ゲスト
(ka0000)
公園を解放せよ!
マスター:KINUTA

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2016/06/04 22:00
- 完成日
- 2016/06/11 03:09
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
蒸気工場都市フマーレの路地裏。
労働者向けの安アパートがひしめき合うそこは、少年たちの社交場。今日も今日とて戦いが起きている。朝っぱらから。
●
「ようし、ジャッカル団、点呼-!」
「1!」
「2!」
「3!」
アパート裏で点呼を終えたジャッカル団は、一路公園に向かった。このあたりで公認の遊び場と言えば、そこしかないのだ。
しかしついてみれば、界隈で幅をきかせている最大勢力「暁の獅子団」と、それより数は劣るが腕に覚えのある者たちばかりが集まっている「チーム・ドラゴン」が実力行使に移る前の小手調べ、すなわち口喧嘩をしていた。
「おい、腰抜け野郎。ごたくはいいからさっさとかかってこいよ」
「へえー、口だけは威勢がいいなくたばりぞこない。そんなに言うならそっちからかかってきたらどうなんだよ。くそたれトカゲ。どうせ最後にゃ、尻尾切って逃げるんだろう」
「おいおいそれはお前らのことだろう。尻尾が切れるどころか尻まで皮剥がれて泣いて逃げ帰るんだろ、どぶ猫団」
「減らず口もそこまでにしたおいた方がいいぞ。俺知ってんだ。お前らが毎晩かあちゃんのオッパイ吸って寝てることをよ?」
「お前らは未だにオムツつけてもらってんだろ? 夜に一人で便所にも行けない腰抜けだから、毎晩寝小便たれてよ、今じゃ布団がまっ黄色だもんな?」
正味公園の使用権は、この二大勢力の間でしか争われない。
中堅グループは周囲を取り巻き、成り行きを見守る。勝ち目の多い方に参戦するのだ。そうすれば勝利した際、地面のきれっぱしを分けてもらえるのである。
しかし中堅以下のグループとなると……足手まといにしかならないので、戦いに参加させてもらえない。従ってどっちが勝とうが、公園で遊ばせてもらえない。
ジャッカル団は、残念ながら最後の弱小枠に位置するグループであった。
本格戦闘が始まる前にこそこそ場を離れ、来た道を引き返していく。
「仕方ないな、工場裏に行くか」
「駄目だ。この前見つかって怒られた」
「じゃあ、アパートの踊り場」
「あそこは母ちゃんたちがちょいちょい通るじゃないか。下手したら用事言い付けられるぞ」
なぜこんなに遊ぶところがないのか。不満を抱きながら彼らは、しけった路地裏のゴミ置き場に落ち着いた。
「いつもここだな」
「仕方ないじゃんか。他に適当なところがないんだもん」
「あーあ、俺たちも公園で遊びたいよな。いつも弾かれてさ」
めいめい大きなゴミ箱の上に腰掛けようとしたそのとき、いきなり箱の蓋が開いた。
そこから太った中年男と、猫の顔をした男が出てくる。
目を丸くする少年たちに向け、まず猫が口をきく。
「話は全て聞かせてもらったで。俺がお前らを公園で遊べるようにしたろか?」
もう片方のおっさんが続く。
「ジャリども。とりあえず食い物を持って来い。なんでもいいから早く。腹へってんだわしらは」
「せやせや。はよなんか持って来い。ほしたら願いを叶えてやるさかいな」
●
翌日。
暁の獅子団とチーム・ドラゴンは、いつもの主導権争いを行うため、公園に向かった。
昨日勝利したのは暁の獅子団である。そのためチーム・ドラゴンは今日こそ負けと取り返さんと、いつも以上に気合を入れていた。
しかし公園についてみればなんと、ジャッカル団を筆頭とした弱小組団体が、遊具と場所を占領している。
何と身の程知らずな。
憤慨しながら彼らは、早速三下奴を追い払うため、公園に足を踏み入れようとした。
「おい、お前ら何やってんだよ、さっさと散れ!」
その途端、堅い透明な壁にぶつかる。
「いてっ!?」
「な、なんだ!?」
それを見た弱小組は、普段の鬱憤を晴らすのはこのときとばかり、一斉に囃し立てる。
「お前らは入れてやんねえぞー!」
「今日からここは俺たちのもんだ、帰れ帰れー!」
思いもかけぬ展開に、二大グループはカンカンだ。どうにかして入れないかと探るが、公園の四方八方同様の壁で囲まれており、どうしても踏み込めない。
「くそー! なんなんだよこれ!」
「入れろコラー!」
「後でどうなるか分かってんだろうなお前ら!」
怒りに任せて見えない壁を蹴りまくる少年たち。
あかんべしたり尻を叩いたりして、それを煽りまくる弱小軍団――実際彼らはかなり調子に乗っていた。
騒然とする一方の公園周辺。
ちょうどその時である。カチャと同僚ハンターが、偶然そこを通りがかったのは。
労働者向けの安アパートがひしめき合うそこは、少年たちの社交場。今日も今日とて戦いが起きている。朝っぱらから。
