ゲスト
(ka0000)
結婚式の延期の理由
マスター:狐野径

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/07 22:00
- 完成日
- 2016/06/13 03:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●花嫁の嘆き
グラズヘイム王国にあるとある二つの村が大いに沸いていた――のは三か月前のことだった。
エイ村の娘であるエルサとビイ村の青年であるオスカーが、出会ってから十年、付き合い始めて一年で結婚にこぎつけたのだった。仲が良い村であるため、結婚する者が出ると非常に喜びに包まれる。もちろん、外部から嫁入り婿入りした者もいるし、別に排除するわけではないが、やはり近所同士だと盛り上がりが違う。
まずはエイ村で宴。次はビイ村で宴という構成だった。料理は互いに持ち寄る。
さあ、本番まであとわずか、となったころ、不穏な情報が入ってきていた。
村と村をつなぐ、山の道にゴブリンが出るようになったというものだ。
まずは山菜取りや薪取などで訪れた者たちが出くわして逃げてきたという。次は行商人や配達員が襲われ、荷物も奪われたという。
それぞれの村から町に行くには一日かかり、隣村に行くはずが二日の行程が必要となる。しかし、山にある道を通ると移動と簡単な用を含めて一日で往復できる。そのためその道は村人たちだけでなく、村に商品を届けに来た行商や配達員も使うのだった。
結果、外部から買い入れる物品の値段は上がった。移動に時間がかかる手間の分、若干だが問題だ。
このままではいけないと、花婿であるオスカーとビイ村の青年会は意を決して出かけた。食料を少々と花嫁へのプレゼントをもって、できる限り武装して。
結果、荷物を取られ、オスカーが腕の骨を折る重傷、青年会のメンバーもそれなりに負傷したのだった。
その情報は花嫁であるエルサのもとにも届く。
「オスカーのもとにもう行きますっ!」
「回り道しかないのだよ」
「も、もういいです、結婚式は! だって、あの人、大けがしているって」
花嫁たるエルサは村で両親や無理に行くなという説得にあっていた。
「楽しみだったけど仕方がないじゃない!」
エルサは怒る。兄も理解するためそれ以上とどめられない。
「……ね、お兄ちゃん……ゴブリンがいるのがいけないんだよね?」
エルサの妹が兄の袖を引っ張る。
「でも村には行ける」
「行けるけど、お姉ちゃんに会うのが大変だよってことだよね?」
「そうだよ」
「なんで、ゴブリンを倒してってハンターにお願いしないの」
「……ぐう」
エルサの兄であるエリオはうめいた。その通りなのだ。実際、花婿が襲われた直後、二つの村合同でゴブリン退治をしようとして失敗したのだった。狩人がいたところで一般人であることに変わりなく、ゴブリンに負けた。囮にもっていった食料だけが持っていかれた。
「……結局そういうことだよな」
エリオは溜息をついた。
怪我をすれば農業も酪農もできない。結局、現金収入を得る道が途絶える。商人も手数料を増やすため、出費は増える。
村の行き来がしにくいと、出会いも減り、町に行く若者も出てくるに違いない。さびれていてしまうかもしれない。
「……仕方がない、村長を説得するか」
村の青年会を説得し、村長をはじめとする年長者を説得し、隣村に行って説得という長い一週間を乗り越え、エリオは町のハンターソサエティに向かった。
●ゴブリン退治依頼
ソサエティの受付で、エリオは両村の代表として依頼を出す。
「というわけで、ゴブリンを退治してください。このままだと、生活に支障をきたします」
「わかりました」
「あと、ビイ村のオスカーが言うには、もし見つかれば花嫁へのプレゼントも……回収してほしいと」
形状は直径十センチほどの木彫りのペンダントヘッドだという。小麦の穂と太陽をあしらったお守りだという。
「お守りといっても、お互いに思っています、という証みたいな……」
エイ村とビイ村ではそういう風習があるとのこと。気持ちであるため、それとなく続いているという。
「もし見つかればということらしいので、無理はしなくて結構ですと」
見つかって悪いことはない。エリオは一旦言葉を切ったあと追加の情報を告げる。
「ただ、オスカーも実は悩んでいるみたいです。ゴブリンに何かされたものをあげるのも躊躇しているみたいです」
エリオの言葉に職員はあいまいにうなずく。
「ゴブリンの数や種類ってわかります?」
