• 詩天

【詩天】渦巻く黒、染まる鏡

マスター:剣崎宗二

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
7日
締切
2016/06/15 07:30
完成日
2016/06/24 10:30

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「く……」
 エトファリア、詩天州。
 その森の中。息を潜め、彼らは待っていた。
「落ち着きなさいよ」
「これが落ち着いていられるか!俺たちの運命はこれで…… それもこれも、奴らのせい…!」
 憤怒の眷属――合成獣である中でも多少なりとも人語を解する上位の者である彼らは、ハンターたちが彼らの主を滅ぼした事で居場所を失った。
 彼らに残された運命は、そのまま滅ぶか。――或いは、他の眷属の庇護の下に入るか。
 この者たちは、後者を選び。新たなる主の命に従い、こうして詩天にある辺鄙な村を襲撃している。
 ありていに言えば、陽動、囮、捨て駒――そう言った言葉が似合うのだが……
「……これに成功すれば、私たちは取り立ててもらえる。新たなる力をもらえるそうじゃない?」
「ああそうだ」
「だからこそ、慎重になるのよ。失敗したら次のチャンスがないのは、もう分かってるわよね?」
「もちろん。だから『助っ人』に頭を下げたんだろう?」
 その片方――獅子の合成獣は、遠くに立っている、少女に目をやる。
 だが、もう片方――孔雀の合成獣は、少しだけ目を細めた。
「……少し、心配ね」
「あ? あいつは裏切るような事はねぇだろ。そんな性格には思えねぇ」
「あたしが心配しているのは、もう片方のヤツよ」

 ――少女の後ろから、黒い布を纏った、まるで忍者のような装束の男が出現する。
 まるで、空気から現れたかのように。意識の外から、いきなり。
「確かに怪しいけどよ、実力は本物じゃねぇか」
 何せ、ほぼ全員の後ろを一瞬で取り。それぞれに1度ずつ、拳を突きつけたのだ。
 彼の前に居るあの少女ですら、反応できなかった。

「『勝てる方法』を教えられるか?」
「ククク……『負けない方法』ならば、この蛮蔵、教えて進ぜよう」
 ――それ故に少女は、男に教えを乞い、男はそれと同時に、同じように助っ人として、合成獣たちに与した。

「何かうさんくさいのよ。底が見えない、と言うか――」
「気のせいだと思うぜ」
 相方ほど楽観的にはなれない孔雀の合成獣。だがその思考は、彼らの『目的』によって遮られる
「――っと、時間のようね」
 主たちと約束した時間だ。囮の役目、果たさねばなるまい。用心はしておくべきだが、交通事故を恐れて家から出ない――そういう訳にも行くまい。

 かくして、彼らは村へと襲い掛かる。
 攻勢はそれ程密集していない。当たり前だ。合成獣らの目的は、村の壊滅ではなく、襲来するハンターたちをこの場で留めておく事なのだから。
 ――だが。

(しかし……我がご主人の目的の為には、それではいかんな)
 黒衣の男は、違う事を考慮していた。
 ――十分な『脅威』を相手に与えずにして、囮の成功はありえない。

「千影、と言ったかそこの少女。……負けない為の戦術とは、第一に――要衝を守り抜く事なり」
 その言葉だけで、少女――千影は彼の意味する所を理解した。兵が頭をつぶされれば潰退する。故に今、それをやられる訳にはいかない。
(だがしかし、守ってばかりでも勝てもせん。――それに、ご主人からからの命もあるしな。『材料を探せ』と)
 自身の領地から遠く離れたこの地まで出てきたのは、その為だ。
 ――目線の先には、獅子と孔雀の歪虚。

 ――かくして、千影が彼から目を離した一瞬の隙に、男の姿が掻き消え。
 彼は『威嚇』の為の準備を始める。
 潜行の力を持つ彼ならではの『手段』。
 先ずは――ハンターたちに本気になってもらう必要がある。篭られても、彼の本当の目的の為には『困る』のだ。

