少年、『憂悦』を叙唱す

マスター:狐野径

シナリオ形態
ショート
難易度
難しい
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
4~10人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2016/06/28 12:00
完成日
2016/07/03 22:25

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●ゲーム
 プエル(kz0127)は仕立屋をウルウルした目で見上げた。
「サルトア……僕、独りで怖かったんだ」
 きゅと人形を抱きしめることも忘れない。
 これはゲームだ、情報を引き出すための。
 サルトアは「演目の遂行」を優先させるだろう。プエルもレチタティーヴォのためなら何でもするが、この件に関しては抵抗する。
 プエルは頑張って駆け引きをし、納得したので出かけた、魔法生物を殺すために。
 プエルが立ち去った後、サルトアは我に返る。
「うふっ、プエルちゃんは可愛いわ……あっ! あたし、どれくらいしゃべっちゃったかしら?」
 サルトアは町を見下ろす。
「でも、凄惨さは上がったわよね! レチタティーヴォ様! プエルちゃんは終わるのかしら? それとも別の道を歩くのかしら!」
 サルトアは笑った。

●隠居
 イノア・クリシスは大江 紅葉(kz0163)の手紙を読み、ほっと息を吐いた。
「来てくださる……」
 ここで起こったことを伝える手紙の返信は、イノアの考えを支持し、慰め、顔を見に来てくれるというもの。
 扉がノックされる。尋ねると父ウィリアム・クリシスなため、入ってもらった。
 憔悴した父は一気に老け込んだように見える。先日、プエルをかくまったということは本人の口からまだ説明はなかった。
「……イノア。私はやはり……ニコラスを忘れることができない」
「……今更?」
「イノアはしっかりしている。私は隠居して、お前がここの領主になってほしい」
「……」
 イノアは自分が切り出そうとしたことを口にされ、黙った。
「……私だって子供なのに」
 イノアは言った後、驚いた。一度口をついて出た心はあふれる。
「お父様、私がしっかりして見えるのは兄がほんわかしていたからです。兄だって鈍く見えてもちゃんと考えていたはずです。そうでなければレチタティーヴォに対して剣を向けようと考えなかったでしょう」
「それは」
「わ、わたくしだって、本当は……っ! ほ、本当は……もっとお母様にも、お兄様にも甘えたかった!」
 イノアは言い切った。ハンターや紅葉に会わなければ、また、会った人たちが真摯に向き合ってくれたから言えた。
 部屋の中に沈黙が訪れる。
「お兄様がどう思っていたかなんてわかりません。ただ、寂しかったのかもしれません」
「私は愛しているよ、お前もニコラスも」
「わかっています。私……わかりました。たぶん、お兄様は気軽にハグや体の一部に触れるとか……してほしかったのかと」
「え?」
「お兄様、今思えば、ですけど、手を途中でひっこめていました。私の頭を撫でようとしたのかも」
「しかし……」
「プエルですが……紅葉様に抱き着いたり、人形を抱きしめたり……妙にしているのはその続きなのではないのでしょうか」
「……まさか……そうか」
 ストンとウィリアムの中で何かが落ちたようだ。先日、プエルをかくまっていたことは黙っている手前何も言えない。プエルはウィリアムに抱き着いてきていた。
「領主の件は引き受けます。民を思えば、です」
「……すまない」

●町の中
 プエルは魔法生物を殺して安堵した。
「次は、父上とイノアを殺さないとね!」
 レチタティーヴォを模した三頭身人形の手を持って振り回しながら歩く、町の中にある領主の屋敷に向かって。
 途中でエクラ教会の前を通る。
「懐かしいなぁ。司祭さんいるのかな」
 とことこと歩き、屋敷の前に到着する。
 扉のところにいる兵士は「坊や、用がないなら入れないよ」と優しく声をかける。
「用はあるよ?」
 プエルはフードをはねのける。この瞬間、影に隠れていたプエルのペットたち――雑魔が周囲を威嚇する。猫やウサギ、水牛など形は様々だ。
 大通りに面しているため人通りは多く、悲鳴が上がる。
「……わ、若君!?」
「ただいまっ!」
 プエルは大剣を引き抜き、そのまま兵士を袈裟切りにした。
 玄関ホールにいる兵士や使用人は異変を感じて行動をとる。雑魔たちはすぐさま人間を襲った。
「父上、イノア、どこにいるの?」
 階段を下りてくる二人の人物をプエルは見る。相手も彼を見て止まる。
「……あー、ウルスとジョージだね? 久しぶり」
「……ニコラス様」
 クリシス家に仕える騎士ウルス・モースと息子のジョージ・モースは声を絞り出す。一般人である彼らにとって、プエルの来訪は死を意味する。
「父上とイノアはどこにいるの?」
 ウルスは階段を下り、ジョージが無言で上がっていく。
「あ、ジョージについていけばいいんだね」
 プエルは階段を上がってウルスの命を奪った。

