ゲスト
(ka0000)
御当地ラーメンコンテスト
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/19 22:00
- 完成日
- 2016/06/25 16:05
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「御当地ラーメンを開発しましょう!」
商店会会議の場で、セレーネ・リコお嬢様が言いました。
「ラーメン? 何それ?」
フィネステラ案内嬢が、聞き返します。なんだか、最近聞いたことがあるような、ないような名前です。
「パスタの一種ですわ。リアルブルーでは、各地方でオリジナルのパスタ料理を御当地ラーメンとして地域活性化に利用しているのです」
「だったら、パスタでいいじゃない」
「それでは、他の都市の商店街と大差ないでしょう。特に、フマーレなんかと一緒にされては、困るではありませんか」
身も蓋もないフィネステラ嬢の言葉を一蹴して、お嬢様が言いました。
「このラーメンというのが、購買欲をかきたてるのですわ。人は、珍しい物に群がるのです。そこでです、大々的に、御当地ラーメンコンテストをこの商店街で開き、優勝したラーメンをヴァリオス御当地ラーメンとして商店街で認定してしまうのです」
完璧な販売戦略だと、お嬢様が胸を張りました。
「確かに、先日ジェオルジで行われた郷祭で、ラーメンはグルメ大会の2位に輝いたそうですからな」
デレトーレ支配人が、少し興味を引かれたように言いました。
「2位? なんで1位のにしないの?」
ありえないとばかりに、フィネステラ嬢がツッコミました。
「確か、優勝は、カレーとかいう食べ物でしたな」
記憶を頼りに、支配人が補足しました。
「ええ、その通りですわ。けれども、カレーには、ご当地グルメとしての決定的な弱点があるのです」
「致命的な弱点?」
はてさてなんだろうと、フィネステラ嬢と支配人が顔を見交わしました。
「これをごらんなさい。極秘に手に入れた、優勝した黄金カレーの詳細レポートですわ」
提示された書類には、「美味い!」だの「最高!」だのの賛辞が連なっています。
「問題ないんじゃない?」
「いいえ、その下の方ですわ」
お嬢様に指し示されて、フィネステラ嬢と支配人が視線を移しました。そこには、カレーの価格が書いてありました。
「何これ、外食だとしても、桁が二つぐらい多いんだけど……。この値段で売っていたってことなの?」
ちょっとびっくりして、フィネステラ嬢が聞き返しました。
「いいえ、それは下代です。原材料費がその価格なので、人件費などを入れれば、その倍以上でないと正常な販売はできませんわ。それに、流通量の問題で、原料を確保するのも困難ですわ」
「倍! へたしたら、魔導バイク買えますよ!!」
そんな超高額の食べ物など、物好きな大商人ぐらいしか買いません。
どうやら、郷祭ではイベントのために稀少なスパイスを無償提供したらしく、採算度外視だったようです。食べられる数も限定だったことからもうなずけます。大量に作りたくても、材料がなかったでしょう。
「そんな高い物で客引きなんかできませんわ。その点、ラーメンというパスタであれば、比較的安価で作ることができます。リアルブルーの方は、ペッパーをふんだんに使うなどという暴挙にでる場合もあるようですが、香辛料は絶対条件ではないそうなので、なんとかなりそうです」
なるほど、クリムゾンウェストの庶民でも購入できることは重要です。それに、リアルブルーの者にとっては、なぜか郷愁を誘うようで、充分な求心力があります。
かくして、商店街で御当地ラーメンコンテストが開かれることになったのでした。
海の幸はヴァリオス港から、穀物や野菜類はジェオルジに手配できますし、器具などはフマーレで特注できそうです。
後は、リアルブルーの無数にあるラーメンを再現してもらうか、クリムゾンウェスト風の新ラーメンを創作してもらうだけです。
「さあ、調理開始ですわ!」
商店会会議の場で、セレーネ・リコお嬢様が言いました。
「ラーメン? 何それ?」
フィネステラ案内嬢が、聞き返します。なんだか、最近聞いたことがあるような、ないような名前です。
「パスタの一種ですわ。リアルブルーでは、各地方でオリジナルのパスタ料理を御当地ラーメンとして地域活性化に利用しているのです」
「だったら、パスタでいいじゃない」
「それでは、他の都市の商店街と大差ないでしょう。特に、フマーレなんかと一緒にされては、困るではありませんか」
身も蓋もないフィネステラ嬢の言葉を一蹴して、お嬢様が言いました。
「このラーメンというのが、購買欲をかきたてるのですわ。人は、珍しい物に群がるのです。そこでです、大々的に、御当地ラーメンコンテストをこの商店街で開き、優勝したラーメンをヴァリオス御当地ラーメンとして商店街で認定してしまうのです」
完璧な販売戦略だと、お嬢様が胸を張りました。
「確かに、先日ジェオルジで行われた郷祭で、ラーメンはグルメ大会の2位に輝いたそうですからな」
デレトーレ支配人が、少し興味を引かれたように言いました。
「2位? なんで1位のにしないの?」
ありえないとばかりに、フィネステラ嬢がツッコミました。
「確か、優勝は、カレーとかいう食べ物でしたな」
