ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】遊ぶ少年たち
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~7人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/15 07:30
- 完成日
- 2016/05/21 19:38
このシナリオは3日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
自由都市同盟。
農耕推進地域ジェオルジ近辺、とある小さな村。
しばらく一人旅をしていたラキ(kz0002)は、祭りで賑わう人々の様子を見ながら、広場へと続く通りを歩いていた。
「なんだか、こういう雰囲気、久し振りね」
出店に並ぶ子供たち、売り買いに懸命な商人たち、音楽隊が奏でる音色。
活気に満ちた村の風景に、ラキの心は自然とワクワクしていた。
ふと、野菜売りの店主が声を荒げた。
「こらあ、イタズラ小僧、また来たな」
数人の少年たちは野菜を盗み取ると、ラキに向かって投げ飛ばす。
「え、なんなの、いきなり」
とっさに回避するラキ。
少年たちはフードを深く被り、布の服を着ていたが、割と素早い動きで逃げていった。
突然のことで驚きながらも、ラキは地面に落ちた野菜を拾い上げて、店主に手渡した。
「大丈夫ですか?」
「なに、子供のイタズラだ。気にするな。祭りが楽しくて、はっちゃけてるだけだろうよ」
店主はやれやれと思いつつも、ラキに礼を言う。
「ありがとよ、嬢ちゃん。ここに来るのは初めてかい?」
「はい、噂では聞いていたけど、実際に祭りを見たくて来ちゃいました」
ラキが楽しそうに笑う。
店主は何かを思い出したように目を見開いた。
「おっ、そういや、去年の秋に参加していたマクシミリアン・ヴァイスって男も来てるみたいだぜ。相変わらずツンツン顔だが、根は良いヤツだから、良かったら誘ってやりなよ」
「マクシミリアンか……確か訓練場にいたハンターだったよね」
ラキは、以前から気になることがあり、ぜひとも彼に会って、どういうことなのか確かめたいことがあった。
●
一方、路地裏では。
「マクシミリアンさん、警備の闘狩人たちが『ソウルトーチ』を使っても、反応が無い少年たちがいるっす」
水本 壮(みずもと・そう)は、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)と同行して祭りに参加していた。
「スコットの予想通りだったな。この村には『鉄の人形』が紛れ込んでいる可能性がある」
魔術師協会に所属するスコットに頼まれて、マクシミリアンたちは村の中を調べていたのだ。
「どうしたら、少年たちを誘き寄せることができるっすかねー」
壮が欠伸をしながら言うと、マクシミリアンは壮の腕を掴んだ。
「な、なんのつもりっすか?」
「こうするまでだ」
マクシミリアンは有無も言わせぬ勢いで、壮を路地裏から通りへと突き出した。
「どういうつもりっすか?」
首を傾げる壮。
気が付けば、少年たちに囲まれていた。
「なんだ、おまえらは。俺になんか用か?」
少年たちは不敵な笑みを浮かべると、壮に狙いを定めて芋を投げつけた。
「いってーな。なにしやがる!」
さすがの壮も、怒り心頭。芋は全て壮の顔に命中した。
「あなた達、またイタズラしてるの?」
ラキが騒動に気が付いて、近寄ってきた。
少年たちはマクシミリアンの姿を見ると、その場から逃走した。
「……やはりな」
路地裏から出てきたマクシミリアンは、納得したように呟いた。
「何が『やはりな』っすか。俺が何したって言うんだよ」
壮は子供のようにマクシミリアンの背中を何度も叩いていた。
「おまえは何もしていない。あの少年たちが、水本を引っかけようとしているらしい」
「そんなこと、誰が言ったっすか」
壮が地団駄を踏むが、マクシミリアンは全く気にしていなかった。
「あの、もしかして、マクシミリアン?」
ラキが戸惑いながら声をかけると、壮は我に返り、身形を整えながら言った。
「お見苦しいところを見せて申し訳ない。俺は水本 壮。それで、隣にいるのがマクシミリアン・ヴァイスだ」
「あたしはラキ。……マクシミリアン、会いたかったよ。ずっと聞きたいことがあって」
ラキは頬を染めながら、マクシミリアンに近付く。
「なんだ?」
「……えっとね……以前から気になることがあって」
照れ笑いのラキ。
「なんすか……このムードは……まさか、まさか……」
壮の脳裏にリアルブルーにいた頃……中学時代の思い出が蘇る。
自分の目の前で、好きだった少女が、別のクラスメイト男子に告白している場面を……。
「こっちの世界でもなのかー」
項垂れる壮。
ラキは今まで胸に秘めていたことをマクシミリアンに告げた。
「あのね、訓練場にペット受付の窓口があるけど、どうしてなのかな?」
興味津々に目を輝かせるラキ。
マクシミリアンは淡々と応えた。