●発生
 イノアの執務室にノックもせず入ったジョージは、扉を閉めるとカギをかける。
「バルコニーから逃げましょう」
「何があった」
 ジョージは説明に詰まる。先日、領主ウィリアムの奇妙な行動があり、告げていいのか。しかし、イノアの命もかかっている。
「歪虚の襲撃です、ウィリアム様とイノア様を狙っています」
 その一言で二人は理解したようだ。
「……なら、私は残る」
「だめです! 父が……」
「ねー、どの部屋にいるの、ジョージ」
 プエルの声が響く。ウィリアムが反射的に廊下に出ようとしたため、ジョージはその手をつかんだ。
「お兄様の声? でも……違う」
 イノアは兄が大きな声で砕けたような口調で話すことを聞いたことがなかった。
「何、あれ」
 ジョージは外を見て目を見開く。
 巨大なミミズが町の中を移動してきているのだった。
「……な、なんで! 僕が全部殺したのに! それに、僕が殺したのより大きい!」
 プエルは驚愕しているようだ。
 それは建物を壊し、逃げ遅れた人間を押しつぶす。領主の屋敷を壊したらしく、揺れる。
「うわああああああああ」
 プエルの悲鳴が響く。
「ニコラスっ!」
「だめです、逃げないと」
 ジョージはウィリアムを引き留めようと必死だ。
「うわああ、怖いよぉ」
 プエルの悲鳴。
「助けに」
「だめです、歪虚ですよ!」
「ふえ、助けてええ、レチタティーヴォ様! レチタティーヴォ様ぁあああ!」
 ジョージはつんのめる、ウィリアムから力が抜けたからだ。
「なぜ……」
 ウィリアムの目は虚ろだった。

●混乱
「転移門は!」
「建物が壊れたら危ないので行き来は止めましょう!」
「なんで魔法生物?」
 町にあるハンターズソサエティは混乱に巻き込まれていた。
 ここに来たのは別の用があったかもしれないハンターたちに職員は協力を頼む。
「魔法生物が突然現れて町で暴れているんです! 住民の避難も……きゃああ」
 建物が激しく揺れる。
「あ、すみません。避難誘導に関してはクリシス様の兵がいれば、やってくれると思います。兵の方は、町の詰所……城壁と旧屋敷の門のところ一番近いのはお屋敷です。すぐそこです」
 百メートルほどで着く。
「屋敷に巨大ミミズ向かってるぞ!」
 避難してきた市民が情報をくれる。
「……領主様、逃げてますよね……。みなさん、魔法生物の退治をお願いします」

リプレイ本文

●町の中
「ソサエティ付近で暴れまわるたぁ、随分命知らずな真似をするやつらだな」
 あきれるエヴァンス・カルヴィ(ka0639)は仲間とトランシーバーの周波数を合わせる等、出る準備を完了する。
「まずは領主の安否か? ミミズからか、時間がないから急がないと」
 リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)はこの周囲の地図と情報を頭に叩き込む。
「魔法生物? 襲撃自体が演目なら後手に回っている」
 レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は焦る。この領主が歪虚プエルの生前の親であり、ここを巻き込む演目があったことが調査上に上がっている。その演目を指示もしくは観るはずだった災厄の十三魔レチタティーヴォはいない、それでも動いている。
「このタイミングで魔法生物? 歪虚の手駒にされたっての?」
 エリス・ブーリャ(ka3419)は情報を確認して、眉をしかめる。
「歪虚の襲撃ですか。状況は不明ですが、私は屋敷の方に向かいましょうか」
 エルバッハ・リオン(ka2434)は冷静さを崩さず、仲間と外に出た。先日、領主の娘であるイノア・クリシスに会っているため心配であった。

 ソサエティが入っている建物を出るとこの町の大通りだ。建物はいくつも削られ、地面も荒れている。大きいがれきもあり、倒れている人や逃げる人がいる。
 ハンターが出るまでさほど時間は立っていない。混乱が止まり、奇妙な静寂が漂う。悲鳴より、うめき声がする。
 魔法生物はいる、領主の屋敷のある方向に。それがうごめき何をしているのかまで細かいところは分からない。
「どうにも、状況が混乱しているな……単独勢力での襲撃にしては違和感がある」
 ロニ・カルディス(ka0551)はがれきの山を見て人がいないか確認を取る。
「……あれは! 見覚えがあるワイバーンです。またあの少年が関与しているのでしょうか?」
 ミオレスカ(ka3496)は周囲を見て、敵の位置を確認する。
「プエルだっけ? ヤリクチがアイツっぽくねェな……なにか、いやがるのか……?」
 万歳丸(ka5665)は以前遭遇したプエルを考える。プエルは物事をまっすぐに考え、単純であった。
「ひょっとしたら……マッチョな男がいるかもしれない。仕立屋を名乗ってた男がいた。人間か歪虚が今のところ不明」
 レイオスは忠告する。
「どっちにしろ、さっさと助けにいかねぇとな! ソサエティからの救援だ! 現場まで急ぎたい、全員脇に寄ってくれ!」
 エヴァンスはゴースロンの上から声をかける。そのまま駆けることができれば良いが、遠くのほうは新たに逃げる人々もおり難しいかもしれない。
「飛び出し注意、エヴァン君」
 エリスは溜息半ば慰める。
「まっすぐ行く?」
 リカルドはルートを確認し、ワイバーンを見つめる。必要なら銃を使う、どう戦うかを考える。飛ぶ相手は厄介だ。
「こっちを通るのはどうだ?」
 万歳丸が指さしたのは1本入った通りだ。まず、領主の屋敷に行くにはちょうど良いようだった。

