アタッチメント

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/06/01 07:30
完成日
2016/06/04 15:42

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ある村で
 ベリト――歪虚メフィスト(kz0178)――とハンター達が死闘を繰り広げていたその時、巡礼路上の小さい村でも戦いが行われていた。
 天使の姿を模した歪虚とハンター達、そして、王国の兵士達の戦いは村を巻き込んでの一進一退の攻防の中にあった。
「兵士達が護衛し、村人のほとんどは退避した。あとは俺達も退くだけだ」
 慣れない様子で剣を握る青年が叫ぶ。
「退けないわ! 大事な故郷を! 義父の無念を! このままにしておけない!」
 機導術を操り、マテリアルの光を歪虚に放ちつつ、女性ハンターが青年に応える。
 歪虚からの攻撃を仲間のハンターが盾で防ぐ――が、その勢いは盾を砕いて襲い掛かった。
「貴方は、この人と下がって! ここは、私が行きます!」
「ラティン、ダメだ! 君も下がってくれ!」
 青年は叫んだ。
 歪虚の襲撃で村長である父を失った。ハンター達が歪虚を抑えている間に、右往左往して混乱する村人達を王国兵士達は雑魔の群れから守りながら退避させた。
 もはや、これ以上の戦闘は必要ない。村が破壊されるだろうが、命さえあれば、また、いつか取り戻せるはずだから。
「義父の仇です!」
 ラティンと呼ばれた女性ハンターに青年の声は届いていなかった。
 青年との婚約をつい先日行ったばかり。小さい頃から知る義父は涙を流して喜んでくれた。それなのに……それなのに……。
「たかが人間が、この僕になにができる」
 白銀の翼を持つ美少年の姿を模した歪虚が言った。
 戦いでこの歪虚もかなりの深手を負っているはずだが、自信満々を装っている。
「僕の攻撃を避けれるかな?」
 余裕ぶって繰り出した攻撃が仇となった。
 女性ハンターはその攻撃を避ける事もせず、真正面から受け止めると、差し違える様に機導術を放つ。
「絶対に、絶対に許さない!」
「ば、ばかな……」
 相打ちだ。歪虚はボロボロと崩れ逝く中、見た。
 人間の青年の姿が目に入る。会話の状況から親しい中ではあるようだ。ならば……最後の最後まで苦しませてやろうと思う。
「これは、僕を倒した褒美だよ。君は『僕ら』と共になればいい」
 意識が既にないのは女性にとって幸いだっただろう。
 歪虚は女性と唇を重ね、負のマテリアルを流し込んだ。
「ラティンィィィィン!!!」
 青年の叫びだけが静まり返る戦場に響いた。

●愛執
「王国なんて必要ない! この村にはラティンが居るんだ!」
 蔵の前で青年と村人達が叫んでいた。
 ラティンは小さい頃から明るくて元気な女の子だった。覚醒者としての素質があり、村が困った時はハンターの仕事ではなくとも助けに来てくれた。
 だから、村人全員から愛されていた。村長の息子である青年との婚約も、それは、祭りかという程の盛り上がりだった。
「そのラティンというのは、雑魔化しているのだろう。テスカ教団が残した物をそのままにはできん」
 困った表情を浮かべているのは、王国の兵士であった。
 戦死した一人のハンターが、安置されていた蔵の中で雑魔化していたのだ。
 蔵の入り口は閉ざしてあるので、雑魔が村の中に出て来る事はないが、このまま、放置しておくわけにもいかない。
「あんたらは守れなかっただけではなく、奪っていくのか!」
 青年の怒りの言葉に、他の村人達も賛同して声を荒げる。
 もはや、収拾がつけられない。
「……これは、仕方ないが、我々では無理だ……」
 兵士達は村人らの罵声を浴びながら、村を出た。

