ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】BC級グルメ大会
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/08 09:00
- 完成日
- 2016/05/12 01:56
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
同盟領内に農耕推進地域ジェオルジがあります。
この地では、初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われるのです。
その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りがこの地で催され、それを人々は郷祭と呼んでいました。
春と秋に行われるこの郷祭は、近隣の住人で盛りあがっていましたが、二年ほど前からは、同盟内各地の商人達も商機を当て込んで集まってくる、大規模なお祭りとなっていました。
そして、今年も、その春郷祭の季節が廻って来ました。
ジェオルジ各地の村長達の会議はすぐにも始まり、そこでは、いつにはない議題が取り上げられるようです。
それは、サルヴァト―レ・ロッソからジェオルジ各地に移り住んだ新たな住人達、彼らからの幾つかの要望と、新たな地での商いの機会を与えるといった内容です。
それらとはまた別に、春郷祭はすでに様々な意味で賑やかに始まっていました。
「今年の郷祭も、色々面白いもんが出てるなあ」
広場に連なる屋台を見回して、アルマート・トレナーレ隊長が言いました。
いろいろな新品種の野菜などが、お披露目も兼ねて売られています。それに便乗して、各村の特産品が、農作物に限らず販売されていました。最近は、サルヴァトーレ・ロッソから移住してきた人々も多いので、リアルブルー産の珍しい物も物も散見できます。まだまだ量産体制にはないようですが、ゆくゆくはジェオルジで栽培していくのかもしれません。
ジェオルジの物だけではなく、離れたヴァリオスやポートワールなどからも、商売を当て込んだ商人たちがいろいろと持ち込んでは即席のお店を開いていました。すでに広場は、ちょっとした屋台村か簡易商店街といった感じです。
村長たちの道中の警備としてついてきたアルマート大尉たちの小隊は、ここジェオルジにいる間は暇です。会議の方は専門の警備担当がいますから。
「隊長ー、あっちで、なんだか面白ことやってるだよ」
一緒に見物していた兵隊さんたちが、隊長を呼びに来ました。
「なになに、BC級グルメ大会? 何だそりゃ」
「多分美味しいものですだあ」
「そうか。じゃあ、食うか?」
「わーい!」
何やら、広場にはいくつもの屋台が並んでいます。東西南北にグループ分けされているようで、好きな屋台から一つだけ料理を選んで食べられるようでした。
なんでも、BはリアルブルーのブルーのB、CはクリムゾンウェストのCらしいです。まあ、地方イベントらしいこじつけですが。それでも、めったに食べられないようなリアルブルーの料理も限定で食べられるようです。何でも、最大30食だというので、食べそこねたら一生後悔しそうです。
東にあるのは、カレーライスという食べ物で、リアルブルーでは定番中の定番で、いろいろな種類があるようです。屋台ごとに、味やトッピングで特色が出ています。
西にあるのは、おにぎり草まめしのようで、リアルブルー料理の具も入った様々な種類がならんでいます。
南にあるのは、ラーメンという麺料理で、こちらも様々なスープとトッピングが特徴です。
北にあるのはデザートで、餡ことか言うマメが原料の色とりどりの和菓子とかいう物を始めとして、様々なお菓子が色とりどりにならんでいます。
「よし、全制覇するぞ!」
「えー、でも、一つしか食べられないみたいですよ」
意気込む隊長に、兵隊さんが言いました。
「なんでだ!」
それは不条理という物です。珍しい食べ物があれば、全部食べたいではないですか。
「売り上げコンテストになっているんだそうで、一つだけなんだってここに書いてあります」
会場に立てられたルール説明の看板をそして、兵隊さんが言いました。
「うーん、悩むじゃないか。ええと、ええと……」
会場では、腕を組んで悩む人続出です。
さてはて、はたして、一番売れたのは何だったのでしょうか。
この地では、初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われるのです。
その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りがこの地で催され、それを人々は郷祭と呼んでいました。
春と秋に行われるこの郷祭は、近隣の住人で盛りあがっていましたが、二年ほど前からは、同盟内各地の商人達も商機を当て込んで集まってくる、大規模なお祭りとなっていました。
そして、今年も、その春郷祭の季節が廻って来ました。
ジェオルジ各地の村長達の会議はすぐにも始まり、そこでは、いつにはない議題が取り上げられるようです。
それは、サルヴァト―レ・ロッソからジェオルジ各地に移り住んだ新たな住人達、彼らからの幾つかの要望と、新たな地での商いの機会を与えるといった内容です。
それらとはまた別に、春郷祭はすでに様々な意味で賑やかに始まっていました。
「今年の郷祭も、色々面白いもんが出てるなあ」
広場に連なる屋台を見回して、アルマート・トレナーレ隊長が言いました。