●静寂
 屋敷近くの通りまでやってくる。通りを見ると魔法生物が近くをうろつくのがよくわかる。
「馬鹿でかいミミズ野郎め、斬りごたえはありそうだな」
 エヴァンスは近くにいるそれを見上げるが襲ってこない。それは人間に興味がないとばかりに、通りを行き来する。
「……襲われないのはいいけど、被害者はいないよな」
 リカルドが魔法生物の足元を注視する。
 屋敷前までやってくると、損壊が激しいとわかった。
「早くしないと壊れそうだね」
 エリスは表情を引き締め、中を確認するため入ろうと周囲を見る。
「あれを見てください」
 ミオレスカが2階の1室を指さす。そこにはイノアの姿が見えた。
「正面切っていくより……そこから上がれそうだね」
 エリスががれきや隣の建物を利用して登って行った。
 この間、他の者は警戒する。
 レイオスは1階の正面を覗き込んだ。上にいるワイバーンがプエルの物である以上、何かあれば襲撃がありうる。
「中では戦えればいいんだが」
 死体がいくつも転がる、雑魔にやられたような。
 雑魔が屋敷の奥から走り出て威嚇する。
「外に出てこいよ」
 リカルドが雑魔を呼びつける。雑魔たちは階段付近にたむろしてうなり声をあげるのみだ。
 これの主がそばにいれば、異変に気付いてやってきそうだがそれもない。
 奇妙な沈黙。
「本当……なんでミミズどもも雑魔も動かないんだ……」
 リカルドは武器を構えつつ、警戒しやすい位置に立った。
「けが人を我々が助けたところを狙う……つもりなのだろうか? おい、大丈夫か?」
 ロニは屋敷のそばに倒れていた男性を通りの反対側に運び、声をかける。目立った外傷はない。この男は目を覚まし、一瞬驚いた様子だが、ハンターだと気づいてホッ息を吐く。問われるまま状況を話した。
「歪虚の襲撃が始まった後、魔法生物が襲撃してきたんだ。歪虚が悲鳴を上げていたけど……そのあと、建物のがれきに当たって私は倒れたらしい」
「動けるなら、市民の安全確保のために、他の詰所の兵に頼みに行ってほしいんだが」
 ロニの頼みに兵士はうなずき、立ち去る。
「嫌な感じですね……。そうそうに助けたいし、片づけたいですが」
 エリスの行動を見つつエルバッハは周囲を見る。
「……プエルってレチなんちゃら一派で、これがエンモクってーことは、見ている奴……なんだァありャ……?」
 万歳丸は領主の屋敷が見える家で一軒だけ無傷なものに気づいた。レイオスが言った筋骨隆々の青年。フリルがあしらわれた衣類がより、ふんわりと見せる。

●脱出
 窓からエリスは入った。
「えっと、イノアちゃんと領主と騎士だね? 助けに来たからさっさと行こう」
「ありがとうございます」
 イノアがほっと息を吐く。
「どうしたの?」
 ウィリアムの様子を見てエリスは表情を変える。
「それが……先ほど歪虚が……助けを求める相手として生前の父ではなく、レチタティーヴォの名を呼んだのです」
「……ああ」
 エリスはウィリアムのそばに寄った。
「ねぇ、つらいのはわかるけど、今はイノアちゃんを守ることを考えなきゃ! 死んじゃったら誰が守るのこの領地を!」
 説得するが、もぬけの殻のようなウィリアムはエリスの声に反応をしない。
「抱えられる?」
 騎士であるジョージに問うと、彼はうなずいた。
「イノアちゃん、先に行ってくれる?」
 エリスは扉からの襲撃に備え待機する。
 イノアはエリスとジョージを信じ、窓の外を見た。

 顔を出したイノアにエルバッハとミオレスカがほっとし、尋ねる。
「下りられそうですか?」
「無理そうなら私が上がって抱きかかえて飛び降ります」
「その前にレイオスさんを呼びましょうか?」
 ミオレスカとエルバッハの小声の確認にイノアはうなずく。
「何とか下りてみます」
 ドレス姿のイノアであるが、何とか飛び出ている物に張り付くが動きがとまる。
「もしもの時はちゃんと受け止めますから」
 ミオレスカとエルバッハがいうと、イノアは意を決しており始めた。
 彼女がおり終わった後、ウィリアムを抱えたジョージが下りた。