記憶を頼りに、支配人が補足しました。
「ええ、その通りですわ。けれども、カレーには、ご当地グルメとしての決定的な弱点があるのです」
「致命的な弱点?」
はてさてなんだろうと、フィネステラ嬢と支配人が顔を見交わしました。
「これをごらんなさい。極秘に手に入れた、優勝した黄金カレーの詳細レポートですわ」
提示された書類には、「美味い!」だの「最高!」だのの賛辞が連なっています。
「問題ないんじゃない?」
「いいえ、その下の方ですわ」
お嬢様に指し示されて、フィネステラ嬢と支配人が視線を移しました。そこには、カレーの価格が書いてありました。
「何これ、外食だとしても、桁が二つぐらい多いんだけど……。この値段で売っていたってことなの?」
ちょっとびっくりして、フィネステラ嬢が聞き返しました。
「いいえ、それは下代です。原材料費がその価格なので、人件費などを入れれば、その倍以上でないと正常な販売はできませんわ。それに、流通量の問題で、原料を確保するのも困難ですわ」
「倍! へたしたら、魔導バイク買えますよ!!」
そんな超高額の食べ物など、物好きな大商人ぐらいしか買いません。
どうやら、郷祭ではイベントのために稀少なスパイスを無償提供したらしく、採算度外視だったようです。食べられる数も限定だったことからもうなずけます。大量に作りたくても、材料がなかったでしょう。
「そんな高い物で客引きなんかできませんわ。その点、ラーメンというパスタであれば、比較的安価で作ることができます。リアルブルーの方は、ペッパーをふんだんに使うなどという暴挙にでる場合もあるようですが、香辛料は絶対条件ではないそうなので、なんとかなりそうです」
なるほど、クリムゾンウェストの庶民でも購入できることは重要です。それに、リアルブルーの者にとっては、なぜか郷愁を誘うようで、充分な求心力があります。
かくして、商店街で御当地ラーメンコンテストが開かれることになったのでした。
海の幸はヴァリオス港から、穀物や野菜類はジェオルジに手配できますし、器具などはフマーレで特注できそうです。
後は、リアルブルーの無数にあるラーメンを再現してもらうか、クリムゾンウェスト風の新ラーメンを創作してもらうだけです。
「さあ、調理開始ですわ!」
リプレイ本文
●御当地ラーメン大会
「それでは、ただいまより、御当地ラーメン大会を開催したいと思います」
センサーレ・クリティコ氏の司会で、コンテストが開始されました。
商店街の案内所前CAM像中央広場に設営されたステージ横には、厳選された参加者が待機していました。
まずはこのステージでラーメンのプレゼンをしてから、屋台で実際にラーメンの販売をする予定です。実売の人気と、実際にヴァリオスの御当地ラーメンとしての特徴をよく出しているかと、人々に広まるだけの汎用性を持っているかで審査員によって審査されます。
●ヨーグルト味噌ラーメン
「それでは、エントリーナンバー1。超級まりお(ka0824)さんのヨーグルト味噌ラーメンから紹介していただきましょう」
司会者の紹介で、まりおがステージに上がってきました。
ぺこりとお辞儀してから、まりおがオリジナルのラーメンを作り始めました。
「ええと、港町ヴァリオスということなので、スープは魚介系のスープをベースとしました。まずはこの一夜干しの魚をよく煮込みます。この海の味たっぷりのスープを、丁寧に濾過するわけです。見てください、この黄金の美しいスープを」
おおっうっと、観客たちから感嘆の声があがりました。黄金色の美しいスープです。
「このスープに、東方伝来の味噌を溶かします」
この瞬間に、観客の中のリアルブルーのハンターたちはうんうんとうなずきましたが、クリムゾンウェストの人々の顔がキョトンとなりました。
「味噌って何?」
商店街の案内所のフィネステラ受付嬢が、横にいたトレナーレ支配人に訊ねました。
「リアルブルーの調味料のようですね」
「知らなーい」
支配人の答えに、フィネステラ嬢がちょっと顰めっ面をします。
やはり、味噌はクリムゾンウェストでは特殊すぎたのでしょうか。だがしかし、これから味噌をヴァリオスの特産にしてしまえばいいのです。できれば……。
けれども、まりおには秘策がありました。
麺を入れてできあがった味噌ラーメンに、ヨーグルトで煮て柔らかくしたチャーシューを載せます。そして、その上にたっぷりとヨーグルトをトッピングしたのです。
観客席からは、悲鳴と感嘆の声があがりました。
どうやら、今度はリアルブルー側から悲鳴があがって、クリムゾンウェスト側からは感嘆の声があがったようです。
ラーメンの常識からはゲテモノに見えるヨーグルトですが、パスタにヨーグルトソースという感覚のクリムゾンウェストの人々には、極端な違和感はなかったようです。
「ヨーグルト味噌ラーメン。絶品ですよ!」
白濁した味噌ラーメンを皆に見せて、まりおがアピールしました。
試食は、ヴァリオス魔術学院資料館館員のセリオ・テカリオ女史です。
「いただきます……」
何やら、消化促進の印を切ってから、セリオ女史がラーメンを食べ始めました。
「どう? うまい? おいしい?」
気になるのか、セリオ女史の顔をのぞき込むようにして、まりおが訊ねました。ちょっと邪魔です。
