ゲスト
(ka0000)
シヴァのおつかい
マスター:草なぎ

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/06/28 19:00
- 完成日
- 2016/07/02 22:03
このシナリオは5日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国東部、リンダール地方。東部森林地帯が広がっている。森の中を走るのは同盟まで続くブリギッド大街道である。森の中で整備されているのは、ブリギッド大街道周辺、またその近隣のみである。森の中は、普段は何らかの関係者か、近隣の村人たちが立ち入る程度である。森の近くには村々が点在しており、平和な暮らしを営んでいた。脅威と言えば人里に下りてくる獣や、獣が雑魔化したものなどであった。
この地へ、上空から降り立ったシヴァ(kz0187)は、少年の姿から戦闘服に剣――魔槍トリシューラが変体したもの――を帯びた金髪の若者の姿になっていた。大街道を同盟へと向かう幌馬車を呼びとめると、シヴァは「森の途中まで乗せてくれ」と言って、馬車の老人に軽く会釈した。老人は笑うと、シヴァを隣に乗せた。
「お前さん、どこから来なすったのかね」
「西の方からだ」
「西か……。わしはグルム。商人だ。と言っても、隠居の身で、趣味でガラクタを売り歩いているようなもんだがね。若いの。お前さんは?」
「俺か……俺は……シルヴァという。旅の剣士だ」
「旅の剣士? ハンターかね?」
「いや、そう言うわけではないが。用心棒などをしたり雑魔を狩ったりしている」
「ここじゃ食いっぱぐれそうだな」
グルムは言って、からからと笑った。
そうして、シヴァ――シルヴァは、森の途中で馬車を降りて老人に礼を言うと、歩き出した。
「ん……?」
シルヴァは、森の小道を歩きながら、ふと木に手を掛けて、弓に矢を番えている少年を目に留めた。矢の先には、野鳥がいた。
「…………」
シルヴァは見ていた。
少年は、矢を放った。命中! 野鳥は落ちて行った。少年は「やった!」と言って駆けだした。
シルヴァは少年に向かって歩き出した。
がさ……と草の音がして、少年は素早く矢を装填してシルヴァに向けた。そして、吐息した。
「なあんだ……人かよ。猪かと思ったじゃん」
「お見事だな。近くの村の者か」
「あんたは?」
「旅をしている。剣士だ」
シルヴァは、腰のバスタードソードに手を掛けた。
「ふうん……」
と、その時だった。ガサガサ! と本当にイノシシが出現して、少年に向かって突進していった。
「うわ! しまった! 油断した!」
少年が慌てる瞬間、シルヴァは神速の剣の一撃でイノシシの頭部を叩きつぶした。
仰天する少年。
「す……すげえな……。一撃で潰しちまった……」
「これは……食料になるのか?」
「大御馳走だよ! 今さ、村にはハンターがいるんだ。狩りの手伝いにね、ちょっとお願いしたんだ。他にも近づいてきた害獣を駆除したりね。時々あるんだよ。あとさ、ちょっと近くの村に住んでる語り部を呼んだりね。夏祭りの準備をしたりさ。まあ……村にとっちゃ普通なんだけど。……あんたさ、イノシシ狩りの褒美をもらう権利があるよ! 村においでよ。御馳走するよ! 名前は?」
「シルヴァ」
「シルヴァ。俺はワッダ村のコレル。村の狩人だ。宜しくな!」
「ああ、よろしくな」
シルヴァはコレルと握手を交わすと、イノシシを担ぎ上げて歩きだした。
この地へ、上空から降り立ったシヴァ(kz0187)は、少年の姿から戦闘服に剣――魔槍トリシューラが変体したもの――を帯びた金髪の若者の姿になっていた。大街道を同盟へと向かう幌馬車を呼びとめると、シヴァは「森の途中まで乗せてくれ」と言って、馬車の老人に軽く会釈した。老人は笑うと、シヴァを隣に乗せた。
