大江家の忠臣、主のための言の葉

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/06/21 19:00
完成日
2016/06/26 18:42

みんなの思い出

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オープニング

●大江家
 エトファリカ連邦国の天ノ都。
 端っこにある大江家では重い空気がのしかかる。
 大江 紅葉(kz0163)に仕える三人の老翁が口をつぐんでいたことを話したのだった。
 話は昔住んでいた里で墓参りもできたし、供養もできた、景色も見たよとよかったと三爺は話す。何か得体のしれないものがいるというのを隠した。帰宅したときに紅葉がいなかったため、黙っていれば知られぬだろうと三人は思っていたことが発端である。
 そのため、話を聞いた紅葉は何か違和感を覚えた。ソサエティに話を聞きに行き、情報を集め、彼らの家族に問いただし、本人から聞いたのだった。
「里には妖怪がおります」
「女性の姿のようだとも……」
「宗主の屋敷のあった方面にいるのかもと……」
 しおれる三人。
「……わかりました。あなた方が無事でハンターの方々も怪我をしたとはいえ無事でした……なので事実を隠したことは許します」
「……」
 三人は何か言いたげであったが、それ以上は口を開かなかった。幼いころから見ている主たる紅葉が何を考えているか想像がついたから。止めることはできまい、とあきらめた。

●依頼
 紅葉は陰陽寮に赴き、上司と話した。
「……結局のところ、大物がいるなら排除しないといけないわけだがな……上が不在だからなぁ」
「だから、家のこととして私が片づけるのです」
「なら、その地域にいただろう武家を立ててやるってのはどうだ? 復興したくてうずうずしてるかもしれないし」
「知りません」
「は?」
「武家の人がいた認識がないんです。大江の本拠地があった里、大江の里で通じますもん」
「……待て? え、というか……昔から下っ端役人、生活できれば万歳だったもんな……」
「そうですよ? 気づけば、詩天みたいにちゃんとした上の人がいないわけです」
 守っていた武家がつぶされたか、そうそうに逃げてしまったのかいずれか不明。調べればわかるかもしれないが、紅葉は興味がないらしく知らないらしい。なお、里人たちは今の大江の家の周りにいるらしいことはこの上司も知っている。
「つまり……里人にしてみれば、どうにかなっちゃった武家よりも、知識馬鹿でもちゃんと守ってくれた大江家がいいと?」
 紅葉は照れて笑う。
「いや、怒るところだろう! 知識馬鹿って言ったぞ」
「いえ、本当ですし。父も本好きでしたし、母にしてみれば『夫が本と浮気している』だったらしいですよ」
「だめだろう、それは! ……でも、最後まで里を守ったのはお前の家なんだもんな」
 だから傭兵たちと両親は命を落とした。それでも里人や紅葉たちを逃がす時間は稼いだのだ。
「わかった。ハンターへ頼め。依頼料はこっちで持つから。兵士は動かせない……まあ、荷物運びくらいはできそうだがな……」
 身軽にハンターだけのほうがましだろう。
「で、浄化の儀式するのか」
「え、無理ですよ?」
「……だろうな」
「それ、私が馬鹿にされてます?」
 紅葉が怒ったので、上司は笑う。
「もう少し、まじめに修業してくれれば」
「最近、がんばっているんですよ」
 カードバインダーを取り出し、ぶんぶんと振る。
「お前、クラスなんだ」
 上司は苦虫をかみつぶしたかのような顔だ。
「符術師です」
「なぜ、物理に訴えているんだ」
「符をぱあとやるより早いですし」
「修業もっとちゃんとしろ」
「いたっ」
 パスンと本が頭を直撃した。

