ゲスト
(ka0000)
【闘祭】ぼくたちにできること
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/24 12:00
- 完成日
- 2016/07/04 06:24
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
最近、リゼリオの街はいつも以上に賑やかになっている。
理由は簡単だ。
ユニオンやソサエティがバックアップとなって開催する武闘大会――これが、ハンターだけでなく街全体を活気づけさせているのだ。
その熱気は、リゼリオの子どもたちにも伝わっている様で――
●
「すごい人だねえ」
ファナ(kz0176)は、目を丸くして街の賑わいを見つめている。
「そりゃあ、ハンターたちにとっては晴れ舞台だしね」
「街中がどんちゃん、お祭り騒ぎ!」
リゼリオにある学舎『ヤマシナ学院』の生徒達も、興奮気味だ。
もともとリアルブルー出身の院長を中心に、ふたつの世界、あるいはクリムゾンウェスト全体の架け橋になるべくカリキュラムを組まれているこの学校では、他の学校よりも色んな意味で個性豊かでリベラルな雰囲気がただよっている。
「うちの近くに住むハンターの人も、今回参加したいって言ってたし!」
クラスメイトの一人がそう言うと、何人かの生徒が頷く。少なくない人数がこの大会に参加しているのは容易に見て取れた。
「街にも、出店が出てたりするしね。こういうのって、いかにもおまつりってかんじで、いいよね!」
――と、そんな中でクラスメイトの一人がふと提案をした。
「ぼくたちも、なにか出店って出来ないかな?」
面白そうだし、自分たちもそう言う立場で参加したい、という事なのだろうか。
「あ、それ素敵! 先生に相談してみようよ!」
生徒達はすっかり大はしゃぎして、さっそく院長であるヤマシナ氏のもとへ向かった。
●
「ほほう。面白いアイデアですね」
ヤマシナ院長は楽しそうに目を細める。
「……でも、こういう祭りの時はなにかと危険です。たちの悪い大人が、必要以上に絡んでくる可能性もある。なにかそう言うときの為の対策はあるんですか?」
院長が静かに尋ねると、
「……ハンターさんに、お手伝いしてもらうのはどうでしょうか」
そう言ったのはファナだった。ファナは今までに何度もハンターの手を借りた事がある。今この学院にいるのだって、ハンターの手助けがなければどうなっていた事か。
「なるほど。では、ハンターの皆さんと協力して、楽しい武闘大会の手助けをしましょう。これも社会経験の一貫ですからね」
院長は笑って、頷いて見せた。
最近、リゼリオの街はいつも以上に賑やかになっている。
理由は簡単だ。
ユニオンやソサエティがバックアップとなって開催する武闘大会――これが、ハンターだけでなく街全体を活気づけさせているのだ。
その熱気は、リゼリオの子どもたちにも伝わっている様で――
●
「すごい人だねえ」
ファナ(kz0176)は、目を丸くして街の賑わいを見つめている。
「そりゃあ、ハンターたちにとっては晴れ舞台だしね」
「街中がどんちゃん、お祭り騒ぎ!」
リゼリオにある学舎『ヤマシナ学院』の生徒達も、興奮気味だ。
もともとリアルブルー出身の院長を中心に、ふたつの世界、あるいはクリムゾンウェスト全体の架け橋になるべくカリキュラムを組まれているこの学校では、他の学校よりも色んな意味で個性豊かでリベラルな雰囲気がただよっている。
「うちの近くに住むハンターの人も、今回参加したいって言ってたし!」
クラスメイトの一人がそう言うと、何人かの生徒が頷く。少なくない人数がこの大会に参加しているのは容易に見て取れた。
「街にも、出店が出てたりするしね。こういうのって、いかにもおまつりってかんじで、いいよね!」
――と、そんな中でクラスメイトの一人がふと提案をした。
「ぼくたちも、なにか出店って出来ないかな?」
面白そうだし、自分たちもそう言う立場で参加したい、という事なのだろうか。
「あ、それ素敵! 先生に相談してみようよ!」
生徒達はすっかり大はしゃぎして、さっそく院長であるヤマシナ氏のもとへ向かった。
