【刻令】シーソー・ゲーム

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/05/07 09:00
完成日
2016/05/11 19:42

このシナリオは1日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●王国北部のある場所
 世の中には碌でもない人間がいるようで、例えば、この数人の男のように、街道を行く人を襲っては荷物を奪う山賊もいる。
 もっとも、命までは奪ったりはしなかった。亜人や歪虚で危険な王国北部で、護衛無しの旅人や行商に『押し掛け護衛』をやっていた。
 代金と荷物を頂いていたわけだが、昨年からの茨小鬼の動乱ですっかり『お客さん』は減ってしまったのだ。
「た、大変だ! 頭ぁ! こっちに兵士らが向かってくる!」
 慌てた様子で見張りがアジトに駆け込んできた。
 一斉に立ち上がる山賊ら。その表情は焦りが見える。
「に、逃げるぞ! 森の奥へ!」
「で、でも、頭! これ以上奥に行ったら、谷に追い込まれちまう!」
「今すぐ殺されてぇなら残ってろ!」
 山賊らはアジトから出て森の奥に向かって逃げ出す。
 それを偶然にも発見した兵士達からは矢を放つ。放物線を描いて飛来する矢が木々や地面に突き刺さる。
「にげろー!」
 必死に逃げる山賊。
 それを追いかける兵士達。
 普段なら、山林に慣れた彼らの方が逃げ足が早いだろう。だが、積み重なった疲労が身体を蝕んでいて、思う様に進まない。
「お、おたすけをー」
 一人の山賊が観念して両膝を地につけ、両手を上げた。
「手こずらせやがって! 死ねや!」
 追いついた兵士が問答無用で山賊を無慈悲に切り付けた。
 口から血泡を吹き出しながら命乞いする山賊を何度も斬りつける。
「うわぁぁぁ!」
 あまりの恐怖に別の山賊は腰を抜かした。
 その時、矢が飛来して運悪くその山賊に直撃した。
「お、おまえら、逃げるんだ!」
 頭の悲痛な声が、山賊の悲鳴の中、響いた。

―――

 追撃は執拗だった。
 いつの間に崖の上に着いてしまった。見降ろすと、底が見えない程深い。
「だ、大峡谷か……」
 頭は部下数人と崖下を見下ろす。とてもじゃないが、降りられるという事はないだろう。
 兵士達の声が聞こえる。もはや、逃げ場はない。かと言って、戦うにも武器を捨てて逃げてきたので、無防備だ。
「追い詰めたぞ! 賊どもめ!」
「ま、まて! 降参する。俺達は人を殺めるような事はしてねぇ」
「知るか! お前らのせいで、余計な仕事をこっちはやってるんだ! さっさと死ね!」
 無情なまでの兵士の言葉。矢を番える多数の兵士達。
 頭は部下を庇うように前に出た。自分でも不思議だった。ただ、守りたい一心だった。
(こいつらは行き先もなく身寄りもない奴らだった。俺にとって、大事な……)
 覚悟を決めて目をギュッと閉じる。
 だが……いつまで立っても矢が飛来する事は無かった。
 恐る恐る目を開けると、そこには、白銀の翼を広げ、幾何学模様が美しい角を持つ歪虚の背中があった。
「騒ぎがあると思ったら、また、このパターンか。貴様ら人間共は同族で争う事が好きなのか。まったく、無駄な事を」
 歪虚がそう言った。
 一方、兵士達は恐慌に陥っている。歪虚が突然現れたら驚くのも無理はない。
「う、撃てー!」
 一斉に放たれる矢。だが、歪虚は気にした様子なく、炎を操ると、一閃した。
 それだけでなぎ倒されていく兵士達。残りは悲鳴を上げて逃げて行く。
「さて、人間共。貴様らはどうする?」
 歪虚が不気味な表情で山賊らに呼び掛けた。

