に堕落者が出てしまうとは……我々の不徳の致すところだ。我々が巡回を適時行っておれば……犠牲者は出なかったはず……。汚染源に関しては調査中です」
ラザルドは吐息して、眉間をさすった。
「いや、まあ、おたくらのせいでもあるまい」
柊 真司(ka0705)は言って、肩をすくめる。
「何だか自分の生まれた村を焼いて名を残そうとか……ほざいているらしいが……その……男か? 歪虚になっても噂どおりの放蕩息子か」
柊は吐息した。ハンドラム。一線を越えた男。悪になり果てたか……。もはや人の正義は通用しまい。
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は頭を掻いた。
「お礼参り……にしちゃぁちょいとお仲間が腐りすぎてんなァ……。たく…故郷に帰ンなら、もっと気の利いた土産でも買って来い、馬鹿野郎が」
ユノ(ka0806)は笑った。
「王国なのに暴食系って珍しいね。要はダメ人間の討伐かな★ 家族は可哀相だね!」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はうなった。
「性根だけじゃなく囲んでる連中も腐ってるのか。徹底してるじゃないか」
ミオレスカ(ka3496)は吐息した。
「堕落者の復讐でしょうか、何も生み出すことはないのに。すでに歪虚ですね、村の方には申し訳ないですが、撃たせて頂きます」
鞍馬 真(ka5819)も吐息した。
「堕落者……な。すでに歪虚か……。倒すしかないな……」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は祈るように答えた。
「宗教は生きてる人のためだと思うの。歪虚になったハンドラムさんはどうでもいいの。村のご家族やお友達に何をしてあげられるのかなって」
マリィア・バルデス(ka5848)はマシンガンの照準を除きながら言った。
「村の人の前じゃ言えないけど、堕落者で良かったわね? 信奉者なら誰かが改心させなきゃならないじゃない、面倒くさい。自分が出来ない事を他人にしろなんて言えないもの……後腐れなく滅んでちょうだい?」
ラザルドは吐息して言葉を紡いだ。
「村人たちからの言葉を預かっています。魔物になった以上、とにかく倒して下さい、と。あの歪虚は私たちの村を狙っているから、必ず滅ぼして頂きたい、と」
もはや迫りくる歪虚は村人たちにとっては死活問題である。
ミオレスカは「そうですか……」と吐息する。
「ハンドラムさんも、堕落者になるつもりはなかったでしょう。弔うことはできるでしょうか。汚染の影響で歪虚になってしまったのなら、なんとしても、止めたいです」
ディーナは「そうですね……」と悲しげな瞳をした。
「ハンドラムさんは、本当にたまたまタイミングが悪かっただけだと思うの……生きてさえいれば、他の生き方だってきっとあったの」
鞍馬は二人の女性ハンターに優しく言葉を掛けた。
「私たちにとっての正義はハンドラムにとっては悪なのだろう……。それでも人間なら救う道もあったが……歪虚になってしまってはね」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)はアサルトライフルの具合を見ながら言った。
「堕落者は知らないぜ? ていうかめんどくさいからな。こうなったらやるかやられるかだろ。さっさと片付けようぜ」
「ですです! それじゃーひと暴れ、やっちゃいますかー♪」
葛音 水月(ka1895)はゲーム感覚で乗り乗りだった。
星野 ハナ(ka5852)も乗り乗りだった。
「わぁい、殺りがいのある依頼が来ましたよぅ。ヴァンパイア・ハンターハナ、かっこいいじゃないですかぁ」
「これだけ数が多いと厄介ですね。種類も多いだけに臨機応変に戦わなければ」
シャルロット・ウォーカー(ka6139)は吐息した。ハンドラムに会うことが出来たら言ってやりたい。貴方を人間に戻すことはできなくとも、救う手立てはあります。貴方が人々を殺める前に……。
ザレム・アズール(ka0878)はラザルドに声を掛けた。
「ラザルド」
「ええ」
「こちらからの要請に答えてくれたようで感謝する」
「もちろんですよ」
「では魔法兵を亡霊に、銃兵をスケルトンに。スケルトンは骨なので頭部を狙え。盾兵と回復魔法兵も同行してもらおう。ハンターの後方に位置し、接敵せずにな。戦列は横列に。敵の集中を防ぐ狙いだよ」
「了解した」
「んじゃま行くか。まあ……雑魔に堕落者一体と取り巻きか……。この面子で遅れは取るまい」
ボルディアはハルバードを担いで肩をすくめた。
ミオレスカの銃撃で幕を開ける。銃撃を開始したミオレスカ。
「行って下さいみなさん」
ミオレスカは戦闘そのものには危惧を抱いていなかった。この戦力差で負けるはずがない。
「それでは銃撃開始」
マリィアはマシンガンの引き金を引いた。ズドドドドドドドドドドドドドドド! 銃撃開始。死人戦士をことごとく撃ち貫いて行く。
「……と、さすがに死人系ね。多少のしぶとさはあるわね」
クイックリロード。ズドドドドドドドドドドドドドドド!
