ゲスト
(ka0000)
翻車魚ライダー
マスター:黒木茨

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/09/03 15:00
- 完成日
- 2014/09/10 20:57
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●流れ着いたもの
とある漁村でのことだ。爽やかな空気が風に乗ってやってくる。海の波は穏やかで、砂浜は白く光るようだった。海の見える丘で村人が異変に気付いたのはまだ頭上に太陽の照りつける昼間のことだった。
「なんだ、あれ……」
海面上に体を横たえてぷかぷかと浮かんでいる何か。その巨躯は一見しただけでは島と見間違える程のもので、村人に衝撃を与えた。
慌てて村に居る先生と呼ばれる女性を連れてその場に戻った村人は、その何かの大きさに改めて驚く。それとは対照的に落ち着き払った先生は浮かんでいるものを見て、
「あれはマンボウという魚で、たまにああいう風に浮かんでいることもあるのですよ」
と男を宥めた。納得した男が海から目をそらしたとき、マンボウは海底に沈んでは見えなくなる。そのマンボウに人間らしきものが乗っていたことには誰も気付かないままであった。
●
これは最初の異変の後、漁に出ていた男の話である。
「最初はなんてこともねえと思ってたんですがね。いや、まさかマンボウの上に人が乗ってるたあ思いませんで。正確には人っちゅうより頭が魚で下が人間、全身鱗で覆われてて……わけわからん生き物でなあ。弓矢だか槍だか持ってるみてえで、慌てて応戦しつつ引き返したんだが何人か怪我しちまってな、魚は取れなかったけんど、生きて帰れてほんとによかった」
この話はあっという間に村中に広がり、怪我人の話を聞いてこれは村の人間だけじゃだめだ、と慌てた村長が手紙を綴る。ほぼ殴り書きのようなそれが宛て先に届けられたときには、敵も数を増やしていた。
●後日
「うん……うん」
ある日のオフィスで、ジト目の受付嬢が手紙を見ながら一人で納得したように頷いていた。
一人のハンターが何事かと近づいてみると、その気配に気付いたのか彼を見据えて口を開く。
「なんか、マンボウが歪虚化してたっぽい……あとマンボウに乗って半漁人……っぽいのが一緒に来たっぽい。場所は漁村なんだけど、うん」
なんかツッコミどころ多いよね……と小声でぼやく受付嬢にハンターは続きを促すと、気の抜けた返事とともに続きが語られる
「村の人によればマンボウは今沖のほうで泳いでるみたい。半漁人はその上に乗ってる感じね。詳しくはあとで貼り出すから見といて」
と投げやりな言葉とともに受付嬢は手紙を畳んで抽斗に仕舞う。次の仕事に入るのだろうか
「受ける? いいけど一応怪我人出てるからね、気をつけてー」
とある漁村でのことだ。爽やかな空気が風に乗ってやってくる。海の波は穏やかで、砂浜は白く光るようだった。海の見える丘で村人が異変に気付いたのはまだ頭上に太陽の照りつける昼間のことだった。
「なんだ、あれ……」
海面上に体を横たえてぷかぷかと浮かんでいる何か。その巨躯は一見しただけでは島と見間違える程のもので、村人に衝撃を与えた。
慌てて村に居る先生と呼ばれる女性を連れてその場に戻った村人は、その何かの大きさに改めて驚く。それとは対照的に落ち着き払った先生は浮かんでいるものを見て、
「あれはマンボウという魚で、たまにああいう風に浮かんでいることもあるのですよ」
と男を宥めた。納得した男が海から目をそらしたとき、マンボウは海底に沈んでは見えなくなる。そのマンボウに人間らしきものが乗っていたことには誰も気付かないままであった。
●
これは最初の異変の後、漁に出ていた男の話である。