「オオトカゲ見たいなのに乗っているは一匹いました。あとちょっと強そうなやつが弓持っていたり、杖持っている奴も。あとはコボルドもいましたね……」
受付職員は「ゴブリンの種類、一通り」とさらりと書く。
「わかりました。手配いたします」
「よろしくお願いします」
グラズヘイム王国にあるとある二つの村が大いに沸いていた――のは三か月前のことだった。
エイ村の娘であるエルサとビイ村の青年であるオスカーが、出会ってから十年、付き合い始めて一年で結婚にこぎつけたのだった。仲が良い村であるため、結婚する者が出ると非常に喜びに包まれる。もちろん、外部から嫁入り婿入りした者もいるし、別に排除するわけではないが、やはり近所同士だと盛り上がりが違う。
まずはエイ村で宴。次はビイ村で宴という構成だった。料理は互いに持ち寄る。
さあ、本番まであとわずか、となったころ、不穏な情報が入ってきていた。
村と村をつなぐ、山の道にゴブリンが出るようになったというものだ。
まずは山菜取りや薪取などで訪れた者たちが出くわして逃げてきたという。次は行商人や配達員が襲われ、荷物も奪われたという。
それぞれの村から町に行くには一日かかり、隣村に行くはずが二日の行程が必要となる。しかし、山にある道を通ると移動と簡単な用を含めて一日で往復できる。そのためその道は村人たちだけでなく、村に商品を届けに来た行商や配達員も使うのだった。
結果、外部から買い入れる物品の値段は上がった。移動に時間がかかる手間の分、若干だが問題だ。
このままではいけないと、花婿であるオスカーとビイ村の青年会は意を決して出かけた。食料を少々と花嫁へのプレゼントをもって、できる限り武装して。
結果、荷物を取られ、オスカーが腕の骨を折る重傷、青年会のメンバーもそれなりに負傷したのだった。
その情報は花嫁であるエルサのもとにも届く。
「オスカーのもとにもう行きますっ!」
「回り道しかないのだよ」
「も、もういいです、結婚式は! だって、あの人、大けがしているって」
花嫁たるエルサは村で両親や無理に行くなという説得にあっていた。
「楽しみだったけど仕方がないじゃない!」
エルサは怒る。兄も理解するためそれ以上とどめられない。
「……ね、お兄ちゃん……ゴブリンがいるのがいけないんだよね?」
エルサの妹が兄の袖を引っ張る。
「でも村には行ける」
「行けるけど、お姉ちゃんに会うのが大変だよってことだよね?」
「そうだよ」
「なんで、ゴブリンを倒してってハンターにお願いしないの」
「……ぐう」
エルサの兄であるエリオはうめいた。その通りなのだ。実際、花婿が襲われた直後、二つの村合同でゴブリン退治をしようとして失敗したのだった。狩人がいたところで一般人であることに変わりなく、ゴブリンに負けた。囮にもっていった食料だけが持っていかれた。
「……結局そういうことだよな」
エリオは溜息をついた。
怪我をすれば農業も酪農もできない。結局、現金収入を得る道が途絶える。商人も手数料を増やすため、出費は増える。
村の行き来がしにくいと、出会いも減り、町に行く若者も出てくるに違いない。さびれていてしまうかもしれない。
「……仕方がない、村長を説得するか」
村の青年会を説得し、村長をはじめとする年長者を説得し、隣村に行って説得という長い一週間を乗り越え、エリオは町のハンターソサエティに向かった。
●ゴブリン退治依頼
ソサエティの受付で、エリオは両村の代表として依頼を出す。
「というわけで、ゴブリンを退治してください。このままだと、生活に支障をきたします」
「わかりました」
「あと、ビイ村のオスカーが言うには、もし見つかれば花嫁へのプレゼントも……回収してほしいと」
形状は直径十センチほどの木彫りのペンダントヘッドだという。小麦の穂と太陽をあしらったお守りだという。
「お守りといっても、お互いに思っています、という証みたいな……」
エイ村とビイ村ではそういう風習があるとのこと。気持ちであるため、それとなく続いているという。
「もし見つかればということらしいので、無理はしなくて結構ですと」
見つかって悪いことはない。エリオは一旦言葉を切ったあと追加の情報を告げる。
「ただ、オスカーも実は悩んでいるみたいです。ゴブリンに何かされたものをあげるのも躊躇しているみたいです」
エリオの言葉に職員はあいまいにうなずく。
「ゴブリンの数や種類ってわかります?」
「オオトカゲ見たいなのに乗っているは一匹いました。あとちょっと強そうなやつが弓持っていたり、杖持っている奴も。あとはコボルドもいましたね……」