●
「ようし、ジャッカル団、点呼-!」
「1!」
「2!」
「3!」
アパート裏で点呼を終えたジャッカル団は、一路公園に向かった。このあたりで公認の遊び場と言えば、そこしかないのだ。
しかしついてみれば、界隈で幅をきかせている最大勢力「暁の獅子団」と、それより数は劣るが腕に覚えのある者たちばかりが集まっている「チーム・ドラゴン」が実力行使に移る前の小手調べ、すなわち口喧嘩をしていた。
「おい、腰抜け野郎。ごたくはいいからさっさとかかってこいよ」
「へえー、口だけは威勢がいいなくたばりぞこない。そんなに言うならそっちからかかってきたらどうなんだよ。くそたれトカゲ。どうせ最後にゃ、尻尾切って逃げるんだろう」
「おいおいそれはお前らのことだろう。尻尾が切れるどころか尻まで皮剥がれて泣いて逃げ帰るんだろ、どぶ猫団」
「減らず口もそこまでにしたおいた方がいいぞ。俺知ってんだ。お前らが毎晩かあちゃんのオッパイ吸って寝てることをよ?」
「お前らは未だにオムツつけてもらってんだろ? 夜に一人で便所にも行けない腰抜けだから、毎晩寝小便たれてよ、今じゃ布団がまっ黄色だもんな?」
正味公園の使用権は、この二大勢力の間でしか争われない。
中堅グループは周囲を取り巻き、成り行きを見守る。勝ち目の多い方に参戦するのだ。そうすれば勝利した際、地面のきれっぱしを分けてもらえるのである。
しかし中堅以下のグループとなると……足手まといにしかならないので、戦いに参加させてもらえない。従ってどっちが勝とうが、公園で遊ばせてもらえない。
ジャッカル団は、残念ながら最後の弱小枠に位置するグループであった。
本格戦闘が始まる前にこそこそ場を離れ、来た道を引き返していく。
「仕方ないな、工場裏に行くか」
「駄目だ。この前見つかって怒られた」
「じゃあ、アパートの踊り場」
「あそこは母ちゃんたちがちょいちょい通るじゃないか。下手したら用事言い付けられるぞ」
なぜこんなに遊ぶところがないのか。不満を抱きながら彼らは、しけった路地裏のゴミ置き場に落ち着いた。
「いつもここだな」
「仕方ないじゃんか。他に適当なところがないんだもん」
「あーあ、俺たちも公園で遊びたいよな。いつも弾かれてさ」
めいめい大きなゴミ箱の上に腰掛けようとしたそのとき、いきなり箱の蓋が開いた。
そこから太った中年男と、猫の顔をした男が出てくる。
目を丸くする少年たちに向け、まず猫が口をきく。
「話は全て聞かせてもらったで。俺がお前らを公園で遊べるようにしたろか?」
もう片方のおっさんが続く。
「ジャリども。とりあえず食い物を持って来い。なんでもいいから早く。腹へってんだわしらは」
「せやせや。はよなんか持って来い。ほしたら願いを叶えてやるさかいな」
●
翌日。
暁の獅子団とチーム・ドラゴンは、いつもの主導権争いを行うため、公園に向かった。
昨日勝利したのは暁の獅子団である。そのためチーム・ドラゴンは今日こそ負けと取り返さんと、いつも以上に気合を入れていた。
しかし公園についてみればなんと、ジャッカル団を筆頭とした弱小組団体が、遊具と場所を占領している。
何と身の程知らずな。
憤慨しながら彼らは、早速三下奴を追い払うため、公園に足を踏み入れようとした。
「おい、お前ら何やってんだよ、さっさと散れ!」
その途端、堅い透明な壁にぶつかる。
「いてっ!?」
「な、なんだ!?」
それを見た弱小組は、普段の鬱憤を晴らすのはこのときとばかり、一斉に囃し立てる。
「お前らは入れてやんねえぞー!」
「今日からここは俺たちのもんだ、帰れ帰れー!」
思いもかけぬ展開に、二大グループはカンカンだ。どうにかして入れないかと探るが、公園の四方八方同様の壁で囲まれており、どうしても踏み込めない。
「くそー! なんなんだよこれ!」
「入れろコラー!」
「後でどうなるか分かってんだろうなお前ら!」
怒りに任せて見えない壁を蹴りまくる少年たち。
あかんべしたり尻を叩いたりして、それを煽りまくる弱小軍団――実際彼らはかなり調子に乗っていた。
騒然とする一方の公園周辺。
ちょうどその時である。カチャと同僚ハンターが、偶然そこを通りがかったのは。
リプレイ本文
「私この間プロレスの試合してきたんだよ~。チャンピオンのマッスルマンからベルトもぎ取ったんだ♪」
「へえー。すごいですねえ」
だべりながら歩いていた天竜寺 詩(ka0396)とカチャは、公園近くを通りがかったとき、騒ぎにぶつかった。
「ヘイヘイこっち来てみろよバーカバーカ」
「ぶっ殺すぞてめえらー!」
なんともいえぬ騒がしさ。
それを聞き付け、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)と閏(ka5673)もやってくる。