「最初はなんてこともねえと思ってたんですがね。いや、まさかマンボウの上に人が乗ってるたあ思いませんで。正確には人っちゅうより頭が魚で下が人間、全身鱗で覆われてて……わけわからん生き物でなあ。弓矢だか槍だか持ってるみてえで、慌てて応戦しつつ引き返したんだが何人か怪我しちまってな、魚は取れなかったけんど、生きて帰れてほんとによかった」
この話はあっという間に村中に広がり、怪我人の話を聞いてこれは村の人間だけじゃだめだ、と慌てた村長が手紙を綴る。ほぼ殴り書きのようなそれが宛て先に届けられたときには、敵も数を増やしていた。
●後日
「うん……うん」
ある日のオフィスで、ジト目の受付嬢が手紙を見ながら一人で納得したように頷いていた。
一人のハンターが何事かと近づいてみると、その気配に気付いたのか彼を見据えて口を開く。
「なんか、マンボウが歪虚化してたっぽい……あとマンボウに乗って半漁人……っぽいのが一緒に来たっぽい。場所は漁村なんだけど、うん」
なんかツッコミどころ多いよね……と小声でぼやく受付嬢にハンターは続きを促すと、気の抜けた返事とともに続きが語られる
「村の人によればマンボウは今沖のほうで泳いでるみたい。半漁人はその上に乗ってる感じね。詳しくはあとで貼り出すから見といて」
と投げやりな言葉とともに受付嬢は手紙を畳んで抽斗に仕舞う。次の仕事に入るのだろうか
「受ける? いいけど一応怪我人出てるからね、気をつけてー」
リプレイ本文
●漁村にて
穏やかな波立つ海と眩く光る白い砂浜、爽やかな海風。ここが、手紙にあった……半魚人とマンボウに悩まされる漁村だろう。現状では沖に浮かぶマンボウは未だ見ることすら出来ない、が。幸い手紙にはマンボウの居る場に移動する手は用意してあると書いてあった……あとは、使い様とハンター諸君の腕前次第だ。
「おお! 来てくださったか、ありがてえ」
漁村に着いたハンターを迎えた村長は一礼して歓迎の意を示し、本題に入る。
「ろくに歓迎もできねえですまねえが……ボートは五艘ある。いくつ入り用かね」
「二艘お借りします」
凛とした声で立花 沙希(ka0168)が言葉を発した。一艘に三人ずつ乗って迎え撃つ作戦だ。
「わかった。他に必要なもんはあるかね?」
「出来れば投網みたいな物もお借りできれば……」
相手は滅多に見ないような敵である。もしものときの備えというものも必要……というのは村長も考えていたのか、沙希の要求には快く応じた。そこの小屋に仕舞ってあるからと村長は沙希を連れて小屋の中に入っていくが、そこには既に先客がいたようだった。
「……おい、そこのあんた。なにしてる」
先客……こと、銛を手にした紫月・海斗(ka0788)が、村長の目に映る。海斗は村長の渋い顔を前にして豪快に笑い銛を掲げた。
「まぁ、念の為の備えってヤツだ。借りてくぜ」
海斗のその言葉から厄介ごとを招く心算はないことを感じ取った村長は顔から渋みを抜いて言う。
「そうか……まあいい、それも網と一緒に持ってけ。ただ必ず奴らを倒してこい」
ほら、と村長は沙希に網を渡し、溜息とともに一言漏らした。
「漁が出来んままなのは困るでな」
浅瀬に二艘のボートが浮かぶ。先に乗り込んでいたのは沙希とカーミン・S・フィールズ(ka1559)だった。二人は沙希たちの交渉の裏、カーミンが村人たちから聞いていた情報を元にしつつ、動きを合わせて漕ぐための練習をしていたのだった。合図等の打ち合わせもしている。
「サキー、ロープ貸してー、こっちにも結びつけるわ」
打ち合わせを終えて、二艘間にロープを張るカーミンと沙希をじーっと、眺める者がいた。姫凪 紫苑(ka0797)だ。
「……手伝う?」
無音のまま投げ続けられる視線に気付いたカーミンのその問いかけに紫苑はこくこくと頷いて応える。
「わかったわ。じゃあそこを結んでくれる?」
次いでカーミンの口から出た指示にもまた、紫苑は無言のまま、頷いて応えるのだった。
三人の力を使った結果、あっという間にロープは結ばれて、あとは乗るだけという感じだ。カーミンと沙希の呼びかけに応じ、ハンターたちが次々とボートに乗り込んでいく。
