プチ探検隊、謎の音に遭遇する

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/05/24 12:00
完成日
2016/05/30 03:14

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●悩ましい
 グラズヘイム王国にある小さな町フォークベリー。
 ハンターズソサエティの支部や繁華街と領主の館はないが、交通の便はよく住みやすいところ。一言でいえば便利な田舎。
 その町に領主の息子のリシャール・べリンガーはやってきた。
 理由はそこの教会の司祭に、先日迷惑かけたことを謝罪することと元気な姿を見せることであった。
 原因は彼の無茶な一日があり、家族に制止され、気分変えて来いと言われたのだった。怪我が治ってからというものの、焦燥にかられたリシャールは朝から晩まで剣の訓練と勉強と、それに加えて軍事関連の書物を読み漁るという状況になっていた。
 弱いから守れない。
 無知だといけない。
「お前が勉強することも武術を修めることも素晴らしいことだ。だけど、その前に体を壊したら元も子もないだろう」
 父が言う。
「ようやく風邪もひかなくなったというのに! 今度は怪我ばかりしてくる! そんなのは困りますわ! せっかく、せっかく」
 母が嘆く。
「そうよねぇ、あなたに何かあったら、わたくし困るわ?」
「兄上がいないと、あたしも困るよ……ほら、う、うん」
「兄上がいないとぼくもこまるよ」
 弟妹は姉の真似をしただけ。
 そんなわけで護身用の刀だけは許され、愛馬であるゴースロンのポチとともにやってきた。
「きっとじいやもついてきている」
 溜息が漏れる。じいやアネスト・イースは坊ちゃんを守るためにあらゆる手段をとる。それがリシャールの危機につながることもあると、先日の事件で気づいた。父に話すと頭を抱えて善処すると言った。
 リシャールはじいやを無視した、平和な街の中を行くだけなのだから。
「ごめんください」
 教会に入ると、小さな影と大きな影とぶつかりそうになる。
「みぎゃああ、ごめんなさい」
「ぶつからなかった?」
「あ、リシャールさん。こんにちは」
「知り合い?」
「はいです。領主様のお子さんなのです」
「へぇ」
 教会の隣にある魔術師の家の住民である、魔術師の弟子のルゥルと、教会で世話になっているエトファリカ出身の鬼のヒウチだった。
 互いに挨拶と自己紹介をする。
「マークさんはいないです」
「そうですか」
 リシャールは帰ろうか、待たせてもらうか悩む。
「ところで、お二人はお出かけですか?」
「はいです! 近くの丘の上におうちがあるんです。そこでピクニックをするですよ! リシャールさんも来るです?」
「いいんですか?」
 二人は構わないと異口同音に告げる。
「では、一緒に……」
「……あのおじいさんはどうするですか」
 ルゥルが震える声を出す。指し示す先にはアネストがいた。

●依頼人とハンター
「というわけで、みなさんにお願いしたいのは、近くの丘にある建物の調査です」
 マーク司祭は隣町にあるソサエティの支部で頼まれてくれたハンターたちに直接話をしていた。
「あの屋敷が建ったころは、風光明媚だったんだと思うんですよ。残っているのが分かったのは最近です」
 何かあったのかと問うハンター。
「その時代の記録があっても、そこにどんな人が住んでいたかというのまではなかったのです。当時の偉い人間が住んでいたと思うのですが、平和な別荘ようです。血なまぐさいことがないと記録残りにくいですから」
 マークとハンターはいったん教会に行く、厚い雲が気になる空を気にしながら。
 礼拝堂に入った瞬間、マークは違和感を覚えた。
 ルゥルとヒウチが遊びに行っただけではない、何かがおかしい。
 ハンターは見つけた、縛られて猿轡をはめられた老人を。
「何があったんですかって、リシャール君のところのじいやのアネストさん」
 慌ててロープを外す。
「坊ちゃまにしてやられました」
「……いや、してやられたっていう話で済みますか?」
「坊ちゃまは小さい子と大きな子と出かけていきましたので、迎えに行かねばなりません。天気も悪いですから」
「……どこに行ったのです?」
「丘の上がどうのと話しているのは聞こえました。年は取りたくないものです」
 マークは頭を抱えた。
 その瞬間、閃光と轟音が起こった。
「……雷雨!?」
 恐る恐るマークはハンターを見る。
「林通らないといけないので危険ですが……大丈夫だとは思うのですが……」
 さて、どうしますか?