―――

「つまり、貴様らが人間の法を守れないクズだという事は分かった」
 山賊が山賊たる話しを聞き歪虚は冷たく言い放つ。
 傲慢――アイテルカイト――から見れば、上の決めた事に刃向かうとは、命知らずとしか思えない。
「まぁいい。私は寛容だからな。貴様らの行いなど知った事ではない」
「よ、よかった……」
 安堵する山賊達。
「だが、せっかくだ。貴様らの未来を占ってみるか」
 歪虚はいつの間にか三日月を思わすような湾曲した刀を持ちだした。
「この刀は未来を映し出す東方の妖刀だ。貴様らの未来を見るといい」
 その言葉に従うように山賊達は刀に魅入る。いや、正確に言うと、湾曲した刀の内側に広がる映像に釘つけになる。
 どこかの街の映像……絞首台……そして……。
「あ、あ、あ、あ、あ、お、お、俺達じゃないか!」
 山賊達は驚く。
 映像の中に自分達の姿が。いずれも縄で縛られている。そして、絞首台に上がっていく。
 そして……。
 という所で映像は途切れた。静まりかえる山賊達。
「……さて、私はこれで去る。さらばだ、人間共」
 歪虚が立ち去ろうとした所で山賊の頭が声をあげた。
「待て! お、俺達をどうもしないのか?」
「可笑しな事を言う。どうもなにも貴様らの未来はああの通りだ。ここで殺す必要もないだろう」
「俺達は、あんな死に方は嫌だ! 頼む! 助けてくれ!」
 山賊達は頭に続いて頷く者、頭にしがみ付く者と色々だ。
「……いいだろう。だが、私と行くという事は死と同義だ。それでもいいのか?」
 その言葉に山賊達はお互い顔を見合わせた。
 同じ飯を喰らい、身を寄せ合い、笑い合った仲。覚悟を決めた山賊らは頭を真ん中に整列した。
「一度死んだ命。この先死んだ命。なら、俺達は地獄でもどこまでも行く」
「7人……そうだな。七本槍と貴様らを名付けよう。リアルブルーで活躍した7人の武将になぞらえてな」

●騎士団本部のある一室
 『軍師騎士』ノセヤが頭を悩ませている。
 とある貴族経由で回ってきた地図の事だ。大峡谷の一部分……という話しらしいが……。
「どう考えても、ブラフですよね……かと言って、無視する訳にも行きませんし」
 結果の報告をしなければならないだろう。適当に流す事は難しい。
 なにしろ、刻令術式外輪船の建造に必要な資金を援助している貴族の一人なのだから。
「……罠があると思うと、貴重な調査要員を送るわけにはいかない……と、なると……」
 ノセヤの脳裏に過ったのは、困った時の頼りになる彼らだった。
 適当な紙に依頼内容をサラサラと書き込む。
「こちらだって馬鹿じゃありませんからね。必ず、尻尾を掴ませて貰いますよ」
 そう呟きながら、彼はハンターオフィスに提出する依頼書を書き上げたのであった。

リプレイ本文

●荒地
 ふと見上げた空に、一瞬、流れ星が見えた気がした小鳥遊 時雨(ka4921)は複雑な心境を表に出さないようにしているつもりだった。
 フレッサ領主とネル・ベルの繋がりを明かさないといけないが、王国はテスカ教団の事で騒がしい時を迎えていた。色々と複雑な情勢。ここは依頼主である軍師騎士に任して、今は探索に集中したいところ。
「時雨さん?」
 ディーナ・フェルミ(ka5843)の何度か目の呼び掛けにようやく時雨は気がついた。
「あ……ご、ごめん! 考え事していたら、テンション上がっちゃってさ!」
「……そうだったのですか。元気が無いかと思ったのですのー」
 彼女の心境の揺らぎに、ディーナは敢えて気がつかない振りをした。
 今は探索依頼の最中だ。
 適当な石を大真面目でひっくり返し続けるディーナ。
 次に薮の下や木のうろを覗いている。
「物を隠せそうな場所、気になったら覗いてるの」
 見渡す限りの荒地。荒野と言った方がイメージがつきやすいかもしれない。
「こういう場所の方が雑魔が出そうな気がするの……?」
「ビンゴみたい」
 サッと矢を番える時雨。
 岩のような形状の雑魔が獲物を見つけた事を喜ぶように動きだした。
 小さな悲鳴をあげてディーナは十字架に見える金槌を構える。
 だが、戦闘状態はあっけなく終わった。雑魔が近づく前に時雨を撃ち倒したからだ。
「……今、気がつきましたが、私達以外の人の足跡もあるようなの?」
 複数の足跡に気がついたディーナが顔を上げて時雨に伝える。
 彼女は、雑魔が消滅した所で、なにかを拾っていた。