受付職員は「ゴブリンの種類、一通り」とさらりと書く。
「わかりました。手配いたします」
「よろしくお願いします」
リプレイ本文
●それぞれ出発
ゴブリンたちを挟み撃ちにすべく、ハンターは二手に別れた。
エイ村に到着したのはマルカ・アニチキン(ka2542)と西空 晴香(ka4087)。敵を逃がすつもりもなく、確実に足止めをするつもりであった。
「一生に一度の思い出になるんだ。これ以上邪魔させるかってんだ!」
晴香は鼻息が荒い。
「そのプレゼントは花嫁衣裳を飾るのに、一番必要なものですよね……絶対に見つけましょう!」
マルカの口調は静かでおどおどしているが、怒りと気迫がにじみ出る。
二人は気合を入れるように手を握る、意気込みを共有するように。
期待のまなざしを背中に一身に受け、作戦決行の時間も迫るため出発した。
ビイ村に到着したハンターたちも早速出発する。それぞれ村に到着してしまうとトランシーバーも魔導短伝話も届かない。決めた時間に間に合わなければ、作戦は失敗になってしまう。
「はよ報告が上がれば、余計な被害をかけんで済んだかもしれんの。過ぎたことは仕方がない。まあ、必要経費と考え、私らがきっちり仕事をすればいい」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は幼い外見ながらも、落ち着いた様子で告げる。けが人はいても治るものであるため、過去のものと流せるだろう。
「……どんな理由があれゴブリンを生かしておけば、悪意を持ってくるだけだというのに。そして、被害をこうむるのはいつも、ただの人間だ」
カイン・マッコール(ka5336)は眉を逆立てる。誰かが戦って逃がしてしまったのか、情けをかけたのかと推測するが、ここで倒してしまえばよいのだと気を引き締める。
「めでたくてもこうゴブリンがいるとめでたさ半減だよねぇ……あ、半減どころか悲しいね」
眉がだんだん中央に寄っていく骸香(ka6223)は同行の鞍馬 真(ka5819)を見る。
「そうだな。ゴブリンという災難だ。早く式を挙げられるよう、手を尽くそう」
真は骸香にうなずき、微笑みかけた。「僕たちが倒せばいい」と続けていう。
頬が少しだけ赤くなった骸香は話題を変えるように質問をする。
「この時期の結婚は何か意味があるのかな?」
「……六月の幸せになるといわれているんだ」
「なるほど。それなら、早く解決しないとだめだね」
真の説明後、骸香は気合を入れる。
「さて、そろそろいこうかのう」
「エイ村のほうも出発しているはずだ」
レーヴェとカインが声をかけた。
●肉とコボルド
ゴブリンたちに襲われたのは村をつなぐ道であり、その真ん中あたりである。村の近くであれば人間がすぐに来るのがわかっているのだ。
おとりと足止め、あぶり出しなどやるマルカと晴香は緊張する。おいしそうなターキーをこれ見よがしに持っていき、どこかに置こうか悩む。風や森の様子を見て誘きだすところを捜索する。
ビイ村から来るハンターとの合流はいずれできるだろうが、トランシーバーや魔導短伝話で連絡はつく。
「聞こえますか?」
マルカは使用距離の長い魔導短伝話をまず使う。しばらくすると声が届いた。
連絡を取りっている間、晴香が軍用双眼鏡を使ってうかがっている。動き回るなら、それなりに獣道のようなものもできているだろう。
「……マルカ、何か動くものがある」
晴香がささやく。まだはっきり見えない。
風上になるか微妙であるが、うまく誘導できるように移動する馬で。
「対象と思います……ごめんなさい、まだ、ちょっとわかりません。おびき寄せるまで待機をお願いします」
マルカは連絡を入れ、注意を促した。
ゴブリン出現近くまで来ているビイ村から来たハンターは足を歩みを止めた。
「ああ、気を付けて。こちらも突撃できるよう用心する」
真は一旦通話を切り、状況を伝えた。
「どこから来るかもわかると後々いいかもしれんのう。探し物がねぐらにあるかもしれんし」
レーヴェは待機しながら双眼鏡で周囲を見渡す。
「いつでも来い、僕がゴブリンを殺す」
カインは唇をかんだ。
「うんうん、気合は十分だよ」
軽いフットワークで筋肉をほぐしつつ骸香が待つ。
静かな森。鳥の声や動物の息遣いもかすかに届く。ゴブリンから隠れるように、戦いを見るように。
マルカはターキーを置き、アクセサリーが入った袋を振った。
「装飾品に興味があるといいのですが」
軍用双眼鏡で覗いている晴香はにやりとなる。