いろいろな新品種の野菜などが、お披露目も兼ねて売られています。それに便乗して、各村の特産品が、農作物に限らず販売されていました。最近は、サルヴァトーレ・ロッソから移住してきた人々も多いので、リアルブルー産の珍しい物も物も散見できます。まだまだ量産体制にはないようですが、ゆくゆくはジェオルジで栽培していくのかもしれません。
ジェオルジの物だけではなく、離れたヴァリオスやポートワールなどからも、商売を当て込んだ商人たちがいろいろと持ち込んでは即席のお店を開いていました。すでに広場は、ちょっとした屋台村か簡易商店街といった感じです。
村長たちの道中の警備としてついてきたアルマート大尉たちの小隊は、ここジェオルジにいる間は暇です。会議の方は専門の警備担当がいますから。
「隊長ー、あっちで、なんだか面白ことやってるだよ」
一緒に見物していた兵隊さんたちが、隊長を呼びに来ました。
「なになに、BC級グルメ大会? 何だそりゃ」
「多分美味しいものですだあ」
「そうか。じゃあ、食うか?」
「わーい!」
何やら、広場にはいくつもの屋台が並んでいます。東西南北にグループ分けされているようで、好きな屋台から一つだけ料理を選んで食べられるようでした。
なんでも、BはリアルブルーのブルーのB、CはクリムゾンウェストのCらしいです。まあ、地方イベントらしいこじつけですが。それでも、めったに食べられないようなリアルブルーの料理も限定で食べられるようです。何でも、最大30食だというので、食べそこねたら一生後悔しそうです。
東にあるのは、カレーライスという食べ物で、リアルブルーでは定番中の定番で、いろいろな種類があるようです。屋台ごとに、味やトッピングで特色が出ています。
西にあるのは、おにぎり草まめしのようで、リアルブルー料理の具も入った様々な種類がならんでいます。
南にあるのは、ラーメンという麺料理で、こちらも様々なスープとトッピングが特徴です。
北にあるのはデザートで、餡ことか言うマメが原料の色とりどりの和菓子とかいう物を始めとして、様々なお菓子が色とりどりにならんでいます。
「よし、全制覇するぞ!」
「えー、でも、一つしか食べられないみたいですよ」
意気込む隊長に、兵隊さんが言いました。
「なんでだ!」
それは不条理という物です。珍しい食べ物があれば、全部食べたいではないですか。
「売り上げコンテストになっているんだそうで、一つだけなんだってここに書いてあります」
会場に立てられたルール説明の看板をそして、兵隊さんが言いました。
「うーん、悩むじゃないか。ええと、ええと……」
会場では、腕を組んで悩む人続出です。
さてはて、はたして、一番売れたのは何だったのでしょうか。
リプレイ本文
●デザート屋台
「いったい、何を作るんだ?」
デザート屋台の中に立ったトルステン=L=ユピテル(ka3946)が、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)に訊ねました。
「ドーナッツを作るんダヨ♪」
あっけらかんと、パトリシアが答えました。
「どうせ作るの俺なんだろ?」
「うん」
トルステンの言葉に、思いっきりパトリシアがうなずきます。
「知ってた……」
予想通りです。グルメ大会に参加しようと誘われていたときから、だいたいは予想できたことです。
「だって、ステンはお料理上手だカラ。パティのほっぺも落っこちるし。みんなに食べてもらえると嬉しい♪」
ニコニコ顔で言うパトリシアには逆らえません。
「作業の邪魔すんじゃねーぞ、パティ。お前の仕事は飾りつけと客引きだ」
「はーい」
言われるままに、パトリシアが、屋台の看板などを飾りつけ始めます。ポップな色で書かれた看板は、結構目立ちます。屋台の周りには、ジェオルジ特産の花なども飾られ、一気に華やかになりました。
「さてと……」
その間に、トルステンはドーナッツを作り始めていました。
ころころと丸めた、球形のドーナッツです。
粉にもこだわり、表面は高温でカリッと、中身はしっとりという絶品です。プレーンの他にも、餡ドーナッツも作ります。
できあがったドーナッツには、パトリシアが、シュガーコーティングやチョコスプレーでデコレートしていきました。茶色いドーナッツが、華やかな色合いに生まれ変わります。
「ディーナや、りんたろーの好きな、猫さんも作ろー」
なんだか、チョコでドーナッツに猫の顔を描き、その上、ネコミミまでちょこんとチョコで形作ります。
「おいしそー」
そろそろと、パトリシアができあがったばかりのドーナッツに手をのばします。
「だから、邪魔しねえで、宣伝してこい!」
トルステンが、チラシの束をパトリシアに渡して言いました。できあがるそばから試食されたのでは、たまったものではありません。
「はーい」
ちょっと残念そうに返事をしてから、パトリシアが広場でチラシを配りにでかけようとします。
そこで、ばったりとディーナ・フェルミ(ka5843)に出会いました。
「パティちゃん、食べにきましたのー」
「わーい、ありがとー」
いきなりだきあって、二人がピョンピョンと跳びはねます。
「おいおい、店の前で何やってるんだ」
女の子同士の挨拶に、トルステンがちょっと呆れます。
「猫さんドーナッツもあるんダヨ♪」
「じゃあ、それをくださいなの」
パンタシアに勧められて、ディーナがそれを注文しました。
「まいどー」
紙袋にごろごろとドーナッツを入れると、トルステンがディーナがそれに手渡しました。
「それでは、今度はパティちゃんの食べたい物を作るの。さあ、私の屋台へゴーなの」
「うん♪ じゃあねー、ステン♪」
「おおい、ちょっとー。まったく、仕方ねえなあ」
勝手に連れ立っていく二人を見送って、トルステンがやれやれという風に頭を掻きました。せめて、チラシ配りだけはしてほしいものです。
ドーナッツ屋台の隣では、央崎 遥華(ka5644)がクレープの屋台を出していました。
