ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】酒とドレスにご褒美を!
マスター:佐倉眸

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 寸志
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/15 07:30
- 完成日
- 2016/05/24 02:12
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催され、郷祭と呼ばれていた。
この春と秋の郷祭は、二年ほど前から近隣の住人のみならず同盟内の商人達も商機を当て込んで集まる、大規模な祭りとなっている。
今年も、その春郷祭の季節が廻って来た。
ジェオルジ各地の村長達の会議は今にも始まりそうで、そこではいつもはない議題が取り上げられる。
サルヴァト―レ・ロッソからジェオルジ各地に移り住んだ新住人達からの幾つかの要望と、彼らに新たな地での商業を試みる機会を与えるといった内容だ。
しかし。
それらとはまた別に、春郷祭はすでに様々な意味で賑やかに始まっていた。
●
ジェオルジの北部、裾野に街を臨む高原に小さな村がある。
甜菜を育てて採れる砂糖を生業として、春と秋にはその糖蜜から作る酒に果物を漬け込んで実りを祝う。
年に2度の郷祭と時期を合わせるように、村の各家は家毎に違う果物や香辛料を漬けた酒を教会に持ち寄って、ささやかな宴を催していた。
村の小さな教会には酒の精霊が祭られており、この時期にだけ村人に紛れるようにこっそりとその姿を現して、村人と共に実りを祝い、酒を楽しむのだと伝えられている。
茂り始めた甜菜の葉に風の渡る涼しい昼下がり、柔らかな木漏れ日を浴びて白いドレスの娘は微笑んだ。
「どう? 似合う?」
「ああ、メグさま動いてはなりません」
藍染めの紬を着た小間使いの老女が娘の背中を引っ張った。
娘ははしゃいだ声で笑う。
2人を眺める青年はフレッシュハーブを飾った果実酒を呷りグラスを日差しへ掲げる。
「――今年も良い出来だ、本当に旨いよ」
「それはそれは、坊ちゃんにそう言って頂けると、この婆も橙の買い付けに走ったかいが有ったというものです」
「婆やさんが?」
「そうよ、爺やが腰を悪くしてねっ、――婆や、締めすぎ。苦しいわ」
「何を仰います、この程度。婆やが晴れ着を着せて貰った時なんか、息も出来ないくらいきゅうきゅうに締め上げましたよ。はい、息を吐いて、しっかり踏ん張っていて下さい」
結婚式を控えてドレスを合わせる娘と、その家の小間使い。
親しげな2人を眺める娘の幼馴染み兼婚約者。
グラスの残りを乾すと、仄かに頬を赤らめて、着飾る娘を愛しげに見詰めた。
この春も庭に植えたベリーは赤い実を付けたし、冬から乾している林檎も良い頃合になっている。
杏子や無花果は街に下りた時にいつもの店で買ってきてこの後にでも付ける予定だ。
秋に漬けた石榴とカリン、それから柚子も例年に劣らぬ出来だろう。瓶を開けるのが楽しみだ。
式の後は披露宴代わりに気軽なガーデンパーティー。
振る舞えば酒好きな村の住人も、そろそろ顔を出しにくる精霊もきっと喜んでくれる。
勿論、メグの家の婆やが買い付けたらしいこの橙も。
「メグ、パーティーが終わって落ち着いたらさ、郷祭にも遊びに行かない?」
「その時私が息をしていたら、ね、――婆や、くるしいー」
●
パーティーの支度は新郎の指揮の下で恙無く。
ドレスを試着して以来、ぐったりと青い影を背負った新婦を置き去りに進んでいく。
貴男のことは好きだし、結婚式も楽しみだけど、ドレスは嫌い、きっと私だけお酒もお料理も無しなのね。
睫を濡らした新婦が掬いを求めて伸ばした手を払い除けたのはドレスを片腕に引っ掛けた婆や。
式までに着られるようにならなくてはと引き摺られて行く後ろ姿を、新郎は肩を竦めて見送った。
「いいのかい?」
スタンドカラーに蝶ネクタイ。ベストを羽織り。ソムリエエプロンを着けながら、給仕を買って出た友人の問い掛けにくっと喉を鳴らして笑う。
「ああ。メグは本当に嫌なら、結婚式を放り出してでも逃げるからね。その手の脱走に子どもの頃から付き合わされてきた僕が言うんだ。ドレスは着たいんだよ。ちょっと苦しいだけで」
「はは、成る程」
「……でも、ご褒美くらいは用意してあげたいよね」
「相変わらず、甘いね」
桂皮の漬かった酒を呷って、その辛さに噎せながら友人が笑った。
例年通り郷祭に向けて多くのハンターが祭の会場たるジェオルジへ招かれる。