●声
 さあああ。
 風の音が響く。

 おおおん。
 慟哭が響く。

 ひょおお。
 悲鳴のような隙間風のような音が通り抜ける。

 ふふふふ。
 誰かが笑っているようだ、生きている者は通るハンターくらいだというのに。

 用があって南下するハンターは耳にする音。
 飛ぶ鳥も減り、地を行く生物もいなくなる。
 歪虚によるマテリアルの汚染を感じ取り近づかない。
 少しずつもとに戻るとしても、どれだけの時間がかかるのか?
 浄化を、正のマテリアルを、人の住む地を!
 否、そこにいるモノにはそれは敵であり、無こそ正しい。
「すべては無に向かう。緩やかにそして素早く。ねえ、あなた、いつ戻ってきてくれるのかしら? 匂い……そう、あの人の家の匂いがあったわ。ああ、ああ、いつになったら戻ってくるのかしら? あたくしの大切な子供たちを連れてきてくれるのかしら? 早く、早く会いたいわ。そして、食べてしまわないと、はぐれないように。そう、はぐれないように」
 海と陸が見える島の中をそれは歩く。ゆったりとずるりずるりと。燃えた家を見て、ふと怒りを思い出す。
「ああ、忌々しい! あたくしのものを奪うものはすべて敵! 焼き尽くしてくれるわ」
 女は激高した。

リプレイ本文

●設営
 大江の里だった島を眺められる位置にキャンプを設営する。潮の満ち引きで島の出入りが制限されるため、妖怪を警戒しての位置。
 大江 紅葉(kz0163)は生まれ育った里を見つめる。妖怪に囲まれたあの日、逃げられたのは奇跡だと思った。
 ザレム・アズール(ka0878)は島にいた女性のことを考える。
(あの妖怪はこの里の人間だった可能性……紅葉の……断定はできない。万が一の時は俺が紅葉を守ろう)
 ザレムは煮炊き用の火を起こして紅葉を見る。彼女はアシェ-ル(ka2983)と何か話している。
「あの刻令術の農具、今はどんな感じでしょうか?」
 紅葉が刻令術に興味を持って農具を買いに行ったときに、助言を頼んだ中にアシェ-ルはいた。
「近所の方の家でも使って、重宝していますよ」
「良かったです。紅葉さんのおかげですね!」
 紅葉は微笑む。
 雪継・白亜(ka5403)は周囲をバイクで見回ってきた。
「妖怪の姿は少ない、キャンプするにはいいんだが」
 白亜の報告を聞いて紅葉は眉を顰める。
「ハンターが多く通ったからというのであれば良いのですけど」
 エルバッハ・リオン(ka2434)は考える。天ノ都に近いほうが減るなら分かるのだが、その逆だ。
「……そこに住む者が恐ろしくて逃げているのか、逆にそこに集まっているのか?」
 ロニ・カルディス(ka0551)は腕を組む。やはり気になっているのは、里に住み着いている存在のことであった。
「ただいま。地図の状況とはあまり変わってないみたいだよ」
 アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)は身の軽さを生かし里の偵察に行ったのだ、以前ハンターが作った地図の照合も兼ね。
「敵が警戒して雑魔でもいるのかと思ったけどまったく遭遇しなかった」
 アルトが情報を伝える。
「あの……妖怪に関してですが……単純に敵というわけでもない雰囲気もありましたが……。あの……心あたりありませんか? もちろん、妖怪ですから、退治することが最大の弔いです」
 ミオレスカ(ka3496)はおずおずと指摘をする。紅葉に覚悟も必要であると。
 その妖怪を見ている白亜は固唾をのんで紅葉を見る。
「そうですね……なんにせよ、歪虚である身を終わらせることが弔いです」
 紅葉は告げる。
「……時間をかけていいというなら敵の排除および調査終了をさせてもいい」
 ロニの言葉に紅葉はうなずいた。
「ありがとうございます。食料と皆さんの体力を見てですね」
 紅葉は心強いとハンターを見渡した。

●遭遇
 翌日、里へ一行は慎重に進む。この道が見えるところに妖怪がいないのか、幸いなことに攻撃は受けない。
「もし、妖怪がこの道を知っていたら外に出て行ってしまっている?」
 ザレムの言葉を誰も否定はしない。
「出ていかれると強い妖怪の場合、討伐が大変になってしまいますね」
「そうですね。ここで戦闘になったら、符術も間近に見られますね」
 エルバッハとアシェ-ルは紅葉のそばにいる。魔術師であり後衛なため、依頼人であり符術師の紅葉のそばにいる。
「……紅葉殿、顔色が悪いぞ?」
 白亜はおろおろとする。
「……いえ、その……期待されるほど、符術の腕が……ないので……」
 紅葉と戦いに同行したことがある者は気づく、確かに術を使ったのを見たことがない。
「そんなことないじゃないですか? ……あれ?」
 ミオレスカは否定する中、何か不安がよぎる。ふと、出かけ際に友人との会話がよぎり、慌てて周囲を見渡す。
「……ザレムさん、左に跳んでくださいっ!」
 切羽詰まったミオレスカの声にザレムはとっさに動いた。
 ドシーンという音がして石が落ちた。
「あそこか?」
 ザレムとアルトが走っていく。
 ミオレスカと白亜が追いかけるように途中で止まり、石の位置を探る。撃ち落とすことはできたとしても、元を断たないといけない。
「紅葉さん、隠れてくださいね」
 エルバッハは盾を構え前に立つ。
 アシェ-ルはいざとなったらかばうため、敵の位置を把握しようとする。
「あの2人が速い」
 ロニは追いかけるとはぐれることもあるため、紅葉の防御に回った。