「それじゃあ、厄介者達を退治しにいこうか」
最後に乗り込んだヴァンシュトール・H・R(ka0169)の言葉を合図に、漕手二人の持つ櫂が水に入った。
●碧海を往く
「マンボウさんって、なんだか他人とは思えないんですよね……」
沙希が漕手を務めるボートの上で、モーラ・M・ホンシャウオ(ka3053)はこう呟いた。他人とは思えないのも無理はない。それは彼女の名前とマンボウの別名を照らし合わせると、わかることだが……しかし、他人とは思えなくても歪虚化してしまったら倒すほかはない。世知辛い世の中である。
「敵が潜行している可能性もあります、魚影を頼りに探してみましょう。方向や速度の変更は適宜指示をお願いします」
沙希は漕ぎながら言う。
「潜行か……ありえなくもないね、波飛沫とかも見えたら伝えるよ」
沙希に同乗するヴァンシュトールも漕ぎながら答えた。敵に遭遇するまでは沙希の手伝いということで、漕いでいる。モーラが得た情報の潮の流れに沿っているのか、二艘のボートは順調に進んでいた。
「マンボウは島位の大きさとかいう話だけど、横から見たときの話だし、しっかり見ておいてね」
先ほど沙希側のボートで交わされたものと似たようなやりとりが、カーミンを漕手とするボート上でも行われていた。カーミンのペットであるパルムは了解! と言っているような仕草をし、カーミンに同乗する紫苑は相変わらず無言のまま頷く。
「おうよ!」
沙希側がヴァンシュトールならこちらは海斗が漕手……カーミンの手伝いとして一緒に漕いでいた。銛は空いた場所に置かれている。まあ、銛については安全だと思える。
「それにしてもお洒落な水着だな」
「あら、そう?」
海斗の指摘を受け取ったカーミンは水着の上に裾を絞ったレジェールウェアとパレオ代わりのプリーツスカートを身につけていた。装備品で出来るお洒落であるので、防護性もばっちりであろう。
雑談に興じる間も、漕ぐ手は止めない。そうしているうちに、海面に異常が現れる。最初は音、そして次は飛沫。最後に波だ。そうして海面から姿を現したのは……マンボウ、そしてそれに騎乗する半魚人。一騎が浮上するとそれにつられて二、三騎目と浮上していく。
「どうやらいらっしゃったようだよ」
ヴァンシュトールはオールを置き、銃を構える。海斗もオールを置き、自らに攻性強化をかける。沙希とカーミンは合図しあい、敵の出現を確認しあった。
「……矢は任せて……」
紫苑はデスサイズを構え、敵の攻撃に備えた。先陣を切ったのは半魚人のほうだ。弓を引き、二艘のボートへ矢を飛ばす。……しかし、動き回るものを射止めるのは難しいのか、矢は虚しく海に落ちるだけだった。
「まずはマンボウからといこうか」
ヴァンシュトールの銃から放たれる弾は正確にマンボウを打ち抜いていく。そこにモーラのマジックアローが追い討ちをかける。攻撃を受け、驚き暴れるマンボウを半魚人は宥めようと四苦八苦していた。海斗は別のマンボウをカレントの矢で射抜いた。矢の軌跡に沿って生み出される渦が抵抗を軽減させ、途中で落ちることなく進む矢を受けたマンボウは戦慄きつつ、耐える。
暴れていたマンボウを落ち着かせた半魚人は射程から逃れるべくマンボウを繰って海面を駆ける。しかしそれで逃がすようなハンターではない。カーミンと沙希は息を合わせて漕ぎ出していく。逃げようと思いつつも逃げられない半魚人に、また味方の攻撃が襲う。
ヴァンシュトールの牽制射撃に後押しされたモーラのマジックアローは残念ながら回避されてしまったようだが、海斗とヴァンシュトールの攻撃は見事に命中し、マンボウの生命力を地道に削っている。しかし、このままやられっぱなしでいる半魚人ではない。彼らは一斉に弓を構え、それぞれ狙いをつけて二発目の矢を放つ。海斗とモーラに向かった矢は、モーラに向かった一本、そして海斗に向かった一本は当たらないまま沈んだのだが、海斗に向かったもう一本は彼の肩を狙って飛んでいった。