●
「ほほう。面白いアイデアですね」
ヤマシナ院長は楽しそうに目を細める。
「……でも、こういう祭りの時はなにかと危険です。たちの悪い大人が、必要以上に絡んでくる可能性もある。なにかそう言うときの為の対策はあるんですか?」
院長が静かに尋ねると、
「……ハンターさんに、お手伝いしてもらうのはどうでしょうか」
そう言ったのはファナだった。ファナは今までに何度もハンターの手を借りた事がある。今この学院にいるのだって、ハンターの手助けがなければどうなっていた事か。
「なるほど。では、ハンターの皆さんと協力して、楽しい武闘大会の手助けをしましょう。これも社会経験の一貫ですからね」
院長は笑って、頷いて見せた。
リプレイ本文
●
『闘祭』――そんな略称も浸透した、今回の闘技大会。
出場するハンターたちはもちろんのこと、リゼリオの住民たち、それに周囲の住人たちがみなそわそわしているのはそのせいだ。
祭り、と呼ばれるその通り、街中がどこか浮き足だった雰囲気で、西方諸国は勿論、東方からはるばると物見遊山にやってきたものもどうやらいるようだ。
いつもよりも活気に溢れている目抜き通りを見て、ファナ(kz0176)は頬をぱっと赤らめ、嬉しそうにくるくると回る。
「すごいね! 人がいっぱい! やり甲斐がありそう……!」
そう。
ファナたち『ヤマシナ学院』の生徒は軽食の出店を出すことで、この大賑わいのリゼリオで活動しようとしていたのだ。
ただ、それをするのに子どもたちだけではいかにも心許ない。――と言うことで、ヤマシナ学院側が、ハンターたちを雇うことに決めたのだ。おどもたちに危害が及ばない様に、そして安全に円滑に社会経験を積むことの出来る様に。
ヤマシナ学院の生徒はいろいろな立場の子どもがいる。世界も種族も、無論国家もぶち抜いた、リベラルな校風を売りにしていることもあって、生徒は本当に多種多様。ある意味、ハンターたちと同じような生徒構成と言えるのかも知れない。
しかしどちらにしろ、子どもには変わりない。それを護るべくしているのが、ハンターたちなのだ。
●
「つーわけで! 今回は頑張ろうぜ! イエーイ!」
そう元気よく宣言したのはリアルブルー出身の記憶喪失青年・キー=フェイス(ka0791)だ。黒髪に碧眼、それなりに整った顔立ちをした青年だが、好むものは酒と女、まあ一見すると遊び人にしか見えないタイプである。ただノリの良さは本物で、子どもたちと一緒に遊べることを本当にたのしみにしているという感じだ。
子どもたちもそんなキーの明るい態度に拍手を浴びせる。こういった明るい、いかにも賑やかしと言った人が来るのは子どもにとっては案外嬉しいことなのだ。
「でもどうしてハンターに頼んだんだ?」
そう尋ねてきたのはザレム・アズール(ka0878)、同じような黒髪青目でもキーとはずいぶん雰囲気の違う青年である。きっと涼やかな瞳とその出自等が影響しているのだろう、どことなくクールさをうかがわせる。
「ああ、それなら……子どもたちに万が一のことがないことに、という事みたいだね……闘技大会ってだけあって、なんとなく質の悪い奴もいる感じだし……」
そうフォローをするネイハム・乾風(ka2961)は草食系と言った感じの青年だ。クリムゾンウェストの出身だが祖父は転移者という環境で育ったらしいが、感情の起伏はどこか乏しそうに見える。その言葉をうけて、ザレムもなるほど、と頷いてみせる。
「傷を癒やしている間に闘祭の熱気からはだいぶおいて行かれてしまいましたけれど……またこうして学院の皆さんにお会いできて、嬉しく思います。楽しい思い出にしましょうね」
笑顔を見せるのはシルウィス・フェイカー(ka3492)、おっとりとした白い髪の弓使いだ。以前、学院のだした依頼に参加したことのある彼女は、この学院のハンターとの付き合い方の様なものをなんとなく判っているせいだろうか、なんだか嬉しそうだ。
「……なるほど、子どもの手伝いの割りに収入が多そうだなって思ってたんだけれど、そういうことね」
