• 春郷祭1016

【春郷祭】お花の完売を目指せ!

マスター:紡花雪

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/05/11 19:00
完成日
2016/05/17 02:25

みんなの思い出

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オープニング

●春郷祭のはじまり
 同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
 この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催され、郷祭と呼ばれていた。
 この春と秋の郷祭は、二年ほど前から近隣の住人のみならず同盟内の商人達も商機を当て込んで集まる、大規模な祭りとなっている。
 今年も、その春郷祭の季節が廻って来た。
 ジェオルジ各地の村長達の会議は今にも始まりそうで、そこではいつもはない議題が取り上げられる。
 サルヴァト―レ・ロッソからジェオルジ各地に移り住んだ新住人達からの幾つかの要望と、彼らに新たな地での商業を試みる機会を与えるといった内容だ。
 しかし。
 それらとはまた別に、春郷祭はすでにさまざまな意味で賑やかに始まっていた。

●あふれる緑と花の村『ヴェルフィオーレ』
 農耕推進地域ジェオルジで、温暖な気候に恵まれた村ヴェルフィオーレ。
 美しく整った緑の林、丘に広がるのは色とりどりの花畑。芝を敷き詰めた公園の花壇にも季節の花が咲き誇り、村のあちこちに温室や花木が並んでいる。
 造園と園芸の村――人々はヴェルフィオーレのことをそう呼ぶ。栽培した花や樹木を出荷するだけではなく、林業や栽培手法や品種改良の研究、園芸講座や造園工事など、造園と園芸に関わることは何でも行っている。また、近年は村外への出張造園、店舗への植栽の貸し出し、各種フラワーギフトの取り扱いにも力を入れているのだ。
 その穏やかなヴェルフィオーレ村が抱える問題は――観光である。園芸の粋を凝らした公園はあるものの、あくまで園芸の手本としての要素が強く、村全体としては観光向きではないのだ。
 『林業親方』と村人に呼ばれ親しまれる、ヴェルフィオーレ壮年部会のヴィジーは、観光分野での発展を望んでいた。村長を含む老人会の面々は、「そうしたことは若い衆のほうが得意だろうて」と言って、壮年部会長のヴィシーに一任しているのだ。
 観光発展を目指す上で欠かせない行事といえば、春郷祭だ。今年の春郷祭は、花々が咲き誇る庭園広場での露店で、食べ物の出店だけでなく、フラワーアレンジメントの展示即売会を企画している。そのアレンジメントを任されているのが、青年部会長のルシオ・アロティーノである。

●青年部会長の失敗
「……嘘だろ」
「どういうことなんだ、ルシオ。春郷祭のフワラーアレンジメントは、30個じゃなかったか……?」
「ええ……30個です」
「だが、どうだ。これは……90個、だな?」
「ええ……90個です」
 フラワーアレンジメントに欠かせないもの。それは、器である。素材である花はヴェルフィオーレ村でいくらでも用意できるのだが、器はそうはいかない。半月ほど前、ルシオは白磁、青磁、黒檀の3種類を10個ずつ、計30個の器を注文したつもりだったのだが、実際に届いたのは3種類が30個ずつ、計90個だったのである。
「すみません、ヴィシーさん。……どうやら、10個セットじゃなく、30個セットのところに記入しちまったらしい」
 届いた器に同封されていた注文用紙の控えを見ると、記入箇所が一段ずつ下にずれて、30個セットのところに印が付けらていたのだ。
「……仕方ない。何とかして売るしかないだろう。女性部会に応援を頼んだとしても、あっちはあっちで村の花踊りの練習と準備があるしなぁ。ルシオ、今回はお前が30個作る予定だったんだろ?」
「ええ。春郷祭でアレンジメントを売るのは今年が初めてですし、様子見ってことで人員の用意がないんですよ」
「まぁ、フラワーアレンジメントと寄せ植えは、お前が一番うまいしな。そうなると……ハンターオフィスに持って行ってみるかぁ。そのほうが、花踊りも盛り上がるかもしれんな!」
「……ほんと、すみません。俺、今からハンターオフィスに行ってきます」
 春郷祭の幕開けまで、あとわずかな日数しかない。急いでハンターたちに来てもらわなければ、当日に間に合わないだろう。自身の失敗に落ち込みつつも、ルシオは足早にハンターオフィスに向かった。

