ゲスト
(ka0000)
自信の根拠
マスター:波瀬音音

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/21 12:00
- 完成日
- 2016/08/08 17:58
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
わたし、ハンターに向いていないんじゃないだろうか。
●
とある森で、ハンターたちが雑魔と戦闘を繰り広げていた。
そしてその様子を、森の外から見守る少女がいる。
(ううう……何でこんなことに……)
響き渡る剣戟や魔法などの戦闘音、怒号を耳にする度、身の縮む思いがする。
というのも、本来なら今のように森の中で戦闘をするはずもなく。
その原因がまず間違いなく自分にあるのを、少女――ミレイユ・ブランヴィルも自覚しているからだ。
彼女も猟撃士として、雑魔の討伐に参加していた。
大型かつ肉食の鳥類が歪虚化した雑魔。空中から舞い降りてくる敵に対し、遠距離をメインに戦えるのは彼女一人だった。
それでも、地上に叩き落とせば十分に勝機は見える筈、だったのだけれども。
結論から言えば、猛烈な勢いで飛びかかってくる雑魔に対し、竦み上がってしまった彼女は何も出来なかった。
雑魔に傷を与えることは他のハンターの身を削った努力で出来たものの、動きを抑えるのがままならなかった為、上空から近くの森に逃げ込まれてしまったのである。
そこから先はハンターも雑魔も、深い森に視界と動きを制限された泥沼の戦いとなり。
攻撃手段を弓と銃しか持たないミレイユには、まともに射線も通らない場所では役目はなかった。
それでもなんとか戦闘に勝利し、ハンターたちは報酬を受け取る。
彼女もまた、申し訳ない気持ちしかないながらもそんなハンターたちの一団の中に居た。
「……わたしの分は、皆さんで使ってください」
一通りの手続きを終えた後、気持ちを体現する。
ミレイユは俯きながら自らの手取りを同行したハンターたちの前に差し出した。
他のハンターたちの反応はといえば、
「それなら遠慮無く」
「まぁ……あれだ、こういうこともあるから、あまり気にしないほうが」
目に見えるものは様々だったけれども、彼女の言葉の真意に異を唱える者はいなかった。
前者などは、「もうお前とは一緒に仕事したくない」などと言わんばかり。
正直、直接言われないだけマシだった。
一番何もしていない筈なのに疲れきり、宿に着くなり簡素なベッドにうつ伏せに突っ伏す。
これまでにも依頼は何度か受けているけれども、本格的に戦闘をする必要があるものは今回が初めてだった。
ハンターとしてやっていく自信が何となくつき始めたところの、この有様である。
いや、不安は正直あったのだ。戦いの役に立てるのだろうか、と。
でも実際はどうにかなると思っていた。
過信だった。
というか、そもそも自分が「持ち始めていた」ものが自信だったのかどうかさえ分からない。
どうしよう……。
これじゃ、到底ムリだ。
彼女の脳裏に今もこびり付いているとある光景を、今一度鮮明に思い出した時――急に宿の外が騒がしくなった。
間もなく彼女は、ここ最近空き巣にひったくりといった行為で宿のある界隈を騒がせている悪党がいるという話を耳にした。
しかも身体能力は高いとのこと。
ただ平穏の保たれている街中故に、歪虚である可能性は低い。
となると――ハンターではない覚醒者か、と噂されている。
大人しくさせる為(という名目の)ハンターズソサエティの支部に依頼も出ているらしい。
「倒すわけじゃない……これなら」
少しでも、役に立てるのではないだろうか。
流れかけた涙を拭うように瞼を擦ると、ミレイユは支部へと足を向け始める。
支部への近道は、路地裏。
善は急げとばかりに駆けていると、
「お、嬢ちゃん、急いでどうした」
途中、横道から中年の男に声をかけられた。
身なりからするとどう見ても浮浪者なのだけれども、急いでいるミレイユは気にも留めない。
というか、顔見知りだ。
「後でまた戻ってくると思うから、その時に会えたら話すねー!」
そのまま物凄い勢いで駆け抜けていくミレイユの後ろ姿を、
「なんだってんだ……」
浮浪者は呆然とした表情で見送った。
住民の少なくなっている路地裏の区割りは非常に複雑で、支部に限らず目的地のある方角へまっすぐ進むことなど出来はしない。
ついでに言えば、先ほどの浮浪者以外にも通行を妨げる要因になるものは存在する。迷子とトラブルの多発地帯なのである。
けれど、彼女は何の躊躇いもなく突っ切って行く。
別に地図が頭の中に入っているわけではなく、感覚で進んでいるだけだ。
それでも意図せず最短ルートを進んでいたり、トラブルの種を回避していたりすることに、彼女自身自覚はまるでなかった。
●