 エリスは領主たちが下りている間、廊下を確認する。耳を澄ませ、カギを開ける。扉はすんなり開いた。
 そっと覗くと廊下の先、階段があるホールのようなところに黒い影と見覚えのある少年がいる。
「……ちょ、っと……あの影っ!?」
 エリスは息をのむ。この音が届いたのか、その影は顔をあげる動作をし、にやりと笑ったようだった。直後、黒いとげのようにのび、エリスに向かう。
 エリスは【妖精の羽】を使うと外に落ちるように出た。
 驚いた仲間がエリスを見たとき、2階の1室が闇に包まれたのを目撃した。
「なんだあれ」
「嫌な気配だ」
 エヴァンスとロニがつぶやいたが、誰もが同じことを考えた。
 影は不定形な闇から一つの形になろうとしている。
「ねっ! レチタティーヴォって倒したんだよね!」
 エリスが確認の声をかけたとき、その闇はレチタティーヴォの姿を取った。帽子を取り、眼下のハンターにお辞儀をする。
「あー! なんかいっぱいいるよ!」
 プエルの場違いなほど明るい声が響いた。

●少年
 窓から見下ろすプエルは機嫌がいい。
「……てめー、何やってんだよ!」
 レイオスはあきれた声となる。
「何って僕はただ、父上とイノアを殺しに来ただけだよ? 魔法生物に町を荒らさせる趣味はない」
 きっぱりという。
「あいつのせいか?」
 万歳丸が先ほど見つけた男を指さす。
「そうそう、君、目がいいね! あいつが厄介なことしているだけだもの! 僕は単純に父上とイノアを殺そうとしただけなのに」
 ひどいことを言うが、嘘は言っていないだろうと感じられる。
「あー、イノア! 大きくなったね。僕より大きくなったの?」
「お、お兄様……。どうしてわたくしたちを殺すんですか?」
「だって、僕のこと大嫌いだったんでしょ? だから、なんとなく」
 イノアは首を横に振る。倒れそうになったのをエルバッハが支える。
「お兄様のことが大好きでした! どうして!」
「君は僕のことよくあきれていたじゃない?」
「だって! お兄様、かっこよくって優しくてなんでもできるのに、ちょっとぽわっとしていたのが心配で! 騎士団長さまみたいになりたいっていうのに優しすぎて! だから! お兄様にはもっとかっよくなってほしいって!」
「本当ぉ?」
「本当です!」
「……うーん」
 プエルが悩んだ。
「ニコラス! お願いだ、戻ってきてくれ、歪虚でもいいから」
「お父様っ!」
 イノアが慌て、プエルがきょとんとなる。
「意外、父上。だって、僕が戻ったらエクラの人からの突き上げひどいよ? あー、でも僕が戻ったら……面白いだろうね!」
 プエルは笑った。
「可愛らしい反抗期?」
「きょうだいけんかも追加」
 エヴァンスとリカルドはため息交じりに様子を見る。
「ははっ、面白いこと言うね」
 プエルの耳に届いたのか、身を乗り出し笑う。
「ところで……なんなのですか?」
「レチタティーヴォだっていう話ですが」
 ミオレスカとエルバッハが問いかける。
「助けてぇって言ったらね、僕が持っていた人形がこうなったんだ!」
 プエルは嬉しそうに告げ、影に抱き着く。
「ね、僕のやることを、君たちは邪魔する?」
 影から離れたプエルの問いかけにハンターは異口同に肯定し、武器を構える。
「じゃ、どうしようかなぁ……!?」
 プエルは窓枠に足をかけ、立つ。

 影は動いた。
 腰の細剣を抜き、プエルの胸に突きさした。

「え?」
 プエルの驚き、ハンターの声が重なる。

 プエルの動きは止まり、目が閉じる。
 ぐったりとしたプエルは刃から抜けて落ちていく。

「あああああああああ! ニコラス、ニコラス! 貴様、2度も! 2度もニコラスを!」
 ウィリアムが絶叫し走り寄る。

 2階の影は消え、プエルの後を追うように地面に落ちる。
 ハンターがそれに攻撃をしようとしたときには、プエルに当たった後、吸い込まれるように消えた。

 拍手が響く。
 万歳丸はそちらを見て中指を立てるしぐさで挑発した。
「あらあらぁ、本当はねぇ、丘の上が良かったのよねぇ。あの時と全く同じっていうのが理想だったのにねぇ、プエルちゃんの下僕がへましたから」
 青年はくねくねと笑う。

 ウィリアムの腕の中でプエルはぐったりと横たわる。

 違和感。
 ……違和感。
 ハンターの中に生じる。

 エリスは考える。出かけ際の友人との会話が思い出されたが、今は関係ないと思う。そう、必死に考えると浮かぶ変なことが糸口になることもある。
「違う、そう、変なこと! あんたはイノアちゃん連れて、安全なところに今のうち行って!」
「え?」
「領主さんは何とかする……早く! 戦場になっちゃう前に!」
 ジョージはイノアを連れて走り去る。
 エリスは機導を使い駆け抜ける。
 他のハンターも行動を開始していた。プエルや魔法生物に近づく。

「父上、バイバイ!」
 プエルは隠してあったナイフでウィリアムを突き刺そうとした。それをエリスがとっさに出した腕で受ける。
 プエルは素早く離れる。
 エリスは痛みをこらえながらプエルをにらむ。
「前さ、辺境の野営地で、気のいいみんなを殺したでしょ。そのお礼もまだしてないからね!」
「はあ?」
 プエルは理解できなかった。