「お前さん、どこから来なすったのかね」
「西の方からだ」
「西か……。わしはグルム。商人だ。と言っても、隠居の身で、趣味でガラクタを売り歩いているようなもんだがね。若いの。お前さんは?」
「俺か……俺は……シルヴァという。旅の剣士だ」
「旅の剣士? ハンターかね?」
「いや、そう言うわけではないが。用心棒などをしたり雑魔を狩ったりしている」
「ここじゃ食いっぱぐれそうだな」
グルムは言って、からからと笑った。
そうして、シヴァ――シルヴァは、森の途中で馬車を降りて老人に礼を言うと、歩き出した。
「ん……?」
シルヴァは、森の小道を歩きながら、ふと木に手を掛けて、弓に矢を番えている少年を目に留めた。矢の先には、野鳥がいた。
「…………」
シルヴァは見ていた。
少年は、矢を放った。命中! 野鳥は落ちて行った。少年は「やった!」と言って駆けだした。
シルヴァは少年に向かって歩き出した。
がさ……と草の音がして、少年は素早く矢を装填してシルヴァに向けた。そして、吐息した。
「なあんだ……人かよ。猪かと思ったじゃん」
「お見事だな。近くの村の者か」
「あんたは?」
「旅をしている。剣士だ」
シルヴァは、腰のバスタードソードに手を掛けた。
「ふうん……」
と、その時だった。ガサガサ! と本当にイノシシが出現して、少年に向かって突進していった。
「うわ! しまった! 油断した!」
少年が慌てる瞬間、シルヴァは神速の剣の一撃でイノシシの頭部を叩きつぶした。
仰天する少年。
「す……すげえな……。一撃で潰しちまった……」
「これは……食料になるのか?」
「大御馳走だよ! 今さ、村にはハンターがいるんだ。狩りの手伝いにね、ちょっとお願いしたんだ。他にも近づいてきた害獣を駆除したりね。時々あるんだよ。あとさ、ちょっと近くの村に住んでる語り部を呼んだりね。夏祭りの準備をしたりさ。まあ……村にとっちゃ普通なんだけど。……あんたさ、イノシシ狩りの褒美をもらう権利があるよ! 村においでよ。御馳走するよ! 名前は?」
「シルヴァ」
「シルヴァ。俺はワッダ村のコレル。村の狩人だ。宜しくな!」
「ああ、よろしくな」
シルヴァはコレルと握手を交わすと、イノシシを担ぎ上げて歩きだした。
リプレイ本文
シヴァ(kz0187)――シルヴァがコレルと村に帰還すると、村人たちが何人か寄って来た。
「おい、コレル、その人は……」
「イノシシ狩りの名人さ。命の恩人かな。ほれ、野鳥は狩って来たけどな。この剣士さんが、イノシシを狩ってくれたんだよ」
「おー。そりゃすげーな。あんた、名前は?」
「シルヴァ」
「シルヴァさんか。まあええ。村へ入ってくれ。歓待するよ。イノシシ狩りの名手とあっちゃな、無碍にも出来んわ。はっはっは……」
そんなこんなで、シルヴァは村の中へ入って行った。
「……というわけで、神様はこの世界をお造りになって、光になりました、なのな~」
黒の夢(ka0187)は、仕事を終えて、子供たちと語らっていた。その風貌から、黒の夢は子供たちの人気者となっていた。
「ふーん……黒の夢さんは凄いなあ……。天に召します我らが神のことを御存じなんですね」
「吾輩はね、ただ在らんとしているだけなのだ。つまり、世界と一つになるということは、心を一つに感じるということ。人間は自分勝手な生き物なのな~。今は歪虚と言う世界共通の敵がいるとは言え、平和な村に暮らすみんなの方こそそのことをよく分かっていると思うのであるよ。だから、吾輩は、みんなのこと、愛おしく思うのである」
「お姉ちゃん! 魔物と戦ったお話を聞かせて! 僕もいつかは魔物を退治できるくらいに強くなって、世界に飛び出すんだ!」
少年の言葉は、黒の夢の魂を揺さぶった。それは心地よいものであった。まるで、戦女神の揺り籠に抱かれているような……そんな感覚が、黒の夢は嫌いではなかった。