リプレイ本文

●ヴェルフィオーレ村の春郷祭
 春から初夏に向かう暖かで爽やかな風。野の花畑を揺らし、丘を吹き上がって青葉を囁かせる。
 春郷祭の時季を迎えたヴェルフィオーレ村では、そこかしこで花売りの露店が広がっていた。露店を訪れた少女たちは祭りのときにだけ着られる衣装をまとって、小さな花の髪飾りを店主から受け取っている。
「花に彩られた乙女、想いを花に籠めて贈る青少年……なんて素晴らしいお祭りなんだろうねっ!」
 ヴェルフィオーレ村に到着したハンターたちの中で、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)が声を上げた。彼女はシフォンブラウスと礼装の革鎧で落ち着いた気品を漂わせている。
 村役場の前で、ヴェルフィオーレ村壮年部会のヴィジー・ペルティと青年部会のルシオ・アロティーノがハンターたちを出迎え、フラワーアレンジメントの準備を進めている部屋へと彼らを案内した。
「フワラーアレンジメントは初めてですけど、たくさんの人に手に取ってもらえるように心を籠めて作りたいですっ」
 金髪の少年、ブレナー ローゼンベック(ka4184)が部屋に並んだフラワーアレンジメント用品と花を前に目を輝かせている。
「せっかくのお祭りなんだもの、可愛い花籠を持ってお祭りを回って貰いたいな」
 事前に用意された色とりどりの革紐を手に、ディーナ・フェルミ(ka5843)が楽しそうにヴィジーやルシオと会話をしている。
「無粋者なりに力を尽くさせてもらおう」
 青地に白の流水模様の着物を涼しげに着こなした青年、華彩 惺樹(ka5124)は東方風のアレンジメントの準備を始めていた。
「お花は好きやけど、アレンジメントはやったことないさかい、お勉強も兼ねて教えてもらいながらお手伝いできれば嬉しぃなぁ」
 春の花のような髪色をした豪奢な着物の女性、春日(ka5987)が優しくあたたかな眼差しで用意された花々を見つめている。
「フラワーアレンジメントなんて初めてだからだからワクワクするわ。みんなに喜んでもらえる素敵なものを作らなくちゃね!」
 元気よく明るい声を上げたのは、青髪紫眼の少女、ティリティナ・イスキュロン(ka6171)である。彼女は、たくさんの花を前に目を輝かせていた。
 ルシオがハンターたちにフラワーアレンジメントの説明をし始める。ずらりと並んだ60個の器。それらを手分けして、各々の作業に取り掛かった。