とある森で、ハンターたちが雑魔と戦闘を繰り広げていた。
そしてその様子を、森の外から見守る少女がいる。
(ううう……何でこんなことに……)
響き渡る剣戟や魔法などの戦闘音、怒号を耳にする度、身の縮む思いがする。
というのも、本来なら今のように森の中で戦闘をするはずもなく。
その原因がまず間違いなく自分にあるのを、少女――ミレイユ・ブランヴィルも自覚しているからだ。
彼女も猟撃士として、雑魔の討伐に参加していた。
大型かつ肉食の鳥類が歪虚化した雑魔。空中から舞い降りてくる敵に対し、遠距離をメインに戦えるのは彼女一人だった。
それでも、地上に叩き落とせば十分に勝機は見える筈、だったのだけれども。
結論から言えば、猛烈な勢いで飛びかかってくる雑魔に対し、竦み上がってしまった彼女は何も出来なかった。
雑魔に傷を与えることは他のハンターの身を削った努力で出来たものの、動きを抑えるのがままならなかった為、上空から近くの森に逃げ込まれてしまったのである。
そこから先はハンターも雑魔も、深い森に視界と動きを制限された泥沼の戦いとなり。
攻撃手段を弓と銃しか持たないミレイユには、まともに射線も通らない場所では役目はなかった。
それでもなんとか戦闘に勝利し、ハンターたちは報酬を受け取る。
彼女もまた、申し訳ない気持ちしかないながらもそんなハンターたちの一団の中に居た。
「……わたしの分は、皆さんで使ってください」
一通りの手続きを終えた後、気持ちを体現する。
ミレイユは俯きながら自らの手取りを同行したハンターたちの前に差し出した。
他のハンターたちの反応はといえば、
「それなら遠慮無く」
「まぁ……あれだ、こういうこともあるから、あまり気にしないほうが」
目に見えるものは様々だったけれども、彼女の言葉の真意に異を唱える者はいなかった。
前者などは、「もうお前とは一緒に仕事したくない」などと言わんばかり。
正直、直接言われないだけマシだった。
一番何もしていない筈なのに疲れきり、宿に着くなり簡素なベッドにうつ伏せに突っ伏す。
これまでにも依頼は何度か受けているけれども、本格的に戦闘をする必要があるものは今回が初めてだった。
ハンターとしてやっていく自信が何となくつき始めたところの、この有様である。
いや、不安は正直あったのだ。戦いの役に立てるのだろうか、と。
でも実際はどうにかなると思っていた。
過信だった。
というか、そもそも自分が「持ち始めていた」ものが自信だったのかどうかさえ分からない。
どうしよう……。
これじゃ、到底ムリだ。
彼女の脳裏に今もこびり付いているとある光景を、今一度鮮明に思い出した時――急に宿の外が騒がしくなった。
間もなく彼女は、ここ最近空き巣にひったくりといった行為で宿のある界隈を騒がせている悪党がいるという話を耳にした。
しかも身体能力は高いとのこと。
ただ平穏の保たれている街中故に、歪虚である可能性は低い。
となると――ハンターではない覚醒者か、と噂されている。
大人しくさせる為(という名目の)ハンターズソサエティの支部に依頼も出ているらしい。
「倒すわけじゃない……これなら」
少しでも、役に立てるのではないだろうか。
流れかけた涙を拭うように瞼を擦ると、ミレイユは支部へと足を向け始める。
支部への近道は、路地裏。
善は急げとばかりに駆けていると、
「お、嬢ちゃん、急いでどうした」
途中、横道から中年の男に声をかけられた。
身なりからするとどう見ても浮浪者なのだけれども、急いでいるミレイユは気にも留めない。
というか、顔見知りだ。
「後でまた戻ってくると思うから、その時に会えたら話すねー!」
そのまま物凄い勢いで駆け抜けていくミレイユの後ろ姿を、
「なんだってんだ……」
浮浪者は呆然とした表情で見送った。
住民の少なくなっている路地裏の区割りは非常に複雑で、支部に限らず目的地のある方角へまっすぐ進むことなど出来はしない。
ついでに言えば、先ほどの浮浪者以外にも通行を妨げる要因になるものは存在する。迷子とトラブルの多発地帯なのである。
けれど、彼女は何の躊躇いもなく突っ切って行く。
別に地図が頭の中に入っているわけではなく、感覚で進んでいるだけだ。
それでも意図せず最短ルートを進んでいたり、トラブルの種を回避していたりすることに、彼女自身自覚はまるでなかった。
リプレイ本文
●
「せっかく精霊サマからご加護をもらえたってのに、とことん無駄遣いするバカも居るんだな。やっぱ」
ハンターズソサエティの支部で問題となっている覚醒者の話を聞き、カッツ・ランツクネヒト(ka5177)が嘆息混じりにそんな感想を漏らした。
「全くです……。ハンターの皆さんにはその『バカ』を捕らえて頂きます」
受付は艶のある長い黒髪を襟足あたりで軽く結った、二十代前半と思しき清潔感のある女性だった。