その中の数人へ青年が声を掛けた。
「やあ、初めまして、僕はレキといいます。この辺りでは見ない顔だよね。ハンター、かな? 突然だけど、お酒は好き? もし好きならちょっと手伝って貰いたいことがあるんだ。頼めるかな?」
新郎たる青年に招かれて、ハンター達は設営真っ直中のパーティー会場へ。
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催され、郷祭と呼ばれていた。
この春と秋の郷祭は、二年ほど前から近隣の住人のみならず同盟内の商人達も商機を当て込んで集まる、大規模な祭りとなっている。
今年も、その春郷祭の季節が廻って来た。
ジェオルジ各地の村長達の会議は今にも始まりそうで、そこではいつもはない議題が取り上げられる。
サルヴァト―レ・ロッソからジェオルジ各地に移り住んだ新住人達からの幾つかの要望と、彼らに新たな地での商業を試みる機会を与えるといった内容だ。
しかし。
それらとはまた別に、春郷祭はすでに様々な意味で賑やかに始まっていた。
●
ジェオルジの北部、裾野に街を臨む高原に小さな村がある。
甜菜を育てて採れる砂糖を生業として、春と秋にはその糖蜜から作る酒に果物を漬け込んで実りを祝う。
年に2度の郷祭と時期を合わせるように、村の各家は家毎に違う果物や香辛料を漬けた酒を教会に持ち寄って、ささやかな宴を催していた。
村の小さな教会には酒の精霊が祭られており、この時期にだけ村人に紛れるようにこっそりとその姿を現して、村人と共に実りを祝い、酒を楽しむのだと伝えられている。
茂り始めた甜菜の葉に風の渡る涼しい昼下がり、柔らかな木漏れ日を浴びて白いドレスの娘は微笑んだ。
「どう? 似合う?」
「ああ、メグさま動いてはなりません」
藍染めの紬を着た小間使いの老女が娘の背中を引っ張った。
娘ははしゃいだ声で笑う。
2人を眺める青年はフレッシュハーブを飾った果実酒を呷りグラスを日差しへ掲げる。
「――今年も良い出来だ、本当に旨いよ」
「それはそれは、坊ちゃんにそう言って頂けると、この婆も橙の買い付けに走ったかいが有ったというものです」
「婆やさんが?」
「そうよ、爺やが腰を悪くしてねっ、――婆や、締めすぎ。苦しいわ」
「何を仰います、この程度。婆やが晴れ着を着せて貰った時なんか、息も出来ないくらいきゅうきゅうに締め上げましたよ。はい、息を吐いて、しっかり踏ん張っていて下さい」
結婚式を控えてドレスを合わせる娘と、その家の小間使い。
親しげな2人を眺める娘の幼馴染み兼婚約者。
グラスの残りを乾すと、仄かに頬を赤らめて、着飾る娘を愛しげに見詰めた。
この春も庭に植えたベリーは赤い実を付けたし、冬から乾している林檎も良い頃合になっている。
杏子や無花果は街に下りた時にいつもの店で買ってきてこの後にでも付ける予定だ。
秋に漬けた石榴とカリン、それから柚子も例年に劣らぬ出来だろう。瓶を開けるのが楽しみだ。
式の後は披露宴代わりに気軽なガーデンパーティー。
振る舞えば酒好きな村の住人も、そろそろ顔を出しにくる精霊もきっと喜んでくれる。
勿論、メグの家の婆やが買い付けたらしいこの橙も。
「メグ、パーティーが終わって落ち着いたらさ、郷祭にも遊びに行かない?」
「その時私が息をしていたら、ね、――婆や、くるしいー」
●
パーティーの支度は新郎の指揮の下で恙無く。
ドレスを試着して以来、ぐったりと青い影を背負った新婦を置き去りに進んでいく。
貴男のことは好きだし、結婚式も楽しみだけど、ドレスは嫌い、きっと私だけお酒もお料理も無しなのね。
睫を濡らした新婦が掬いを求めて伸ばした手を払い除けたのはドレスを片腕に引っ掛けた婆や。
式までに着られるようにならなくてはと引き摺られて行く後ろ姿を、新郎は肩を竦めて見送った。
「いいのかい?」
スタンドカラーに蝶ネクタイ。ベストを羽織り。ソムリエエプロンを着けながら、給仕を買って出た友人の問い掛けにくっと喉を鳴らして笑う。
「ああ。メグは本当に嫌なら、結婚式を放り出してでも逃げるからね。その手の脱走に子どもの頃から付き合わされてきた僕が言うんだ。ドレスは着たいんだよ。ちょっと苦しいだけで」
「はは、成る程」
「……でも、ご褒美くらいは用意してあげたいよね」
「相変わらず、甘いね」
桂皮の漬かった酒を呷って、その辛さに噎せながら友人が笑った。
例年通り郷祭に向けて多くのハンターが祭の会場たるジェオルジへ招かれる。
その中の数人へ青年が声を掛けた。