「そうであるねえ……」
シェリル・マイヤーズ(ka0509)はいつものように雑魔を退治して、村に立ち寄っていた。村の雰囲気は、シェリルの心を和ませた。ここには守るべき平和がある。このような天下太平の世界を守っている、雑魔であれ何であれ、自分が歪虚を倒すことで、小さき人々が救われているのである。
「ハンターさん」
村の女の子だ。シェリルと歳はさして変わるまい。
「ん……何?」
「怪我はないですか? 雑魔退治の帰りなんですよね」
「ええ……大丈夫だよ……。雑魔だからね……。実際には怪我なんて……しないよ……」
「そうなんだ! 良かった!」
女の子は明るく天使のように笑った。
「ねえ、今晩村でキャンプファイヤーがあるんだけど、来てくれるよね? 是非来て!」
シェリルは微笑した。
「うん……いいよ……。私も……こんな世界でも、炎の光でも……癒されることだってあるかもしれない……」
「じゃあね! きっとよ!」
女の子は手を振って立ち去った。
ザレム・アズール(ka0878)は、王国東部で何やら緩い依頼があると聞いてワッダ村を訪れたのだった。ブラフマー戦で激しくやり合った後と言うのもあった。魔導バイクから降りると、吐息して、村に入った。
村長のドマソンがたまたまザレムと相対した。
「これはこれはようこそ……ハンターの方ですか?」
「ああ……ちょっと、祭りがあると聞いてな。何かお手伝いできないかと思ったんでね」
「ありがとうございます。何でもありますよ。雑時から肉体労働……。あなたは何が得意ですか?」
「実は……シェフだ」
「それは……凄いですな……シェフですか。では、料理の支度でも?」
「腕を振るうよ」
「これは楽しみですな。はっはっは。案内しましょう」
ドマソンは、ザレムを伴って歩き出した。
ザレムは、シルヴァの姿を遠目に見たが、そのまま歩き去った。
ミリア・エインズワース(ka1287)、メンカル(ka5338)、アルマ・A・エインズワース(ka4901)らの三人は、こちらの依頼の帰りでワッダ村に滞在していた。
「しかしまあ……お前らも強くなったなあ……」
メンカルの言葉に、アルマが微笑を浮かべて応じる。
「お兄ちゃん依頼を受けないといけませんねえ……」
「ふん……そんなことより、お前が順調に育ってくれれば……俺は良いんだがな……。まあ……もはや頭痛のタネは尽きないわけだが」
「メンカル、まあ許してやってよ。ボクのだんなはそう言いこそすれ、兄貴のことは慕ってるんだからさ。逆立ちしたって、お兄さんには勝てないことは分かってるよ。今の自分があるのも、お兄ちゃんのおかげってこともね」
ミリアが悪戯っぽく言うと、アルマは顔を赤くして、肩をすくめた。
「アルマ、あんただって分かってるよね?」
「もちろんですよ~、ミリア」
同じエインズワース姓というだけではお分かり頂けないと思うが、アルマとミリアは夫婦である。見た目は十歳くらい違うのだが……実際のところはどうなのかは分からない。
三人は村の酒場にいた。軽食を突きながら、卓を囲んでいた。
と、そこへ。
「あ! いたいた!」
子供たちが駆けこんで来る。
「ハンターの兄ちゃんだぜ! 俺、気になってたんだよね!」
子供たちがメンカルにわらわらと群がってくる。なぜかアルマとミリアの方ではなく、メンカルの方に群がってくる。
「依頼の話聞かせてよ! ねえねえ!」
アルマがくすくすと笑うと、ミリアは亭主を小突いた。
「だって……どうしようもないでしょう?」
アルマは涙目。ミリアは肩をすくめた。
「まあ待て待て! 俺の武勇伝を壮大に聞かせてやるからな。そこに直れ小さき騎士たちよ」
メンカルが立ちあがって、オーバーに手をかざすと、「よ! 大陛下!」とおっちゃんの声が飛んで来て、酒場のマスターは目を和ませた。子供たちはメンカルの物語が始まるのを待った。