「あら、予想外にさっぱりとして、酸味の中にも甘みと辛みがあって、美味しいですね」
身構えていたセリオ女史が、緊張を解いて答えました。どんな人体実験につきあわされるのかと思っていたのに、予想外に美味しかったようです。
「ヨーグルト味噌ラーメン、美味しいよー」
●つみれ団子入りあっさり醤油ラーメン
「それでは、続いてのラーメンを御紹介しましょう。エントリーナンバー2。レイオス・アクアウォーカー(ka1990)さんです。郷祭BCグルメ大会二位の実力を発揮してくれるのでしょうか。本日作るラーメンは、つみれ団子入りあっさり醤油ラーメンとのことです」
壇上が、まりおからレイオスに入れ替わります。
「オレのラーメンは、今回は鶏ガラに魚介の出汁を加えたスープをベースにしている。コクがありながら、あっさりとしたスープだ。ここに醤油、なければ魚醤を加えて醤油ラーメンにしている」
これまた醤油という言葉にクリムゾンウェストの人々が首をかしげますが、魚醤でもいいと言うことで、なんとなく納得します。
実際、味噌や醤油は大量生産はされていませんが、サルヴァトーレ・ロッソや東方からの人々が増えていますから、作ろうと思えば時間の問題で何とかはなるでしょう。
麺は、スープがよく絡むようにと、細麺をチョイスです。
「具は、葱とチャーシューに野菜、そしてつみれ団子だ」
定番の具材に加えて、レイオスは、つみれを加えてきました。
「団子は鶏と魚の二種類あるぜ。候補でエビやイカもあるから店によって変えることで、その店の特色を出せるのが強みだ」
つみれと言うと、鶏肉、あるいはイワシなどが定番です。どちらも手に入りやすく、醤油ラーメンによく合います。さらに、エビやイカのつみれ団子も、地元の食材を活かしたいいチョイスです。家庭でも、簡単に作れそうです。
試食は、商店街駐在のピロータ・アッフィラート少尉です。
「うん、この肉団子とスープが実に合っていて美味しいですよ」
実に、好みと合ったらしく、つみれ団子をほくほくと頬ばりながら駐在さんが言いました。
「どうか、つみれ団子入りあっさり醤油ラーメンをよろしく!」
●とんこつらーめん
「続いては、エントリーナンバー3。エルバッハ・リオン(ka2434)さんのとんこつらーめんです」
レイオスに替わって、壇上にはリオンが現れました。
「リアルブルーの知識を総動員して作ったとんこつラーメンです。スープは、豚の骨を強火でじっくりと煮込んで出汁を取った物です」
リアルブルーの料理本を読んで仕入れた知識を総動員して、リオンがプレゼンを始めました。料理なんて、魔法薬の調合の延長にあるような物です。きちんとした手順と材料と時間さえあればバッチリ……のはずです。
豚の骨は、特に旨味が強い膝関節の部分を厳選して煮込んでいます。おかげでかなり濃いスープが取れましたが、匂いもまた結構強烈です。
麺はスープに負けない腰の強さと歯ごたえを出すため、差し水をしながら慎重に茹でています。ヴァリオスの人々であれば、アルデンテは確実に分かっているでしょうから、麺の腰も分かってくれることでしょう。
具である豚肉は、やや厚めにスライスして、香ばしく炙っています。チャーシューにしなかったのは、とんこつスープに負けないようにするためです。最後に、刻んだ葱を載せれば完成です。
試食は、ヴァリオスのファッションリーダー、モード氏です。
「うむ、綺麗な油の浮かんだ乳白色のスープ。その上に浮かぶ、食欲をそそる焦げ目のついた豚肉。しかし、独特の強烈な匂いが鼻につく……」
軽く顔を顰めながら、モード氏がラーメンを一口啜りました。見ているリオンとしては、ちょっとドキドキの瞬間です。
「だが、それがいい」
ぱあっと、顔をほころばせてモード氏が言いました。
「食べているうちに、独特の匂いなど気にならなくなる。いや、むしろ、それが癖になる。そして、この深い味わい。ボーノ!」
「ありがとうございます」
心の中で、「よしっ!」とガッツポーズをとりながら、リオンが丁寧にモード氏にお辞儀をしました。
「皆様、とんこつラーメンをよろしくお願いいたします」
●花ラーメン
「さあ最後の参加者です。エントリーナンバー4。星野 ハナ(ka5852)さんは、花ラーメンで参加です」
司会者に紹介されて、リオンに替わって、ハナが登場しました。
「それでは、新しい名物となる花ラーメンの作り方をお教えします♪」
軽快な音楽に乗って、ハナが豚肉ブロックを取り出しました。
「本当は、お茶煮豚にしたかったんですけどぉ」
そう言いつつ、用意した寸胴に魚醤、白ワイン、砂糖を入れてコトコトと煮詰めます。本来は、醤油と日本酒と味醂を使うのですが、普及しているわけではないので、今は代用品です。リゼリオ辺りであれば、今回分の量であれば手に入ったかもしれませんが、それでは継続してラーメンを販売できません。
「これを二時間ほど弱火で煮込みます。あ、あれは、何だあ!」
説明した後、ハナが空を指さして叫びました。人々がつられて空を見あげる間に、そそくさと寸胴をすでに煮込んだ物と取り替えます。
「魔法の寸胴で、二時間煮込んだ物がこちらです」
トングで寸胴の中から豚肉の紅茶煮を取り出すと、ハナはそれをスライスしました。
麺は、強力粉550グラムに、薄力粉300グラム、卵二個を繋ぎにして、塩油を加えてよくこねます。こちらも、あれはなんだあ魔法で、すでにこねられて細く刻まれた物に一瞬にしてチェンジです。