「やあ、初めまして、僕はレキといいます。この辺りでは見ない顔だよね。ハンター、かな? 突然だけど、お酒は好き? もし好きならちょっと手伝って貰いたいことがあるんだ。頼めるかな?」
新郎たる青年に招かれて、ハンター達は設営真っ直中のパーティー会場へ。
リプレイ本文
●
雲が流れ午後の日差しは眩しく、白亜の教会を照らす。青く茂った庭にテーブルが並べられ、着飾った村人が忙しなく、プレートやグラスを運んでいる。
こっそりと呼ばれた子ども達が花弁を盛った籠を持たされると、友人達が教会の扉に手を掛けて、息を合わせて左右同時に開く。
フラワーシャワーの中現れた花嫁と花婿は手を取り合って幸せそうに微笑んでいた。
おめでとう、と村人の歓声が上がる。
ブーケを掲げて花嫁はそちらを向いた。
「――――レキ、メグ、おめでとう。……今更長い挨拶をする様な仲でも無いだろう。みんなパーティーを楽しんで行ってくれ!」
友人が祝辞代わりにパーティー開始の声を掛ける。緊張に上擦った声を咳払いで誤魔化すと、集まった村人を見回してにっと笑った。
「まずは、メグから、次の花嫁さんに!」
「――ウ~フ~フ~」
星野 ハナ(ka5852)の瞳が、ぎらりと輝いた。
覚醒したマテリアルを巡らせて見付けた絶好の時間と場所。
祝いらしく紅白のジャムを煮詰めながら占い、最後はマテリアルを巡らせてより正確に狙いを定める。
敵を狩る様に本気の眼、甘やかなブラウンは白いドレスの前に構えられたブーケに据えて見開き、周囲に符を展開する。
『紅白でおめでたい気がしますしぃ、朝からトーストに甘い物って素敵な気がしませんかぁ? 幸せって笑顔に寄ってくると思いますぅ。新婚さんなんですから毎朝笑顔で幸せになっていただきたいじゃないですかぁ』
キッチンを解放していた家の婦人が、鍋を掻き混ぜながら聞いた星野の優しい声と柔らかな雰囲気を思い出して首を傾げた。
「本気ですよぅ……絶対殺るつもりで獲りに行きますぅ!」
戦う構えでブーケを狙う。
集まった娘達のざわめきが、いくわよ、とブーケを投じるメグの声に静まる。
青空を背に舞い上がり、数枚の花弁の軌跡を残して大きく放物線を描いたそれは、周りから伸ばされた何本もの手より、1つ抜き出て伸ばされた星野の手に。
戦い慣れた引き締まった手が捕らえ、導かれる様にその胸元へ落ちてきた。
ぽん、と収まったブーケに、満面の笑みを浮かべる。おめでとう、と口々に散る娘達を避けて、ザレム・アズール(ka0878)が近付く。
「おめでとう、星野」
「ふふー、可愛いですよぅ。花額縁にして残せるようにしますぅ」
淡い桃色を中心に白い花が囲って、所々に青を差した丸いブーケ。抱き締める様に抱えながら、プレゼントの仕上げに戻っていく。
同じくブーケが投じられる頃、ザレムも料理の支度を進めていた。
果実酒のゼリーをいくつか用意して冷やしておく。残りの果実はロールケーキにと、生地の準備を始める。
それをオーブンに入れると、キッチンを出て教会の庭へ。
式を終えてブーケを投じた花嫁の傍ら、その両親や兄弟らしい姿が見える。
彼等だろうと眺めてそっと声を掛けた。
「こんにちは、メグのご両親……ですか?」
初対面の来客に驚いた2人に声を潜め、カードとペンを差し出した。
「メグに、メッセージを貰えませんか? お祝いの言葉でも、先輩からのアドバイス、でも」
2人は顔を見合わせてくすりと笑うとカードを受け取る、書いたら貴男にお願いしたら良いのかしら、と母親が尋ね、ザレムは、後で俺達からのプレゼントと一緒に、と微笑んだ。
焼き上がった生地は、上にも果実をバランス良く飾って華やかに。
完成したそれを出すのはもう少し後、まずは、と固まったゼリーにスプーンを添えてパーティー会場へ。
庭ではマーオ・ラルカイム(ka5475)がテーブルに最後の色を添えていた。
彼の育てた鮮やかな赤が、白いクロスを掛けたテーブルを華やかに飾る。
「ブーケ、残念だったねー」
「あのお姉さんすごかったよー」
ブーケを逃したらしい娘の声に腕の中から一輪差し出し、どうぞ、と差し出す。
「栽培しているんです。もしよろしければ、ぜひ」
緑の双眸が僅かに眦を下げると、娘達は嬉しげに薔薇を受け取って、嬉しい、大事にすると幸せそうに笑った。
「さてと、……うーん、ああ、手伝います」
テーブルの飾り付けを終え、寂しそうな人の手にも花を渡す。終えて空になった手を眺めると、丁度ザレムがグラスを運んできた。それを幾つか受け取って、テーブルへ並べていく。
パーティーの始まる前から飲んでいる集まりの中にヴェルダ(ka1343)の姿もあった。
「酒の精霊? この教会に? ……へぇ……」