「さあ、いらっしゃいませー」
可愛らしいメイド服姿の遥華が、ニコニコスマイルで呼び込みをしています。
「おう、ハルカ、食いに来たぜ」
そこへやってきたのは、大伴 鈴太郎(ka6016)でした。
「一つくれよ」
「はい、ありがとうございます。今焼きますから待っていてくださいね」
笑顔で答えると、遥華が鉄板の上でクレープを焼き始めました。
クレープとしては結構小さめな、パンケーキほどの大きさです。
巧みなお玉の動きでクルリと丸いクレープを焼き上げると、それぞれに異なる具材をつつんでいきます。一つはチョコバナナで、一つは焼きリンゴ、一つはアボカドとクリームチーズとエビとオーロラソースを混ぜたカラーズです。
これらのミニクレープを、花束のように一つに纏めます。華やかさと一緒に、いろいろな味を手軽に楽しめるという趣向です。
「うん、これは美味しそうだ」
「そうでしょう、早く食べて食べて」
極上の笑顔を鈴太郎に向けて、遥華が言いました。
クレープ屋台の隣では、黒耀 (ka5677)が、フルーツ串の屋台を開いていました。
耳にしたリアルブルーとクリムゾンウェストの料理や素材から、お祭りの屋台を純粋に再現しています。
基本は食べ歩きできるように、すべて串に刺したフルーツです。リンゴにバナナに梨にオレンジ、他にもマシュマロという卵白から作ったお菓子などもすべて串刺しです。
リアルブルー風に、それらにはプレーンの他に、チョコレートをかけた物や赤色の飴でコーティングした物もあります。
「あー、これも美味しそう……」
通りかかった兵隊さんのトレが足を止めました。
「どうしよう……」
しばしトレが悩みます。なにしろ、去年は見なかった食べ物です。興味はありますが、不安もあります。
「ええい、それください!」
「まいどありがとうございます」
じっとトレの決断を待っていた黒耀が、ニッコリしながらチョコバナナをさし出しました。
●おにぎり屋台
香ばしい香りが、お店を選びかねて悩んでいる人々の鼻腔を刺激しました。
ミオレスカ(ka3496)の屋台から流れてくる焼きおにぎりの匂いです。
「やはり、醤油で焼くと、効果覿面ですね。それにしても、おにぎりを焼く調理法があるとは、さすがはリアルブルーです」
炭火の上の網に載っかったおにぎりを、団扇でパタパタと扇ぎながら、ミオレスカが言いました。
おにぎり草は、焼き鮭を入れて仕込みを終えています。そこへ醤油を塗って焼くわけです。
本来のおにぎりも知ってもらおうと、米と具と海苔に分けて、ちゃんと手でにぎっていく様子も、実演販売として披露していきます。
「よっしゃあ、祭りだあ!」
ミオレスカの隣では、鈴太郎も同じように焼きおにぎりを販売していました。
お祭りらしく、派手に幟や看板を立てて賑やかにしています。
屋台の賑やかさとは対象的に、売っているのは、白いおにぎりと焼きおにぎりの白黒にぎりのセットでした。具が入ってはいませんが、それは他の屋台の料理とシェアしてもらう形でと考えています。なにしろ白いおにぎりが合わない食べ物などないはずですから。とはいえ、ライバルのブースの販促になってしまっているような気もしますが……。まあ、お祭りは楽しんだ者勝ちです。
「おもてなしの心を大切に、心を込めて作らせていただいています」
三つ目の屋台では、残月(ka6290)が、さらに一味違った焼きおにぎりを販売していました。
内容は、シラス醤油焼きまめし、シャケバター醤油焼きまめし、素のまめし、それに、山菜のお味噌汁、緑茶のセットです。
こちらも、香ばしい匂いを周囲に振りまいています。
鮭はバターで焼いているので、ミオレスカの物とはまた違った味わいです。
「ううっ、この匂い、たまらないじゃん」
さっそく、お客が一人釣れました。トルステンです。完全に、醤油の匂いに誘われています。
「うーん、迷うが……。よし、それにするぜ!」
さんざん迷ったあげく、物珍しさから鈴太郎の白黒セットを頼みます。
「はわあ、うめーじゃん……」
ほんわか幸せな顔を浮かべながら、トルステンがおにぎりを頬ばっていきました。
「だろう。白いおむすびは、なんにでも合うんだぜ」
自慢そうに、鈴太郎が言いました。
「じゃあ、ドー……」
「いや、さすがにスイーツには……。パティにもそう言っといてくれ」
まあ、無理な物はあると、鈴太郎がトルステンに言いました。
「そういや、そろそろ、パティにつきあってやらなきゃな」
自分の食べたい物は食べたからと、トルステンが戻っていきました。
入れ替わるようにして、黒耀がやってきます。
「やはり、腹を満たすには、おにぎりが一番ですね。鮭はありますでしょうか?」
「もちろん!」
黒耀の問いに、ミオレスカが元気よく答えました。残月も、セットの見本をちらつかせて、おいでおいでをします。
「鮭が二つ……」
悩む黒耀でしたが、ここはオーソドックスなミオレスカのおにぎりを選択しました。鮭をバターで焼くというのは、まだちょっと馴染みがありません。
「じゃあ、ボクは、これください」
黒耀の代わりのように、兵隊さんのドゥーエが、残月のおにぎりセットを注文しました。
「いらっしゃいませ。ありがとうございます。今お作りしますね」
目の前でにぎにぎしたおにぎりをさっと焼くと、残月が熱いお茶とお味噌汁をつけてお盆に載せました。
「豪華ですねー」
お味噌汁をこぼさないようにして、ドゥーエがセットを運んでいきました。
●ラーメン屋台
「オレが出すラーメンは、醤油、味噌、塩と揃っているぞ。さあ、好きなラーメンを選んでくれ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が、お客を前にして言いました。お客のニーズに合わせられるよう、各種の味をとりそろえています。