 敵の位置を確認し、おびき出す等必要な行動を考え走ったザレムとアルト。
「適当に投げるんだし見えるところにいるよね」
 石はアルトたちに飛んで来ない。紅葉たちがいるところは見ているということだろう。
「石は止めないと……いた」
 ザレムの視線の先に人間のような姿の妖怪を見た。腕は異様に長く、手は地面につく……妖怪手長という類いだろう。一心不乱に大きな石を投げている。
「雑魔は気づいたな、ボクたちに」
 アルトは超重刀を構える。一直線にそれらはやってくる。
「……せっかくなら、試したほうがいいね。ボクがまず雑魔を蹴散らす」
 アルトはマテリアルを活性化させ、雑魔たちの中を一気に駆け抜ける。それらは避けきれず一気に塵になる。
 その間にザレムが距離を詰め、試作型重機関銃で手長を撃った。
 手長は逃げ始める。
「まずい」
 ザレムはジェットブーツを用い、距離を詰めデルタレイを放った。
「今?」
 アルトは非常に速い動きで手長に近づき、技を放つ。
 二人の攻撃で倒されたそれは塵に返る。
「……あっけない……気のせいかもしれないけど、傷がふさがっていくのが見えたんだ」
「……他の敵がいた場合、厄介だね」
 二人は元のところに戻る。
 石が当たってけがをした者を、マテリアルヒーリングでロニが治していた。
 この日はこれで終わる。これ以上、探索した場合、島で一晩をあかす危険が生じるためだった。

