• 詩天

【詩天】流浪の侍

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~7人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/06/12 07:30
完成日
2016/06/20 06:06

このシナリオは5日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●詩天に至るある街道にて
 ある商人が必死になって街道を走る。
 命あってのなんたらと言うが、まさしく、その通り。
 荷車を引いていた馬には悪いが、突如、襲い掛かってきた雑魔から、馬を置いて逃げている最中なのだ。
「な、なんで、こ、こんな街道に、雑魔が!」
 転びそうになるのを耐えて走る。
 商人は天ノ都から詩天と呼ばれる地方へと商品を運んでいた。
 東方が歪虚王獄炎から解放されて、少しは安全になったはずであるのにも関わらず、詩天に向かう街道の一つで雑魔が出現したのだ。
「や、やっぱり、呪われた土地なんだ」
 そんな言葉を口走りながら振り返る。
 馬を平らげた雑魔が迫っていた。
 牛の頭を持つ巨人のような姿をしているそれは、心が凍えそうになるような叫び声をあげていた。
「お、お助け~!」
 商人は身を持って知る事になる。
 詩天が一部の者達に忌み嫌われている事を――死天と呼ばれる事を――。

●天ノ都
 順調かどうかはさておき、都の復興は止まる事なく続いている。
 そんな都のある一角でちょっとした騒ぎが起こっていた。
「俺らが越地家の者と知っての事か!?」
 如何にもガラが悪そうな男が数名で、若い娘を囲んでいた。
 少し暑い日なので打ち水をしていた女性が誤って男の足元に水を撒いてしまったからだ。
「そ、そんな事はございません。お許し下さい」
 必死に頭を下げる女性を庇うように別の女性が姿を現す。
「うちのもんが不手際して申し訳のうございます」
 娘が働く飯屋の女将であった。
 越地家の者と名乗った男達はニタニタとした顔で近寄って言った。
「おうおう。どうしてくれるんだ。これはなぁ、高かった草履なんだぞ」
「誠に申し訳ございません」
「謝って済むってもんでもねぇんだよ!」
 威圧するような男達の態度に回りで様子を見守っていた野次馬も静まる。
「なんだったら、そこのむす……い、いだだだだ!」
 娘を差した指が、突如と現れた侍によって天を向き、しまいには自身に指先を向けられた。
 慌てて手を払うと涙目になりながら突然現れた侍に叫ぶ。
「なんだてめぇは!」
「……この店の常連だ」
 侍はボロボロの袴姿だった。灰色の長い髪はボサボサに広がり、黒い瞳で男達をぼんやりと眺めている。
 腰には飾りっ気が全くない鞘を差していた。
「ふざけんな!」
 柄の悪い男が刀を抜いて上段に構えた。
 野次馬から悲鳴やらなにやら叫び声が上がる。
「侍のにぃちゃんよ! 痛い目みーや!」
 振り降ろされる刀。
 だが、次の瞬間、痛い目を見たのは柄の悪い男だった。
 侍が目にも止まらぬ速さで男を地面に叩き伏せたのだ。
「こう見えて、私は三十路を過ぎているのだが……侮辱もいい所ですね」
 刀を鞘ごと手に取った侍が男を見下ろす視線は冷たく、恐怖を感じて柄の悪い男共は捨て台詞を吐きながら逃げていった。

●流浪の侍
「タチバナさん、ありがとうございます」
 騒動が終わって女将が侍に感謝を伝えた。
 タチバナという名の侍は、静かに頷くと優しげな微笑みを湛えながら、店の中に入っていった。
 様子を見守っていた野次馬が女将に話し掛けてきた。
「いやー。女将、どうなるかとヒヤヒヤしやしたぜ」
「あんた、見てたのに助けに来ないとか、良い度胸だね」
 苦笑を浮かべて応える女将。
「いや、俺も、俺もね。いこーと思ったよ。けどよ、タチバナさんが行ったからよぉ。ここは、余計な真似しちゃいけないと思って」
「そりゃ、あんたじゃ、タチバナさんの足手纏いが良い所だ」
「だろ? それにしても、いつになったら仕官先見つかるのか。タチバナさん、ボーっとしている時が多いからなー」
 店の中を覗き込みながら野次馬が言った。
 タチバナという侍は、畳に腰を降ろし、店の娘が持ってきたお茶に手を伸ばして――熱かったのか、口につける前にそっと戻す。
「あんたと違って、タチバナさんは良い男なんだけどねー」
 謎の多い侍である事は確かだ。
 分かっているのは、仕官先を探している流浪の侍であるという事。刀の腕は計り知れないという事。年齢不詳な所。そして、整えれば絶世のイケメンであろう事。
「そういや、タチバナさんの刀の腕を見込んで、仕事を頼みたいっていう人が居たんだった」
 野次馬は用事を思い出し、かけうどんを待つ侍へと話し掛ける為に、店の中へと入ったのであった。