●正義
 報告を受けて、王国から騎士団が派遣される事になった。
 それも、歪虚を専門に追跡し、討伐する隊だという。
「貴方が、暫定の村長ですか」
 女性騎士――ソルラ・クート(kz0096)――が、冷たく言い放つ。
 その雰囲気はどこか、怒りを感じさせるものであった。
「そ、そうだ。王国の騎士が何の用だ?」
「……私達は雑魔を討伐しに来ました」
「と、討伐なんて必要ない。彼女は村の守り神として、このままでいいんだ!」
 青年の言葉に村人達が続く。
 蔵の中に閉じ込めておけば脅威は今のところ、無い。
 次第に大きくなる村人達の声を、しばらく、ソルラは黙って聞いていた。だが、やがて、肩を震わせながら叫んだ。
「……人は、死んだら大地に消え、魂は天へと昇る! そこに居るのは、ただの雑魔です!」
「ラティンは! ラティンは大切な人なんだ! たとえ、雑魔になったとしても、彼女を二度も失いたくないんだ!」
 失った愛。失った未来。失った幸せ……彼女との思い出が走馬灯のように青年の脳裏に流れた。
「……だったら、歪虚幇助の罪で、邪魔する者を裁くだけです」
 静かに、怒りを感じさせる言葉でソルラは言った。
 ソルラが率いるアルテミス小隊は、歪虚や雑魔に関する事であれば、ある一定の裁量権を持つ。歪虚や雑魔を匿う者を捕らえる事も可能だ。
 任務とはいえ、そんな台詞を発した自分に嫌気を感じながらソルラは言葉を続けた。
「……明日の朝まで待ちます。その間にどうするか決めて下さい」
 女性騎士は踵を返した。
 胸を張り、威風堂々と歩く。でないと、虚勢が見抜かれるのではないかと思ったからだ。

リプレイ本文

●悲哀
 ソルラが宿泊の為に借りている家へと胸を張って戻る姿を見送りながら、フォークス(ka0570)が悲しい表情で村人達に頭を下げ、哀悼の意を示す。
「失う重みは、経験しないとわかんないからね……心中、察するよ」
(なんて、心にもないコト言ってみたり……あたいに失うモンなんて、もう何も無いケドね……)
 異臭を放つヘドロの様な、そんな光景を思い出し、心の中でまったく別の事を想いながらも彼女はそれを表に出す事はしない。
 如何にもアルテミス小隊員というような雰囲気を装い、村人らに訊ねた。
「その……もし、よければ、ラティンという人物について、話を聞かさせ貰えないか?」
 話が通じない小隊長の騎士よりも、“マシ”と判断されたのだろう。敵対的だった村人らは雑魔と化したラティンについて色々と話し出した。
 優しかった、小さい頃から責任感があった、子供が大好きだった、家事は絶望的だが魔導装置の使い方は村一番だった……聞けたのは村で彼女が愛されている話ばかりだった。
「そうか……皆の大切な人だったのだな……」
「雑魔を匿うというのはダメだと分かっている。それでも、残された私達には縋りたい存在なのです。どうか、どうか、私たちの願いを」
 村人らがワッとフォークスを囲った。
「分かった。隊長に伝えて、推しておこう」
 村人らを安堵させるように言いながら、彼女の頭の中では既に『雑魔をどう倒そうか』という思案に至っていた。

「……守り神、と言っていた、な。彼女は、この村で何をしていたのか教えてくれない、か?」
 オウカ・レンヴォルト(ka0301)が村長の傍に居た村人達に話しを聞いていた。
「事情が分からねば、互いの理解なく、女性を滅し、廃村となるかもしれない……そんな事は見過ごせないから、な」
 その言葉にしぶしぶと村人達は語り出した。
 ラティンと暫定村長は婚約していた事。テスカ教団の歪虚の襲撃され、村を守るためにハンターであった彼女は相打ちとなった事。
「……なるほど、つまり、お前は……お前達は、村を守るために戦い、亡くなった愛する人に永劫の苦しみを与え続けるのが望みだったという事か」
 オウカは怒りで震えていた。
 愛すると言っていながら、自らの満足の為に雑魔の姿のまま活かし続けているようだと感じたからだ。
 もし、自分が雑魔である彼女だとしたら、死を望む。
「それとも、お前はそうは思わないのか? 村長」
 近くで憮然とした青年に声を掛けた。
「それは気持ちを考えない、ただの他人の正論だ!」
 村長と村人らはそう言い捨てるとバラバラに去って行った。それぞれが怒りを抱えたまま。

「仲が良かったというよりかは、喧嘩ばっかりしていたかな。馴染みだからこそ、なんだろうけど」
 道路の隅でうな垂れている村人が空を仰ぎ見ながらメトロノーム・ソングライト(ka1267)に言った。
「喧嘩するほど仲が良い……みたいな感じでしょうか?」
「あぁ……そうだね。そんな感じだよ。本当に、なんで、死んでしまったのか……」
 そして、道に石ころを投げつけた。何度かバウンドして止まる。
「嬢ちゃん、ハンターなんだろ。王都で歪虚に負けたって行商が言ってたさ」
「……そう……です……。至らない事ばかりです」
「い、いや、責めている訳じゃねぇ。嬢ちゃんみたいな若い子が、危険な戦場には行かねぇだろうし」
 その言葉がメトロノームの胸に突き刺さった。