そう納得したのは眼鏡をかけた女性、雲類鷲 伊路葉 (ka2718)。リアルブルー出身の軍人上がりだ。依頼内容に若干疑問を持っていた様だが、なるほど、学校側からの援助があるということなら、報酬がそれなりにあるのも納得のいく話だ。
「ちなみに詳しく聞いていないんだけど、どんな学校なのかしら? 折角だし、学院らしさを足してみたりしたらどう? 服装なり、店の名前なりに、ね」
すると子どもたちは一生懸命説明をしてくれる。非常にリベラルな校風と、学院長がリアルブルー出身であるということなどを、口々に言ってくれる。なるほど、ずいぶん癖のある学校らしい。
「にしても、ファナもずいぶん元気そうで安心したわ。覚えてる? 私のこと」
そう言って嬉しそうにファナに微笑むのは以前開拓地「ホープ」で彼に出会ったことのあるエイル・メヌエット(ka2807)だ。医師としても依頼に励む彼女のことは、無論ファナもしっかりと覚えていた。
「エイルさんも、来てくれたんですね!」
ファナは嬉しそうに笑う。のりのかかったカッターシャツに少し裾広がりのハーフパンツ――キュロットスカートにも近い――を身につけたファナは、初めてエイルが出会った頃に比べて頬も紅色に染まり、年齢相応の快活さがうかがえる。相変わらず自身についての記憶は曖昧らしいが、それでも元気なのは喜ばしいことだ。
「改めて挨拶するわね。私はエイル・メヌエットです。どうぞよろしくね。……ところで、学院の要素を取り入れるのも勿論賛成だけれど、なにか目標を決めない? 大会に参加しているハンターのみんなも、自分の目標のために頑張っているでしょう? だから、それをお手本にして、目標を達成することが出来たら、きっともっと嬉しいと思うの」
子どもたちはおお、と頷く。
「学院の要素は……それならリアルブルー風の味付けとかかな。先生にも聞いたり出来ると思うし。目標は……そうだなあ……毎日の売り上げ数、とかかな?」
そして子どもたちとハンターたちは相談して――こっくりと頷いた。おおよその方針が固まったようだ。
子どもたちも大人も、皆楽しそうに笑いながら。
●
学院の子どもたちが出す出店は、サンドイッチとソフトドリンクを販売する店だ。
「でも、今回の件は生徒の皆さんで発案したのですね。こう見えてもわたしはお店を経営する立場にもありますから、それなりにお役にたつはずです。なにか困ったことがあったら、言ってくださいね」
シルウィスの言葉に、子どもたちもこっくりと頷く。販売するサンドイッチは学院の色を出せるならリアルブルー風で、ということで、鳥のテリヤキサンドと卵サンドのセットはどうだろうか、と子どもたちが提案した。反対意見も特にないので、それが採用されることになる。無論、他にもクリムゾンウェストの各地の名産品を使った「王国セット」「帝国セット」なんてものを用意しているあたり、商才に秀でた子が混じっているのかも知れない。
(こういうときに大切なのは役割の分担ですけれど……これは無論お店に限ったことじゃないし、それに気付いてくれるといいのですけれど)
『先生』でもあるシルウィスは、そういうことはあえて口には出さない。そうやって自分から「見つける」ことも学習なのだから。
「じゃあ、商品の搬送や搬出は俺たちの役目かな」
ネイハムが伊路葉とうなずき合う。
「あと、これ……近くで売ってた果物だけどさ。折角他にもお店があるんだし、そう言うところで買った果物をはさむのもいいんじゃないかな。甘いものは好きな人、多いしね」
「あ、あまいの、あたしもすき!」
子どもたちはきゃっきゃと言いあう。子どもというのはいろいろと目新しいものに飛びつくものだ。
「食中毒を起こしてもまずいから、保冷庫、持ってきたぞ」
ザレムが大きな箱を持ってくる。中は氷が入っていることもあって適度に冷えており、その中に保存していれば傷むのを多少なりともおさえることが出来るだろう。ありがたい話だった。
「ああ、でも料理をするなら食べものを扱うわけだから、手は清潔にしないとね」
エイルは医師らしい一言を添える。
「店の飾り付けは私たちも手伝うわ」
伊路葉も頷き、きびきびと準備を進める。
「そういえば、店の名前とかはどうするの?」
エイルも伊路葉も気にしていたこと。