酒の精霊の話しに興じる彼等の声に耳を傾けながら、手にしたグラスが空くと、料理を運んでいく友人らしい青年に声を掛けた。
「裏方に徹するのはダメよ? あなたたちに祝われた方が嬉しいに決まっているのだから」
青年は、じゃあこれだけ、と手にしていた皿を運び、もう少し残っているのだと振り返った。
「そう……」
ヴェルダがその家のキッチンへ向かうと、飾る様に盛り付けた皿が2つ置かれていた。それを運びに来たという婦人は、皿を1つヴェルダに持たせて良く喋った。
ヴェルダが甘い香りがすると言うと、それは酒のせいもあるが、もしかすると教会の裏の花畑かも知れないと少女の様に笑った。
「花畑があるの?」
「ああ、若いのがよく逢い引きしてる」
皿を置いた婦人が礼を言おうと見回すが、ヴェルダの姿は見当たらず、運ばれた皿だけがテーブルに残されていた。
●
赤の薔薇を一際鮮やかに、星野からのジャムとケーキを置いたテーブルの傍らに衣装を変えたメグが支度する。
その表情は心なしか穏やかで、窮屈なドレスから解放された安堵が滲んでいた。
トリス・ラートリー(ka0813)とアルベルト・ラートリー(ka2135)がヒヤシンスの花束を手に、そのテーブルへ向かうレキを呼び止めた。
「結婚おめでとうございます」
アルベルトの言葉に、頷いたレキは、彼等を誘った時よりも嬉しそうに微笑んでいる。
トリスの髪を掬い、ヒヤシンスを一輪髪に飾る。花束をその細い腕に抱かせると、トリスは緑の目をぱたりと瞬いてアルベルトを見上げてから、真っ直ぐにレキへ差し出した。
「この花の香りは……」
許嫁の髪に飾った花弁に触れる。あやす様に指先で撫でると、優しい香りが零れてくる。
「疲労に効きますし綺麗ですからね。――君の方が綺麗だけど。くらいは、言ってあげた方が良いかもね」
飾る花より、愛しい許嫁の方が美しい。仄かに甘さを帯びた低い声をくすぐったがる様に、トリスが目を細めた。
アル、と愛称を、恥ずかしいと窘める様に囁くと、花を揺らして振り返った。
「ありがとう。……それと、ごちそうさま」
花束を受け取るとレキは2人を見詰めて肩を竦める、良い香りだ、僕も緊張していたみたいだと。
彼を待っていたメグに、後ろ手に花束を隠したレキが何かを囁いている。やがて、花束を差し出したレキに、メグはトリスと同じように落ち付かない様子でレキの名を呼んでいた。
うまく行ったらしい様子を横目にアルベルトはトリスに手を引かれ、乾したグラスを片手に開け放たれた教会へ歩いて行く。
眩しい程の白亜に、感嘆の息を。
「とっても、いい教会です。真白くてとても綺麗……」
微かに酒気を帯びた柔らかな声で呟くと、トリスは教会の中へ、祭壇の前まで進んでいく。
捧げられたこの季節の酒瓶や、献じられているグラス。
差し込む日差しは明るいが、壁が音も熱も遮って、教会の中にはパーティーの賑わいが届かない。
「そろそろボク達もした方がいいでしょうか? それともまだ先の方が?」
祭壇に向かって問い掛けるトリスの透き通った眼差しがゆっくりと伏せられる。
許嫁の黒い瞳を思い浮かべ、その微笑みを思い出す。髪の花を撫でて零れる香に甘い溜息が零れた。
1つ瞬くと、すぐに次の疑問が浮かぶ。
「エクラ教以外にも祭祀を執り行う組織ってあるのでしょうか?」
壁に凭れてトリスを眺めていたアルベルトが呼ぶ声が聞こえた。
おいでと招かれた手を取って、浮かんだばかりの疑問を話す。
はしゃぐ様子を微笑ましく見詰めながら、パーティー会場へ戻ると、飾られたテーブルに着く2人の前にケーキが出されたところだった。
ナイフを差し出された2人は戸惑いながら手を重ねて柄を握り、息を合わせてケーキを刃を入れる。
拍手のわき起こる中、寄り添う2人は、ナイフを置いても幸せそうに手を重ねている。
微笑ましい様子にアルベルトは傍らでほくほくと笑んでカクテルを煽るトリスを見詰める。
行き倒れて、拾われて、彼女の従者として、兄として、そして許嫁となった。
色々あったけれど、彼等はどんな道を歩むのだろうと、その幸いを祈る様に目を伏せた。
ロールケーキを1度下げて切り分ける。
切り口の果実も鮮やかに、上の飾りは零れる前に置き直して。
「ザレムくーん、これもですぅ」
贈り物のケーキは、一切れずつ。
「疲れた時には脳にも効く甘い物ですぅ。素早く誰かを笑顔にするにはスイーツ1番だと思いますぅ」
花嫁さんには大きめに、と並べて乗せると、最後にその皿には、彼女の両親からのメッセージカードが添えられた。
「あ~……みんなに祝福されて素敵ですぅ羨ましいですぅ……」
「ああ、いい結婚式だな」
そのカードに、庭で談笑する村人の様子に、星野が目を細める。