兎にも角にも一同仲裁のため公園に入ろうとしたが、見えない壁に阻まれた。
疑わしげに呟く詩。
「何これ? 結界?……まさかね~」
ルンルンはニンジャ色の脳細胞により、3秒で真相を突き止めた。
「この結界、又吉の仕業に間違いありません。きっと中では又吉が子供達を手下にして、公園要塞化計画を進めてるに違いないのであうち!」
その頭にパチンコの玉が当たった。
子供たちが壁への攻撃に飛び道具を使い始めたのである。
「止めなさい危ないでしょう!」
「るせー、当たりたくなかったらそこどけよ!」
怒るルンルン。
血気盛んな子供たち。
その子供たちを煽りまくる壁の向こうの子供たち。
「やーいやーいお前のかーちゃんでべそー!」
「お前のパンツうんこ色-!」
騒ぎ声に冷泉 雅緋(ka5949)と葛音 水月(ka1895)が引き寄せられてきた。
「あーあー、賑やかだと思ったら何してんだい?……見た感じただの喧嘩の様だが……ん?」
「あれえ、ここ、何かありますね」
ステラ=ライムライト(ka5122)、J・D(ka3351)、松瀬 柚子(ka4625)もやってくる。
「何、何が起きたの」
「……ガキの喧嘩に大人が口を出すのも野暮ってもんだが、こいつはどうも様子がおかしいぜ」
「これは、子供達に出来る芸当じゃあないですよねぇー……」
調べてみる必要あり。とはいえ子供たちについても放置しておけない。
ひとまずステラは後者の対応に向かうとした。
「ケンカするのはいいけど、やりすぎだもんね。仲直りできるようにしなくっちゃ……」
雅緋も肩をすくめ、彼女の後に続く。
水月は見えない壁の分析開始。
「ちゃんと内外で会話が出来ているなら、この壁、物理的なものを完全にシャットアウトするってわけじゃないわけですよね……」
知りたいことはいっぱいだが――差し当たってはどこまでの高さがあるのか。
それを調べるため彼は、足元の石を拾い、投げる。
柚子はワイヤーウィップで不可視の壁を叩いた。強度と厚みを図るために。
結果、高さはおおよそ6~7メートル、厚みはざっと50センチ強、強度は石ほどあることが判明した。
●
ルンルンは壁の中の子供たちへ、即興で描いた似顔絵を見せる。
「ねぇねぇキミ達、こんな感じの又吉見なかった? 後、この凄い結界はいつ作ったのかな?」
「そんなこたあ口が裂けても言えねえな」
「男と猫の約束だからな。なー、みんな」
どうやら口止めされているらしい。とはいえ猫と形容した時点で、スペットの仕業であることがバレバレだ。
詩は怒り心頭となっている強面リーダーたちを宥めにかかった。後ろから抱き締め、頭をなでなで。
「まあまあ。何があったのか知らないけど、とりあえずお姉さんたちに話してごらん?」
「な、なんだよ放せよっ。ハズいだろっ!」
それによって皆、一旦おとなしくなった。
雅緋が結界を背にし、割って入る。目線を合わせ、子供たちに聞く。
「さて、どうしてこうなったんだい?」
「どうもこうも、あいつら公園をのっとりやがったんだ!」
「今日は俺たちが遊ぶんだったのに、勝手に横入りしてきた!」
壁向こうから反論が来る。
「今日『は』じゃねえだろ今日『も』だろ!」
「いつもいつもお前らだけで遊び場独占しやがって!」
ルンルンは、不法占拠組に同情する。
「いつも公園から閉め出され……それは酷いのです!」
締め出され組がいきり立つ。
「るせー、文句があるなら正面からかかって来いや! ズルしやがって、汚えぞお前ら!」
雅緋は嘆息し、目の前にいる子供たちへ語りかけた。
「話は大体わかった。故に、一つ問うてもいいかい? いま、どんな気持ちだい? 悔しい、嫌だと感じたなら、それはあの子たちが感じた気持ちだ」
己を省みて反省せよ――という趣旨の言葉に、ガキ大将たちは真っ向異議を唱えてくる。
「ちょっとちょっと待てよ。俺たちとあいつらは全然違うぞ」
「そうだ。俺たちは毎回正々堂々戦ってここを手に入れてるんだ。でもあいつらはそうじゃない。ズルして横取りしてる。ケンカしたら負けるもんだから。それってヒキョーだろ?」
「弱虫に分けてやる土地はねえ」
それらの発言は閏にとって、どうにも聞き流せないものだった。
悲しげに眉をひそめ、親が子に言い聞かせるように語りかける。
「どうして、今貴方達が公園の中に入れないのかわかりますか? それは今、貴方達が”弱い”からです。結界が張られる前は逆に彼らが、今の貴方達と同じ思いをしていました。……単刀直入に聞きましょう、そんなに強いのが偉いのですか? 強いと何でもかんでも手に入れられるのですか?」
成り行きを見守っているJ・Dは、頭をかいた。
(言ってることは正論なんだが……正論だけじゃ伝わりにくいだろうなー。ガキの集団てなァ、基本力社会だぜ)
思っていると案の定、一番我の強そうな奴が顎を突き出し反論してきた。
