ゲスト
(ka0000)
【龍奏】温泉奪還作戦
マスター:朝臣あむ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/02 22:00
- 完成日
- 2016/05/10 03:15
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
リグ・サンガマ北部にある『星の傷跡』へ向かう途中に、正のマテリアルが染み出す温泉がある。
浸かる者を癒しへと導くその温泉には人やエルフは勿論、青龍の眷属ですら身を委ねると言う。
「BOSS……これ、ミーたちが浸かっても大丈夫デスか?」
そう剣豪ナイトハルトに声をかけて温泉を覗き込むのは、アチコチにつぎはぎを見せる紫電の刀鬼(kz0136)だ。
先の戦いでの負傷が癒えない彼は、前にオルクス(kz0097)と剣王様が話していたのを聞いてこの地へやって来た。
「浸かればわかる。と奴は言っていたが、その前にこれを渡しておこう」
「What?」
手渡されたのは小さな箱だ。
そこにはハートマーク付きでメッセージが添えられているのだが、何となく見覚えがあるような……
「『大事に使ってね♪ 剣豪のだけど(はーと)』って、ボスの裁縫道具じゃないデスかー!!」
道理で見覚えがあるはずだ。
この箱の正体はオルクスや剣王の壊した物の修繕で剣豪が使っている裁縫道具(接着剤入り)で間違いない。と言うか、人の物を本人経由で借りて貸し出すのは大丈夫なのか?!
しかし当の剣豪は全く気にしていないようで、
「礼なら奴に言うんだな……まあ、言えるかどうかはわからんが」
ガスガスと刀鬼の頭を叩きながら言い聞かせてくる始末。
「……言えるかわからないって、何かあったデスか? ン~……わかりマシタ、Princessには後でお礼を言うデス……」
刀鬼はガックリ肩を落としながら鉱石の岩場に腰を下ろすと、箱の中に入った糸通過済みの針を取り出した。そうして再生の足りていない着物を取り繕い始めたのだが、説明するまでもなくとっても地味な作業だ。
「フンフン、フフ~ン♪ と~っても静かな場所デ~ス♪ ハハ~ン♪ Hey Boss~ヒマじゃないデ~スか~?」
チクチクと針を動かしながら鼻歌交じりに問いかける。
実は今回のこの訪問は刀鬼の療養が目的だったりする。一応、ハンターの動向を見守るという意味合いもあるのだが、傷を癒したいというのが彼の正直なところだ。
そんな折にオルクスが話していたのを思い出し出かけようとしたのだが、その直前剣豪に捕まった。しかも「ヒマだし我も鎧が壊れたからついていく」との申し出付きで、だ。
ヒマならオルクスに言えば何かしらの任務が貰えるだろうに……とは思ったが、きっとこの脳筋の場合は無理だとの結論に至り動向を容認した。
刀鬼は返事のない剣豪に首を傾げると、彼の姿を見るべく横を向いた――
「って、ナニしてるデスか?! BODYは大丈夫デスか?!?! って……ん?」
まさかのまさか。肩まで湯船に浸かる剣豪に驚いて手を伸ばした刀鬼はハッとした。
温泉の正のマテリアルが減っている。どうやら剣豪が身を浸したことでマテリアルが吸収されて効能が弱まったと考えられる。
しかも当の剣豪はとても気持ち良さそうに手足を伸ばして寛ぎモードだ。
「……Oh! 良いお湯デ~ス♪」
恐る恐る足を突っ込んでホッ肩の力が抜ける。
全身に血はないけど血が巡る感じがするし、しかも破れた着物やヘルメットにまでマテリアルが流れ込む感覚までする。
「これはGoodなお湯デス~♪ 生き返るデ~ス♪」
そう言いながらヘルメットまでお湯に浸かった刀鬼は、体の傷を癒すべく温泉に身を委ねた。
●温泉奪還作戦
刀鬼と剣豪が温泉を不当占拠して暫く、『星の傷跡』を目指していた一団から拠点であるキャンプに連絡が入った。
「どういう事なんだ。歪虚が温泉に浸かるなど聞いたことがないぞ……」
「なんだか鼻歌も歌って気持ち良さそうだったと……どうしましょう、戦闘になる気配はないようですがこのままだと温泉に流れ出ているマテリアル成分が全てなくなるという可能性もありますし……排除を依頼しますか?」
「依頼するにも相手が巨大すぎる……」
「でも、放っておくのもどうかと……」
「温泉の1つや2つくれてやれ!!」
この前代未聞の状態に連絡を受けた本部は混乱の一歩手前だ。
ある者は戸惑いにおろおろと歩き回り、ある者は頭を抱えて唸るばかり。そんな様子を遠くから見つめる人物がいた。
「大丈夫なのか、ここは……」
首に刑期メーターのついた首輪を着ける男は、呆れたように眉を潜めながら現在の状況を把握すべく辺りを見回した。
先遣隊の情報を収集すると言っても即席のキャンプに十分な設備はない。
それどころか冷静に物事を判断できる人物も欠けていると見える。
「人材の補給は時間と共に成されるだろうが……情けない話だな」
青龍の試練を乗り切った人類とは思えない不甲斐なさだが、そこは敢えて目を瞑ろう。
「そこのアンタ。帝国第十師団師団長に会いたいんだが、どこに行けば会える?」
「は? 第十師団師団長って……その首輪……あんたも第十師団の兵士か」
僅かに距離を置いて舐めるように見てくる兵士に肩を竦める。
それでもこの反応はマシな方だ。場所によっては声をかけても返事はおろか視線すら寄越されないこともある。
「……俺は第十師団師団長を連れ戻すよう副師団長より言いつかって来た第十師団雑用係所属マイラーだ。師団長と会わせてもらえればそれ良いんだが……必要であればこちらの人員を貸すぞ? 温泉奪還するんだろ?」
マイラーはそう言うと、混乱する一部の人間を顎で指した。
浸かる者を癒しへと導くその温泉には人やエルフは勿論、青龍の眷属ですら身を委ねると言う。
「BOSS……これ、ミーたちが浸かっても大丈夫デスか?」
そう剣豪ナイトハルトに声をかけて温泉を覗き込むのは、アチコチにつぎはぎを見せる紫電の刀鬼(kz0136)だ。
先の戦いでの負傷が癒えない彼は、前にオルクス(kz0097)と剣王様が話していたのを聞いてこの地へやって来た。
「浸かればわかる。と奴は言っていたが、その前にこれを渡しておこう」
「What?」
手渡されたのは小さな箱だ。
そこにはハートマーク付きでメッセージが添えられているのだが、何となく見覚えがあるような……
「『大事に使ってね♪ 剣豪のだけど(はーと)』って、ボスの裁縫道具じゃないデスかー!!」
道理で見覚えがあるはずだ。
この箱の正体はオルクスや剣王の壊した物の修繕で剣豪が使っている裁縫道具(接着剤入り)で間違いない。と言うか、人の物を本人経由で借りて貸し出すのは大丈夫なのか?!