「きらきらしているやつは垂涎の的ってやつだろうな」
「ペンダントヘッドは……」
「木彫りだからな、キラキラしてない」
「気持ちはたくさん入ってますよ」
「そうだな。見つけたいな」
晴香は何かの影を見つけた。
「肉ひとまずそのまま」
二人はターキーの香りにかからないところに隠れた。
「警戒しています?」
「かもね」
そこにおいしそうな調理済みのターキーがあるのだ。食欲と意志力を天秤にかけると、本能が強かった。
「行くぞ!」
「はい! 【スリープクラウド】」
魔法の発動を確認後、マルカは仲間に連絡を入れた。
晴香はコボルドにとどめを刺していく。
石が飛んできた。
「いてっ。ゴブリンも一緒か! 上等!」
晴香は位置を把握すると素早く攻撃を仕掛ける。マルカは石に気を付けながら、風の魔法を紡いでいく。
●ゴブはゴブ
連絡を受けた一行は急ぐ。
木々に隠れてそれらはいる。
「ちと狙うにはよくないがのう」
マテリアルを活性化させ、レーヴェは弓を引き絞り複数の矢を放った。直接当たらずとも、それらの気をそげればいい。
これを合図に、カイン、真と骸香がゴブリンに接するべく駆け抜ける。
「場数を踏んだモノを中心に徒党を組めばハンターは脅威にならないと思ったのか? 所詮は小汚いゴブリン」
カインが馬とともに駆け抜けた。かろうじて回避したゴブリンは倒されたものを見て逃げようとする。
「探している物もあるんだ、逃がしはしない」
真が試作振動刀を振う。
「鞍馬さんのおかげで狙いやすくなるね」
骸香はどこか楽しげだ。隙間を縫ってゴブリンソルジャーに近づき、鋭い蹴りを食らわせる。
攻撃されてゴブリンたちも黙ってはいない。
ゴブリンナイトが何か声を発し、前に出る。それはリトルラプターを駆けさせ、防具が薄いマルカに向かって突進する。
たおやかに見えてもハンターとして活動するだけあり、彼女は冷静に回避をした。
近くにいる晴香や矢の準備をしていたレーヴェはほっとするが、他のゴブリンたちも攻撃をしてくるため、気は緩めることは決してない。次に備えて万全を期する。
メイジが放った魔法の矢が鋭くカインに向かうが、少し頭をずらすだけで回避した。
ソルジャーによる攻撃に骸香は顔をしかめる。
「前に出すぎだ」
「このくらい問題ないよ!」
真が骸香に声をかけたが、さらりと答えられ余計に心配も生じる。ならば早く近くに行こうとマテリアルを意識する。
ハンターたちはまとまっている位置にいないが、ゴブリンを逃がさない布陣にはなっている。
「さて、こちらからも行くからのう!」
少しだけ間を詰めて、レーヴェは矢をつがえるとゴブリンナイトに向かって放つ。回避されたが、マルカからそれは離れた。
「お前の相手は僕だ!」
突進したカインはそのままゴブリンナイトに武器をたたきつける。
「すみません!」
マルカは素早く必要な魔法を紡ぎ、回避を上げるために風をまとう。
「わたしはこっちに行くぞ」
晴香はゴブリンメイジに素早く近寄り、武器を振う。メイジを倒さないとまた魔法が飛んでくるのだから。
「まとめて行くぞ」
真が振るった刀に巻き込まれたゴブリンは倒れた。真は骸香に加勢するために進んだ。
「うちを狙った、そのお返しだよ!」
骸香はゴブリンソルジャーに蹴りを叩き込んだ。ゴブリンにしては歴戦というだけあり、簡単には倒れない。それでも攻撃は効いている感触はあり、笑みが浮かんだ。
ゴブリンは反撃するも、ハンターの隙をつけなくなっていた。数がいないため、分散されるとそれぞれの力が如実に表れる。
ゴブリンでも厄介なのはソルジャーとナイトであった。それでも、ハンターたちはそちらに集中をはじめれば勝敗が喫するのは時間の問題だった。
●探し物は
ゴブリンの死体を確認する作業は、気分がいいものではない。ペンダントヘッドを探すには必要なため黙々と行う。
カインはついでにとどめを丁重に刺していく。
「要注意じゃな、生きていて反撃食らうかもしれぬし、探し物を破壊してしまうかもしれぬし」
レーヴェは注意を促しながら死体の検分をする。
「ないか」
晴香は装備を外して念入りに見る。
「ペンダントないかなぁ」
骸香も眺めて首をかしげる。
真も周囲を見渡すがそれらしいものは見つからない。
「のお、そこらへんに穴を掘っておいてくれぬか?」
レーヴェが道から外れた繁みの陰を指さした。
とどめも刺し終わったところでゴブリンを見るのも嫌な、カインが掘り始める。
しばらく穴を掘る音と探す音が響くが、これだけ探してもないといことはお手上げに近かった。