レイオスは吸血鬼の群れを突破してハンドラムに襲い掛かる。
「行くぞ堕落者!」
「おあああああああああああああああああ!」
ボルディアも加速した。
二人とも死人戦士をぶん殴って吹き飛ばす。
マリィアの銃撃が続く。ズドドドドドドドドドドドドドドド!
ハンドラムの顔が醜く歪む。
「野郎! ハンターか!」
「野郎、ハンターか、じゃねえんだよこのケボなすが!」
ボルディアは問答無用でワイルドラッシュでハンドラムを殴り倒した。
魔法を詠唱する間もなく。ぶっ飛ぶハンドラム。
レイオスが這いつくばるハンドラムの頭部に刀剣を振り下ろす。
「ハッ、人間をやめて家族を捨てて、そして得た力がその程度かッ!」
「ぐ……畜生! 何だこのパワー……! 人間なのに桁違い……! 俺の……歪虚の力はこんなもんなのか!? 歪虚の野郎……!」
「あほめ」
レイオスはナックルでハンドラムを殴った。
「あらあら……」
マリィアは死人戦士を撃ちながら、零した。
「スナイパーライフルや弓なら50sq届くものがそこそこあるのよ? 30sqは近距離だって思い知ると良いわ」
「俺は……俺は……奴らに復讐する! 俺をめった刺しにしたあいつらに! あの村に! 俺は負けねえ!」
「分からねえのか? お前はもう死んでるんだよ。歪虚なんだからな。お前は闇に落ちた。最後に聞いてやるよ。家族に言い残すことがあれば聞いてやる」
ボルディアは問うた。
堕落者は憎悪の眼差しでボルディアを見上げた。
「殺せ! 殺しやがれ! 死など恐れねえ! そうさ! 俺は死んだ! この闇の力で……あいつらを……ぶっ潰す!」
「分かった。御両親には、村人にもその言葉は伝えねえ。最後は人間に戻ったと伝えておこう。闇から解放されて、安らかな眠りに着いたとな」
「やるのかボルディア」
「仕方ねえだろ……歪虚は捨ておけん」
「分かった」
レイオスも刀を振り上げた。
ボルディアと二人、堕落者に止めを刺した。
ハンドラムは最後まで呪詛の言葉を吐き出し、闇へと還元していった。
鞍馬と葛音はスケルトンを圧倒した。二人の戦闘能力を以ってすれば、スケルトンなど雑魚である。赤子の手をひねるに等しい。舞うような剣舞と、夢幻城の核を撃ち抜いたバンカーがスケルトンを圧殺、破砕していく。
雑魔十体など軽くものの数分くらいで方が付いた。
「あらら……ちょっとスケルトンには強力すぎたかなあ……」
葛音は手応えの無さにちょっと肩すかし。
柊にとってゾンビなど敵ではなかった。ゾンビなど暴走する間もなく焼き払われた。
「ゾンビ共が火葬の時間だぜ!」
そして掃除がすんだらハンドラムに引導を渡そうとしたのだが……。
「あれ。もう終わってるのか……」
柊は呆れた様子で腕を軽く振った。ちょっとした運動であった。
ディーナ、ユノ、シャルロットらの魔法トリオは亡霊たちに向かった。そして瞬殺した。範囲魔法で圧殺。シャルロットは戦闘に慣れていないとはいえ、これだけの味方がいて、良い訓練になったと言えよう。
「大丈夫ですかシャルロットさん」
ディーナが言うと、ユノも言った。
「シャルロットさんはまだ日が浅いんですよね。これは暴食の歪虚と言って、おとぎ話で言うところのアンデッドって奴なんですよ」
「そうなんですね。ふむふむ……。私でも力になれると分かりました。これだけの集団戦でもね」
「おい待てよ」
ステラがアサルトライフルを構えて吸血鬼に銃口を向けた。
「何のために来たと思ってる。撃たせろ」
ステラはライフルのトリガーを引いた。ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド! 撃って撃って撃ちまくるステラ。
「撃て撃て~! 撃たせろー!」
「ちょっとちょっとステラさん」
星野が「きゃふ~」と耳を押さえながら銃撃が収まるのを待った。
「よし! もういい!」
ステラはライフルを引き上げた。続いて星野乱舞。
「きゃ~♪ 暴走が歪虚の専売特許だと思ったら大間違いですぅ……さっさと塵になりなさいぃ、五色光符陣五色光符陣五色光符陣五色光符陣五色光符陣!」