「こちらは、事前によく揉んで縮れ麺にします。かん水ないから比較的あっさりめです」
麺をもみもみしながら、ハナが説明しました。
「トッピングとしては、半熟卵を醤油と味醂に一日浸けた煮卵を用意します」
卵を手に、ハナが説明します。頭の中にある元々のレシピなので、代替品じゃない調味料を口走っちゃってはいますが。
またもや、すでに煮込まれた半熟煮卵にチェンジです。二つに割ると、とろりと黄身が流れ出そうとします。
「スープは……」
寸胴に、鶏ガラスープを用意すると、香草などの野菜屑と、水、煮豚の制作中に浮かび出たラードを加えて二時間ほど煮……られた物が現れます。よく漉した後に、そこへ、醤油や味醂の代用品と砂糖を加えて完成です。
いよいよ仕上げとばかりに、ラーメンどんぶりにスープを満たし、ゆであがった麺を投入します。その上に隙間なく煮豚を花弁のように敷き詰め、中央に煮卵をおいて、その上に細く刻んだ白髪葱を盛り上げます。
「肉好き肉食感を前面に出しましたぁ」
喜多方風の花ラーメンの完成です。
試食は、セレーネ・リコお嬢様です。
「お好みで、唐辛子かニンニクかすりゴマをどうぞ」
何とか手に入れたトッピングを添えて、ハナが言いました。
「これは、煮卵が最高ですわ。豚も、独特の香りとコクですわね。とてもバランスの取れた、美味しい食べ物ですわ」
完食です。
●試食
「それでは、それぞれの屋台で、各ラーメンを御試食ください。お気に召しましましたら、器を案内所にある集計所にお返しくださいませ」
紹介も終わり、お待ちかねの試食タイムとなりました。
「やっとかあ。真新しい物には、チャレンジする価値があるわよね」
待ちくたびれていたミチーノ・インフォルが、物珍しさから、まりおの屋台に直行しました。他にも、似たような者たちが殺到しています。ただ、やはり、クリムゾンウェストの人々が中心のようです。
「うん、見た目よりは美味しい!」
一方のとんこつラーメンの方には、リアルブルーのハンターたちが集まっていました。
「うんうん、この味、懐かしいなあ」
「これで、紅ショウガがあれば完璧なんだが」
とはいえ、やはり好き嫌いははっきりと出るようです。
「うーん、リゼリオ以外で、これに巡り会えるとは♪」
サングラスをかけたアットリーチェちゃんが、スープが飛び散るのも構わずに、元気よく麺を啜ります。今日は、モデル仕事もオフなので、遠慮しません。ラーメン大会と聞いて、楽しみにしてやってきたようです。
「この、クリーミーな味わいが最高なのよね」
理想のとんこつラーメンに出合えたのか、まりおは御満悦です。
「色々な団子があるんですね」
つみれ団子入りラーメンの方は、食べる人ごとに団子が違うので、様々な味を楽しんでいるようでした。
「これって、芋の団子なんかでもいけますかな?」
司会者も、ちゃっかりと食べています。
「普通に美味しい。これがラーメンかあ」
「久々のチャーシュー麺だなあ」
花ラーメンの方は、まんべんなく人々に受けています。
「意外と好みに合いましたね。とはいえ、本格的な物を自分で作るとなると、材料の調達から難儀しそうですが」
たくさんのチャーシューを堪能しながら、リオンが言いました。一手間かけた紅茶煮はなかなかのお味です。
「ほう、あっさりとしたいいラーメンだな。具もいい。ライバルながら、なかなかやる」
じっくりと味を分析するようにスープを啜りながら、レイオスが言いました。煮卵がなかなかです。
●審査
さて、こちらは案内所奧の審査会場です。試食をした四人と、司会者、支配人、案内嬢が、ああだこうだと議論しています。
集められた丼も、一つ二つの差で、誤差の範囲内というところでした。トップが花ラーメン、一つ差でつみれ団子入りラーメン、さらに一つ差でヨーグルト味噌ラーメンととんこつラーメンが同率3位です。
「さて、味ですが、これは、どれも特徴があって甲乙つけがたい」
モード氏の言葉に、一同がうなずきます。
「だが、とんこつは、抜きん出て特徴的な味であった」
「えー、でもあの匂いがちょっと……」
とんこつ一押しのモード氏ですが、女性陣はちょっと渋い顔です。
「美味しいですけれど、商店街があの匂いにつつまれると、ちょっと……。特に、ファッション系は、服に匂いがついたら大変ですわ」
御当地ラーメンとなった物は、商店街で常時販売されるわけですから、周囲への影響は考えなければいけません。
「花ラーメンは、バランスの取れたいい物だと思いますが。特に、あの卵が絶品ですわ」
お嬢様が、花ラーメンを押します。
「ですが、その卵が問題です。半熟という調理法だと、食中毒の恐れがあります」
セリオ女史が、キランとメガネを輝かせて指摘しました。
サルモネラ菌云々までは把握していないまでも、生卵が危ないことはクリムゾンウェストでも知られています。特に、資料館の館員であれば、そのへんのことは一般知識として知っていました。ゆで卵でも、半熟の場合は長時間放置した場合には菌が繁殖する危険があります。サルヴァトーレ・ロッソ製の卵の様な完全洗浄された物であれば問題はありませんが、クリムゾンウェストの農家の卵はそこまで衛生管理されていません。