「うおっと! 危ねぇな!」
しかし運がいいのか間一髪で矢を避けきった海斗はふっと息を吐き、改めて攻撃に集中する。
当たらない矢に苛々しているのか半魚人の二騎は場所を変えるべく移動する。目立つ一騎は何を思ったか二艘のボートの間……ロープが張られているそこに向かって飛び出していく。ちょうど入ってきたマンボウを沙希はロープを引くようにして引っ掛け、ぐっとロープ……そしてそれが繋がっているボートに衝撃が走る。
「ショックに備えて、2度あるわ!」
カーミンの声が響く。咄嗟に衝突に備えて櫂を構えつつ、持ちこたえた沙希とカーミンはロープを切り、チャンスを味方に伝える。
無音で跳んだ紫苑はロープに捕まったマンボウに着地し、乗っていた半魚人に鎌を振るう。鱗が阻み一撃でとはいかないものの、もう一振りで確実に仕留める。
「……無駄な時間、掛けるわけには……いかないから」
そう呟き、半魚人が倒れたことを確認した紫苑はまた無言で元居たボートに戻った。残る半魚人は二匹。マンボウは三匹……となる。先ほどまで紫苑が乗っていたマンボウに矢、魔法、銃弾が刺さっていく。いかにも弱っていたマンボウに最後の一撃を加えるその前、突如マンボウが潜伏した。
「ちょ、嘘でしょ?!」
マンボウが何をするかを勘付いたカーミンは口にせずには居られない。
「こ、こっちに来ないでくださーい!」
モーラも同様に感情をありのまま叫ぶ。数秒の間を置いてマンボウが浮上する。カーミンのボートを下に、飛んでいる。雄叫びとともにマンボウに銛が刺さった。
「念のための備え……役に立ったぜ」
そのまま消滅したマンボウはボートに落ちることもなく、ただ飛沫だけが残像のように残った。同胞の死を感じ取った半魚人とマンボウは怒りを纏ったような雰囲気を醸し出し、攻撃を開始するも飛んでいく矢は紫苑に切り落とされ、残骸はボートに転がった。
冷静さを失った半魚人の一匹が操縦をしくじったのだろうか、マンボウの挙動が可笑しくなり、何故かボート付近に流れ着く。
「ん? なんでかはわからないけど、チャンスだね」
ヴァンシュトールは容赦なく強弾を撃ち込んでいく。紫苑がマンボウに乗り込み、半魚人を切ると同時にモーラの発射したマジックアロー、光の矢が紫苑の乗るそれに刺さる。モーラの放ったそれが致命傷となり、消滅し往くマンボウをぎりぎりのところで発った紫苑は、海に落ちることなく船上に復帰した。
「危なかったですね……」
「……うん」
離れながらもモーラと紫苑はお互いの安全を確認しあう。マンボウを失った半魚人は水中に潜り、好機を待つ……と思いきや、ここでカレントから持ち替えられた海斗の水中用アサルトライフルが唸る。幸運にも命中したライフル弾は半魚人を仕留めるには充分の威力だった。
沈み、消滅する味方を前に怖気付いたのか、最後の一騎はここから逃げ去ろうとする……そこを沙希が叫んだ。
「逃げるんですね? 怖いんですか、臆病者!」
それは挑発であった。半魚人も亜人とはいえ知能はある。自らのプライドを砕こうとするこの言葉に半魚人は元の戦場に戻っていく。カーミンの漕ぐボートは距離をつめ、ヴァンシュトールとモーラが攻撃に移れるよう射程を保つ。沙希は半魚人へ投網し、マンボウと半魚人を捕らえる。抵抗から食い破られるまでの間、襲い掛かるハンターの集中攻撃に為す術もないまま半魚人は網の中息絶える。
最後、残されたマンボウも後を追うようにして消滅した。最後の一撃を飾ったのは、ヴァンシュトールの銃弾であった。
海から戻ってきたハンターたちは借りたボートや銛を戻し、村長に雑魔の殲滅を報告した。村長は笑顔で迎える。と、ここで海斗は帰路で考えていたことを村長に打診した。というのも、新鮮な魚を食べさせてくれないかというものだが……
「すまねえな、それは今できねえ。まあ、落ち着いた頃になんか買いに来てくれよ」