光に焼かれて絶叫する吸血鬼たち。
「フッ、数の暴力で負ける気はあんまりないですよぅ」
五色光連打。
「五色光符陣は14発打てますからぁ、吸血鬼なんてちょろいですぅ」
そして星野、残敵をぴぴっと掃討したザレムを見やる。
「ザレムくんじゃないですかぁ、誰を殺ってきたですぅ?」
思わず微笑む。
「いやいや……星野がいいとこ全部持って行ったよ」
ザレムは苦笑した。
「ラザルド」
ザレムは戦闘が終わってリベルタース騎士に声を掛けた。
「すまなかったな。指揮官のような真似をして」
「いや、いや。ここは歴戦のハンターに道を譲ります」
ラザルドや兵士達は勝ち鬨の声を上げていた。
ディーナは……ハンドラムの遺品を探していた。
「やっぱり……何もないですよね」
「何がだ」
柊が問うと、ディーナはハンドラムの遺品が無いか聞いた。
「それを聞いただけで、村人は救われるぜ」
「そうでしょうか……」
ディーナはしょぼんと顔を下げた。
ハンターたちは村に帰還した。
村人たちは歓呼の声でハンターたちとリベルタース騎士たちを迎える。
ありがとう! さすがハンターだ! ありがとうございます!
ボルディアは、アランにハンドラムの最後を伝えた。
「息子さんは、最後には人間になったぜ。歪虚でもそんなことがあるんだな……」
「そう……ですか……。人間に戻ったと……?」
「ああ」
それを、ボルディアは優しく笑って言った。
アランは、ボルディアの肩に掴みかかると、そのまま泣き崩れた。
「すみません……何てことだ……。あなた方に……不肖の息子の後始末をさせてしまうなんて……。私は……私は……」
「しっかりしてくれ。大丈夫だ。ハンドラムは安らかに逝った。改心したよ」
アランの悲しみは、涙は止まらなかった。
ハンターたちはその嘘を飲み込んだ。だが恐らくすぐにでもアランも知るだろう。堕落者になった者が人間に戻ることは無い。
悪に正義は通じない。そうなのだ。悪に正義は通用しない。正義が悪に負けないように、悪もまた、正義には屈しない。
この世界がマテリアルの満ちる人間の正の世界なら、歪虚が目指すのは負のマテリアルに侵された死の世界。だからこそ、人間がいる限り歪虚は存在し、歪虚が攻撃する限り人間も戦う。
歪虚がこの世界を滅ぼそうとしている限り、今日もまた、どこかで第二第三のハンドラムが生まれているだろう。生まれていてもおかしくは無い。それがどこかの新聞紙の片隅のような事件でも。
「ボルディア、大丈夫か」
帰路、柊が声を掛ける。ボルディアはからからと笑った。
「もちろん大丈夫だよ! はっはっは! イモータルブラッドを何だと思ってるんだい」
「そうか」
柊は苦笑した。
「結局僕の出番が無かった!」
ユノは拳を振り回していた。ザレムは肩をすくめる。
「まあ仕方ないだろう。この面子で、あの程度の歪虚にうっぷん晴らそうと思ったら……どうしたらいいのか……俺も想像がつかん」
「そうは言ってもさあ……。何だかなあ……。僕はゲームがしたかったんだよう」
「何でも王国でベリト討伐作戦が進行中らしい。……そんな噂を聞いたがなあ……。噂だぞ」
「ほんとに~? ベリト?」
ユノの瞳が輝く。
「まあ待てよ。ベリトと言えば、テスカ教団の首魁。こんな遊びでは終わらないぜ。命がけのたいまんになるんじゃないか。気を付けろよ。……て、俺も気にはなってるんだがな~」
レイオスは言って笑った。
すると、葛音が同意した。
「いや~。僕もさ。ベリトは気になってるんだよね~。そりゃそうだよね? 王国が崩壊するかどうかってところなんだからねえ……。あの戦いは……血沸き肉躍るよ~。何て言うかさ……ユノさんが言うように、凄くわくわくするよね!」
ミオレスカは、ディーナに言った。
「私、少し分かった気がします」
「何が?」
「撃つってことが、どういうことなのか」
「それは……」
「この武器は……」
「ええ」
「武器は……使う者の心次第で、あるってこと……人間である以上、それは、無視できないってことが……」