「それは――」
少年の一人が、にかっと笑った。
「ヤマシナサンド!」
単純明快。だがそれが確かにそれらしくて、だれもが納得する名前だった。
●
さて、ここまでは前日までに出来る準備だ。
町の一角にちいさな出店を作り、「ヤマシナサンド」と記した幟を立てる。エイルたちが手伝ってくれたおかげでイートインスペースの様なものもできたし、仕込みは上々、と言ったところだろうか。
「おーい。こっちの荷物、運んでおいたぜ!」
キーがそう言いながら食材を運んできてくれる。ちなみに彼の出で立ちは、時間の余裕を見てこしらえたという、謎の白い三角形を頭にはめている。
「……ありがとうっていうか、それなに?」
子どもの一人が問うと、キーはドヤ顔でこう答えた。
「ふっ、これぞサンドイッチマン! おれ自らがキャラクターになって、呼び込みをするつもりだ!」
その発想は面白い。面白いが、似合っているかどうかというか、普通サンドイッチマンというのはそう言うものではない様な気がする。まあ本人が満足しているから、あえて突っ込む様なことはしないが。
それにしても、さすがは闘技大会。街全体が浮かれ調子で、どこか賑やかにごった返している。キーや伊路葉といった面々が周囲を注意しながら宣伝をしている。子どもたちの作ったサンドイッチは手軽に食べられると言うこともあって、さっそく注文を受けていた。
そして少し遅れてやってきたザレムは、にかっと笑った。
「実は俺もマスタークラスで参戦してるんだ。今は二回戦までのインターバル」
「えーっ、どうだったの!」
子どもたちは目を丸くしてザレムに問いかける。青年は嬉しそうに頷いて見せた。
「一回戦は無事勝利。このあとも応援してくれよな?」
すると子どもたちは嬉しそうにこくこく、と頷く。こんなさりげない子どもたちとのやりとりも、ザレムに取ってみれば心強い応援だ。
「そういえば、ザレムさんは怪我とか大丈夫?」
尋ねたのはエイル。医療の心得をもつ彼女は、ザレムをさっと見て、切り傷などに止血剤を塗ってやる。こういう細やかなサービスを添えることでついでに軽食を食べて貰えるかも、なんてことも考えているあたり、結構な策士なのかも知れない。
さて、そんなサンドイッチマン(?)に扮したキーは、というと、子どもを一人肩車した上で
「そこのお兄さんお姉さん、サンドイッチいかがっすかー?」
と声を張り上げてくれている。
まだまだ子どもたちは経済というものをよく分かっていない。興味本位でこの企画に参加した子どもだって多いはずだ。
(そんな子どもには、是非ものを作ることの大変さや、販売できたときの喜びなんてものを知ってもらいたいな)
見た目は軽薄そうな感じでも、結構考えているのだ。
ついでに言うと、サンドイッチマンとして店の周囲に立っていることにより、店に危害が加えられない様に見張ることも出来る。楽しそうに仕事に励む子どもたちをみて、まぶしく感じるのもきっとこどもたちのまっすぐさゆえなのだろう。
「あら、美味しそう」
そう言ってにっこり笑って見せたのは――伊路葉。
彼女はネイハムを伴った「サクラ」としても動いているのだった。
だれも買ってくれない、買って貰えないままでは子どもたちの気力にも関わってくる。それにこうやって「買って美味しい」と思わせるのも、周囲には効果覿面なのだ。
「ああ……何を食べる?」
ネイハムもこのあたりはなれたもので、同僚である伊路葉をエスコートしつつ彼女のぶんもしっかり買ってあげるあたり、ぱっと見た感じがカップルの様で、街を歩く人々にもなかなか好感度の高い様子になっているのはあきらかだった。
「それにしても子どもは元気だし、人も多いし……つかれるね」
ネイハムは苦笑してみせる。顔にはやや疲れの色が見えた。
「じゃあどうしてこの依頼、受けたんです?」
伊路葉に問われ、ネイハムは少し考える。
「……なんとなく、かな? でも雲類鷲さんの子ども時代って、想像つかないなあ」
「そう? こんな感じの頃もあったとは思うんだけど……忘れちゃった」
伊路葉はくつくつ笑うと、ネイハムもついくすりと笑う。たっぷり買ったサンドウィッチの残りはお土産西ようと言いあって、折角なのでサンドウィッチを堪能する二人だった。
