ゲスト
(ka0000)
土竜あらわる
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/05/05 19:00
- 完成日
- 2016/05/11 23:13
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「わし、わし、わし」
コボちゃんはハンターオフィス、ジェオルジ支局のマスコット。その容姿は、トイプードルそっくり。
シルクハットを被ったりジャケットを着たりと、人間世界にかなり馴染んでいる小型コボルドである。
●
牧草の茂るなだらかな丘陵を、コボちゃんは、てくてく歩く。
おいしそうな羊や牛が群れをなし、のんびり草を食んでいるが、襲ったりしない。そんなことをしようものならハンターたちが飛んでくるからだ。その程度の理屈が分かるくらいには、コボちゃん頭がいい(もっとも襲ったとして彼の体の小ささでは、仕留めることなど出来ないだろう。それ以前に、目標へ近づけるかどうかさえ疑わしい。牧草地のあちこちに点在している牧羊犬が、目を光らせているのだから)。
ともあれコボちゃん、丘の上の防風林に向け急ぐ。何を隠そうそこは、秘密の骨置き場なのだ。
今日も誰にも邪魔されず、しみじみ骨を齧ろう。コボちゃんはそう思っていた。
しかし保管場所についてみれば地面が掘り返され、骨が軒並み盗まれている。
「わし!? わししししし! わしー!」
おのれ誰が大事な骨を奪ったのだ。
怒ったコボちゃんはすぐさま周辺の匂いを嗅ぎ回り――目をぱちぱちさせた。
「わし? わしー」
匂いは、自分と同じコボルドのものだったのだ。
どうやら仲間が近くにいるらしい。
そうと知ったコボちゃんは、急いで匂いの行方を追った。
そして雑木林の奥に、掘りたての巣穴を見つける。
「わしー、わしー、わしー」
離れたところから吠え、自分の存在を示す。
ややもして、穴の中から返事。
「うぉう、うぉう、うぉう」
随分細くかすれた声。
どうしたのかなと近づいてみれば、痩せ衰えたコボルドが顔を出してきた。奥の方にも同じような痩せコボルドが数匹。皆骨をしゃぶっている。
とりあえずコボちゃんは、相手がどこから来たのか聞いてみた。
「わわしわしわし?」
「うぉー、うぉー」
痩せコボルドの弁によると、自分たちの群れは辺境の山塊に住んでいた、とのこと。
ほどよい穴がたくさんあって実に住みやすいところだったとのこと。だが突然大きな怪物がやってきて、群れの多くが食べられてしまったのだそうな。
自分たちは命からがらここまで逃げてきたのだが、怪物がしつこく追いかけてくるので食料を取ることもままならず、非常に困っている。とのこと。
故郷に帰りたいと零す彼らに、コボちゃんは同種族として、いたく同情する。
「わしー……わしし?」
そこに、突如感じる不気味な振動。
痩せコボルドたちが脅えた声を上げる。コボちゃんのたれ耳がぴんと立つ。
すぐ近くの地面がぼこぼこ隆起してきた。
「わ、わし? わし?」
そこから、怪物が姿を現す。
●
平素の通りのどかなハンターオフィス・ジェオルジ支部。
書き物をしていた職員ジュアンは、ふと頭を持ち上げた。足元が震えたような気がして。
「ん?」
本日の依頼を掲示板に張り付けていた職員マリーも、怪訝に周囲を見回す。
「何?」
と言って外に出てみれば、コボちゃんを先頭にしたコボルド集団が、ものすごい勢いでこちらに走ってくるのが見えた。
「わしわしわしわし!」
「うぉううぉううぉううぉう!」
「キャンキャンキャンキャン!」
彼らの背後から、土煙が迫ってくる。
「え?」
目をこらしてみればそれは、地面をかき分けつつ驀進してくる巨大モグラ。
マリーは血相を変え、コボルド集団に怒鳴った。
「こっちに逃げて来るなー!」
コボちゃんはハンターオフィス、ジェオルジ支局のマスコット。その容姿は、トイプードルそっくり。
シルクハットを被ったりジャケットを着たりと、人間世界にかなり馴染んでいる小型コボルドである。
●
牧草の茂るなだらかな丘陵を、コボちゃんは、てくてく歩く。
おいしそうな羊や牛が群れをなし、のんびり草を食んでいるが、襲ったりしない。そんなことをしようものならハンターたちが飛んでくるからだ。その程度の理屈が分かるくらいには、コボちゃん頭がいい(もっとも襲ったとして彼の体の小ささでは、仕留めることなど出来ないだろう。それ以前に、目標へ近づけるかどうかさえ疑わしい。牧草地のあちこちに点在している牧羊犬が、目を光らせているのだから)。