●戦端
「僕、帰る!」
 建物のから雑魔たちがやってきて、プエルに甘えるようにまとわりつく。
「サルトア! ちゃんとお片付けしてよね!」
 プエルは大声で青年に声をかける。
「なあ、まだ殺すつもりか、家族を」
 レイオスは武器を構えつつ問う。
「はあ? そうだね、にくいから殺そうと思ったけど、今は好きだから殺してあげようと思うよ? みんな無に帰るのが当たり前だから。でも怖いんだよね……ちゃんと怖くないように殺してあげないといけないね。だから仕切り直しするよ」
「変わらないのか……お前が歪虚であることを望むならオレが討つ。お前が手にかけた人々と、家族とこの町を守るために戦ったニコラス・クリシスのために!」
「変なことを言うね?」
 プエルは首をかしげつつ、大剣の柄に手を伸ばす。
「れちたんがいなくなれば……変わることもあるのかと思ってました。でもあなたは、人間の家族よりも、レチタティーヴォを気にかけ、人間の心をなくしてしまっています……領主さんには悲しいとは思いますが……後顧の憂いを断ち、復興をしてもらいたいです」
 ミオレスカが銃口を向ける。
「……ひどい言われようだね、僕」
 プエルがすねたように言う。
「ね、ニコラスがこの町が大好きだったって本当に思っているの?」
 プエルは無邪気に笑った瞬間、負のマテリアルを紡ぎ魔法を放つ。
「まずい」
 エリスはウィリアムを引っ張ると機導を使って逃げ、ロニにウィリアムを引き渡す。
「ひとまず引き受ける」
「ありがとう! でもまあ、エリスちゃんもここから狙うけどね」
 魔法生物や雑魔に囲まれ、プエルがいる状態で逃げ場はない。

「雑魔も倒さないといけないですね」
 エルバッハはブリザードを放つ。まだ仲間を巻き込まず、敵を十分に巻き込める。
「ふえっ、冷たいよ!」
 プエルが回避しきれずに悲鳴を上げる。プエルの魔法から逃げたり、エルバッハの魔法から逃げたり雑魔たちは忙しく動き回る。
「逃がしません」
 ミオレスカがプエルに向かってレイターコールドシュートを撃ち込む。
「……こっちも来るのか! レイオス、どうせそれやるんだろう? 俺はこっちの削りがいある奴らをやっておく」
「おう! 気を付けろよ、戦友!」
 エヴァンスは近づいてくる魔法生物との距離を詰める。
「リカルド、援護は頼んだぞ!」
「え、あー、結構大役だな。強いあんたたちと一緒だから、素人の俺としては助かるよ」
 軽口で答えたリカルドだが、どこにいても危険は同じであるのだ。ワイバーンを見るが高いところから動かない。まずは魔法生物に接敵するタイミングを計りつつ、銃でけん制する。当たっているが手ごたえ感じられない。
「なんか、ぬめってる。固いというより、それでダメージを逃している感じがする。あと、回避した気がしないんだ」
「なら、当たれば斬れる、いずれ終わる」
「それ、脳筋みたいだよ」
 エヴァンスに苦笑しつつも、その通りではある。
 一方、乱戦状態になっているのはウィリアムがいるあたりだ。雑魔、魔法生物がいる上、プエルの魔法射程範囲内だ。
「雑魔を減らしておかないと厄介かな」
「それより、こっちのミミズもどきが問題だ」
「確かにね……」
 エリスとロニはウィリアムをかばいつつ、攻撃対象を定める。
「なら、エリスちゃんがこっち、あんたがそっち!」
「そうだな」
 エリスの機導砲が近づく魔法生物に叩き込まれる。効いているため、油断さえしなければ何とかなるだろう。
 ロニはレクイエムを歌う。
「う、気持ち悪いよぉ!」
 プエルがうめき、雑魔も抵抗に失敗したものは動きが鈍くなる。
「これをどうにかするほうが先だな! でけえミミズには慣れてる! 覇亜亜亜亜ッ!」
 万歳丸がその魔法生物に対し気迫を込めた技を叩き込む。黄金の光とともに、それは命中し、魔法生物の命を削った。

●反撃
「ああーもういやだ! 大体、こんなの面白くないよ!」
 プエルはレイオスに向かって技を放つ。動きは鈍っているが鋭い刃が無数に生み出されて襲う。それをレイオスは避け切る。
 雑魔たちもそれぞれ主を守るように駆けずり回る。
 エルバッハや領主等、後衛に向かって攻撃する。
「危ないって!」
 エリスは何とか領主を逃がしたいが、プエルへの執着により、彼が動かない。
 魔法生物は身近なものに攻撃を仕掛ける。
 万歳丸に対して、伸びあがり押しつぶすように攻撃してくる。万歳丸は回避せず、その力を利用して地面にたたきつける。ダメージの蓄積もありそれは絶命した。
 2体はリカルドに向かい押しつぶしと強酸を飛ばすという行為をそれぞれ行った。
「ちょっ! ひどい」
 回避しきれずに食らう。
 うねっている1体は誰かを狙ってか移動を始めた。