リプレイ本文

●流浪の侍
 同行者であるタチバナがハンター達と合流したのは、詩天に至る街道での事であった。
 全員で挨拶を交わした所で、天竜寺 詩(ka0396)が宣言するように言った。
「私と同じ名前のついた土地だから、やっぱり気になるよね」
 偶然か、運命なのか、不思議な事もあるものだ。
 もっとも、『詩天』――してん――であり、詩――ウタ――なのだが……。
「『死天』なんて、言われない様、しっかりと雑魔は退治しないとね」
「詩天は古くから符術に関わりのある事が多いと聞きます。詩とは祈りの言葉を表しているかもしれませんね」
 タチバナが詩の言葉に頷きながら言った。
 その様子を、僅かに首を傾げながらチョココ(ka2449)がタチバナを凝視しながら呟く。
「んー。タチバナ様って誰かに似ていなくもない気もするのですの」
 タチバナは微笑を浮かべてチョココに応えた。
「世の中には似ている人が3人はいると、聞いた事があります」
「んー」
 なおも気になる様子ではあったが、今は依頼の事が優先されると思って、手にしていたおやつを仕舞い、双眼鏡を取り出した。
「街道に出没した雑魔を退治して、周辺の調査も行って、安全を確保するのですの」
「よろしくお願いします」
 やる気溢れるチョココに軽く頭を下げたタチバナに向かってアルマ・A・エインズワース(ka4901)が瞳を輝かせて迫る。
「僕、アルマって言いますっ。よろしくお願いしますー」
 尻尾があれば物凄い勢いでぶんぶんとしているだろうと容易に想像できそうな雰囲気だ。
 タチバナは微笑を変えずに丁寧に応じる。
「元気なハンターの皆さんで」
「わふ?」
「いえ、深い意味はありませんよ」
 アルマも不思議な人だが、同様にタチバナという侍も不思議な雰囲気の持ち主だった。
(こちらのお侍さんは初めてお会いしますが……)
 和泉 澪(ka4070)が侍の姿をみつめながら心の中でそう思っていた。
 幕末志士というか、時代劇からそのまま出てきたような、そんな立ち姿ではある。
(なんだか幕末の時代に来た感じがしますね)
 噂によると刀の達人だとか……パッと見、そんな感じはしないが、底の知れない微笑に澪は唾を飲み込む。
 そんな中、辺りをキョロキョロと興味深く眺めている者――仁川 リア(ka3483)――が落ち着きなく言った。
「未知の場所! 未知の文化! 旅人の血が騒ぐね。雑魔を倒したら、色々見てみよっかな」
 生粋の旅人である彼の目に映る光景は、彼の旅人根性を刺激しているようだ。
 ここは詩天に至る途中の街道である。彼の地は、ここよりも雰囲気がもっと違うかもしれない。
「東方がそんなに珍しいですか? 俺は此方に足を踏み入れるのは久しぶりですね」
 黒髪から二本の角――1本は途中で折れている角を持つ鬼が、リアと同じように周辺を眺めながら言った。
 閏(ka5673)である。東方出身の鬼である彼にとっては、馴染みのある風景だ。
「きみは鬼だったね」
「まさか、また東方の地に赴く事になるとは思いもよらなかったです」
 これもまた巡り逢いというものかもしれない。
 大太刀を握り締めながら皆守 恭也(ka5378)も辺りを見渡していた。
「未熟な身だが、故郷の隣人が困っているのなら、黙って座している訳にもいかないな」
 東方の武家出身である恭也にとっては、故郷の出来事は身近な事である。
 困っている人がいれば、お互い様だ。そんな彼にタチバナが声を掛けてきた。
「武家の者……ですか?」
「綿狸家に仕える分家の者だ」
「……左様でしたか」
 そんなタチバナの反応に恭也は頭の中で疑問符を掲げた。
 流浪の侍らしいが、なぜ、武家の事を尋ねたのだろうか。