「訓練場の近辺にはペット専用の施設がある。動物の力を借りて発動するスキルもあるからな。そうしたスキルは相棒の動物を連れてスキルを修得するハンターもいる」
「そういうことだったんだね。言われてみれば、馬に騎乗して使うスキルとかあるよね」
ラキがそう言った後、悲鳴が聴こえてきた。
「キャー! 私の猫ちゃんがーっ!」
「俺の大切な犬がぁぁぁぁーっ!」
叫び声があった方角に向うと、猫や犬の顔に落書きをしている少年たちがいた。
マクシミリアンたちが駆け寄ると、少年たちはすぐさま逃げ出した。
飼い主たちはペットを抱えると、自宅に引きこもってしまった。
「イタズラにしては、やり過ぎじゃないの!」
ラキが怒る。飼い主たちにとっては大切なペットたち。
そのペットたちにイタズラをして楽しむなど、言語道断だ。
「あの少年たちを野放しにしていたら、さらに行為は酷くなっていくだろうな」
マクシミリアンがそう言うと、ラキは拳を握り締めた。
「だとしたら許せないよ」
「そうだな。相手は嫉妬の歪虚だ。遠慮はいらない」
当然のように言い切るマクシミリアン。
「あの子たち、歪虚なの?! だったら尚更、捕まえないと」
ラキの言葉に、マクシミリアンが頷く。
「まだ村人たちは少年たちの正体に気付いていない。歪虚だと分かれば混乱するだろう」
「そうだね。だけど、村長さんには話しておこうよ」
ラキの提案に、マクシミリアンも異論はなかった。
魔術師協会広報室も陰ながら村の警護を支援していたが、嫉妬の歪虚を退治するため、さらにハンターを募集することにした。
農耕推進地域ジェオルジ近辺、とある小さな村。
しばらく一人旅をしていたラキ(kz0002)は、祭りで賑わう人々の様子を見ながら、広場へと続く通りを歩いていた。
「なんだか、こういう雰囲気、久し振りね」
出店に並ぶ子供たち、売り買いに懸命な商人たち、音楽隊が奏でる音色。
活気に満ちた村の風景に、ラキの心は自然とワクワクしていた。
ふと、野菜売りの店主が声を荒げた。
「こらあ、イタズラ小僧、また来たな」
数人の少年たちは野菜を盗み取ると、ラキに向かって投げ飛ばす。
「え、なんなの、いきなり」
とっさに回避するラキ。
少年たちはフードを深く被り、布の服を着ていたが、割と素早い動きで逃げていった。
突然のことで驚きながらも、ラキは地面に落ちた野菜を拾い上げて、店主に手渡した。
「大丈夫ですか?」
「なに、子供のイタズラだ。気にするな。祭りが楽しくて、はっちゃけてるだけだろうよ」
店主はやれやれと思いつつも、ラキに礼を言う。
「ありがとよ、嬢ちゃん。ここに来るのは初めてかい?」
「はい、噂では聞いていたけど、実際に祭りを見たくて来ちゃいました」
ラキが楽しそうに笑う。
店主は何かを思い出したように目を見開いた。
「おっ、そういや、去年の秋に参加していたマクシミリアン・ヴァイスって男も来てるみたいだぜ。相変わらずツンツン顔だが、根は良いヤツだから、良かったら誘ってやりなよ」
「マクシミリアンか……確か訓練場にいたハンターだったよね」
ラキは、以前から気になることがあり、ぜひとも彼に会って、どういうことなのか確かめたいことがあった。
●
一方、路地裏では。
「マクシミリアンさん、警備の闘狩人たちが『ソウルトーチ』を使っても、反応が無い少年たちがいるっす」
水本 壮(みずもと・そう)は、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)と同行して祭りに参加していた。
「スコットの予想通りだったな。この村には『鉄の人形』が紛れ込んでいる可能性がある」
魔術師協会に所属するスコットに頼まれて、マクシミリアンたちは村の中を調べていたのだ。
「どうしたら、少年たちを誘き寄せることができるっすかねー」
壮が欠伸をしながら言うと、マクシミリアンは壮の腕を掴んだ。
「な、なんのつもりっすか?」
「こうするまでだ」
マクシミリアンは有無も言わせぬ勢いで、壮を路地裏から通りへと突き出した。
「どういうつもりっすか?」
首を傾げる壮。
気が付けば、少年たちに囲まれていた。
「なんだ、おまえらは。俺になんか用か?」
少年たちは不敵な笑みを浮かべると、壮に狙いを定めて芋を投げつけた。
「いってーな。なにしやがる!」
さすがの壮も、怒り心頭。芋は全て壮の顔に命中した。
「あなた達、またイタズラしてるの?」
ラキが騒動に気が付いて、近寄ってきた。
少年たちはマクシミリアンの姿を見ると、その場から逃走した。
「……やはりな」
路地裏から出てきたマクシミリアンは、納得したように呟いた。
「何が『やはりな』っすか。俺が何したって言うんだよ」
壮は子供のようにマクシミリアンの背中を何度も叩いていた。
「おまえは何もしていない。あの少年たちが、水本を引っかけようとしているらしい」
「そんなこと、誰が言ったっすか」
壮が地団駄を踏むが、マクシミリアンは全く気にしていなかった。
「あの、もしかして、マクシミリアン?」
ラキが戸惑いながら声をかけると、壮は我に返り、身形を整えながら言った。