「さてと……あらかた見終わったからのう。穴に入れよう」
「持ってないとなると道で落としたのか?」
真は木々を見て、見なかったことにしたくなった。探す範囲は広すぎで、簡単に終わらないとわかる。
「荼毘に付したいが、今だと火の管理ができないからの」
レーヴェはつぶやきながら、村人に行ってあとでやってもらうことにする。目印にも墓標にも見える、メイジが持っていた杖を突きさした。
「困りましたね」
マルカは悲しそうにつぶやいた。
「何を言っておる! まだ探していないところがあるのじゃ!」
レーヴェは意地悪く笑う。
「森の中すべて……はさすがにないから……あ、ねぐらか?」
真の言葉にレーヴェはうなずいた。
「奴らが出てきた方向は分かるから、そっちにあるかもしれないな」
晴香は指をさす。彼女が最初にコボルドを見た方向だ。
「行こう!」
骸香が元気よく進む。
「確実に消すにはねぐらも見ないとな……」
カインは残されている存在もいる可能性を考え、こぶしを固めた。
奥はまで二メートルもない洞窟が木々に隠れるように存在した。ゴブリンたち全員は無理だろうから、木々にも分散して雨露はしのいでいたのかもしれない。
「森で狩りもしていたのかな?」
骸香は散らばる骨を見て首をかしげる。
「それもありうるかもしれないな。通常はこのあたりの動物を襲って食べていた。でも、人間がいいものを持っていると知って襲っていた」
真は考察を告げる。
「そうだよね。村から奪ってもたかが知れているよね」
骸香は真を見つめる。視線が合ったところでそらして、ペンダントヘッドがないか探す。
「やはりゴブリンは汚い」
中に潜むモノがいないか確認したカインは仏頂面だ。
「中にはないかのう」
レーヴェの問いかけにカインは「なかった」と告げる。
「そんな、寂しいですよね……。木でできている……森の中といっても……」
マルカは木の根元をつぶさに見ていく。
「草も生えているからな」
晴香も探すが難しそうだった。
「ありました!」
捜索を打ち切ろうとしていたところにマルカの声が響いた。
投げ捨てた用に袋がかかる灌木の、下のほうの枝にペンダントヘッドは引っかかっていた。
「興味がなくて投げ捨てたのかもな」
カインは少し表情をやわらげた。
●気持ちは花婿へ
依頼人はエイ村に、ペンダントヘッドを待つものはビイ村にいる。
ハンターはそれぞれへの報告もかねてもともと来たほうに戻る。仲間に次に会うとしたら、翌日のソサエティだと笑いあいながら。
エイ村では花嫁エルサと依頼人エリオをはじめとした村人が待っていた。
マルカと晴香が笑顔で戻ってきたため、村人は安堵した。良い知らせがあるとうかがえるからだ。
「無事退治できました」
「それと、ゴブリンたちの死体は埋めといたけど、必要なら燃やしてくれるかな?」
村人たちは一瞬嫌な顔をしたが、いろいろ考えるとうなずいた。
マルカと晴香は依頼人であるエリオと群衆から離れる。
「ペンダントヘッドは見つかりました」
「それはビイ村に届けているから……あとは式だけだな」
二人に告げられてエリオはうなずいた。
ビイ村に戻った者たちも報告する。
花婿であるオスカーは骨を折ったところを固定しつつも、ハンターを迎える村人に加わった。ハンターの無事をひとまず喜び、結果を知ってより喜ぶ。
「そうそう。無事見つけたよ!」
骸香がペンダントヘッドをオスカーに渡した。
「あ、ありがとうございます」
オスカーは悩んでいる様子だ。
「そのことだけど……決めるのはきみだから意見として聞いてほしい。ゴブリンに何かされたのが嫌だとしても、きみが作った……その時込めた気持ちはそれを超えるだけの物があるかもしれない……」
「……そうですね。こうして戻ってきたということはいいことでもあるんですよね……」
真の言葉を聞いたオスカーはうなずく。
「それに、木の枝にかかっていた。一番探しにくいところに。荷物盗った後、すぐに捨てたかもしれない」
「そうじゃのう。枝でも目の高さでもなく地面の上でもない、中途半端なところじゃった」
カインとレーヴェが状況を付け足した。ゴブリンには長い間、もてあそばれていないぞという証明にも見える。
「……そう、それをあげるか否かは、きみが決めることだ」
真はオスカーの背中を押した。
「これでようやく結婚式なんだね! どんな感じなのかな?」
骸香の言葉にオスカーは恥ずかしそうに、嬉しそうな笑みを見せた。
ゴブリンたちを挟み撃ちにすべく、ハンターは二手に別れた。