鶏ガラから取った出汁のスープに、かん水の代わりに木灰汁使った麺、具材は出汁を取るのに使った鶏肉をチャーシューにして、ジェオルジ特産の各種野菜もたっぷりです。
「それじゃあ、塩を頼もうか」
長椅子に座ったザレム・アズール(ka0878)が言いました。食べ物は、シンプルイズベストです。リアルブルーの塩ラーメンという物は、塩だけで味つけされたスープを使っていると聞いています。
「こ、これは!」
まずは、レンゲという奇妙な形のスプーンで一口スープを啜ったザレムが、思わず叫びました。
これが、塩だけで作られたスープなのでしょうか。濃厚な、なんとも言えないコクと旨味があります。これは、野菜を煮込んだ物でしょう。
「替え玉もあるから沢山食ってけよ」
ザレムの食べっぷりに、レイオスが満面の笑みを浮かべて勧めました。
「替え玉があるのか。ぜひいただこう」
すかさず、ザレムが、スープの残っている丼をさし出します。
「いい食べっぷりだあ」
ゆであげた麺を、てぼから丼に入れてレイオスが言いました。
屋台の端っこには、レシピの書かれたチラシが置かれています。そこには、「テナント募集」の文字まであります。
「これが、本物のラーメンという物なのですね。やはり、支給品のカップラーメンとは、一味も二味も違います」
同じようにラーメンを食べているミオレスカが感心して言いました。興味深そうに、チラシのレシピを確認しています。
「ああ、このラーメンの香り。そして、なんと言っても塩ラーメン! こっちに転移してきてから、まともな物はほとんど食べてないので懐かしいー!」
その隣では、遥華が感涙に咽んでいました。それほどまでに、ラーメンはリアルブルーのソウルフードなのでしょう。
皆がラーメンに舌鼓を打つ横では、マリィア・バルデス(ka5848)が焼きそばを焼いていました。
こちらも、鉄板で焼ける香ばしいソースの匂いが、食欲をかきたててやみません。
「やっぱり、麺料理なら、焼きそばもありよね。それに一番胃に訴えかけるソースの焦げる匂いって、最強だと思わない?」
言いつつコテを使って巧みにマリィアが焼きそばを作っていきます。縮れ麺と共にざく切りキャベツとブタ肉を炒め、特製ソースで味つけします。
自信たっぷりのマリィアの言葉通り、兵隊さんのクアットロが、匂いに誘われてやってきました。
「パスタ? でもいい匂いだあ~」
「どうです、お一つ?」
「く、くださあい!」
聞かれて、思わずクアットロが答えます。
「まいどー」
木を薄く削いで作った箱に焼きそばを入れると、鰹節と青のりを振りかけ、最後に郷祭に合わせた花型の目玉焼きを載せます。これで、焼きそばマリィアスペシャルの完成です。
「おまちどおさまー」
「わあっ!?」
鰹節が踊る姿にちょっとびっくりしつつも、クアットロが嬉しそうに焼きそばを持っていきました。
●カレー屋台
「うーん、美味い」
じっくりと煮込まれたカレーを味見して、ザレムが顔をほころばせました。コック服に身を固めて、完全に戦闘態勢です。
先ほど食べてきたラーメンには一本取られた気もしましたが、こちらのカレーも負けてはいません。リアルブルーのカレー職人に聞いた知識を総動員して作った自慢のカレーです。
ブーケガルニでビーフのフォンドボーに繊細な香りをつけ、微塵切りにした野菜が煮とろけるまでコトコトと煮込んだ物です。今回だけしか手に入らないような貴重なスパイスも、ふんだんに使用しています。まさに、黄金のカレールーです。そこへ、大きめの牛肉を贅沢に入れてあります。野菜類がほとんど形を失っているので、よけいに肉が大きく見え、なかなかのインパクトです。これなら、お客の食欲もそそることでしょう。
主食は、おにぎり草まめしか、ルーが絡みやすい螺旋状パスタのフジッリか、パンのバケットから選べるようになっています。それを、スープ皿に入ったカレールーに浸して食べるという、カレー本来の食べ方です。
とはいえ、本場のカレーなど見たこともないクリムゾンウェスト出身のザレムですから、これを独自につけカレーと名づけることにしました。ルーの上にはチーズを散らしてあるので、まさに黄金のつけカレーです。
その隣では、ディーナがスープカレーを作っていました。
こちらは、ザレムのカレーよりはとろみが少なく、チキンと小エビが入った甘口の物です。
「わーい、ディーナのカレー、特別ダネ」
フルーツ屋台をほったらかしてディーナについてきたパトリシアが、目を輝かせて言いました。
「やれやれ、ここにいたか」
そこへ、トルステンも合流してきます。
「もったりしたカレーより、こういうタイプがいいかなって思ったの。それじゃあ、テーブル席へ持っていって、ドーナッツと一緒に食べるの。そうそう、カレー味のポテトも作っておいたから、パティちゃんも食べるの」
そう言うと、できあがったカレーとポテトをトルステンに運ばせて、二人はテーブル席の方へと移動していきました。
「おいおい、店はいいのかよ」
ほとんどコンテストなどお構いなしで、自分たちの分しか作らない二人を見て、トルステンが呆れます。まあ、この二人は、いつものことではありますが。
おかげで、一人残ったザレムは、大忙しでした。
「大盛り一丁、頼むぜ」
いきなり、レイオスから大盛り注文が来てザレムが慌てます。
大盛りと言うからには、おにぎり草でいいのでしょうか。ええい、いいことにします。
「はい、お待ちぃ!」
おにぎりを積みあげたピラミッドの皿とカレー皿をドンと屋台のカウンターの上において、ザレムが威勢よく言いました。
「おお、きたきた。こっちじゃ、なかなか本格的なカレーは食べられないからな。うーん、このスパイスの香りに心が躍るぜ。それにしても、一つしか食べられないってえのは酷なルールだなあ。まあ、他のカレーと言っても、あるのかないのか……」