●湖
「あからさまに怪しくても、地図に×印が描かれていると調べなくては気が済まない、それが冒険家の性だもん!」
 ドーンと湖の傍の大岩の上に立ち、時音 ざくろ(ka1250)が力説していた。
 例の怪しい地図は罠の可能性もあり、周囲の警戒も怠らない。
「ここなら、何者かが×を描いた理由、それも探れるだろうし」
 ザッと見渡した所、手掛かりになりそうな所は無いようだ。
「お宝探し……だと、いいわね」
 同行しているアルラウネ(ka4841)の声が背後から聞こえた。
 ただ、宝の地図を見て、現地に行って、お宝がありましたというのでは、なんだか楽しくなさそうだと心の中で思う。
「向こうに人影が見えるわ」
 アルラウネが指差した方角を確認するざくろ。
 確かに、人影が二つばかり見える。
「もし、地図を渡した相手の意図が、ざくろ達に何かをさせて、その上前をはねる事だとしたら、見張られてる事もあるかな」
 遠すぎて判別がつかないが、確実に言えるのは、仲間のハンター達ではないという事だ。
 もっとじっくり見ようと思い、体勢を整えようとして、さぐろは逆に足を滑らせて豪快に岩から落ちる。
「わぁ!」
 言うほど高くない岩ではあったが、ちょうど、落ちた先にアルラウネが居たのは幸か不幸か。二人はもつれるように浅い湖に転がった。
 アルラウネの柔らかい頂きにおもいっきり手をつくざくろ。
「水も滴るイイ女……ってね。でも、ざくろん、まだ昼間よ?」
「ち、違うの! こ、これは!」
 ざくろが顔を真っ赤にして否定したのであった。

●森
 森の中は思ったより移動が困難だった。先を進む瀬織 怜皇(ka0684)は振り返る。
「キララ、こっちのようです、よ」
 森の中は倒木や窪みがあり、おもった以上に段差があった。しっかりと足場を確保してから、怜皇は手を差し伸ばす。
 その手に掴まる星輝 Amhran(ka0724)。
「レオや、スマヌ。こういう時に限ってのぅ……」
 苦笑を浮かべる星輝。別の依頼で重体となってしまい、こういう場所を行くのも難儀していた。怜皇が要所要所で支えてくれるので、なんとか森の中を進んでいる。
 なるべく、怜皇から離れてしまわないように気をつけながら、周囲を注視した。
「……やはり、居るのぉ」
 距離はまだ離れているが、星輝は雑魔を発見した。
 木の形をした雑魔は二人に向かって迫ってくる。今、戦闘状態になれば、覚醒できない星輝は危険である。
「キララには手を触れさせません!」
 素早い身のこなしで星輝の前に立つ怜皇。
 機導術を操り、マテリアルの光を飛ばして迎撃する。
「……妙じゃの……」
 怜皇の攻撃により、木の形をした雑魔は消滅し、その様を眺めて星輝は呟く。
 マテリアル異常で雑魔が出現する事はある。だが、なにか引っ掛かるのだ。周囲の状況は大自然の中であり、負のマテリアルを感じさせない。
「大した事はないみたいでした」
「そのようじゃの。あそこに見える人影以外は、の」
 星輝が指差した方角に人影が見えた。
 だが、距離はあるようでちゃんと確認はできないうちに人影は消え去った。

