ハッスルジジイは止まらない!

マスター:T谷

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2014/09/07 19:00
完成日
2014/09/13 23:43

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 油の臭い、鉄の臭い、そして長年勤め続けた男たちの汗の臭い――古錆びた工場の壁面には、歴史が染み込んでいた。
 木工を扱い家具を作っていた時代から、金属の加工へと手を広げ、やがて金属加工を専門に行うようになり、様々な動乱を細々と生き抜いてきた。代を重ね、地元に密着しながら生き残ることは、それほど難しくはなかった。時代の変遷についていく柔軟ささえあれば、の話だが。
「工場長。五本目、完成しました」
 そしてこの度、ことさらに柔軟な思考を持った工場長の手により、工場は大きな一歩を踏みだそうとしていた。
 工場に勤める地元の青年の手には、黒光りする金属の筒が握られている。それは無数の部品からなる、兵器――魔導銃だ。既存の魔導銃を小型化し、取り回しを良くした改造品であり、ともすれば、それは世界を救う糧ともなる。そう、青年は信じている。
「おう、やっと準備ができたか。手筈は整ってんな?」
 青年の声に応えるのは、齢六五を迎える壮年の男。短い白髪を後ろに流し、刻まれた深いシワの奥に異様に鋭い眼光を覗かせている。背は低く、痩身だが、長年現場で働き続けてきた威厳と風格を纏っている。
 男は慎重に、青年の手から銃を受け取った。慈しむように表面に手を這わせ、男は頷く。
「ふふ、こいつを帝国に売込みゃ……」
 独りごち、男は銃を机に置く。隣には、すでに作られていた四本の銃が並べられている。
 これは賭けだ。長く続く家業を、自分の代で大きく発展させる。そのための。
 なんとかノウハウを手に入れ、お高い素材を節約することで偶発的に小型化に成功し、量産するための工作機械を自作までして……長く時間をかけてきた。並んだ集大成を前に、男は目頭を熱くする。
「工場長……!」
 青年は、すでに涙を溢れさせている。
「ヘクター、よく俺に付いてきてくれたな」
 感慨深げに、男は青年の頭に手を乗せた。青年は僅かに驚く。男の顔がこれほどまでに優しく見えたのは、ここに務めた五年間で初めてだった。
 今まさに、ここには夢が満ちていた。
 輝く未来に向かう道が、二人には間違いなく見えていた。

 ――騒音と共に、小さな影が工場に飛び込んでくるまでは。


「誰か、誰か助けて!」
 声が響き、一人の青年が這々の体で村に駆け込んでくる。それは、この村に住む者なら誰でも知っている顔だった。
 村外れの小さな工場、そこに一人住む偏屈ジジイのところへと足繁く通う変わり者。
 普段ならば、誰も関わり合いになりたくない相手だった。だが、その青年の様子があまりに切羽詰まっていて、思わず住民は次々に家から顔を出す。
「工場が、ゴブリンの群れに襲われて……!」
 息も絶え絶え、青年はそう言い放った。それはもしかすると、たまたま村に滞在していたハンター達に訴えかけようとしていたのかもしれない。


 壮年の男、トリスタン・サイトウは今や、蛮族の棲家と化してしまった工場を遠巻きに眺めるしかなかった。持ち出せたのは、常に腰に携えていた愛用のレンチだけ。それを握りしめ、トリスタンは渋面で、窓越しに見え隠れするゴブリン共を睨みつけた。
「俺の、俺の工場を……!」
 その目は、怒りに燃えていた。先程は青年に連れられて逃げてしまったが、むざむざと我が家が奪われるのを見ていることしかできない彼ではない。
 レンチを振り上げ、近くの岩に叩きつける。ゴンと鈍い音がして、岩の表面は小さく砕けた。
 窓の向こうでは、ゴブリン達が我が工場に誇れる工作機を叩いたり蹴ったり、適当に操作盤を弄ったりと好き放題に暴れている。トリスタンの視線が、凶弾の如く奴らを貫く。
「いい、加減にっ――!」
 ふるふると、肩が震える。握りしめたレンチはミシミシと音を立てる。
 そして遂に、トリスタンは工場に向けて駆け出した。
「――しろやてめぇらぁっ!」
 寄る年波に体力は衰え、節々は痛み、最近は髪も薄くなってきた。
 だが、そんなことは関係ない。駆け出さずにはいられなかった。例えこの手に、レンチの一本しかなかったとしても。