●
休憩時間になった隙を縫って、子どもたちも交替で――無論ハンターと一緒に、ではあるが――闘技大会の様子を見に行ったり、あるいはどんちゃん騒ぎの様子を見に行ったり、それぞれのしたいようにしている。しっかり者が多いのだろう、きちんと自分の役目を認識しているのがシルウィスには嬉しい事実だった。
元気の有り余ったリゼリオッ子たちはところどこで騒ぎを起こしかねない行動に出たりもしているが、それもこの盛り上がりのせいなのだろうから、仕方がないと言えば仕方がない。
質の悪い連中がきても、ハンターたちがさらっと対応してみせる。しかもここにはマスタークラス出場者もいるとあって、客引きにもなっていた。
「そういえば、以前ファナがホープで出会ったお兄さん、覚えているかしら? あなたの幸せを願っている人。彼も参加しているのよ」
エイルが楽しそうにそう言ってみると、ファナも目を輝かせる。
「凄いなあ……」
ファナが思わずため息をつくと、
「うんうん、やっぱハンターって凄いな!」
子どもたちも興奮気味だ。
「ハンターになりたい子ってどのくらいいるの?」
試しに聞いてみると、何人かが挙手をする。やはり憧れの存在なのだろう。
無論簡単になれるものではないが、だからこその憧れというものもあるだろうし、だからこそヤマシナ学院ではそう言った人材との交流を進めている。
そしてそれは、きっと双方ともに幸福なことなのだ。
●
やがて日は少しずつ傾きはじめる。
サンドウィッチも最後の一つを売り切ることができ、万々歳の結果となった。
ザレムがお疲れさま、と合間を縫って作ってくれたワッフルを子どもたちに振る舞うと、皆が目を輝かせる。
「ありがとう、ハンターさん! いっぱい、手伝ってくれて!」
子どもたちはまっすぐな瞳で感謝の言葉を述べる。それを見て、ハンターたちもどこかくすぐったい気分になった。
こういう子どもたちが未来を担うのだから、きっとこの星の未来は明るい。
それをひしひしと感じた、今回の出来事だった。
『闘祭』――そんな略称も浸透した、今回の闘技大会。
出場するハンターたちはもちろんのこと、リゼリオの住民たち、それに周囲の住人たちがみなそわそわしているのはそのせいだ。
祭り、と呼ばれるその通り、街中がどこか浮き足だった雰囲気で、西方諸国は勿論、東方からはるばると物見遊山にやってきたものもどうやらいるようだ。
いつもよりも活気に溢れている目抜き通りを見て、ファナ(kz0176)は頬をぱっと赤らめ、嬉しそうにくるくると回る。
「すごいね! 人がいっぱい! やり甲斐がありそう……!」
そう。
ファナたち『ヤマシナ学院』の生徒は軽食の出店を出すことで、この大賑わいのリゼリオで活動しようとしていたのだ。
ただ、それをするのに子どもたちだけではいかにも心許ない。――と言うことで、ヤマシナ学院側が、ハンターたちを雇うことに決めたのだ。おどもたちに危害が及ばない様に、そして安全に円滑に社会経験を積むことの出来る様に。
ヤマシナ学院の生徒はいろいろな立場の子どもがいる。世界も種族も、無論国家もぶち抜いた、リベラルな校風を売りにしていることもあって、生徒は本当に多種多様。ある意味、ハンターたちと同じような生徒構成と言えるのかも知れない。
しかしどちらにしろ、子どもには変わりない。それを護るべくしているのが、ハンターたちなのだ。
●
「つーわけで! 今回は頑張ろうぜ! イエーイ!」
そう元気よく宣言したのはリアルブルー出身の記憶喪失青年・キー=フェイス(ka0791)だ。黒髪に碧眼、それなりに整った顔立ちをした青年だが、好むものは酒と女、まあ一見すると遊び人にしか見えないタイプである。ただノリの良さは本物で、子どもたちと一緒に遊べることを本当にたのしみにしているという感じだ。
子どもたちもそんなキーの明るい態度に拍手を浴びせる。こういった明るい、いかにも賑やかしと言った人が来るのは子どもにとっては案外嬉しいことなのだ。
「でもどうしてハンターに頼んだんだ?」