●激怒
 雨が降り出す寸前という暗い空が広がる。
 昨日、交戦した場所も妖怪がいなかった。
 奥に、奥に……ハンターたちは進む。
 一旦、道を上がり切る。今いける開けた場所であり、島の一番高いところでもある。
 そこに立つとどんよりとした海が見える。風が髪や服をなぶる。
 その場所は墓地でもあり、新しく作った墓もある。
「……これがみなさんが作ってくれた」
 報告書で見ている紅葉はしみじみとそこを眺める。紅葉はしゃがむと、祈る言葉としぐさを行う。
 里の情景はあっても、個々を思い出すことは難しい。しっかり記憶するにはあまりにもはかない日常の風景。
「……あっ、ダメですねしみじみしちゃ。みなさん、さて、お仕事に戻りましょう」
「終わったら、思う存分しみじみしていいぞ」
 白亜の言葉に紅葉はうなずいた。
「敵は来たみたいだな……」
 ロニはハンターたちの中間地点に立つ。攻守、回復のための位置。
 妖怪たちの様子を見た瞬間、ハンターたちの表情は固くなる。
 女房装束の女性の妖怪には、鬼女のような角も見えるが、体つきが豊満なこと、若干年上だということを加味しても、紅葉にどこか似ている。この妖怪は紅の君と仮称で記す。
 それ以外の妖怪は足長――人間のようでいて、足が異様に長い妖怪。動物だったと思われる雑魔たちがいる。
「広いところに出てきてくれるのは嬉しいが」
 アルトは渋い顔になる。
「……やっぱりというべきか」
 ザレムは交渉すべきかと迷う。
「……紅葉さん」
 ミオレスカは銃を構え、射程のためにじりっと移動する。紅葉のそばにいる者が何かあれば止めるだろうと信じて。
「は、母上?」
 紅葉は声はこの妖怪の姿を明確にした。
「どこじゃ、私の子たちは! それに邪魔する者は許さぬ。ここは我らが地、我らの里。他の者は出ていけ! 何度も警告した!」
 妖怪は声を静かに、怒りを発する。
 アシェ-ルは紅葉の袖をぎゅっと握る。
「ここは人間の住む地だ。できれば、出て行ってほしい」
 紅葉の反応を伺いつつ、ザレムが告げた。
「何を言うか! わたくしたちが住まいしこの地を汚すのはうぬらじゃ! ここで夫と誘拐された子らを待っておるのじゃ」
「……紅葉さんはそこにいるだろう」
 ザレムは迷ったが告げる。
「匂いはする。大江の家の匂いが。しかし、いぬ。我が知る者はおらぬ! 匂いがするとなると、うぬらが連れ去った犯人! どこに連れ去られたのか、可愛い子ら! 紅葉は少し大きいが、若葉はまだ幼子! 母が恋しくてたまらぬと泣いておろうに」
「……は、母上……」
「紅葉殿!」
 白亜の声音は厳しい、叱るように。
「我は友である紅葉殿を逝かせない……生きてほしい。家臣たちのこともある! だから動揺するな」
「そうです。動揺するなとはいっても仕方がないですが……今は、考えている場合ではないです」
 白亜の言葉に続き、エルバッハが盾を構え、攻撃に備えつつ告げる。
「どうしてとかは後でにして、今は生きているみんなで戻れることを考えましょう! ……私には親とか家とかどうしていいかわからないですけど、考えればできます!」
 アシェ-ルは寂しそうな笑顔に、紅葉はハッとした。紅葉の袖をつかむアシェ-ルの手にそっと触れる。
「そうですね……。ここまで付き合ってくださった皆様! お願いします。私は自力でどうにかしますので、全力をもって……妖怪を討ってください」
 紅葉はきっぱりと告げる。
「おおおおお、貴様が我が夫と子らを連れて行ったのかえ!」
 紅の君の怒気に反応した雑魔たちは、号令下走り出した。雑魔は数が多く回避や防ぐことが難しく、ハンターたちに傷を刻む。足長は一足飛びにハンターに接敵し、前にいる者を蹴り飛ばす。接敵さえ注意すれば動きは大きいが、よけないと危険だ。
「多いなら減らせばいいっ! 行くよっ!」
 アルトは仲間の中心から離れ、そして戻る際に素早く刃を繰り出す。目に見える敵をすべて打ち払う。運よく逃げるモノがあっても、次には別のハンターにとどめを刺される。
「紅葉さんにまずかけておきます」
 アシェ-ルはストーンアーマーをかけ、戦場を注視する。
「減らすならこちらもいきますよ!」
「技を惜しむ場合じゃない」
 ミオレスカと白亜がそれぞれ【フォールシュート】を放った。
「味方を巻き込まないなら……【ファイアーボール】」
 エルバッハが位置を見つつ魔法を放つ。
「まずはこいつをどうにかしないと」
 ザレムの【デルタレイ】が雑魔を足長を巻き込む。
「まだまだこれからだから」
 ロニは祈りをささげ、仲間の傷をいやす。

 雑魔の数は多いが減れば脅威ではなくなる。
 足長の一撃は重いが、よけてしまえば終わりだった。
 紅の君は妖怪を助け魔法を紡ぐ。水の刃がザレムを襲った。
「……意外と水属性が利かないんでしょうか」
 エルバッハは首をかしげる。いずれの攻撃もできる準備はしているため大きな影響はない。
「そればかりは試してみないとわからないぞ」
 ロニの答えに彼女はうなずいた。