穏やかで清楚なイメージを全身から醸し出しいていたけれども、今はやや暗い表情かつ(カッツの真似でもあるけれども)少しばかり辛辣な表現を用いながら依頼について説明していた。
「笑ってりゃさぞかしいい女だろうにもったいないな。ま、今でも十分美人さんだが」
「そ、そんなことはないです」
カッツの褒め言葉に、受付嬢はやや赤らめた顔を俯かせる。
その顔を見ながら、カッツは尋ねた。
「あとアレだ、報酬はどれくらいだ?」
のらりくらりとしているように見せておいて報酬も気になってしまうのは、貧民街育ちという出自故か。
気を取り直した受付嬢から報酬額の提示を受けると、「わかった」とカッツは口端に笑みを浮かべて踵を返す。
受付嬢もそうだけれども、同じ依頼を受ける参加者にも美女・美少女が多い。それは彼のモチベーションを大いに上げる要素だ。
(張り切り過ぎには気をつけようかい)
自戒するように苦笑いを浮かべながら、カッツは支部を出た。
ハンターたちはそれぞれの方法で情報収集から始めていく。
「どの辺で被害に遭ったの?」
「えぇと……」
路地裏に入る前の通りで、玉兎 小夜(ka6009)は近所に住むという少女に聞きこみを行っていた。
「路地裏にある店だから勿論あまり綺麗じゃないんだけど、美味しいパン屋があるの。知る人ぞ知るっていうくらいの知名度の。
そこに行こうとした時だったなぁ……」
「ひとりで行ったの?」
「すぐ近くに表通りに出れる道があったから、そんなに心配してなかったんだよ……」
小夜の質問に、少女は悔しそうに答えた。
小夜と同様に、天の原 九天(ka6357)も情報収集を進めていた。此方は、ルーデンス・フクハラ・LC(ka6362)も同行している。
「ひったくりはどういう身形だったかの?」
と尋ねる九天こそフードを被っていたけれども、これはいざ作戦を開始した時に人相が割れないようにする為だ。
フードを被った少女と、どことなく胡散臭い雰囲気を漂わせる男の組み合わせはそれはそれで怪しくはあるのだけれども、ルーデンスがチップを渡していたこともあり大凡協力的だった。
「痩せぎす、禿頭、目付きが悪い、と……よくB級映画に出てはすぐに退場するような人相だね」
集めた情報をメモしていたルーデンスが「実際やっていることもそれ相応だけど」と付け加えながら言う。
「お主の言っている意味がよく分からんが……要するに三下ということじゃろう?」
「そういうこと。……あ、あれかな?」
そんなやりとりをかわしていると、ちょうど路地裏を抜け出てきた一人の少女の姿を見かけた。
ミレイユである。
そこの君、と声をかけると、「うん?」そのまま何処かへ駆け出そうとしていた彼女は足を止めた。
実のところ、焦るあまりちょっとばかり先走りすぎた彼女は、他のハンターたちが依頼を受け行動を始める前に情報収集を開始していたのだ。それを知った二人は彼女も探していたのである。
「恥ずかしい……」
先走ったことを自覚するなり、ミレイユは全力で顔を覆った。
まぁまぁ、とルーデンスが宥めたところで、
「お主、この辺りに住んでいるんじゃろう?
ここが危ない、といった場所はどこか心当たりがあるかの?」
九天が問う。
ミレイユは顔を覆っていた手の指の間から九天を見た。
「……わたしもあまり仲良くしたくないって思っている人たちのいる辺りかなぁ?」
「というと?」
「半分スラムみたいな路地裏でね、その辺に住んでいる人たちのたまり場がいくつかあるの。
こういう言い方は失礼かもしれないけど、それなりに良識がある人たちのいるところと、そうでないところがあるんだよね」
続いて三人は、ミレイユの言うところの「良識がある人たち」のいる場所へと向かう。
その途中、
「おっと、これは奇遇」
カッツと遭遇した。
支部を出たカッツは半分観光も兼ねた聞きこみを行っていたのだ。
ちなみに、彼が狙って収集していた情報は空き巣の方だ。
自分が育った所よりはキレイにしろ、どことなく懐かしい空気を感じながら歩いていた所、三人と出会ったのである。
「空き巣の方はどうじゃった?」
「狙われている地域って意味では特定が難しいんだが、ちょっと気になることがあった」
「ん?」
カッツの言葉に、三人は顔を見合わせたその時である。
「ぐえっ」
蛙の潰れたような短い悲鳴が、路地裏の角の向こうから聞こえた。
四人が角を曲がると、そこには一人の大柄な男が倒れていた。
そしてその頬を、小夜が傘の柄の部分でつついている。
「どうしたんじゃ?」
「あ、天の原様」
慕っている九天から声をかけられ、小夜は四人の存在に気づく。
「なんか擦り寄ってきたから、ひったくり魔知らない? って訊いたんですよー。そしたら逃げられそうになったんで、怪しいなって」
「でも多分違うだろうね。聞いてた人相じゃないし」
