• 春郷祭1016

【春郷祭】プロレスに思いを込めて・後編

マスター:cr

シナリオ形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/05/28 22:00
完成日
2016/06/07 00:55

みんなの思い出

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オープニング


「なんだなんだ?!」
 今日は明るく楽しく激しい村長祭プロレス大会のはずだった。リングで行われた高度な戦いに観客達は大盛り上がり、大成功のうちにそれは幕を閉じるはずだった。
 だが、そこに7体の人影が現れた。いずれも大柄な体を持ち、皆同じデザインの覆面をかぶっている。
 彼らは一言も言葉を漏らさない。それは人間というより、無機質な機械を思わせるものだった。
 こんな乱入は予定になかった。美織は妙な胸騒ぎを感じ、エプロンに上がって連中がリングに上がるのを止めようとした。
 だが、連中は何の慈悲もなく美織の身体を掴み上げると、リング下に叩きつける。
「ああぁっ!」
 苦痛に思わず悲鳴を漏らす美織。その膝はあらぬ方向に曲がっていた。


 その時、その場に居るハンター達は皆理解していた。こいつらはこの大会を盛り上げるために現れた乱入者たちではない。人に害為す招かれざる客、歪虚だということに。
 だとしたらすぐに止めなければならない。だがその時気がついた。ここはつい先程まで興奮のプロレスが行われていた場所。詰めかけた観客達が居る。しかも彼らは、これが歪虚であることを理解していない。プロレス大会の延長だと思っていた。
「ちくしょう、美織さんを!」
 イバラキが飛び出す。他の者達も飛び出す。歪虚を止め、最高のプロレスを見せたまま観客達を家に帰す。レスラーたちのその双肩には、重い重い責任がのしかかっていた。

リプレイ本文


「ライバル団体じゃなく歪虚のカチコミだったのか。あたし達なら出来る、全員マットに沈めてやるよ!」
 美織の言葉に招かれざる客の正体を確認した天竜寺 舞(ka0377)は、考えるより先に動いた。神聖なるリングに上がり込んだ覆面の者達を追い出すため、一気にコーナーポストに飛び乗ると、高く跳び上がり急降下。両膝を後頭部に突き刺しそのままマットに叩きつけた。
 だが、倒れた歪虚を追い払おうとした時、他の歪虚達が殴りかかってくる。それをその場でひらり、ひらりとかわす舞であったが、大ダメージを与えたはずの歪虚が下から舞の腕を掴み、そのままマットに引きずり倒した。
 一瞬のうちにまだ元気な歪虚と入れ替わった、そのことに舞が気づいた時には打ち付けられた肩の痛みが襲ってくる。そこを容赦なく取り囲む歪虚達。
「さて、雪娘の遊びの時間はおしまいです。ここからの私はリングを支配する雪の女王です」
 しかしリング上にはノエル(ka0768)が居た。リングの支配者として、それに楯突く者達には容赦はしない。鋭いローキックを打ち込む。鞭のようにしならせた彼女の脚からビシィッ! という強烈な打撃音が放たれる。我が物顔で動き回る歪虚の動きを一発で止めてみせる。
 だが多勢に無勢。全員に取り囲まれないように注意して動くノエルだったが、それでも二体に同時に襲いかかられればタダでは済まない。ローキックを放った所に、背後から歪虚が彼女の膝裏めがけ低空ドロップキックを突き刺す。不意を打たれた一撃に顔を歪め、膝をつく。
 そしていつの間にか息を吹き返した――いや、入れ替わっていた歪虚がロープの反動を利用してノエルを追撃しようとしたときだった。突如としてその歪虚は前のめりに倒れ、リング下に引きずり降ろされていた。
「ハッ、いいトコロにきたじゃねぇか。まだ燃えたり無かったところだ。簡単にギブアップすンじゃねぇぞオラァ!」
 リング下にはボルディア・コンフラムス(ka0796)が居た。エプロンサイドからロープに飛んだ歪虚の脚をむんずと掴むと、力任せに引っ張った。その成果が彼女の目の前に転がっている。
「イバラキィ! テメェと俺でコイツ等ぶちのめすぜぇ!?」
「オウッ! アタシもこいつらはタダで返すわけにはいかねぇからなァッ!」
 美織に怪我を負わされて怒り心頭のイバラキは、彼女を安全な位置まで運ぶと同意を示した。そして一瞬のアイコンタクトの後に、同じタイミングでエルボードロップを落とした。