●仕立屋
「うげー、気持ち悪かったよ! ひどいよ。あ、それより、サルトア! レチタティーヴォ様がどこにいるか知りたくないの?」
 プエルは声をあげながら前にいるレイオスを攻撃する。
 レイオスは言葉にぎょっとするが回避はする。
 雑魔たちはやる気はあっても力はさほどではない。戦場のかく乱および領主を狙うという役割は果たしている。狙われたエルバッハは避けたが、ウィリアムを見ているエリスは冷や汗をかく。早く離さないとまずい。
 魔法生物はリカルドとエヴァンスをそれぞれ狙い、移動中のもはロニを狙う。かろうじてよけたり、食らうが問題はなかった。
「雑魔が邪魔ですね」
「そうですね」
 ウインドスラッシュを放つエルバッハと銃弾を叩き込むミオレスカ。まとめて攻撃できる手段があるが、乱戦となっている仲間を巻き込む。
 プエルに向かってレイオスは雑魔を巻き込みつつ薙ぎ払う。
「おい、今の話!」
 プエルは太刀を当てられムッとし、問いかけには応じない。
「万歳丸! そっちのミミズお願い! ロニ、領主連れて裏路地のほうに行って」
 エリスは告げると、近くにいる雑魔に機導砲を叩き込む。
「さあ、領主」
 ロニがウィリアムを引っ張っていく。
「雑魔もまとめて倒すぜッ」
 万歳丸が放った黄金の光の中、2体ほど雑魔が巻き込まれる。

「リカルドの敵をとらねぇとなぁ」
「うん、ベタだけど殺さないでくれるかな」
 エヴァンスとリカルドは目の前にいる2体のうち、1体に攻撃を叩き込む。それぞれ手に伝わる感触は、滑って手をとらえるもの。だんだん手に付着して武器がとられそうだ。
 その横をあの筋骨隆々の男が、恋する乙女のように走っていく。
「ちょ、プエルちゃん! 何、それ! あ、あのお方いるの? あの、シニカルな笑顔が素敵で、赤い髪も上品に後ろに伸ばして! 派手な格好だって着こなしてくれる! あたしが一等好きでたまらないあのお方が!」
 筋骨隆々の野太い声の恋する乙女が通り過ぎた後、エヴァンスとリカルドは呟く。
「シニカル?」
「上品」
 危うく敵への集中が切れるところだった。

 近寄るサルトアが何者かわからないために緊張が走る。
 ミオレスカとエルバッハは近くの雑魔を撃破し、どう転んでもいいように備える。
 雑魔は相変わらず近くの者を狙うが、行動を邪魔する程度でありすべていなくなるのも時間の問題だ。
 魔法生物は近くにいる者を狙う。エヴァンスは回避しつつ攻撃に転じる。エリスはぎりぎり回避して事なきを得る。
「ぐっ」
 リカルドはたたきつけられ、意識を失った。
「冗談だろう、おい!」
 エヴァンスは倒れた相棒をかばうように立った。
 万歳丸とエリスは近くの魔法生物を狙う。弱っていたそれは地面に倒れた。
「行くよっ!」
「うるさいっ、ぐぅ」
 プエルは真正面から大剣をたたきつけるようにレイオスを攻撃し、レイオスは雑魔を含んで薙ぎ払った。プエルは叩き込んだ直後、素早く回避したが、レイオスは腕に食らう。巻き込まれた雑魔は消えて行った。
「プエルちゃん!」
 サルトアが呼びかける。

 路地裏にロニは来た。ひとまずここが安全かわからない。回復魔法が必要な仲間がいるかもしれないので早く戻りたい。
「あなたは……息子が歪虚であると理解しているんだな」
「……わかってはいる。ただ、目の前にいると……」
 後悔が浮かび上がり、どうしてもかばいたくなるという。
「俺の仲間が今、必死に戦っている。あなたをかばうために死ぬかもしれない」
「……すまない。すまない……」
 ウィリアムに浮かぶ表情は疲労。
「ここも安全とは限らない。あなたならどこに逃げるべきか、もし逃げ遅れいている領民がいるならどうすべきか……わかっているはずだ」
「……すまない」
 ロニは近くの扉をたたく。
 中から顔をのぞかせた男にウィリアムを託した。この町の民である男は領主の憔悴を見て驚きつつもロニに「よろしくお願いします」と頼んだ。
 ロニはこの民を信じ、領主を信じて戻った。

●離脱
 エルバッハは攻撃しつつ、目を走らせる。
 ミオレスカは動かないパタリンと謎の人物もそばにいる。
「頼む、倒れてくれ! お前を救う方法をこれ以外に知らない」
 レイオスの鋭い攻撃をプエルはふらっとよけてしまう。
 エリスは視線をサルトアに向ける。
「てめェか、あんな立派なモンもってきやがったのは」
 万歳丸は雑魔に攻撃を叩き込みつつ、サルトアに声をかける。
「そうよ。あたしの手にかかればこの子たちをかくまうのは簡単よ! あー、もう、領主がもっと壊れるの見たかったのに! プエルちゃんかばってあんたたちに殺されるとか! もっと町も壊れちゃう予定だったのに!」
 サルトアは悶えた。