「その通りじゃねえか。強い奴は偉いんだ。大人だってそう思ってるくせにさあ、キレーゴト言うのは止めろよな」
次の瞬間閏の体から、黒い霧が吹き出す。炎のように。
「お黙りなさい!! ……強いから何なんですか! 弱い者虐めをする子に、強さなんてこれっぽっちもありません!!」
口調の激しさに、さしもの悪童もたじろいだ。場が静まる。
内心喝采を送るJ・D。
(頭さえ押さえッちまえば、下についた連中も自分にゃ敵わねえと解るのさ)
閏は反論が止んだのを見て、再び穏やかな表情になった。気弱そうな笑顔を浮かべて、言う。
「一緒に、結界を壊して仲良く皆さんで遊びませんか?」
すかさずステラが紙とペンを、各々のグループリーダーへ差し出す。
「このままじゃ大変だから、リーダーの人にお願いがあるんだ。みんなの考えを聞いて、まとめてもらえないかな?」
●
塀の中の面々は安心しきっているのか、騒ぎ続けている。
「さあ来てみろようんこたれ!」
「来られねえだろうけどな!」
日頃の鬱憤を晴らしたいのは分かるが、無用の挑発は事態を長引かせるだけ。自分たちが絶対優位にいるという認識を崩す必要がある。
柚子と水月は壁昇りをしてこっそり内側へ侵入、子供たちに悟られぬよう後ろに回り込み、声をかけた。
「さてこんにちはー。あんまり悪い子はダメですよー?」
「うわっ、な、なんだ、お前らどっから入ってきた!」
「壁を上ったら普通に入れますよ? ハンター級の身体能力が必要ですけれど」
のんびり答えてから水月は、質問に移った。
「この壁はどうやって作ったんですか? あなたたちはハンターではないのですから、スキルは使えませんよね?」
「そのことなら教えないって、さっき言っただろ」
あくまでしらを切るつもりらしい。
柚子は、最も落ち着いていそうな子に話しかける。なるべく砕けた調子で。
「こんにちは。この壁、すごいですねー。外から叩いても蹴ってもびくともしないなんて、まさに難攻不落です!」
褒められた気になったのだろう、少年はふふんと鼻を持ち上げた。
「すげえだろ。蟻の這い出る隙間もないんだぜ」
ルンルンが、壁の向こうから口を挟む。
「あれ? みんな、お昼ご飯と夕ご飯はどうするつもりなの?」
「へ?」
「だって、蟻の這い出る隙間もないんでしょう? そこからどうやって出るの?」
立てこもり組はようやく、自分たちが壁によって守られていると同時に閉じ込められているのだということを悟った。
「……そういえば、どうしたらいいんだっけ」
「いや待て多分あのおっさんたちがどうにかする手を知ってるはず……」
こそこそ内輪で相談しているところに、詩が外から一押し。
「猫頭のおじさんは元気だった? でもあの人指名手配犯だよ。隠すと警察に怒られるよ~」
それを聞いた子供たちは驚愕した。
「し、指名手配……マジかスゲーな!」
「ポリに追われるとか、何やったんだあの猫とハゲ!」
事件の黒幕についてさっぱり知識のないJ・Dは、詩に聞いた。
「おい、猫とハゲってなあ、何物だ?」
「命にかかわる不良玩具を作って子供に売ったり、歪虚を作って捨てたり、墓地から死体を掘り出したり、刑務所を壊して脱獄したり、そんな感じの人たちだよ」
「成程、とんでもねえ野郎共だ」
ともかく壁の中にいる面々も、優位を気取ってばかりいられないことを理解したのだ。事態の促進にはよいこと。
機を逃さず柚子は、リーダー格を説得した。
「一度向こうの子たちとちゃんとお話、してみませんか? みんな、遊び場所を独占されたくないという気持ちは一緒なんですから」
「……話をするのはそりゃいいけどさ、この壁壊すのは気が進まないな。あいつら絶対ぶん殴りに来るもん」
その言い分を聞いた柚子は、詩に目配せする。
詩は心得たとばかり、公園の強者たちに念押しした。
「結界が壊れてもいきなりあの子達を襲わないでね。約束してくれたら皆にスペシャルな技を教えてあげるよ」
『スペシャルな技』という分かりやすい表現は、子供心をたいそう引き付けた。
「スペシャルって、どんな技だ?」
詩は小首をかしげて覚醒、天使の姿になってカチャを手招き。
「ごめん、ちょっと実演手伝って?」
「え――んぎゃああああ!?」
「いい? これがコブラツイスト。別名あばら折り。で――これがパロスペシャル」
「うぎゃああああ!!」
「本当に強い人は弱い者虐めなんかしない。皆を護ってこその男の子だよ。お姉さんはそういう子が好きだな。きっと他の女の子もね」
「まっ、ロープ、ロープぅぅ!!」
「あ、ついでに四の字固めも披露しちゃうよ♪」
子供達は詩の説諭に反論しなかった。圧倒的な力に対し、敬意を払っているもようだ。
雅緋はカウント10で立ち上がれなかったカチャの傍らに座り込み、聞く。
「ヒール、いるかい?」
●
ハンターたちの説得工作が実を結び、壁の内外での話し合いは、一応まとまった。
ステラが同意書を読み上げる。