「何あれ……」
 一方その頃、客席で一人の少女がそう漏らしていた。彼女の名前は天竜寺 詩(ka0396)。舞の双子の妹だ。彼女は姉の応援に会場にやってきたのだが、姉の試合後に見たものはそう、歪虚だった。
 しかしこういう状況になったら居ても立ってもいられない。周りを見れば観客達は、歪虚が襲ってきたということに気づいても居ない。ならば。詩は席を立つと控室へ急ぐ。
 その頃、入れ違いで控室から出てきた者が居た。央崎 枢(ka5153)だ。自らの試合を終え、控室で汗を吹いていた所に感じた異様な雰囲気。
「まさか……歪虚か」
 彼は小さく舌打ちすると、フードで顔を隠し客席の中に身を潜める。観客達は今危機が迫っているということに気づいていない。現れた覆面の者達が歪虚であることを知らせることは簡単だ。だが、それは混乱を招くことになるし、何より今までこのプロレスを楽しんでくれていた観客達を裏切ることになる。
「さてと……ヤツらの正体バレねーまま、どうやって終わらせるかだ」
 その時だった。リングの外で暴れようとしていた歪虚の一体が突然吹き飛ばされた。そこには舞と同じデザインのワンピース水着に身を包み、顔を銀色のマスクで隠した者の姿。彼女はドロップキックを食らわせたかと思うとポーズを決め、高らかに観客達に向けて宣言する。
「リングに咲き誇る銀の華、シルバーエンジェル、義により助太刀するよ!」
 金色のオーラが立ち上り、頭上に見える天使の輪。そして左側に現れる天使の羽。観客達の注目を一手に集めながら、彼女はリング上の舞に向けてウィンクした。
(お、味方か? っていやいやあれ詩じゃん!? あの子プロレスなんて出来るの?)
 一方の舞は流石に双子である。その姿を見て正体に気づいていた。が、その正体が分かれば心配が先に立つ。実際、詩がドロップキックを食らわせた歪虚はダメージなど無いかのようにすっくと立ち上がると襲いかかってきた。
 しかしそれをひらり、ひらりとかわすと、詩は背後に回る。そして腕を回すと一気に引き倒して敵の後頭部を地面に叩きつけた。日本舞踊の足さばきを活かした動きからの見事なバックドロップ。それは丁度先程、舞がリング上で見せた動きであった。
 そんな詩の背後から、別の歪虚が襲いかかる。両手を組み合わせ、それを彼女の背中に落とす。強烈な衝撃が体の芯まで走り、息が詰まる。そこに追撃をかけようとした時だった。
 突如として歪虚の頭上に人影が現れた。フェンスをステップに高く飛び上がり、丁度肩車されるかのように飛び乗って両脚で歪虚の、その覆面姿の頭を挟み込む。そのまま大きくのけぞるように後方へと回転すると、歪虚の後頭部が地面に突き刺さった。
 が、歪虚もすかさず反撃する。殴り蹴りつけてくる。その一撃が急所に突き刺さり、痛みが込みあげているだろうが次の一撃を交わすとキック、パンチ、そして手にしていた棍を振るって追い散らし、その隙を突いてリングに滑りこんだ。
 紫電を帯びる棍を掲げ周囲を威嚇すると、かぶっていたフードを脱いだ。そこに居たのは先程までモルドレッドを名乗り観客達を恐怖の底へ落としていた央崎だった。
 その姿を確認したノエルは、リング上に残っていた歪虚の肩口と腕を掴むと、一瞬のうちに右脚で敵の両脚を払う。空中に浮かされ横回転してマットに落ちる歪虚。
 彼女の見事な払腰を受け尻もちを付くような形になった歪虚のその頭部を、央崎はノーモーションからのバズソーキックで思い切り蹴り飛ばした。すさまじい音とともに大の字に倒れる歪虚。
 それは共通の敵に王道を歩むベビーフェースであるノエル・ザ・スネグーラチカと、怪奇派ヒールのモルドレッドが共通の敵を前にタッグを組んだ瞬間だった。そのインパクトに観客はショーとしてこの展開に歓喜の声を上げている。
 央崎はその反応に胸をなでおろしつつ、歪虚達を倒すため再び向き直った。