しかし当の剣豪は全く気にしていないようで、
「礼なら奴に言うんだな……まあ、言えるかどうかはわからんが」
ガスガスと刀鬼の頭を叩きながら言い聞かせてくる始末。
「……言えるかわからないって、何かあったデスか? ン~……わかりマシタ、Princessには後でお礼を言うデス……」
刀鬼はガックリ肩を落としながら鉱石の岩場に腰を下ろすと、箱の中に入った糸通過済みの針を取り出した。そうして再生の足りていない着物を取り繕い始めたのだが、説明するまでもなくとっても地味な作業だ。
「フンフン、フフ~ン♪ と~っても静かな場所デ~ス♪ ハハ~ン♪ Hey Boss~ヒマじゃないデ~スか~?」
チクチクと針を動かしながら鼻歌交じりに問いかける。
実は今回のこの訪問は刀鬼の療養が目的だったりする。一応、ハンターの動向を見守るという意味合いもあるのだが、傷を癒したいというのが彼の正直なところだ。
そんな折にオルクスが話していたのを思い出し出かけようとしたのだが、その直前剣豪に捕まった。しかも「ヒマだし我も鎧が壊れたからついていく」との申し出付きで、だ。
ヒマならオルクスに言えば何かしらの任務が貰えるだろうに……とは思ったが、きっとこの脳筋の場合は無理だとの結論に至り動向を容認した。
刀鬼は返事のない剣豪に首を傾げると、彼の姿を見るべく横を向いた――
「って、ナニしてるデスか?! BODYは大丈夫デスか?!?! って……ん?」
まさかのまさか。肩まで湯船に浸かる剣豪に驚いて手を伸ばした刀鬼はハッとした。
温泉の正のマテリアルが減っている。どうやら剣豪が身を浸したことでマテリアルが吸収されて効能が弱まったと考えられる。
しかも当の剣豪はとても気持ち良さそうに手足を伸ばして寛ぎモードだ。
「……Oh! 良いお湯デ~ス♪」
恐る恐る足を突っ込んでホッ肩の力が抜ける。
全身に血はないけど血が巡る感じがするし、しかも破れた着物やヘルメットにまでマテリアルが流れ込む感覚までする。
「これはGoodなお湯デス~♪ 生き返るデ~ス♪」
そう言いながらヘルメットまでお湯に浸かった刀鬼は、体の傷を癒すべく温泉に身を委ねた。
●温泉奪還作戦
刀鬼と剣豪が温泉を不当占拠して暫く、『星の傷跡』を目指していた一団から拠点であるキャンプに連絡が入った。
「どういう事なんだ。歪虚が温泉に浸かるなど聞いたことがないぞ……」
「なんだか鼻歌も歌って気持ち良さそうだったと……どうしましょう、戦闘になる気配はないようですがこのままだと温泉に流れ出ているマテリアル成分が全てなくなるという可能性もありますし……排除を依頼しますか?」
「依頼するにも相手が巨大すぎる……」
「でも、放っておくのもどうかと……」
「温泉の1つや2つくれてやれ!!」
この前代未聞の状態に連絡を受けた本部は混乱の一歩手前だ。
ある者は戸惑いにおろおろと歩き回り、ある者は頭を抱えて唸るばかり。そんな様子を遠くから見つめる人物がいた。
「大丈夫なのか、ここは……」
首に刑期メーターのついた首輪を着ける男は、呆れたように眉を潜めながら現在の状況を把握すべく辺りを見回した。
先遣隊の情報を収集すると言っても即席のキャンプに十分な設備はない。
それどころか冷静に物事を判断できる人物も欠けていると見える。
「人材の補給は時間と共に成されるだろうが……情けない話だな」
青龍の試練を乗り切った人類とは思えない不甲斐なさだが、そこは敢えて目を瞑ろう。
「そこのアンタ。帝国第十師団師団長に会いたいんだが、どこに行けば会える?」
「は? 第十師団師団長って……その首輪……あんたも第十師団の兵士か」
僅かに距離を置いて舐めるように見てくる兵士に肩を竦める。
それでもこの反応はマシな方だ。場所によっては声をかけても返事はおろか視線すら寄越されないこともある。
「……俺は第十師団師団長を連れ戻すよう副師団長より言いつかって来た第十師団雑用係所属マイラーだ。師団長と会わせてもらえればそれ良いんだが……必要であればこちらの人員を貸すぞ? 温泉奪還するんだろ?」
マイラーはそう言うと、混乱する一部の人間を顎で指した。
リプレイ本文
「ふんふん~ふふ~ん♪」
良く響く鼻歌でのんびり温泉に浸かる歪虚2体。それを囲む鉱石の陰から見つめる影はハンターたちのものだ。
「ありゃーホントに二人してのんびり満喫しちゃってますね。羨ましぃー」
「だよね! 本当だよね!! ずるい!! ミィリアも温泉入りたい……!!」
そう零すのは温泉の湯気と香りに目を細めた葛音 水月(ka1895)と、温泉を囲う鉱石の淵を掴んで悔しがるミィリア(ka2689)だ。
「温泉につかって……暖まりながらあー癒されるーって熱燗とか! ぷはーってしたい!!」
「え、熱燗? あれ? それってお酒――むぐぐっ!?」