ともあれコボちゃん、丘の上の防風林に向け急ぐ。何を隠そうそこは、秘密の骨置き場なのだ。
今日も誰にも邪魔されず、しみじみ骨を齧ろう。コボちゃんはそう思っていた。
しかし保管場所についてみれば地面が掘り返され、骨が軒並み盗まれている。
「わし!? わししししし! わしー!」
おのれ誰が大事な骨を奪ったのだ。
怒ったコボちゃんはすぐさま周辺の匂いを嗅ぎ回り――目をぱちぱちさせた。
「わし? わしー」
匂いは、自分と同じコボルドのものだったのだ。
どうやら仲間が近くにいるらしい。
そうと知ったコボちゃんは、急いで匂いの行方を追った。
そして雑木林の奥に、掘りたての巣穴を見つける。
「わしー、わしー、わしー」
離れたところから吠え、自分の存在を示す。
ややもして、穴の中から返事。
「うぉう、うぉう、うぉう」
随分細くかすれた声。
どうしたのかなと近づいてみれば、痩せ衰えたコボルドが顔を出してきた。奥の方にも同じような痩せコボルドが数匹。皆骨をしゃぶっている。
とりあえずコボちゃんは、相手がどこから来たのか聞いてみた。
「わわしわしわし?」
「うぉー、うぉー」
痩せコボルドの弁によると、自分たちの群れは辺境の山塊に住んでいた、とのこと。
ほどよい穴がたくさんあって実に住みやすいところだったとのこと。だが突然大きな怪物がやってきて、群れの多くが食べられてしまったのだそうな。
自分たちは命からがらここまで逃げてきたのだが、怪物がしつこく追いかけてくるので食料を取ることもままならず、非常に困っている。とのこと。
故郷に帰りたいと零す彼らに、コボちゃんは同種族として、いたく同情する。
「わしー……わしし?」
そこに、突如感じる不気味な振動。
痩せコボルドたちが脅えた声を上げる。コボちゃんのたれ耳がぴんと立つ。
すぐ近くの地面がぼこぼこ隆起してきた。
「わ、わし? わし?」
そこから、怪物が姿を現す。
●
平素の通りのどかなハンターオフィス・ジェオルジ支部。
書き物をしていた職員ジュアンは、ふと頭を持ち上げた。足元が震えたような気がして。
「ん?」
本日の依頼を掲示板に張り付けていた職員マリーも、怪訝に周囲を見回す。
「何?」
と言って外に出てみれば、コボちゃんを先頭にしたコボルド集団が、ものすごい勢いでこちらに走ってくるのが見えた。
「わしわしわしわし!」
「うぉううぉううぉううぉう!」
「キャンキャンキャンキャン!」
彼らの背後から、土煙が迫ってくる。
「え?」
目をこらしてみればそれは、地面をかき分けつつ驀進してくる巨大モグラ。
マリーは血相を変え、コボルド集団に怒鳴った。
「こっちに逃げて来るなー!」
リプレイ本文
コボちゃんハウスの入り口を覗き込み、首をかしげているのは天竜寺 詩(ka0396)。
「あれ~、コボちゃんいないのかな?」
久しぶりに会いにきたのに、ハウスの中はもぬけの殻。
「ジュアンさんやマリーさんなら、どこに行ったか知ってるかな」
ひとりごちたところ、ちょうど、バイクに乗ったアルマ・アニムス(ka4901)とゴースロンに乗ったミリア・コーネリウス(ka1287)が、仲良く通りがかった。
「あれ、詩さんじゃないですかー」
「久しぶりー。何やってんだ?」
詩はそちらに駆けて行き、早速事情説明を行う。
「――というわけで、コボちゃんがいないんだよね。アルマさんたち見かけなかった?」
アルマとミリアは顔を見合わせ、おもむろに首を振る。
「いやー、見てないなあ……だよね、アルマ」
「ええ、見ていませんねえ……1人でお散歩でしょうか。なら、そう遠くには行ってないと思うのですが……近所のワンちゃんに追いかけられたりしていませんかねえ」
もふもふの安否が気掛かりなアルマは、手を額に当てあたりをきょろきょろ。
ミリアは試しに呼んでみた。
「コボー、どこだー。おーい。そのへんにいるんなら返事しろー」
でも音沙汰なし。
詩はスタッフで、近くの植え込みをかき分けた。もしかしたらこういうゴチャゴチャした所に隠れているかもしれないと。
予想は半分当たった。潜んでいるものは確かにいた――ただしコボルドではない。人間、ニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)である。
「あっ……どうぞ私ごときものにはおかまいなきよう。他人様が使うべき酸素をいたずらに浪費するしか能のない屑虫など、ガン無視してくださいませ」
