ゲスト
(ka0000)
戦術指南をお願いします!
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/05/16 22:00
- 完成日
- 2016/05/21 17:51
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●戦力の向上は急務!
王都イルダーナ。
聖堂戦士団といえば、聖堂教会の戦力として知られているが、その中核となるメンバーは前線へと出て、激しい戦いの中へと身を置いている。
しかしながら、戦闘経験の浅い団員達は、教会の雑務や、街の警護、手が足りない雑魔討伐など仕事に追われる日々を過ごし、なかなか自己啓発ができない現状がある。
先日も雑魔討伐にて団員が傷を負ったり、あるときは剣を無くした団員がいたりと、なかなか問題も多い。出来る限り力を付けておきたいと団員達も皆考えてはいるのだが……。
「だから、皆さんに稽古をつけてほしいんです!」
ファリーナは王都のハンターズ・ソサエティへと顔を出し、詰めていたハンター達へとそう依頼する。
彼女が依頼したのは、新人団員を新人隊長が取り仕切る一隊の戦術指南だ。
力を持つ先輩団員達は皆、強力な力を持つ歪虚討伐に出かけていて、後進育成にはなかなか当たれていない。経験の浅い団員達もがんばって入るのだが、彼らだけで鍛錬をするのも限界がある。
だからこそ、それを憂うファリーナがハンターへと相談を持ちかけてきたのだ。
ファリーナは聖堂戦士団員でありながら、活発に内外に働きかけ、状況をよくしようと動いている。ただ、いかんせん、彼女もまた経験の浅い団員の1人。隊長からファリーナにもビシバシ教育してほしいとの依頼があっている。
場所は、聖堂戦士団の詰め所そばの修練場だ。近くの小屋では座学をする為のスペースもある。
あまりに過激なことでなければ構わないと戦士団からは許可が出ているので、ハンターがやりやすい方法で稽古をつけてほしい。
「それでは、今日は生徒として。よろしくお願いいたします!」
ファリーナは隊員に成り代わり、ハンターへと頭を下げるのだった。
王都イルダーナ。
聖堂戦士団といえば、聖堂教会の戦力として知られているが、その中核となるメンバーは前線へと出て、激しい戦いの中へと身を置いている。
しかしながら、戦闘経験の浅い団員達は、教会の雑務や、街の警護、手が足りない雑魔討伐など仕事に追われる日々を過ごし、なかなか自己啓発ができない現状がある。
先日も雑魔討伐にて団員が傷を負ったり、あるときは剣を無くした団員がいたりと、なかなか問題も多い。出来る限り力を付けておきたいと団員達も皆考えてはいるのだが……。
「だから、皆さんに稽古をつけてほしいんです!」
ファリーナは王都のハンターズ・ソサエティへと顔を出し、詰めていたハンター達へとそう依頼する。
彼女が依頼したのは、新人団員を新人隊長が取り仕切る一隊の戦術指南だ。
力を持つ先輩団員達は皆、強力な力を持つ歪虚討伐に出かけていて、後進育成にはなかなか当たれていない。経験の浅い団員達もがんばって入るのだが、彼らだけで鍛錬をするのも限界がある。
だからこそ、それを憂うファリーナがハンターへと相談を持ちかけてきたのだ。
ファリーナは聖堂戦士団員でありながら、活発に内外に働きかけ、状況をよくしようと動いている。ただ、いかんせん、彼女もまた経験の浅い団員の1人。隊長からファリーナにもビシバシ教育してほしいとの依頼があっている。
場所は、聖堂戦士団の詰め所そばの修練場だ。近くの小屋では座学をする為のスペースもある。
あまりに過激なことでなければ構わないと戦士団からは許可が出ているので、ハンターがやりやすい方法で稽古をつけてほしい。
「それでは、今日は生徒として。よろしくお願いいたします!」
ファリーナは隊員に成り代わり、ハンターへと頭を下げるのだった。
リプレイ本文
●教習よろしくお願いします!