「ふっふっふー、絶対に取り返してやるでござる……」
余計ないことを言いだしそうな水月の口を手で塞ぎ、悪そうな笑いを浮かべるミィリアである。
そんな彼女の傍では、若干呆れた表情で温泉を見るヒース・R・ウォーカー(ka0145)の姿があった。
「温泉に浸かる歪虚、ねぇ……剣豪と刀鬼ならあり得ると納得しているボクも大分毒されている気がするなぁ……」
で、本当に入ってるしねぇ……。と目を遠くして首筋をひと掻き。
その上で同行している第十師団の兵に目を向けると、やれやれと肩を竦めて改めて温泉を見た。
「なんというか……ひたすら傍迷惑な話だ。そもそも温泉に衣服着用で入るなど言語道断。温泉のマナーを教えてやらねばなるまい」
「だよな! 温泉にはタオルも浸けたらダメなんだぜ!」
神妙に頷くレイア・アローネ(ka4082)に同意するように身を乗り出したリュー・グランフェスト(ka2419)。
2人は温泉に入るうえでのマナーについて語り合うと、ウズウズと乗り出したい気持ちを抑えながら仲間を振り返った。
この視線に気付いた文月 弥勒(ka0300)がマイラーと名乗った囚人兵を見る。
「まだ不満そう……いや、不安そう、か?」
「書や耳で聞いた歪虚は話の通じない相手が多かったからな。あんたたちの提案に不安がないわけじゃない」
「仲間内で問題を起こすより、忠実にこなす方がそっちにとってもいいだろ?」
「さて? 俺は別に問題が起きても良いけど、他の兵がダメかもな。まあ何もしない奴らより動く奴の方がこの場合は強い。好きにやると良いさ」
マイラーはそう言うと静観の様子を見せて腕を組んだ。その様子と刑期メーターがついた首輪を見た弥勒は「任せとけよ」と軽く言って温泉に向き直った。
歪虚2体は未だに温泉に酔った様子で寛いでいる。
この姿を見る限りなら戦闘も必要ない気はするが、そこはそれ、これはこれ。
「俺は別に温泉ぐらい一緒に入ればいいじゃん、とは思う。光と闇が合わさり最強のマテリアルが生まれるかもしれねえし……でもま、依頼なら仕方ないけどな」
そう、これは依頼だ。温泉を歪虚から取り戻すという何とも言い難い依頼である。
「それじゃ、予定通り交渉と行きましょう。みなさん準備は良いですか?」
水月の穏やかな声と笑顔。これに良い子の返事をした一行は、かくして歪虚との交渉に入るのだった。
●温泉交渉!
「てめえらぁ!! 言いたい事は山ほどあるがまず一つだけだ! 風呂に鎧ではいるんじゃねえ!」
指を突き付け、鉱石の上に仁王立ちしたリューはそう叫ぶと母親のオーラを乗り移らせたような勢いでまくし立てた。
「どう入るも個人の自由? ふざけんな! こいつは文化だ! 文化には歴史があり決まりがある。何より美学がある! それも守れずして温泉なんかはいるんじゃねえ! 身一つで入れねえんならでてけ!」
大音量で響くお説教に刀鬼と剣豪は驚いたようにそちらを見ている。
とりあえず今のところは戦闘の様子はない。それどころか2体とも毒気を抜かれたように首を傾げている。
「身一つで、と言われてもデスね……」
「言わんとしている事はわかる。わかるが、気持ち悪いぞ?」
「気持ち悪い?」
何がだよ! そう叫ぼうとしたリューの肩を叩いて押し留めた水月が言う。
「ていうか先遣隊が見付けてから今までって長風呂過ぎませんか? もう僕たちと変わって欲しーですねー」
「うんうん、変わってほしいよね! それにすっごい単刀直入に言うと、ミィリアも入りたいけど混浴とか勘弁願いたいところだしでそろそろあがって欲しいなーって」
切ない乙女(?)心である。その言葉に刀鬼のヘルメットがぷか~っと浮いて、クルッと彼女の方を向いた。
「清らかGirl? って、Youデスか……」
「そこー! 舌打ちしないっ!! っていうか、刀鬼さんには代わりにその服? 直してあげてもいいし他に出来ることが在ればするから~っ」
なんなら今の舌打ちも忘れてあげる! とミィリアは温泉に入りたくてなんでもするレベルまでうずうずが高まっている。
このままいくと自前の純米大吟醸も差し出さん勢いだが、そんな彼女に視線を泳がせてヒースがそっと肩を叩いた。
「うん、まあ、落ち着いて交渉しよう。とりあえず……湯治を愉しんでいる所悪いけど、話がしたい。温泉の所有権をかけてひと勝負しないかい? 双方にとって公平な試合をねぇ」
「ぬ、試合?」
「たまには殺し合い以外の戦いをするのも一興。そう思わなかい?」
ハンターへの依頼は温泉を破壊せず、いかにして安全にこの地を取り戻すかが鍵になる。
それに対して彼らが考え出したのは「三本勝負」で負けた方がこの地を去る、と言うものだ。
正直、他の歪虚であればこの交渉は決裂していただろう。だがここにいるのは脳筋歪虚2体、しかもどちらも純粋に力へ固執しているバカだ。つまりこの交渉、「勝負」とか「試合」とか言う言葉が出てきた時点で成立していた。