「よっしゃ、行くぜー!」
 一方場外ではボルディアとイバラキのタッグが戦っていた。そのパワーを活かして歪虚に立ち向かっている。
 たった今も、その自慢の力でボルディアが一体、遠くへ投げ飛ばしたところだった。転ばせた歪虚の両足を抱え上げ、そのまま大回転しながら振り回して投げ飛ばす。投げ飛ばされた歪虚の後頭部をイバラキがジャンプして蹴り飛ばす。
 そうしてフラフラとよろめいた歪虚の頭をボルディアが押さえ、跳び上がって体重を掛けそのまま地面に叩きつける。豪快な戦いっぷりに観客はやんやの歓声を送る。しかし、誰も覆面軍団が歪虚であることに気づいていない。
 歪虚の顔面を叩きつけて立ち上がったボルディア。だがそこに別の歪虚が近づいてきた。どうしても生まれる隙にボディ目掛けてパンチを連打する。
「あぁ? 効かねえなぁ?!」
 だが、たっぷり1ダース殴られてもボルディアは平然としていた。その様子に恐れを抱いたのか、そのような感情が無いとしたら、こちらのほうが与し易いと考えたのか、歪虚は突如として客席へと向かおうとする。
「どけぇっ!」
 そこを後ろから捕まえ、一気に雪崩れ込むボルディア。彼女が客席に雪崩れ込む前に大声で叫んだおかげで、観客は慌てて逃げ出しており巻き込まれる者は居なかった。
 それを見てひと安心したボルディアはすかさず歪虚を引きずり起こすと、イバラキの居る方向へ投げ飛ばす。それを受けてイバラキが顔面に蹴りをぶち込んで動きを止めると、二人はアイコンタクト。そして同時にダッシュし、ラリアットを同時に叩き込んでサンドイッチした。
 その一発を喰らって倒れた歪虚はそのまま動かなくなり消滅する。しかし、観客達は覆面軍団相手に大立ち回りを演じる二人の方だけを注目していた。


 リング上には別の歪虚が上がってきた。それは舞をターゲットとして見定めたのか、彼女へと突進してくる。一瞬のうちに間合いが詰められ交錯する。
 だが、歪虚がぶつかろうとした瞬間舞は飛んだ。空高く跳び上がりリング外に飛び出す勢いでバク宙、その頂点でトップロープを掴み、綺麗にエプロンに着地する。
 さらにその勢いのまま舞はトップロープを下に引っ張った。すると勢い余って突進してきた歪虚が半身を乗り出した状態になった。その瞬間にターンバックルを蹴って今度は背中から首に脚を絡めると、逆立ちするように回転する。すると歪虚の身体は見事にリング上から引き出され、一気に場外に転落した。
 そこには歪虚をヘッドロックで抱えている詩が居た。舞はリング下に飛び降りると、たった今投げ落とした歪虚の頭を同じように抱える。そして同時にダッシュすると、歪虚の頭同士をぶつける。ゴツンッ! と鈍い音が両者に与えたダメージを物語っていた。
 だが、そのうちの一体、詩の側に居たほうが突然、まるでダメージなど無かったかのように起き上がった。すかさず両脚を払って転倒させると、そのまま首を掴み両手で締め上げる。マスクに隠れているが、苦悶の表情を浮かべる詩。
 しかしここには姉が居た。すぐさま土手っ腹にローリングソバットをぶち込んでネックハンギングを止めると、さり気なく観客達を巻き込まないように歪虚達をリング側に転がす。
 そして救出された詩はうつ伏せに倒れた歪虚の膝裏に足を掛けると、両手を掴みそこから後方に寝るように倒れこんだ。すると動けなくなっていた歪虚の身体はのけぞった形で空中に固定される。ロメロスペシャル、別名吊り天井固めと呼ばれる技だ。
 それに合わせるかのように、舞はもう一体の歪虚を担ぎあげると、肩の上に仰向けに乗せて覆面をかぶった頭部と脚を掴み力をかける。その細身の体からは信じられないパワーで繰り出される荒業、アルゼンチンバックブリーカーで姉妹共演を見せる。
 そしてその時だった。
「そのままジャンプして私の上に叩きつけて!」
 詩は舞に指示を飛ばした。言っている言葉の意味は分かったが、そんなことをしたら三人分の体重がまともにかかる詩の方も只では済まない。
(大丈夫なの?)
 と思いつつ、舞は担ぎあげたままエプロンに上がる。そしてマテリアルを脚に込め、思いっきりジャンプすると自分が垂直落下するように急降下。見事に歪虚同士がぶつかり、そのまま落下の勢いも合わせた舞の体重が胴部にかかった。
 激突の瞬間一帯に閃光が走る。そしてその光が晴れた時、必殺の合体技を喰らった歪虚達はそのまま横に転がると動かなくなった。しかし問題は詩である。痛烈な衝撃を受けまともに居られる訳がない。
 そんな時、詩は起き上がってきた。マスクの下は苦悶の表情だが、銀色のマスクがそれを隠してくれている。
「ちょっと、大丈夫?」
「プロテクションかけてたからね」
 そんな姉妹の密かな会話を観客達は気付かず、歓声を上げていた。