 村人達から話を聞き、リンカ・エルネージュ(ka1840)はどうしようものかと思っていた。
(大切な人、失うことは辛い。私も昔、守れなかった人いたからそれも分かるんだ……)
 ラティンが村人らから愛されていた事、亡くなってしまった事に対する悲しみは深く、また、暫定村長はともかく、村人らの中には雑魔を匿っている事に異を唱える人らもいた。
「確かに、ラティンの意思に反している……と、我々も思っている。急な事で気持ちの切り替えがつかない者もいるだろうしな」
 ある村人がリンカから話に応じてくれていた。
 彼女の事、村の事、それらを丁寧に教えてくれた。
「見ての通り、ラティンが居る蔵は厳重に封鎖している。気持ちが落ち着くまで、このままでもという意見が大半だ」
「村長の事もあるから?」
 リンカの質問に村人は大きく頷いた。
「村で亡くなったのは前村長とラティンの二人だけだ。村を守る為に……な……」
「つまり、村人達の中には、村長の気持ちを汲んでの事で……」
「でなければ、危険な存在を村全体で匿うなんて事はしないだろう」
 これは強く説得に出なくて正解だとリンカは感じる。
 時間を待てば、いずれ、変わっていけるだろう。だが……それは、何時の事になるのか……。

 暫定の村長である青年を伴って、蔵の前までミリア・エインズワース(ka1287)はやってきた。
「彼女を守り神だというなら、話をさせてくれ。意志の疎通ができるなら」
 蔵の僅かな隙間からは、翼を持った女性ハンターの姿が見えた。
「……」
 男性からは返事はない。
 当然、蔵の中にいる雑魔からも言葉はない。時折、意味不明な叫び声をあげていた。
「あれが村を救った英雄の末路だというのなら、これほど悲しいことは無いな」
 危険な存在という認識はあるようで、蔵は幾重にも厳重に補強がされていた。
「村の為に死んだのに、死んだ事さえ認めてもらえない、そして、取り憑いた雑魔を守り神という。で、彼女は守り神か? それとも、供養さえしてもらえない哀れな英雄か?」
「……なにも言わないならエクラも一緒だ」
 青年が口を開いた。激しい憎悪を感じる口調で。
「エクラだって、なにも言わない! それどころか、巡礼路なんてものがあるから、この村が襲われたんだ! エクラが神なら、彼女も神だ!」
「認めたくないか……でもな、残された奴らがそれじゃあ、彼女は何の為に……」
 怒って立ち去っていく青年の背中を見送りながらミリアは呟いた。
 蔵の入り口には、雑魔を奉っているからなのか、それとも供養なのか、多くの花が供えられていた。

 日が落ち、夜となっても村長の家には灯りがついていた。
「大事な方を失ったばかりで考慮するべきではあると思いますが、危機を放置する程、我々に余裕はないのです」
 米本 剛(ka0320)が暫定村長である青年と話していた。
「彼女の存在は、村に厄災をもたらすでしょう。彼女を奪い、その想いを利用する歪虚が現れる……かも知れないです」
「歪虚が、また……」
 顔をしかめる青年。
「彼女は村を守る為に戦ったはずです。彼女だったら、どうしていたでしょうか」
「……聞かれるまでもない。ラティンなら、雑魔や歪虚の存在を許すはずがない。君達と同じ、ハンターなのだから」
「どう割り切るかは、お任せします」
 簡単に割り切れる事ではないだろう。だが、剛は答えを青年に委ねる事にした。
 同時に心の中でこの事態を引き起こした歪虚へ怒りを覚える。
(やり方が嫌らしい……としか、言えませんね)
 同席していたメトロノームも口を開いた。
「『二度も失いたくない』と、仰いましたけれど、今も、彼女はあの歪虚に奪われたまま……その事から目を背けては駄目」
「……そうです。奪われたまま。ラティンも、俺も、この村も……」
 グッと拳を握る青年。
「だとしたら、彼女はこの先もずっと苦しみの虜囚でいなくてはいけない。人としての死を、看取ってあげる事が大切ではないでしょうか?」
「……分かっています。けど、貴方達のように全ての人が、正面を見据えるなんて事、できない!」
 その言葉にメトロノームは次の台詞が出てこなかった。
 苦しみ、悲しみのあまり、失ったものがあったから……だが、彼女は信頼する仲間や多くの関わる人と接する事で少しずつ快復の兆しをみせてきた。
 きっと、この青年も、今は落ち込んでいるが、いつかは笑顔になれる日が来るはずだと心の中でメトロノームは祈った。