●丘の上
 リシャールはアネストにひどいことしたなと思いつつも、何か自由な気持ちになった。
 ルゥルとヒウチという友人になれそうな子らと思いっきり、走っただけだ。それでも何か楽しかった。
 以前、ルゥルを探しに通った街道を進み、巡礼路までいかないところで丘の上に上がる道がある。
 木で整えた階段があるため、上るのに苦労はしない。
 上がり切ったところで、三人は広々とした草地にはしゃいだ。
「おうちがあるです。むかーしの貴族の人の別荘だったという噂です」
「中見てみたいな」
「でも、壊れかけで危ないですね」
 ルゥルとヒウチ、リシャールは思案する。危ないならひとまず近寄らない。
 木々の隙間から見える景色や、鳥の声を堪能する。
「そろそろ、お弁当にします」
 ルゥルは荷物からサンドイッチや水筒を取り出す。
「一緒に食べましょう」
 三人は草地に座ってゆっくり食べようとした。
「……風が」
「本当です、なんかひやっとしました」
「黒い雲が見えるよ?」
 リシャールとルゥルが眉を顰め、ヒウチが指さす。
「急いで帰ろう!」
「そ、そうですね」
 落雷の大きな音が響く。
「……雨だっ!」
 三人は雨宿りのために壊れかけている家のひさしに入った。
 中に入れそうな穴を見つける。そして、三人は中に入った。

 カリカリカリ……。

 カッ、ドカーン。

 ルゥルは目をまん丸にして、雷を見ている。
「みぎゃあああ、ああはははみぎゃぎゃぎゃ」
「……ルゥルさん」
 突然奇声を発したルゥルにリシャールは驚く。
(小さいし、怖いんだきっと)
 どうやって慰めるべきか悩ましい。
「楽しいですぅうううう」
「はい?」
「おうちの中で見る雷は大好きです」
 興奮しているルゥルにリシャールとヒウチが困惑した。

 カリカリカリ……。

「ねえ、気のせいかもしれないけれど」
 ヒウチは部屋の奥を見た。リシャールにしがみつき、いや、リシャールを抱きしめるように。

 カリカリカリ……。

「……離れないようにしよう」
 リシャールはヒウチをなだめ、ルゥルの袖を引いて、自分のように寄せた。
(できれば逃げたほうがいい。しかし、この雷雨の中出るほうが危険だ)
 リシャールはおびえるヒウチと興奮中のルゥルに挟まれ、必死に打開策を考えた。

リプレイ本文

●雨の中
 アネストから事情を聴きとったハンターはすぐさま出かける準備をする。
「依頼は建物の調査……と子供探しだな。それにしても雷様が荒ぶっているな……」
 残月(ka6290)は状況を理解したとうなずく。リアルブルーのどこかで雷の擬人化として鬼が使われていたと聞いたことあるため、雷雨に少し親近感を覚えていた。
「本当は雷雨の中を動きたくないけど、そんなことを言うとアネストさんが独りで行っちゃいそうだものね。はあ……じゃあ、さっそく三人を探しがてら依頼を済ませましょうか」
 マリィア・バルデス(ka5848)から盛大な溜息が漏れる。アネストの奇妙な過保護ぷりを目の当りにしたため、彼の行動を危惧する。
 バシャーと降り出した雨を見て、Honor=Unschuld(ka6274)は連れてきたペットたちを教会に預けることにした。そのため、しばしの別れとなる。
「キミたちはここで待っていてね。帰ってきたら、子供たちも出迎えて、モフモフで癒してね」
 ダックスフンドは小首をかしげつつ尻尾を振り、インコはHonorの手の皮をはみはみして何か言っている。
「アナの言うように……あなたたちはここで待っていてくださいね……。じいやさんもですよ。私たちが必ず無事に連れ帰りますから、あなたの戦いはここで信じ、待つことです」
 妹分であるHonorを愛称アナで呼ぶ月影 葵(ka6275)は、やはり教会にペットを預ける。グレイハウンドとスターリングシルバーのフェレットを撫でつつ、アネストにくぎを刺した。ついてきそうな予感がしていた。
「自由になりたいって気持ちはわからなくはないもないけど……何かあったの?」
 キヅカ・リク(ka0038)はリシャールへの共感とともに、なんとなく不穏な空気を読み取って尋ねる。
「アネストさん、リシャール君を守ろうとするあまり突撃をかけるのよ」
 マリィアは先日あった歪虚を前にしたアネストの行動を告げる。一般人がいなくなったところでリシャールが逃げる予定が、坊ちゃまかわいさに突撃したアネストのために危険に追いやられたのだった。
「私が今回はここにいますから安心していってください」
 マーク司祭が複雑そうな表情で告げる。
「そうと決まれば! 行きましょう! 探検やら調査やらと聞くとなんだかわくわくしますねぇ」
 ハンター初仕事ということもあり小宮・千秋(ka6272)はやる気が態度からあふれ出る。連れの黒猫とマルチーズもやる気なのかきりっと出かける準備が完了したことを訴えた。