●討伐
「動きを阻害しますの」
 杖の先端から、マテリアルの氷の矢が牛の頭を持つ巨人の雑魔へと放たれる。
 それを雑魔はぶっとい腕で、文字通り『薙ぎ払った』。雑魔は傷一つついていない。
「んじゃ、隠してる技を引きずり出してあげようか!」
 なにか特殊な能力を持っているのではないかとリアは魔導拳銃を構えて前に進み出る。
 その横を、幻影の黒衣を纏ったアルマが並んだ。彼の牙は鋭く、紅い瞳は見開き、雑魔を見つめていた。
「アッハハハハハッ!」
 ペロリと出た舌が狂気じみていた。
 先程までの愛玩動物的な雰囲気からの一転した様子に、タチバナは驚いたような表情を浮かべる。
「これは……狂犬というべき程、ですね……」
 戦闘狂という人種もハンターの中にはいるというが似たような性質なのだろうか……。とりあえず、彼が敵でなくて良かったと思う一行の面々。
 最前線に出て雑魔の動きを注意深く観察しながらアルマは言い放つ。
「三枚おろしとハチの巣、どっちがお好みですかねェ!?」
 対して、戦う気があるのかないのか、タチバナは太刀をだらりと下げてままだった。
 一方、澪も雑魔の動きを観察していた。
 雑魔は無駄な動きが多いようである。洗練されている様子はなく本能のまま暴れているようだ。
「まずは、敵の力を見ましょうか。体格はあるみたいですが……」
「ミノタウロスみたいな姿だよね」
 詩が防護の魔法を澪に掛けながら言った。
 牛の頭を持つ怪物だが、正しく姿形だけで言えば、そんな認識通りだろう。
 その雑魔の側面に回りながら、恭也は大太刀を油断なく構えていた。
「仲間の動きに合わせ、一気に切り込めるようにしておこう」
 物理的な攻撃だけではなく、精神的な抵抗力が必要な、特殊な能力を使われる可能性はあるからだ。
 杞憂かもしれないが、こんな時こそ、慎重に挑む必要がある。
「……どんな能力を使うかわかりませんが、油断は禁物ですね……」
 閏は符を掲げた。
 迸る炎が雑魔を焼いた。反撃か、雑魔は大きく息を吸い込む。
 そして、口から負のマテリアルを噴出しようとしたその時、そのマテリアルをチョココが操作した。
「カウンターマジックですわ」
 どんな能力を放ってくるかわからないが、魔法スキルであれば、無効化できる。
 チョココの機転で雑魔の攻撃の機会が流れたのをハンター達が見逃すはずがない。
 最初に、澪が跳ねながら立体的な動きで雑魔へと斬りかかった。
「これで崩します! 鳴隼一刀流、隼旋斬!」
 遠心力が加わった一撃は雑魔の体に深く傷跡を残した。大きく揺らめいてバランスを崩す雑魔。
 呼応するようにリアも踏み込む。
「牛さんこちら、手のなる方へ! ってね。まぁ、これは銃撃音、だけどさ!」
 気を引いた効果はあったようだ。
 体勢を崩しながらも雑魔の反撃――ぶっとい腕を突き出して来た。
「援護します!」
 閏が投げつけた符が鳥の姿となり、雑魔の攻撃を受け止めて消え去る。
 符術による防御魔法である。
 勢いが弱まったのもあり、リアは盾でしっかりを雑魔の攻撃を受け止めた。
「怪我をしても、私が治すからね」
 杖を構えて詩が仲間達に呼び掛ける。
 聖導士の回復の力があるとないとでは戦い方にも差が出る。
「俺も斬りかかる。タチバナ殿も!」
 雑魔の死角に回り込みながら恭也が水平に構えた刀を突き出しながら踏み込んだ。
 だらりと刀を構える様子もなかったタチバナも、恭也の攻撃に合わすように刀を突き出した。
 多方面からの攻撃に雑魔の動きが一瞬、止まる。
「三枚おろしに決定」
 機導術の蒼い光の刃を振るうアルマ。
 高笑いと共に繰り出されたその強力な一撃は雑魔を粉砕した。その様子を見てリアが呟く。
「……あの雰囲気は、戦闘してる時はいつもああなの? なんていうか……凄いね。その、変わりようが」
 その言葉にタチバナも頷いていた。