「ルールは簡単だ。ハンター2名対歪虚1名で3戦して、2勝した方が温泉独占。1戦目は刀鬼で2戦目は剣豪……3戦目は歪虚側で決めるって感じでどうかだい? 試合内容はスキル無しで相手の胴体、心臓位置に一撃当てた方が勝ちってね?」
「心臓位置ってのは背面もありなんだろ?」
勿論。そう弥勒の問いに頷くヒースを見て剣豪が「ふむ」とお湯の中で立ち上がった。
「Boss?」
「刀鬼、風呂が壊れる。移動するぞ」
ずんずんお湯から出てくる剣豪に、周囲から「おお!」と言う歓声が上がる。
本来であればここから場所移動までも交渉に含まれていたのだが、歪虚にとっても温泉が壊れるのは嫌と見える。と言うか、純粋に闘い辛いから移動した可能性もあるのだが……。
「面白い歪虚だ。滅多にない機会でもある。私の腕がどこまで通じるのか試させてもらう」
レイアはそう言うと不敵な笑みを浮かべて風呂から出る刀鬼と剣豪を見た。
●刀鬼VS水月&ミィリア
「一撃当てた方がっていう条件だし、さっさと温泉に戻る為にも速攻突っ込んでくるんじゃないかな」
そう言葉を発したミィリアは、共に闘う水月を見る。彼の武器は巨大なパイルバンカー。
小柄な体がすっぽり隠れるその姿を見るに、速さで刀鬼と戦うには厳しさが伺える。とは言えミィリアの言うように刀鬼は確実に突っ込んでくる。何故なら彼は脳筋歪虚だから!
「速すぎて見てから動くんじゃ間に合わない、だから自分の予想を信じてイチかバチか……」
「つまりこちらも突っ込む、と言う事ですね」
神妙な面持ちで頷いた水月は、刀鬼に矛先を向けると彼に聞こえるよう叫んだ。
「姿とその話しは知ってるけど戦うのははじめてですね。これでもストライダー、葛音水月です。いきますよーっ!」
ユニット装備でありながらそれを持って駆ける彼の姿に刀鬼から口笛が漏れる。
「んん~♪ 口上はイマイチデスが名乗りは気に入ったデース♪ ミーは紫電の刀鬼――Please be nice to me♪」
「――来る」
背中の機械刀に手を伸ばした刀鬼にミィリアも飛び出す。
その姿に楽しそうに地面を蹴った刀鬼は瞬間移動を使わず駆け出した。
「速い!」
「こっこだぁッ!」
相手の速度と走りの軌道。そこから弾き出して予想した一点に向かって刀を振り抜く!
「!」
「ブッブ~はずれデース♪」
風を切る音が響き、鉱石の光が遮られる。直後、刀に感じた僅かな重みに視線が上がった。
ミィリアの薙いだ刃の上に立つ刀鬼。表情は見えないが明らかに楽しんでいる様子だけは伺える。しかし余裕を持っていられるのはココまでだった。
「話に聞く通り、無茶苦茶な人ですね!」
余裕を遮る巨大な杭に刀鬼の着物が避けた。そして回避のために飛び上がった瞬間をミィリアは見逃さない。
「当たれええええ!!」
逃げる動きを追って振り入れた刃が刀鬼の胴を掠め――
「勝負あった!」
「ノォォオオオオッ! ミーの着物がァアアアッ!!!」
更に切れた着物にヘルメットを抱える刀鬼。そんな彼を横目に、ミィリアと水月は勝利を喜ぶべくお互いの手を握り合わせた。
●剣豪VSリュー&レイア
「うわさに聞くその実力、見せて貰いたい」
眩い黄金色の刀身を見せながら構えたレイア。その隣には同じ小隊に所属している修行仲間のリューの姿もある。
彼は幾度か剣豪と戦い、彼の実力を認めているという。その口振りから察するにそれ以上の感情もあるように思えるが、その辺は本人に確認していない。
2人は頷き合うと、同時に地面を蹴った。
「狙うは短期決戦だ。いけるか?」
「おう! いつも通り気合い入れて頼むぜ!」
刀身に浮かんだ魔法陣。それを握るように柄を掴む手に力を入れると、リューはレイアの動きを視界に剣豪の間合いに入るべく飛び出した。
「まずはこれだぁッ!」
姑息な手段なしで正面から打ち込む彼に剣豪の腕が振り上げられる――直後、凄まじい衝撃音と共にリューの体が吹き飛ばされた。
だが危機一髪。攻撃を刀身で受け止め体へのダメージはなしだ。
「化け物だな。だが……!」
リューは再び剣豪に挑み刃を振るう。そんな彼から僅かに距離を置き、レイアは攻撃の機会を伺う。
そしてリューと剣豪が攻撃を交えるその瞬間を見て駆け出した。
「一か八か――」
軸足はいつでも動けるように踵を浮かせ、刃は薙ぎ切るように滑らせる。そうしていつでも回避可能な攻撃を見舞ったのだがこれが負と動く。
「レイア!」
レイアの相手を試すような剣が剣豪の拳によって叩き落される。
鈍い音を反響させながら地面に落ちる剣。それを残念そうに唸りながら見送る剣豪は勝敗を決めるべく足を振り上げた。
「勝負あり!」
剣豪の蹴りがレイアと近付いたリューの両方の胴を薙ぎ払う。