ザレムもケーキを切る手を一旦止めて、肩越しに庭を振り返りながら頷いた。
切り分けるなら手伝うと現れた婦人が、皿に取り分けたディップを差し出した。
「あ、これ美味しい!? あの~、このレシピ教えて貰えますぅ?」
「本当だ、美味しいよ」
婦人が得意気に内緒だと笑って、テーブルに配る皿を運んでいった。
「これは俺たちから持っていこうか」
2人用に盛り付けた皿を盆に載せる。それが運ばれていくと再び拍手が起こる。
「とても美味しそう、このケーキはあなたから?」
チョコレート好きなのよとメグが言うと、僕はこっちかなとレキがロールケーキを指した。
「あら……?」
カードを見付けたメグがそれを摘まんで首を傾げた。何かしらとその文面を見詰めると、驚いて瞠った目が潤み、くしゃくしゃに笑いながら涙を零した。
「お母さんから?」
「ええ、それとパパから」
ケーキを終えた会場で、談笑しながら村人に混じって料理や酒を楽しんで、賑やかに盛り上がった気配が次第に落ち付いていく。
トリスは美味しいと差し出してくるスナックや、気に入ったディップを掬ったスティックを差し出し、アルベルトはそれを食むと楽しげに揺れる。
「あれ? もうお酒駄目ですか? もう少し飲みたかったのですが、駄目? アル?」
酔いの回ったらしい潤んだ眼差しと、踵を上げて寄せられた唇を屈んで抱き締めながら受け取ると、ジュースのグラスを差し出した。
「ゆっくり慣れていけばいいよ。姫」
呼んでから昔の呼び方だと気付くと、自分も酔っているのかも知れないと少し早めに教会を出る。
「――お幸せにね。貴方達にとびきりの幸福があります様に」
「ありがとう、ハンターさん達も」
帰り際に2人へ声を掛けると、トリスもくすくすと嬉しそうに笑う。
覚束ない足で歩いた許嫁を背に、温かく愛しい重さを感じながら揺らさぬ様に歩いて行く。
「帰るの?」
「うん、寝かせて上げようと思って」
「そう。お幸せに。私は今からお祝いしてくるわ」
擦れ違う様に花冠を手にヴェルダが表へ戻って来た。
幸せそうにしている2人の姿はすぐに見付かった。
レキが指でメグの頬を拭っている、大事そうに抱えられた花とカード、同じ角度で置かれたフォークが微笑ましい。
賑やかな声を聞きながら花を編み、目を離していた間の様子を察すると、ヴェルダは静かに2人へ近づいていく。
「こんにちは。どうかしら、今の気分は?」
不意の声に驚いた顔が同時に向けられた。
「……ふ。あなた達の事、見てたわ。気づいているかしら? 貴女の夫、いつだって貴女を見つめる時はとても愛しそうな目をしているのよ」
ヴェルダの言葉にメグがレキの目をじっと見詰め。その視線に、内心を言い当てたヴェルダの言葉に、レキが真っ赤になって横を向いた。
「あなた達と初めて会う私ですら分かるもの。絶対幸せな夫婦になるわ。……結婚おめでとう」
花冠をメグの髪に飾る。パーティーに合わせた華やかなドレスに、その花はよく合った。
貴男にも、と、ブートニアは新郎のポケットへ飾る。
似合ってると、互いに告げる声を聞いていると、友人からグラスを差し出された。
「2人を祝ってくれてありがとな、ま、一杯どう?」
「頂くわ」
甘酸っぱい果物の香りを強く移したそれをくっと煽ると、ペースが速いと心配される。
強い方なのよと微笑むと、じゃあもう一杯と注がれる。
「これは?」
「それは柚子だね、うちで漬けた。こっちも柚子だが、これはレキのところのだ」
「そう、頂くわ……どっちも美味しいけど。少し味が違うのね」
給仕に勤しみながらもグラスは手放さない友人がそうだろうと楽しげに、また別の瓶を差し出した。
マーオが花を気に入ったらしい娘達に囲まれ、ザレムや星野が村人との談笑を楽しんで、そろそろテーブルの皿も空になってくる頃。
テーブルを回って酒を楽しんだヴェルダもグラスを置いて2人を眺める。
両親らしき人達と話している様子に、黙って手を振ると、背を向けながら足を止めた。
「酒の精霊だったかしら……存外、このパーティーに交じってたかもしれないわね」
声に気付いた村人がヴェルダを追う。去ってしまう様子に、彼女こそ、だったんじゃ無いかと囁き合った。
夫婦の寝室の壁に一枚のカードが飾られている。祝いと戒め、2人が結ばれたことを心から喜ぶ言葉が綴られたその隣に、後日、祝宴の花束をそのまま再現した様な額が飾られることになった。
雲が流れ午後の日差しは眩しく、白亜の教会を照らす。青く茂った庭にテーブルが並べられ、着飾った村人が忙しなく、プレートやグラスを運んでいる。