「ミオレスカ……私もね、迷っていたことがあるの」
「何ですか?」
「歪虚を倒すってことが、戦う、切ったり傷つけたりすることが、それは私嫌だなって……。やっぱりヒーラーでいたいから……。でもね。ヒーラーだって、ヒーラーにしか出来ないことがあるんだって、今日思ったの。ふとね……。でもそれは確かに歪虚を倒す力じゃないかもしれないけれど……それだけじゃ駄目かもしれないけれど……。歪虚は襲う相手を選ぶわけじゃないじゃない? だからね……戦うってこと……自分にしか出来ないこと……例えば目の前の人を救うってこと……それが自分の戦いなら……それが私の迷うべき道なんじゃないかって……。あはは。私甘いかな。迷ってばかりで……」
「ディーナ君は優しいね」
鞍馬は微笑んだ。ディーナは少し熱くなってしまった。
「ステラさん、何だか嬉しそうね?」
マリィアが笑って問うた。ステラは笑った。
「そりゃまあ。一応、なんたらかんたらぶっ放せたからな」
ステラはにやにやしていた。
「いや~やっぱぶっぱなすって良いですねえ~。すっきりしましたよん♪ 撃ってる間は気分爽快爽快♪」
ステラのにやけぶりにマリィアは肩をすくめた。
星野もにやけていた。
「にゃふ~♪ 私もすっきりしましたね~。五色光十四連弾! まあ……バンパイアが雑魚でしたから、もうほんとバンパイアハンターでした!☆」
「はあ~」
マリィアはくらくらと目頭を押さえた。
シャルロットは思案顔だった。
「しかしまあ……まだまだ歪虚の脅威は終わらないのですね。私も……医者としては人を救えても、ハンターとしては、駆け出しですからね……」
マリィアは軽く手を振った。
「シャルロットさん、医者って凄いわよね。銃しか撃てない私には想像もつかないわ」
「まあ……ね。一応リアルブルーの医学を学んで……」
シャルロットが難解な医学用語を話しだしたので、マリィアは焦った。
「いえいえ、私お医者様には勝てないわよ」
「ああ……何言ってましたっけ?」
シャルロットは笑っていた。
そんなこんなで戦闘自体はさっくりと片付いてしまった依頼であった。まあ……堕落者被害も無視は出来ないな……。それよりも件の汚染地域とやらをきちんと浄化してもらわないと、また被害が出る。
後日伝え聞いたところによると、汚染源にいた暴食の歪虚が発見されたらしく、それは大したレベルではなかったようだが、あのハンドラムのレベルがそうであったように、その歪虚はすぐさま撃退され、浄化作業も行われたという。
こうして、一つの事件がまた解決され、またハンターズソサエティに歴史が一枚加わった。そして、ハンターたちはまた道を歩いて行く。次なる戦いへ、冒険へ、クエストへ、日常ドラマの依頼を受ける者たちもいよう。それらは連綿と続くソサエティの記録となり、後世のハンターたちの道しるべとなり、受け継がれていくことだろう。今日もどこかで、誰かがソサエティの門をくぐっている。
そして……。
……あなたたちはまた依頼を探しに来た。スタッフが声を掛けてくる。
「いらっしゃいませ。ようこそハンターオフィスへ。どのような依頼をお探しですか?」
ハンターたちの道は続く。
「村に堕落者が出てしまうとは……我々の不徳の致すところだ。我々が巡回を適時行っておれば……犠牲者は出なかったはず……。汚染源に関しては調査中です」
ラザルドは吐息して、眉間をさすった。
「いや、まあ、おたくらのせいでもあるまい」
柊 真司(ka0705)は言って、肩をすくめる。
「何だか自分の生まれた村を焼いて名を残そうとか……ほざいているらしいが……その……男か? 歪虚になっても噂どおりの放蕩息子か」
柊は吐息した。ハンドラム。一線を越えた男。悪になり果てたか……。もはや人の正義は通用しまい。
ボルディア・コンフラムス(ka0796)は頭を掻いた。
「お礼参り……にしちゃぁちょいとお仲間が腐りすぎてんなァ……。たく…故郷に帰ンなら、もっと気の利いた土産でも買って来い、馬鹿野郎が」
ユノ(ka0806)は笑った。