リプレイ本文

●強襲・ハンター

 戦馬に跨ったまま、歪虚の陣形を何かを探るように見渡す、アデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)。
 ――目標を見つけるのに、然程時間は掛からなかった。後方に居る孔雀の翅の動きに合わせて、下級歪虚が散開したのを見つけた瞬間。戦馬に鞭打ち、バイクを駆動させた花厳 刹那(ka3984)と共に、一直線にその歪虚の元へと向かう。
「邪魔…っ!」
 アデリシアの手から伸びる、大蛇の如く乱舞するワイヤーウィップに、堪らず下級歪虚が退避を始める。退避し損ねた一体が打ち飛ばされ、そのまま後方を走る刹那のバイクのホイールに巻き込まれる。動きを止めたそれは的でしかなく、地面に突き立てるように突き出された刹那の振動刀で即座に両断され、後ろに吹き飛びながら灰と化す。
 暴力の嵐に恐れをなしたのか、歪虚たち主を守ろうと言う意思は感じられない。
 目標たる孔雀の歪虚を目前にしたアデリシアが、武器を掲げる。
「歪虚は既存の生物にあらず、だが鳥は鳥だ。翼をもがれた鳥が人間を食えるか、やってみるがいい」
 突き出された棍は、孔雀の翅を狙い、雷撃の如く迫る!

 パン。棍はしかし、その前に滑り込んだ少女に受け止められ、地を抉る。それだけで少女が吹き飛ぶが、その姿は霧散するように消える。
 堕落者『千影闘姫』・龍道千影。
 蛮蔵の意を解した彼女は、倒されると軍が総崩れになる『頭』――つまり、二体のリーダー歪虚を防衛していたのだ。それを見て、蛮蔵は安心して姿を消して破壊活動に移ったのだから。
 生み出された分身は三体。それが彼女自身と併せ、一斉に宙に跳び、矢の如く二人に襲い掛かる。
「――っ!」
 一撃が重い。十三魔ですら、乗り物に乗った状態では受け止めきれない一撃。馬が倒れ、アデリシアが地に叩き付けられる。しかし彼女は防御と回復に優れた聖導士。その癒しの光がすぐさま、自身の傷を回復させる。
 一方、本体がアデリシアを襲ったのか、刹那に襲い掛かった攻撃は思いの他軽い。何とか振動刀で受け流し、自らバランスの取り難いバイクから飛び降り、高速のバク転で続く攻撃をかわす。
 その瞬間、バン、と言う銃声と共に、分身の一体が弾け飛ぶ。
「頭を狙えば瓦解する…と思ったんだけど、そう簡単に狙わせてくれないみたいだね」
 銃を構えていたのは白金 綾瀬(ka0774)。
 冷気を纏った今の一弾は、本来はライオン型歪虚を狙った物だ。だが気づかれたのか――分身がその間に入ったのだ。そして、その後は分身が一体、増えている。気づいた敵対者の数、と言う事か。
「…狙いにくい事で」
 千影の分身は、その見た目だけならば本体とまったく同じ。故に彼女から先に排除しようとも、本体を捉える事が難しい。綾瀬の銃撃は次々と分身を消していくが、何体か打ち倒した所で再度分身は生成され、いたちごっことなっている。風雷を放つ夜桜 奏音(ka5754)の符が更に高速で分身を消している故に、何とか均衡を保っていると言った所か。

 一方、バイクから降りて距離を離した刹那には、更に羽根の矢が降り注ぐ。孔雀の歪虚が飛ばした物だ。
 持ち前の敏捷さで横にかわし、ジグザグと、走行の慣性を生かして刀を動かしノーモーションでの袈裟斬りを仕掛けるが、やはり分身を斬り飛ばしただけ。
 ドン。強烈な拳打に、吹き飛ばされる。続いてライオン歪虚の咆哮が空気弾になり襲い掛かる。が、目の前に浮かぶ防御呪文が、その威力を低減させる。――体力を回復したアデリシアが、戦線に復帰したのだ。
 状況は依然、有利とはいえない。多数の分身を引き連れた千影と、リーダー格2名に対し、綾瀬の銃撃と奏音の風雷の援護があるとは言え、アデリシアと刹那だけでは――不利なのだ。