「問題としては、各ラーメンで使われている醤油や味噌という調味料ですね。特に味噌は、安定した供給は厳しいものがあります」
商品として、問題があると支配人が指摘しました。
「でも、醤油は、魚醤によく似ていましたが」
同じ物ではないのかと、駐在さんが首をかしげます。
「厳密には別物ですね。味わいが微妙に変わってしまいます」
セリオ女史が、説明します。
「その点に関しては、ジェオルジに移住したサルヴァトーレ・ロッソの住民に、商店街専門の醤油・味噌の製造を打診中です。軌道に乗れば、商店街である程度販売するぐらいは供給可能になるかもしれません」
お嬢様が、現在展開中の事業を口にしました。同盟全域に供給するにはとても無理ですが、商店街のみの限定独占販売であれば何とかなるように、ジェオルジ外れのフィーネ村に小さな工場を建設中です。もっとも、まだまだ計画半ばというところですが。
「ただ、やはり、唐辛子やコショウなどのスパイスは、予算的にも無理ですね」
コンテスト参加者たちから再三要求されたスパイスですが、それを使うと一気に高級料理になってしまい、単なる珍しい食べ物で終わってしまいます。お財布にも優しくありません。
「まあ、御当地ラーメンと銘打つのですから、ヴァリオスらしさが必要でもありますな」
支配人が、ポイントとなる点を再確認しました。
「その点については、虹の七色ラーメンがなかったことが悔やまれるな」
「それは、あまり食べたくないかも」
モード氏の言葉に、フィネステラ嬢がうっと言う顔をしました。ママの作ったレインボーラーメンは、あまり食欲がそそられるとは思いません。それに、虹色だと、怪盗アルコパレーノのようです。
「魚を出汁に使っていたラーメンは、その点港町のヴァリオスらしいとも言えますね。それに、お団子も、海産物をよく活かしていますよ」
駐在さんの言葉に、一同がうなずきました。
「後は、ブームとなるには、家庭で簡単に真似できないといけませんね。麺は商店街で販売するとして、焼き豚なども、簡単に買えるようにする必要はありますね」
「それと、飽きちゃわないようにしないと、だめだと思うよ」
セリオ女史の言葉に、フィネステラ嬢がつけ足しました。
そうなると、奇をてらうよりもオーソドックスで、なおかつ容易に変化がつけられる物がベストということになります。さらに、安価で、材料も簡単に商店街で用意できる物でなければなりません。
「では、そろそろ、投票と参りましょう」
意見も出そろったと言うことで、司会者がまとめに入りました。
●結果発表
「お待たせしました。それでは、いよいよ、ヴァリオス御当地ラーメンの発表です」
結果用紙を持った司会者が壇上に上がると、ドラムロールが元気よく開始されました。
「晴れあるヴァリオス御当地ラーメンに選ばれたのは……」
司会者が、もったいぶって一呼吸おきました。
「レイオス・アクアウォーカーさんのつみれ団子入りあっさり醤油ラーメンです!」
「うおおお!」
名前を呼ばれて、レイオスが思わず立ちあがって両手を挙げます。
「飽きの来ないバランスの取れた味わい、御家庭でも作れる簡単さ、そして、ヴァリオスの特産品をつみれにして入れることにより、無限のバリエーションを作り出せるところが評価されましたわ」
審査委員長として、お嬢様が総評を述べました。
「これからは、つみれ団子入りラーメンをヴァリオスラーメンと呼称することといたします。副賞として、レイオスさんには商店街内でのラーメン屋台の許可証を贈呈いたします」
壇上に上がったレイオスに、賞状や副賞が手渡されました。
「それでは、皆様、これからもヴァリオスラーメンを御贔屓にお願いいたします!」
「それでは、ただいまより、御当地ラーメン大会を開催したいと思います」
センサーレ・クリティコ氏の司会で、コンテストが開始されました。
商店街の案内所前CAM像中央広場に設営されたステージ横には、厳選された参加者が待機していました。
まずはこのステージでラーメンのプレゼンをしてから、屋台で実際にラーメンの販売をする予定です。実売の人気と、実際にヴァリオスの御当地ラーメンとしての特徴をよく出しているかと、人々に広まるだけの汎用性を持っているかで審査員によって審査されます。
●ヨーグルト味噌ラーメン
「それでは、エントリーナンバー1。超級まりお(ka0824)さんのヨーグルト味噌ラーメンから紹介していただきましょう」
司会者の紹介で、まりおがステージに上がってきました。
ぺこりとお辞儀してから、まりおがオリジナルのラーメンを作り始めました。
「ええと、港町ヴァリオスということなので、スープは魚介系のスープをベースとしました。まずはこの一夜干しの魚をよく煮込みます。この海の味たっぷりのスープを、丁寧に濾過するわけです。見てください、この黄金の美しいスープを」
おおっうっと、観客たちから感嘆の声があがりました。黄金色の美しいスープです。
「このスープに、東方伝来の味噌を溶かします」
この瞬間に、観客の中のリアルブルーのハンターたちはうんうんとうなずきましたが、クリムゾンウェストの人々の顔がキョトンとなりました。
「味噌って何?」
商店街の案内所のフィネステラ受付嬢が、横にいたトレナーレ支配人に訊ねました。
「リアルブルーの調味料のようですね」
「知らなーい」