王都イルダーナの聖堂戦士団詰め所に集まったハンター達。
「新兵の訓練かぁ……」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、目新しい武具に身を包む聖導士達の姿を見る。
(戦力向上は急務。……とは言え、握る様を見る限り、武器もとりあえずの色が濃いな)
戦いの素人である戦士達に、クリスティン・ガフ(ka1090)は刀を一例として勧めてみようと考える。
「聖導士としての戦い方は教えるのは難しいけど、武器の扱い方やらそういったのは教える事は出来そうね」
ユーリもまた、クリスティンと同じことを考えていたらしい。ほとんどのハンターが異なるクラス。そうなると、今回教えるのは武具の扱い方、戦闘経験といったところか。
「餓鬼の頃から戦いに生きて40年近く。足も目も失っても生き残ってきた経験、教えてやるかね」
左目、左足はそれぞれ義眼と義足のジャンク(ka4072)。それだけに、戦場で培った経験はなかなかのものだ。
「何処であっても後進の育成は大切よね。特に、前途ある歳若い子達なら尚の事」
数々の戦いの中に身を置いてきている、フィルメリア・クリスティア(ka3380)。まだまだ青い聖導士を戦場に送り出したくはないが、必要だというのであればやるしかない。
「その代わり、生き残れる様に確りと鍛えてあげないと」
「ボクが積み重ねた経験が少しでも彼らの役に立つのなら、喜んで教えるよ」
「私の戦い方は自己流だから、上手く教えられるか分からないけど、頑張るね!」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、リューリ・ハルマ(ka0502)は友達同士でこの依頼に参加しており、揃って隊員達へと握手を交わす。近場の龍崎・カズマ(ka0178)も片手を上げるだけで隊員に応えていた。
そんなハンター達へと挨拶を交わしてきたのは、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
「皆さん、よろしくお願いいたします!」
隊長、それに隊員達もまた、一斉に「よろしくお願いいたします」と、熟練のハンター達に頭を垂れた。
「さて……、どこまでやれるか分からないけど、やってみましょうか」
ユーリがそんな戦士達に告げる。こうして、ハンター達による戦術指南が始まったのだった。
●座学、1時限目
近場の小屋には、隊長とファリーナの姿がある。
そこに現れたのは、カズマだ。彼は用意してきた駒と紙を使い、卓上で模擬戦について話を展開していった。
講義を受ける2人は、その展開に目を丸くする。カズマは駒を使い潰し、切り捨てるように進軍し、犠牲を省みることなく、ただ、勝利するだけの為に用兵していったのだ。
敵将を落としたタイミングでカズマは問う。なぜか、と。受講する2人は答えを出せず、首を振る。
「『勝利に全てを注ぎ込む』とはそういう事だからだ。そして、歪虚達は生存を気にしていないものが多い」
倒された駒の一つ一つが、率いることになる隊員。犠牲者の数とは、紙の上のインクではなく、その一人一人の血肉、屍の積み重ねだとカズマは告げる。
「戦術の本質とは、同朋の血肉を削って目的を果たす事に他ならない」
倒れることを前提に戦術を組み立てるのかと、隊長は小さく呟く。隊員の命を預かる立場なのだと、彼は改めて自覚していた。
「削るものを、得るものを増やすも減らすも、将次第。それを前提に、次の人の話を聞いてくれ」
カズマはそこで教壇を降りると、2人の受講生は揃って頭を下げた。
(ま、言うまでもない事だとは思ってるんだがな)
小屋を出るカズマ。彼は当然だと思う考え方を語ったまでだ。
●戦いのいろは、1時限目
その頃、外の隊員達はハンター達から戦いのいろはを学んでいた。
ユーリは2人の隊員に、近接戦闘……相手との間合いの取り方から教えていく。
隊員達が手にしているのは、男性がロングソード、女性がメイスだ。
彼らの武器を一番生かすことの出来る間合いを実際に掴んでもらおうと、隊員達へと互いに面と向かって立ってもらう。その上で、呼吸、動作から、相手が如何にして動くかを読むよう指示する。