その衝撃はかなりなもので鉱石に叩きつけられる形となった2人は、唸るようにしてその場に蹲った。
●???VSヒース&弥勒
「1勝1敗か……3戦目確定だな。で、どっちが戦うんだ?」
「亡霊型同士、合体してくれても面白いんだけどねぇ」
闘う気満々で拳を叩く弥勒と、不敵に2体の歪虚を見るヒース。その姿を見つつ前に出ようとした剣豪を刀鬼が止めた。
「BossはNoデ~ス」
「何故だ」
「Boss本気出すと全部Killしちゃうデス。それは今回よくないデス」
「手加減できるぞ……たぶん」
「この場合、その方がNoデス……」
しかも「たぶん」って何だ。さっきだってかなりの勢いでレイアとリューを蹴っていた。
まだ途中で終わったようなものだから2人とも無事だったが、これで剣豪に火が付いたら折角の勝負が台無しだ。
「ま、どっちが相手でも良いよ。宵闇の雨、ヒース・R・ウォーカー。踊るとしようかぁ」
前に出た刀鬼にステップを踏み始めたヒース。それに機械刀を向けた刀鬼が先手を取る。
「噂の瞬間移動なしでこの速さかッ」
1戦目の時より速くなった速度に弥勒の背に汗が落ちる。しかし休んでいる暇はない。
顎で側面を示した弥勒にヒースが駆ける。それに呼応して弥勒も走り出すと2人は刀鬼を挟み撃ち形で間合いを詰めに掛かった。
「2人とも速いデ~ス。But~ミーには敵いませ……ワォ!?」
「歪虚でも驚くんだな?」
クッと笑った弥勒が刀鬼の腕を掴む。
正面から突っ込んできた彼に刀鬼は大剣での攻撃を予想した。しかし実際に弥勒が取ったのは大剣を捨てての体術だ。
瞬時に伸びる腕に咄嗟に武器を構え直したもののこれが良くなかった。
奪われた腕は機械刀を持つ方。つまり彼の攻撃はこれで塞がれたと言う事になる。
「さて、こっから如何する。歪虚さんよぉ!!」
腕を外側に引っ張り、背に刀鬼を背負わんとする。勿論刀鬼はそれに反抗して彼の体を持ち上げようと挑むのだが、彼はもう1人の存在を失念していた。
「背中がガラ空きだねぇ」
背後から聞こえた声に振り返ろうとするが弥勒が邪魔をして動けない。
それを見越して槍を引くと、ヒースは刀鬼の背に切っ先を添え、冷たく刺すような声で「チェックメイト」と囁いた。
●奪還温泉!
「策を巡らせ武を振るう。どちらも全力でやった結果がこれなら、それを受け入れるだけさぁ」
そう意味深な視線を向けるヒース。そんな彼を見た後で恨めしそうな視線を送った剣豪を無視して、刀鬼は帰還の準備を始めていた。
勝負はハンター側の勝利。各人勝利に酔うべく動き始めている。
まずはこの人、温泉に異様なまでの執着を持っていたミィリアだ。
「おっ風呂~♪ 熱燗でぷは~っと痺れる一杯~♪」
「あぁ、ミィリアさんここで脱いだらダメですよ!」
脱ぐ気満々で服に手を掛けたミィリアを制し、彼女を鉱石の陰に連れて行こうとしているのは水月だ。
彼も温泉に入りたいのか、しきりにお湯の方を見ている。
そしてそんな彼女たちの傍はリューとレイアが剣豪に向かって話し掛けていた。
「今回は裏技みたいなもんだし勝ってもノーカンだ! 次こそは勝つ!」
「ああ、そうだな! そもそもお前たちの敗因の原因は3つあると考える。1つは鎧着たまま温泉に浸かり、鎧が錆び付いた事、2つ目は衣服が湯を吸って重くなった事、そして3つ目は温泉に浸かった事で筋肉がほぐれ弛緩し、緊張状態が解けた事だ!」
全部違う気がするが剣豪はかなり真面目に聞いている。そんな彼に人差し指を突き付けるとレイアは言い切った。
「これに懲りて武装したままの入浴は慎むがよい!」
「成程。武装を外しての入浴か……構わないが、そうなると皮膚を剥がすような物だが……良いのか?」
「脱皮か!!」
似て非なるものだが、レイアも剣豪も満足そうなので良しとしよう。
そして彼らの近くで温泉の泉質を確認していた弥勒はお湯に触れていた手を上げて、持参していた水筒を取り出した。
「……水質の変化はなさそうだ。色も問題ないが味は……この辺りの温泉が分からないと判断が難しいな」
持ち帰って調べるか。そう零して水筒にお湯を詰める。
こうして剣豪と刀鬼との勝負は終わった。
彼らは最初の約束を守って帰還。ハンターたちは勝利のご褒美に奪い取った温泉を時間が許す限り楽しんだとか……。
良く響く鼻歌でのんびり温泉に浸かる歪虚2体。それを囲む鉱石の陰から見つめる影はハンターたちのものだ。
「ありゃーホントに二人してのんびり満喫しちゃってますね。羨ましぃー」
「だよね! 本当だよね!! ずるい!! ミィリアも温泉入りたい……!!」
そう零すのは温泉の湯気と香りに目を細めた葛音 水月(ka1895)と、温泉を囲う鉱石の淵を掴んで悔しがるミィリア(ka2689)だ。
「温泉につかって……暖まりながらあー癒されるーって熱燗とか! ぷはーってしたい!!」