●アレンジメントを作ろう!
 フラワーアレンジメントには、美しく仕上げるための基本形というものがいくつかある。今回は時間がないためにそのすべてを試すわけにはいかないので、その基本形が持つ大事な3つの要素を簡単に押さえておく必要があった。
 まず、アレンジメントの形を左右対称にするか非対称にするか。次は、直線的な形にするか曲線を生かした形にするか。そして3つめは、1方向もしくは正面、横から、上からの3方向から見たときに同じ形であるか。これらの説明を受け、ハンターたちは思い思いに器と花に向き合っている。
 イルムは、青磁の器と黒檀の器を選んでいた。今日は半分だけ製作して、残りは明日の実演販売で仕上げるつもりだ。青磁には、目に鮮やかな赤みの強い花に白や青の小花を添えて色彩豊かにまとめる。黒檀には、真っ白で繊細なレースのような花と、鐘形や星形の真っ青な小花を挿した。あえて蕾を混ぜるのも素敵だ。
 『友達との縁をリボンで繋ぐ』という構想で3色のリボンを用意しているのは、ブレナーだ。白磁の器には橙色、青磁には青色、黒檀には赤色のリボンで飾りつける。花は『友情』の花言葉を持つもので組み合わせた。
 籐籠と革紐籠を製作しているのは、ディーナだ。彼女が選んだ花は、ピンクや黄色などの華やかで軽やかな印象のものだ。そこに小さな巻き花も添える。同時に、ボタンホールを飾れるブートニアを作って用意している。
 東方貴族の跡取りである惺樹は、3種類の器をそれぞれ使って、東方の生け花風のアレンジメントに取り組む。白磁の器は清楚可憐に、淡紫の花を主にして淡水色や淡桃色の花を合わせる。青磁は凛と涼やかに、鮮やかな黄色や青色の花を主にして緑色の葉を多めにする。黒檀は淑やかに気高く、深紅の花を主にして深紫の花を添える。その眼差しは真剣そのものだが、時折愛おしげに完成品を見つめていた。
 春日は、ひとつの器で色合いを統一し、青系、赤系、黄色系、白系、ピンク系の5種類で仕上げる。大振りな花を真ん中にまとめ、その周囲を花冠の形に小花を添えた。ふたつそれぞれを別に楽しむこともできるし、まとまったひとつの作品としても楽しむことができる。
 『お土産用』として、窓辺や玄関に飾れるようなアレンジメントを作っているのは、ティリティナだ。薔薇やチューリップのように大きくて香りのよいものを中央にして、それを囲むように白色の小花や緑の葉を添える。用意しておいた取っ手付きの籠に入れて、可愛らしく仕上げた。
 それぞれの製作を終えたあとも、ハンターたちは販売当日の戦略会議に余念がない。売り場の飾り付けに使う花束や花踊りの衣装飾りになりそうな装飾花の製作、そしてアレンジメントの手入れ法を記したカードもそれぞれに添えた。
 あとは、明日の販売開始を待つばかりである。

●目指せ完売!
 ヴェルフィーレ村の春郷祭、フラワーアレンジメント販売当日――。
 販売開始は朝10時。夕方の花踊りが始まると人出はそちらに集中して、通りの露店もほとんどが店じまいをしてしまう。そうなるともう商品は売れなくなってしまうので、花踊りが始まる16時までに全90個を売り切らなければならない。
 実演販売をするのは、イルム、惺樹、春日の3人だ。ブレナー、ディーナ、ティリティナは売り子として販売を手伝う。
 徐々に人通りが増え、そこかしこで賑やかな声が上がり始めた。からんからんと、どこかの店の主人が鐘を鳴らし、祭りの開宴が告げられた。
 フラワーアレンジメントの露店は、イルムとティリティナによって人目を惹くように、華やかな雰囲気で飾られた。
 チラシとポスターで宣伝に回っているのは、ティリティナだ。『限定』の文字には、誰しも弱いものだ。
「ハンターが作ったのは、60個だけですよ!」
 花の妖精に扮したティリティナが声をかけると、村人も楽しそうな笑顔を見せる。
 イルムは持ち前の人当たりの良さで周囲の露店主と打ち解け、花を置かせてもらえるように交渉を成立させていた。それから、露店でフラワーアレンジメントの実演をしながらの接客を始めた。女性客との何気ない会話から、その女性に合った花言葉をこめた花のアレンジメントを勧めている。
 売り子として露店の前に立つブレナーは、立ち止まった観光客にフラワーアレンジメントの魅力を話して伝え、どうぞ手に取って見てくださいと巧みな話術でアレンジメントを紹介している。華やかで可愛らしいアレンジメントに惹かれた男性が、プレゼント用にと購入していった。
「いらっしゃいませ。持ち歩ける花籠はいかがですかなの。ブートニアも2つ付いてるの」
 籐籠と革紐籠に収められた花籠を手にして客呼びをしているのは、ディーナだ。可愛らしいブートニアが付いた花籠は、ヴェルフィオーレ村の春郷祭で持ち歩くにはぴったりだ。
 実演販売を担当する惺樹は、太い竹と細い竹を巧みに用いて器や花籠にし、店頭にやってきた女性客と会話しながら東方風のアレンジメントを製作している。好きな花言葉や色を訊ね、それに合わせた花を組み合わせていく。そしてアレンジメントには、東方風の装飾花が添えられていた。
「心を込めて作らせてもらった。嘉き一日になるよう祈っている」
 春日もまた、客に用途や要望を聞きながら花を組み合わせていた。感謝を示すもの、友情を示すもの、家族愛、恋人、思い出――花言葉や色合いを重ねながら、今日の記念になるよう心をこめて製作していく。昨日作っておいたものとは少しずつ違い、一点もののようなアレンジメントはとても目を惹くものとなった。
 販売補助のブレナー、ディーナ、ティリティナの尽力もあり、フラワーアレンジメントの露店には瞬く間に大行列ができた。完売を迎えたのは、予定よりもずっと早い15時前だった。ハンターたちは達成感とともに休憩を取り、やがて始まる花踊りに備えることにした。