「この物語は……ある、三人の勇敢な勇者たちのお話だ。一人は熟練の剣士。そして、残る二人は結婚していて、その剣士の従者をしている」
メンカルの言葉に、アルマが噴き出すと、ミリアはにやにやしてその様子を眺めていた。
その演説が終わると、三人は酒場を後にした。
三人は、夏祭りに向けて準備されている、精霊の神輿の作成を手伝った。大人たちが掲げる神輿で、これは巨大なものであった。
エルバッハ・リオン(ka2434)――エルは、お祭りの手伝いで、村を訪れていた。夏祭りの出しもので、子供たちが巨大な神輿人形を作るのだが、エルはその手伝いに来ていた。まずは人形の原型となる大木に手足をくっつけて行って、さらに精霊の神様のように鮮やかな布などを巻き付けて飾り付けをしていく。
エルは年頃の少年少女たちに混じって、人形作りにいそしんだ。
「人形も魔法で作れると、楽なんですけどね」
エルが言うと、少年が言った。
「お前魔法使えんの?」
「はい」
「何か見せてよ」
「そうですねえ……」
エルは手持ちの魔法を確認した。ウィンドガストがあった。
「それでは」
エルは腕を一振りした。少年の周りに緑に輝く風が湧きおこった。
「うわー! 何だこれ! 何かすげー! 体が軽くなったような気がする! すげー!」
みんながびっくりしたようにエルを見やる。それはそうだろう。村の子供たちが、実物の魔法など、その目にする機会があろうはずもない。
「あなた……歪虚と戦えるのよね」
女の子がちょっとびくびくした様子で言う。
エルは笑った。
「実は、まだ、駆け出しハンターなんで、やっと最近仲間と戦えるようになったんですよ」
「そ、そうなんだ……」
なぜか少女は安心した様子。まさかエルが大魔術師だと知ったら、この空気は台無しになってしまうかもしれない……。まあ、それでも良いのだが。エルはひとまず駆けだしハンターで通した。
「戦うって怖いですよね。私も、夢中でハンターになりたくて、家族がみんなそうだから……。戦うのが当たり前だって思ってましたから。でもね、やってみて分かったんですよ。戦うための力は、戦うためのもので……上手くは言えませんが……歪虚を倒すことは出来ます。マテリアルの力でね。覚醒者は。でも、マテリアルは、みんなのエネルギーで、万物の力で、それは、歪虚達も知ってます。だから、歪虚達が世界を無に帰そうとしているこの世界で、誰かがそれを止めなくちゃいけない。マテリアルで世界を壊そうとしている歪虚は、誰かが倒さないといけないんですよね……。それが、私もほんとは怖くて……。自分にそんなことが出来るのかなって……ね。戦うってことは、敵に力で向かって行くわけじゃないですか? 私だって、ただの子供だもん(笑)」
エルは相当に脚色した。
「ふうん……何かよく分からないけど……歪虚と戦うって、人間の仕事じゃないもんなあ……」
「エルさん凄いわね。怖いって……分かってて、戦うんでしょ?」
「いえいえ。なので、まだ駆け出しなんですよ」
エルは笑った。
「とりあえず。神輿人形を作りましょうよ。今は、私もそのために来たんで」
「うっし、じゃあさ……そっちの腕を……」
「布取って」
エルは作業に戻った。
鞍馬 真(ka5819)と骸香(ka6223)のカップルは、害獣駆除の依頼を受けていた。ここ最近畑を荒らす村の周りをねぐらにしていた狐や狸などを狩った。イノシシと熊も仕留めた。狐や狸は食用にはならないが、イノシシと熊は村の衆がやって来て、持ち帰っていく。
「えいさ~」
「ほいさ~」
「えいさ~」
「ほいさ~」
村人たちがイノシシと熊を担ぎ上げていく。
「きゃははははは♪」
骸香は楽しそうに笑った。
「楽しそうだな、骸香」
「うん、楽しい真ちゃん。害獣駆除って、すっきりするね」
「私もちょっと息抜きにはなったな……激しい戦いが多かったからな」