「え、熱燗? あれ? それってお酒――むぐぐっ!?」
「ふっふっふー、絶対に取り返してやるでござる……」
余計ないことを言いだしそうな水月の口を手で塞ぎ、悪そうな笑いを浮かべるミィリアである。
そんな彼女の傍では、若干呆れた表情で温泉を見るヒース・R・ウォーカー(ka0145)の姿があった。
「温泉に浸かる歪虚、ねぇ……剣豪と刀鬼ならあり得ると納得しているボクも大分毒されている気がするなぁ……」
で、本当に入ってるしねぇ……。と目を遠くして首筋をひと掻き。
その上で同行している第十師団の兵に目を向けると、やれやれと肩を竦めて改めて温泉を見た。
「なんというか……ひたすら傍迷惑な話だ。そもそも温泉に衣服着用で入るなど言語道断。温泉のマナーを教えてやらねばなるまい」
「だよな! 温泉にはタオルも浸けたらダメなんだぜ!」
神妙に頷くレイア・アローネ(ka4082)に同意するように身を乗り出したリュー・グランフェスト(ka2419)。
2人は温泉に入るうえでのマナーについて語り合うと、ウズウズと乗り出したい気持ちを抑えながら仲間を振り返った。
この視線に気付いた文月 弥勒(ka0300)がマイラーと名乗った囚人兵を見る。
「まだ不満そう……いや、不安そう、か?」
「書や耳で聞いた歪虚は話の通じない相手が多かったからな。あんたたちの提案に不安がないわけじゃない」
「仲間内で問題を起こすより、忠実にこなす方がそっちにとってもいいだろ?」
「さて? 俺は別に問題が起きても良いけど、他の兵がダメかもな。まあ何もしない奴らより動く奴の方がこの場合は強い。好きにやると良いさ」
マイラーはそう言うと静観の様子を見せて腕を組んだ。その様子と刑期メーターがついた首輪を見た弥勒は「任せとけよ」と軽く言って温泉に向き直った。
歪虚2体は未だに温泉に酔った様子で寛いでいる。
この姿を見る限りなら戦闘も必要ない気はするが、そこはそれ、これはこれ。
「俺は別に温泉ぐらい一緒に入ればいいじゃん、とは思う。光と闇が合わさり最強のマテリアルが生まれるかもしれねえし……でもま、依頼なら仕方ないけどな」
そう、これは依頼だ。温泉を歪虚から取り戻すという何とも言い難い依頼である。
「それじゃ、予定通り交渉と行きましょう。みなさん準備は良いですか?」
水月の穏やかな声と笑顔。これに良い子の返事をした一行は、かくして歪虚との交渉に入るのだった。
●温泉交渉!
「てめえらぁ!! 言いたい事は山ほどあるがまず一つだけだ! 風呂に鎧ではいるんじゃねえ!」
指を突き付け、鉱石の上に仁王立ちしたリューはそう叫ぶと母親のオーラを乗り移らせたような勢いでまくし立てた。
「どう入るも個人の自由? ふざけんな! こいつは文化だ! 文化には歴史があり決まりがある。何より美学がある! それも守れずして温泉なんかはいるんじゃねえ! 身一つで入れねえんならでてけ!」
大音量で響くお説教に刀鬼と剣豪は驚いたようにそちらを見ている。
とりあえず今のところは戦闘の様子はない。それどころか2体とも毒気を抜かれたように首を傾げている。
「身一つで、と言われてもデスね……」
「言わんとしている事はわかる。わかるが、気持ち悪いぞ?」
「気持ち悪い?」
何がだよ! そう叫ぼうとしたリューの肩を叩いて押し留めた水月が言う。
「ていうか先遣隊が見付けてから今までって長風呂過ぎませんか? もう僕たちと変わって欲しーですねー」
「うんうん、変わってほしいよね! それにすっごい単刀直入に言うと、ミィリアも入りたいけど混浴とか勘弁願いたいところだしでそろそろあがって欲しいなーって」
切ない乙女(?)心である。その言葉に刀鬼のヘルメットがぷか~っと浮いて、クルッと彼女の方を向いた。
「清らかGirl? って、Youデスか……」
「そこー! 舌打ちしないっ!! っていうか、刀鬼さんには代わりにその服? 直してあげてもいいし他に出来ることが在ればするから~っ」
なんなら今の舌打ちも忘れてあげる! とミィリアは温泉に入りたくてなんでもするレベルまでうずうずが高まっている。
このままいくと自前の純米大吟醸も差し出さん勢いだが、そんな彼女に視線を泳がせてヒースがそっと肩を叩いた。
「うん、まあ、落ち着いて交渉しよう。とりあえず……湯治を愉しんでいる所悪いけど、話がしたい。温泉の所有権をかけてひと勝負しないかい? 双方にとって公平な試合をねぇ」
「ぬ、試合?」
「たまには殺し合い以外の戦いをするのも一興。そう思わなかい?」
ハンターへの依頼は温泉を破壊せず、いかにして安全にこの地を取り戻すかが鍵になる。
それに対して彼らが考え出したのは「三本勝負」で負けた方がこの地を去る、と言うものだ。