●花舞う踊り
 どこからともなく、笛の音が響く。
 陽が傾き始めると、人波は広場へと向かい始める。
 人々は村の礼装である衣装で小さな花束を手に持ち、初夏らしい藁帽子もさまざまな花で彩られている。花踊りの開幕だ――。
 すでに少年少女が楽しそうに踊っているところにハンターたちが現れると、村人も観光客も一緒になっての大きな拍手が沸き起こった。
 格調高い礼装と帯びたレイピアに花の飾りを施したイルムは、踊りの輪に加わっていた村娘に声をかけている。
「素敵な子ばかりだから、エスコートのし甲斐があるなぁ」
 村娘と踊ったあとには、『信頼』の花言葉をこめた花束をブレナーに手渡した。
「――ありがとうございます! それにしてもイルムさんは絵になりますね~、とっても綺麗ですっ」
 ブレナーは受け取った花束を持って、村の少年少女たちが踊る輪に加わっていった。
「花とお祭りがみんなを笑顔にしてくれるの……すごくうれしいの」
 ディーナは惺樹や春日とともに花踊りと眺めながら、幸せそうな笑みを浮かべていた。踊る村人たちの中には、彼女が製作したブートニアを衣装に飾っているひともいる。
「花が笑顔を作る……最高の祭りだな」
 少し照れくさそうにしていた惺樹だが、皆に踊りに誘われて一緒に踊るうちに、次第に楽しげな笑顔を見せるようになっていた。
「新しい唄や踊り、覚えて帰れたら嬉しいなぁ」
 東方の舞踊の心得がある春日は、ヴェルフィオーレ村の民謡や花踊りのステップに惹かれるようにして村人と一緒に踊り始めた。
「ふふん、わたしは立派なレディーだから、もちろんダンスも得意なのよ」
 花の妖精のようにふわりと華やかに装ったティリティナは、彼女と同じ12歳前後の少年少女の輪に混ざっていった。くるくる回りながら、幼いころに友達とこうして踊ったことを思い出していた。
 入れ替わり立ち替わり、花が咲いて風に舞う様子を表した踊りがしばらく続いたあと、空の色が変わり始めたころに花踊りはひとまず終わりを迎える。ハンターたちは村人たちに招かれ、ガーデンパーティーを楽しむこととなった。皆が彼らを歓迎している。
 ヴェルフィオーレ村では、花踊りのあとの花束を大事なひとと交換し、言葉を交わすことになっている。それは信頼や友情の証であったり、愛の約束であったりもする。花が綻ぶように、笑顔があふれる祭り――それが、ヴェルフィオーレ村の春郷祭である。

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MVP一覧

  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレka5113
  • この力は愛しき者の為に
    華彩 惺樹ka5124

重体一覧

参加者一覧

  • 刃の先に見る理想
    ブレナー ローゼンベック(ka4184
    人間(蒼)|14才|男性|闘狩人
  • 凛然奏する蒼礼の色
    イルム=ローレ・エーレ(ka5113
    人間(紅)|24才|女性|舞刀士
  • この力は愛しき者の為に
    華彩 惺樹(ka5124
    人間(紅)|21才|男性|舞刀士
  • 灯光に託す鎮魂歌
    ディーナ・フェルミ(ka5843
    人間(紅)|18才|女性|聖導士
  • 太陽を写す瞳
    春日(ka5987
    人間(紅)|17才|女性|符術師

  • ティリティナ・イスキュロン(ka6171
    人間(蒼)|12才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/08 19:36:21
アイコン 色とりどりの花に囲まれて
イルム=ローレ・エーレ(ka5113
人間(クリムゾンウェスト)|24才|女性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2016/05/11 16:45:22