エイ村に到着したのはマルカ・アニチキン(ka2542)と西空 晴香(ka4087)。敵を逃がすつもりもなく、確実に足止めをするつもりであった。
「一生に一度の思い出になるんだ。これ以上邪魔させるかってんだ!」
晴香は鼻息が荒い。
「そのプレゼントは花嫁衣裳を飾るのに、一番必要なものですよね……絶対に見つけましょう!」
マルカの口調は静かでおどおどしているが、怒りと気迫がにじみ出る。
二人は気合を入れるように手を握る、意気込みを共有するように。
期待のまなざしを背中に一身に受け、作戦決行の時間も迫るため出発した。
ビイ村に到着したハンターたちも早速出発する。それぞれ村に到着してしまうとトランシーバーも魔導短伝話も届かない。決めた時間に間に合わなければ、作戦は失敗になってしまう。
「はよ報告が上がれば、余計な被害をかけんで済んだかもしれんの。過ぎたことは仕方がない。まあ、必要経費と考え、私らがきっちり仕事をすればいい」
レーヴェ・W・マルバス(ka0276)は幼い外見ながらも、落ち着いた様子で告げる。けが人はいても治るものであるため、過去のものと流せるだろう。
「……どんな理由があれゴブリンを生かしておけば、悪意を持ってくるだけだというのに。そして、被害をこうむるのはいつも、ただの人間だ」
カイン・マッコール(ka5336)は眉を逆立てる。誰かが戦って逃がしてしまったのか、情けをかけたのかと推測するが、ここで倒してしまえばよいのだと気を引き締める。
「めでたくてもこうゴブリンがいるとめでたさ半減だよねぇ……あ、半減どころか悲しいね」
眉がだんだん中央に寄っていく骸香(ka6223)は同行の鞍馬 真(ka5819)を見る。
「そうだな。ゴブリンという災難だ。早く式を挙げられるよう、手を尽くそう」
真は骸香にうなずき、微笑みかけた。「僕たちが倒せばいい」と続けていう。
頬が少しだけ赤くなった骸香は話題を変えるように質問をする。
「この時期の結婚は何か意味があるのかな?」
「……六月の幸せになるといわれているんだ」
「なるほど。それなら、早く解決しないとだめだね」
真の説明後、骸香は気合を入れる。
「さて、そろそろいこうかのう」
「エイ村のほうも出発しているはずだ」
レーヴェとカインが声をかけた。
●肉とコボルド
ゴブリンたちに襲われたのは村をつなぐ道であり、その真ん中あたりである。村の近くであれば人間がすぐに来るのがわかっているのだ。
おとりと足止め、あぶり出しなどやるマルカと晴香は緊張する。おいしそうなターキーをこれ見よがしに持っていき、どこかに置こうか悩む。風や森の様子を見て誘きだすところを捜索する。
ビイ村から来るハンターとの合流はいずれできるだろうが、トランシーバーや魔導短伝話で連絡はつく。
「聞こえますか?」
マルカは使用距離の長い魔導短伝話をまず使う。しばらくすると声が届いた。
連絡を取りっている間、晴香が軍用双眼鏡を使ってうかがっている。動き回るなら、それなりに獣道のようなものもできているだろう。
「……マルカ、何か動くものがある」
晴香がささやく。まだはっきり見えない。
風上になるか微妙であるが、うまく誘導できるように移動する馬で。
「対象と思います……ごめんなさい、まだ、ちょっとわかりません。おびき寄せるまで待機をお願いします」
マルカは連絡を入れ、注意を促した。
ゴブリン出現近くまで来ているビイ村から来たハンターは足を歩みを止めた。
「ああ、気を付けて。こちらも突撃できるよう用心する」
真は一旦通話を切り、状況を伝えた。
「どこから来るかもわかると後々いいかもしれんのう。探し物がねぐらにあるかもしれんし」
レーヴェは待機しながら双眼鏡で周囲を見渡す。
「いつでも来い、僕がゴブリンを殺す」
カインは唇をかんだ。
「うんうん、気合は十分だよ」
軽いフットワークで筋肉をほぐしつつ骸香が待つ。
静かな森。鳥の声や動物の息遣いもかすかに届く。ゴブリンから隠れるように、戦いを見るように。
マルカはターキーを置き、アクセサリーが入った袋を振った。
「装飾品に興味があるといいのですが」
軍用双眼鏡で覗いている晴香はにやりとなる。
「きらきらしているやつは垂涎の的ってやつだろうな」
「ペンダントヘッドは……」
「木彫りだからな、キラキラしてない」
「気持ちはたくさん入ってますよ」
「そうだな。見つけたいな」
晴香は何かの影を見つけた。
「肉ひとまずそのまま」
二人はターキーの香りにかからないところに隠れた。
「警戒しています?」
「かもね」