支配人の答えに、フィネステラ嬢がちょっと顰めっ面をします。
やはり、味噌はクリムゾンウェストでは特殊すぎたのでしょうか。だがしかし、これから味噌をヴァリオスの特産にしてしまえばいいのです。できれば……。
けれども、まりおには秘策がありました。
麺を入れてできあがった味噌ラーメンに、ヨーグルトで煮て柔らかくしたチャーシューを載せます。そして、その上にたっぷりとヨーグルトをトッピングしたのです。
観客席からは、悲鳴と感嘆の声があがりました。
どうやら、今度はリアルブルー側から悲鳴があがって、クリムゾンウェスト側からは感嘆の声があがったようです。
ラーメンの常識からはゲテモノに見えるヨーグルトですが、パスタにヨーグルトソースという感覚のクリムゾンウェストの人々には、極端な違和感はなかったようです。
「ヨーグルト味噌ラーメン。絶品ですよ!」
白濁した味噌ラーメンを皆に見せて、まりおがアピールしました。
試食は、ヴァリオス魔術学院資料館館員のセリオ・テカリオ女史です。
「いただきます……」
何やら、消化促進の印を切ってから、セリオ女史がラーメンを食べ始めました。
「どう? うまい? おいしい?」
気になるのか、セリオ女史の顔をのぞき込むようにして、まりおが訊ねました。ちょっと邪魔です。
「あら、予想外にさっぱりとして、酸味の中にも甘みと辛みがあって、美味しいですね」
身構えていたセリオ女史が、緊張を解いて答えました。どんな人体実験につきあわされるのかと思っていたのに、予想外に美味しかったようです。
「ヨーグルト味噌ラーメン、美味しいよー」
●つみれ団子入りあっさり醤油ラーメン
「それでは、続いてのラーメンを御紹介しましょう。エントリーナンバー2。レイオス・アクアウォーカー(ka1990)さんです。郷祭BCグルメ大会二位の実力を発揮してくれるのでしょうか。本日作るラーメンは、つみれ団子入りあっさり醤油ラーメンとのことです」
壇上が、まりおからレイオスに入れ替わります。
「オレのラーメンは、今回は鶏ガラに魚介の出汁を加えたスープをベースにしている。コクがありながら、あっさりとしたスープだ。ここに醤油、なければ魚醤を加えて醤油ラーメンにしている」
これまた醤油という言葉にクリムゾンウェストの人々が首をかしげますが、魚醤でもいいと言うことで、なんとなく納得します。
実際、味噌や醤油は大量生産はされていませんが、サルヴァトーレ・ロッソや東方からの人々が増えていますから、作ろうと思えば時間の問題で何とかはなるでしょう。
麺は、スープがよく絡むようにと、細麺をチョイスです。
「具は、葱とチャーシューに野菜、そしてつみれ団子だ」
定番の具材に加えて、レイオスは、つみれを加えてきました。
「団子は鶏と魚の二種類あるぜ。候補でエビやイカもあるから店によって変えることで、その店の特色を出せるのが強みだ」
つみれと言うと、鶏肉、あるいはイワシなどが定番です。どちらも手に入りやすく、醤油ラーメンによく合います。さらに、エビやイカのつみれ団子も、地元の食材を活かしたいいチョイスです。家庭でも、簡単に作れそうです。
試食は、商店街駐在のピロータ・アッフィラート少尉です。
「うん、この肉団子とスープが実に合っていて美味しいですよ」
実に、好みと合ったらしく、つみれ団子をほくほくと頬ばりながら駐在さんが言いました。
「どうか、つみれ団子入りあっさり醤油ラーメンをよろしく!」
●とんこつらーめん
「続いては、エントリーナンバー3。エルバッハ・リオン(ka2434)さんのとんこつらーめんです」
レイオスに替わって、壇上にはリオンが現れました。
「リアルブルーの知識を総動員して作ったとんこつラーメンです。スープは、豚の骨を強火でじっくりと煮込んで出汁を取った物です」
リアルブルーの料理本を読んで仕入れた知識を総動員して、リオンがプレゼンを始めました。料理なんて、魔法薬の調合の延長にあるような物です。きちんとした手順と材料と時間さえあればバッチリ……のはずです。
豚の骨は、特に旨味が強い膝関節の部分を厳選して煮込んでいます。おかげでかなり濃いスープが取れましたが、匂いもまた結構強烈です。
麺はスープに負けない腰の強さと歯ごたえを出すため、差し水をしながら慎重に茹でています。ヴァリオスの人々であれば、アルデンテは確実に分かっているでしょうから、麺の腰も分かってくれることでしょう。
具である豚肉は、やや厚めにスライスして、香ばしく炙っています。チャーシューにしなかったのは、とんこつスープに負けないようにするためです。最後に、刻んだ葱を載せれば完成です。
試食は、ヴァリオスのファッションリーダー、モード氏です。
「うむ、綺麗な油の浮かんだ乳白色のスープ。その上に浮かぶ、食欲をそそる焦げ目のついた豚肉。しかし、独特の強烈な匂いが鼻につく……」
軽く顔を顰めながら、モード氏がラーメンを一口啜りました。見ているリオンとしては、ちょっとドキドキの瞬間です。
「だが、それがいい」
ぱあっと、顔をほころばせてモード氏が言いました。
「食べているうちに、独特の匂いなど気にならなくなる。いや、むしろ、それが癖になる。そして、この深い味わい。ボーノ!」
「ありがとうございます」
心の中で、「よしっ!」とガッツポーズをとりながら、リオンが丁寧にモード氏にお辞儀をしました。