リプレイ本文


 村の郊外に建つ、古ぼけた小さな工場からは、今や機械音とは違う耳障りな声のようなものが響いていた。
 工場の正面に大きな口を開けた搬入口から見えない位置を意識しつつ、ハンター達は草をかき分けて工場へと近づいていく。近づけば近づくほどに、工場の中がさぞかし賑やかなことになっているのだと想像できる騒音が耳朶に届く。甲高く、引きつるような不快な声。それは、コボルドやゴブリンの鳴き声に他ならなかった。
 ハンター達は上手く、気付かれないように工場の外壁に辿り着いた。窓を避け、搬入口の真横に背を預ける位置を取り、息を整える。
 勝負は一瞬。杜郷零嗣(ka0003)が搬入口から離れた窓を撃ち、それを囮に工場内へと雪崩れ込む。
 手短に工場に務めていた青年の話を聞き、工場の広さや間取りはある程度分かっている。あとは、工場内にいる可能性のある工場長を速やかに探し確保すればいい。
 遂行に際して目下の問題は、ゴブリンが工場内にある銃を使ってくるかもしれないということだ。
「全員、手筈は分かっているね?」
 静かに、天音 恭一郎(ka3034)が全員に問う。
「おじいちゃんの無事が一番、だよね」
 シャル・ブルーメ(ka3017)は、心配そうに搬入口へ目をやりながら答える。看護を生業とするものとして、ご老人が渦中にいるという状況は気が気でないのかもしれない。
「そのじいさんがどこにいるかってのが、問題なんだけどな」
 二丁の拳銃を手に、来栖 龍馬(ka1890)がうんざりと呟く。
「ゴブリンが使っている可能性のある銃は五丁。弾薬の予備はなし……つまり、いま弾倉に入っている弾薬が尽きれば、彼らは丸裸ってわけだね」
 どこかそわそわした様子で猟銃を手にしたネイハム・乾風(ka2961)が情報を反芻する声は、少しばかり高揚しているようにも聞こえた。
「……おじいさんの姿は見えないけど、コボルドがうじゃうじゃしてるわね」
 シャオ・クーデリカ(ka3009)がひっそりと窓から覗きこむも、大きな成果を得ることは叶わなかった。
 しかし逆に言えば、見えない位置に工場長がいるかもしれないということだ。とはいえ、これ以上のことは実際に突入してみなければ分からないだろう。
「……それじゃあ、準備は大丈夫ですか? あ……えと、その前に」
 零嗣が躊躇いがちに、近くにいた恭一郎に手を伸ばし防性強化を施した。
「おや、ありがとう。それでは俺は、こちらに」
 微笑み、恭一郎は隣のシャルに向けてプロテクションを唱える。
 今度こそ、準備は整った。零嗣は小さな声で始まりを告げる。
「それでは、五つ数えて窓を撃ちます。5……4……」
 ――3
 ――2
 ――1