●雑兵掃除

「放っておくわけにはいかねぇからな…行くぜ真司!」
 直ぐ後ろについていた紫月・海斗(ka0788)の呼びかけに、柊 真司(ka0705)が答える。
 ――彼らがアデリシア、そして刹那に増援しなかったのは、理由がある。その直ぐ後ろから、退路を塞ぐ様に、下級歪虚たちが集まってきていたからだ。
 元々、歪虚側の陣形は、両端が前に出た鶴翼の陣。それに中央突破を仕掛ければ、両翼が包囲に動くのもまた当然。
「てめぇら退きやがれ!」
 海斗の銃からは弾丸ではなく、業火が吐き出される。堪らず後退した歪虚たちを、更に光の軌跡が打ち抜く。
 海斗が弱らせた歪虚を、確実にデルタレイで撃つ真司。そのコンビネーションの前に、次々と下級歪虚たちはその数を減らしていく。
 ――だが、数の差は余りにも大きい。
「ぐおぁっ!?」
 周囲を何重にも取り囲んだ歪虚たち。その内の一体が、海斗の背中に食らいついた。
 引き剥がそうと手を伸ばした瞬間。攻め手であった火炎が弱まった隙を突き、他の歪虚が真司へと飛び掛る。
「――っのぉ!」
 手をかざすと共に、展開される障壁。回避できる物は回避し、物量でどうしても無理な部分は、障壁で受け止める真司。直後雷光と共に障壁が弾け、周囲の敵全員が吹き飛ばされる。
「…く」
 だが、受け止めると言う仕組み上、真司本人にもある程度のダメージは入っている。塵もつもればの諺が如く、物量による飽和攻撃は回避しにくく、彼の体力を削っていた。だが何よりも、障壁の酷使。既に、障壁を発動する事ができないくらいに、彼は追い込まれていたのだ。そんな真司の疲労を目の当たりにしたのか、障壁の爆発で麻痺しなかった何体かが、彼へとゆっくりと迫る。
 その瞬間。
「固まっているようですし、手っ取り早く殲滅させてもらいますね」
 展開される符の陣。それらの符から放たれる閃光が、歪虚たちの目を晦まし、真司に回避の隙を作る。
「ありがとな!」
 その機に窮地を脱し、デルタレイで目がくらんだ輩を打ち倒した真司が符の主――奏音に礼を言う。

 一方、海斗の背後に張り付いた歪虚は――
「はーい、ちょっとだけ止まってくださいね」
 声に従い、一瞬動きを止めると、その瞬間銃声が響き、背後にしがみついた歪虚が滑り落ちる。
 ライフルのスコープを覗き込んでいたのは、アメリア・フォーサイス(ka4111)。
 続く弾丸が、周囲一帯の敵を一気に排除していく。

 ――後衛陣の援護により、戦況は大きくハンターたちの方へと傾いた。リーダー対応側は不利とは言え、雑兵どもを片付けた真司、海斗が増援すれば、また状況は変わるだろう。
 だがその瞬間。村の中に――火の手が上がった。