こっそりと呼ばれた子ども達が花弁を盛った籠を持たされると、友人達が教会の扉に手を掛けて、息を合わせて左右同時に開く。
フラワーシャワーの中現れた花嫁と花婿は手を取り合って幸せそうに微笑んでいた。
おめでとう、と村人の歓声が上がる。
ブーケを掲げて花嫁はそちらを向いた。
「――――レキ、メグ、おめでとう。……今更長い挨拶をする様な仲でも無いだろう。みんなパーティーを楽しんで行ってくれ!」
友人が祝辞代わりにパーティー開始の声を掛ける。緊張に上擦った声を咳払いで誤魔化すと、集まった村人を見回してにっと笑った。
「まずは、メグから、次の花嫁さんに!」
「――ウ~フ~フ~」
星野 ハナ(ka5852)の瞳が、ぎらりと輝いた。
覚醒したマテリアルを巡らせて見付けた絶好の時間と場所。
祝いらしく紅白のジャムを煮詰めながら占い、最後はマテリアルを巡らせてより正確に狙いを定める。
敵を狩る様に本気の眼、甘やかなブラウンは白いドレスの前に構えられたブーケに据えて見開き、周囲に符を展開する。
『紅白でおめでたい気がしますしぃ、朝からトーストに甘い物って素敵な気がしませんかぁ? 幸せって笑顔に寄ってくると思いますぅ。新婚さんなんですから毎朝笑顔で幸せになっていただきたいじゃないですかぁ』
キッチンを解放していた家の婦人が、鍋を掻き混ぜながら聞いた星野の優しい声と柔らかな雰囲気を思い出して首を傾げた。
「本気ですよぅ……絶対殺るつもりで獲りに行きますぅ!」
戦う構えでブーケを狙う。
集まった娘達のざわめきが、いくわよ、とブーケを投じるメグの声に静まる。
青空を背に舞い上がり、数枚の花弁の軌跡を残して大きく放物線を描いたそれは、周りから伸ばされた何本もの手より、1つ抜き出て伸ばされた星野の手に。
戦い慣れた引き締まった手が捕らえ、導かれる様にその胸元へ落ちてきた。
ぽん、と収まったブーケに、満面の笑みを浮かべる。おめでとう、と口々に散る娘達を避けて、ザレム・アズール(ka0878)が近付く。
「おめでとう、星野」
「ふふー、可愛いですよぅ。花額縁にして残せるようにしますぅ」
淡い桃色を中心に白い花が囲って、所々に青を差した丸いブーケ。抱き締める様に抱えながら、プレゼントの仕上げに戻っていく。
同じくブーケが投じられる頃、ザレムも料理の支度を進めていた。
果実酒のゼリーをいくつか用意して冷やしておく。残りの果実はロールケーキにと、生地の準備を始める。
それをオーブンに入れると、キッチンを出て教会の庭へ。
式を終えてブーケを投じた花嫁の傍ら、その両親や兄弟らしい姿が見える。
彼等だろうと眺めてそっと声を掛けた。
「こんにちは、メグのご両親……ですか?」
初対面の来客に驚いた2人に声を潜め、カードとペンを差し出した。
「メグに、メッセージを貰えませんか? お祝いの言葉でも、先輩からのアドバイス、でも」
2人は顔を見合わせてくすりと笑うとカードを受け取る、書いたら貴男にお願いしたら良いのかしら、と母親が尋ね、ザレムは、後で俺達からのプレゼントと一緒に、と微笑んだ。
焼き上がった生地は、上にも果実をバランス良く飾って華やかに。
完成したそれを出すのはもう少し後、まずは、と固まったゼリーにスプーンを添えてパーティー会場へ。
庭ではマーオ・ラルカイム(ka5475)がテーブルに最後の色を添えていた。
彼の育てた鮮やかな赤が、白いクロスを掛けたテーブルを華やかに飾る。
「ブーケ、残念だったねー」
「あのお姉さんすごかったよー」
ブーケを逃したらしい娘の声に腕の中から一輪差し出し、どうぞ、と差し出す。
「栽培しているんです。もしよろしければ、ぜひ」
緑の双眸が僅かに眦を下げると、娘達は嬉しげに薔薇を受け取って、嬉しい、大事にすると幸せそうに笑った。
「さてと、……うーん、ああ、手伝います」
テーブルの飾り付けを終え、寂しそうな人の手にも花を渡す。終えて空になった手を眺めると、丁度ザレムがグラスを運んできた。それを幾つか受け取って、テーブルへ並べていく。
パーティーの始まる前から飲んでいる集まりの中にヴェルダ(ka1343)の姿もあった。
「酒の精霊? この教会に? ……へぇ……」
酒の精霊の話しに興じる彼等の声に耳を傾けながら、手にしたグラスが空くと、料理を運んでいく友人らしい青年に声を掛けた。
「裏方に徹するのはダメよ? あなたたちに祝われた方が嬉しいに決まっているのだから」
青年は、じゃあこれだけ、と手にしていた皿を運び、もう少し残っているのだと振り返った。
「そう……」
ヴェルダがその家のキッチンへ向かうと、飾る様に盛り付けた皿が2つ置かれていた。それを運びに来たという婦人は、皿を1つヴェルダに持たせて良く喋った。