世の中色々な人がいるんだなあと思いつつ植え込みから離れる詩。
そこに月影 葵(ka6275)と玉兎 小夜(ka6009)がやってきた。
「皆さん、何をしていらっしゃるんですか?」
「誰か探してるなら、手伝ってあげよっかー?」
ちょうどいい、彼女たちにも捜査に手を貸してもらおうと口を開きかける詩。
その時かすかな地の震え、騒がしい鳴き声。緑の丘が連なる向こうから聞こえてくる。
詩は目をこらし、正体を見定めた。
……コボちゃんを先頭にしたコボルド集団が、土煙を上げ、真っすぐこちらに向け走ってくる。
「コボちゃんお友達が出来たのかな?」
呑気な感想の直後彼女は、土煙の中にいるものに気づく。それこそはモグラの怪物。口を大きく開け、鋭い門歯をがちがち言わせ、コボルドを取って食わんとする歪虚。
「って何アレ!?」
オフィスの扉が開いた。マリーが出てきた。
彼女は迫り来る危機を目の当たりに恐怖した。あんな大物が勢いに任せ突撃してきたら、こんな支所木っ端みじんに吹き飛ばされる。
「こっちに逃げてくるなー!」
ミリアは傍らにいるアルマに呼びかけた。
「よしアルマやる――」
しかし顔を向けた先にアルマの姿はなかった。コボルドが狙われているのを視認するなり、いの一番に飛び出していたのである。
ミリアは苦笑し言い直す。遠ざかる相手の背に向けて。
「アルマ、そっちは頼んだ!」
瞬きの間にコボルド集団の元へたどりついたアルマは、最前列にいたコボちゃんと最後尾にいたコボルドを捕まえ、モグラの鼻先から、横っ跳びに離脱する。
「わし!? わしわしわしわし!」
「うぉうぉううぉううぉう!?」
いきなりかっさらわれたコボルド2匹がじたばたするが、がっちり脇を締めて離さない。
追っていた音と匂いが、急に二手に分かれたので、戸惑うモグラ。
その迷いに拍車をかけたのは、小夜だ。
「おーい、わんこずー。こっちゃこーい」
彼女は、オフィスから離れたところで、コボルドたちの注意を引く。猛烈に足を踏み鳴らしながら。
「うーっ!」
ただの人ならともかくも、ハンターが地を蹴るのだ。音も振動も段違いである。
聴覚と触覚を撹乱されたモグラは、一旦アルマたちを追うことに決めた。そちらのほうが至近距離にいるので、音も匂いも捉えやすい。取りやすいものから取って食う。残りの分は後に食べる。野生の法則だ。
土煙を上げながら標的に食い下がるその姿が、ニャンゴの仄暗い瞳に映る。
「やはりもぐらさん級の美食家ともなれば、高級肉を好むのでしょう。私のようなゴミ虫の肉ではなく、コボルドさんたちの肉を狙う。それはとても正しく、まったくもって当然の行動動機だと思います」
彼女は特殊な性格上エンジンがかかるのに、ちょっと時間が入り用だ。しかし一旦やる気になったならば、後には引かない。
ウォーハンマーを握り締め、ゆらりと動き出す。
「ですがもぐらさんが掘る穴は、私が埋まるためのひとつだけあれば十分。他には必要のないものですので、ここらでご退場頂くことに致しましょう……」
●
詩は真っ先に、マリーとジュアンの安全対策に乗り出した。
「マリーさん、ジュアンさん、こっちへ!」
2人を呼び、ディヴァインウィルを展開する。
「これでもしオフィスが崩れても命に問題はない――はずだよ!」
「はずって何!?」
マリーの声を置き去りにし次に取るべき行動は、アルマへの支援。
コボルドたちを抱え跳び回る彼を目で追い、背後に迫るモグラ目がけ、ジャッジメントを放つ。
ギッ!
鋭い痺れに一瞬動きを止めるモグラ。その間に大きく距離を離すアルマ。一進一退の(意図的にだが)追いかけっこが続く。
その間小夜は、コボルドたちを呼び続ける。
「おーい、こっちおいでー!」
しかしコボルドたちは、人間がたくさん乱入して来たことで取り乱していた。せっかくモグラが離れたのに、右往左往している有り様。
葵はバイクを走らせ、キャンキャン吠えまわっているコボルドたちに急接近。宥める。
「あなたたち、落ち着きなさい。向こうです、向こう、ほら、呼んでいるでしょう、あちらに行けばいいのですよ」
言葉はよく分からないがら、彼女の物腰に信頼出来そうなものを感じるコボルドたち。やっと指さされた方向へ走って行く。
その前に葵は、彼らが持っていた骨を召し上げた。
「貴方たちを守るため、よろしいでしょうか?」
手にした鉄パイプを地面にぶつけつつ、片手で走行再開。モグラと併走するように。
その上で召し上げた骨をあたりに投げ散らかす。聴覚に続いて嗅覚もまた、混乱させるために。