「お見苦しいところを見せて申し訳ない。俺は水本 壮。それで、隣にいるのがマクシミリアン・ヴァイスだ」
「あたしはラキ。……マクシミリアン、会いたかったよ。ずっと聞きたいことがあって」
ラキは頬を染めながら、マクシミリアンに近付く。
「なんだ?」
「……えっとね……以前から気になることがあって」
照れ笑いのラキ。
「なんすか……このムードは……まさか、まさか……」
壮の脳裏にリアルブルーにいた頃……中学時代の思い出が蘇る。
自分の目の前で、好きだった少女が、別のクラスメイト男子に告白している場面を……。
「こっちの世界でもなのかー」
項垂れる壮。
ラキは今まで胸に秘めていたことをマクシミリアンに告げた。
「あのね、訓練場にペット受付の窓口があるけど、どうしてなのかな?」
興味津々に目を輝かせるラキ。
マクシミリアンは淡々と応えた。
「訓練場の近辺にはペット専用の施設がある。動物の力を借りて発動するスキルもあるからな。そうしたスキルは相棒の動物を連れてスキルを修得するハンターもいる」
「そういうことだったんだね。言われてみれば、馬に騎乗して使うスキルとかあるよね」
ラキがそう言った後、悲鳴が聴こえてきた。
「キャー! 私の猫ちゃんがーっ!」
「俺の大切な犬がぁぁぁぁーっ!」
叫び声があった方角に向うと、猫や犬の顔に落書きをしている少年たちがいた。
マクシミリアンたちが駆け寄ると、少年たちはすぐさま逃げ出した。
飼い主たちはペットを抱えると、自宅に引きこもってしまった。
「イタズラにしては、やり過ぎじゃないの!」
ラキが怒る。飼い主たちにとっては大切なペットたち。
そのペットたちにイタズラをして楽しむなど、言語道断だ。
「あの少年たちを野放しにしていたら、さらに行為は酷くなっていくだろうな」
マクシミリアンがそう言うと、ラキは拳を握り締めた。
「だとしたら許せないよ」
「そうだな。相手は嫉妬の歪虚だ。遠慮はいらない」
当然のように言い切るマクシミリアン。
「あの子たち、歪虚なの?! だったら尚更、捕まえないと」
ラキの言葉に、マクシミリアンが頷く。
「まだ村人たちは少年たちの正体に気付いていない。歪虚だと分かれば混乱するだろう」
「そうだね。だけど、村長さんには話しておこうよ」
ラキの提案に、マクシミリアンも異論はなかった。
魔術師協会広報室も陰ながら村の警護を支援していたが、嫉妬の歪虚を退治するため、さらにハンターを募集することにした。
リプレイ本文
もこもこ飯の屋台で、ご飯を試食していた玉兎 小夜(ka6009)は、逃走する少年たちを見つけて、事の次第を知った。
「せっかくの祭りなのに、邪魔者が入ったみたいだねー」
小夜は「ごちそうさま」と言うと、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)の後を追って、村長の屋敷へと向った。
騒ぎを聞き付け、鞍馬 真(ka5819)も出店の菓子を片手に持ち、歩き出した。
「皆が祭りを楽しんでいるというのに、誰であろうと許し難いな」
真が菓子を食べ終わった頃には、村長宅に辿り着いた。
門の前にいたラキ(kz0002)が手招きしている。
「ここだよ。まずは準備から始めよう」
部屋の中に案内されると、すでにマリィア・バルデス(ka5848)が何やら作業をしていた。
「これでよしっと。簡易的なものだけど、村長から布切れを貰って作ってみたわ」
マリィアは人数分の腕章を作り、『自警団手伝い』と手書きした。
村にも自警団はいたが、一般人の男性ばかりだった。ハンターが手伝ってくれるなら頼もしいと村長も賛成してくれたのだ。
「今回の歪虚は動物も狙ってるらしいよね。だったら、遠慮はしないよ!」
Honor=Unschuld(ka6274)にとっても、動物は大切な存在だった。
「アナ、興奮し過ぎて、皆さんにご迷惑をかけないように」
月影 葵(ka6275)はHonorを「アナ」と呼び、会釈した。
「ふぇぇ、ごめんなさい。ここは冷静にならないとね」
アナは葵に言われて、皆にお辞儀をした。
「ボクは北側を廻るね」
「なら、私も北へ行くわ」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)はさっさと鉄の人形を退治して、祭りを楽しみたかった。
「虎猫を連れてきたわ。これで引っかかってくれると良いけど」
と言いつつ、出店に並ぶ料理を想像するアルスレーテ。
「水本様、鉄の人形に狙われる心当たりはありますか?」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は、水本 壮(みずもと・そう)が嫉妬の念により狙われているのではと推測していたが、壮は全く気付いていなかった。
「俺には、さっぱり分からないっす」
壮に自覚がなくても、嫉妬の感情が鉄の人形を誘き寄せている可能性は十分にある。かと言って、それだけが理由ではないだろう。
多かれ少なかれ『ヒト』には感情があるからだ。
(……何故、水本様が?)