村長に断られてしまったようだった。歪虚化したマンボウと半魚人の被害で漁もろくに出来ない状況だったのだろう。しかし、元凶となる歪虚も消滅した。いずれ無事に漁に出ることが出来る。新鮮な魚は、村が落ち着いてからになりそうだ。
「いつか、歪虚化していないマンボウさんに会ってみたいですね……」
外に広がる真に穏やかになった海を眺め、モーラは呟いた。
穏やかな波立つ海と眩く光る白い砂浜、爽やかな海風。ここが、手紙にあった……半魚人とマンボウに悩まされる漁村だろう。現状では沖に浮かぶマンボウは未だ見ることすら出来ない、が。幸い手紙にはマンボウの居る場に移動する手は用意してあると書いてあった……あとは、使い様とハンター諸君の腕前次第だ。
「おお! 来てくださったか、ありがてえ」
漁村に着いたハンターを迎えた村長は一礼して歓迎の意を示し、本題に入る。
「ろくに歓迎もできねえですまねえが……ボートは五艘ある。いくつ入り用かね」
「二艘お借りします」
凛とした声で立花 沙希(ka0168)が言葉を発した。一艘に三人ずつ乗って迎え撃つ作戦だ。
「わかった。他に必要なもんはあるかね?」
「出来れば投網みたいな物もお借りできれば……」
相手は滅多に見ないような敵である。もしものときの備えというものも必要……というのは村長も考えていたのか、沙希の要求には快く応じた。そこの小屋に仕舞ってあるからと村長は沙希を連れて小屋の中に入っていくが、そこには既に先客がいたようだった。
「……おい、そこのあんた。なにしてる」
先客……こと、銛を手にした紫月・海斗(ka0788)が、村長の目に映る。海斗は村長の渋い顔を前にして豪快に笑い銛を掲げた。
「まぁ、念の為の備えってヤツだ。借りてくぜ」
海斗のその言葉から厄介ごとを招く心算はないことを感じ取った村長は顔から渋みを抜いて言う。
「そうか……まあいい、それも網と一緒に持ってけ。ただ必ず奴らを倒してこい」
ほら、と村長は沙希に網を渡し、溜息とともに一言漏らした。
「漁が出来んままなのは困るでな」
浅瀬に二艘のボートが浮かぶ。先に乗り込んでいたのは沙希とカーミン・S・フィールズ(ka1559)だった。二人は沙希たちの交渉の裏、カーミンが村人たちから聞いていた情報を元にしつつ、動きを合わせて漕ぐための練習をしていたのだった。合図等の打ち合わせもしている。
「サキー、ロープ貸してー、こっちにも結びつけるわ」
打ち合わせを終えて、二艘間にロープを張るカーミンと沙希をじーっと、眺める者がいた。姫凪 紫苑(ka0797)だ。
「……手伝う?」
無音のまま投げ続けられる視線に気付いたカーミンのその問いかけに紫苑はこくこくと頷いて応える。
「わかったわ。じゃあそこを結んでくれる?」
次いでカーミンの口から出た指示にもまた、紫苑は無言のまま、頷いて応えるのだった。
三人の力を使った結果、あっという間にロープは結ばれて、あとは乗るだけという感じだ。カーミンと沙希の呼びかけに応じ、ハンターたちが次々とボートに乗り込んでいく。
「それじゃあ、厄介者達を退治しにいこうか」
最後に乗り込んだヴァンシュトール・H・R(ka0169)の言葉を合図に、漕手二人の持つ櫂が水に入った。
●碧海を往く
「マンボウさんって、なんだか他人とは思えないんですよね……」
沙希が漕手を務めるボートの上で、モーラ・M・ホンシャウオ(ka3053)はこう呟いた。他人とは思えないのも無理はない。それは彼女の名前とマンボウの別名を照らし合わせると、わかることだが……しかし、他人とは思えなくても歪虚化してしまったら倒すほかはない。世知辛い世の中である。
「敵が潜行している可能性もあります、魚影を頼りに探してみましょう。方向や速度の変更は適宜指示をお願いします」
沙希は漕ぎながら言う。
「潜行か……ありえなくもないね、波飛沫とかも見えたら伝えるよ」
沙希に同乗するヴァンシュトールも漕ぎながら答えた。敵に遭遇するまでは沙希の手伝いということで、漕いでいる。モーラが得た情報の潮の流れに沿っているのか、二艘のボートは順調に進んでいた。