●移動と家の中
 馬にのり、バイクに乗り、一行は急ぐ。雷雨はいずれ止むだろうが、移動中はひやひやする。
 雷はバイクに落ちるのか、林に落ちるのか。
 閃光の直後、衝撃がなかったことを安堵しつつ進む。
 丘の登り口に無事たどり着く。階段は緩やかではあるためなんとかそのまま押し上げたり、乗りつけることはできた。

 雷の音にまぎれ、何か異なる音だった。
「……足音?」
 リシャールは思わずつぶやいた。判断したかった、この部屋なら安全かと。
 ヒウチがより先ほど以上に震えるのにふと気づいた。
「う、うわあ」
「え? あ、えええと!? ダメです、一人になってはっ!」
 ヒウチが奥に走って行ってしまった。
 先ほどつぶやいたのがいけなかったのだとリシャールは気づいた。追うにしてもルゥルをどうするか悩んだが、彼女も事態に気づいて深刻な表情になっている。
「追いかけるです」
「それより、ルゥルさんはワンド持っているんですか?」
「この爪楊枝がワンドだといいですっ!」
 リシャールは血の気が引いた。

「失礼する。依頼で来たハンターだが、誰かいないか?」
「建物の調査に来たハンターです。もし怖いのでしたら、安全なところで待っていてください」
 残月と葵の声が建物の中に響くが、かすかな物音がするのみだった。念のため葵は何度か声をかけた。
 ピクニックで雨が急に降ったなら、中にいそうなものであるが子供たちは見えるところにいない。一行はバイクや馬を屋内に入れた。
 濡れた床があり、奥に向かったような跡も見える。誰かがここにいたことは間違いないようだ。

●捜索開始
「ルゥル、リシャール、ヒウチ! 迎えに来たわよ! 怒らないから出てらっしゃい!」
「怒られるのが怖いのならボクも一緒に怒られるよ! だから戻ろう。心配しているよ」
 マリィアとHonorが声をかける。
「怒らないというのだから素直に出てくればいいのに」
「そうだよね」
 マリィアとHonorは首をかしげる。
 千秋がライトをつけて見渡す。
「手分けしたほうが早いね」
 リクの言葉から全員が適度にばらける。家自体が広すぎるわけではないのが幸いだ。

 リクは外から二階に入ることとした。荷物を置いた部屋の真上のところに狙いを定め、屋根にショットアンカーをかけ、ジェットブーツを使用する。難なくこなして二階に上がる。
「窓は開いていればいいけど」
 確認すると雨戸が壊れており、こじ開ければ入れるようだった。
「雑魔を注意して……まあ、デュラハンみたいなのは出ないと思うけれど。建物の状況にも注意しないとまずいな」
 入った部屋をくまなく見る。特に問題はなさそうだったため、ゆっくりと廊下に続くだろう扉を開けた。

 マリィアは仲間と一緒に途中まで進み、先に進んだ。建物の中から二階に上がるつもりである。玄関ホールに来て玄関扉が開くか確認する。歪んでしまって開かないようだった。
 素早く、足元を注意して。古い建物というだけあって、壁や床に腐食と思われる不安要素が見受けられる。踏み抜かないように注意は必要だ。
 二階に上がると、人の気配に緊張したが、明かりを向けるとリクだとわかった。彼とは別の部屋、階段近くの部屋にマリィアは入り確認した。

 Honorと葵は一階の部屋に入る。
「我々はハンターです、誰かいますか?」
「司祭さんが心配しているよ?」
「じいやさんもです」
「そうだね。ともかく隠れているなら出てきてよ」
 大きな家具があるため念のため確認をする。人間もいないし、雑魔も潜んではいない。
「この部屋は静かですね」
 葵は高いところにある窓を見つめる。
「もし何かあったらここを避難所にする?」
「そうですね。ただ、外に逃げにくい問題が一つありますね」
「そっか」
 Honorは窓を見つめ、納得した。

 一階にあるもう一つの部屋に千秋と残月は入る。台所だったようで、かまと思われる物や壁につけられて壊れた棚がある。
「腐食しているな」
 残月は床を踏みながら小柄でよかったと思った瞬間、複雑な気持ちがわいた。鬼として身長が低めということがコンプレックスだからだ。
 ちょこまかと動き回った千秋は壁に穴があるのを見つける。
「んー? これは何かあるんでしょうか? 見てきてくれますか?」
 千秋に話しかけられてマルチーズは覗き込み首を傾げ、黒猫は「世話が焼ける」というように入っていった。
 入っていった直後、黒猫が怒りの声を発した。
「何かいたのか?」
「壊れますかねぇ」
 こぶしを固めた千秋を残月はひとまず止めた。
 この直後だった、若い男の悲鳴と猫の悲鳴が響き渡ったのは。