壮の心に隠された何かを、レイは感じ取っていた。
それはまだ嫉妬に秘められた不可視なもの……見えない思念であることは確かだ。
だが、それ故、レイは深く追求することはしなかった。
「それでは、私は東側に廻り、南にある空き地まで鉄の人形たちを追い込むように動いてみます」
レイは祭りに配慮して、ハルバード「ヒュペリオン」を布で巻き、背に掛けた。
マリィアも東に行くことにして、皆に手作りの腕章を一つずつ渡した。
「歪虚と言っても、傍目からすれば少年を追いかける訳だから、少しでも不安材料は減らしておきたいしね」
そのための腕章でもあるが、依頼が終わったら村長に返すことになった。
葵は丁寧に受け取った。
「私は腕章を付けて、東側から見回りをしてみます」
アナは葵に腕章を付けてもらい、思わずニッコリ。
「西側は、私と水本、それから小夜さんに来てもらえると助かる」
真はペットを連れていなかったため、小夜が兎を同行させて、敵を引き付けるつもりでいた。
「任せて。西に着いたら、すぐに作戦開始だね」
こうして、ハンターたちの『イタズラ少年、捕獲作戦』が始まった。
葵の提案で、ラキは西側、マクシミリアンとスコットは北側を警備することになった。
●
東の通りにて。
葵は腕章を付けて、定期的にトランシーバーで仲間と連絡を取り合いながら見回りをしていたこともあり、村人たちから「助かるよ」などと声をかけられた。
(これもマリィアさんが作ってくれた腕章のおかげですね)
周辺の様子を見ながら、葵はグレイハウンドとスターリングシルバーを連れて通りを歩いていた。
物陰から少年が姿を現し、葵のグレイハウンドに接近して落書きの体勢を取った。
「申し訳ありませんが、そうはさせませんよ」
葵は愛犬を庇うように、少年の前に立ちはだかった。
とっさにレイが村人たちに注意を促す。
「只今、少年たちが動物を見つけると『この世のものとは思えないほどの落書きをする』という、イベントが発生しました。犬や猫、小動物を飼っておられる方は、御自宅にお隠れになってください」
レイの機転により、ペットを連れている者たちがすぐさま自宅へと入り、窓から様子を窺っていた。
これで経路が確保できた。
マリィアは『直感視』を使い、犬を連れて南の空地へと続く道を歩いていた。
「来たわね」
少年一人が野菜を投げつけてきた。
回避することは簡単だったが、マリィアは少しイラついていた。
「村の中で野菜を銃で撃ち落とす訳にもいかないし、地味にムカつくわね」
発砲すれば事件だと思われ、村人たちがパニック状態になる可能性が高い。
マリィアは愛犬たちに野菜が当たらないように注意しながら、ゆっくりと南へと少年を誘導していく。
レイはパルムと狛犬を連れていたが、少年の狙いは狛犬だけだったようだ。
パルムがレイの肩に乗り、狛犬が走り出すと、少年は芋を投げ飛ばしてきた。
布で包んだハルバード「ヒュペリオン」で受け流すレイ。
少年は遊び相手が見つかり、うれしそうに南へと駆け出した。
北側では。
「ほらほら、私を捕まえてごらんなさい」
道化師の仮面を付けたアルスレーテは、虎猫二匹を抱えて、人混みの中をすり抜けていく。
村の子供たちが楽しそうに付いて来るが、肝心の少年が現れない。
アルスレーテは立ち止り、ゆっくりと座り込んだ。
「……人がたくさん……ふぅ…どこにいるのかしら?」
どうにも人が多い場所は苦手であったが、アルスレーテは村の子供たち一人一人に握手。
少し離れた場所から犬の鳴き声が聴こえてきた。
アナが連れていたダックスフンドが吠えていたのだ。
「ボクのインコ、返してよ!」
大事なインコを奪われて、アナが怒ると、少年はインコを手放した。
「大丈夫? 痛くない?」
アナはインコを優しく撫でると、犬を連れて南へと走り出した。
「こっちまで、おいでー」
目的地に誘導するため、アナは少年と付かず離れずの距離から叫んだ。
虎猫を抱えたアルスレーテも、ふらふらと歩き出した。
「かわいい猫がいるわよ。いらっしゃい」
少年は動物たちに釣られて、南へと向った。
一方、西の通りでは、壮がいたせいか、少年は野菜を投げまくっていた。