「――じゃあ同意書について読み返すよ。『その1、公園の使用は、シフト制にすること。その際日数の割り当ては平等にすること。その2、シフトについては一カ月ごと変更する。変更については、野球の試合で決める。一等を取ったチームがシフトの割り振りをする権利を有する。その3、決まったことには全員きちんと従う。』――これが、ここの新しい決まり。みんなちゃんと守ってくれるよね?」
内と外の子供が頷いた。
「じゃあ、早いところこんな壁は壊しちゃお」
子供たちから始まった問題は子供たちが解決するのが筋である。壁は彼らの手で壊させるべきだ。というのがハンターの総意。
そのため彼らは前もって壁にダメージを与えておいた。
いかにルンルンが地脈鳴動で力を活性化させると言っても、子供らは素人。それだけでは歯が立つまい。
「いいですか、私のやる通りにするんですよ。ジュゲームリリカル……ルンルン忍法ニンジャ――――――」
増させた力を喧嘩に流用されるとことなので、ルンルンは、効果切れギリギリまで溜めに溜める。
「――――――パワー! 目覚めて貴方のニンジャ力☆ さあ行くのです、止めを指すのです、少年たち!」
「いってええ!」
「かてーよこの壁!」
「負けてはいけません! その力はいずれ大人になれば目覚める力、でも、今みたいに公園をみんなで使わなかったり、喧嘩する様なら、ニンジャ力は二度と目を覚まさないんだからっ!」
透明だった壁が半透明に曇り見えるようになった。ヒビが入る。亀裂が広がる。一カ所の綻びは、連鎖的に広がっていく。
もし瓦礫が落ちてきたらと、大事を取って子供たちを下がらせるステラと柚子。
しかし心配は無用だった。壁は瓦解して行く先から消えてしまったのだ。
閏は誰よりも早く公園の中に入り、占拠組を叱る。
「悔しかった気持ちはわかります、ですがあの結界が破れなかったら貴方達も公園から出られなかったかも知れないんですよ? それに、知らない人に着いていくなと教わらなかったのですか?」
「ついてってはねえよ、ただちょっと頼みを聞いてもらっただけで」
言い訳をする子に彼は、ぴしゃりと言う。
「利害を共有することは、着いて行くことと一緒です」
柚子も念入りに注意する。
「知らない大人の手を、簡単に取ってはダメですよ。それは、君達のお母さんを悲しませる事になるかもしれないですから、ね?」
そのとき後ろで騒ぎが起きた。
興奮覚めやらぬ腕白たちが、調子をこいていた相手に詰め寄ってる。
「おいこら、お前さっき、俺のパンツがうんこ色とか言ったよな……?」
「え、いやいやその、あれは」
その足元に砂利が投げつけられてきた。
J・Dである。
「言葉の借りを手で返そうってンなら、こちとらも見ているだけじゃァすまねえぜ。壁だって今はもうねえ。これで手打ちにしておきな」
ステラも木刀を地面に突き立て、怖い顔。
「こら、せっかく仲直りしたのは嘘だった……のかな?」
腕白たちは詰め寄るのを止めた。
閏は両者の頭に手を置く。
「さあ、ちゃんとごめんなさい、しましょうね」
水月が脇から促した。
「限られた場所なんですし、仲良くですよ?」
子供たちはしばし睨み合った後、ぎこちなく頭を下げた。
「……ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
それを見届けた閏は、破顔し、重箱を掲げる。
「お腹空いているでしょう? 皆さんで“仲良く”食べませんか?……足りないと思うので、半分ことかになってしまいますが……」
ステラも、バスケットを出してくる。
「……お疲れ様。お腹減ってるでしょ? だから、はいコレ。みんなで食べよ?」
雅緋は壁の失せた公園を見回し、目を細めた。
「壊れたねぇ……今壊したのは、御前さんらの此処の」
と言って、子供たちの胸を指さす。
「壁だったのかもねぇ……なら、御前さんらはもう仲良くなれるはずだ。……だって壁は、今自分たちで壊したんだから。さ、まめし、食べるかい?」
詩はアイス月餅を持ち出してきた。
「さ、食べて食べて。それがすんだら約束どおり、技を伝授してあげるっ!」
J・Dは組んでいた腕を開き、にっと歯を見せる。
「ま、腹一杯になりゃあな、大抵のことにかっかしなくなるもんさ――ところで大丈夫かカチャ」
「うう……関節が痛い……」
こうして公園は解放された。
スペットとブルーチャーは、その日のうちに通報されたそうな。
「へえー。すごいですねえ」
だべりながら歩いていた天竜寺 詩(ka0396)とカチャは、公園近くを通りがかったとき、騒ぎにぶつかった。
「ヘイヘイこっち来てみろよバーカバーカ」
「ぶっ殺すぞてめえらー!」
なんともいえぬ騒がしさ。
それを聞き付け、ルンルン・リリカル・秋桜(ka5784)と閏(ka5673)もやってくる。
兎にも角にも一同仲裁のため公園に入ろうとしたが、見えない壁に阻まれた。