●早朝
 蔵の前に新しい供え物が並べられ、周囲を綺麗に掃除されている光景を見てミリアは呟いた。
「感謝と供養か……」
 村長である青年と多数の村人らが蔵の入口を封鎖しており、アルテミス小隊とハンター達が対峙していた。
 他の村人らは更に外側から不安そうな様子で、見守っている。
「私達が……彼女を……ラティンさんを解放する」
「説得など無意味だ。彼女が手を汚す前に人として弔うだけだ。
 ルーン文字が刻まれた魔法剣を抜き放ち、リンカが宣言し、オウカも刀を構えて前に進む。
「どうしても、討伐するというのか!」
 青年が両手を広げて叫んだ。
「私は自らの権限を行使するだけです。邪魔するなら歪虚の仲間として捕らえます」
 ソルラが進み出ると周囲を威圧しながら宣言する。
 歪虚の仲間は極刑にも値する場合がある。村人らはざわめいた。
「割り切れなかったのですか……」
「残念な事です……」
 剛とメトロノームも二人は視線を落とした。
「……もっと、『現実』を、そして、ベリト教団が残した存在を認めるわけにはいかない事を、説明できれば違ったかもしれません……既に手遅れですが……」
 苦虫を噛んだような顔をして剛が呟いた。
 彼にとって出来る事は雑魔を対峙する事だけだ。これだけは譲れない。
「彼女を倒すというのであれば、まずは、俺達を倒してからいけ!」
 入り口の前から立ち去ろうとしない青年と村人達。
(まったく、面倒な事に……)
 小隊員を装ったままのフォークスは思ったが、前に出る事はなく、他の小隊員と行動を共にする。
 それは杭を打った箇所にロープを通していく事だ。雑魔の逃亡を防ぐというよりかは、村人らの侵入を防ぐ意味の方が強い。
 その光景を見て、ますますヒートアップする青年達。
 村全体が大きい喧噪に包まれた。

「いい加減にして下さい!」
 ソルラが全身を震わせながら叫んだ。
 余りの勢いに場が静まり返る。
「失いたくないです。当たり前じゃないですか!」
 緊張の糸が切れたのだろうか、我慢していたなにかが溢れ出したのだろうか、ソルラの様子は明らかにおかしかった。
「それなのに! それなのに……すぐ王都に戻らなかった……私の判断ミス……戻っていれば、死なせずに済んだかもしれないのに……なんで……なん…」
 嗚咽を漏らしながらソルラはその場で崩れ落ちた。
 堂々と振る舞っていたのは虚勢だったと村人らも理解した。
 この騎士も深い悲しみの中に居たのだと。
「ソルラさん……」
 メトロノームがソルラの肩に手を回した。
 この女騎士が悲しむ状況となった戦場に居た身としてメトロノームは、放っておく事はできないと思った。
「……少し、休みましょう。雑魔は皆さんで倒しますので」
 首を振るソルラ。
 だが、この状況でソルラを戦いの場に行かす事など出来ない。
「皆さん、後をお願いします」
 仲間達に向かってメトロノームは丁寧に頭を下げた。
 魔法での援護を行うつもりだったが、この様子では援護も出来ないだろう。

 その時だった。
 蔵の扉の前で立ち塞がっていた村人とは違うグループの村人達が動き出した。
「ハンターや、騎士様の邪魔はこれ以上させない。どいてもらうぞ」
「なにを言ってやがる! 騎士に媚びでも売るのか?」
「村全体の問題だ。何人かの傷心で村に不利益になる!」
「軽く言いやがって! お前だってラティンに守られた癖に!」
 村人らは言い争いから取っ組み合いの喧嘩へと発展する。
「今です……行って下さい」
 そう言われてリンカは背を押された。
 振り返ると前日、話をしてくれた村人が悲しい表情を向けていた。
 リンカは小さく頷くと、呼吸を整えてから印を結んだ。
「リチュエルフラム! ミリアさん!」
 ミリアが持つ斬魔刀がマテリアルの青白い炎に包まれた。
「先陣は僕が切るよ」
「どうぞ。自分は壁役と回復を務めます」
 刀を構えて言ったミリアに剛は応える。
「なら、俺も援護に回ろう」
 必要に応じ、機導術を行使する覚悟を決め、オウカも並んだ。