「暗い中で餌を取るため目を必要としなかった分、他が鋭敏。そこを利用させて頂きます」
パイプが地面をえぐり、石にぶつかり、けたたましい音を立てる。
葵はつい顔をしかめる。
「……先に私の耳がおかしくなりそうな」
騒音が響いたのかモグラは、一旦体を地面の下に潜らせた。とはいえ進むに合わせて地の表面が隆起してくるので、位置はかなりバレバレだ。
アルマは、両脇でじたばたしているコボルドたちに話しかける。
「コボルドさん、あのモグラ歪虚、もふもふたべちゃうです?……たべられちゃうのはダメです。コボちゃん食べちゃうのはもっとダメですー……」
直近で土が吹き上がり、モグラがガバッと顔を出した。
詩がジャッジメントを放つ。噛み付き損ねた前歯がむなしく空を噛んだ。
コボちゃんたちは毛を膨らませ、悲鳴を上げる。
「わしいいいい!」
「キャンキャンキャンキャン!」
おのれ愛しきもふもふを怖がらせるとは許せん。
熱い怒りを胸にたぎらせたアルマは、ちらっと背後に目を向け、しれっと呟く。
「というわけで、処分しちゃいますね」
飛び出した勢いそのままでまた地面に潜るモグラ。
ミリアは斬魔刀を構え仁王立ちし、その接近を待ち受ける。
――モグラが射程範囲に入った刹那彼女は足を踏み込み、なぎ払いをかけた。一列目の前足についている嗅ぎ爪と刃がぶつかった。
爪が割れ、折れる。モグラは驚いて地に潜る。
爪を一対失ったせいで、先程より潜る速度が遅かった。そこをニャンゴが襲った。
「敵が一体であれば私レベルの屑虫でもギリなんとかなるかも知れません。ならないかも知れません」
言葉とは裏腹に攻撃は強烈だった。すでに半身を潜らせている相手の前足付け根当たりを、全力で殴りつける。
モグラは後足を蹴り上げ、土砂を舞い上がらせた。
舞い上がった土砂はニャンゴを埋める。
常に顔を覆っているのが幸いし、土が口から入るということはなかった。自力で土を押しのけ出てくる。
「どうやら屑虫があまりに屑過ぎるので土になることすら許されないようですね」
そうやって時間が稼がれている間にアルマは、コボルド2匹を、先に逃げた仲間の元へと運び終える。
詩は身振り手振りを交え、彼らを一カ所に集めた。
「皆、寄って固まって、固まって! 大丈夫、私達が守ってあげるからね!」
1匹残らず有効範囲に入れたところで、ディヴァインウィルを発動。
アルマはコボルドたちに言い聞かせる。
「絶対に出ちゃダメですよ。ここにいれば安全です」
小夜は地面を睨む。
――地面がもりもり動いた。
盛り上がりの延長線に当たる位置に、彼女は、巨大な斬魔刀を突き立てる。そして刺さった刃を土ごと一気に跳ね上げる。
「でりゃぁ!」
覆いがとられたせいで、モグラの半身がほぼ露出した。
太い首目がけ刃が迫る。
「ヴォーパルバニーが刻み刈り取らん!」
モグラは素早く後退した。刃は、尖った鼻先を切り飛ばすに止まる。
しかし小夜は攻撃の手を緩めない。
「穴掘りに関しても最強は兎! そのことをこのヴォーパルバニーが思い知らせてやる!」
先ほどと同じ要領で土を弾き飛ばし、穴の奥へ潜り込んでいこうとする。
中は暗い。外の光に慣れた目には、なかなか見通せない。
至近距離に生暖かい息。
ハッとすると同時に彼女は、全速力で穴から脱出した。斬魔刀を地に突き、棒高跳びの要領で跳ぶ。
下方から突き上げてきたモグラの歯が、軽くその足先に触れた。
ニャンゴはモグラの露出した頭部を、どかどか殴りつける。
モグラは再び地に潜る。
しばしの静けさ。
結界近くの地面が、ぼこりと盛り上がった。それは円を描くように、周囲をぐるぐる回り始める。
脅えて固まり、鼻を鳴らすコボルドたち。
アルマは、そんな彼らを安心させるよう優しく微笑み、頭をひと撫で。
「……大丈夫、すぐ片付けちゃいますからね!」
彼の手に光の剣がたち現れた。それが地面に突き立てられるや否や、大量の土砂が吹き飛ばされる。
土の覆いをはがれたモグラは、急に目の前に現れた敵に噛み付こうとしたが、あえなく弾き飛ばされる。雷を纏った光の壁を、思い切りぶち当てられて。
宙に舞う4メートルもの巨体。
じたばたしながら落ちて行く彼を待っていたのは、ミリアであった。
「よしっ、ホームラン……じゃなくて串刺しの刑!」
落下地点に、斬魔刀がそそり立つ。巨大な物体は鋭い刃に、なんなく貫かれた。
そしてミリアは田楽刺しとなったモグラの下敷きになる。
「ぐえ」