「適切な攻撃や防御の判断力は、こうして養われていくのです」
隊員の年齢は15歳前後といったところか。ほぼ同年代の見た目をしたユーリの言葉に隊員達もこくこく頷き、出来る限り言われたことを試す。
「武器を無くした隊員がいると聞いた。それほどに武器が馴染んでいないということだ」
男性隊員がクリスティンの指摘にしょげてしまう。同僚に慰められる彼へとクリスティンは木刀を差し出した。
「自分は剣から始まり、紆余曲折を経て刀に決めた。選択肢の一つとしてどうだろうか」
クラス差はあれど、刀は女性でも使いやすい武器でもある。実際、ユーリやクリスティンは刀を武器としているのだ。
クリスティンが持つ木刀を受け取った隊員は、試しにそれを振るってみる。
「利点は、慣れれば剣よりも基本的に軽い力で斬ることができ、使いやすいことだな」
隊員が持っていたのは、それなりに重量のある武器。刀の感覚に隊員達は感嘆していたようだ。
「難点は基本、受けには適さない事だな」
ロングソードでは受けきれた攻撃も、刀では折れる危険性がある。攻め込みたい隊員と、防御に徹したい隊員とで好みが分かれそうだ。
構えは虫取り網を扱うような、蜻蛉の構え。移動の際は腰をやや落としてすり足。上半身が骨盤上に乗り下腹部に力が入る感覚だとクリスティンは語った。
そうして、彼女は手首を反って強く絞め、刃筋を目標へと向けて……斬る。
「今回はこんな所か。興味が湧いた者は、後は試行錯誤する事だ」
とりあえずは区切りの時間。2人の講義は一旦終了となった。
●座学、2時限目
小屋は隊長だけとなっていたが、そこにフィルメリアが入ってくる。彼女は書類の束を差し出した。
「今回だけで教え切れるものでもありませんから、資料を用意しておきました」
フィルメリアが今日の為に用意してきたのは、自身が過去に経験した戦場記録。今日の教練の後も、各自復習、勉強できるようにと参考書類として配布していた。
少しそれに目を通す時間を与えた後、フィルメリアは口を開く。
「優先対象は、戦況における危険度を認識する事ですね」
盾となる堅牢な前衛がいた場合、後ろから火力のある射撃、魔法を使う相手は厄介だ。
「相手との力量差を確りと見極める観察眼も必要です」
よほどのことがなければ、相手とは2人以上で対すること。実力が拮抗している相手ならともかく、格上の相手は1対1ではまず勝てないからだ。
「後でちゃんと目を通して見てくださいね?」
最後に彼女は微笑みつつそう言い残して、小屋を去っていった。
●戦いのいろは、2時限目
続いて団員達は、リューリ、アルトから戦いの手ほどきを受けていた。これに、ファリーナも参加していたようである。
「持って動いてみて、余計な力が入りすぎない持ち方が良いかな」
元々団員が持っていた武器に関して、リューリは手ほどきをする。
「ボクの思う聖導士に一番必要な物は、回復力は勿論だが、それを行使し続けられる耐久力かな」
アルトも防御の大切さを隊員達に伝える。
回避に防御。重要なのは、共に敵の攻撃を見極めることだ。
「人間、来るとわかっている衝撃はそれなりに耐えられるが、不意の一撃には弱い」
恐れず、敵の攻撃をしっかりと見ることが大切だ。
「また、強烈な攻撃は受け流すことも重要だ」
繰り出された攻撃に対しては、防御すると、腕を痛めたり、踏ん張った足をくじいたりすることがある。アルトは木刀を振り下ろすのを、横方向からの力で逸らすという方法もあると実演してみせた。
リューリは直接的な戦いだけでなく、戦況を確認する大切さも教える。
「しっかり見るといえば、聖導士だと回復もするから、周りと仲間の状況を見ておくと良いのかな」
リューリは、アルトと共に2人1組で組み手をするよう隊員達に告げ、攻防を実践させながら話しかける。出来る限り武器に慣れてもらう為だ。
聖導士ならば、回復役を任されることも多いだろう。仲間の状態を気にかけることも大切。ただ、そればかりに気を取られていると、自身が敵に狙われかねない。
「敵の動き、装備も注意しておくと良いかな」
動きが急に変わることがある歪虚だが、相手が人型なら、装備である程度攻撃の予測が付くこともある。
そう教えつつ、リューリは攻撃を打ち込むと、折角だからと木刀を使っていたファリーナがそれで受け止めていた。