「だから、なんで俺ばっかりー」
壮は自分でも何故、狙われるのか見当がつかなかった。
「かもーん、月兎、因幡!」
小夜の呼び掛けに、うさうさ隊の配下である兎二匹が姿を現した。
少年は兎に気付き、警戒しながら小夜に近付いていく。
小夜は小柄な因幡を抱っこして、月兎は足元で丸くなっていた。
兎たちの鼻がヒクヒク。
背中の柔らかなラインを撫でる小夜。
うさうさ、うさうさ。
その仕草に刺激されて、少年は小夜の後を追いかける。
「ふっ、ちょろいな」
南へと向う小夜を見送り、真はトランシーバーで仲間と連絡を取った。
「私もこれから南へ行く。空き地に着いたら、戦闘開始になりそうだな」
『ボクも、南へ向ってる途中だよ。手筈通りにいくといいね』
応答したのは、アナだ。
「では、行くとしよう」
イタズラ少年を追いかけて、真は南へと駆けていく。
その姿は、至って鬼ゴッコをしているようであった。
●
南の空き地に辿り着き、動物たちはハンターたちから離れた場所で待機していた。
「まんまと引っかかったな、まあ、無理もない。兎が最強だと思い知らせてしまったな」
小夜は『一之太刀』で攻撃体勢に入った。盈月は思うように発動しなかったが、通常攻撃で斬り付けることができた。
「動物たちにイタズラするなんて、それだけは絶対にやっちゃいけないんだ!」
アナは『瞬脚』を発動させ、聖機剣「タンホイザー」で鉄の人形に攻撃をしかけた。
「せっかくの楽しい一時を邪魔するとは、不届きだな」
真は後衛から短弓「ファルコン」で矢を放つ。鉄の人形一体に命中して、肩に突き刺さった。
覚醒した葵の全身が青いオーラに包まれる。
「歪虚ならば、相手にとって不足はありません」
葵は刀「紅丸」による『円舞』からの攻撃を繰り出し、人形一体の胴部を切り裂く。
続いて、アルスレーテが鉄扇「北斗」で人形に触れ『鎧徹し』を発動。鎧の防御を無視した打撃により、人形の左腕が砕け散る。
「嫉妬の歪虚が祭りに紛れ込んでいたなんて、どうしてかしらね」
「村人たちが気付く前に、殲滅するわよ」
マリィアが神罰銃「パニッシュメント」とリボルバー「グラソン」を構えて『ダブルファイア』を放った。
人形二体に命中し、そのうちの一体が消滅していく。
歪虚は人を傷つける。ならば、人は……?
あらゆる感情が渦巻いてくる。
それを解き放つように、前衛にいたレイが『ワイルドラッシュ』を叩き込み、別の人形が一体、消えていく。
「残り一体です」
鉄の人形が『ダブルシューティング』でダーツを投げつけてくるが、小夜は斬魔刀「祢々切丸」を構えて『肉斬骨断』の技で反撃。
身体の表面が砕け散る鉄の人形……かなりのダメージを受けていたが、まだ全身は残っていた。
アナが覚醒して妖艶な顔立ちになり、『ドッジダッシュ』で敵のダーツを受け流す。
「ふふっ」
唇を舐めながら、聖機剣「タンホイザー」で攻撃をしかけるアナ。だが、自分の覚醒した姿に自覚はなかった。
「逃しはしない」
真は試作振動刀「オートMURAMASA」を振りかざし、『踏込』からの『強打』を、残りの人形に狙いを定めて打ち込んだ。衝撃が走り、鉄の人形は粉々になって、消滅した。
「……平気みたいね」
マリィアは周辺に村人がいないか確認してみたが、誰もいなかった。
どうやら銃の音は、音楽隊の曲で消されていたようだ。
広場から、賑やかな音楽が響き渡っていた。
●
村人たちは歪虚がいたことも知らず、祭りは大いに盛り上がっていた。
広場にて、葵が舞踊を披露すると、アナが楽しそうに朗らかな声で小鳥に纏わる歌を唄う。
真は横笛を取り出し、指を動かしながら音色を奏でる。
踊り、歌、笛の音。
三つが調和して、穏やかな雰囲気に包まれた。
葵が御辞儀すると、観ていた人々が拍手していた。
アナは皆の笑顔を見渡して、お日様のような笑みを浮かべた。
「みんな、ありがとう!」
「……やはり演奏して良かった」
真もまた、喜びに満ちた表情をしていた。
ラキが駆け寄ってきた。
「すごいね、あたしも感動しちゃったよ」
「ありがとうございます」
葵が手を差し伸べ、ラキと握手。
アナはマクシミリアンに声をかけた。