 魔法生物は目の前にいるエヴァンスを狙う。
「上等じゃねぇーか」
 カウンター攻撃を狙うが、さすがに消耗が激しい。もし、ここで倒れた場合、エヴァンスとリカルドを押しつぶしてとどめを刺さない保証はない。

 プエルは大剣をしまうとレイオスと距離を置き、素早く練り上げたマテリアルを魔法として放った。レイオスは避けたのだが、エリスと万歳丸がかすかに巻き込まれる。
「ちょ、プエルちゃん、あたしも巻き込まれるじゃない!」
「……ごめんね、サルトア! 僕、ちょっと慌ててる」
「教えなさい、あのお方はどこにいるの?」
「ええと、みんなの中で生きてるよ?」
「え?」
 ハンターは気づいた、言葉だけでなくプエルは胸に手を当てたから。死んだヒトは思い出の中、胸の中で生きるという意味。
 サルトアを引っ張り込むための言葉。
「サルトア、お前ならちゃんとお片付けできるから! パタリンっ!」
 プエルは撤退準備を始める。

「させませんよ!」
「これが効けば」
 エルバッハとミオレスカがプエルに攻撃を集中させた。プエルはそれをよけるように横に跳ぶ。
「いい加減にしてくれ!」
 レイオスが攻撃を叩き込む。よけきれなかったプエルはそれをくらい、うめく。
「そうそう、まだお礼していないんだからぁ!」
「逃げるんじゃねェ!」
 エリスと万歳丸からの攻撃が来るが、若干早かった機導砲に当てられ、プエルはよろけながら青龍翔咬波から逃げてしまう。
「ね、どういう意味、プエルちゃん!」
 サルトアはおたおたする。
 大きな影と風圧が襲い掛かる。

 一方、エヴァンスは魔法生物と1対2で踏ん張り、あと1体とした。

 ロニは前にワイバーンが下りてくるのが見える。倒れる人影とエヴァンスのほうに向かって走った。

●正念場
 乱入してきたワイバーンに対し、空中にいるために魔法と銃弾が飛ぶ。
 ワイバーンはプエルを乗せる為か、つかむためか近づいてくる。
 プエルは路地に入ろうとして後退している。
「逃げるのか、プエル! パタリンおいていっていいのかよ!」
 技もほぼ切れている中、レイオスが目の前にいるプエルに対して攻撃を仕掛ける。
「うわあぅ」
 攻撃はプエルの足に当たる。
「だって! 父上とイノアのために殺してあげることを考えないといけないんだもの」
「やめてくれ! あんたのこと、あの2人は……愛しているんだ」
「だからこそ、殺してあげないといけないんだよ!」
 プエルの言葉は破たんして写る。
「……こっちも気になるからな……でぇ、胡散臭いてめェは何もンだよ」
 万歳丸はサルトアにこぶしをたたきつけた。
「うわああ、ちょ、あんたななんか呼んでないわよ!」
 サルトアは回避こそしたが、姿が瞬時に変わる。頭上に一対のくるりと回る立派な角がある。
「……歪虚か」
「そうよ! あたしは偉大な仕立屋! あたしが作る服を何でも着こなすのはプエルちゃん。でもね、プエルちゃんはあのお方がいてのプエルちゃん」
「どうでもいい。で、あのお方って誰だよ」
 念のために問う。
「あんたら人類どもが散らしてしまった、偉大な演出家レチタティーヴォ様よ! あー、もう、さいてー」
 サルトアは目の前の万歳丸をにらみつけた。

 ロニはエヴァンスに声をかける、耐えきれるか不明だ。
「エヴァンス、さがれるか?」
「ってそっちに行ったら、こいつも来るだろうが! それでなくてもあの小僧のところに別のペットが下りて来てるんだ!」
 混乱をきたす、だから耐える。
「耐えてくれよ!」
「上等だ」
 やり取りの間も魔法生物は待ってくれない。
 魔法生物はエヴァンスを押しつぶすようにやってくる。回避しようとしたが体が思うように動かずつぶされる。
「ぐあ」
「おいっ、しっかりしろ!」
 ロニはヒーリングスフィアを使うがエヴァンスは気を失う。
 ロニはクロノスサイズを構える。プエルに対応している仲間を頼れない。

●幕引き
「父上とイノアにはよろしく伝えてね! あー、こういう時、レチタティーヴォ様だと素敵なお言葉を言うのになぁ」
 プエルはレイオスににこにこと手を振ると、足を引きずりながらも立ち去る。
 レイオスは追いかけたかったが、ワイバーンが着地し尻尾を振った。
「ぐっう」
 腹に尻尾が当たり、レイオスはうめく。
「レイオスさん、プエルを追えますか?」
 ミオレスカは問いかける。ワイバーンと対峙した状態で彼女は動けない。
「後は……何とかなります」
 エルバッハは自分や仲間を巻き込む範囲魔法を控えているため、余裕はあった。
「数ではこっちが上回っているんだから」
 エリスも機導砲をワイバーンに放ちつつ告げる。ただ、そろそろ武器での攻撃に切り替えざるを得ない。
「わかった、無理するなよ」
 レイオスはプエルが走っていったほうに向かう。