「戦闘では常に平常心を。焦りや怒りは判断を鈍らせる」
アルトもまた隊員達に説くのである。団員達が自身の適正を学ぶことが出来れ田なら幸いと、彼女は考えていたようだ。
●座学3時限目
小屋では、ジャンクによる講義が始まっていた。
「聖呪の緒戦。闇光での撤退戦。審判の決戦……。お前さんも記憶にあるだろ」
その内容は、撤退戦についてだ。大切なのは士気だとジャンクは語る。
負け戦となれば、兵士は剣も盾も捨ててしまう。武具は逃走の邪魔だ。
しかし、その地点でそれは兵士でなくなる。上官に従い、戦友と共に行動する意味を見出せなくなってしまう。
「絶対に武器は捨てさせるな。処罰の対象にしろ」
また、隊長が怯えれば、それだけで士気に関わってしまう。
「隊長はそれを命令できるくらいに、毅然とした態度を取り続けろ。大胆不敵に笑え。お前に従えば生き残れると思わせろ」
これぞ、生き残る為の大前提だとジャンクは告げる。小隊を維持できれば、基本戦術で対処できるはずだ。
包囲されにくい道を選んで撤退。敵軍の足を止めたければ、包囲されない場所に誘い込み、追撃部隊の前衛へと逆襲を。援軍が見込めるなら、方円で防御を固め、戦術の鉄則を堅守。
「これだけだ」
ここまで傷を負いながらも生還してきてきたジャンクの教え。それを飲み込んだ隊長は丁寧に頭を下げた。
●模擬戦、1戦目
さらに休憩を挟んだ後、今度は模擬戦を行うことにしたハンター達。
隊長と隊員、ファリーナを含めた聖堂戦士団8人と、ハンターとの戦い。ハンター達は2組に分かれて2戦行う形だ。
最初は、アルト、ジャンク、リューリ、クリスティンのチーム。
クリスティンが貸し出した木刀を、隊員達が受け取る。それでもロングソード、メイスを選んだ団員もいたが、彼らは稽古で使う木製の物を使うことにしていたようだ。
一方のハンター達も、模擬戦用の武器を用意する。クリスティンなどは矢の鏃を丸く加工するなどして、配慮していたようだ。
戦いは始まる……といっても、団員2人に対して、ハンター1人が戦い方を手ほどきする形。隊長はある程度さまになった戦い方をしていた為、クリスティンが多少本腰を入れて戦っていたようだったが。
クリスティンはワイヤーウィップと木刀を持ち替え、仕掛ける。隊員と挟み撃ちを行う隊長。ただ、クリスティンは二刀流で攻撃を斜めに受け流す。そして、距離を取る相手を弓で狙い撃った。
ジャンクはインクを使ったペイント弾で、隊員の相手をする。
遮蔽となる物はさほど多くないと感じたジャンクは、泥を巻き上げ、あるいは相手の足を踏んででも仕掛けようと動く。これぞ傭兵仕込み、賊相手の戦法だ。
ただ、さすがにそれだけで隊員も怯みはしない。隣の女性隊員が木刀で切りかかろうとするが。ジャンクはその足元に牽制射撃を撃ち、ペイント弾を直接叩き込んでいた。
アルト、リューリは4人の隊員を相手にする。
スキルのセットに難があったようではあるが、アルトは木刀を使い、ランダムに選んだ隊員へとフェイントを織り交ぜつつ攻め込む。
簡単に受け止められる攻撃から、アルトは徐々に動きを速く、そして力強く攻撃を叩き込んでいく。仕舞いには隊員はついてこられなくなってしまったようだ。
リューリはナックルと、身長よりも長い木製の槍を担いでいた。アルトに合わせるようにして瞬発を生かした動きでその槍を打ち込む。
間合い、そして、重そうな見た目に惑わされるファリーナ。木刀での一撃をと近づくが、リューリはにこりと笑ってナックルでの一撃を叩き込む。
「相手の装備はちゃんと見て接近してね」
「なるほど……」
ファリーナはリューリの指摘に頷き、反省して見せたのだった。
●模擬戦、2戦目
小休憩の後、2チーム目。カズマ、ユーリ、フィルメリアが相手をする。対する聖堂戦士団員達は、人数の都合で戦いから外れた隊長が、団員7人の指揮を執る。
先に仕掛けるのは、ユーリ。模擬戦ではあるが、団員達を倒す気概で臨む。訓練だからという甘えを許せば、実戦においても甘えが出てしまうと彼女は考えたのだ。
フェイントを織り交ぜながら、攻撃のタイミングをずらす。隊員も気づきはしていたものの、判断がやや遅れたり、体がうまくついてこなかったりと完全に対応しているとは言いがたい。