アルマが駆け寄り、モグラの体をどかせた。ミリアは土をはたきながら起き上がる。
「ミリア、大丈夫ですか?」
「ああ、だいじょぶだいじょぶ。見かけほど重くなかったから。もう気化し始めてるしね」
「そうですか、よかった」
安堵の息をついたアルマは、くるっと体を反転させる。目をきらきらさせ、両手を広げて。
「コボちゃん、お久しぶりですっ!」
急に呼びかけられたコボちゃんは警戒した。じりじりと後ずさる。彼にとってこのエルフは鬼門的存在なのである。
「僕、強くなったんですよ。見てくれま……なんで離れるんです? おーい?」
大きなモグラ山の後ろに隠れ、顔だけ出し窺うコボちゃん。
ミリアはその後ろから、抜き足差し足忍び寄り、捕獲。
「久しぶりだなコボおぼえてるか?」
いきなり抱き締められわしゃわしゃ撫でられ眉間に皺。
そこに詩も来て頭を撫でる。
「お友達を助けようとしたのかな? 偉いねコボちゃん」
ところでそのお友達、皆目に見えてガリガリ。毛の色艶も悪く、パサパサ。これは何か食わせてやらねばなるまい。
詩は自分の荷物から、ナッツ、干し肉、クッキー、チーズ、牛乳といった食料品を取り出す。
「んー……食べてないなら胃が弱ってるはずだから……」
コボちゃんハウスにある餌入れを持ってきて牛乳を注ぎ入れ、クッキーを入れ、ふやかす。
「さあ、みんなおいでー。ごはんだよー」
アルマもまた、自身が持ってきた食料品――蜂蜜、牛乳、バラエティランチを取り出した。
「おいでー、おいしいものがたくさんありますよ」
それに対し痩せコボルドたちは、顔を見合わせるばかり。山奥に住んでいたため、皆、そもそも人慣れしていないのだ。
「わし!」
そこでコボちゃんが率先し、詩たちのもとへ歩いて行く。
それに勇気を得た仲間たちも、食べ物求めて殺到する。
「落ち着いて落ち着いて、全員の分ちゃあんとあるから」
「喉に詰まるといけませんから、ゆっくり食べるんですよ」
ところでモグラが縦横無尽に掛け巡ったせいで、周辺の牧場は散々な有り様。至るところに盛り上がり、掘り返し、そして穴。被害はかなり広範囲まで及んでいる。
むろん、このままにしておくわけにはいかない。早いところ埋め戻しておかないと。雨が降れば水が溜まり土壌をなお侵食してしまう。牧場に飼われている羊や牛が穴に落ち込み、ケガをするかもしれない。
「ここはウサギの腕の見せ所だね」
言いながら、肩をぐるりと回す小夜。
コボルドたちが餌を食べているのを眺め、葵は、待機させておいたスターリングシルバーを抱き上げた。
「貴方も、皆さんの事お願いしますね――骨を見つけたら、取っておいてください。コボルドたちに戻してやらなければなりませんから」
ニャンゴは言う。
「ちゃかちゃか埋めて行きましょう。おっと、その前に、どこかでシャベルをお借りしなくては……しかし私ごときゴミに大切な労働用具を貸してくださる方がおられますかどうか」
●
夕暮れ。
きれいに整備された牧場の丘を、コボルドたちが去って行く。
「元気でねー」
詩は仲間、そしてマリー、ジュアンとともに、手を振る。
ニャンゴはまだ埋められてない穴にはまり、顔だけ出して見送る。
マリーは心底安堵している。
「よかった。あれにまで住み着かれたらどうしようかと、ひやひやしてたのよねー。コボルドなんて一匹でも多いくらいだから」
よく分かる、と頷く小夜と葵。
「コボルドの繁殖力は高いからねー」
「コボルド算という言葉もあるくらいですから」
コボちゃんは仲間の姿が見えなくなっても、まだ、尻尾を振っていた。
詩は、頭を撫でてやる。
「お友達帰っちゃって寂しい? でも私達もお友達だからね♪」
アルマも言う。
「どうですとも、僕たちがいますよ」
ミリアが、わしわしもしゃ毛をかき回す。
「そうそう、いつでも遊んでやるからな」
それに答えてコボちゃんは、元気よく一声吠えた。
「わし!」
「あれ~、コボちゃんいないのかな?」
久しぶりに会いにきたのに、ハウスの中はもぬけの殻。
「ジュアンさんやマリーさんなら、どこに行ったか知ってるかな」
ひとりごちたところ、ちょうど、バイクに乗ったアルマ・アニムス(ka4901)とゴースロンに乗ったミリア・コーネリウス(ka1287)が、仲良く通りがかった。
「あれ、詩さんじゃないですかー」
「久しぶりー。何やってんだ?」
詩はそちらに駆けて行き、早速事情説明を行う。
「――というわけで、コボちゃんがいないんだよね。アルマさんたち見かけなかった?」
アルマとミリアは顔を見合わせ、おもむろに首を振る。