「皆様、とんこつラーメンをよろしくお願いいたします」
●花ラーメン
「さあ最後の参加者です。エントリーナンバー4。星野 ハナ(ka5852)さんは、花ラーメンで参加です」
司会者に紹介されて、リオンに替わって、ハナが登場しました。
「それでは、新しい名物となる花ラーメンの作り方をお教えします♪」
軽快な音楽に乗って、ハナが豚肉ブロックを取り出しました。
「本当は、お茶煮豚にしたかったんですけどぉ」
そう言いつつ、用意した寸胴に魚醤、白ワイン、砂糖を入れてコトコトと煮詰めます。本来は、醤油と日本酒と味醂を使うのですが、普及しているわけではないので、今は代用品です。リゼリオ辺りであれば、今回分の量であれば手に入ったかもしれませんが、それでは継続してラーメンを販売できません。
「これを二時間ほど弱火で煮込みます。あ、あれは、何だあ!」
説明した後、ハナが空を指さして叫びました。人々がつられて空を見あげる間に、そそくさと寸胴をすでに煮込んだ物と取り替えます。
「魔法の寸胴で、二時間煮込んだ物がこちらです」
トングで寸胴の中から豚肉の紅茶煮を取り出すと、ハナはそれをスライスしました。
麺は、強力粉550グラムに、薄力粉300グラム、卵二個を繋ぎにして、塩油を加えてよくこねます。こちらも、あれはなんだあ魔法で、すでにこねられて細く刻まれた物に一瞬にしてチェンジです。
「こちらは、事前によく揉んで縮れ麺にします。かん水ないから比較的あっさりめです」
麺をもみもみしながら、ハナが説明しました。
「トッピングとしては、半熟卵を醤油と味醂に一日浸けた煮卵を用意します」
卵を手に、ハナが説明します。頭の中にある元々のレシピなので、代替品じゃない調味料を口走っちゃってはいますが。
またもや、すでに煮込まれた半熟煮卵にチェンジです。二つに割ると、とろりと黄身が流れ出そうとします。
「スープは……」
寸胴に、鶏ガラスープを用意すると、香草などの野菜屑と、水、煮豚の制作中に浮かび出たラードを加えて二時間ほど煮……られた物が現れます。よく漉した後に、そこへ、醤油や味醂の代用品と砂糖を加えて完成です。
いよいよ仕上げとばかりに、ラーメンどんぶりにスープを満たし、ゆであがった麺を投入します。その上に隙間なく煮豚を花弁のように敷き詰め、中央に煮卵をおいて、その上に細く刻んだ白髪葱を盛り上げます。
「肉好き肉食感を前面に出しましたぁ」
喜多方風の花ラーメンの完成です。
試食は、セレーネ・リコお嬢様です。
「お好みで、唐辛子かニンニクかすりゴマをどうぞ」
何とか手に入れたトッピングを添えて、ハナが言いました。
「これは、煮卵が最高ですわ。豚も、独特の香りとコクですわね。とてもバランスの取れた、美味しい食べ物ですわ」
完食です。
●試食
「それでは、それぞれの屋台で、各ラーメンを御試食ください。お気に召しましましたら、器を案内所にある集計所にお返しくださいませ」
紹介も終わり、お待ちかねの試食タイムとなりました。
「やっとかあ。真新しい物には、チャレンジする価値があるわよね」
待ちくたびれていたミチーノ・インフォルが、物珍しさから、まりおの屋台に直行しました。他にも、似たような者たちが殺到しています。ただ、やはり、クリムゾンウェストの人々が中心のようです。
「うん、見た目よりは美味しい!」
一方のとんこつラーメンの方には、リアルブルーのハンターたちが集まっていました。
「うんうん、この味、懐かしいなあ」
「これで、紅ショウガがあれば完璧なんだが」
とはいえ、やはり好き嫌いははっきりと出るようです。
「うーん、リゼリオ以外で、これに巡り会えるとは♪」
サングラスをかけたアットリーチェちゃんが、スープが飛び散るのも構わずに、元気よく麺を啜ります。今日は、モデル仕事もオフなので、遠慮しません。ラーメン大会と聞いて、楽しみにしてやってきたようです。
「この、クリーミーな味わいが最高なのよね」
理想のとんこつラーメンに出合えたのか、まりおは御満悦です。
「色々な団子があるんですね」
つみれ団子入りラーメンの方は、食べる人ごとに団子が違うので、様々な味を楽しんでいるようでした。
「これって、芋の団子なんかでもいけますかな?」
司会者も、ちゃっかりと食べています。
「普通に美味しい。これがラーメンかあ」
「久々のチャーシュー麺だなあ」
花ラーメンの方は、まんべんなく人々に受けています。
「意外と好みに合いましたね。とはいえ、本格的な物を自分で作るとなると、材料の調達から難儀しそうですが」
たくさんのチャーシューを堪能しながら、リオンが言いました。一手間かけた紅茶煮はなかなかのお味です。
「ほう、あっさりとしたいいラーメンだな。具もいい。ライバルながら、なかなかやる」
じっくりと味を分析するようにスープを啜りながら、レイオスが言いました。煮卵がなかなかです。
●審査
さて、こちらは案内所奧の審査会場です。試食をした四人と、司会者、支配人、案内嬢が、ああだこうだと議論しています。
集められた丼も、一つ二つの差で、誤差の範囲内というところでした。トップが花ラーメン、一つ差でつみれ団子入りラーメン、さらに一つ差でヨーグルト味噌ラーメンととんこつラーメンが同率3位です。
「さて、味ですが、これは、どれも特徴があって甲乙つけがたい」