そこにおいしそうな調理済みのターキーがあるのだ。食欲と意志力を天秤にかけると、本能が強かった。
「行くぞ!」
「はい! 【スリープクラウド】」
魔法の発動を確認後、マルカは仲間に連絡を入れた。
晴香はコボルドにとどめを刺していく。
石が飛んできた。
「いてっ。ゴブリンも一緒か! 上等!」
晴香は位置を把握すると素早く攻撃を仕掛ける。マルカは石に気を付けながら、風の魔法を紡いでいく。
●ゴブはゴブ
連絡を受けた一行は急ぐ。
木々に隠れてそれらはいる。
「ちと狙うにはよくないがのう」
マテリアルを活性化させ、レーヴェは弓を引き絞り複数の矢を放った。直接当たらずとも、それらの気をそげればいい。
これを合図に、カイン、真と骸香がゴブリンに接するべく駆け抜ける。
「場数を踏んだモノを中心に徒党を組めばハンターは脅威にならないと思ったのか? 所詮は小汚いゴブリン」
カインが馬とともに駆け抜けた。かろうじて回避したゴブリンは倒されたものを見て逃げようとする。
「探している物もあるんだ、逃がしはしない」
真が試作振動刀を振う。
「鞍馬さんのおかげで狙いやすくなるね」
骸香はどこか楽しげだ。隙間を縫ってゴブリンソルジャーに近づき、鋭い蹴りを食らわせる。
攻撃されてゴブリンたちも黙ってはいない。
ゴブリンナイトが何か声を発し、前に出る。それはリトルラプターを駆けさせ、防具が薄いマルカに向かって突進する。
たおやかに見えてもハンターとして活動するだけあり、彼女は冷静に回避をした。
近くにいる晴香や矢の準備をしていたレーヴェはほっとするが、他のゴブリンたちも攻撃をしてくるため、気は緩めることは決してない。次に備えて万全を期する。
メイジが放った魔法の矢が鋭くカインに向かうが、少し頭をずらすだけで回避した。
ソルジャーによる攻撃に骸香は顔をしかめる。
「前に出すぎだ」
「このくらい問題ないよ!」
真が骸香に声をかけたが、さらりと答えられ余計に心配も生じる。ならば早く近くに行こうとマテリアルを意識する。
ハンターたちはまとまっている位置にいないが、ゴブリンを逃がさない布陣にはなっている。
「さて、こちらからも行くからのう!」
少しだけ間を詰めて、レーヴェは矢をつがえるとゴブリンナイトに向かって放つ。回避されたが、マルカからそれは離れた。
「お前の相手は僕だ!」
突進したカインはそのままゴブリンナイトに武器をたたきつける。
「すみません!」
マルカは素早く必要な魔法を紡ぎ、回避を上げるために風をまとう。
「わたしはこっちに行くぞ」
晴香はゴブリンメイジに素早く近寄り、武器を振う。メイジを倒さないとまた魔法が飛んでくるのだから。
「まとめて行くぞ」
真が振るった刀に巻き込まれたゴブリンは倒れた。真は骸香に加勢するために進んだ。
「うちを狙った、そのお返しだよ!」
骸香はゴブリンソルジャーに蹴りを叩き込んだ。ゴブリンにしては歴戦というだけあり、簡単には倒れない。それでも攻撃は効いている感触はあり、笑みが浮かんだ。
ゴブリンは反撃するも、ハンターの隙をつけなくなっていた。数がいないため、分散されるとそれぞれの力が如実に表れる。
ゴブリンでも厄介なのはソルジャーとナイトであった。それでも、ハンターたちはそちらに集中をはじめれば勝敗が喫するのは時間の問題だった。
●探し物は
ゴブリンの死体を確認する作業は、気分がいいものではない。ペンダントヘッドを探すには必要なため黙々と行う。
カインはついでにとどめを丁重に刺していく。
「要注意じゃな、生きていて反撃食らうかもしれぬし、探し物を破壊してしまうかもしれぬし」
レーヴェは注意を促しながら死体の検分をする。
「ないか」
晴香は装備を外して念入りに見る。
「ペンダントないかなぁ」
骸香も眺めて首をかしげる。
真も周囲を見渡すがそれらしいものは見つからない。
「のお、そこらへんに穴を掘っておいてくれぬか?」
レーヴェが道から外れた繁みの陰を指さした。
とどめも刺し終わったところでゴブリンを見るのも嫌な、カインが掘り始める。
しばらく穴を掘る音と探す音が響くが、これだけ探してもないといことはお手上げに近かった。
「さてと……あらかた見終わったからのう。穴に入れよう」
「持ってないとなると道で落としたのか?」
真は木々を見て、見なかったことにしたくなった。探す範囲は広すぎで、簡単に終わらないとわかる。
「荼毘に付したいが、今だと火の管理ができないからの」
レーヴェはつぶやきながら、村人に行ってあとでやってもらうことにする。目印にも墓標にも見える、メイジが持っていた杖を突きさした。