「いやー、見てないなあ……だよね、アルマ」
「ええ、見ていませんねえ……1人でお散歩でしょうか。なら、そう遠くには行ってないと思うのですが……近所のワンちゃんに追いかけられたりしていませんかねえ」
もふもふの安否が気掛かりなアルマは、手を額に当てあたりをきょろきょろ。
ミリアは試しに呼んでみた。
「コボー、どこだー。おーい。そのへんにいるんなら返事しろー」
でも音沙汰なし。
詩はスタッフで、近くの植え込みをかき分けた。もしかしたらこういうゴチャゴチャした所に隠れているかもしれないと。
予想は半分当たった。潜んでいるものは確かにいた――ただしコボルドではない。人間、ニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)である。
「あっ……どうぞ私ごときものにはおかまいなきよう。他人様が使うべき酸素をいたずらに浪費するしか能のない屑虫など、ガン無視してくださいませ」
世の中色々な人がいるんだなあと思いつつ植え込みから離れる詩。
そこに月影 葵(ka6275)と玉兎 小夜(ka6009)がやってきた。
「皆さん、何をしていらっしゃるんですか?」
「誰か探してるなら、手伝ってあげよっかー?」
ちょうどいい、彼女たちにも捜査に手を貸してもらおうと口を開きかける詩。
その時かすかな地の震え、騒がしい鳴き声。緑の丘が連なる向こうから聞こえてくる。
詩は目をこらし、正体を見定めた。
……コボちゃんを先頭にしたコボルド集団が、土煙を上げ、真っすぐこちらに向け走ってくる。
「コボちゃんお友達が出来たのかな?」
呑気な感想の直後彼女は、土煙の中にいるものに気づく。それこそはモグラの怪物。口を大きく開け、鋭い門歯をがちがち言わせ、コボルドを取って食わんとする歪虚。
「って何アレ!?」
オフィスの扉が開いた。マリーが出てきた。
彼女は迫り来る危機を目の当たりに恐怖した。あんな大物が勢いに任せ突撃してきたら、こんな支所木っ端みじんに吹き飛ばされる。
「こっちに逃げてくるなー!」
ミリアは傍らにいるアルマに呼びかけた。
「よしアルマやる――」
しかし顔を向けた先にアルマの姿はなかった。コボルドが狙われているのを視認するなり、いの一番に飛び出していたのである。
ミリアは苦笑し言い直す。遠ざかる相手の背に向けて。
「アルマ、そっちは頼んだ!」
瞬きの間にコボルド集団の元へたどりついたアルマは、最前列にいたコボちゃんと最後尾にいたコボルドを捕まえ、モグラの鼻先から、横っ跳びに離脱する。
「わし!? わしわしわしわし!」
「うぉうぉううぉううぉう!?」
いきなりかっさらわれたコボルド2匹がじたばたするが、がっちり脇を締めて離さない。
追っていた音と匂いが、急に二手に分かれたので、戸惑うモグラ。
その迷いに拍車をかけたのは、小夜だ。
「おーい、わんこずー。こっちゃこーい」
彼女は、オフィスから離れたところで、コボルドたちの注意を引く。猛烈に足を踏み鳴らしながら。
「うーっ!」
ただの人ならともかくも、ハンターが地を蹴るのだ。音も振動も段違いである。
聴覚と触覚を撹乱されたモグラは、一旦アルマたちを追うことに決めた。そちらのほうが至近距離にいるので、音も匂いも捉えやすい。取りやすいものから取って食う。残りの分は後に食べる。野生の法則だ。
土煙を上げながら標的に食い下がるその姿が、ニャンゴの仄暗い瞳に映る。
「やはりもぐらさん級の美食家ともなれば、高級肉を好むのでしょう。私のようなゴミ虫の肉ではなく、コボルドさんたちの肉を狙う。それはとても正しく、まったくもって当然の行動動機だと思います」
彼女は特殊な性格上エンジンがかかるのに、ちょっと時間が入り用だ。しかし一旦やる気になったならば、後には引かない。
ウォーハンマーを握り締め、ゆらりと動き出す。
「ですがもぐらさんが掘る穴は、私が埋まるためのひとつだけあれば十分。他には必要のないものですので、ここらでご退場頂くことに致しましょう……」
●
詩は真っ先に、マリーとジュアンの安全対策に乗り出した。
「マリーさん、ジュアンさん、こっちへ!」
2人を呼び、ディヴァインウィルを展開する。
「これでもしオフィスが崩れても命に問題はない――はずだよ!」
「はずって何!?」
マリーの声を置き去りにし次に取るべき行動は、アルマへの支援。
コボルドたちを抱え跳び回る彼を目で追い、背後に迫るモグラ目がけ、ジャッジメントを放つ。
ギッ!