疑わしげに呟く詩。
「何これ? 結界?……まさかね~」
ルンルンはニンジャ色の脳細胞により、3秒で真相を突き止めた。
「この結界、又吉の仕業に間違いありません。きっと中では又吉が子供達を手下にして、公園要塞化計画を進めてるに違いないのであうち!」
その頭にパチンコの玉が当たった。
子供たちが壁への攻撃に飛び道具を使い始めたのである。
「止めなさい危ないでしょう!」
「るせー、当たりたくなかったらそこどけよ!」
怒るルンルン。
血気盛んな子供たち。
その子供たちを煽りまくる壁の向こうの子供たち。
「やーいやーいお前のかーちゃんでべそー!」
「お前のパンツうんこ色-!」
騒ぎ声に冷泉 雅緋(ka5949)と葛音 水月(ka1895)が引き寄せられてきた。
「あーあー、賑やかだと思ったら何してんだい?……見た感じただの喧嘩の様だが……ん?」
「あれえ、ここ、何かありますね」
ステラ=ライムライト(ka5122)、J・D(ka3351)、松瀬 柚子(ka4625)もやってくる。
「何、何が起きたの」
「……ガキの喧嘩に大人が口を出すのも野暮ってもんだが、こいつはどうも様子がおかしいぜ」
「これは、子供達に出来る芸当じゃあないですよねぇー……」
調べてみる必要あり。とはいえ子供たちについても放置しておけない。
ひとまずステラは後者の対応に向かうとした。
「ケンカするのはいいけど、やりすぎだもんね。仲直りできるようにしなくっちゃ……」
雅緋も肩をすくめ、彼女の後に続く。
水月は見えない壁の分析開始。
「ちゃんと内外で会話が出来ているなら、この壁、物理的なものを完全にシャットアウトするってわけじゃないわけですよね……」
知りたいことはいっぱいだが――差し当たってはどこまでの高さがあるのか。
それを調べるため彼は、足元の石を拾い、投げる。
柚子はワイヤーウィップで不可視の壁を叩いた。強度と厚みを図るために。
結果、高さはおおよそ6~7メートル、厚みはざっと50センチ強、強度は石ほどあることが判明した。
●
ルンルンは壁の中の子供たちへ、即興で描いた似顔絵を見せる。
「ねぇねぇキミ達、こんな感じの又吉見なかった? 後、この凄い結界はいつ作ったのかな?」
「そんなこたあ口が裂けても言えねえな」
「男と猫の約束だからな。なー、みんな」
どうやら口止めされているらしい。とはいえ猫と形容した時点で、スペットの仕業であることがバレバレだ。
詩は怒り心頭となっている強面リーダーたちを宥めにかかった。後ろから抱き締め、頭をなでなで。
「まあまあ。何があったのか知らないけど、とりあえずお姉さんたちに話してごらん?」
「な、なんだよ放せよっ。ハズいだろっ!」
それによって皆、一旦おとなしくなった。
雅緋が結界を背にし、割って入る。目線を合わせ、子供たちに聞く。
「さて、どうしてこうなったんだい?」
「どうもこうも、あいつら公園をのっとりやがったんだ!」
「今日は俺たちが遊ぶんだったのに、勝手に横入りしてきた!」
壁向こうから反論が来る。
「今日『は』じゃねえだろ今日『も』だろ!」
「いつもいつもお前らだけで遊び場独占しやがって!」
ルンルンは、不法占拠組に同情する。
「いつも公園から閉め出され……それは酷いのです!」
締め出され組がいきり立つ。
「るせー、文句があるなら正面からかかって来いや! ズルしやがって、汚えぞお前ら!」
雅緋は嘆息し、目の前にいる子供たちへ語りかけた。
「話は大体わかった。故に、一つ問うてもいいかい? いま、どんな気持ちだい? 悔しい、嫌だと感じたなら、それはあの子たちが感じた気持ちだ」
己を省みて反省せよ――という趣旨の言葉に、ガキ大将たちは真っ向異議を唱えてくる。
「ちょっとちょっと待てよ。俺たちとあいつらは全然違うぞ」
「そうだ。俺たちは毎回正々堂々戦ってここを手に入れてるんだ。でもあいつらはそうじゃない。ズルして横取りしてる。ケンカしたら負けるもんだから。それってヒキョーだろ?」
「弱虫に分けてやる土地はねえ」
それらの発言は閏にとって、どうにも聞き流せないものだった。
悲しげに眉をひそめ、親が子に言い聞かせるように語りかける。
「どうして、今貴方達が公園の中に入れないのかわかりますか? それは今、貴方達が”弱い”からです。結界が張られる前は逆に彼らが、今の貴方達と同じ思いをしていました。……単刀直入に聞きましょう、そんなに強いのが偉いのですか? 強いと何でもかんでも手に入れられるのですか?」
成り行きを見守っているJ・Dは、頭をかいた。
(言ってることは正論なんだが……正論だけじゃ伝わりにくいだろうなー。ガキの集団てなァ、基本力社会だぜ)
思っていると案の定、一番我の強そうな奴が顎を突き出し反論してきた。
「その通りじゃねえか。強い奴は偉いんだ。大人だってそう思ってるくせにさあ、キレーゴト言うのは止めろよな」