「真ちゃん危ないことばかりするから~。あんまりうちに心配かけないでよね」
「はは……骸香に言われちゃ立つ瀬もないな」
「でもでも~、村はサバイバーだよねえ? 歪虚を殺している分には精神的にも疲れるけど、こうして生き物を殺していると、自分の力の恐ろしさが少しは分かって来るね」
「何を言っているか私にはよく分からないが……」
「だからあ、サバイバーてことだよ。これが日常だよ? リゼリオにいたら、インフラは整ってるわ生活施設は十二分だし、困ること無いでしょ? でもね、そんなことどうでも良いくらい、イノシシ狩りは燃えた~」
「イノシシは害獣なんだが。村人たちにとっては天敵なんだからな」
「あのさあ。うち思ったんだけど、イノシシの魔獣とか、戦ってみたいわあ」
「魔獣か……本気で言ってるのか?」
鞍馬は苦笑した。
「うーん……そうだねえ……いや! やっぱり魔獣は怖い!」
骸香はけらけらと笑って鞍馬の腕を叩いた。
「そんなこったろ」
二人は村に戻ると、一段落した。
どこか休憩できるところはないかと、村の酒場に向かった。
「ん? どこかで見た顔だな」
子供たちに囲まれているメンカルとミリア、アルマらを見て、鞍馬は吐息した。ハンター仲間がいるらしい。
「ちょっと」
鞍馬はウェイトレスの女の子を呼びとめた。
「は~い♪」
「何か適当に飲み物と食事をくれないか」
「パンとジュースとかでいいですかあ?」
「それでいいよ。骸香、何を飲む?」
「うちはオレンジで良いよ」
「じゃあ、俺もパンとオレンジジュースで」
「は~い♪」
ウェイトレスは立ち去った。しばらくして、パンとオレンジジュースが運ばれてきた。
「じゃあ、食べようか」
「いただきま~す」
骸香と鞍馬は乾杯して食べた。
「ぷはあ~。依頼の後で真ちゃんと食べるご飯はおいしいね。何か特別な感じがする」
「私もだよ」
鞍馬は微笑んだ。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は、早速ではあるが、村の女や男たちに混じって、手慣れた手つきでナイフ「プリエール」を取りだした。
「お肉捌くの得意なの任せてほしいの皮も無駄な傷はつけないの」
「おう、お嬢ちゃん、頼もしいなあ」
どさ、と熊やイノシシが台の上に並べられていく。
村人たちとディーナは作業に取り掛かった。
ディーナも獣を縛って四肢広げプリエールで熊も猪もガンガン捌いて行く。
…………。
(わいわいがやがや作業中)
…………。
ディーナは、物凄くイイ笑顔で頬に飛んだ血を拭い、
「やり遂げた感満載なのこれがお祭りで出されるかと思うと……うふふ」
ディーナは辺境の困窮気味な村落出身であり、生活が普通にサバイバルであった……らしい(笑
作業終了。
「ふうーん!」
ディーナは背伸びして、作業場から出た。
「やりきった感満載なの」
「お嬢ちゃん」
村の女が、水の入ったコップを差し出してきた。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
「あんた良い腕してるわねえ……。どこ出身だって?」
「辺境の村です」
「だからかあ……慣れてんの?」
「はい」
ディーナスマイル。
「ここでも住めるね」
女が笑うと、ディーナは笑った。
「私はどこだって住めますよ。生きていく上で必要なものがあれば、荒地だって住めるんじゃないでしょうか。人間どこでも生きてますよね。私はさすがに仙人みたいなことは出来ませんけど、生きるために必要なことはその時考えます。歪虚は怖いですけど……誰かと一緒なら、安心です」
「人間、一人じゃ生きていけないさね。まあ、ここは歪虚はほとんどいないけどね」
「キャンプファイヤーをやるんですよね? 楽しみです。あの肉も、調理して下さるんですよね?」