ルーデンスが屈んで、倒れている男の顔を覗き込む。痩せぎすでも、禿頭でもなかった。
「あ、人相知ってるんだ。私も違うなとは思ってたけど」
「何か掴んでおったのか?」
「ひったくりの現場の傾向があるみたいなんですよねー。
路地裏にある美味しいパン屋とか、そういう『知る人ぞ知る』ところでよく起こるみたいです」
「空き巣も似たような感じだったな」
言い出したのはカッツだ。
「そのパン屋の話も出たぞ。それ自体がグルかは分からないが、そういうところに誘導するよう噂を垂れ流している奴がいるかもしれない」
「そうなると……あとはその辺に目星をつけて、現場を押さえるしかないみたいだね」
ここまでの話をメモしていたルーデンスが口を開き、提案する。
「ひったくられる役、したいんだ。ほら、ご覧の通りのトッポさだからさ」
●
噂を垂れ流している存在、についてはあくまで推測でしかなかったのだけれども、思いの外早く釣れた。
結果的に合流を果たしたハンターたちはその場で各々が集めた情報を交換し、本格的に作戦を開始する。
自ら『ひったくられる役』を買って出たルーデンスは土地勘のあるミレイユと一緒に行動しながら、更に情報の精度を高めていた。
「路地裏のことを訊くのならば、路地裏に住む人が一番いいよねー」
というのはミレイユの言だ。
本人曰く「話せる」類の浮浪者たちの元を、全く迷うことなく訪れていく。
何カ所目かを訪れた後、ふいにルーデンスは情報を書き留めていた手を止めてミレイユの顔を見た。
「しっかし君、すごいね!」
「え、そ、そう?」
唐突に褒められ、ミレイユは戸惑った。
「ハンター始めて長いの?」
「そんなことないけど……。むしろ結構最近だよ?」
「ほー、ご立派」
感嘆の声を上げるルーデンスの言葉に、ミレイユが苦い表情を浮かべながら視線を逸らす。
「でも、戦闘は……」
「いやいやそんなん僕だってリームーだよリームー」
気まずそうに口を開くミレイユに対し、ルーデンスは笑いながら、顔の前で全力で右手を左右に振った。
ついでその右手の人差し指で、
「コイツ、だよ」
自らの頭を指し示す。
「君は勘がいい。こんな場所を滑らかに歩けるのは、ちょっとした才能だと僕ぁ思うよ」
「あんまり考えたことなかったよ……」
本当に無自覚だったらしく、ミレイユは驚きの表情で視線をルーデンスの方に戻す。
「僕にはムリムリ。浮浪者達に囲まれて一歩も動けないね」
へらへらと笑うルーデンスに、
「そうなんだ……」
呆然気味に呟くミレイユだったけれど、その口元が微妙に綻んでいるあたり、『長所を持ち上げる』というルーデンスの狙いは成功したと言っていいだろう。
そんな会話を交わしながら進んでいたのもあり、ひったくりが多発すると言われているパン屋の近くにまで二人は接近していた。
「君はここで待機しといて」
というルーデンスの発言の意図については、先程ミレイユも聞いている。黙って肯いて、パン屋のある路地の端の角で身を潜めた。
一方でルーデンスはふらふらと散歩にでも出ているような足取りで、パン屋の前を通り過ぎようとする。
すると、ミレイユがいるポイントとは別の道から、颯爽と人影が現れた。
ミレイユ視点から見れば急に横からルーデンスの背後に現れたそいつは、ルーデンスが小脇に抱えていたかばんをひったくるとそのまま彼の前方へと逃げていく。
これが狙いなのだから、ルーデンスは焦らなかった。
「怪我は……ないよね」
「うん」駆け寄ってきたミレイユを安心させるように笑うと、ルーデンスは符の力を発動させる。
「さ、追ってごらん」
本来は危難を避け戦機を見出す術だけれども、味方の機動力を上げる効果もある。
標的の姿は小さくなりつつあるものの、ミレイユは力強く肯いた。
ルーデンスがひったくりに襲われ、ミレイユが逃げる犯人を追いかけ始める様を九天は屋根の上から見つめていた。
とは言っても、ひったくりが捕らえられるまでにはそう時間はかからない……はずだ。ひったくりとミレイユが向かう先の道には小夜が待ち構えている。
「さて」
問題は空き巣の方だ。
カッツの推測にあった「そういうところに誘導するよう噂を垂れ流している」というのは、状況証拠しかないものの確かに考えられる。
ひったくりの被害に遭ったと思って家に帰ってみたら空き巣被害にも遭っていた、という話もあったからだ。
また、ひったくりの騒ぎを聞きつけて家を空けた間に空き巣被害を受けた、という被害例もある。
ルーデンスは勿論騒ぎ立てなどしない。
一方でルーデンスは当然この辺に住んでいるわけでもないから、狙われる家もない。
となると『空き巣』班はどう動くか。
「ひったくりが出たぞ! 路地裏の出口を封鎖して捕まえろ!」
怒号が響く。
自作自演もいいところである。出口を封鎖されても、彼らの『アジト』は路地裏の中にあるだろうから困らない。