ヴェルダが甘い香りがすると言うと、それは酒のせいもあるが、もしかすると教会の裏の花畑かも知れないと少女の様に笑った。
「花畑があるの?」
「ああ、若いのがよく逢い引きしてる」
皿を置いた婦人が礼を言おうと見回すが、ヴェルダの姿は見当たらず、運ばれた皿だけがテーブルに残されていた。
●
赤の薔薇を一際鮮やかに、星野からのジャムとケーキを置いたテーブルの傍らに衣装を変えたメグが支度する。
その表情は心なしか穏やかで、窮屈なドレスから解放された安堵が滲んでいた。
トリス・ラートリー(ka0813)とアルベルト・ラートリー(ka2135)がヒヤシンスの花束を手に、そのテーブルへ向かうレキを呼び止めた。
「結婚おめでとうございます」
アルベルトの言葉に、頷いたレキは、彼等を誘った時よりも嬉しそうに微笑んでいる。
トリスの髪を掬い、ヒヤシンスを一輪髪に飾る。花束をその細い腕に抱かせると、トリスは緑の目をぱたりと瞬いてアルベルトを見上げてから、真っ直ぐにレキへ差し出した。
「この花の香りは……」
許嫁の髪に飾った花弁に触れる。あやす様に指先で撫でると、優しい香りが零れてくる。
「疲労に効きますし綺麗ですからね。――君の方が綺麗だけど。くらいは、言ってあげた方が良いかもね」
飾る花より、愛しい許嫁の方が美しい。仄かに甘さを帯びた低い声をくすぐったがる様に、トリスが目を細めた。
アル、と愛称を、恥ずかしいと窘める様に囁くと、花を揺らして振り返った。
「ありがとう。……それと、ごちそうさま」
花束を受け取るとレキは2人を見詰めて肩を竦める、良い香りだ、僕も緊張していたみたいだと。
彼を待っていたメグに、後ろ手に花束を隠したレキが何かを囁いている。やがて、花束を差し出したレキに、メグはトリスと同じように落ち付かない様子でレキの名を呼んでいた。
うまく行ったらしい様子を横目にアルベルトはトリスに手を引かれ、乾したグラスを片手に開け放たれた教会へ歩いて行く。
眩しい程の白亜に、感嘆の息を。
「とっても、いい教会です。真白くてとても綺麗……」
微かに酒気を帯びた柔らかな声で呟くと、トリスは教会の中へ、祭壇の前まで進んでいく。
捧げられたこの季節の酒瓶や、献じられているグラス。
差し込む日差しは明るいが、壁が音も熱も遮って、教会の中にはパーティーの賑わいが届かない。
「そろそろボク達もした方がいいでしょうか? それともまだ先の方が?」
祭壇に向かって問い掛けるトリスの透き通った眼差しがゆっくりと伏せられる。
許嫁の黒い瞳を思い浮かべ、その微笑みを思い出す。髪の花を撫でて零れる香に甘い溜息が零れた。
1つ瞬くと、すぐに次の疑問が浮かぶ。
「エクラ教以外にも祭祀を執り行う組織ってあるのでしょうか?」
壁に凭れてトリスを眺めていたアルベルトが呼ぶ声が聞こえた。
おいでと招かれた手を取って、浮かんだばかりの疑問を話す。
はしゃぐ様子を微笑ましく見詰めながら、パーティー会場へ戻ると、飾られたテーブルに着く2人の前にケーキが出されたところだった。
ナイフを差し出された2人は戸惑いながら手を重ねて柄を握り、息を合わせてケーキを刃を入れる。
拍手のわき起こる中、寄り添う2人は、ナイフを置いても幸せそうに手を重ねている。
微笑ましい様子にアルベルトは傍らでほくほくと笑んでカクテルを煽るトリスを見詰める。
行き倒れて、拾われて、彼女の従者として、兄として、そして許嫁となった。
色々あったけれど、彼等はどんな道を歩むのだろうと、その幸いを祈る様に目を伏せた。
ロールケーキを1度下げて切り分ける。
切り口の果実も鮮やかに、上の飾りは零れる前に置き直して。
「ザレムくーん、これもですぅ」
贈り物のケーキは、一切れずつ。
「疲れた時には脳にも効く甘い物ですぅ。素早く誰かを笑顔にするにはスイーツ1番だと思いますぅ」
花嫁さんには大きめに、と並べて乗せると、最後にその皿には、彼女の両親からのメッセージカードが添えられた。
「あ~……みんなに祝福されて素敵ですぅ羨ましいですぅ……」
「ああ、いい結婚式だな」
そのカードに、庭で談笑する村人の様子に、星野が目を細める。
ザレムもケーキを切る手を一旦止めて、肩越しに庭を振り返りながら頷いた。
切り分けるなら手伝うと現れた婦人が、皿に取り分けたディップを差し出した。
「あ、これ美味しい!? あの~、このレシピ教えて貰えますぅ?」
「本当だ、美味しいよ」
婦人が得意気に内緒だと笑って、テーブルに配る皿を運んでいった。
「これは俺たちから持っていこうか」
2人用に盛り付けた皿を盆に載せる。それが運ばれていくと再び拍手が起こる。