しかしながら、ファリーナはなんとか対応しようと動く、そこに、ユーリは抜刀術の姿勢をとり、居合いの一撃を彼女の腕に掠めていた。
仲間の援護を行うのはフィルメリア。ゴム弾を仕込んだ銃を使いつつ、ジェットブーツによって高速で移動する。離れた距離からの攻撃や遠近双方で自由に動ける相手を想定し、隊員達へと身を持ってその対処法を教えていた。
そこに近づく木刀持ちの男性隊員。カズマが足にマテリアルを篭めて素早く近づく。すかさず鞭を振るって地面に打ち付ければ、その男性隊員は態勢を崩してしまう。
隊長が止まるよう指示を出すのだが、それでも、その隊員は木刀を構えて果敢に攻めてくる。カズマは木刀に鞭を絡めると、不意に隊員は武器から手を離してしまった。
「戦場で武器無しは致命的だ、阿呆」
カズマはその状態の男性隊員を思いっきり蹴り飛ばす。
「武器を持ったまま間合いを詰め、緩ませるといった方法が正解例だ」
隊員は起き上がりつつ、転がる木刀を握り締めていた。
●戦術指南は続く
模擬戦2戦目が終わる頃には日が傾き始めていたが、団員達の稽古はまだ続く。
「まだやる気のある人がいれば、手ほどきするよ」
アルトが隊員に声をかけると、隊員からはまだまだと声が上がる。彼らに対し、ユーリなどは個別指導を行っていたようだ。
クリスティンも同じく個別に指導する。彼女の教えもあり、刀を武器にと考えるメンバーが2人ほどいたようだ。
「法具と刀の特製を併せ持つような武器があるといいのですけれどね」
ファリーナがくすりと笑う。彼女も折角だからと、副武器に刀をと考えたようだ。
日が暮れても、詰め所傍では聖堂戦士団員達の掛け声が響いていたのだった。
王都イルダーナの聖堂戦士団詰め所に集まったハンター達。
「新兵の訓練かぁ……」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は、目新しい武具に身を包む聖導士達の姿を見る。
(戦力向上は急務。……とは言え、握る様を見る限り、武器もとりあえずの色が濃いな)
戦いの素人である戦士達に、クリスティン・ガフ(ka1090)は刀を一例として勧めてみようと考える。
「聖導士としての戦い方は教えるのは難しいけど、武器の扱い方やらそういったのは教える事は出来そうね」
ユーリもまた、クリスティンと同じことを考えていたらしい。ほとんどのハンターが異なるクラス。そうなると、今回教えるのは武具の扱い方、戦闘経験といったところか。
「餓鬼の頃から戦いに生きて40年近く。足も目も失っても生き残ってきた経験、教えてやるかね」
左目、左足はそれぞれ義眼と義足のジャンク(ka4072)。それだけに、戦場で培った経験はなかなかのものだ。
「何処であっても後進の育成は大切よね。特に、前途ある歳若い子達なら尚の事」
数々の戦いの中に身を置いてきている、フィルメリア・クリスティア(ka3380)。まだまだ青い聖導士を戦場に送り出したくはないが、必要だというのであればやるしかない。
「その代わり、生き残れる様に確りと鍛えてあげないと」
「ボクが積み重ねた経験が少しでも彼らの役に立つのなら、喜んで教えるよ」
「私の戦い方は自己流だから、上手く教えられるか分からないけど、頑張るね!」
アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)、リューリ・ハルマ(ka0502)は友達同士でこの依頼に参加しており、揃って隊員達へと握手を交わす。近場の龍崎・カズマ(ka0178)も片手を上げるだけで隊員に応えていた。
そんなハンター達へと挨拶を交わしてきたのは、ファリーナ・リッジウェイ(kz0182)だ。
「皆さん、よろしくお願いいたします!」
隊長、それに隊員達もまた、一斉に「よろしくお願いいたします」と、熟練のハンター達に頭を垂れた。
「さて……、どこまでやれるか分からないけど、やってみましょうか」
ユーリがそんな戦士達に告げる。こうして、ハンター達による戦術指南が始まったのだった。
●座学、1時限目
近場の小屋には、隊長とファリーナの姿がある。
そこに現れたのは、カズマだ。彼は用意してきた駒と紙を使い、卓上で模擬戦について話を展開していった。