「うわああああああああああああああ」
「にゃああああああああああああああ」

 二階を探していたリクとマリィアは物音のする部屋に気づき、用心深く聞き耳を立てていたが、扉を蹴破り部屋に入った。

 二階に上がりかかっていた葵とHonorはどっちに行くべきが悩み、その場で待機して様子をうかがう。どちらにでも駆けつけられるように。

 悲鳴の主である黒猫は慌てて戻って千秋の腕の中で震えた。
 同じ部屋にいる残月は何かくるかと構えた。

 一旦沈黙が下りた。

●発見
 リクとマリィアの前にはルゥルをかばって抜刀しようとしているリシャールがいた。
「……」
「……みぎゃああああああああ」
 沈黙の中、真っ先に声を上げたのはルゥルだった。マリィアのことは見覚えもあるため、ハンターだと一目でわかり安堵したのだった。
「良かった……」
 リクはホッと息をついたが、一人足りないと気づいた。
「もう一人は?」
「……そ、それが、大変なんです。仕掛けがあるらしくて、ヒウチさんが入っちゃったんです」
 リシャールが説明した。
「何があったのぉ?」
 玄関ホールの階段のところからHonorの声がした。
「こっちに来て」
「こっちに来てくださいー」
 マリィアが答えたと同時に、下の階から千秋の声がした。

 少し時間が戻ってルゥルたちが発見されたころ、下の階では壁越しでやり取りが行われていた。
「そこに誰かいるのかな?」
 残月が声をかける。
「……人間?」
「鬼とドワーフですけどねぇ」
 千秋は訂正するが、大きいくくりで言えば人類側ということで間違いはない。
「……よ、よかった。どうやって出たらいいのかわからなくて」
 壁の向こう側にいる声は安堵したようだ。
「きみはヒウチかな?」
「う、うん」
「どうやってそこに入ったんだ?」
「扉押したら、すっと壁が回ったんだ」
「なるほど」
 千秋は会話を聞いてから、しゃがんで穴を覗く。明かりを向けてもはっきりしないが、声の主の影は写った。
「階段があって……下りてきたんだ……下に行けば戻れるかと思って……でも、カリカリっていう音が大きくなるんだ」
「わかった、助ける。今は安全だな?」
「うん」
 残月は仲間と連絡を取ろうと考えたとき、玄関ホールでの声が聞こえ、千秋が返答したのだった。

 一階にいる千秋と残月はヒウチが怯えるために、待機する。トランシーバーで告げればいいので問題はない。状況の説明をする。
 Honorと葵は二階のメンバーと合流をした。
「扉を発見すれば、ヒウチの安全は確保できますね」
 葵は二階の部屋に入って、壁に明かりを当てる。
 マリィアは壁をたたいて空洞があることは分かったが、仕掛けが今一つわからない。
 明かりを向けるとわかるのは、新しい手の跡が下のほうに集中しているということだった。
「……ヒウチの身長は高いですか?」
 葵はふと尋ねる。
 その問いかけにルゥルは背伸びをしてペットのパルムを持ち上げ万歳した。
「……その方と同じくらいです」
 リシャールが建設的にリクのほうを向く。
「お姉ちゃん、何かわかったの?」
 Honorは期待のまなざしを向ける。
「押して動いた……わけですよね? 位置が高かったのです」
「そっか! リシャールはボクよりも小さいし、ルゥルは千秋くらいだし」
 Honorはうなずく。
 小さいといわれたリシャールは少々むっとしている、小柄なことを気にしているようだ。
「どのあたりだろう?」
 リクはそれらしいところを押した。
 カチリとロックが外れるような音がした。壁を押すと回転してしまった。
 再びリクは押してから扉を回し、体を押し込んだ。
「階段がある。おおい、こっちに戻ってこられる?」
 リクが声をかけると登ってくる音とバキッと踏み抜いた音がした。ハラハラして待つとすぐに、やってきた。
「……あっ! 飴玉もらいに行ったときにいたハンターさん」
 ヒウチは感激という表情になる。
「……やっぱりそうか」
 東方が歪虚から解放された直後のエトファリカ連邦国で、飴玉欲しさにのこのこ手伝いに来た鬼の子たちがおり、騒動が起こりかかっていた。そこに居合わせ、助けたのだった。
「だめですよ、心配したんですよ」
「ごめんなさい」
 ルゥルが叱り、ヒウチは小さくなる。
 一階にいた千秋と残月が入ってきた。
「無事合流できたんですねぇ」
「さて、ようやくきみたちの顔をみることができたね」
 千秋と残月の言葉に、三人の子供たちははにかみ、しおれた。
「それより、この先から音がしていたみたいだけど?」
 マリィアの言葉に、ヒウチが青くなる。
「そうなんだ。一階より下があるみたいなんだ」
「……そいつらが開けたんですかねぇあの穴」
 千秋が一階にあった穴のことを説明した。
「雑魔がいるなら討伐したほうがいいな」
 リクは扉を見る。中からも開けることはできるはずだが、仕掛けがわかるか不明だ。
「後でというわけにはいかないですね」
 葵は思案する。
「私たちが抑えていればいいんですよね」
 リシャールがいう。
「押す場所はわかっているから、大丈夫だね」
 Honorはにこりと笑った。