「王国なのに暴食系って珍しいね。要はダメ人間の討伐かな★ 家族は可哀相だね!」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)はうなった。
「性根だけじゃなく囲んでる連中も腐ってるのか。徹底してるじゃないか」
ミオレスカ(ka3496)は吐息した。
「堕落者の復讐でしょうか、何も生み出すことはないのに。すでに歪虚ですね、村の方には申し訳ないですが、撃たせて頂きます」
鞍馬 真(ka5819)も吐息した。
「堕落者……な。すでに歪虚か……。倒すしかないな……」
ディーナ・フェルミ(ka5843)は祈るように答えた。
「宗教は生きてる人のためだと思うの。歪虚になったハンドラムさんはどうでもいいの。村のご家族やお友達に何をしてあげられるのかなって」
マリィア・バルデス(ka5848)はマシンガンの照準を除きながら言った。
「村の人の前じゃ言えないけど、堕落者で良かったわね? 信奉者なら誰かが改心させなきゃならないじゃない、面倒くさい。自分が出来ない事を他人にしろなんて言えないもの……後腐れなく滅んでちょうだい?」
ラザルドは吐息して言葉を紡いだ。
「村人たちからの言葉を預かっています。魔物になった以上、とにかく倒して下さい、と。あの歪虚は私たちの村を狙っているから、必ず滅ぼして頂きたい、と」
もはや迫りくる歪虚は村人たちにとっては死活問題である。
ミオレスカは「そうですか……」と吐息する。
「ハンドラムさんも、堕落者になるつもりはなかったでしょう。弔うことはできるでしょうか。汚染の影響で歪虚になってしまったのなら、なんとしても、止めたいです」
ディーナは「そうですね……」と悲しげな瞳をした。
「ハンドラムさんは、本当にたまたまタイミングが悪かっただけだと思うの……生きてさえいれば、他の生き方だってきっとあったの」
鞍馬は二人の女性ハンターに優しく言葉を掛けた。
「私たちにとっての正義はハンドラムにとっては悪なのだろう……。それでも人間なら救う道もあったが……歪虚になってしまってはね」
ステラ・レッドキャップ(ka5434)はアサルトライフルの具合を見ながら言った。
「堕落者は知らないぜ? ていうかめんどくさいからな。こうなったらやるかやられるかだろ。さっさと片付けようぜ」
「ですです! それじゃーひと暴れ、やっちゃいますかー♪」
葛音 水月(ka1895)はゲーム感覚で乗り乗りだった。
星野 ハナ(ka5852)も乗り乗りだった。
「わぁい、殺りがいのある依頼が来ましたよぅ。ヴァンパイア・ハンターハナ、かっこいいじゃないですかぁ」
「これだけ数が多いと厄介ですね。種類も多いだけに臨機応変に戦わなければ」
シャルロット・ウォーカー(ka6139)は吐息した。ハンドラムに会うことが出来たら言ってやりたい。貴方を人間に戻すことはできなくとも、救う手立てはあります。貴方が人々を殺める前に……。
ザレム・アズール(ka0878)はラザルドに声を掛けた。
「ラザルド」
「ええ」
「こちらからの要請に答えてくれたようで感謝する」
「もちろんですよ」
「では魔法兵を亡霊に、銃兵をスケルトンに。スケルトンは骨なので頭部を狙え。盾兵と回復魔法兵も同行してもらおう。ハンターの後方に位置し、接敵せずにな。戦列は横列に。敵の集中を防ぐ狙いだよ」
「了解した」
「んじゃま行くか。まあ……雑魔に堕落者一体と取り巻きか……。この面子で遅れは取るまい」
ボルディアはハルバードを担いで肩をすくめた。
ミオレスカの銃撃で幕を開ける。銃撃を開始したミオレスカ。
「行って下さいみなさん」
ミオレスカは戦闘そのものには危惧を抱いていなかった。この戦力差で負けるはずがない。
「それでは銃撃開始」
マリィアはマシンガンの引き金を引いた。ズドドドドドドドドドドドドドドド! 銃撃開始。死人戦士をことごとく撃ち貫いて行く。
「……と、さすがに死人系ね。多少のしぶとさはあるわね」
クイックリロード。ズドドドドドドドドドドドドドドド!