正直、他の歪虚であればこの交渉は決裂していただろう。だがここにいるのは脳筋歪虚2体、しかもどちらも純粋に力へ固執しているバカだ。つまりこの交渉、「勝負」とか「試合」とか言う言葉が出てきた時点で成立していた。
「ルールは簡単だ。ハンター2名対歪虚1名で3戦して、2勝した方が温泉独占。1戦目は刀鬼で2戦目は剣豪……3戦目は歪虚側で決めるって感じでどうかだい? 試合内容はスキル無しで相手の胴体、心臓位置に一撃当てた方が勝ちってね?」
「心臓位置ってのは背面もありなんだろ?」
勿論。そう弥勒の問いに頷くヒースを見て剣豪が「ふむ」とお湯の中で立ち上がった。
「Boss?」
「刀鬼、風呂が壊れる。移動するぞ」
ずんずんお湯から出てくる剣豪に、周囲から「おお!」と言う歓声が上がる。
本来であればここから場所移動までも交渉に含まれていたのだが、歪虚にとっても温泉が壊れるのは嫌と見える。と言うか、純粋に闘い辛いから移動した可能性もあるのだが……。
「面白い歪虚だ。滅多にない機会でもある。私の腕がどこまで通じるのか試させてもらう」
レイアはそう言うと不敵な笑みを浮かべて風呂から出る刀鬼と剣豪を見た。
●刀鬼VS水月&ミィリア
「一撃当てた方がっていう条件だし、さっさと温泉に戻る為にも速攻突っ込んでくるんじゃないかな」
そう言葉を発したミィリアは、共に闘う水月を見る。彼の武器は巨大なパイルバンカー。
小柄な体がすっぽり隠れるその姿を見るに、速さで刀鬼と戦うには厳しさが伺える。とは言えミィリアの言うように刀鬼は確実に突っ込んでくる。何故なら彼は脳筋歪虚だから!
「速すぎて見てから動くんじゃ間に合わない、だから自分の予想を信じてイチかバチか……」
「つまりこちらも突っ込む、と言う事ですね」
神妙な面持ちで頷いた水月は、刀鬼に矛先を向けると彼に聞こえるよう叫んだ。
「姿とその話しは知ってるけど戦うのははじめてですね。これでもストライダー、葛音水月です。いきますよーっ!」
ユニット装備でありながらそれを持って駆ける彼の姿に刀鬼から口笛が漏れる。
「んん~♪ 口上はイマイチデスが名乗りは気に入ったデース♪ ミーは紫電の刀鬼――Please be nice to me♪」
「――来る」
背中の機械刀に手を伸ばした刀鬼にミィリアも飛び出す。
その姿に楽しそうに地面を蹴った刀鬼は瞬間移動を使わず駆け出した。
「速い!」
「こっこだぁッ!」
相手の速度と走りの軌道。そこから弾き出して予想した一点に向かって刀を振り抜く!
「!」
「ブッブ~はずれデース♪」
風を切る音が響き、鉱石の光が遮られる。直後、刀に感じた僅かな重みに視線が上がった。
ミィリアの薙いだ刃の上に立つ刀鬼。表情は見えないが明らかに楽しんでいる様子だけは伺える。しかし余裕を持っていられるのはココまでだった。
「話に聞く通り、無茶苦茶な人ですね!」
余裕を遮る巨大な杭に刀鬼の着物が避けた。そして回避のために飛び上がった瞬間をミィリアは見逃さない。
「当たれええええ!!」
逃げる動きを追って振り入れた刃が刀鬼の胴を掠め――
「勝負あった!」
「ノォォオオオオッ! ミーの着物がァアアアッ!!!」
更に切れた着物にヘルメットを抱える刀鬼。そんな彼を横目に、ミィリアと水月は勝利を喜ぶべくお互いの手を握り合わせた。
●剣豪VSリュー&レイア
「うわさに聞くその実力、見せて貰いたい」
眩い黄金色の刀身を見せながら構えたレイア。その隣には同じ小隊に所属している修行仲間のリューの姿もある。
彼は幾度か剣豪と戦い、彼の実力を認めているという。その口振りから察するにそれ以上の感情もあるように思えるが、その辺は本人に確認していない。
2人は頷き合うと、同時に地面を蹴った。
「狙うは短期決戦だ。いけるか?」
「おう! いつも通り気合い入れて頼むぜ!」
刀身に浮かんだ魔法陣。それを握るように柄を掴む手に力を入れると、リューはレイアの動きを視界に剣豪の間合いに入るべく飛び出した。
「まずはこれだぁッ!」
姑息な手段なしで正面から打ち込む彼に剣豪の腕が振り上げられる――直後、凄まじい衝撃音と共にリューの体が吹き飛ばされた。
だが危機一髪。攻撃を刀身で受け止め体へのダメージはなしだ。
「化け物だな。だが……!」
リューは再び剣豪に挑み刃を振るう。そんな彼から僅かに距離を置き、レイアは攻撃の機会を伺う。
そしてリューと剣豪が攻撃を交えるその瞬間を見て駆け出した。
「一か八か――」
軸足はいつでも動けるように踵を浮かせ、刃は薙ぎ切るように滑らせる。そうしていつでも回避可能な攻撃を見舞ったのだがこれが負と動く。
「レイア!」
レイアの相手を試すような剣が剣豪の拳によって叩き落される。
鈍い音を反響させながら地面に落ちる剣。それを残念そうに唸りながら見送る剣豪は勝敗を決めるべく足を振り上げた。
「勝負あり!」
剣豪の蹴りがレイアと近付いたリューの両方の胴を薙ぎ払う。