「挨拶代わりに歌ってみたんだ」
「落ち着いて観たのは久し振りだった」
マクシミリアンなりの賛辞であった。彼は巧みに褒めることができなかったが、内心は楽しいと感じていたのだ。
「目つきの悪いアンちゃん、みっけ。怪我は治った?」
小夜は兎たちに地面に落ちていた野菜を食べさせていたが、マクシミリアンがいることに気が付いた。
「怪我はない。それよりも小夜、腕を上げたな」
「さすがアンちゃん、見る目があるねー」
小夜はマクシミリアンの傷跡が気になっていたが、それは歴戦の名残なのだろうと思った。
「マクシミリアン、射的で勝負よ」
マリィアは最終日まで見回りすることに決め、その合間、祭りに参加することにした。
マクシミリアンはマリィアと五回勝負をしたが、引き分けになった。
「もう一回、勝負するわよ」
「良いだろう」
マクシミリアンとマリィアの射的勝負は、良い気分転換になっていた。
壮と言えば、レイと一緒に通りを歩いていた。
「水本様、今回も何か悩みでもあったのですか?」
レイが壮にジュースを手渡す。
「……レイさんは良いよな」
「はい?」
「レイさんは男の俺から見ても綺麗だからモテるんだろうな」
壮の意外な言葉に、レイは少し戸惑っていた。
「え、あの、それは、私は客観視したことがないので、なんとも」
「真さん、レイさんを見てどう思う?」
壮が言うと、真はしばらく考えてから答えた。
「キレイか」
「だろー、やっぱり」
壮は勢いよくジュースを飲み干した。
その頃、アルスレーテはご当地料理の出店を廻り、至福の時を過ごしていた。
恋人から言われた言葉を思い出すが、すぐにかき消すアルスレーテ。
「文句を言われても、聞こえないわよ。運動したから、カロリー補給なの、補給!」
視線の先に、とある出店で、何やら食べている小夜。
「うまー」
「私も、それ一つ」
アルスレーテは、心ゆくまで買い食いを楽しむことにした。
「せっかくの祭りなのに、邪魔者が入ったみたいだねー」
小夜は「ごちそうさま」と言うと、マクシミリアン・ヴァイス(kz0003)の後を追って、村長の屋敷へと向った。
騒ぎを聞き付け、鞍馬 真(ka5819)も出店の菓子を片手に持ち、歩き出した。
「皆が祭りを楽しんでいるというのに、誰であろうと許し難いな」
真が菓子を食べ終わった頃には、村長宅に辿り着いた。
門の前にいたラキ(kz0002)が手招きしている。
「ここだよ。まずは準備から始めよう」
部屋の中に案内されると、すでにマリィア・バルデス(ka5848)が何やら作業をしていた。
「これでよしっと。簡易的なものだけど、村長から布切れを貰って作ってみたわ」
マリィアは人数分の腕章を作り、『自警団手伝い』と手書きした。
村にも自警団はいたが、一般人の男性ばかりだった。ハンターが手伝ってくれるなら頼もしいと村長も賛成してくれたのだ。
「今回の歪虚は動物も狙ってるらしいよね。だったら、遠慮はしないよ!」
Honor=Unschuld(ka6274)にとっても、動物は大切な存在だった。
「アナ、興奮し過ぎて、皆さんにご迷惑をかけないように」
月影 葵(ka6275)はHonorを「アナ」と呼び、会釈した。
「ふぇぇ、ごめんなさい。ここは冷静にならないとね」
アナは葵に言われて、皆にお辞儀をした。
「ボクは北側を廻るね」
「なら、私も北へ行くわ」
アルスレーテ・フュラー(ka6148)はさっさと鉄の人形を退治して、祭りを楽しみたかった。
「虎猫を連れてきたわ。これで引っかかってくれると良いけど」
と言いつつ、出店に並ぶ料理を想像するアルスレーテ。
「水本様、鉄の人形に狙われる心当たりはありますか?」
レイ・T・ベッドフォード(ka2398)は、水本 壮(みずもと・そう)が嫉妬の念により狙われているのではと推測していたが、壮は全く気付いていなかった。
「俺には、さっぱり分からないっす」
壮に自覚がなくても、嫉妬の感情が鉄の人形を誘き寄せている可能性は十分にある。かと言って、それだけが理由ではないだろう。
多かれ少なかれ『ヒト』には感情があるからだ。
(……何故、水本様が?)