●小屋
 山小屋のような建物は確かに地図の通り、存在した。
 そこへやってきたUisca Amhran(ka0754)は旅の巫女を装いながら、薪割りをしている猟師風の男に話しかけた。
「ここって猟師さんの小屋です?」
 怪しそうな視線を向けて来た猟師に、敵意がない事を示すように馬から降りたUiscaが笑顔で両手を広げた。
「私、旅の巫女なので治癒にも長けています。猟師さん、顔色が悪い様ですが、少し見て差し上げましょうか?」
「もともと、顔色が悪いだけだ。俺は近くの村の猟師で特に問題はない」
 ぶっきらぼうな返事が聞こえてきた。小屋から視線を感じ、チラリと見ると、小屋の中にも一人、男の姿が確認できた。
 猟師からは負のマテリアルは感じない。だが、猟師の言っている言葉には疑問を抱いてしまう。
 というのも、ここから一番近い村でも、かなりの距離は離れているし、なにより、猟師という割りには身につけているブーツや装備が可笑しい。
「俺は猟の準備で忙しい。どっか行け」
 それだけ言って猟師と名乗った人物は小屋の中へと入って行ってしまった。
 しっかりとした革鎧に防御力の高い厚手のブーツを履いた『猟師』は、一体、なにを狩るのか興味が沸くがUiscaは追及せずに、馬に乗った。
 去り行く最中、小屋からの視線を背中に感じながら。