「それなら、パンとパスタも追加でどーぞ!」
カレーは種類がなくても、このために主食を数揃えてあります。ザレムがレイオスの前に、すべての主食を集めました。まさにフルコースです。
「おおっ、よし、制覇するぜ!」
喜んで、レイオスが食べ始めました。すでに、まるで大食い選手権です。
その天晴れな食いっぷりに、見とれるようにしてお客が集まってきました。
「私も、私も!」
レイオスの横に、マリィアとパトリシアと残月がカウンターに一列に並びます。さすがに、レイオスのような馬鹿食いはできないので、残月がおにぎり、パトリシアがパスタ、マリィアがパンと、それぞれ違った物を選びました。
「うん、これでうどんとナンがあったら完璧だったんだが、美味いから贅沢は言わないぜ」
レイオスは上機嫌です。
「なんだか、美味そうだなあ」
「凄く繁盛していますね」
人だかりの絶えないカレー屋台を見て、隊長とウーノが興味を引かれました。
「どれ、食べてみるか?」
「はーい」
「兄ちゃん、それ、二つ!」
あっさりと、カレーの匂いに負けて、隊長たちもカレーを注文しました。
●結果発表
「それでは、第一回BCグルメ大会の結果を発表したいと思います」
今回の大会の司会として雇われたセンサーレ・クリティコが、集計用紙を手に壇上に現れました。
「午前中の限られた時間で、一番お客様に食べられた食べ物は……」
ここで、センサーレが一呼吸おきます。お約束です。
「カレーです! おめでとうございます」
会場から歓声が沸きます。
「当然だ。あれだけのカレーだからな」
うんうんと、ザレムがうなずきました。
「なんだか、カレーが優勝したらしいの」
広場中央のテーブル席で、パトリシアと一緒にカレーとドーナッツを食べながら、ディーナが言いました。
「わあ、ディーナ、凄い!」
カレーを食べていたパトリシアが喜んで言いましたが、彼女のお皿の周りは、スープカレーが飛び散ってちょっと大変な有様です。
「パティちゃんには、こぼさずに食べるのはちょっと難しかったかしらなの」
ディーナが、パトリシアの口許を持ってきていたナプキンで拭いながらニッコリとしました。なんだか用意周到、計画的犯行のようにも思えます。
にしても、途中で屋台放棄しているので、ほとんど漁夫の利の優勝です。
「なお、二位はラーメン、三位は同率でおにぎりとデザートという結果になりました。コンテストへの御協力ありがとうございました。これ以後は、食材の残っている限り、御自由に新しいジェオルジの味を御堪能ください」
「おお、これは、全制覇といきたいぜ」
司会のセンサーレの言葉を聞いて、レイオスが俄然目を輝かせました。
「カレーも、餡こも食べたいですね。ああ、でも、おにぎりもちゃんと全部作ってみなさんに食べてもらわなくちゃ」
ディーナとパトリシアたちの方を見て、ミオレスカも立ちあがります。
「隊長さん、なんだか、好きなの食べてもいいようだよ」
「わーい、食べましょうよ」
兵隊さんたちも、隊長におねだりします。
「そうだな。よし、残った物を急いで買い集めてこい。パーティーの始まりだあ!」
「わーい」
ノリノリで叫ぶ隊長の声を合図に、なくなっては大変だと、人々は思い思いの屋台にむかって、再び走りだしていきました。
「いったい、何を作るんだ?」
デザート屋台の中に立ったトルステン=L=ユピテル(ka3946)が、パトリシア=K=ポラリス(ka5996)に訊ねました。
「ドーナッツを作るんダヨ♪」
あっけらかんと、パトリシアが答えました。
「どうせ作るの俺なんだろ?」
「うん」
トルステンの言葉に、思いっきりパトリシアがうなずきます。
「知ってた……」
予想通りです。グルメ大会に参加しようと誘われていたときから、だいたいは予想できたことです。
「だって、ステンはお料理上手だカラ。パティのほっぺも落っこちるし。みんなに食べてもらえると嬉しい♪」
ニコニコ顔で言うパトリシアには逆らえません。
「作業の邪魔すんじゃねーぞ、パティ。お前の仕事は飾りつけと客引きだ」
「はーい」
言われるままに、パトリシアが、屋台の看板などを飾りつけ始めます。ポップな色で書かれた看板は、結構目立ちます。屋台の周りには、ジェオルジ特産の花なども飾られ、一気に華やかになりました。
「さてと……」
その間に、トルステンはドーナッツを作り始めていました。
ころころと丸めた、球形のドーナッツです。
粉にもこだわり、表面は高温でカリッと、中身はしっとりという絶品です。プレーンの他にも、餡ドーナッツも作ります。
できあがったドーナッツには、パトリシアが、シュガーコーティングやチョコスプレーでデコレートしていきました。茶色いドーナッツが、華やかな色合いに生まれ変わります。
「ディーナや、りんたろーの好きな、猫さんも作ろー」
なんだか、チョコでドーナッツに猫の顔を描き、その上、ネコミミまでちょこんとチョコで形作ります。
「おいしそー」
そろそろと、パトリシアができあがったばかりのドーナッツに手をのばします。
「だから、邪魔しねえで、宣伝してこい!」
トルステンが、チラシの束をパトリシアに渡して言いました。できあがるそばから試食されたのでは、たまったものではありません。
「はーい」
ちょっと残念そうに返事をしてから、パトリシアが広場でチラシを配りにでかけようとします。
そこで、ばったりとディーナ・フェルミ(ka5843)に出会いました。
「パティちゃん、食べにきましたのー」
「わーい、ありがとー」
いきなりだきあって、二人がピョンピョンと跳びはねます。
「おいおい、店の前で何やってるんだ」
女の子同士の挨拶に、トルステンがちょっと呆れます。