 長大な刀を蔵の中というのにミリアとオウカは器用に振り回していた。
「よし! 攻性防壁はないね!」
「油断は、する、な」
 確かな手ごたえを感じながら刀を構えなおすミリア。
 機導術は前衛スキルや後衛スキルなど幅が広い。オウカは仲間達に注意を促した。
「……氷よ、凍てる矢となりて、突き刺さり、動きを封じて!」
 リンカの氷の矢の魔法が雑魔へと襲い掛かる。
 雑魔程度であれば十分に狙った効果が見込めるだろう。
「動きづらくなったようです」
 剛が繰り出した法刀は、雑魔の脇腹を貫いた。
 なにか叫びながら雑魔は右腕を突き出す。
「これ、は、ファイアスローワーに似ていますね?」
 負のマテリアルの炎に焼かれる剛とオウカ。ミリアも範囲内だったようだが、大きなダメージにはなっていないようだ。
「回復しますので、攻撃して下さい」
 剛の横をリンカが放った氷の矢が疾走し、オウカの刀先が逆方向から突き出される。
 それらと共にミリアが二撃目を繰り出した。
「まだ、倒せないか!」
 深手を負わせた感触がある。
 突如として入口に向かって跳躍する雑魔。踵からは負のマテリアルの噴射していた。
「今度はジェットブーツ!?」
「外、に!?」
 リンカとオウカは体制を整えるが精一杯だった。
 最後の力を振り絞って逃亡を試みたのだろうか。
「ラティン!」
 青年が蔵から出ようとしている雑魔に近づいた。
 対して、雑魔は青年に向かって右腕を突き出す。青年は突き出された手を掴むように自身の手を伸ばした。
「ラティン!」
 青年が再び名を呼んだ時だった。
 雑魔が強烈な銃撃を受けて、胸に大きな穴が開いた。

「こんなサービス、滅多にしないよ」
 銃弾を放ったのは、小隊員を装って、蔵の外で待機していたフォークスだった。
 二撃目は必要ないと判断した。身体に大穴が空いた雑魔は仰向けに倒れると、塵となって消え始めたからだ。
「うわぁぁぁぁ! なんで、殺ったぁ!!」
 塵を掴もうとして消え流れて掴めないまま、青年はフォークスへと迫った。
「……あたいは雇われに過ぎないさ。雑魔を倒せば金が手に入る。それだけだ」
「だからって!」
「騎士やそこのハンターらと違って、あたいは最初に依頼された内容を忠実に守っただけ。恨むなら勝手に恨みな」
 飛びかかりそうな青年を村人らが抑え、悔しそうに地面を叩く、青年の叫びが村の中に響いた。


 目標を討伐し、混乱する村を小隊に任せてハンター達は帰路についた。
 雑魔は退治した。依頼は果たした。それでも、どこか、やりきれない気持ちを抱えながら……。


 おしまい。


●絶望の底で
 村長の仕事を放棄し、村から飛び出した青年が街道の道縁に座り込んでいる。 
「ほう……これは今時珍しい目付きをしておるのう」
 異様な殺気を放っている青年に翁が話し掛けてきた。
「その怒りで、自分が死んでも良いと思うなら、儂について来ると良い」

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MVP一覧

  • SUPERBIA
    フォークスka0570

重体一覧

参加者一覧

  • 和なる剣舞
    オウカ・レンヴォルト(ka0301
    人間(蒼)|26才|男性|機導師
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    米本 剛(ka0320
    人間(蒼)|30才|男性|聖導士
  • SUPERBIA
    フォークス(ka0570
    人間(蒼)|25才|女性|猟撃士
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 英雄譚を終えし者
    ミリア・ラスティソード(ka1287
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人
  • 青炎と銀氷の魔術師
    リンカ・エルネージュ(ka1840
    人間(紅)|17才|女性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓、です
メトロノーム・ソングライト(ka1267
エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/05/31 20:23:49
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/05/27 11:40:04