その衝撃はかなりなもので鉱石に叩きつけられる形となった2人は、唸るようにしてその場に蹲った。
●???VSヒース&弥勒
「1勝1敗か……3戦目確定だな。で、どっちが戦うんだ?」
「亡霊型同士、合体してくれても面白いんだけどねぇ」
闘う気満々で拳を叩く弥勒と、不敵に2体の歪虚を見るヒース。その姿を見つつ前に出ようとした剣豪を刀鬼が止めた。
「BossはNoデ~ス」
「何故だ」
「Boss本気出すと全部Killしちゃうデス。それは今回よくないデス」
「手加減できるぞ……たぶん」
「この場合、その方がNoデス……」
しかも「たぶん」って何だ。さっきだってかなりの勢いでレイアとリューを蹴っていた。
まだ途中で終わったようなものだから2人とも無事だったが、これで剣豪に火が付いたら折角の勝負が台無しだ。
「ま、どっちが相手でも良いよ。宵闇の雨、ヒース・R・ウォーカー。踊るとしようかぁ」
前に出た刀鬼にステップを踏み始めたヒース。それに機械刀を向けた刀鬼が先手を取る。
「噂の瞬間移動なしでこの速さかッ」
1戦目の時より速くなった速度に弥勒の背に汗が落ちる。しかし休んでいる暇はない。
顎で側面を示した弥勒にヒースが駆ける。それに呼応して弥勒も走り出すと2人は刀鬼を挟み撃ち形で間合いを詰めに掛かった。
「2人とも速いデ~ス。But~ミーには敵いませ……ワォ!?」
「歪虚でも驚くんだな?」
クッと笑った弥勒が刀鬼の腕を掴む。
正面から突っ込んできた彼に刀鬼は大剣での攻撃を予想した。しかし実際に弥勒が取ったのは大剣を捨てての体術だ。
瞬時に伸びる腕に咄嗟に武器を構え直したもののこれが良くなかった。
奪われた腕は機械刀を持つ方。つまり彼の攻撃はこれで塞がれたと言う事になる。
「さて、こっから如何する。歪虚さんよぉ!!」
腕を外側に引っ張り、背に刀鬼を背負わんとする。勿論刀鬼はそれに反抗して彼の体を持ち上げようと挑むのだが、彼はもう1人の存在を失念していた。
「背中がガラ空きだねぇ」
背後から聞こえた声に振り返ろうとするが弥勒が邪魔をして動けない。
それを見越して槍を引くと、ヒースは刀鬼の背に切っ先を添え、冷たく刺すような声で「チェックメイト」と囁いた。
●奪還温泉!
「策を巡らせ武を振るう。どちらも全力でやった結果がこれなら、それを受け入れるだけさぁ」
そう意味深な視線を向けるヒース。そんな彼を見た後で恨めしそうな視線を送った剣豪を無視して、刀鬼は帰還の準備を始めていた。
勝負はハンター側の勝利。各人勝利に酔うべく動き始めている。
まずはこの人、温泉に異様なまでの執着を持っていたミィリアだ。
「おっ風呂~♪ 熱燗でぷは~っと痺れる一杯~♪」
「あぁ、ミィリアさんここで脱いだらダメですよ!」
脱ぐ気満々で服に手を掛けたミィリアを制し、彼女を鉱石の陰に連れて行こうとしているのは水月だ。
彼も温泉に入りたいのか、しきりにお湯の方を見ている。
そしてそんな彼女たちの傍はリューとレイアが剣豪に向かって話し掛けていた。
「今回は裏技みたいなもんだし勝ってもノーカンだ! 次こそは勝つ!」
「ああ、そうだな! そもそもお前たちの敗因の原因は3つあると考える。1つは鎧着たまま温泉に浸かり、鎧が錆び付いた事、2つ目は衣服が湯を吸って重くなった事、そして3つ目は温泉に浸かった事で筋肉がほぐれ弛緩し、緊張状態が解けた事だ!」
全部違う気がするが剣豪はかなり真面目に聞いている。そんな彼に人差し指を突き付けるとレイアは言い切った。
「これに懲りて武装したままの入浴は慎むがよい!」
「成程。武装を外しての入浴か……構わないが、そうなると皮膚を剥がすような物だが……良いのか?」
「脱皮か!!」
似て非なるものだが、レイアも剣豪も満足そうなので良しとしよう。
そして彼らの近くで温泉の泉質を確認していた弥勒はお湯に触れていた手を上げて、持参していた水筒を取り出した。
「……水質の変化はなさそうだ。色も問題ないが味は……この辺りの温泉が分からないと判断が難しいな」
持ち帰って調べるか。そう零して水筒にお湯を詰める。
こうして剣豪と刀鬼との勝負は終わった。
彼らは最初の約束を守って帰還。ハンターたちは勝利のご褒美に奪い取った温泉を時間が許す限り楽しんだとか……。
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温泉奪還作戦!! ミィリア(ka2689) ドワーフ|12才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/05/02 19:42:24 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/04/28 02:22:58 |