「猫さんドーナッツもあるんダヨ♪」
「じゃあ、それをくださいなの」
パンタシアに勧められて、ディーナがそれを注文しました。
「まいどー」
紙袋にごろごろとドーナッツを入れると、トルステンがディーナがそれに手渡しました。
「それでは、今度はパティちゃんの食べたい物を作るの。さあ、私の屋台へゴーなの」
「うん♪ じゃあねー、ステン♪」
「おおい、ちょっとー。まったく、仕方ねえなあ」
勝手に連れ立っていく二人を見送って、トルステンがやれやれという風に頭を掻きました。せめて、チラシ配りだけはしてほしいものです。
ドーナッツ屋台の隣では、央崎 遥華(ka5644)がクレープの屋台を出していました。
「さあ、いらっしゃいませー」
可愛らしいメイド服姿の遥華が、ニコニコスマイルで呼び込みをしています。
「おう、ハルカ、食いに来たぜ」
そこへやってきたのは、大伴 鈴太郎(ka6016)でした。
「一つくれよ」
「はい、ありがとうございます。今焼きますから待っていてくださいね」
笑顔で答えると、遥華が鉄板の上でクレープを焼き始めました。
クレープとしては結構小さめな、パンケーキほどの大きさです。
巧みなお玉の動きでクルリと丸いクレープを焼き上げると、それぞれに異なる具材をつつんでいきます。一つはチョコバナナで、一つは焼きリンゴ、一つはアボカドとクリームチーズとエビとオーロラソースを混ぜたカラーズです。
これらのミニクレープを、花束のように一つに纏めます。華やかさと一緒に、いろいろな味を手軽に楽しめるという趣向です。
「うん、これは美味しそうだ」
「そうでしょう、早く食べて食べて」
極上の笑顔を鈴太郎に向けて、遥華が言いました。
クレープ屋台の隣では、黒耀 (ka5677)が、フルーツ串の屋台を開いていました。
耳にしたリアルブルーとクリムゾンウェストの料理や素材から、お祭りの屋台を純粋に再現しています。
基本は食べ歩きできるように、すべて串に刺したフルーツです。リンゴにバナナに梨にオレンジ、他にもマシュマロという卵白から作ったお菓子などもすべて串刺しです。
リアルブルー風に、それらにはプレーンの他に、チョコレートをかけた物や赤色の飴でコーティングした物もあります。
「あー、これも美味しそう……」
通りかかった兵隊さんのトレが足を止めました。
「どうしよう……」
しばしトレが悩みます。なにしろ、去年は見なかった食べ物です。興味はありますが、不安もあります。
「ええい、それください!」
「まいどありがとうございます」
じっとトレの決断を待っていた黒耀が、ニッコリしながらチョコバナナをさし出しました。
●おにぎり屋台
香ばしい香りが、お店を選びかねて悩んでいる人々の鼻腔を刺激しました。
ミオレスカ(ka3496)の屋台から流れてくる焼きおにぎりの匂いです。
「やはり、醤油で焼くと、効果覿面ですね。それにしても、おにぎりを焼く調理法があるとは、さすがはリアルブルーです」
炭火の上の網に載っかったおにぎりを、団扇でパタパタと扇ぎながら、ミオレスカが言いました。
おにぎり草は、焼き鮭を入れて仕込みを終えています。そこへ醤油を塗って焼くわけです。
本来のおにぎりも知ってもらおうと、米と具と海苔に分けて、ちゃんと手でにぎっていく様子も、実演販売として披露していきます。
「よっしゃあ、祭りだあ!」
ミオレスカの隣では、鈴太郎も同じように焼きおにぎりを販売していました。
お祭りらしく、派手に幟や看板を立てて賑やかにしています。
屋台の賑やかさとは対象的に、売っているのは、白いおにぎりと焼きおにぎりの白黒にぎりのセットでした。具が入ってはいませんが、それは他の屋台の料理とシェアしてもらう形でと考えています。なにしろ白いおにぎりが合わない食べ物などないはずですから。とはいえ、ライバルのブースの販促になってしまっているような気もしますが……。まあ、お祭りは楽しんだ者勝ちです。
「おもてなしの心を大切に、心を込めて作らせていただいています」
三つ目の屋台では、残月(ka6290)が、さらに一味違った焼きおにぎりを販売していました。
内容は、シラス醤油焼きまめし、シャケバター醤油焼きまめし、素のまめし、それに、山菜のお味噌汁、緑茶のセットです。
こちらも、香ばしい匂いを周囲に振りまいています。
鮭はバターで焼いているので、ミオレスカの物とはまた違った味わいです。
「ううっ、この匂い、たまらないじゃん」
さっそく、お客が一人釣れました。トルステンです。完全に、醤油の匂いに誘われています。
「うーん、迷うが……。よし、それにするぜ!」
さんざん迷ったあげく、物珍しさから鈴太郎の白黒セットを頼みます。
「はわあ、うめーじゃん……」
ほんわか幸せな顔を浮かべながら、トルステンがおにぎりを頬ばっていきました。
「だろう。白いおむすびは、なんにでも合うんだぜ」
自慢そうに、鈴太郎が言いました。
「じゃあ、ドー……」
「いや、さすがにスイーツには……。パティにもそう言っといてくれ」
まあ、無理な物はあると、鈴太郎がトルステンに言いました。
「そういや、そろそろ、パティにつきあってやらなきゃな」
自分の食べたい物は食べたからと、トルステンが戻っていきました。
入れ替わるようにして、黒耀がやってきます。
「やはり、腹を満たすには、おにぎりが一番ですね。鮭はありますでしょうか?」
「もちろん!」
黒耀の問いに、ミオレスカが元気よく答えました。残月も、セットの見本をちらつかせて、おいでおいでをします。
「鮭が二つ……」
悩む黒耀でしたが、ここはオーソドックスなミオレスカのおにぎりを選択しました。鮭をバターで焼くというのは、まだちょっと馴染みがありません。
「じゃあ、ボクは、これください」