鋭い痺れに一瞬動きを止めるモグラ。その間に大きく距離を離すアルマ。一進一退の(意図的にだが)追いかけっこが続く。
その間小夜は、コボルドたちを呼び続ける。
「おーい、こっちおいでー!」
しかしコボルドたちは、人間がたくさん乱入して来たことで取り乱していた。せっかくモグラが離れたのに、右往左往している有り様。
葵はバイクを走らせ、キャンキャン吠えまわっているコボルドたちに急接近。宥める。
「あなたたち、落ち着きなさい。向こうです、向こう、ほら、呼んでいるでしょう、あちらに行けばいいのですよ」
言葉はよく分からないがら、彼女の物腰に信頼出来そうなものを感じるコボルドたち。やっと指さされた方向へ走って行く。
その前に葵は、彼らが持っていた骨を召し上げた。
「貴方たちを守るため、よろしいでしょうか?」
手にした鉄パイプを地面にぶつけつつ、片手で走行再開。モグラと併走するように。
その上で召し上げた骨をあたりに投げ散らかす。聴覚に続いて嗅覚もまた、混乱させるために。
「暗い中で餌を取るため目を必要としなかった分、他が鋭敏。そこを利用させて頂きます」
パイプが地面をえぐり、石にぶつかり、けたたましい音を立てる。
葵はつい顔をしかめる。
「……先に私の耳がおかしくなりそうな」
騒音が響いたのかモグラは、一旦体を地面の下に潜らせた。とはいえ進むに合わせて地の表面が隆起してくるので、位置はかなりバレバレだ。
アルマは、両脇でじたばたしているコボルドたちに話しかける。
「コボルドさん、あのモグラ歪虚、もふもふたべちゃうです?……たべられちゃうのはダメです。コボちゃん食べちゃうのはもっとダメですー……」
直近で土が吹き上がり、モグラがガバッと顔を出した。
詩がジャッジメントを放つ。噛み付き損ねた前歯がむなしく空を噛んだ。
コボちゃんたちは毛を膨らませ、悲鳴を上げる。
「わしいいいい!」
「キャンキャンキャンキャン!」
おのれ愛しきもふもふを怖がらせるとは許せん。
熱い怒りを胸にたぎらせたアルマは、ちらっと背後に目を向け、しれっと呟く。
「というわけで、処分しちゃいますね」
飛び出した勢いそのままでまた地面に潜るモグラ。
ミリアは斬魔刀を構え仁王立ちし、その接近を待ち受ける。
――モグラが射程範囲に入った刹那彼女は足を踏み込み、なぎ払いをかけた。一列目の前足についている嗅ぎ爪と刃がぶつかった。
爪が割れ、折れる。モグラは驚いて地に潜る。
爪を一対失ったせいで、先程より潜る速度が遅かった。そこをニャンゴが襲った。
「敵が一体であれば私レベルの屑虫でもギリなんとかなるかも知れません。ならないかも知れません」
言葉とは裏腹に攻撃は強烈だった。すでに半身を潜らせている相手の前足付け根当たりを、全力で殴りつける。
モグラは後足を蹴り上げ、土砂を舞い上がらせた。
舞い上がった土砂はニャンゴを埋める。
常に顔を覆っているのが幸いし、土が口から入るということはなかった。自力で土を押しのけ出てくる。
「どうやら屑虫があまりに屑過ぎるので土になることすら許されないようですね」
そうやって時間が稼がれている間にアルマは、コボルド2匹を、先に逃げた仲間の元へと運び終える。
詩は身振り手振りを交え、彼らを一カ所に集めた。
「皆、寄って固まって、固まって! 大丈夫、私達が守ってあげるからね!」
1匹残らず有効範囲に入れたところで、ディヴァインウィルを発動。
アルマはコボルドたちに言い聞かせる。
「絶対に出ちゃダメですよ。ここにいれば安全です」
小夜は地面を睨む。
――地面がもりもり動いた。
盛り上がりの延長線に当たる位置に、彼女は、巨大な斬魔刀を突き立てる。そして刺さった刃を土ごと一気に跳ね上げる。
「でりゃぁ!」
覆いがとられたせいで、モグラの半身がほぼ露出した。
太い首目がけ刃が迫る。
「ヴォーパルバニーが刻み刈り取らん!」
モグラは素早く後退した。刃は、尖った鼻先を切り飛ばすに止まる。
しかし小夜は攻撃の手を緩めない。
「穴掘りに関しても最強は兎! そのことをこのヴォーパルバニーが思い知らせてやる!」
先ほどと同じ要領で土を弾き飛ばし、穴の奥へ潜り込んでいこうとする。
中は暗い。外の光に慣れた目には、なかなか見通せない。
至近距離に生暖かい息。
ハッとすると同時に彼女は、全速力で穴から脱出した。斬魔刀を地に突き、棒高跳びの要領で跳ぶ。
下方から突き上げてきたモグラの歯が、軽くその足先に触れた。
ニャンゴはモグラの露出した頭部を、どかどか殴りつける。
モグラは再び地に潜る。
しばしの静けさ。
結界近くの地面が、ぼこりと盛り上がった。それは円を描くように、周囲をぐるぐる回り始める。
脅えて固まり、鼻を鳴らすコボルドたち。
アルマは、そんな彼らを安心させるよう優しく微笑み、頭をひと撫で。
「……大丈夫、すぐ片付けちゃいますからね!」
彼の手に光の剣がたち現れた。それが地面に突き立てられるや否や、大量の土砂が吹き飛ばされる。