次の瞬間閏の体から、黒い霧が吹き出す。炎のように。
「お黙りなさい!! ……強いから何なんですか! 弱い者虐めをする子に、強さなんてこれっぽっちもありません!!」
口調の激しさに、さしもの悪童もたじろいだ。場が静まる。
内心喝采を送るJ・D。
(頭さえ押さえッちまえば、下についた連中も自分にゃ敵わねえと解るのさ)
閏は反論が止んだのを見て、再び穏やかな表情になった。気弱そうな笑顔を浮かべて、言う。
「一緒に、結界を壊して仲良く皆さんで遊びませんか?」
すかさずステラが紙とペンを、各々のグループリーダーへ差し出す。
「このままじゃ大変だから、リーダーの人にお願いがあるんだ。みんなの考えを聞いて、まとめてもらえないかな?」
●
塀の中の面々は安心しきっているのか、騒ぎ続けている。
「さあ来てみろようんこたれ!」
「来られねえだろうけどな!」
日頃の鬱憤を晴らしたいのは分かるが、無用の挑発は事態を長引かせるだけ。自分たちが絶対優位にいるという認識を崩す必要がある。
柚子と水月は壁昇りをしてこっそり内側へ侵入、子供たちに悟られぬよう後ろに回り込み、声をかけた。
「さてこんにちはー。あんまり悪い子はダメですよー?」
「うわっ、な、なんだ、お前らどっから入ってきた!」
「壁を上ったら普通に入れますよ? ハンター級の身体能力が必要ですけれど」
のんびり答えてから水月は、質問に移った。
「この壁はどうやって作ったんですか? あなたたちはハンターではないのですから、スキルは使えませんよね?」
「そのことなら教えないって、さっき言っただろ」
あくまでしらを切るつもりらしい。
柚子は、最も落ち着いていそうな子に話しかける。なるべく砕けた調子で。
「こんにちは。この壁、すごいですねー。外から叩いても蹴ってもびくともしないなんて、まさに難攻不落です!」
褒められた気になったのだろう、少年はふふんと鼻を持ち上げた。
「すげえだろ。蟻の這い出る隙間もないんだぜ」
ルンルンが、壁の向こうから口を挟む。
「あれ? みんな、お昼ご飯と夕ご飯はどうするつもりなの?」
「へ?」
「だって、蟻の這い出る隙間もないんでしょう? そこからどうやって出るの?」
立てこもり組はようやく、自分たちが壁によって守られていると同時に閉じ込められているのだということを悟った。
「……そういえば、どうしたらいいんだっけ」
「いや待て多分あのおっさんたちがどうにかする手を知ってるはず……」
こそこそ内輪で相談しているところに、詩が外から一押し。
「猫頭のおじさんは元気だった? でもあの人指名手配犯だよ。隠すと警察に怒られるよ~」
それを聞いた子供たちは驚愕した。
「し、指名手配……マジかスゲーな!」
「ポリに追われるとか、何やったんだあの猫とハゲ!」
事件の黒幕についてさっぱり知識のないJ・Dは、詩に聞いた。
「おい、猫とハゲってなあ、何物だ?」
「命にかかわる不良玩具を作って子供に売ったり、歪虚を作って捨てたり、墓地から死体を掘り出したり、刑務所を壊して脱獄したり、そんな感じの人たちだよ」
「成程、とんでもねえ野郎共だ」
ともかく壁の中にいる面々も、優位を気取ってばかりいられないことを理解したのだ。事態の促進にはよいこと。
機を逃さず柚子は、リーダー格を説得した。
「一度向こうの子たちとちゃんとお話、してみませんか? みんな、遊び場所を独占されたくないという気持ちは一緒なんですから」
「……話をするのはそりゃいいけどさ、この壁壊すのは気が進まないな。あいつら絶対ぶん殴りに来るもん」
その言い分を聞いた柚子は、詩に目配せする。
詩は心得たとばかり、公園の強者たちに念押しした。
「結界が壊れてもいきなりあの子達を襲わないでね。約束してくれたら皆にスペシャルな技を教えてあげるよ」
『スペシャルな技』という分かりやすい表現は、子供心をたいそう引き付けた。
「スペシャルって、どんな技だ?」
詩は小首をかしげて覚醒、天使の姿になってカチャを手招き。
「ごめん、ちょっと実演手伝って?」
「え――んぎゃああああ!?」
「いい? これがコブラツイスト。別名あばら折り。で――これがパロスペシャル」
「うぎゃああああ!!」
「本当に強い人は弱い者虐めなんかしない。皆を護ってこその男の子だよ。お姉さんはそういう子が好きだな。きっと他の女の子もね」
「まっ、ロープ、ロープぅぅ!!」
「あ、ついでに四の字固めも披露しちゃうよ♪」
子供達は詩の説諭に反論しなかった。圧倒的な力に対し、敬意を払っているもようだ。
雅緋はカウント10で立ち上がれなかったカチャの傍らに座り込み、聞く。
「ヒール、いるかい?」
●
ハンターたちの説得工作が実を結び、壁の内外での話し合いは、一応まとまった。
ステラが同意書を読み上げる。