●音鐘の影
「水着は準備してきたのっ。泳ぐの苦手じゃないけど、防御力が低いのが不安なの……」
 湖を眺めながらディーナは言った。
 だが、残念ながら泳ぐにしては浅すぎる気もしないでもない。ゆっくりと湖の水に触れる。
「魚もいなくて苔もないなら、水質が普通でないことを疑うけど……」
「普通の湖ね。冷たいけど、凍っているとかそういう事はないわ」
 ディーナの疑問にびしょびしょになったアルラウネが答えた。
 時折、小魚の群れが見えたり、藻のような水草が湖の底で揺らめいているので、至って普通の湖なのは間違いなさそうである。
「湖の栓……という事もなさそうだったよ」
 丸い磨かれた石をざくろは両手に抱えていた。
 なんでも湖に現れたサボテン状の雑魔を倒した付近で見つけたと言う。×印の場所は湖の中央を差していた。その付近まで進んだ際に、突如、水の中から現れたのだ。ざくろとアルラウネの二人があっという間に退治してしまったが。
「……まだ何か気になります」
 考えながら怜皇は全員を見渡して言った。
 ここは地図に×印があった場所だ。このまま、なにも無いというのも信じられない。
「聖火の氷が高純度のマテリアルの塊なら、マテリアル異常で自然発生した雑魔?」
 ざくろが持つ丸い石を撫で撫でしながら時雨がそんな疑問を口にした。
「後は、歪虚が生み出した……という可能性もあり得そうですね」
 Uiscaは応えながら、なにかと縁のある歪虚を思い出した。
 あの歪虚であれば、雑魔を出現させる事も可能なはずだ。そうであれば、湖にサボテン状の雑魔がいた理由もつく。
「この湖自体が罠ということなの?」
 不安からかギュッと金槌を握るディーナ。
 思わず周囲を見渡してなにか潜んでいないか警戒してしまう。足元は湖で滑る所もある。戦闘になれば身動きに気をつける必要があるだろう。
「罠かどうかは分からないけど、人影は居たわね。もっと近くにいたら色仕掛けしたのに」
「だ、ダメだよ。どんな相手かも分からないのに、アルラ」
「ふふふ。冗談よ」
 アルラウネとざくろのリア充的な会話に怜皇がハッとしてUiscaに視線を向けた。
「イスカ、俺とキララも森の中で人影を見たよ」
「私は小屋に行きましたが、態度の悪そうな猟師さんがいらっしゃいましたね」
 ハンター達の探索はほど同時刻だった。となると、複数の人物が、この一帯に居たと言う事になる。
 星輝はわざとらしく咳払いをすると、ざくろが登ったという大岩に寄り掛かり、地図を広げた。
「この地図……偽情報の追加や写し等による隠蔽や改竄などザラにあるじゃろう……皆、見えている情報を鵜呑みにはするでないぞ?」
「……人影も、なにかの意図があった……いや、もしかして、張られていた?」
 真剣な表情で考えるざくろの言葉に星輝は頷いた。
「この裏に居るのは、十中八九、例の角折じゃ。そして、奴の狡い策略なのじゃからのぅ?」
「となると、イケメンさんの狙いが気になりますね」
 人差し指を口元に当て、Uiscaが言った所で、ディーナが遠慮がちに言葉を発する。
「その……誰……なのかな? 角折さん?」
「あぁ、そういえば、ディーナは知らないよね。私も知っているという程じゃないけど……」
 時雨が角折の歪虚――ネル・ベル――の説明を始めた。
 まったくもってマイナーな歪虚である。十三魔ぐらい有名になってくれれば説明も不要なのに。
「……知らない……そうか、ネル・ベルの目的は!」
「レオも気がつたようじゃな」
 ニヤリと星輝は笑った。
「この地図を解かせるという事は確実に斥候を此方に放っておる。地図を軍師騎士の手元に渡るようにしたのは『軍師騎士の手駒を確認する為』じゃろう」
 その説明を聞いてアルラウネがポンと手を叩いた。
「あわよくば、手駒を排除。あるいは、手駒を引き込むつもりだったのかしら」
「そういう事じゃ。ヤツは、今までにも一般人などを引き込んで、契約・歪虚化し利用してきたからの」
 軍師騎士は歪虚の狙いには乗らず、ハンター達に仕事を依頼した。
 この経緯も星輝の推理がある程度正しいと思える材料になるだろう。
「そういえば、荒地に複数の足跡があったの」
 ディーナが思い出すように言った。
 この辺りは人が滅多に出入りしないとディーナはハンターオフィスで確認していた。
 足跡は小屋にいた猟師のものと自然に思われる。
「やはり、『猟師』ではなく、私達、いえ、この地図を探索に来た者を見張る者だったのですね。そして、それを指示したのは……」
 小屋の方角を見つめながらUiscaが言った。
 『猟師』は人間だった。一体、どんな理由で、あの歪虚の支配下にいるのだろうか。自ら望んでの事なのか、それとも、事情があるのか。
 ポンとUiscaの肩を怜皇が叩いた。
「ともかく、依頼主からの目的は達したし、帰ろう」
 きっと今から小屋に向かっても誰もいないはずだ。向こうも目的を果たしたのだから。


 地図の探索を終えたハンター達は依頼主である軍師騎士に探索内容を報告した。
 後日、地図を提供した貴族に、探索結果が伝えられた。それは、『聖火の氷の一部かもしれないものが見つかった』という内容だった。