 扉の向こうに一行は入った。何かあれば三人は逃げるようにと言いつけて。
 慎重に階段を下りていく。一階の壁は壊れているということで、さらに下を目指す。階段が途切れるところまでやってきた。
 隠し部屋であり、地下である。
 明かりを向け確認するとネズミだったと思われる雑魔が二体いた。それらが動き始める前に、ハンターたちは攻撃を開始した。
 マリィアとリクの銃撃を合図に、千秋、Honorと葵、残月が接敵する。素早い雑魔たちは回避や抵抗としてかみつきを行ってきた。
 無傷でとはいかなかったが、最小限の怪我で退治を終えた。

●雨上がり
 ハンターが戻ってきたのをルゥルたちと雨上がりの空が迎えてくれた。
「さて、帰りましょうねー。あ、その前におひるごはんかおやつでも?」
 千秋が尋ねるが、ルゥルたちは首を横に振る。
「心配ばかりさせてしまう間は子供扱いされるものだよ?」
 やんわりと残月が告げる。三人はしおれているため、自覚はあるのだろう。
「帰るまでに疲れてしまうぞ、少し食べよう?」
 残月はマカロンを勧める。
 三人は千秋と残月が差し出したもので好みのものを一つつまんだ。安心した表情になった。
「どうして執事の人を縛ったのかな?」
 ふいにリクに問われ、リシャールはバツの悪い顔になる。
「私が行くところに必ずついてくるんです」
「あれは確かに度を越したところがあるわよね。縛るのは……」
 マリィアは同情はした。
「ルゥルもやっちゃえって言ったです」
「俺もやったよ」
 ルゥルとヒウチも複雑な表情になる。
「親とか面倒くさいのはわかるよ。僕も昔いた世界でそうだったから。でも、君は覚醒者なんだよね? なんのために力を手に入れるの? 目の前のうざいものをねじ伏せるため?」
「ち、違います」
 リシャールはきっぱり言う。
 リクはリシャールを見て微笑んだ。
「なら、ちゃんとごめんなさいをしよう! お互いに悪い部分があっただけなの。あとは仲直りだよ!」
 Honorがリシャールに提案をする。
「アナの言う通りですね。話に聞くところのじいやさんですと……あとはいかに諭すかですね、かわいい子には旅をさせよということを理解していただければ、きっと」
 葵が勇気づけるように微笑んだ。
 リシャールはうなずく、ハンターを見つめて。
「……昔いた世界? リアルブルーですか!? 知りたいです知りたいです。行ってみたいですぅ!」
 ルゥルが突然元気を取り戻し、リアルブルー出身の者にまとわりつき始めたのだった。

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参加者一覧

  • 白き流星
    鬼塚 陸(ka0038
    人間(蒼)|22才|男性|機導師
  • ベゴニアを君に
    マリィア・バルデス(ka5848
    人間(蒼)|24才|女性|猟撃士
  • 一肌脱ぐわんこ
    小宮・千秋(ka6272
    ドワーフ|6才|男性|格闘士
  • 動物愛は止まらない
    Honor=Unschuld(ka6274
    人間(紅)|12才|女性|疾影士
  • 新米聖導士を諫めし者
    月影 葵(ka6275
    人間(蒼)|19才|女性|舞刀士

  • 残月(ka6290
    鬼|19才|女性|格闘士

サポート一覧

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依頼相談掲示板
アイコン 相談・丘の上の探検調査?
マリィア・バルデス(ka5848
人間(リアルブルー)|24才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/05/24 00:47:58
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/21 04:03:06