 乾いた銃声が響くと同時に、搬入口から一番離れた窓が粉々に砕け散った。
「行くわよ!」
 シャオが一息に身を捩り、搬入口へと体を躍らせる。流れるような動きで近くに佇んでいたコボルドの後頭部に、祖霊の力をこめたトンファーを叩き込んだ。奇襲を受けたコボルドは受け身を取ることすら叶わずに吹き飛ぶと、木箱に強かに打ち付けられ動かなくなる。
 続いて恭一郎、シャルが工場長を探すべく飛び込み、零嗣、龍馬、ネイハムがそれぞれに銃を構えて工場内へと足を踏み入れた。
 銃を持ったゴブリンがいるのならそれらは高い場所を選び陣取るはずだと検討をつけ、銃を構えた三人は照準を覗きこみ工場内に目を凝らす。集中し、時間がゆっくりと流れるような感覚の中、それらはあっさりと目に留まった。
 合計で四体。中央の大型機械の上、積まれた木箱の上、雑多な小物の置かれた棚の上、そして奥の事務所脇にある荷物置き場と化したキャットウォークの上。
 ネイハムは猟銃の射程を活かし、最も離れたキャットウォークのゴブリンを狙い打つ。零嗣は大型の盾を構えて、敵の注目を受ける位置に一歩飛び出しながら、比較的距離の近い棚の上のゴブリンに向けて拳銃を構え、零嗣の後ろから龍馬が追い打ちをかけるように引き金を引き絞った。
 三人の判断は一瞬だった。躊躇いなく、幾つもの鋼鉄の叫びが喧騒を引き裂いて工場内にこだまする。突然の闖入者に沸き立つゴブリンに向けて、凶弾が襲い掛かる。
 ネイハムの放った弾丸は、過たずゴブリンの脇腹を大きく抉り取った。細く長い断末魔が喧騒に紛れて消える。しかし、後の二人の攻撃は、拳銃の射程ギリギリであったことが災いしたのか、共にゴブリンを掠めるだけで大きなダメージは与えられない。ゴブリンの背後の灰色の壁に、虚しく弾痕が刻まれる。
「ちっ、当たりゃしねえな!」
「……やっぱり、銃声はいいな。こうでないと……」
 歯噛みする龍馬の脇で、ネイハムが余韻に浸るように薄く笑みを浮かべる。
「みなさん、俺が前に出ますので――」
 零嗣が声を出した瞬間、ギイと激高したゴブリンが、小さな目を釣り上げて手にした機導銃を振り回した。咄嗟に、零嗣は盾に身を隠す。瞬間、ドンと小さくない衝撃が盾を叩いた。
 ネイハムと龍馬は急いで近くに並べてあった木箱に身を隠す。木箱は調べるまでもなく空で、盾にするにはちょうどいい。
 しかし、身を隠した甲斐もなく、ゴブリンたちのお粗末な射撃はあらぬ場所を破壊した。何せ、怒りに任せた不安定な体勢で、身長の半分もある銃を片手で扱ってしまったのだ。当然の如く、ゴブリンの肩は大きく後ろに弾き飛ばされる。
「ああっ、あんなに乱暴に扱って!」
 ネイハムが、悲痛な声を上げる。
「いや、もうそんな心配してる場合じゃねえよ。あんな適当に撃たれたら、どんだけの被害が出るか」
「……とにかく、俺が前に出て注意を引きます。皆さんは、どうか援護を」
 少し申し訳無さそうに零嗣は頼み、更に前に出る。先に飛び込んだ三人が取り逃したコボルドが飛びかかってくるも、盾で弾き飛ばし、零嗣はとにかく敵の視線を集めるように銃を撃つ。
「うざってえ!」
 龍馬はさらに横から飛び出したコボルドの攻撃を銃で受け止め、お返しに側頭部へと銃底を叩きつける。ついでに蹴りで足元を払い体勢を崩すと、二丁の拳銃で以って弾丸の雨を叩き込んだ。
 二人がコボルドの対処をしているうちに、ネイハムは高所のゴブリンを狙う。ゴブリンが体勢を崩したのは幸いだが、そのせいで的が小さくなってしまっている。ネイハムの放つ弾丸は、数発が掠め傷を負わせるものの致命傷には至らない。
「うーん、なかなか難しいね」
 遮蔽物に身を隠しながら、ネイハムはリロードを行う。ゴブリン達は体勢を立て直したのか、再びこちらのものではない銃声が響いている。
「……銃声は素晴らしいけど、そろそろ止めないとだね」
 零嗣が攻撃を一身に受け止めてはいるものの、的はずれな射撃がほとんどなのは事実だ。中央の工作機から離れるように動いているとはいえ、いつそこに弾が向かってしまうか分からない。
 ネイハムは木箱から少し顔を出し、離れた木箱の上に陣取ったゴブリンを見る。マテリアルの込められた瞳は、鮮明に対象の姿を捉える。自動追尾のようにその一挙手一投足を見、追い、予測して。
 ネイハムは、銃声に耳を澄ませるように、ひっそりと人差し指に力を込める。放たれた弾丸がゴブリンの肩を貫くところを見届けることもなく、意識は次の標的へと移っていた。