「うん。何かね。シェフだってハンターが来てるらしいよ」
「あ、もしかしてザレムさんかな……」
ディーナは微笑んだ。
シルヴァは、村の中を散策していた。
……平和なものだな。歪虚がまだ侵攻していなければ、ここはまだ雑魔程度か。物理的に距離がありすぎる……か。
シルヴァは人々の様子を見やり、木にもたれかかった。
それにしても……グラズヘイム王国は堅牢だな。これをどうするか……だが。ベリアル公の攻勢にしたところで、西の拠点を突破できぬ。ブラフマーなど問題外だし。まあ……気長に待つという手もあるが……。人類が滅亡するまで……。北狄はどうもむちゃくちゃになってしまったしな……。我々の理解を越えている……。となれば、アイテルカイトとしては……。
「あのう!」
シルヴァは、目の前に少女がいることに気が付いた。
「何かな」
シルヴァは優しく微笑むと、視線を落とした。
「コレル君を助けてくれたお礼に……と思って。花束を編んで来たんです」
「君の名は?」
「アーナ。薬草師で、コレル君の幼馴染です」
「そうか」
シルヴァはアーナから花束をもらい受けた。
「あの少年は筋が良い。きっと村一番の狩人になるだろう」
シルヴァが笑うと、アーナの顔に太陽のような笑顔が広がった。
「ありがとう! その言葉を聞いたら、コレル君も喜びます! シルヴァさんみたいに強くなるって言ってましたから」
「はっはっは。まあ、ハンターだけは止めた方がいいと、伝えておくといい。仮に覚醒したとしてもね」
「良く分かりませんけど……伝えます」
「コレル君には、村を守るという使命があるのだよ」
シルヴァはそう言って、アーナの頭をポムと叩いて歩き去った。
そして……。
夜が来た! 祭りだ! 催しだ! 村人たちが集まって来た! キャンプファイヤーだ!
イノシシ肉や熊肉、野鳥の肉が並び、ザレムが狩ってきた鹿肉が並んだ。そして、パンと野菜、スープ、お酒。
「ザレムちゃん凄いのなのな~」
黒の夢は、ザレムシェフが作りだした肉に掛かっている魔法のソースに魅了されていた。
「へえ……確かに……凄い……」
シェリルもやや驚いた様子であった。
「こいつはうまいなあ……」
「ほんとですねえ♪」
ミリアとアルマも絶賛。
「大したもんだ。料理のことは良く分からんが……この味は……」
メンカルは笑っていた。
「ザレムさんさすがですね」
エルも肉を堪能。
「真ちゃん、これすごーい。何使ってるんだろうこのソース」
「フレンチシェフ顔負けだな……」
鞍馬は骸香とメインの肉を頬張っていた。
「あのお肉が……こんな神の料理に……。泣けてきますね……」
ディーナは神に感謝して、涙を拭って肉を頬張って星空を仰いだ。
「みなさま、ご堪能頂けました様子で」
ザレムは、お辞儀して、仲間や村人たちの喝采を浴びた。
「ん?」
黒の夢は、すみっこの方で佇んでいたシルヴァに目を止めた。立ちあがってシルヴァに駆け寄る。
「ほらほらシルヴァちゃん、汝もこっちで一緒に踊ろっ!(むぎゅ)」
「いや……しかし……」
「なーに遠慮してるのであるか~?」
魔女は強引にその腕を引き。
「かんぱーい!」
酒が振る舞われると、黒の夢は匂いだけで酔い始める。
「はい! 先生! 吾輩! 脱ぎますぞ!」
「わー待て待て!」
場内騒然。
「ねーえ、シルヴァちゃーん、酔ってる~?」
「酔ってるか酔ってないかで言えば、酔ってるかもな」
「吾輩はねー? 酔ってる!」
黒の夢はシルヴァの唇を塞いで抱きついた。
「おいおい! そこ! 何してる!」
村人からヤジと口笛が飛ぶ。
が、シルヴァが黒の夢の頬に手を掛け、肩を抱き寄せると、黒の夢は笑ってシルヴァの手を取り、炎に誘った。
「おどろー! みんなもおどろーよー!」
黒の夢の慈愛の笑顔。シルヴァは炎の元に連れ出された。
歌い始める黒の夢。その声は伸びやかに、踊っていてもブレずオペラ歌手並みの声量を出す。