「困りましたね」
マルカは悲しそうにつぶやいた。
「何を言っておる! まだ探していないところがあるのじゃ!」
レーヴェは意地悪く笑う。
「森の中すべて……はさすがにないから……あ、ねぐらか?」
真の言葉にレーヴェはうなずいた。
「奴らが出てきた方向は分かるから、そっちにあるかもしれないな」
晴香は指をさす。彼女が最初にコボルドを見た方向だ。
「行こう!」
骸香が元気よく進む。
「確実に消すにはねぐらも見ないとな……」
カインは残されている存在もいる可能性を考え、こぶしを固めた。
奥はまで二メートルもない洞窟が木々に隠れるように存在した。ゴブリンたち全員は無理だろうから、木々にも分散して雨露はしのいでいたのかもしれない。
「森で狩りもしていたのかな?」
骸香は散らばる骨を見て首をかしげる。
「それもありうるかもしれないな。通常はこのあたりの動物を襲って食べていた。でも、人間がいいものを持っていると知って襲っていた」
真は考察を告げる。
「そうだよね。村から奪ってもたかが知れているよね」
骸香は真を見つめる。視線が合ったところでそらして、ペンダントヘッドがないか探す。
「やはりゴブリンは汚い」
中に潜むモノがいないか確認したカインは仏頂面だ。
「中にはないかのう」
レーヴェの問いかけにカインは「なかった」と告げる。
「そんな、寂しいですよね……。木でできている……森の中といっても……」
マルカは木の根元をつぶさに見ていく。
「草も生えているからな」
晴香も探すが難しそうだった。
「ありました!」
捜索を打ち切ろうとしていたところにマルカの声が響いた。
投げ捨てた用に袋がかかる灌木の、下のほうの枝にペンダントヘッドは引っかかっていた。
「興味がなくて投げ捨てたのかもな」
カインは少し表情をやわらげた。
●気持ちは花婿へ
依頼人はエイ村に、ペンダントヘッドを待つものはビイ村にいる。
ハンターはそれぞれへの報告もかねてもともと来たほうに戻る。仲間に次に会うとしたら、翌日のソサエティだと笑いあいながら。
エイ村では花嫁エルサと依頼人エリオをはじめとした村人が待っていた。
マルカと晴香が笑顔で戻ってきたため、村人は安堵した。良い知らせがあるとうかがえるからだ。
「無事退治できました」
「それと、ゴブリンたちの死体は埋めといたけど、必要なら燃やしてくれるかな?」
村人たちは一瞬嫌な顔をしたが、いろいろ考えるとうなずいた。
マルカと晴香は依頼人であるエリオと群衆から離れる。
「ペンダントヘッドは見つかりました」
「それはビイ村に届けているから……あとは式だけだな」
二人に告げられてエリオはうなずいた。
ビイ村に戻った者たちも報告する。
花婿であるオスカーは骨を折ったところを固定しつつも、ハンターを迎える村人に加わった。ハンターの無事をひとまず喜び、結果を知ってより喜ぶ。
「そうそう。無事見つけたよ!」
骸香がペンダントヘッドをオスカーに渡した。
「あ、ありがとうございます」
オスカーは悩んでいる様子だ。
「そのことだけど……決めるのはきみだから意見として聞いてほしい。ゴブリンに何かされたのが嫌だとしても、きみが作った……その時込めた気持ちはそれを超えるだけの物があるかもしれない……」
「……そうですね。こうして戻ってきたということはいいことでもあるんですよね……」
真の言葉を聞いたオスカーはうなずく。
「それに、木の枝にかかっていた。一番探しにくいところに。荷物盗った後、すぐに捨てたかもしれない」
「そうじゃのう。枝でも目の高さでもなく地面の上でもない、中途半端なところじゃった」
カインとレーヴェが状況を付け足した。ゴブリンには長い間、もてあそばれていないぞという証明にも見える。
「……そう、それをあげるか否かは、きみが決めることだ」
真はオスカーの背中を押した。
「これでようやく結婚式なんだね! どんな感じなのかな?」
骸香の言葉にオスカーは恥ずかしそうに、嬉しそうな笑みを見せた。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談所 マルカ・アニチキン(ka2542) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2016/06/07 19:19:42 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/07 07:51:08 |