 残ったのは紅の君。
「……母上、あなたや父上……傭兵たちのおかげで私たち……紅葉も若葉もじいたちも逃げられました。母上、あなたの怒り……は生き残れなかったことについてでしょうか? それとも、別の怒りがあるのでしょうか?」
 紅葉は話しかける、少しでも理解がしたかった。
「許さぬ! 私の子らを連れ去った輩を! 子らは見つけたら奪われないように食らわねば!」
 紅の君の体からふわりと炎があふれ出る。
「……まずいっ! 来ます、炎が」
 紅葉が叫んだ直後、紅の君を中心に紅蓮の炎が吹きあがる。
 近づくものを燃やし尽くす炎であり、己が許したくないものを燃やし尽くす炎。
 炎で視界も悪く直接狙うのは難しい。それでも魔法と銃弾で狙う。
「……私が真ん中に行きま……」
「そこでおとなしくしていて! 一撃狙って難しかったら一旦退くから」
 アルトがピシッと紅葉に言う。
「なら、次の攻撃の直後……こちらは手を止めるぞ?」
 ザレムは確認するとアルトが「その方が安心」と前を見て言う。
「アルトさん、これでちょっとは耐えられるはず!」
 アシェ-ルがストーンアーマーをアルトにかけた直後、紅の君への魔法と銃弾の攻撃が再開される。
 アルトは炎の中に飛び込む。息苦しくなると想定し、攻撃の間の呼吸は自然と止まる。
 素早く寄り、超重刀を紅の君に叩き込む。
「己!」
 紅の君は耐え、アルトに反撃する。
 アルトは少し下がり、仲間の攻撃を促す。
「もう一回!」
 誰もがマテリアルに祈りを乗せ、叩き込んだ。もう一度、アルトが刃を振う。
「……紅葉……若葉……あな……た……ああ、そこにいたのね」
 炎が消え、紅の君も言葉を残し消えた。
 膝をついたアルトに仲間が寄る。
「ありがとうございます」
 紅葉はアルトを抱きしめた。

●屋敷
 がれきがあるが乗り越えて妖怪が住んでいたところを確認しに行く。隠れている妖怪がいると危険であるため慎重に。
 しばらく歩くと開けたところに出る。無人なら草がぼうぼうもありうるのだが、ここは生命力が弱い歪虚に支配された土地であった。
「……紅葉さん!」
 エルバッハとアシェ-ルは紅葉を両脇から支えるように手を出した。
「大丈夫ですよ? ただ、見覚えがあったから」
 屋根と壊れた壁の建物がある。
「……そ、そうです! 書物です、書物! 見てきますね!」
 紅葉が妙に明るい声を出して走り出した。白亜は心配になってついていく。それを「警戒しますね」とミオレスカがついていく。
「書物? そういえばそんな話あったな……」
 ザレムがそわっとなるがロニが止める。紅葉の様子を考えると一人にすべきなのかもしれないと自然と止まる。
 紅葉は屋敷の形を覚えていた。
「……やっぱりだめですね……」
 書庫だったところに入るが、風雨によってそれらは腐りはてている。
「無理はしなくていいから」
 白亜は部屋には入らず、壁の陰から声をかけた。
「無理はしていませんよ? だって、母はとっくに鬼籍に入ったのですから。あれは抜け殻、です。そうです、なぜ鬼籍というか知っていますか? リアルブルーの……」
「もう、いいから!」
 空元気は聞くにつらく、白亜は思わず声を荒げた。
「だ、大丈夫ですか? 何か出ましたか?」
 ミオレスカが、白亜を壁の陰から見つめている。それだけでなく、他の者たちも見える位置にいた。
「……ふふっ。紅葉殿、我らは外にいるから何かあったら声をかけてくれ」
 白亜は仲間が同じことを思っていると気づいて小さく笑った。
「ど、どうでしたか?」
 アシェ-ルの問いかけに白亜は答える。
「妖怪がいなければ里にとどまってもいいんですけれど、キャンプはあそこですから……」
「しばらく様子を見ればいい。警戒と少しでも道の状況の回復でもしていよう」
 エルバッハの言葉に続けロニが方針を提案する。がれき一つでも取り除けば、そのあと楽になるだろうと。
「そうだね。ボクも動けるし……」
「警戒班に入りましょう」
 アルトにミオレスカが力を込めて告げた。

 寄せて返す波の音が里に響く。
 滅びた者への鎮魂歌であり、解放してくれた者への感謝の言葉。

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重体一覧

参加者一覧

  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 幻獣王親衛隊
    ザレム・アズール(ka0878
    人間(紅)|19才|男性|機導師
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 東方帝の正室
    アシェ-ル(ka2983
    人間(紅)|16才|女性|魔術師
  • 茨の王
    アルト・ヴァレンティーニ(ka3109
    人間(紅)|21才|女性|疾影士
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • 冒険者
    雪継・白亜(ka5403
    人間(紅)|14才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 打ち合わせ
雪継・白亜(ka5403
人間(クリムゾンウェスト)|14才|女性|猟撃士(イェーガー)
最終発言
2016/06/21 18:56:35
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/21 06:28:05