 おしまい。


●シーソー・ゲーム
 ハンター達は軍師騎士から再び召集を受けた。
「先日はありがとうございました。おかげでこちらも動きやすくなりました」
 丁寧に頭を下げる軍師騎士ことノセヤ。
 ハンター達はお互い顔を見合わせた。貴族に伝えられた探索結果と実際の探索結果が違う事もある。
「実は、時雨さんから、これを頂きまして」
 被せられていた布を取る軍師騎士。
「これは……龍鉱石なの?」
 ディーナの疑問に対してノセヤは頷いた。
 同時に、時雨が荒地で拾っていたもの――いや、正確には拾う真似をしていたものと理解した。
 龍鉱石に触れながら、Uiscaが感嘆としていた。
「つまり、ブラフにはブラフで対抗という事なのですね」
 本来あるはずのない秘宝の情報が流れれば、仕掛けた方は確認したくなるものだ。
 いや、もしかして、あの歪虚は確認しないかもしれない。だが、彼の配下や息のかかった者の中には必ずいるはずだ。
「秘宝を見つけたというブラフの流れを確認し、歪虚の持つ情報網を掴むつもりなのかのぉ」
「それで、『聖火の氷の一部かもしれないものが見つかった』という情報が」
 星輝と怜皇の台詞に軍師騎士は深く頷いた。
「あとは歪虚との繋がりの証拠を突き止めればという事?」
 首を傾げたアルラウネに対して、ざくろが微笑みながら首を横に振ってみせた。
 そして、冒険家らしい表情で軍師騎士に視線を向ける。
「歪虚の情報網をも利用して、『聖火の氷』を見つけ出すつもりなんだね」
「その通りです。皆さんの活動により、色々と分かった事もありますし、ここは情報網を泳がせたいと思っています」
 ノセヤの台詞にハンター達は頷く。
「ざくろん、楽しそう」
 アルラウネがニヤニヤとしながらざくろをみつめた。
「秘宝を探す大冒険になってきたなってね」
 『聖火の氷』という高純度のマテリアルが歪虚の手に渡れば、歪虚の成長を促せてしまう可能性がある。
 それを防ぐ為にも、歪虚より早く、秘宝を手に入れる必要があるのだ。
「追われ追いつつ秘宝を巡って動き出したという事ですか」
「そういう事じゃ、レオや。角折は美味しいとこだけ掻っ攫うつもりじゃろうからのぉ」
 そんな事させないのじゃと不気味に笑う星輝を眺めていた時雨にノセヤが近づくと改めて頭を下げた。
「今回、見事な機転、ありがとう。君のおかげでこちらは随分と有利に進めた」
「上手くいって良かった良かった!」
 ビシっと親指を立てる時雨。
「ま、まぁ、ここまで上手くいくなんてしょーじき思わなかったけど……」
「人には得手不得手があります。私には時雨さんや皆さんのようにフィールドで戦えません。ですから、本当に皆さんの存在は貴重で尊いのです」
 いかにも堅そうな人物像そのままにノセヤは続ける。
「だから、皆さん、どうか無理や無茶をせず、生き延び戦い続けて下さい」
「……つまり、わしらを死ぬまでこき使うつもりじゃのぉ?」
 星輝の冗談にディーナが震えあがる。
「そ、そうなのですの!?」
 一方、ざくろは瞳を輝かせて言った。
「大冒険には危険はつきものだよ!」
「言うと思ったわ」
 呆れた感じにアルラウネが応え、ざくろの腕をとる。
 それに影響されたかどうか、Uiscaは怜皇の肩に寄りかかった。
「レオも無理しないで下さいね」
「イスカもね」
 仲間達のそんな反応を楽しみつつ、それでも、込み上げてくる何かに耐えるように時雨は天井を見上げたのであった。

(ほんと、テンション高めにしておかないと……じゃないと……)

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MVP一覧

  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhranka0724
  • 甘えん坊な奥さん
    アルラウネka4841

  • 小鳥遊 時雨ka4921

重体一覧

参加者一覧

  • 聖なる焔預かりし者
    瀬織 怜皇(ka0684
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 神秘を掴む冒険家
    時音 ざくろ(ka1250
    人間(蒼)|18才|男性|機導師
  • 甘えん坊な奥さん
    アルラウネ(ka4841
    エルフ|24才|女性|舞刀士

  • 小鳥遊 時雨(ka4921
    人間(蒼)|16才|女性|猟撃士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン まるごとねるべるに質問っ
小鳥遊 時雨(ka4921
人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/05/06 17:34:36
アイコン 【相談卓】追いつ追われつ……?
小鳥遊 時雨(ka4921
人間(リアルブルー)|16才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/05/06 21:24:07
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/02 22:20:15