壮の心に隠された何かを、レイは感じ取っていた。
それはまだ嫉妬に秘められた不可視なもの……見えない思念であることは確かだ。
だが、それ故、レイは深く追求することはしなかった。
「それでは、私は東側に廻り、南にある空き地まで鉄の人形たちを追い込むように動いてみます」
レイは祭りに配慮して、ハルバード「ヒュペリオン」を布で巻き、背に掛けた。
マリィアも東に行くことにして、皆に手作りの腕章を一つずつ渡した。
「歪虚と言っても、傍目からすれば少年を追いかける訳だから、少しでも不安材料は減らしておきたいしね」
そのための腕章でもあるが、依頼が終わったら村長に返すことになった。
葵は丁寧に受け取った。
「私は腕章を付けて、東側から見回りをしてみます」
アナは葵に腕章を付けてもらい、思わずニッコリ。
「西側は、私と水本、それから小夜さんに来てもらえると助かる」
真はペットを連れていなかったため、小夜が兎を同行させて、敵を引き付けるつもりでいた。
「任せて。西に着いたら、すぐに作戦開始だね」
こうして、ハンターたちの『イタズラ少年、捕獲作戦』が始まった。
葵の提案で、ラキは西側、マクシミリアンとスコットは北側を警備することになった。
●
東の通りにて。
葵は腕章を付けて、定期的にトランシーバーで仲間と連絡を取り合いながら見回りをしていたこともあり、村人たちから「助かるよ」などと声をかけられた。
(これもマリィアさんが作ってくれた腕章のおかげですね)
周辺の様子を見ながら、葵はグレイハウンドとスターリングシルバーを連れて通りを歩いていた。
物陰から少年が姿を現し、葵のグレイハウンドに接近して落書きの体勢を取った。
「申し訳ありませんが、そうはさせませんよ」
葵は愛犬を庇うように、少年の前に立ちはだかった。
とっさにレイが村人たちに注意を促す。
「只今、少年たちが動物を見つけると『この世のものとは思えないほどの落書きをする』という、イベントが発生しました。犬や猫、小動物を飼っておられる方は、御自宅にお隠れになってください」
レイの機転により、ペットを連れている者たちがすぐさま自宅へと入り、窓から様子を窺っていた。
これで経路が確保できた。
マリィアは『直感視』を使い、犬を連れて南の空地へと続く道を歩いていた。
「来たわね」
少年一人が野菜を投げつけてきた。
回避することは簡単だったが、マリィアは少しイラついていた。
「村の中で野菜を銃で撃ち落とす訳にもいかないし、地味にムカつくわね」
発砲すれば事件だと思われ、村人たちがパニック状態になる可能性が高い。
マリィアは愛犬たちに野菜が当たらないように注意しながら、ゆっくりと南へと少年を誘導していく。
レイはパルムと狛犬を連れていたが、少年の狙いは狛犬だけだったようだ。
パルムがレイの肩に乗り、狛犬が走り出すと、少年は芋を投げ飛ばしてきた。
布で包んだハルバード「ヒュペリオン」で受け流すレイ。
少年は遊び相手が見つかり、うれしそうに南へと駆け出した。
北側では。
「ほらほら、私を捕まえてごらんなさい」
道化師の仮面を付けたアルスレーテは、虎猫二匹を抱えて、人混みの中をすり抜けていく。
村の子供たちが楽しそうに付いて来るが、肝心の少年が現れない。
アルスレーテは立ち止り、ゆっくりと座り込んだ。
「……人がたくさん……ふぅ…どこにいるのかしら?」
どうにも人が多い場所は苦手であったが、アルスレーテは村の子供たち一人一人に握手。
少し離れた場所から犬の鳴き声が聴こえてきた。
アナが連れていたダックスフンドが吠えていたのだ。
「ボクのインコ、返してよ!」
大事なインコを奪われて、アナが怒ると、少年はインコを手放した。
「大丈夫? 痛くない?」
アナはインコを優しく撫でると、犬を連れて南へと走り出した。
「こっちまで、おいでー」
目的地に誘導するため、アナは少年と付かず離れずの距離から叫んだ。
虎猫を抱えたアルスレーテも、ふらふらと歩き出した。
「かわいい猫がいるわよ。いらっしゃい」
少年は動物たちに釣られて、南へと向った。
一方、西の通りでは、壮がいたせいか、少年は野菜を投げまくっていた。
「だから、なんで俺ばっかりー」
壮は自分でも何故、狙われるのか見当がつかなかった。
「かもーん、月兎、因幡!」
小夜の呼び掛けに、うさうさ隊の配下である兎二匹が姿を現した。
少年は兎に気付き、警戒しながら小夜に近付いていく。
小夜は小柄な因幡を抱っこして、月兎は足元で丸くなっていた。
兎たちの鼻がヒクヒク。
背中の柔らかなラインを撫でる小夜。
うさうさ、うさうさ。
その仕草に刺激されて、少年は小夜の後を追いかける。
「ふっ、ちょろいな」
南へと向う小夜を見送り、真はトランシーバーで仲間と連絡を取った。
「私もこれから南へ行く。空き地に着いたら、戦闘開始になりそうだな」
『ボクも、南へ向ってる途中だよ。手筈通りにいくといいね』
応答したのは、アナだ。
「では、行くとしよう」
イタズラ少年を追いかけて、真は南へと駆けていく。
その姿は、至って鬼ゴッコをしているようであった。
●
南の空き地に辿り着き、動物たちはハンターたちから離れた場所で待機していた。
「まんまと引っかかったな、まあ、無理もない。兎が最強だと思い知らせてしまったな」
小夜は『一之太刀』で攻撃体勢に入った。盈月は思うように発動しなかったが、通常攻撃で斬り付けることができた。
「動物たちにイタズラするなんて、それだけは絶対にやっちゃいけないんだ!」
アナは『瞬脚』を発動させ、聖機剣「タンホイザー」で鉄の人形に攻撃をしかけた。
「せっかくの楽しい一時を邪魔するとは、不届きだな」
真は後衛から短弓「ファルコン」で矢を放つ。鉄の人形一体に命中して、肩に突き刺さった。
覚醒した葵の全身が青いオーラに包まれる。
「歪虚ならば、相手にとって不足はありません」
葵は刀「紅丸」による『円舞』からの攻撃を繰り出し、人形一体の胴部を切り裂く。
続いて、アルスレーテが鉄扇「北斗」で人形に触れ『鎧徹し』を発動。鎧の防御を無視した打撃により、人形の左腕が砕け散る。
「嫉妬の歪虚が祭りに紛れ込んでいたなんて、どうしてかしらね」
「村人たちが気付く前に、殲滅するわよ」
マリィアが神罰銃「パニッシュメント」とリボルバー「グラソン」を構えて『ダブルファイア』を放った。
人形二体に命中し、そのうちの一体が消滅していく。
歪虚は人を傷つける。ならば、人は……?