「――じゃあ同意書について読み返すよ。『その1、公園の使用は、シフト制にすること。その際日数の割り当ては平等にすること。その2、シフトについては一カ月ごと変更する。変更については、野球の試合で決める。一等を取ったチームがシフトの割り振りをする権利を有する。その3、決まったことには全員きちんと従う。』――これが、ここの新しい決まり。みんなちゃんと守ってくれるよね?」
内と外の子供が頷いた。
「じゃあ、早いところこんな壁は壊しちゃお」
子供たちから始まった問題は子供たちが解決するのが筋である。壁は彼らの手で壊させるべきだ。というのがハンターの総意。
そのため彼らは前もって壁にダメージを与えておいた。
いかにルンルンが地脈鳴動で力を活性化させると言っても、子供らは素人。それだけでは歯が立つまい。
「いいですか、私のやる通りにするんですよ。ジュゲームリリカル……ルンルン忍法ニンジャ――――――」
増させた力を喧嘩に流用されるとことなので、ルンルンは、効果切れギリギリまで溜めに溜める。
「――――――パワー! 目覚めて貴方のニンジャ力☆ さあ行くのです、止めを指すのです、少年たち!」
「いってええ!」
「かてーよこの壁!」
「負けてはいけません! その力はいずれ大人になれば目覚める力、でも、今みたいに公園をみんなで使わなかったり、喧嘩する様なら、ニンジャ力は二度と目を覚まさないんだからっ!」
透明だった壁が半透明に曇り見えるようになった。ヒビが入る。亀裂が広がる。一カ所の綻びは、連鎖的に広がっていく。
もし瓦礫が落ちてきたらと、大事を取って子供たちを下がらせるステラと柚子。
しかし心配は無用だった。壁は瓦解して行く先から消えてしまったのだ。
閏は誰よりも早く公園の中に入り、占拠組を叱る。
「悔しかった気持ちはわかります、ですがあの結界が破れなかったら貴方達も公園から出られなかったかも知れないんですよ? それに、知らない人に着いていくなと教わらなかったのですか?」
「ついてってはねえよ、ただちょっと頼みを聞いてもらっただけで」
言い訳をする子に彼は、ぴしゃりと言う。
「利害を共有することは、着いて行くことと一緒です」
柚子も念入りに注意する。
「知らない大人の手を、簡単に取ってはダメですよ。それは、君達のお母さんを悲しませる事になるかもしれないですから、ね?」
そのとき後ろで騒ぎが起きた。
興奮覚めやらぬ腕白たちが、調子をこいていた相手に詰め寄ってる。
「おいこら、お前さっき、俺のパンツがうんこ色とか言ったよな……?」
「え、いやいやその、あれは」
その足元に砂利が投げつけられてきた。
J・Dである。
「言葉の借りを手で返そうってンなら、こちとらも見ているだけじゃァすまねえぜ。壁だって今はもうねえ。これで手打ちにしておきな」
ステラも木刀を地面に突き立て、怖い顔。
「こら、せっかく仲直りしたのは嘘だった……のかな?」
腕白たちは詰め寄るのを止めた。
閏は両者の頭に手を置く。
「さあ、ちゃんとごめんなさい、しましょうね」
水月が脇から促した。
「限られた場所なんですし、仲良くですよ?」
子供たちはしばし睨み合った後、ぎこちなく頭を下げた。
「……ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
それを見届けた閏は、破顔し、重箱を掲げる。
「お腹空いているでしょう? 皆さんで“仲良く”食べませんか?……足りないと思うので、半分ことかになってしまいますが……」
ステラも、バスケットを出してくる。
「……お疲れ様。お腹減ってるでしょ? だから、はいコレ。みんなで食べよ?」
雅緋は壁の失せた公園を見回し、目を細めた。
「壊れたねぇ……今壊したのは、御前さんらの此処の」
と言って、子供たちの胸を指さす。
「壁だったのかもねぇ……なら、御前さんらはもう仲良くなれるはずだ。……だって壁は、今自分たちで壊したんだから。さ、まめし、食べるかい?」
詩はアイス月餅を持ち出してきた。
「さ、食べて食べて。それがすんだら約束どおり、技を伝授してあげるっ!」
J・Dは組んでいた腕を開き、にっと歯を見せる。
「ま、腹一杯になりゃあな、大抵のことにかっかしなくなるもんさ――ところで大丈夫かカチャ」
「うう……関節が痛い……」
こうして公園は解放された。
スペットとブルーチャーは、その日のうちに通報されたそうな。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/02 04:20:47 |
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公園を開放しよう 天竜寺 詩(ka0396) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2016/06/04 16:00:36 |