そう尋ねてきたのはザレム・アズール(ka0878)、同じような黒髪青目でもキーとはずいぶん雰囲気の違う青年である。きっと涼やかな瞳とその出自等が影響しているのだろう、どことなくクールさをうかがわせる。
「ああ、それなら……子どもたちに万が一のことがないことに、という事みたいだね……闘技大会ってだけあって、なんとなく質の悪い奴もいる感じだし……」
そうフォローをするネイハム・乾風(ka2961)は草食系と言った感じの青年だ。クリムゾンウェストの出身だが祖父は転移者という環境で育ったらしいが、感情の起伏はどこか乏しそうに見える。その言葉をうけて、ザレムもなるほど、と頷いてみせる。
「傷を癒やしている間に闘祭の熱気からはだいぶおいて行かれてしまいましたけれど……またこうして学院の皆さんにお会いできて、嬉しく思います。楽しい思い出にしましょうね」
笑顔を見せるのはシルウィス・フェイカー(ka3492)、おっとりとした白い髪の弓使いだ。以前、学院のだした依頼に参加したことのある彼女は、この学院のハンターとの付き合い方の様なものをなんとなく判っているせいだろうか、なんだか嬉しそうだ。
「……なるほど、子どもの手伝いの割りに収入が多そうだなって思ってたんだけれど、そういうことね」
そう納得したのは眼鏡をかけた女性、雲類鷲 伊路葉 (ka2718)。リアルブルー出身の軍人上がりだ。依頼内容に若干疑問を持っていた様だが、なるほど、学校側からの援助があるということなら、報酬がそれなりにあるのも納得のいく話だ。
「ちなみに詳しく聞いていないんだけど、どんな学校なのかしら? 折角だし、学院らしさを足してみたりしたらどう? 服装なり、店の名前なりに、ね」
すると子どもたちは一生懸命説明をしてくれる。非常にリベラルな校風と、学院長がリアルブルー出身であるということなどを、口々に言ってくれる。なるほど、ずいぶん癖のある学校らしい。
「にしても、ファナもずいぶん元気そうで安心したわ。覚えてる? 私のこと」
そう言って嬉しそうにファナに微笑むのは以前開拓地「ホープ」で彼に出会ったことのあるエイル・メヌエット(ka2807)だ。医師としても依頼に励む彼女のことは、無論ファナもしっかりと覚えていた。
「エイルさんも、来てくれたんですね!」
ファナは嬉しそうに笑う。のりのかかったカッターシャツに少し裾広がりのハーフパンツ――キュロットスカートにも近い――を身につけたファナは、初めてエイルが出会った頃に比べて頬も紅色に染まり、年齢相応の快活さがうかがえる。相変わらず自身についての記憶は曖昧らしいが、それでも元気なのは喜ばしいことだ。
「改めて挨拶するわね。私はエイル・メヌエットです。どうぞよろしくね。……ところで、学院の要素を取り入れるのも勿論賛成だけれど、なにか目標を決めない? 大会に参加しているハンターのみんなも、自分の目標のために頑張っているでしょう? だから、それをお手本にして、目標を達成することが出来たら、きっともっと嬉しいと思うの」
子どもたちはおお、と頷く。
「学院の要素は……それならリアルブルー風の味付けとかかな。先生にも聞いたり出来ると思うし。目標は……そうだなあ……毎日の売り上げ数、とかかな?」
そして子どもたちとハンターたちは相談して――こっくりと頷いた。おおよその方針が固まったようだ。
子どもたちも大人も、皆楽しそうに笑いながら。
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学院の子どもたちが出す出店は、サンドイッチとソフトドリンクを販売する店だ。
「でも、今回の件は生徒の皆さんで発案したのですね。こう見えてもわたしはお店を経営する立場にもありますから、それなりにお役にたつはずです。なにか困ったことがあったら、言ってくださいね」
シルウィスの言葉に、子どもたちもこっくりと頷く。販売するサンドイッチは学院の色を出せるならリアルブルー風で、ということで、鳥のテリヤキサンドと卵サンドのセットはどうだろうか、と子どもたちが提案した。反対意見も特にないので、それが採用されることになる。無論、他にもクリムゾンウェストの各地の名産品を使った「王国セット」「帝国セット」なんてものを用意しているあたり、商才に秀でた子が混じっているのかも知れない。