あらゆる感情が渦巻いてくる。
それを解き放つように、前衛にいたレイが『ワイルドラッシュ』を叩き込み、別の人形が一体、消えていく。
「残り一体です」
鉄の人形が『ダブルシューティング』でダーツを投げつけてくるが、小夜は斬魔刀「祢々切丸」を構えて『肉斬骨断』の技で反撃。
身体の表面が砕け散る鉄の人形……かなりのダメージを受けていたが、まだ全身は残っていた。
アナが覚醒して妖艶な顔立ちになり、『ドッジダッシュ』で敵のダーツを受け流す。
「ふふっ」
唇を舐めながら、聖機剣「タンホイザー」で攻撃をしかけるアナ。だが、自分の覚醒した姿に自覚はなかった。
「逃しはしない」
真は試作振動刀「オートMURAMASA」を振りかざし、『踏込』からの『強打』を、残りの人形に狙いを定めて打ち込んだ。衝撃が走り、鉄の人形は粉々になって、消滅した。
「……平気みたいね」
マリィアは周辺に村人がいないか確認してみたが、誰もいなかった。
どうやら銃の音は、音楽隊の曲で消されていたようだ。
広場から、賑やかな音楽が響き渡っていた。
●
村人たちは歪虚がいたことも知らず、祭りは大いに盛り上がっていた。
広場にて、葵が舞踊を披露すると、アナが楽しそうに朗らかな声で小鳥に纏わる歌を唄う。
真は横笛を取り出し、指を動かしながら音色を奏でる。
踊り、歌、笛の音。
三つが調和して、穏やかな雰囲気に包まれた。
葵が御辞儀すると、観ていた人々が拍手していた。
アナは皆の笑顔を見渡して、お日様のような笑みを浮かべた。
「みんな、ありがとう!」
「……やはり演奏して良かった」
真もまた、喜びに満ちた表情をしていた。
ラキが駆け寄ってきた。
「すごいね、あたしも感動しちゃったよ」
「ありがとうございます」
葵が手を差し伸べ、ラキと握手。
アナはマクシミリアンに声をかけた。
「挨拶代わりに歌ってみたんだ」
「落ち着いて観たのは久し振りだった」
マクシミリアンなりの賛辞であった。彼は巧みに褒めることができなかったが、内心は楽しいと感じていたのだ。
「目つきの悪いアンちゃん、みっけ。怪我は治った?」
小夜は兎たちに地面に落ちていた野菜を食べさせていたが、マクシミリアンがいることに気が付いた。
「怪我はない。それよりも小夜、腕を上げたな」
「さすがアンちゃん、見る目があるねー」
小夜はマクシミリアンの傷跡が気になっていたが、それは歴戦の名残なのだろうと思った。
「マクシミリアン、射的で勝負よ」
マリィアは最終日まで見回りすることに決め、その合間、祭りに参加することにした。
マクシミリアンはマリィアと五回勝負をしたが、引き分けになった。
「もう一回、勝負するわよ」
「良いだろう」
マクシミリアンとマリィアの射的勝負は、良い気分転換になっていた。
壮と言えば、レイと一緒に通りを歩いていた。
「水本様、今回も何か悩みでもあったのですか?」
レイが壮にジュースを手渡す。
「……レイさんは良いよな」
「はい?」
「レイさんは男の俺から見ても綺麗だからモテるんだろうな」
壮の意外な言葉に、レイは少し戸惑っていた。
「え、あの、それは、私は客観視したことがないので、なんとも」
「真さん、レイさんを見てどう思う?」
壮が言うと、真はしばらく考えてから答えた。
「キレイか」
「だろー、やっぱり」
壮は勢いよくジュースを飲み干した。
その頃、アルスレーテはご当地料理の出店を廻り、至福の時を過ごしていた。
恋人から言われた言葉を思い出すが、すぐにかき消すアルスレーテ。
「文句を言われても、聞こえないわよ。運動したから、カロリー補給なの、補給!」
視線の先に、とある出店で、何やら食べている小夜。
「うまー」
「私も、それ一つ」
アルスレーテは、心ゆくまで買い食いを楽しむことにした。
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いたずらしょうねんの事件簿 レイ・T・ベッドフォード(ka2398) 人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/05/14 19:43:54 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/13 19:57:18 |