●潜みし者

「そこですか…」
 いち早く反応したのは奏音。ばら撒かれた符が燃え上がった家の入り口を取り囲み、その中を光が反射する。…だが、手ごたえはない。
 次の瞬間、彼女の背後に黒い影が出現し、燃え盛る片手を、彼女の背に翳す!
 ――手に映る文字は、『火』。それにもう片方の手…『暴』が映る方を重ねたその瞬間。猛烈な爆風が、奏音を吹き飛ばし、壁に叩きつける!
「く…!」
 握り締めた符。本来はこれで桜の幻影を作り、奇襲を遮る予定であった。
 だが、その術は『敵が攻撃を回避した際に』発動される物。故に完全に先手が取られ、先制攻撃のチャンスがない状態では回避には使えない。
「来ましたね…!」
 蛮蔵を待ち構えていた白神 霧華(ka0915)は、即座にバイクを駆動させ、そのまま蛮蔵への突撃を敢行する。猛牛の如く接近する鋼鉄の塊に蛮蔵は回避を余儀なくされるが、それは即ち奏音への攻め手が弱まる事を意味し、彼女に体勢を立て直す隙を与える事となる。
「ほう……」
 頬を掠めたのか、伝う一筋の血。それはハンターたちに、一筋の希望をもたらす。
 ――敵もまた、無敵ではない。
「出て来たわ」
『分かった。…今行くぜ!』
 前線に居た真司への連絡を切ると、綾瀬は再度、木の上から、蛮蔵に狙いを定める。
「そこっ…!」
「ふん…!」
 綾瀬の銃から冷気の弾丸が打ち出される直前、両手を交差させる蛮蔵。示された文字は『風』『具』。
 旋風が巻き起こる事で綾瀬がバランスを崩し、放たれた弾丸は大きく上に外れる。
 だが、同時に風の渦の範囲から外れ、一気に引き寄せられはしなかった。
「漢字に由来する能力を使っているの…? なら…!」
 転がりながら地に伏せ、距離を離しながらもライフルを構えたアメリアが狙うのは、腕に浮かぶ漢字。若しもあれが魔法機械ならば、破壊してしまえば技が発動出来ないはずだ。
「ムゥ?」
 カン、と言う金属音を立て、弾丸は弾かれる。腐っても『武器』兼『防具』。そう簡単に砕けないと言う事か。だが、銃撃によって文字の一つが掻き消えた事で、一瞬、蛮蔵の攻撃は遅れる。
「オラァァァ!」
 突撃の勢いそのままに、放たれる火炎の波。すれ違いに真司が放ったそれは、チリチリと蛮蔵の体を焦がす。
「ムゥ…それでこそ…!」
 強引に両腕を動かし、交差させる。浮かんだ文字は合わさり『峰』に。
 瞬間、巨大な岩が彼の眼前に構成され、それを盾として構え強引に突進する。
 岩の前端は鋭く尖っており、一直線にアメリアへと向かっていく!
「っ…!」
 放たれる銃弾。それは敵にダメージを与える為の物ではなく、攻撃を弾き、逸らす為の物。
 が、弾丸が岩に接触した瞬間、それは岩と一体化し、飲み込まれる。
 ――妨害射撃は飽くまでも『物理攻撃』を弾く為の物。魔法攻撃に対しては、無力なのだ。事前情報にあった通り、蛮蔵が操るのは自然現象――魔法なのだ。
「うぁぁ!」
「このぉ…!!」
 突進に轢かれたアメリアを助けるべく、火炎を放つ真司。だが、蛮蔵がアメリアに近づいた今、真司の範囲攻撃は――アメリアと、近くに居た奏音をも巻き込んでしまう。
「けど…今ならっ!」
 攻撃を仕掛けたこの瞬間ならば、発動は可能。炎に焼かれた符の灰が、桜の花びらとなり、霧華の突撃をサポートする。
「ぬぅぅ…!」
 回避出来ず、大きく吹き飛ばされる蛮蔵。空中で両手を交差させ、再度『風』『具』を表示させる。
 浮かんだ彼を、地上から狙う綾瀬。
 彼女自身に向けて放たれた旋風を妨害射撃で迎撃しようとするも、魔術であった為効果は出ず、空中に引き寄せられてしまう。
「なら…!」
 至近距離だとライフルは発射できない。拳銃に持ち変える。充填するは冷気の弾丸。直接その体に銃口を押し付け、引き金を引く。
「ぬぅ…っ!」
 纏わりつく冷気に動きが鈍る。このままでは、地上で待ち構えている遠距離組に狙撃されるのがオチだ。
「ククク…この程度で…!」
 噴出する炎。そこに映し出される『火』の字。逆の手に映される『包』の字を重ねると、両手を同時に綾瀬の腹部に突きつける。
 炎が、冷気を中和していく。打ち出される無数の火弾が、一帯を焼き払っていく。


●崩壊

 二対三。不利な状況に於いて、アデリシアと刹那は善戦していた。
 『状況に変化がなければ積極な攻勢はない』と言うのは、即ち状況が変われば積極的な攻勢に出る可能性があると言う事。それ故に――蛮蔵は村に火を放ち、『敵の後ろを取り、戦果拡大のチャンスあり』の状況を作ったのだ。
 そして、蛮蔵の出現に気を取られ、後衛陣の狙撃援護が断たれた今。戦力の天秤は更に傾いていた。特に奏音の風雷が断絶した事により、分身の消去速度が激減したのが大きい。
「はぁぁ…!」
 分身による連打に紛れ、千影本体の拳が、すれ違うようにアデリシアに打ち込まれる。体勢を崩しながらもワイヤーが千影の片手を絡め取るが、直後、無数の羽弾が彼女の全身に突き刺さる。
「アデリシアさん…!」
「そうはさせねぇぜ!!」
 救援に行こうとした刹那だが、その前に立ちはだかる獅子の歪虚。
「…邪魔しないでくださいな!」
 体を影と化し、回避と共に放った一閃が、獅子の右腕に深い傷を付ける。怯んだその隙に、更に振りぬいた遠心力を利用し、振動刀を大きく一周させ、更にその腕の傷を狙う!
 パン。砕け散ったのは、千影の分身。傷を狙って重傷化させるのが刹那の戦術だったが、分身はどうせ使い捨て…持続するような傷は存在しない。
 三対一。降り注ぐ分身と羽弾。そして、先ほどの一撃で学んだのか、獅子の歪虚も遠距離からの咆哮攻撃に集中している。飽和攻撃の前に――刹那もまた、倒れたのだった。