レイオスは吸血鬼の群れを突破してハンドラムに襲い掛かる。
「行くぞ堕落者!」
「おあああああああああああああああああ!」
ボルディアも加速した。
二人とも死人戦士をぶん殴って吹き飛ばす。
マリィアの銃撃が続く。ズドドドドドドドドドドドドドドド!
ハンドラムの顔が醜く歪む。
「野郎! ハンターか!」
「野郎、ハンターか、じゃねえんだよこのケボなすが!」
ボルディアは問答無用でワイルドラッシュでハンドラムを殴り倒した。
魔法を詠唱する間もなく。ぶっ飛ぶハンドラム。
レイオスが這いつくばるハンドラムの頭部に刀剣を振り下ろす。
「ハッ、人間をやめて家族を捨てて、そして得た力がその程度かッ!」
「ぐ……畜生! 何だこのパワー……! 人間なのに桁違い……! 俺の……歪虚の力はこんなもんなのか!? 歪虚の野郎……!」
「あほめ」
レイオスはナックルでハンドラムを殴った。
「あらあら……」
マリィアは死人戦士を撃ちながら、零した。
「スナイパーライフルや弓なら50sq届くものがそこそこあるのよ? 30sqは近距離だって思い知ると良いわ」
「俺は……俺は……奴らに復讐する! 俺をめった刺しにしたあいつらに! あの村に! 俺は負けねえ!」
「分からねえのか? お前はもう死んでるんだよ。歪虚なんだからな。お前は闇に落ちた。最後に聞いてやるよ。家族に言い残すことがあれば聞いてやる」
ボルディアは問うた。
堕落者は憎悪の眼差しでボルディアを見上げた。
「殺せ! 殺しやがれ! 死など恐れねえ! そうさ! 俺は死んだ! この闇の力で……あいつらを……ぶっ潰す!」
「分かった。御両親には、村人にもその言葉は伝えねえ。最後は人間に戻ったと伝えておこう。闇から解放されて、安らかな眠りに着いたとな」
「やるのかボルディア」
「仕方ねえだろ……歪虚は捨ておけん」
「分かった」
レイオスも刀を振り上げた。
ボルディアと二人、堕落者に止めを刺した。
ハンドラムは最後まで呪詛の言葉を吐き出し、闇へと還元していった。
鞍馬と葛音はスケルトンを圧倒した。二人の戦闘能力を以ってすれば、スケルトンなど雑魚である。赤子の手をひねるに等しい。舞うような剣舞と、夢幻城の核を撃ち抜いたバンカーがスケルトンを圧殺、破砕していく。
雑魔十体など軽くものの数分くらいで方が付いた。
「あらら……ちょっとスケルトンには強力すぎたかなあ……」
葛音は手応えの無さにちょっと肩すかし。
柊にとってゾンビなど敵ではなかった。ゾンビなど暴走する間もなく焼き払われた。
「ゾンビ共が火葬の時間だぜ!」
そして掃除がすんだらハンドラムに引導を渡そうとしたのだが……。
「あれ。もう終わってるのか……」
柊は呆れた様子で腕を軽く振った。ちょっとした運動であった。
ディーナ、ユノ、シャルロットらの魔法トリオは亡霊たちに向かった。そして瞬殺した。範囲魔法で圧殺。シャルロットは戦闘に慣れていないとはいえ、これだけの味方がいて、良い訓練になったと言えよう。
「大丈夫ですかシャルロットさん」
ディーナが言うと、ユノも言った。
「シャルロットさんはまだ日が浅いんですよね。これは暴食の歪虚と言って、おとぎ話で言うところのアンデッドって奴なんですよ」
「そうなんですね。ふむふむ……。私でも力になれると分かりました。これだけの集団戦でもね」
「おい待てよ」
ステラがアサルトライフルを構えて吸血鬼に銃口を向けた。
「何のために来たと思ってる。撃たせろ」
ステラはライフルのトリガーを引いた。ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ズドドドド! ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド! 撃って撃って撃ちまくるステラ。
「撃て撃て~! 撃たせろー!」
「ちょっとちょっとステラさん」
星野が「きゃふ~」と耳を押さえながら銃撃が収まるのを待った。
「よし! もういい!」