モード氏の言葉に、一同がうなずきます。
「だが、とんこつは、抜きん出て特徴的な味であった」
「えー、でもあの匂いがちょっと……」
とんこつ一押しのモード氏ですが、女性陣はちょっと渋い顔です。
「美味しいですけれど、商店街があの匂いにつつまれると、ちょっと……。特に、ファッション系は、服に匂いがついたら大変ですわ」
御当地ラーメンとなった物は、商店街で常時販売されるわけですから、周囲への影響は考えなければいけません。
「花ラーメンは、バランスの取れたいい物だと思いますが。特に、あの卵が絶品ですわ」
お嬢様が、花ラーメンを押します。
「ですが、その卵が問題です。半熟という調理法だと、食中毒の恐れがあります」
セリオ女史が、キランとメガネを輝かせて指摘しました。
サルモネラ菌云々までは把握していないまでも、生卵が危ないことはクリムゾンウェストでも知られています。特に、資料館の館員であれば、そのへんのことは一般知識として知っていました。ゆで卵でも、半熟の場合は長時間放置した場合には菌が繁殖する危険があります。サルヴァトーレ・ロッソ製の卵の様な完全洗浄された物であれば問題はありませんが、クリムゾンウェストの農家の卵はそこまで衛生管理されていません。
「問題としては、各ラーメンで使われている醤油や味噌という調味料ですね。特に味噌は、安定した供給は厳しいものがあります」
商品として、問題があると支配人が指摘しました。
「でも、醤油は、魚醤によく似ていましたが」
同じ物ではないのかと、駐在さんが首をかしげます。
「厳密には別物ですね。味わいが微妙に変わってしまいます」
セリオ女史が、説明します。
「その点に関しては、ジェオルジに移住したサルヴァトーレ・ロッソの住民に、商店街専門の醤油・味噌の製造を打診中です。軌道に乗れば、商店街である程度販売するぐらいは供給可能になるかもしれません」
お嬢様が、現在展開中の事業を口にしました。同盟全域に供給するにはとても無理ですが、商店街のみの限定独占販売であれば何とかなるように、ジェオルジ外れのフィーネ村に小さな工場を建設中です。もっとも、まだまだ計画半ばというところですが。
「ただ、やはり、唐辛子やコショウなどのスパイスは、予算的にも無理ですね」
コンテスト参加者たちから再三要求されたスパイスですが、それを使うと一気に高級料理になってしまい、単なる珍しい食べ物で終わってしまいます。お財布にも優しくありません。
「まあ、御当地ラーメンと銘打つのですから、ヴァリオスらしさが必要でもありますな」
支配人が、ポイントとなる点を再確認しました。
「その点については、虹の七色ラーメンがなかったことが悔やまれるな」
「それは、あまり食べたくないかも」
モード氏の言葉に、フィネステラ嬢がうっと言う顔をしました。ママの作ったレインボーラーメンは、あまり食欲がそそられるとは思いません。それに、虹色だと、怪盗アルコパレーノのようです。
「魚を出汁に使っていたラーメンは、その点港町のヴァリオスらしいとも言えますね。それに、お団子も、海産物をよく活かしていますよ」
駐在さんの言葉に、一同がうなずきました。
「後は、ブームとなるには、家庭で簡単に真似できないといけませんね。麺は商店街で販売するとして、焼き豚なども、簡単に買えるようにする必要はありますね」
「それと、飽きちゃわないようにしないと、だめだと思うよ」
セリオ女史の言葉に、フィネステラ嬢がつけ足しました。
そうなると、奇をてらうよりもオーソドックスで、なおかつ容易に変化がつけられる物がベストということになります。さらに、安価で、材料も簡単に商店街で用意できる物でなければなりません。
「では、そろそろ、投票と参りましょう」
意見も出そろったと言うことで、司会者がまとめに入りました。
●結果発表
「お待たせしました。それでは、いよいよ、ヴァリオス御当地ラーメンの発表です」
結果用紙を持った司会者が壇上に上がると、ドラムロールが元気よく開始されました。
「晴れあるヴァリオス御当地ラーメンに選ばれたのは……」
司会者が、もったいぶって一呼吸おきました。
「レイオス・アクアウォーカーさんのつみれ団子入りあっさり醤油ラーメンです!」
「うおおお!」
名前を呼ばれて、レイオスが思わず立ちあがって両手を挙げます。
「飽きの来ないバランスの取れた味わい、御家庭でも作れる簡単さ、そして、ヴァリオスの特産品をつみれにして入れることにより、無限のバリエーションを作り出せるところが評価されましたわ」
審査委員長として、お嬢様が総評を述べました。
「これからは、つみれ団子入りラーメンをヴァリオスラーメンと呼称することといたします。副賞として、レイオスさんには商店街内でのラーメン屋台の許可証を贈呈いたします」
壇上に上がったレイオスに、賞状や副賞が手渡されました。
「それでは、皆様、これからもヴァリオスラーメンを御贔屓にお願いいたします!」
依頼結果
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- 王国騎士団“黒の騎士”
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/19 11:21:51 |