「とても美味しそう、このケーキはあなたから?」
チョコレート好きなのよとメグが言うと、僕はこっちかなとレキがロールケーキを指した。
「あら……?」
カードを見付けたメグがそれを摘まんで首を傾げた。何かしらとその文面を見詰めると、驚いて瞠った目が潤み、くしゃくしゃに笑いながら涙を零した。
「お母さんから?」
「ええ、それとパパから」
ケーキを終えた会場で、談笑しながら村人に混じって料理や酒を楽しんで、賑やかに盛り上がった気配が次第に落ち付いていく。
トリスは美味しいと差し出してくるスナックや、気に入ったディップを掬ったスティックを差し出し、アルベルトはそれを食むと楽しげに揺れる。
「あれ? もうお酒駄目ですか? もう少し飲みたかったのですが、駄目? アル?」
酔いの回ったらしい潤んだ眼差しと、踵を上げて寄せられた唇を屈んで抱き締めながら受け取ると、ジュースのグラスを差し出した。
「ゆっくり慣れていけばいいよ。姫」
呼んでから昔の呼び方だと気付くと、自分も酔っているのかも知れないと少し早めに教会を出る。
「――お幸せにね。貴方達にとびきりの幸福があります様に」
「ありがとう、ハンターさん達も」
帰り際に2人へ声を掛けると、トリスもくすくすと嬉しそうに笑う。
覚束ない足で歩いた許嫁を背に、温かく愛しい重さを感じながら揺らさぬ様に歩いて行く。
「帰るの?」
「うん、寝かせて上げようと思って」
「そう。お幸せに。私は今からお祝いしてくるわ」
擦れ違う様に花冠を手にヴェルダが表へ戻って来た。
幸せそうにしている2人の姿はすぐに見付かった。
レキが指でメグの頬を拭っている、大事そうに抱えられた花とカード、同じ角度で置かれたフォークが微笑ましい。
賑やかな声を聞きながら花を編み、目を離していた間の様子を察すると、ヴェルダは静かに2人へ近づいていく。
「こんにちは。どうかしら、今の気分は?」
不意の声に驚いた顔が同時に向けられた。
「……ふ。あなた達の事、見てたわ。気づいているかしら? 貴女の夫、いつだって貴女を見つめる時はとても愛しそうな目をしているのよ」
ヴェルダの言葉にメグがレキの目をじっと見詰め。その視線に、内心を言い当てたヴェルダの言葉に、レキが真っ赤になって横を向いた。
「あなた達と初めて会う私ですら分かるもの。絶対幸せな夫婦になるわ。……結婚おめでとう」
花冠をメグの髪に飾る。パーティーに合わせた華やかなドレスに、その花はよく合った。
貴男にも、と、ブートニアは新郎のポケットへ飾る。
似合ってると、互いに告げる声を聞いていると、友人からグラスを差し出された。
「2人を祝ってくれてありがとな、ま、一杯どう?」
「頂くわ」
甘酸っぱい果物の香りを強く移したそれをくっと煽ると、ペースが速いと心配される。
強い方なのよと微笑むと、じゃあもう一杯と注がれる。
「これは?」
「それは柚子だね、うちで漬けた。こっちも柚子だが、これはレキのところのだ」
「そう、頂くわ……どっちも美味しいけど。少し味が違うのね」
給仕に勤しみながらもグラスは手放さない友人がそうだろうと楽しげに、また別の瓶を差し出した。
マーオが花を気に入ったらしい娘達に囲まれ、ザレムや星野が村人との談笑を楽しんで、そろそろテーブルの皿も空になってくる頃。
テーブルを回って酒を楽しんだヴェルダもグラスを置いて2人を眺める。
両親らしき人達と話している様子に、黙って手を振ると、背を向けながら足を止めた。
「酒の精霊だったかしら……存外、このパーティーに交じってたかもしれないわね」
声に気付いた村人がヴェルダを追う。去ってしまう様子に、彼女こそ、だったんじゃ無いかと囁き合った。
夫婦の寝室の壁に一枚のカードが飾られている。祝いと戒め、2人が結ばれたことを心から喜ぶ言葉が綴られたその隣に、後日、祝宴の花束をそのまま再現した様な額が飾られることになった。
依頼結果
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- 幻獣王親衛隊
ザレム・アズール(ka0878)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/14 01:21:45 |
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相談・披露宴のあれやこれや 星野 ハナ(ka5852) 人間(リアルブルー)|24才|女性|符術師(カードマスター) |
最終発言 2016/05/14 01:27:51 |