案の定、声を聞きつけた近くの通りの住民たちの一部が路地裏へ向かっていく。
その一方で、
「……そういえばそういう選択肢もあったの」
九天は半ば呆れたように声を上げた。
お世辞にも身だしなみに気を使っているとはいえない集団が、屋根の上を駆け――そして通りに着地する。
相手は覚醒者である。自分がやった程度の身体能力を持っていてもおかしくはない。
「よう、ここいらでお仕事かい?」
けれども彼らも流石に、自分たちの背後を気配を消して追走していたカッツの気配には気付けなかった。
空いた家に入ろうとする男たちに、気配を消すのをやめたカッツが声をかける。
彼らの動きが止まったところで、九天も道の上に降り立った。着地ついでに機動剣で一人を叩き伏せながら、だ。
「さぁさぁ、突発乱舞(ゲリラライブ)の始まりじゃてっ☆」
一方その頃、
「ゆーあーひったくりぃ?」
待ち伏せしていた小夜はルーデンスのバッグをひったくった禿頭の男と並走する。
「な……!?」
「あ、否定しないね。っていうか知ってるんだけどー」
なので「あーゆー」ではないのだ。疑問ではなく、確認。
「クソッ!」
男は懐からナイフを取り出すと、小夜に向かって斬りつけるように振り下ろす。
小夜はそれを少し前方に出てかわすと、仕込傘の柄の部分で男のみぞおちを突く。
「お縄だ!」
崩れ落ちた男を、すかさずロープでぐるぐる巻きにする。
その時だった。
「伏せて!」
「え?」
追いついてきたミレイユが叫び、小夜は戸惑った声を上げながらもすかさず身を伏せる。
つい先程まで小夜の頭があったところを、石が矢のようなスピードで通過していって壁に激突した。
「あー、ここらへんの人たちなんだね……」
同じく伏せていたらしいミレイユが顔を上げると、苦い顔をする。
そう言われて小夜も気づいたのだけれども、すぐ脇には今はもうやっていなさそうな酒場跡――つまりは浮浪者たちのたまり場となりうる空間への入口があった。
そして今しがた石を投げてきたのは、その酒場跡に残っていた人間だった。
更に雪崩れ込むかのように、
「おいこら待てって」
「ハンター相手にやってられっか!」
というやや気の抜けた声に対する剣呑な叫び声が聞こえた。
見ると、通りの方から三人の男と、それを追いかけるカッツの姿があった。
ただ男たちは、禿頭の男が縛り上げられている様を見て足を止め、小夜とミレイユ――それから漸く追いついたルーデンスに対し敵意の篭った眼差しを見せる。
そこに、空からの闖入者。
ここぞとばかりに九天が路地裏へ舞い降りると、戦闘を避けられなさそうな状況にやや顔が引きつっているミレイユに笑いかけた。
「儂は神、お主はハンター。共に弱きのために笑う務めよ。
儂等が笑わねば誰が笑う。何、案ずることは無い。不安が拭えぬと言うのなら、儂が加護の一つも授けるぞっ☆」
「――うん」
ミレイユはまだ少し躊躇いながらも肯いて、弓に手をかけた。
●
結論から言えば、ただの覚醒者がハンターとしての責務を担う者に敵う道理はなかった。
カッツと九天が通りに居た時点で半数はお縄についていたのもあったけれども。
「や、お疲れ様。みんながんばったね!」
バッグを取り戻したルーデンスは他のハンターたちを労う。
「え?ボク? ……ひったくられただけ、だしさ?
アッハッハ、アリガトね!」
顔に手を当てて、そう笑った。
「天の原様ー。例の物ですー」
報告に行くまでの間に、小夜は九天にマカロンを差し出した。
貢物である。
一つ二つ摘んだ九天はご満悦の表情で、覚醒する。
「よしやよしや、存分にもふるが良いぞっ☆」
覚醒により現れた尾を、小夜はコレ以上の幸せはないとばかりにもふった。
「おぉぅ、もっふもふ……!」
その後、ハンターズオフィスにて。
「歪虚をブッ飛ばすだけが俺たちの仕事じゃない」
報酬を受け取りながら、カッツはミレイユに言う。
「ハンターの仕事ってのは、自分に合った仕事を探すところからスタートするもんだ。
そういう考えが持てりゃ、ちょっとはミレイユちゃんも自信が持てるんじゃあないの?」
その言葉を受け、ミレイユは少し考えながら言葉を紡ぐ。
「もうちょっと色々……色々やってみるよ。
そもそも自分の長所だってあんまり分かってなかったみたいだし……ね」
作戦中にルーデンスに言われたこともあるのだろう。そう照れくさそうに言うミレイユを見、カッツは薄く笑うのだった。
「せっかく精霊サマからご加護をもらえたってのに、とことん無駄遣いするバカも居るんだな。やっぱ」
ハンターズソサエティの支部で問題となっている覚醒者の話を聞き、カッツ・ランツクネヒト(ka5177)が嘆息混じりにそんな感想を漏らした。
「全くです……。ハンターの皆さんにはその『バカ』を捕らえて頂きます」
受付は艶のある長い黒髪を襟足あたりで軽く結った、二十代前半と思しき清潔感のある女性だった。