「マンボウは島位の大きさとかいう話だけど、横から見たときの話だし、しっかり見ておいてね」
先ほど沙希側のボートで交わされたものと似たようなやりとりが、カーミンを漕手とするボート上でも行われていた。カーミンのペットであるパルムは了解! と言っているような仕草をし、カーミンに同乗する紫苑は相変わらず無言のまま頷く。
「おうよ!」
沙希側がヴァンシュトールならこちらは海斗が漕手……カーミンの手伝いとして一緒に漕いでいた。銛は空いた場所に置かれている。まあ、銛については安全だと思える。
「それにしてもお洒落な水着だな」
「あら、そう?」
海斗の指摘を受け取ったカーミンは水着の上に裾を絞ったレジェールウェアとパレオ代わりのプリーツスカートを身につけていた。装備品で出来るお洒落であるので、防護性もばっちりであろう。
雑談に興じる間も、漕ぐ手は止めない。そうしているうちに、海面に異常が現れる。最初は音、そして次は飛沫。最後に波だ。そうして海面から姿を現したのは……マンボウ、そしてそれに騎乗する半魚人。一騎が浮上するとそれにつられて二、三騎目と浮上していく。
「どうやらいらっしゃったようだよ」
ヴァンシュトールはオールを置き、銃を構える。海斗もオールを置き、自らに攻性強化をかける。沙希とカーミンは合図しあい、敵の出現を確認しあった。
「……矢は任せて……」
紫苑はデスサイズを構え、敵の攻撃に備えた。先陣を切ったのは半魚人のほうだ。弓を引き、二艘のボートへ矢を飛ばす。……しかし、動き回るものを射止めるのは難しいのか、矢は虚しく海に落ちるだけだった。
「まずはマンボウからといこうか」
ヴァンシュトールの銃から放たれる弾は正確にマンボウを打ち抜いていく。そこにモーラのマジックアローが追い討ちをかける。攻撃を受け、驚き暴れるマンボウを半魚人は宥めようと四苦八苦していた。海斗は別のマンボウをカレントの矢で射抜いた。矢の軌跡に沿って生み出される渦が抵抗を軽減させ、途中で落ちることなく進む矢を受けたマンボウは戦慄きつつ、耐える。
暴れていたマンボウを落ち着かせた半魚人は射程から逃れるべくマンボウを繰って海面を駆ける。しかしそれで逃がすようなハンターではない。カーミンと沙希は息を合わせて漕ぎ出していく。逃げようと思いつつも逃げられない半魚人に、また味方の攻撃が襲う。
ヴァンシュトールの牽制射撃に後押しされたモーラのマジックアローは残念ながら回避されてしまったようだが、海斗とヴァンシュトールの攻撃は見事に命中し、マンボウの生命力を地道に削っている。しかし、このままやられっぱなしでいる半魚人ではない。彼らは一斉に弓を構え、それぞれ狙いをつけて二発目の矢を放つ。海斗とモーラに向かった矢は、モーラに向かった一本、そして海斗に向かった一本は当たらないまま沈んだのだが、海斗に向かったもう一本は彼の肩を狙って飛んでいった。
「うおっと! 危ねぇな!」
しかし運がいいのか間一髪で矢を避けきった海斗はふっと息を吐き、改めて攻撃に集中する。
当たらない矢に苛々しているのか半魚人の二騎は場所を変えるべく移動する。目立つ一騎は何を思ったか二艘のボートの間……ロープが張られているそこに向かって飛び出していく。ちょうど入ってきたマンボウを沙希はロープを引くようにして引っ掛け、ぐっとロープ……そしてそれが繋がっているボートに衝撃が走る。
「ショックに備えて、2度あるわ!」
カーミンの声が響く。咄嗟に衝突に備えて櫂を構えつつ、持ちこたえた沙希とカーミンはロープを切り、チャンスを味方に伝える。
無音で跳んだ紫苑はロープに捕まったマンボウに着地し、乗っていた半魚人に鎌を振るう。鱗が阻み一撃でとはいかないものの、もう一振りで確実に仕留める。
「……無駄な時間、掛けるわけには……いかないから」