黒耀の代わりのように、兵隊さんのドゥーエが、残月のおにぎりセットを注文しました。
「いらっしゃいませ。ありがとうございます。今お作りしますね」
目の前でにぎにぎしたおにぎりをさっと焼くと、残月が熱いお茶とお味噌汁をつけてお盆に載せました。
「豪華ですねー」
お味噌汁をこぼさないようにして、ドゥーエがセットを運んでいきました。
●ラーメン屋台
「オレが出すラーメンは、醤油、味噌、塩と揃っているぞ。さあ、好きなラーメンを選んでくれ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)が、お客を前にして言いました。お客のニーズに合わせられるよう、各種の味をとりそろえています。
鶏ガラから取った出汁のスープに、かん水の代わりに木灰汁使った麺、具材は出汁を取るのに使った鶏肉をチャーシューにして、ジェオルジ特産の各種野菜もたっぷりです。
「それじゃあ、塩を頼もうか」
長椅子に座ったザレム・アズール(ka0878)が言いました。食べ物は、シンプルイズベストです。リアルブルーの塩ラーメンという物は、塩だけで味つけされたスープを使っていると聞いています。
「こ、これは!」
まずは、レンゲという奇妙な形のスプーンで一口スープを啜ったザレムが、思わず叫びました。
これが、塩だけで作られたスープなのでしょうか。濃厚な、なんとも言えないコクと旨味があります。これは、野菜を煮込んだ物でしょう。
「替え玉もあるから沢山食ってけよ」
ザレムの食べっぷりに、レイオスが満面の笑みを浮かべて勧めました。
「替え玉があるのか。ぜひいただこう」
すかさず、ザレムが、スープの残っている丼をさし出します。
「いい食べっぷりだあ」
ゆであげた麺を、てぼから丼に入れてレイオスが言いました。
屋台の端っこには、レシピの書かれたチラシが置かれています。そこには、「テナント募集」の文字まであります。
「これが、本物のラーメンという物なのですね。やはり、支給品のカップラーメンとは、一味も二味も違います」
同じようにラーメンを食べているミオレスカが感心して言いました。興味深そうに、チラシのレシピを確認しています。
「ああ、このラーメンの香り。そして、なんと言っても塩ラーメン! こっちに転移してきてから、まともな物はほとんど食べてないので懐かしいー!」
その隣では、遥華が感涙に咽んでいました。それほどまでに、ラーメンはリアルブルーのソウルフードなのでしょう。
皆がラーメンに舌鼓を打つ横では、マリィア・バルデス(ka5848)が焼きそばを焼いていました。
こちらも、鉄板で焼ける香ばしいソースの匂いが、食欲をかきたててやみません。
「やっぱり、麺料理なら、焼きそばもありよね。それに一番胃に訴えかけるソースの焦げる匂いって、最強だと思わない?」
言いつつコテを使って巧みにマリィアが焼きそばを作っていきます。縮れ麺と共にざく切りキャベツとブタ肉を炒め、特製ソースで味つけします。
自信たっぷりのマリィアの言葉通り、兵隊さんのクアットロが、匂いに誘われてやってきました。
「パスタ? でもいい匂いだあ~」
「どうです、お一つ?」
「く、くださあい!」
聞かれて、思わずクアットロが答えます。
「まいどー」
木を薄く削いで作った箱に焼きそばを入れると、鰹節と青のりを振りかけ、最後に郷祭に合わせた花型の目玉焼きを載せます。これで、焼きそばマリィアスペシャルの完成です。
「おまちどおさまー」
「わあっ!?」
鰹節が踊る姿にちょっとびっくりしつつも、クアットロが嬉しそうに焼きそばを持っていきました。
●カレー屋台
「うーん、美味い」
じっくりと煮込まれたカレーを味見して、ザレムが顔をほころばせました。コック服に身を固めて、完全に戦闘態勢です。
先ほど食べてきたラーメンには一本取られた気もしましたが、こちらのカレーも負けてはいません。リアルブルーのカレー職人に聞いた知識を総動員して作った自慢のカレーです。
ブーケガルニでビーフのフォンドボーに繊細な香りをつけ、微塵切りにした野菜が煮とろけるまでコトコトと煮込んだ物です。今回だけしか手に入らないような貴重なスパイスも、ふんだんに使用しています。まさに、黄金のカレールーです。そこへ、大きめの牛肉を贅沢に入れてあります。野菜類がほとんど形を失っているので、よけいに肉が大きく見え、なかなかのインパクトです。これなら、お客の食欲もそそることでしょう。
主食は、おにぎり草まめしか、ルーが絡みやすい螺旋状パスタのフジッリか、パンのバケットから選べるようになっています。それを、スープ皿に入ったカレールーに浸して食べるという、カレー本来の食べ方です。
とはいえ、本場のカレーなど見たこともないクリムゾンウェスト出身のザレムですから、これを独自につけカレーと名づけることにしました。ルーの上にはチーズを散らしてあるので、まさに黄金のつけカレーです。
その隣では、ディーナがスープカレーを作っていました。
こちらは、ザレムのカレーよりはとろみが少なく、チキンと小エビが入った甘口の物です。
「わーい、ディーナのカレー、特別ダネ」
フルーツ屋台をほったらかしてディーナについてきたパトリシアが、目を輝かせて言いました。
「やれやれ、ここにいたか」
そこへ、トルステンも合流してきます。
「もったりしたカレーより、こういうタイプがいいかなって思ったの。それじゃあ、テーブル席へ持っていって、ドーナッツと一緒に食べるの。そうそう、カレー味のポテトも作っておいたから、パティちゃんも食べるの」
そう言うと、できあがったカレーとポテトをトルステンに運ばせて、二人はテーブル席の方へと移動していきました。
「おいおい、店はいいのかよ」