穏やかで清楚なイメージを全身から醸し出しいていたけれども、今はやや暗い表情かつ(カッツの真似でもあるけれども)少しばかり辛辣な表現を用いながら依頼について説明していた。
「笑ってりゃさぞかしいい女だろうにもったいないな。ま、今でも十分美人さんだが」
「そ、そんなことはないです」
カッツの褒め言葉に、受付嬢はやや赤らめた顔を俯かせる。
その顔を見ながら、カッツは尋ねた。
「あとアレだ、報酬はどれくらいだ?」
のらりくらりとしているように見せておいて報酬も気になってしまうのは、貧民街育ちという出自故か。
気を取り直した受付嬢から報酬額の提示を受けると、「わかった」とカッツは口端に笑みを浮かべて踵を返す。
受付嬢もそうだけれども、同じ依頼を受ける参加者にも美女・美少女が多い。それは彼のモチベーションを大いに上げる要素だ。
(張り切り過ぎには気をつけようかい)
自戒するように苦笑いを浮かべながら、カッツは支部を出た。
ハンターたちはそれぞれの方法で情報収集から始めていく。
「どの辺で被害に遭ったの?」
「えぇと……」
路地裏に入る前の通りで、玉兎 小夜(ka6009)は近所に住むという少女に聞きこみを行っていた。
「路地裏にある店だから勿論あまり綺麗じゃないんだけど、美味しいパン屋があるの。知る人ぞ知るっていうくらいの知名度の。
そこに行こうとした時だったなぁ……」
「ひとりで行ったの?」
「すぐ近くに表通りに出れる道があったから、そんなに心配してなかったんだよ……」
小夜の質問に、少女は悔しそうに答えた。
小夜と同様に、天の原 九天(ka6357)も情報収集を進めていた。此方は、ルーデンス・フクハラ・LC(ka6362)も同行している。
「ひったくりはどういう身形だったかの?」
と尋ねる九天こそフードを被っていたけれども、これはいざ作戦を開始した時に人相が割れないようにする為だ。
フードを被った少女と、どことなく胡散臭い雰囲気を漂わせる男の組み合わせはそれはそれで怪しくはあるのだけれども、ルーデンスがチップを渡していたこともあり大凡協力的だった。
「痩せぎす、禿頭、目付きが悪い、と……よくB級映画に出てはすぐに退場するような人相だね」
集めた情報をメモしていたルーデンスが「実際やっていることもそれ相応だけど」と付け加えながら言う。
「お主の言っている意味がよく分からんが……要するに三下ということじゃろう?」
「そういうこと。……あ、あれかな?」
そんなやりとりをかわしていると、ちょうど路地裏を抜け出てきた一人の少女の姿を見かけた。
ミレイユである。
そこの君、と声をかけると、「うん?」そのまま何処かへ駆け出そうとしていた彼女は足を止めた。
実のところ、焦るあまりちょっとばかり先走りすぎた彼女は、他のハンターたちが依頼を受け行動を始める前に情報収集を開始していたのだ。それを知った二人は彼女も探していたのである。
「恥ずかしい……」
先走ったことを自覚するなり、ミレイユは全力で顔を覆った。
まぁまぁ、とルーデンスが宥めたところで、
「お主、この辺りに住んでいるんじゃろう?
ここが危ない、といった場所はどこか心当たりがあるかの?」
九天が問う。
ミレイユは顔を覆っていた手の指の間から九天を見た。
「……わたしもあまり仲良くしたくないって思っている人たちのいる辺りかなぁ?」
「というと?」
「半分スラムみたいな路地裏でね、その辺に住んでいる人たちのたまり場がいくつかあるの。
こういう言い方は失礼かもしれないけど、それなりに良識がある人たちのいるところと、そうでないところがあるんだよね」
続いて三人は、ミレイユの言うところの「良識がある人たち」のいる場所へと向かう。
その途中、
「おっと、これは奇遇」
カッツと遭遇した。
支部を出たカッツは半分観光も兼ねた聞きこみを行っていたのだ。
ちなみに、彼が狙って収集していた情報は空き巣の方だ。
自分が育った所よりはキレイにしろ、どことなく懐かしい空気を感じながら歩いていた所、三人と出会ったのである。
「空き巣の方はどうじゃった?」
「狙われている地域って意味では特定が難しいんだが、ちょっと気になることがあった」
「ん?」
カッツの言葉に、三人は顔を見合わせたその時である。
「ぐえっ」
蛙の潰れたような短い悲鳴が、路地裏の角の向こうから聞こえた。
四人が角を曲がると、そこには一人の大柄な男が倒れていた。
そしてその頬を、小夜が傘の柄の部分でつついている。
「どうしたんじゃ?」
「あ、天の原様」
慕っている九天から声をかけられ、小夜は四人の存在に気づく。
「なんか擦り寄ってきたから、ひったくり魔知らない? って訊いたんですよー。そしたら逃げられそうになったんで、怪しいなって」
「でも多分違うだろうね。聞いてた人相じゃないし」