「おい、なんだてめえら!」
 工場長は、思ったよりも簡単に見つけることができた。騒ぎと轟く銃声を聞きつけ、隠れていた小さな工作機の影から一人の老人が上半身を乗り出しこちらに怒声を浴びせてきたのだ。
 飛びかかってくるコボルド達を捌くシャオの援護を受けながら、恭一郎は工場長の元へと滑り込む。遅れてシャルが、シャオにプロテクションを掛けた後、同じく工作機に急いで身を隠した。
「大将お待たせしました、俺達も共に戦わせてください」
「ちっ、てめえらハンターか。ヘクターの野郎だな、余計なことを……」
「おじいちゃん、怪我はない?」
「だぁれがおじいちゃんだ!」
「ひゃっ」
 安否を確かめようとシャルが手を伸ばせば、工場長はその手を強く払う。その動きに淀みはなく、とりあえず大きな怪我はないようだった。
「……指示を頂きたいので、ひとまず全体を見渡せる場所へ」
「指示? なんで俺がそんなことせにゃならんのだ。俺はあいつらをぶん殴るって決めてんだ、指図を受ける筋合いはねえ」
「しかし、ここでは少々危険が……」
 ぎろりと、工場長が恭一郎を睨めつける。
「んなことた言われんでも分かっとる! こちとら住処荒らされて、子供人質に取られてるようなもんなんだ。黙っていられるかよ! 大体てめえらも、俺の許可も取らねえでずかずか入ってきやがって……」
 激高する工場長の様子を眺め、恭一郎は小さくため息を付いた。どうやら、安全な場所に移動させるのは難しいようだ。
 しかし幸いにも、この場所なら頭を出さなければ撃たれることはないだろう。このまま彼を守ることも、難しくはない。
「勝手に入ったのは、ごめんなさい。でも、命が一番だよ。死んじゃったら、もう何かを作ることもできなくなっちゃう」
 言い聞かせるようにシャルが声をかけるが、それも工場長は仏頂面で聞き流す。
「職人の貴方なら、専門という言葉の意味くらい分かっている筈ですわ。ここは私達に任せ、知識でサポートして下さいな」
 粗方のコボルドを退け、一歩下がったシャオも声をかけた。一人でコボルドを相手にした体は傷だらけだったが、それでも工場長達を背にして立ち塞がる。
「ひ、ヒール!」
 慌ててシャルが唱えると、淡い光がシャオの体に吸い込まれていく。
「あんまり、無茶はしないでね」
 心配そうに言うシャルに微笑みを返し、
「そうも言って、いられないかもしれないわね」
 トンファーを握り直したシャオの視線の先には、一際体の大きなゴブリンが二体、のったりした目でこちらを睨みつけていた。