 魔法生物は容赦なくロニをつぶそうとする。回避できなかったが、ロニは守るものもあるため、前を見据える。
 彼を中心に白い光がかけ、魔法生物を攻撃した。効いている、あと少しだと気を引き締めた。
 再び魔法生物は攻撃をする。ロニは避けると、セイクリッドフラッシュを使った。
 魔法生物は倒れ、動かなくなった。
「やれやれ……それどころではないな」
 戦況を横目で見つつ、倒れているリカルドとエヴァンスの様子を見た。

「あんた、あたしに勝てると思っているのかしら!」
 サルトアは万歳丸をにらみつけ、こぶしで語った。
「ぬるいぜ!」
「ちょっとぉぉぉ」
 万歳丸はサルトアの腕をつかむと、ぶん投げたのだった。
「羅羅羅羅羅ァ」
「いやあああああん」
 万歳丸はサルトアにとどめを刺した。サルトアは野太い黄色い声をあげ、無に還った。

 ワイバーンが暴れる為か、壊れかけていた屋敷が揺れる。
「……まずいですね」
 エルバッハは悩みながら、ブリザードを叩き込む。
「おとなしくしてください」
「これで最後にしてよね」
 ミオレスカとエリスが続く。
「これをくらいなぁ!」
 万歳丸から青龍が駆けるようにワイバーンに衝撃波が加わる。そして、ワイバーンは倒れて動かなくなった。

●1つの道
 レイオスは追いかけた。
 すでにその姿はない。
 追いついても勝てるのか不明。レイオスも疲弊しているが、プエルも傷を負っていたのはわかる。
 路地には誰もいない。
「……畜生……」
 プエルの姿はなかった。

 領主の屋敷は半壊。
 街の大通りのいたるところで建物は壊れている。
 ウィリアムもイノアも無事であったが、失ったものが大きい。
 意識のないリカルドとエヴァンスを見て、イノアは涙があふれそうになるのをぐっとこらえた。
「また……また犠牲者が出てしまう……」
 イノアは呟く。
「みなさま、ありがとうございました。助けていただき……」
「すまない、逃がしてしまった」
「いいんです、みなさんの命があって。本当に……よくはないですけど……でも」
 レイオスは困った。追い込み切れてはいないが、追いついているのはわかる。
「ごめんね……」
「謝らないでください。おかげで父も……生きてます」
 エリスにイノアは微笑む。
 ウィリアムの心は今ここにない様子だ。
「イノアさん……必ず倒します。そうしないと……れちたんはもういないのに」
 ミオレスカは尾を引く状況に心を痛める。
「レチタティーヴォとはプエルは別です。元は関わりあったかもしれません。本人が意志をもって行動を始めているみたいですし」
 エルバッハは最初に見たプエルと今見たプエルの違いを指摘する。
「……エクラ教」
「なんか偉そうなのがぞろぞろ来るなァ」
 傷の手当を行っていたロニと万歳丸が顔をあげる。通りの向こうの教会から数人、関係者がやってきている。
 イノアの表情がこわばる。ニコラスの件で黙っていたことがばれたのは必至。
「これからが私の戦いです」
 きゅと唇をかむ。
「イノアちゃん、味方はいるから」
 エリスが抱きしめる。
「そうです」
「1人ではありません」
 ミオレスカとエルバッハも力強くうなずいた。イノアは涙をぬぐい前を見た。

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MVP一覧

重体一覧

  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーンka0356
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィka0639

参加者一覧

  • ……オマエはダレだ?
    リカルド=フェアバーン(ka0356
    人間(蒼)|32才|男性|闘狩人
  • 支援巧者
    ロニ・カルディス(ka0551
    ドワーフ|20才|男性|聖導士
  • 赤髪の勇士
    エヴァンス・カルヴィ(ka0639
    人間(紅)|29才|男性|闘狩人
  • 王国騎士団“黒の騎士”
    レイオス・アクアウォーカー(ka1990
    人間(蒼)|20才|男性|闘狩人
  • ルル大学魔術師学部教授
    エルバッハ・リオン(ka2434
    エルフ|12才|女性|魔術師
  • 混沌系アイドル
    エリス・ブーリャ(ka3419
    エルフ|17才|女性|機導師
  • 師岬の未来をつなぐ
    ミオレスカ(ka3496
    エルフ|18才|女性|猟撃士
  • パティの相棒
    万歳丸(ka5665
    鬼|17才|男性|格闘士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン しつもんたく
エリス・ブーリャ(ka3419
エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2016/06/27 18:06:49
アイコン 相談卓
エルバッハ・リオン(ka2434
エルフ|12才|女性|魔術師(マギステル)
最終発言
2016/06/28 11:19:17
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2016/06/27 21:07:28