●探索
 雑魔を倒し、ハンター達は分かれて周囲を探索する事となった。
 詩はペットの犬――牡丹――と共に草原を調べていた。負のマテリアルは感じられない。
「スコップも持ってきたけど……」
 あまり必要はなかったみたいだ。
 その時、牡丹が何かを見つけたようだった。繰り返し吠えている様子だった。詩は愛犬が示した場所で、あるものを見つけた。
「これは……馬の足跡なのかな?」
 それも複数が草原を駆け抜けていたようだった。
 街道は比較的近い。わざわざ、草原を走る必要はないはずなのに、だ。

 川を探索していたチョココは水の上を歩く。
 超人ではない。魔法で水の上を歩けるようにしているだけだ。
「綺麗な川だと思ったら、意外と汚れているのです」
 ゴミを拾いながらチョココはそう言うと上流を見つめる。
 そこは湿原となっているはずであり、仲間が探索に向かった場所でもある。
「もっと上流へ行ってみるのです」
 最中、ゴミを拾いながら彼女は水の上を歩いていくのであった。

 『松葉さん』という名の式神が湿原を待っていた。
 閏が探索の為に放っていたものだ。今は恭也と共に湿原のある場所にたどり着いていた。
「どうやら、湿原の汚さはこれが原因のようだが……俺は周囲を警戒しておこう」
 大太刀を構えて恭也は周囲を注意深く警戒する。
 足元の湿原は汚れた水が流れていた。
「……これは、知らせなければなりませんね……」
 険しい表情で閏は言った。
 二人が見つけたのは、魔導装置の残骸の山であった。
 これは放置しておくとマテリアル異常を起こし、雑魔を発生させる場合もある。
「美しい自然になんという事を」
「わざと……にしては、どうも怪しいな」
 憤慨している閏に恭也は頷いたのであった。

「僕、ちょっと登って上から探してきますっ! でも、遠くに行ったらやですよ?」
 戦闘中に見せていた一面は嘘のようにアルマが同行しているタチバナに向かって言うと、木の上に登った。
 林での探索に赴いており、見晴らしが良い所から周囲を確認するつもりなのだ。
「これは……一面、林……では無い所があるようです」
 アルマは林の一角が開けている場所を見つけた。
 その場所で二人は魔導装置が大量に打ち捨てられているのを見つけるのであった。

 荒地を探索していたリアは岩の高い所で周囲を見渡していた。
「ここら辺は、辺境と似てるんだね。僕の故郷の近くもこんな感じだったよ」
 目を凝らし注意深く観察するが、やがて、不自然な点に気がついた。
 いくつもの馬の足跡をみつけたのだ。その中に、明らか、馬でも人でもない物が見つかった。
「これは……さっきの雑魔の足跡?」
 馬の足跡を追いかけるように巨大な足跡が街道に向かっていた。

 茶屋で情報を集めていた澪は、今は全員の帰りを待っていた。
「全員バラけてしまいましたが、大丈夫でしょうか……。心配です」
 不審者がいたかどうかは分からないものの、雑魔の出現はつい最近もあったという。
 となると、探索に出ている仲間達が雑魔を発見する可能性もある。
 よほどの事がない限りは雑魔如きに遅れを取るとは思えない面々ではあるが……。
「詩天で、新しく創設された即疾隊の話……タチバナさんへのお土産話にはなるでしょうか」
 そんな事を思いながら、澪は仲間達の帰還をお茶と団子を用意しながら待つのであった。