 美織は膝の激痛に耐えながら、戦況を見ていた。プロレスの範疇を超えて襲ってきた敵に、皆はプロレスで戦ってくれている。そのことが何より嬉しかった。

「うーん、あなたの体格ならこんな技とかどうかしら?」

 そして、大会前にボルディアとした会話のことを思い出していた。彼女のパワーと体格ならこの技が似合う。その技を、特に名前をボルディアも気に入っていた。
 その時、ボルディアは捕まえた歪虚の頭を抱えると前屈みにさせ、そこに覆いかぶさるようにして胴部にその太い両腕を回す。この体勢は
「パワーボム……」
 それは美織が彼女に教えた技だった。
「歪虚ならいくらやっても文句は出ねぇだろ!?」
 そしてボルディアは持ち上げる。一気に眼前まで引き上げる。だが、そこから落とさない。一度溜めを作ると、一気に肩の上まで持ち上げた。ラスドライドと呼ばれる超大技の形である。
 さらにイバラキが動いた。エプロンを蹴って飛ぶと、高々と抱え上げられたその覆面を両手でつかむ。
 その瞬間に合わせてボルディアも飛ぶ。そして開脚すると股の間に歪虚を振り落とす。
 二人分の体重と、長身のボルディアの落差をかけた説得力十分の一発。ラストライド式ハイジャック・シットダウンパワーボム。こんな一撃を食らって立っていられるものなど居ない。それは例え相手が歪虚だったとしても、だった。
 地面に出来たクレーターがその破壊力を何より饒舌に語っていた。


 リング上でも決着の時が近づいていた。ノエルが動く。覆面に正対し、ただ、構えた右手を真っ直ぐ突き出す。その掌が覆面に当たった瞬間だった。覆面の周りが黒い闇に包まれた。
 ノエルは掌打を当てた瞬間、シャドウブリットを放っていた。正のマテリアルで構成されたそれは、負のマテリアルである歪虚に大きなダメージを与えていた。
 そして央崎も反応していた。ふらつく覆面の後頭部を腕を振るって刈り取ると、そのまま肩口に担ぎあげる。それを見たリング下ではイバラキがテーブルを設置してくれていた。準備完了。
 央崎はエプロンに飛び出し、そのままテーブルへと飛び込む。抱えていた覆面の頭部が叩きつけられる。その瞬間バキッ! と大きな音が鳴り、見事テーブルは真っ二つになっていた。
 そしてリング上ではノエルが最後の覆面と向かい合っていた。
「この世からのご退場を願いましょう」
 ロー、ミドル、ソバット。流れるようなコンビネーションを叩き込みそして、再び右手を突き出す。それが触れた瞬間、今度は目もくらむような閃光がリングを覆っていた。その聖なる光はこの戦いのフィニッシュホールドを表していた。
 リング上で覆面に覆いかぶさるノエル。そこに戻ってきた央崎が指でカウントを取る。観客達もそれに合わせて合唱する。
「「ワン! ツー! スリー!」」
 その声が、この戦いを終わらせるゴングとなった。


「今日は全力で燃えたかテメェ等ァ!」
 ボルディアはリングに上がると、マイクを取ってそう叫ぶ。観客達に覆面軍団が歪虚だったとバレないためのアピールだったが、想像以上の効果があったようだ。ハンター達を称える大歓声がこの会場を覆っている。
 その歓声に紛れて、舞と詩が観客に手を振りつつ会話していた。
「ウタ、プロレス見た事あったの?」
「リアルブルーで超人レスリング漫画を読んだ事あるんだよ。一度やってみたかったんだ♪」
 その言葉に舞はああ、成程と納得していた。

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MVP一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩ka0396
  • 雪の女王
    ノエルka0768

重体一覧

参加者一覧

  • 行政営業官
    天竜寺 舞(ka0377
    人間(蒼)|18才|女性|疾影士
  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 雪の女王
    ノエル(ka0768
    エルフ|23才|女性|聖導士
  • ボルディアせんせー
    ボルディア・コンフラムス(ka0796
    人間(紅)|23才|女性|霊闘士
  • 祓魔執行
    央崎 枢(ka5153
    人間(蒼)|20才|男性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ボルディア・コンフラムス(ka0796
人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2016/05/28 19:19:36
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/27 22:21:28