講義を受ける2人は、その展開に目を丸くする。カズマは駒を使い潰し、切り捨てるように進軍し、犠牲を省みることなく、ただ、勝利するだけの為に用兵していったのだ。
敵将を落としたタイミングでカズマは問う。なぜか、と。受講する2人は答えを出せず、首を振る。
「『勝利に全てを注ぎ込む』とはそういう事だからだ。そして、歪虚達は生存を気にしていないものが多い」
倒された駒の一つ一つが、率いることになる隊員。犠牲者の数とは、紙の上のインクではなく、その一人一人の血肉、屍の積み重ねだとカズマは告げる。
「戦術の本質とは、同朋の血肉を削って目的を果たす事に他ならない」
倒れることを前提に戦術を組み立てるのかと、隊長は小さく呟く。隊員の命を預かる立場なのだと、彼は改めて自覚していた。
「削るものを、得るものを増やすも減らすも、将次第。それを前提に、次の人の話を聞いてくれ」
カズマはそこで教壇を降りると、2人の受講生は揃って頭を下げた。
(ま、言うまでもない事だとは思ってるんだがな)
小屋を出るカズマ。彼は当然だと思う考え方を語ったまでだ。
●戦いのいろは、1時限目
その頃、外の隊員達はハンター達から戦いのいろはを学んでいた。
ユーリは2人の隊員に、近接戦闘……相手との間合いの取り方から教えていく。
隊員達が手にしているのは、男性がロングソード、女性がメイスだ。
彼らの武器を一番生かすことの出来る間合いを実際に掴んでもらおうと、隊員達へと互いに面と向かって立ってもらう。その上で、呼吸、動作から、相手が如何にして動くかを読むよう指示する。
「適切な攻撃や防御の判断力は、こうして養われていくのです」
隊員の年齢は15歳前後といったところか。ほぼ同年代の見た目をしたユーリの言葉に隊員達もこくこく頷き、出来る限り言われたことを試す。
「武器を無くした隊員がいると聞いた。それほどに武器が馴染んでいないということだ」
男性隊員がクリスティンの指摘にしょげてしまう。同僚に慰められる彼へとクリスティンは木刀を差し出した。
「自分は剣から始まり、紆余曲折を経て刀に決めた。選択肢の一つとしてどうだろうか」
クラス差はあれど、刀は女性でも使いやすい武器でもある。実際、ユーリやクリスティンは刀を武器としているのだ。
クリスティンが持つ木刀を受け取った隊員は、試しにそれを振るってみる。
「利点は、慣れれば剣よりも基本的に軽い力で斬ることができ、使いやすいことだな」
隊員が持っていたのは、それなりに重量のある武器。刀の感覚に隊員達は感嘆していたようだ。
「難点は基本、受けには適さない事だな」
ロングソードでは受けきれた攻撃も、刀では折れる危険性がある。攻め込みたい隊員と、防御に徹したい隊員とで好みが分かれそうだ。
構えは虫取り網を扱うような、蜻蛉の構え。移動の際は腰をやや落としてすり足。上半身が骨盤上に乗り下腹部に力が入る感覚だとクリスティンは語った。
そうして、彼女は手首を反って強く絞め、刃筋を目標へと向けて……斬る。
「今回はこんな所か。興味が湧いた者は、後は試行錯誤する事だ」
とりあえずは区切りの時間。2人の講義は一旦終了となった。
●座学、2時限目
小屋は隊長だけとなっていたが、そこにフィルメリアが入ってくる。彼女は書類の束を差し出した。
「今回だけで教え切れるものでもありませんから、資料を用意しておきました」
フィルメリアが今日の為に用意してきたのは、自身が過去に経験した戦場記録。今日の教練の後も、各自復習、勉強できるようにと参考書類として配布していた。
少しそれに目を通す時間を与えた後、フィルメリアは口を開く。
「優先対象は、戦況における危険度を認識する事ですね」
盾となる堅牢な前衛がいた場合、後ろから火力のある射撃、魔法を使う相手は厄介だ。
「相手との力量差を確りと見極める観察眼も必要です」
よほどのことがなければ、相手とは2人以上で対すること。実力が拮抗している相手ならともかく、格上の相手は1対1ではまず勝てないからだ。
「後でちゃんと目を通して見てくださいね?」
最後に彼女は微笑みつつそう言い残して、小屋を去っていった。
●戦いのいろは、2時限目
続いて団員達は、リューリ、アルトから戦いの手ほどきを受けていた。これに、ファリーナも参加していたようである。