●茶屋にて
「美味しいお茶なのです」
「団子の甘さとピッタリですね」
 チョココと詩が茶屋で用意されたお茶と団子を口にしてそんな感想を口にした。
 お茶の渋さと団子の甘さが絶妙のハーモニーを作り出していた。
「これは、おかわりが欲しいと思いませんか?」
「そう、思います」
 タチバナの言葉にアルマがコクコクと頷きながらお茶をズズーと飲んだ。その様子を嬉しそうに微笑を浮かべながらタチバナは茶屋の主に全員分のおかわりを告げる。
 すっかりタチバナの横で寛いでいるアルマに苦笑しつつリアが集めた情報を整理していた。
 探索の結果と内容を地図に直接書き込んで印をつけていたのだ。
「魔導装置の不法投棄が二箇所、馬の足跡が二箇所、その内、僕の所では雑魔らしき足跡を含む……という事だね」
 いずれも街道から遠く離れすぎていない事が判明した。
 むしろ、地図に落とし込むとなにかしらの意図があるのではないかと勘ぐりたくなる。
「……詩天に至る街道で、という所が気にかかるな」
 恭也の台詞に追随するように閏は頷くと、タチバナに向かって尋ねる。
「俺は、詩天出身ではないのですが、どんな所なのでしょうか?」
「詳しくは私も知らないですね。符術の盛んな地域……という話は聞いた事はありますが」
 微笑を浮かべながら、お茶が冷めるのを待つタチバナが答えた。まだ一杯目というのにだ。
 今の流れとは関係ないが、どうも、この流浪の侍は、ネコ舌らしい。
 澪はその様子を見て、タチバナに新しいお茶を勧めるのを止めた。
「リアさんの見つけた雑魔らしき足跡が馬を追いかけていたようだという事らしいですが、街道で襲われた商人は、街道から外れてはいないとの事でした」
「すると、襲われた商人さんは、偶然にも出くわしたという事なのかな?」
 新しく煎れたお茶を澪から貰いながら詩が素朴な疑問を言う。
 とすると、荒地で雑魔に追われていたであろう馬の存在は、なんだったのだろうか。
「不幸なのです」
 チョココの率直過ぎる感想に一行は頷く。
「歪虚の気配はありませんでしたね」
 残念そうにアルマが言った。
 確かに、彼の言う通り歪虚の気配は周囲にはなかった。
 となると、雑魔を操る存在がいなければ、雑魔が街道に現れたのは単なる偶然なのだろうか。
「追われていた人が、雑魔を連れて街道まで出てきたのか」
 恭也の考えが自然な発想だろう。
 だが、それを言った彼自身が自らの言葉に納得していない様子であった。
「不法投棄も気になります。最悪、マテリアル異常を引き起こして、雑魔が発生する可能性が出てしまいます」
 険しい表情で閏が言った。
 詩天に至る街道の周りで、これだけ不自然な事があるという事実が、違和感を感じさせていた。
「とりあえず、この街道を通る時はしっかりと護衛をつけないとな」
 リアがまとめるように言った所で、ようやくお茶を口にしたタチバナ。
 音の無くゆっくりとお茶を飲み終え、流浪の侍はハンター達を見渡した。
「では、雑魔の討伐も終わった事ですし、周囲の確認も済みました。今日はこれで、帰りましょう」


 ハンター達は街道に出没した雑魔を討伐。流浪の侍、タチバナと共に周辺も調査を行った。
 不法投棄は役所へと伝えられ、この街道を通る時は護衛をつける事が推奨される事となった。


 おしまい。


●街道脇にて
 天ノ都へと帰還する一行を遠くから見つめる『影』があった。
「あのニンゲン共も、探していたようだけど……」
 さすがに何を探していたのか尋ねに行くわけにもいかない。
 それに、ニンゲンが強い存在というのは、よく知っているつもりだった。下手に手を出そうものなら、返り討ちにされるだけだ。
「僕の大事な駒……どこいっちゃったんだろ……せっかく、西方の妖怪の真似して作ったのに……」
 残念そうに呟くと、『影』は掻き消えるようにいなくなったのであった。

依頼結果

依頼成功度大成功
面白かった! 8
ポイントがありませんので、拍手できません

現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!

MVP一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩ka0396
  • 大地の救済者
    仁川 リアka3483
  • Centuria
    和泉 澪ka4070

重体一覧

参加者一覧

  • 征夷大将軍の正室
    天竜寺 詩(ka0396
    人間(蒼)|18才|女性|聖導士
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 大地の救済者
    仁川 リア(ka3483
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • Centuria
    和泉 澪(ka4070
    人間(蒼)|19才|女性|疾影士
  • フリーデリーケの旦那様
    アルマ・A・エインズワース(ka4901
    エルフ|26才|男性|機導師
  • 律する心
    皆守 恭也(ka5378
    人間(紅)|27才|男性|舞刀士
  • 招雷鬼
    閏(ka5673
    鬼|34才|男性|符術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/07 18:15:59
アイコン 相談卓
仁川 リア(ka3483
人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2016/06/11 16:09:05