そう呟き、半魚人が倒れたことを確認した紫苑はまた無言で元居たボートに戻った。残る半魚人は二匹。マンボウは三匹……となる。先ほどまで紫苑が乗っていたマンボウに矢、魔法、銃弾が刺さっていく。いかにも弱っていたマンボウに最後の一撃を加えるその前、突如マンボウが潜伏した。
「ちょ、嘘でしょ?!」
マンボウが何をするかを勘付いたカーミンは口にせずには居られない。
「こ、こっちに来ないでくださーい!」
モーラも同様に感情をありのまま叫ぶ。数秒の間を置いてマンボウが浮上する。カーミンのボートを下に、飛んでいる。雄叫びとともにマンボウに銛が刺さった。
「念のための備え……役に立ったぜ」
そのまま消滅したマンボウはボートに落ちることもなく、ただ飛沫だけが残像のように残った。同胞の死を感じ取った半魚人とマンボウは怒りを纏ったような雰囲気を醸し出し、攻撃を開始するも飛んでいく矢は紫苑に切り落とされ、残骸はボートに転がった。
冷静さを失った半魚人の一匹が操縦をしくじったのだろうか、マンボウの挙動が可笑しくなり、何故かボート付近に流れ着く。
「ん? なんでかはわからないけど、チャンスだね」
ヴァンシュトールは容赦なく強弾を撃ち込んでいく。紫苑がマンボウに乗り込み、半魚人を切ると同時にモーラの発射したマジックアロー、光の矢が紫苑の乗るそれに刺さる。モーラの放ったそれが致命傷となり、消滅し往くマンボウをぎりぎりのところで発った紫苑は、海に落ちることなく船上に復帰した。
「危なかったですね……」
「……うん」
離れながらもモーラと紫苑はお互いの安全を確認しあう。マンボウを失った半魚人は水中に潜り、好機を待つ……と思いきや、ここでカレントから持ち替えられた海斗の水中用アサルトライフルが唸る。幸運にも命中したライフル弾は半魚人を仕留めるには充分の威力だった。
沈み、消滅する味方を前に怖気付いたのか、最後の一騎はここから逃げ去ろうとする……そこを沙希が叫んだ。
「逃げるんですね? 怖いんですか、臆病者!」
それは挑発であった。半魚人も亜人とはいえ知能はある。自らのプライドを砕こうとするこの言葉に半魚人は元の戦場に戻っていく。カーミンの漕ぐボートは距離をつめ、ヴァンシュトールとモーラが攻撃に移れるよう射程を保つ。沙希は半魚人へ投網し、マンボウと半魚人を捕らえる。抵抗から食い破られるまでの間、襲い掛かるハンターの集中攻撃に為す術もないまま半魚人は網の中息絶える。
最後、残されたマンボウも後を追うようにして消滅した。最後の一撃を飾ったのは、ヴァンシュトールの銃弾であった。
海から戻ってきたハンターたちは借りたボートや銛を戻し、村長に雑魔の殲滅を報告した。村長は笑顔で迎える。と、ここで海斗は帰路で考えていたことを村長に打診した。というのも、新鮮な魚を食べさせてくれないかというものだが……
「すまねえな、それは今できねえ。まあ、落ち着いた頃になんか買いに来てくれよ」
村長に断られてしまったようだった。歪虚化したマンボウと半魚人の被害で漁もろくに出来ない状況だったのだろう。しかし、元凶となる歪虚も消滅した。いずれ無事に漁に出ることが出来る。新鮮な魚は、村が落ち着いてからになりそうだ。
「いつか、歪虚化していないマンボウさんに会ってみたいですね……」
外に広がる真に穏やかになった海を眺め、モーラは呟いた。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/08/30 10:06:15 |
|
![]() |
依頼に関する相談等(臨時) カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/09/03 13:36:22 |
|
![]() |
依頼に関する相談等 カーミン・S・フィールズ(ka1559) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/08/29 21:52:06 |