土の覆いをはがれたモグラは、急に目の前に現れた敵に噛み付こうとしたが、あえなく弾き飛ばされる。雷を纏った光の壁を、思い切りぶち当てられて。
宙に舞う4メートルもの巨体。
じたばたしながら落ちて行く彼を待っていたのは、ミリアであった。
「よしっ、ホームラン……じゃなくて串刺しの刑!」
落下地点に、斬魔刀がそそり立つ。巨大な物体は鋭い刃に、なんなく貫かれた。
そしてミリアは田楽刺しとなったモグラの下敷きになる。
「ぐえ」
アルマが駆け寄り、モグラの体をどかせた。ミリアは土をはたきながら起き上がる。
「ミリア、大丈夫ですか?」
「ああ、だいじょぶだいじょぶ。見かけほど重くなかったから。もう気化し始めてるしね」
「そうですか、よかった」
安堵の息をついたアルマは、くるっと体を反転させる。目をきらきらさせ、両手を広げて。
「コボちゃん、お久しぶりですっ!」
急に呼びかけられたコボちゃんは警戒した。じりじりと後ずさる。彼にとってこのエルフは鬼門的存在なのである。
「僕、強くなったんですよ。見てくれま……なんで離れるんです? おーい?」
大きなモグラ山の後ろに隠れ、顔だけ出し窺うコボちゃん。
ミリアはその後ろから、抜き足差し足忍び寄り、捕獲。
「久しぶりだなコボおぼえてるか?」
いきなり抱き締められわしゃわしゃ撫でられ眉間に皺。
そこに詩も来て頭を撫でる。
「お友達を助けようとしたのかな? 偉いねコボちゃん」
ところでそのお友達、皆目に見えてガリガリ。毛の色艶も悪く、パサパサ。これは何か食わせてやらねばなるまい。
詩は自分の荷物から、ナッツ、干し肉、クッキー、チーズ、牛乳といった食料品を取り出す。
「んー……食べてないなら胃が弱ってるはずだから……」
コボちゃんハウスにある餌入れを持ってきて牛乳を注ぎ入れ、クッキーを入れ、ふやかす。
「さあ、みんなおいでー。ごはんだよー」
アルマもまた、自身が持ってきた食料品――蜂蜜、牛乳、バラエティランチを取り出した。
「おいでー、おいしいものがたくさんありますよ」
それに対し痩せコボルドたちは、顔を見合わせるばかり。山奥に住んでいたため、皆、そもそも人慣れしていないのだ。
「わし!」
そこでコボちゃんが率先し、詩たちのもとへ歩いて行く。
それに勇気を得た仲間たちも、食べ物求めて殺到する。
「落ち着いて落ち着いて、全員の分ちゃあんとあるから」
「喉に詰まるといけませんから、ゆっくり食べるんですよ」
ところでモグラが縦横無尽に掛け巡ったせいで、周辺の牧場は散々な有り様。至るところに盛り上がり、掘り返し、そして穴。被害はかなり広範囲まで及んでいる。
むろん、このままにしておくわけにはいかない。早いところ埋め戻しておかないと。雨が降れば水が溜まり土壌をなお侵食してしまう。牧場に飼われている羊や牛が穴に落ち込み、ケガをするかもしれない。
「ここはウサギの腕の見せ所だね」
言いながら、肩をぐるりと回す小夜。
コボルドたちが餌を食べているのを眺め、葵は、待機させておいたスターリングシルバーを抱き上げた。
「貴方も、皆さんの事お願いしますね――骨を見つけたら、取っておいてください。コボルドたちに戻してやらなければなりませんから」
ニャンゴは言う。
「ちゃかちゃか埋めて行きましょう。おっと、その前に、どこかでシャベルをお借りしなくては……しかし私ごときゴミに大切な労働用具を貸してくださる方がおられますかどうか」
●
夕暮れ。
きれいに整備された牧場の丘を、コボルドたちが去って行く。
「元気でねー」
詩は仲間、そしてマリー、ジュアンとともに、手を振る。
ニャンゴはまだ埋められてない穴にはまり、顔だけ出して見送る。
マリーは心底安堵している。
「よかった。あれにまで住み着かれたらどうしようかと、ひやひやしてたのよねー。コボルドなんて一匹でも多いくらいだから」
よく分かる、と頷く小夜と葵。
「コボルドの繁殖力は高いからねー」
「コボルド算という言葉もあるくらいですから」
コボちゃんは仲間の姿が見えなくなっても、まだ、尻尾を振っていた。
詩は、頭を撫でてやる。
「お友達帰っちゃって寂しい? でも私達もお友達だからね♪」
アルマも言う。
「どうですとも、僕たちがいますよ」
ミリアが、わしわしもしゃ毛をかき回す。
「そうそう、いつでも遊んでやるからな」
それに答えてコボちゃんは、元気よく一声吠えた。
「わし!」
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/01 12:47:57 |
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相談卓だよ 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/05/05 13:38:23 |