ステラはライフルを引き上げた。続いて星野乱舞。
「きゃ~♪ 暴走が歪虚の専売特許だと思ったら大間違いですぅ……さっさと塵になりなさいぃ、五色光符陣五色光符陣五色光符陣五色光符陣五色光符陣!」
光に焼かれて絶叫する吸血鬼たち。
「フッ、数の暴力で負ける気はあんまりないですよぅ」
五色光連打。
「五色光符陣は14発打てますからぁ、吸血鬼なんてちょろいですぅ」
そして星野、残敵をぴぴっと掃討したザレムを見やる。
「ザレムくんじゃないですかぁ、誰を殺ってきたですぅ?」
思わず微笑む。
「いやいや……星野がいいとこ全部持って行ったよ」
ザレムは苦笑した。
「ラザルド」
ザレムは戦闘が終わってリベルタース騎士に声を掛けた。
「すまなかったな。指揮官のような真似をして」
「いや、いや。ここは歴戦のハンターに道を譲ります」
ラザルドや兵士達は勝ち鬨の声を上げていた。
ディーナは……ハンドラムの遺品を探していた。
「やっぱり……何もないですよね」
「何がだ」
柊が問うと、ディーナはハンドラムの遺品が無いか聞いた。
「それを聞いただけで、村人は救われるぜ」
「そうでしょうか……」
ディーナはしょぼんと顔を下げた。
ハンターたちは村に帰還した。
村人たちは歓呼の声でハンターたちとリベルタース騎士たちを迎える。
ありがとう! さすがハンターだ! ありがとうございます!
ボルディアは、アランにハンドラムの最後を伝えた。
「息子さんは、最後には人間になったぜ。歪虚でもそんなことがあるんだな……」
「そう……ですか……。人間に戻ったと……?」
「ああ」
それを、ボルディアは優しく笑って言った。
アランは、ボルディアの肩に掴みかかると、そのまま泣き崩れた。
「すみません……何てことだ……。あなた方に……不肖の息子の後始末をさせてしまうなんて……。私は……私は……」
「しっかりしてくれ。大丈夫だ。ハンドラムは安らかに逝った。改心したよ」
アランの悲しみは、涙は止まらなかった。
ハンターたちはその嘘を飲み込んだ。だが恐らくすぐにでもアランも知るだろう。堕落者になった者が人間に戻ることは無い。
悪に正義は通じない。そうなのだ。悪に正義は通用しない。正義が悪に負けないように、悪もまた、正義には屈しない。
この世界がマテリアルの満ちる人間の正の世界なら、歪虚が目指すのは負のマテリアルに侵された死の世界。だからこそ、人間がいる限り歪虚は存在し、歪虚が攻撃する限り人間も戦う。
歪虚がこの世界を滅ぼそうとしている限り、今日もまた、どこかで第二第三のハンドラムが生まれているだろう。生まれていてもおかしくは無い。それがどこかの新聞紙の片隅のような事件でも。
「ボルディア、大丈夫か」
帰路、柊が声を掛ける。ボルディアはからからと笑った。
「もちろん大丈夫だよ! はっはっは! イモータルブラッドを何だと思ってるんだい」
「そうか」
柊は苦笑した。
「結局僕の出番が無かった!」
ユノは拳を振り回していた。ザレムは肩をすくめる。
「まあ仕方ないだろう。この面子で、あの程度の歪虚にうっぷん晴らそうと思ったら……どうしたらいいのか……俺も想像がつかん」
「そうは言ってもさあ……。何だかなあ……。僕はゲームがしたかったんだよう」
「何でも王国でベリト討伐作戦が進行中らしい。……そんな噂を聞いたがなあ……。噂だぞ」
「ほんとに~? ベリト?」
ユノの瞳が輝く。
「まあ待てよ。ベリトと言えば、テスカ教団の首魁。こんな遊びでは終わらないぜ。命がけのたいまんになるんじゃないか。気を付けろよ。……て、俺も気にはなってるんだがな~」
レイオスは言って笑った。
すると、葛音が同意した。
「いや~。僕もさ。ベリトは気になってるんだよね~。そりゃそうだよね? 王国が崩壊するかどうかってところなんだからねえ……。あの戦いは……血沸き肉躍るよ~。何て言うかさ……ユノさんが言うように、凄くわくわくするよね!」
ミオレスカは、ディーナに言った。
「私、少し分かった気がします」