(こういうときに大切なのは役割の分担ですけれど……これは無論お店に限ったことじゃないし、それに気付いてくれるといいのですけれど)
『先生』でもあるシルウィスは、そういうことはあえて口には出さない。そうやって自分から「見つける」ことも学習なのだから。
「じゃあ、商品の搬送や搬出は俺たちの役目かな」
ネイハムが伊路葉とうなずき合う。
「あと、これ……近くで売ってた果物だけどさ。折角他にもお店があるんだし、そう言うところで買った果物をはさむのもいいんじゃないかな。甘いものは好きな人、多いしね」
「あ、あまいの、あたしもすき!」
子どもたちはきゃっきゃと言いあう。子どもというのはいろいろと目新しいものに飛びつくものだ。
「食中毒を起こしてもまずいから、保冷庫、持ってきたぞ」
ザレムが大きな箱を持ってくる。中は氷が入っていることもあって適度に冷えており、その中に保存していれば傷むのを多少なりともおさえることが出来るだろう。ありがたい話だった。
「ああ、でも料理をするなら食べものを扱うわけだから、手は清潔にしないとね」
エイルは医師らしい一言を添える。
「店の飾り付けは私たちも手伝うわ」
伊路葉も頷き、きびきびと準備を進める。
「そういえば、店の名前とかはどうするの?」
エイルも伊路葉も気にしていたこと。
「それは――」
少年の一人が、にかっと笑った。
「ヤマシナサンド!」
単純明快。だがそれが確かにそれらしくて、だれもが納得する名前だった。
●
さて、ここまでは前日までに出来る準備だ。
町の一角にちいさな出店を作り、「ヤマシナサンド」と記した幟を立てる。エイルたちが手伝ってくれたおかげでイートインスペースの様なものもできたし、仕込みは上々、と言ったところだろうか。
「おーい。こっちの荷物、運んでおいたぜ!」
キーがそう言いながら食材を運んできてくれる。ちなみに彼の出で立ちは、時間の余裕を見てこしらえたという、謎の白い三角形を頭にはめている。
「……ありがとうっていうか、それなに?」
子どもの一人が問うと、キーはドヤ顔でこう答えた。
「ふっ、これぞサンドイッチマン! おれ自らがキャラクターになって、呼び込みをするつもりだ!」
その発想は面白い。面白いが、似合っているかどうかというか、普通サンドイッチマンというのはそう言うものではない様な気がする。まあ本人が満足しているから、あえて突っ込む様なことはしないが。
それにしても、さすがは闘技大会。街全体が浮かれ調子で、どこか賑やかにごった返している。キーや伊路葉といった面々が周囲を注意しながら宣伝をしている。子どもたちの作ったサンドイッチは手軽に食べられると言うこともあって、さっそく注文を受けていた。
そして少し遅れてやってきたザレムは、にかっと笑った。
「実は俺もマスタークラスで参戦してるんだ。今は二回戦までのインターバル」
「えーっ、どうだったの!」
子どもたちは目を丸くしてザレムに問いかける。青年は嬉しそうに頷いて見せた。
「一回戦は無事勝利。このあとも応援してくれよな?」
すると子どもたちは嬉しそうにこくこく、と頷く。こんなさりげない子どもたちとのやりとりも、ザレムに取ってみれば心強い応援だ。
「そういえば、ザレムさんは怪我とか大丈夫?」
尋ねたのはエイル。医療の心得をもつ彼女は、ザレムをさっと見て、切り傷などに止血剤を塗ってやる。こういう細やかなサービスを添えることでついでに軽食を食べて貰えるかも、なんてことも考えているあたり、結構な策士なのかも知れない。
さて、そんなサンドイッチマン(?)に扮したキーは、というと、子どもを一人肩車した上で
「そこのお兄さんお姉さん、サンドイッチいかがっすかー?」
と声を張り上げてくれている。
まだまだ子どもたちは経済というものをよく分かっていない。興味本位でこの企画に参加した子どもだって多いはずだ。
(そんな子どもには、是非ものを作ることの大変さや、販売できたときの喜びなんてものを知ってもらいたいな)
見た目は軽薄そうな感じでも、結構考えているのだ。