ほとんどコンテストなどお構いなしで、自分たちの分しか作らない二人を見て、トルステンが呆れます。まあ、この二人は、いつものことではありますが。
おかげで、一人残ったザレムは、大忙しでした。
「大盛り一丁、頼むぜ」
いきなり、レイオスから大盛り注文が来てザレムが慌てます。
大盛りと言うからには、おにぎり草でいいのでしょうか。ええい、いいことにします。
「はい、お待ちぃ!」
おにぎりを積みあげたピラミッドの皿とカレー皿をドンと屋台のカウンターの上において、ザレムが威勢よく言いました。
「おお、きたきた。こっちじゃ、なかなか本格的なカレーは食べられないからな。うーん、このスパイスの香りに心が躍るぜ。それにしても、一つしか食べられないってえのは酷なルールだなあ。まあ、他のカレーと言っても、あるのかないのか……」
「それなら、パンとパスタも追加でどーぞ!」
カレーは種類がなくても、このために主食を数揃えてあります。ザレムがレイオスの前に、すべての主食を集めました。まさにフルコースです。
「おおっ、よし、制覇するぜ!」
喜んで、レイオスが食べ始めました。すでに、まるで大食い選手権です。
その天晴れな食いっぷりに、見とれるようにしてお客が集まってきました。
「私も、私も!」
レイオスの横に、マリィアとパトリシアと残月がカウンターに一列に並びます。さすがに、レイオスのような馬鹿食いはできないので、残月がおにぎり、パトリシアがパスタ、マリィアがパンと、それぞれ違った物を選びました。
「うん、これでうどんとナンがあったら完璧だったんだが、美味いから贅沢は言わないぜ」
レイオスは上機嫌です。
「なんだか、美味そうだなあ」
「凄く繁盛していますね」
人だかりの絶えないカレー屋台を見て、隊長とウーノが興味を引かれました。
「どれ、食べてみるか?」
「はーい」
「兄ちゃん、それ、二つ!」
あっさりと、カレーの匂いに負けて、隊長たちもカレーを注文しました。
●結果発表
「それでは、第一回BCグルメ大会の結果を発表したいと思います」
今回の大会の司会として雇われたセンサーレ・クリティコが、集計用紙を手に壇上に現れました。
「午前中の限られた時間で、一番お客様に食べられた食べ物は……」
ここで、センサーレが一呼吸おきます。お約束です。
「カレーです! おめでとうございます」
会場から歓声が沸きます。
「当然だ。あれだけのカレーだからな」
うんうんと、ザレムがうなずきました。
「なんだか、カレーが優勝したらしいの」
広場中央のテーブル席で、パトリシアと一緒にカレーとドーナッツを食べながら、ディーナが言いました。
「わあ、ディーナ、凄い!」
カレーを食べていたパトリシアが喜んで言いましたが、彼女のお皿の周りは、スープカレーが飛び散ってちょっと大変な有様です。
「パティちゃんには、こぼさずに食べるのはちょっと難しかったかしらなの」
ディーナが、パトリシアの口許を持ってきていたナプキンで拭いながらニッコリとしました。なんだか用意周到、計画的犯行のようにも思えます。
にしても、途中で屋台放棄しているので、ほとんど漁夫の利の優勝です。
「なお、二位はラーメン、三位は同率でおにぎりとデザートという結果になりました。コンテストへの御協力ありがとうございました。これ以後は、食材の残っている限り、御自由に新しいジェオルジの味を御堪能ください」
「おお、これは、全制覇といきたいぜ」
司会のセンサーレの言葉を聞いて、レイオスが俄然目を輝かせました。
「カレーも、餡こも食べたいですね。ああ、でも、おにぎりもちゃんと全部作ってみなさんに食べてもらわなくちゃ」
ディーナとパトリシアたちの方を見て、ミオレスカも立ちあがります。
「隊長さん、なんだか、好きなの食べてもいいようだよ」
「わーい、食べましょうよ」
兵隊さんたちも、隊長におねだりします。
「そうだな。よし、残った物を急いで買い集めてこい。パーティーの始まりだあ!」
「わーい」
ノリノリで叫ぶ隊長の声を合図に、なくなっては大変だと、人々は思い思いの屋台にむかって、再び走りだしていきました。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/08 00:28:11 |
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ラーメン系?屋台料理の相談 ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 |
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おにぎり系?屋台の相談 ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 |
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デザート系?屋台の相談 ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 |
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カレー系?屋台の相談 ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/05/06 00:58:56 |
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最初の相談? ディーナ・フェルミ(ka5843) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/05/08 11:22:38 |