 ――この状況を呼んだのは、『千影が防衛に取り掛かる事を殆ど想定せず、その対処がなかった事』そして『戦力の分散』である。後衛が蛮蔵に注意を取られた場合、前衛の数が著しく減退する陣形を、ハンターたちは取っていたのだ。

「ち…こりゃちぃっと…!」
 真司が後退した事で、海斗もまた窮地に立たされていた。
 最初に数を減らしたお陰で、下級歪虚の群れ相手ならば、彼一人でも多少の有利が取れる。時間を掛ければ全滅させる事も可能だろう。が……
「遅かったわねぇ…」
 羽弾が降り注いだかと思うと、次の瞬間に獅子の歪虚が彼に飛び掛っていた。
「離せこんにゃろう…!」
 動かせる片腕を強引に引き、獅子の体に突きつけた銃口から炎が迸り、それを押し出す。
 だが、直後。炎を割り、空中に千影の姿が現れる。分身を盾として使って強行突破したと言うのか。そのまま、押し倒された状態から起き上がれていない海斗を、強烈な踏みつけが襲う!

「ぬぅ…!貴様ら…」
 ――一方、後衛側。こちらに於いては、ハンターたちの有利であった。
 蛮蔵は確かに強敵ではあったが、手馴れのハンター五人で有利が取れないほど、超越した強者でもない。
(「ここは奥の手を――使わざるをえんか…!」)
 両拳を突き合わせ、浮かび上がるは『日』『月』の文字。
 瞬間。彼に纏わりついていた、黒い靄のような物が晴れ、その後ろに二つの影を作る。

 突進。岩の壁を前にした彼が狙うは、符を準備していた奏音。
「動きを制限されるわけにはいかぬのでな…砕かせてもらうとしよう!」
 妨害射撃が彼の術式に効かないのは確認済み。故に通常弾で彼を狙うアメリア。然し、それは岩の壁に弾かれる。
「なら…!」
 霧華のバイクによる突進が、正面から激突せしめんと、蛮蔵に迫る。
「邪魔をするな小童…!」
 後ろの影の一つの腕に『風』『具』が浮かび上がり、風の渦が突進の軌道を逸らす。迫る蛮蔵を、光の符が取り囲むが――
「フン…!」
 合わさる字『烽』。煙が一帯を包み込み、視界を遮る。その隙に――岩の盾の先端が、奏音に突き刺さった。

●破壊の跡

 戦力差からハンターたちが撤退した後、舌打ちする蛮蔵。
 ――本来、ハンターたちと憤怒歪虚を全力で激突させ、弱った憤怒の歪虚を捕獲するのが彼の計画。だが、ハンターたちがその戦力の殆どを彼自身に集中させて来た事で、その計画は破綻したのだ。
「ままならぬものだな。…まぁいい。ご主人の様子を見てくるとしようか。また何か変な物を『生成』していなければよいが」
 シュッ。黒い靄がその姿を包み、彼は闇の中へと、消えていった。 

依頼結果

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MVP一覧

  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音ka5754

重体一覧

  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音ka0746
  • 《死》の未来を覆す奏者
    白金 綾瀬ka0774
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那ka3984
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音ka5754

参加者一覧

  • オールラウンドプレイヤー
    柊 真司(ka0705
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 戦神の加護
    アデリシア・R・時音(ka0746
    人間(紅)|26才|女性|聖導士
  • 《死》の未来を覆す奏者
    白金 綾瀬(ka0774
    人間(蒼)|18才|女性|猟撃士
  • 自爆王
    紫月・海斗(ka0788
    人間(蒼)|30才|男性|機導師
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華(ka0915
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • 紅花瞬刃
    花厳 刹那(ka3984
    人間(蒼)|16才|女性|疾影士
  • Ms.“Deadend”
    アメリア・フォーサイス(ka4111
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士
  • 想いと記憶を護りし旅巫女
    夜桜 奏音(ka5754
    エルフ|19才|女性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/11 23:13:34
アイコン 相談用
花厳 刹那(ka3984
人間(リアルブルー)|16才|女性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/06/14 22:02:42
アイコン 質問卓
夜桜 奏音(ka5754
エルフ|19才|女性|符術師(カードマスター)
最終発言
2016/06/13 10:06:41