ついでに言うと、サンドイッチマンとして店の周囲に立っていることにより、店に危害が加えられない様に見張ることも出来る。楽しそうに仕事に励む子どもたちをみて、まぶしく感じるのもきっとこどもたちのまっすぐさゆえなのだろう。
「あら、美味しそう」
そう言ってにっこり笑って見せたのは――伊路葉。
彼女はネイハムを伴った「サクラ」としても動いているのだった。
だれも買ってくれない、買って貰えないままでは子どもたちの気力にも関わってくる。それにこうやって「買って美味しい」と思わせるのも、周囲には効果覿面なのだ。
「ああ……何を食べる?」
ネイハムもこのあたりはなれたもので、同僚である伊路葉をエスコートしつつ彼女のぶんもしっかり買ってあげるあたり、ぱっと見た感じがカップルの様で、街を歩く人々にもなかなか好感度の高い様子になっているのはあきらかだった。
「それにしても子どもは元気だし、人も多いし……つかれるね」
ネイハムは苦笑してみせる。顔にはやや疲れの色が見えた。
「じゃあどうしてこの依頼、受けたんです?」
伊路葉に問われ、ネイハムは少し考える。
「……なんとなく、かな? でも雲類鷲さんの子ども時代って、想像つかないなあ」
「そう? こんな感じの頃もあったとは思うんだけど……忘れちゃった」
伊路葉はくつくつ笑うと、ネイハムもついくすりと笑う。たっぷり買ったサンドウィッチの残りはお土産西ようと言いあって、折角なのでサンドウィッチを堪能する二人だった。
●
休憩時間になった隙を縫って、子どもたちも交替で――無論ハンターと一緒に、ではあるが――闘技大会の様子を見に行ったり、あるいはどんちゃん騒ぎの様子を見に行ったり、それぞれのしたいようにしている。しっかり者が多いのだろう、きちんと自分の役目を認識しているのがシルウィスには嬉しい事実だった。
元気の有り余ったリゼリオッ子たちはところどこで騒ぎを起こしかねない行動に出たりもしているが、それもこの盛り上がりのせいなのだろうから、仕方がないと言えば仕方がない。
質の悪い連中がきても、ハンターたちがさらっと対応してみせる。しかもここにはマスタークラス出場者もいるとあって、客引きにもなっていた。
「そういえば、以前ファナがホープで出会ったお兄さん、覚えているかしら? あなたの幸せを願っている人。彼も参加しているのよ」
エイルが楽しそうにそう言ってみると、ファナも目を輝かせる。
「凄いなあ……」
ファナが思わずため息をつくと、
「うんうん、やっぱハンターって凄いな!」
子どもたちも興奮気味だ。
「ハンターになりたい子ってどのくらいいるの?」
試しに聞いてみると、何人かが挙手をする。やはり憧れの存在なのだろう。
無論簡単になれるものではないが、だからこその憧れというものもあるだろうし、だからこそヤマシナ学院ではそう言った人材との交流を進めている。
そしてそれは、きっと双方ともに幸福なことなのだ。
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やがて日は少しずつ傾きはじめる。
サンドウィッチも最後の一つを売り切ることができ、万々歳の結果となった。
ザレムがお疲れさま、と合間を縫って作ってくれたワッフルを子どもたちに振る舞うと、皆が目を輝かせる。
「ありがとう、ハンターさん! いっぱい、手伝ってくれて!」
子どもたちはまっすぐな瞳で感謝の言葉を述べる。それを見て、ハンターたちもどこかくすぐったい気分になった。
こういう子どもたちが未来を担うのだから、きっとこの星の未来は明るい。
それをひしひしと感じた、今回の出来事だった。
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【相談卓】出店を出そう キー=フェイス(ka0791) 人間(リアルブルー)|25才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2016/06/23 21:48:21 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/23 21:18:24 |