 発達した上腕二頭筋を隆起させ、子供の胴程もありそうな鉄管を担いだ巨体のゴブリンが、事務所のドアを潜って姿を現す。それはちょうど見える範囲の、銃を持った個体を無力化した直後の事だった。
 巨体のゴブリンの後ろには、銃を持った小さなゴブリンが一体、怒りに駆られた眼球をギョロつかせてじっとこちらを見つめている。
「はっ、勝手に人のもん持ちだしやがって……っ!」
「――っ!」
「だ、だめ!」
 それを見て危うく飛び出しかけた工場長を、咄嗟に恭一郎とシャルが抑える。
「お、おい、大丈夫か?」
 最後の銃に注意しながら、射撃班の三人が工場長の元へと駆けつけた。
「あ、あんまり大丈夫じゃないかも」
 シャルは苦笑いで返す。
「とはいえ、敵はもうあいつらだけみたいだね」
「あの小さいのが司令塔かしら」
 辺りを見渡せば、もうコボルドの姿はない。全て倒したのか逃げたのか分からないが、この場にいないのならそれで十分だ。
「工場長、何か、盾にしていいものはありますか?」
「……ああ、機械以外ならなんでも使え。どうせ、そこらの箱に入っとるのはガラクタばっかりだ」
 恭一郎が尋ねると、覚醒者二人に止められ露骨に気勢を削がれた様子で工場長は吐き捨てた。
「じゃあ、遠慮なく使わせてもらう」
「俺は銃持ちの個体を狙うよ」
 竜馬とネイハムがそれぞれ、近くの木箱に体を隠し、頭を出して銃を構える。
「ならあたしは、あのデカブツを引き離すわ」
「……俺はとにかく、あいつらの注意を引きます」
 シャオは威勢よく、零嗣は少しばかり自信のないように一歩前に出て武器を構えた。
 ハンター達の動きを宣戦布告と見たのか、小さなゴブリンが、改めて威嚇するように甲高い声を上げる。同時に、それを守るように立つ二体のゴブリンが、低く吠えて鉄管を振り上げた。
「プロテクション!」
 恭一郎とシャルが、前衛に出た二人に光の膜を張る。
 シャオは短く礼を言い、巨体ゴブリンの片方に向けて地を蹴った。ゴブリンの目は、こちらの銃を警戒しているように見えた。ならば、まずはその鼻面を叩き折り、注意を逸らす。
「こっちよ!」
 祖霊の力を込めたトンファーを回転させ、シャオはそれを思い切り醜い頭部めがけて振り抜いた。鈍い音が響く。シャオに注意を払っていなかったゴブリンは、唐突に訪れた衝撃に、鉄管を取り落とす。
 その音にもう一体の巨体が、シャオへと目を向けた。
「君は、こっちですよ」
 銃声。零嗣の放った弾丸が、ゴブリンの脇腹に突き刺さった。声にならない悲鳴が響く。
 その様子を見ていた小さなゴブリンが、何をやってるんだとばかりに騒ぎ立て、手にした銃を振り回し――
「だから、そんな乱暴したらダメだって」
「銃が使いたければ、自分達で作れるようになってから出直して来い!」
 その開いた口に、二発の弾丸が叩き込まれた。


 工場の機械は、殆ど無傷だった。ゴブリンも、その利用価値を知っていたのだろうか、そこまで乱暴に扱っていたわけではないようだ。
 ひと通り検査し終わり、工場長が額の汗を拭う。それを手伝っていた青年と零嗣も、同じく顔を上げた。
「無事でよかったですよぉ~」
 その後ろでは、シャルが目いっぱいにヒールを掛けて回っていた。ゴブリン達の死骸を見て凹んでいた彼女も、なんとか気を取り直したようだ。
「……無事でよかった」
 ネイハムの呟く似たようなセリフは、回収した銃に向けられていた。ネイハムは許可を得て、銃を構える。
「少し、重心のバランスが悪いかな。此処を改良すれば……」
「あと、威力を重視し過ぎじゃないか?」
 同じく銃を見ていた龍馬も一緒に改善案を出せば、
「うるっせえな、言われんでも分かっとるわ!」
 工場長の逆鱗に触れたりしていた。

 日が落ちる。古錆びた工場に訪れた喧騒は、ほんの数時間の夢の出来事のようだった。
「なぁなぁ、俺にもここ使わせてくれよ」
「けっ、図々しいやつだ」
 整備ついでに綺麗に磨かれた機械類を見て感心する龍馬に、工場長は吐き捨てる。
「……まあ、いっぺん土足で入り込みやがったんだ。二度も三度も同じだがな」
「あら、照れてますの?」
「ああっ?」
 シャオの言葉に、心底苛ついた様子で目を吊り上げる工場長。しかし、その態度に険がないように思われるのは、こちらの都合のいい解釈のせいなのだろうか。
 今日もジジイは鉄を打つ。帝国の明日、そして連綿と受け継がれてきた絆を守るために。

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重体一覧

参加者一覧


  • 杜郷零嗣(ka0003
    人間(蒼)|18才|男性|機導師

  • 来栖 龍馬(ka1890
    人間(蒼)|20才|男性|機導師
  • 白狼鬼
    ネイハム・乾風(ka2961
    人間(紅)|28才|男性|猟撃士

  • シャオ・クーデリカ(ka3009
    人間(紅)|14才|女性|霊闘士
  • テキパキ看護師さん
    シャル・ブルーメ(ka3017
    人間(蒼)|22才|女性|聖導士

  • 天音 恭一郎(ka3034
    人間(蒼)|28才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 作戦卓
杜郷零嗣(ka0003
人間(リアルブルー)|18才|男性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2014/09/07 18:48:21
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/09/05 18:39:57