「持って動いてみて、余計な力が入りすぎない持ち方が良いかな」
元々団員が持っていた武器に関して、リューリは手ほどきをする。
「ボクの思う聖導士に一番必要な物は、回復力は勿論だが、それを行使し続けられる耐久力かな」
アルトも防御の大切さを隊員達に伝える。
回避に防御。重要なのは、共に敵の攻撃を見極めることだ。
「人間、来るとわかっている衝撃はそれなりに耐えられるが、不意の一撃には弱い」
恐れず、敵の攻撃をしっかりと見ることが大切だ。
「また、強烈な攻撃は受け流すことも重要だ」
繰り出された攻撃に対しては、防御すると、腕を痛めたり、踏ん張った足をくじいたりすることがある。アルトは木刀を振り下ろすのを、横方向からの力で逸らすという方法もあると実演してみせた。
リューリは直接的な戦いだけでなく、戦況を確認する大切さも教える。
「しっかり見るといえば、聖導士だと回復もするから、周りと仲間の状況を見ておくと良いのかな」
リューリは、アルトと共に2人1組で組み手をするよう隊員達に告げ、攻防を実践させながら話しかける。出来る限り武器に慣れてもらう為だ。
聖導士ならば、回復役を任されることも多いだろう。仲間の状態を気にかけることも大切。ただ、そればかりに気を取られていると、自身が敵に狙われかねない。
「敵の動き、装備も注意しておくと良いかな」
動きが急に変わることがある歪虚だが、相手が人型なら、装備である程度攻撃の予測が付くこともある。
そう教えつつ、リューリは攻撃を打ち込むと、折角だからと木刀を使っていたファリーナがそれで受け止めていた。
「戦闘では常に平常心を。焦りや怒りは判断を鈍らせる」
アルトもまた隊員達に説くのである。団員達が自身の適正を学ぶことが出来れ田なら幸いと、彼女は考えていたようだ。
●座学3時限目
小屋では、ジャンクによる講義が始まっていた。
「聖呪の緒戦。闇光での撤退戦。審判の決戦……。お前さんも記憶にあるだろ」
その内容は、撤退戦についてだ。大切なのは士気だとジャンクは語る。
負け戦となれば、兵士は剣も盾も捨ててしまう。武具は逃走の邪魔だ。
しかし、その地点でそれは兵士でなくなる。上官に従い、戦友と共に行動する意味を見出せなくなってしまう。
「絶対に武器は捨てさせるな。処罰の対象にしろ」
また、隊長が怯えれば、それだけで士気に関わってしまう。
「隊長はそれを命令できるくらいに、毅然とした態度を取り続けろ。大胆不敵に笑え。お前に従えば生き残れると思わせろ」
これぞ、生き残る為の大前提だとジャンクは告げる。小隊を維持できれば、基本戦術で対処できるはずだ。
包囲されにくい道を選んで撤退。敵軍の足を止めたければ、包囲されない場所に誘い込み、追撃部隊の前衛へと逆襲を。援軍が見込めるなら、方円で防御を固め、戦術の鉄則を堅守。
「これだけだ」
ここまで傷を負いながらも生還してきてきたジャンクの教え。それを飲み込んだ隊長は丁寧に頭を下げた。
●模擬戦、1戦目
さらに休憩を挟んだ後、今度は模擬戦を行うことにしたハンター達。
隊長と隊員、ファリーナを含めた聖堂戦士団8人と、ハンターとの戦い。ハンター達は2組に分かれて2戦行う形だ。
最初は、アルト、ジャンク、リューリ、クリスティンのチーム。
クリスティンが貸し出した木刀を、隊員達が受け取る。それでもロングソード、メイスを選んだ団員もいたが、彼らは稽古で使う木製の物を使うことにしていたようだ。
一方のハンター達も、模擬戦用の武器を用意する。クリスティンなどは矢の鏃を丸く加工するなどして、配慮していたようだ。
戦いは始まる……といっても、団員2人に対して、ハンター1人が戦い方を手ほどきする形。隊長はある程度さまになった戦い方をしていた為、クリスティンが多少本腰を入れて戦っていたようだったが。
クリスティンはワイヤーウィップと木刀を持ち替え、仕掛ける。隊員と挟み撃ちを行う隊長。ただ、クリスティンは二刀流で攻撃を斜めに受け流す。そして、距離を取る相手を弓で狙い撃った。
ジャンクはインクを使ったペイント弾で、隊員の相手をする。
遮蔽となる物はさほど多くないと感じたジャンクは、泥を巻き上げ、あるいは相手の足を踏んででも仕掛けようと動く。これぞ傭兵仕込み、賊相手の戦法だ。