ルーデンスが屈んで、倒れている男の顔を覗き込む。痩せぎすでも、禿頭でもなかった。
「あ、人相知ってるんだ。私も違うなとは思ってたけど」
「何か掴んでおったのか?」
「ひったくりの現場の傾向があるみたいなんですよねー。
路地裏にある美味しいパン屋とか、そういう『知る人ぞ知る』ところでよく起こるみたいです」
「空き巣も似たような感じだったな」
言い出したのはカッツだ。
「そのパン屋の話も出たぞ。それ自体がグルかは分からないが、そういうところに誘導するよう噂を垂れ流している奴がいるかもしれない」
「そうなると……あとはその辺に目星をつけて、現場を押さえるしかないみたいだね」
ここまでの話をメモしていたルーデンスが口を開き、提案する。
「ひったくられる役、したいんだ。ほら、ご覧の通りのトッポさだからさ」
●
噂を垂れ流している存在、についてはあくまで推測でしかなかったのだけれども、思いの外早く釣れた。
結果的に合流を果たしたハンターたちはその場で各々が集めた情報を交換し、本格的に作戦を開始する。
自ら『ひったくられる役』を買って出たルーデンスは土地勘のあるミレイユと一緒に行動しながら、更に情報の精度を高めていた。
「路地裏のことを訊くのならば、路地裏に住む人が一番いいよねー」
というのはミレイユの言だ。
本人曰く「話せる」類の浮浪者たちの元を、全く迷うことなく訪れていく。
何カ所目かを訪れた後、ふいにルーデンスは情報を書き留めていた手を止めてミレイユの顔を見た。
「しっかし君、すごいね!」
「え、そ、そう?」
唐突に褒められ、ミレイユは戸惑った。
「ハンター始めて長いの?」
「そんなことないけど……。むしろ結構最近だよ?」
「ほー、ご立派」
感嘆の声を上げるルーデンスの言葉に、ミレイユが苦い表情を浮かべながら視線を逸らす。
「でも、戦闘は……」
「いやいやそんなん僕だってリームーだよリームー」
気まずそうに口を開くミレイユに対し、ルーデンスは笑いながら、顔の前で全力で右手を左右に振った。
ついでその右手の人差し指で、
「コイツ、だよ」
自らの頭を指し示す。
「君は勘がいい。こんな場所を滑らかに歩けるのは、ちょっとした才能だと僕ぁ思うよ」
「あんまり考えたことなかったよ……」
本当に無自覚だったらしく、ミレイユは驚きの表情で視線をルーデンスの方に戻す。
「僕にはムリムリ。浮浪者達に囲まれて一歩も動けないね」
へらへらと笑うルーデンスに、
「そうなんだ……」
呆然気味に呟くミレイユだったけれど、その口元が微妙に綻んでいるあたり、『長所を持ち上げる』というルーデンスの狙いは成功したと言っていいだろう。
そんな会話を交わしながら進んでいたのもあり、ひったくりが多発すると言われているパン屋の近くにまで二人は接近していた。
「君はここで待機しといて」
というルーデンスの発言の意図については、先程ミレイユも聞いている。黙って肯いて、パン屋のある路地の端の角で身を潜めた。
一方でルーデンスはふらふらと散歩にでも出ているような足取りで、パン屋の前を通り過ぎようとする。
すると、ミレイユがいるポイントとは別の道から、颯爽と人影が現れた。
ミレイユ視点から見れば急に横からルーデンスの背後に現れたそいつは、ルーデンスが小脇に抱えていたかばんをひったくるとそのまま彼の前方へと逃げていく。
これが狙いなのだから、ルーデンスは焦らなかった。
「怪我は……ないよね」
「うん」駆け寄ってきたミレイユを安心させるように笑うと、ルーデンスは符の力を発動させる。
「さ、追ってごらん」
本来は危難を避け戦機を見出す術だけれども、味方の機動力を上げる効果もある。
標的の姿は小さくなりつつあるものの、ミレイユは力強く肯いた。
ルーデンスがひったくりに襲われ、ミレイユが逃げる犯人を追いかけ始める様を九天は屋根の上から見つめていた。
とは言っても、ひったくりが捕らえられるまでにはそう時間はかからない……はずだ。ひったくりとミレイユが向かう先の道には小夜が待ち構えている。
「さて」
問題は空き巣の方だ。
カッツの推測にあった「そういうところに誘導するよう噂を垂れ流している」というのは、状況証拠しかないものの確かに考えられる。
ひったくりの被害に遭ったと思って家に帰ってみたら空き巣被害にも遭っていた、という話もあったからだ。
また、ひったくりの騒ぎを聞きつけて家を空けた間に空き巣被害を受けた、という被害例もある。
ルーデンスは勿論騒ぎ立てなどしない。
一方でルーデンスは当然この辺に住んでいるわけでもないから、狙われる家もない。
となると『空き巣』班はどう動くか。
「ひったくりが出たぞ! 路地裏の出口を封鎖して捕まえろ!」
怒号が響く。
自作自演もいいところである。出口を封鎖されても、彼らの『アジト』は路地裏の中にあるだろうから困らない。