村人たちもハンター達も踊り始める。
バグパイプの音が鳴り始める。おとなし目のアイリッシュダンスのような踊りが始まる。
シルヴァは黒の夢とワルツを踏んだ。
炎が揺れる。シェリルは、シルヴァと炎と踊りを見ていた。
「……貴方も……ハンター?」
「いや……俺はハンターではない」
シェリルは、シルヴァの横顔を見上げた。
「……もしかして、悩み事?」
何となく物憂げな雰囲気? を感じた。
「悩みは無くはない……な。ある意味」
シルヴァは金髪をかきあげた。
「……悩んでると……下ばかり見るから……上、みると……いいんだって」
それはシェリルの母の言葉だった。自分の葛藤から解放されて、思い出すのも変な話だ。
「私も空……見てなかった。今日は星が見えるかな?」
「星は……我々の存在など見透かしているだろう」
シルヴァはワインを飲んで肩をすくめた。
シェリルに取ってはただの世間話。人の闇を見てると綺麗なモノが見たくなる。空とか、心からの笑顔とか。
「空を飛ぶって……どんな感じかな……。空も地上も……きれーかな……」
シェリルはシルヴァを見上げた。
「おにーさんの髪みたいに……キラキラしてるのかな?」
「そんな綺麗な世界だと……いいのだがな」
「……シェリル。私の……名前……。おにーさんは?」
「シルヴァ」
「うん……またね」
ドカ! ザレムが投擲したナイフが的に命中すると、村人から喝采が上がった。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 当たった人には、特製スープを振る舞うよ!」
ザレムは、シルヴァに目を止めた。
「よ! そこの流浪の剣士さんもどうだい!」
ザレムはシルヴァを呼んだ。シルヴァは肩をすくめると、ナイフを受け取り、的に向かって投げつけた。
ドカ! 命中! 拍手喝さい。
「どうだ。俺の料理」
「なかなかのもんだな。王宮のシェフでもしてたのか?」
「いや、本職はハンター、の筈なんだ」
「ほう……」
「聞いてると思うが歪虚要塞と一戦あってさ。例の、ブラフマー」
「ああ……」
「でさ、敵が要塞置いてっちゃったんだ(爆)」
「ほう……? そんな話は知らんな」
「ホロウレイドでさあ、王国は壊滅的な打撃受けたわけだろ? 今も残るイスルダ島。王国の選択肢、歪虚の選択肢……どうなんだろうな」
「海軍でも整備せんと王国に手出しは出来んだろう。イスルダ島のベリアルがどう動くかは……未知数だが……」
「俺はさ、技術には敬意を払うし、優れた存在は敵でも尊敬してる。歪虚であろうと。共存の道は無いんかなあ。技術……理解したいんだよなあ。なあ、アンタなら要塞どうする? なんで置いてったのかなあ……? あれ、分解して解析したらいいと思うんだよね」
「ザレムとか言ったな。共存は無理だろうぜ。歪虚化進行で世界はゲームオーバーだ。人間が生き残るには歪虚を押し返すしかないだろうよ。歪虚の技術なぞ大したことないぞ。『技術』と言う面なら、人間の方がはるかに進んでる」
「にゃるほどねえ……そうか。またな」
アルマは シルヴァに懐きに行く。隅っこできらきらしてたら気になる(金髪好き)。
「わふ。お兄さん、傭兵さんです? みたことないヒトですー」いつの間にかいる。
「何だお前は」
「アルマです。よろしくお願いしますっ」わふ。
「シルヴァだ」
「お兄さん、歪虚とも戦います?」
「ああ……無論そう言うこともあるさ」
シルヴァは笑った。アルマはわふわふ。
「僕はハンターですから。……でも、最近はお話聞いてくれる歪虚のヒトもいるから」
「いるのか? 奇特な奴だな。天誅ものだ」
「お友達になれたらいいなって思います。そしたらもっとお友達がたくさんなので、楽しいことたくさんで幸せですー」
「歪虚の何が良いんだ?」