ただ、さすがにそれだけで隊員も怯みはしない。隣の女性隊員が木刀で切りかかろうとするが。ジャンクはその足元に牽制射撃を撃ち、ペイント弾を直接叩き込んでいた。
アルト、リューリは4人の隊員を相手にする。
スキルのセットに難があったようではあるが、アルトは木刀を使い、ランダムに選んだ隊員へとフェイントを織り交ぜつつ攻め込む。
簡単に受け止められる攻撃から、アルトは徐々に動きを速く、そして力強く攻撃を叩き込んでいく。仕舞いには隊員はついてこられなくなってしまったようだ。
リューリはナックルと、身長よりも長い木製の槍を担いでいた。アルトに合わせるようにして瞬発を生かした動きでその槍を打ち込む。
間合い、そして、重そうな見た目に惑わされるファリーナ。木刀での一撃をと近づくが、リューリはにこりと笑ってナックルでの一撃を叩き込む。
「相手の装備はちゃんと見て接近してね」
「なるほど……」
ファリーナはリューリの指摘に頷き、反省して見せたのだった。
●模擬戦、2戦目
小休憩の後、2チーム目。カズマ、ユーリ、フィルメリアが相手をする。対する聖堂戦士団員達は、人数の都合で戦いから外れた隊長が、団員7人の指揮を執る。
先に仕掛けるのは、ユーリ。模擬戦ではあるが、団員達を倒す気概で臨む。訓練だからという甘えを許せば、実戦においても甘えが出てしまうと彼女は考えたのだ。
フェイントを織り交ぜながら、攻撃のタイミングをずらす。隊員も気づきはしていたものの、判断がやや遅れたり、体がうまくついてこなかったりと完全に対応しているとは言いがたい。
しかしながら、ファリーナはなんとか対応しようと動く、そこに、ユーリは抜刀術の姿勢をとり、居合いの一撃を彼女の腕に掠めていた。
仲間の援護を行うのはフィルメリア。ゴム弾を仕込んだ銃を使いつつ、ジェットブーツによって高速で移動する。離れた距離からの攻撃や遠近双方で自由に動ける相手を想定し、隊員達へと身を持ってその対処法を教えていた。
そこに近づく木刀持ちの男性隊員。カズマが足にマテリアルを篭めて素早く近づく。すかさず鞭を振るって地面に打ち付ければ、その男性隊員は態勢を崩してしまう。
隊長が止まるよう指示を出すのだが、それでも、その隊員は木刀を構えて果敢に攻めてくる。カズマは木刀に鞭を絡めると、不意に隊員は武器から手を離してしまった。
「戦場で武器無しは致命的だ、阿呆」
カズマはその状態の男性隊員を思いっきり蹴り飛ばす。
「武器を持ったまま間合いを詰め、緩ませるといった方法が正解例だ」
隊員は起き上がりつつ、転がる木刀を握り締めていた。
●戦術指南は続く
模擬戦2戦目が終わる頃には日が傾き始めていたが、団員達の稽古はまだ続く。
「まだやる気のある人がいれば、手ほどきするよ」
アルトが隊員に声をかけると、隊員からはまだまだと声が上がる。彼らに対し、ユーリなどは個別指導を行っていたようだ。
クリスティンも同じく個別に指導する。彼女の教えもあり、刀を武器にと考えるメンバーが2人ほどいたようだ。
「法具と刀の特製を併せ持つような武器があるといいのですけれどね」
ファリーナがくすりと笑う。彼女も折角だからと、副武器に刀をと考えたようだ。
日が暮れても、詰め所傍では聖堂戦士団員達の掛け声が響いていたのだった。
依頼結果
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【相談卓】団員に稽古を付けよう リューリ・ハルマ(ka0502) エルフ|20才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/05/16 21:39:41 |
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【質問卓】 リューリ・ハルマ(ka0502) エルフ|20才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/05/14 12:10:01 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/05/14 05:38:54 |