案の定、声を聞きつけた近くの通りの住民たちの一部が路地裏へ向かっていく。
その一方で、
「……そういえばそういう選択肢もあったの」
九天は半ば呆れたように声を上げた。
お世辞にも身だしなみに気を使っているとはいえない集団が、屋根の上を駆け――そして通りに着地する。
相手は覚醒者である。自分がやった程度の身体能力を持っていてもおかしくはない。
「よう、ここいらでお仕事かい?」
けれども彼らも流石に、自分たちの背後を気配を消して追走していたカッツの気配には気付けなかった。
空いた家に入ろうとする男たちに、気配を消すのをやめたカッツが声をかける。
彼らの動きが止まったところで、九天も道の上に降り立った。着地ついでに機動剣で一人を叩き伏せながら、だ。
「さぁさぁ、突発乱舞(ゲリラライブ)の始まりじゃてっ☆」
一方その頃、
「ゆーあーひったくりぃ?」
待ち伏せしていた小夜はルーデンスのバッグをひったくった禿頭の男と並走する。
「な……!?」
「あ、否定しないね。っていうか知ってるんだけどー」
なので「あーゆー」ではないのだ。疑問ではなく、確認。
「クソッ!」
男は懐からナイフを取り出すと、小夜に向かって斬りつけるように振り下ろす。
小夜はそれを少し前方に出てかわすと、仕込傘の柄の部分で男のみぞおちを突く。
「お縄だ!」
崩れ落ちた男を、すかさずロープでぐるぐる巻きにする。
その時だった。
「伏せて!」
「え?」
追いついてきたミレイユが叫び、小夜は戸惑った声を上げながらもすかさず身を伏せる。
つい先程まで小夜の頭があったところを、石が矢のようなスピードで通過していって壁に激突した。
「あー、ここらへんの人たちなんだね……」
同じく伏せていたらしいミレイユが顔を上げると、苦い顔をする。
そう言われて小夜も気づいたのだけれども、すぐ脇には今はもうやっていなさそうな酒場跡――つまりは浮浪者たちのたまり場となりうる空間への入口があった。
そして今しがた石を投げてきたのは、その酒場跡に残っていた人間だった。
更に雪崩れ込むかのように、
「おいこら待てって」
「ハンター相手にやってられっか!」
というやや気の抜けた声に対する剣呑な叫び声が聞こえた。
見ると、通りの方から三人の男と、それを追いかけるカッツの姿があった。
ただ男たちは、禿頭の男が縛り上げられている様を見て足を止め、小夜とミレイユ――それから漸く追いついたルーデンスに対し敵意の篭った眼差しを見せる。
そこに、空からの闖入者。
ここぞとばかりに九天が路地裏へ舞い降りると、戦闘を避けられなさそうな状況にやや顔が引きつっているミレイユに笑いかけた。
「儂は神、お主はハンター。共に弱きのために笑う務めよ。
儂等が笑わねば誰が笑う。何、案ずることは無い。不安が拭えぬと言うのなら、儂が加護の一つも授けるぞっ☆」
「――うん」
ミレイユはまだ少し躊躇いながらも肯いて、弓に手をかけた。
●
結論から言えば、ただの覚醒者がハンターとしての責務を担う者に敵う道理はなかった。
カッツと九天が通りに居た時点で半数はお縄についていたのもあったけれども。
「や、お疲れ様。みんながんばったね!」
バッグを取り戻したルーデンスは他のハンターたちを労う。
「え?ボク? ……ひったくられただけ、だしさ?
アッハッハ、アリガトね!」
顔に手を当てて、そう笑った。
「天の原様ー。例の物ですー」
報告に行くまでの間に、小夜は九天にマカロンを差し出した。
貢物である。
一つ二つ摘んだ九天はご満悦の表情で、覚醒する。
「よしやよしや、存分にもふるが良いぞっ☆」
覚醒により現れた尾を、小夜はコレ以上の幸せはないとばかりにもふった。
「おぉぅ、もっふもふ……!」
その後、ハンターズオフィスにて。
「歪虚をブッ飛ばすだけが俺たちの仕事じゃない」
報酬を受け取りながら、カッツはミレイユに言う。
「ハンターの仕事ってのは、自分に合った仕事を探すところからスタートするもんだ。
そういう考えが持てりゃ、ちょっとはミレイユちゃんも自信が持てるんじゃあないの?」
その言葉を受け、ミレイユは少し考えながら言葉を紡ぐ。
「もうちょっと色々……色々やってみるよ。
そもそも自分の長所だってあんまり分かってなかったみたいだし……ね」
作戦中にルーデンスに言われたこともあるのだろう。そう照れくさそうに言うミレイユを見、カッツは薄く笑うのだった。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/20 23:53:36 |
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作戦相談卓 玉兎 小夜(ka6009) 人間(リアルブルー)|17才|女性|舞刀士(ソードダンサー) |
最終発言 2016/06/21 01:26:50 |