「何が?」
「撃つってことが、どういうことなのか」
「それは……」
「この武器は……」
「ええ」
「武器は……使う者の心次第で、あるってこと……人間である以上、それは、無視できないってことが……」
「ミオレスカ……私もね、迷っていたことがあるの」
「何ですか?」
「歪虚を倒すってことが、戦う、切ったり傷つけたりすることが、それは私嫌だなって……。やっぱりヒーラーでいたいから……。でもね。ヒーラーだって、ヒーラーにしか出来ないことがあるんだって、今日思ったの。ふとね……。でもそれは確かに歪虚を倒す力じゃないかもしれないけれど……それだけじゃ駄目かもしれないけれど……。歪虚は襲う相手を選ぶわけじゃないじゃない? だからね……戦うってこと……自分にしか出来ないこと……例えば目の前の人を救うってこと……それが自分の戦いなら……それが私の迷うべき道なんじゃないかって……。あはは。私甘いかな。迷ってばかりで……」
「ディーナ君は優しいね」
鞍馬は微笑んだ。ディーナは少し熱くなってしまった。
「ステラさん、何だか嬉しそうね?」
マリィアが笑って問うた。ステラは笑った。
「そりゃまあ。一応、なんたらかんたらぶっ放せたからな」
ステラはにやにやしていた。
「いや~やっぱぶっぱなすって良いですねえ~。すっきりしましたよん♪ 撃ってる間は気分爽快爽快♪」
ステラのにやけぶりにマリィアは肩をすくめた。
星野もにやけていた。
「にゃふ~♪ 私もすっきりしましたね~。五色光十四連弾! まあ……バンパイアが雑魚でしたから、もうほんとバンパイアハンターでした!☆」
「はあ~」
マリィアはくらくらと目頭を押さえた。
シャルロットは思案顔だった。
「しかしまあ……まだまだ歪虚の脅威は終わらないのですね。私も……医者としては人を救えても、ハンターとしては、駆け出しですからね……」
マリィアは軽く手を振った。
「シャルロットさん、医者って凄いわよね。銃しか撃てない私には想像もつかないわ」
「まあ……ね。一応リアルブルーの医学を学んで……」
シャルロットが難解な医学用語を話しだしたので、マリィアは焦った。
「いえいえ、私お医者様には勝てないわよ」
「ああ……何言ってましたっけ?」
シャルロットは笑っていた。
そんなこんなで戦闘自体はさっくりと片付いてしまった依頼であった。まあ……堕落者被害も無視は出来ないな……。それよりも件の汚染地域とやらをきちんと浄化してもらわないと、また被害が出る。
後日伝え聞いたところによると、汚染源にいた暴食の歪虚が発見されたらしく、それは大したレベルではなかったようだが、あのハンドラムのレベルがそうであったように、その歪虚はすぐさま撃退され、浄化作業も行われたという。
こうして、一つの事件がまた解決され、またハンターズソサエティに歴史が一枚加わった。そして、ハンターたちはまた道を歩いて行く。次なる戦いへ、冒険へ、クエストへ、日常ドラマの依頼を受ける者たちもいよう。それらは連綿と続くソサエティの記録となり、後世のハンターたちの道しるべとなり、受け継がれていくことだろう。今日もどこかで、誰かがソサエティの門をくぐっている。
そして……。
……あなたたちはまた依頼を探しに来た。スタッフが声を掛けてくる。
「いらっしゃいませ。ようこそハンターオフィスへ。どのような依頼をお探しですか?」
ハンターたちの道は続く。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 7人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/20 22:43:15 |
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相談卓 ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/04/21 15:00:02 |