「ふふ……僕、悪い子ですから。ないしょですー」くすくす。
そこへやってきたミリア。
「おい、アルマ。あんまり旅の人に迷惑かけるなよ。疲れてるかも知れないだろ?」
「ミリア、あ、ごめんなさい……つい……」わふ~
「ミリアだ、うちのアルマが迷惑だったら言ってくれ。捕まえとくから」
「迷惑と言うことはないが……面白い男だな」
「襲ってこなけりゃ歪虚だろうが雑魔だろうがどうでもいい、襲って来るなら何であろうが斬るけどな。すまなかったな」
ミリアの言葉に、シルヴァは肩をすくめる。そこへやってきたメンカル。
「……アルマ。何やってるんだお前」半目。
メンカルはシルヴァに声を掛ける。
「弟がすまない。メンカルと名乗っている。よろしく頼む」折り目正しくきっちり90度のお辞儀。
「こちらこそ」
シルヴァは軽く会釈した。
「迷惑を掛けてはいないか? 何の話をしていたんだ?」
「お兄ちゃんでも秘密です~」
楽しそうなアルマ。
「全く……俺は弟が幸せならそれでいい。弟妹の可愛くない兄がどこにいる」
メンカル、アルマの頭を撫でつつ真顔でブラコン。
「ところでミリアは……あぁ、いた。お前たちの事だからそう離れんとは思ったが」
メンカルの言葉に肩をすくめるミリア。夫に笑顔を向けた。
「アルマ、本祭の頃にまた来ような。良い村じゃないか」
エルは、シルヴァに歩み寄って行った。流浪の剣士と聞いて少々興味が出た。
「初めまして、エルバッハ・リオンです。よろしければ、エルと呼んでください。よろしくお願いします」といつもどおりの挨拶をする。
「宜しく、エル。俺はシルヴァ」
「シルヴァさん。今は王国に?」
「今は、な。というか主にか。どうもこの国の水が合っているらしい。お前は?」
「何やかやですね」
エルは微笑した。
それから二人は雑談した。エルは、シルヴァの剣士としての実力を相当なものだと感じた。立ち振る舞いなどから測った。このような人物が在野にいるのだな……。失礼な態度にならないように注意するエル。
最後に、「楽しい時間でした。また機会があればお話しをしたいですね。それでは」と言って、シルヴァに一礼してから、他の場所に移動するのであった。
鞍馬はすっかりキャンプファイアーの人だった。村人のバグパイプに合わせて笛を奏でる。その様子を見つめる恋人の骸香。骸香はやんやの喝さいを送り、合唱に参加した。
「いえい♪ いえい♪ きゃほ~!」
骸香ははっちゃけていた。
鞍馬は頬笑みを浮かべていた。
シルヴァを見つけた骸香は、金髪の剣士に近づいた。
「シルヴァちゃん、一緒にあっちへ見に行かない?」
「ん? ああ……」
シルヴァを連れ出した骸香。
キャンプファイヤーで歌いながら、シルヴァを見て、祭りは参加してなんぼでしょ? と言いたげに笑う。
「へいへい~、歌って踊ろうよ~、シルヴァちゃん~」
全力で楽しもうと、祭りなんだからと歌唱しながらシルヴァに伝えながらケラケラ笑う。
シルヴァは踊りの輪に入っていくと、軽く踊り始めた。
「そうそう! 祭りは騒いで遊んでなんぼでしょ」
ニヤニヤ笑いながら盛り上がる光景を眺める骸香であった。
そこで、鞍馬が声を掛けた。
「シルヴァ」
「ん? 何だ」
「どうだ。剣舞でもやらないか」
「剣舞か……別に構わんが」
「よし、じゃあ、やろう」
鞍馬はダンサーズショーとソードを抜いた。
シルヴァは剣状態のトリシューラを抜いた。
村人たちが見つめる中、拍手を送るなか、鞍馬とシルヴァは剣舞を始めた。
お辞儀して、舞を始める。
鞍馬の華麗な舞に、剛健な立ち振る舞いを見せるシルヴァ。二人は炎の周りを回りながら、剣を打ち合わせた。
舞い散る剣舞。軽く刀身がぶつかり幻想的なワルツを奏でる。
「真ちゃん! ファイト~!」
骸香が応援する。
鞍馬とシルヴァの舞いは、初めてとは思えぬ呼吸で見事なものだった。
最後に、二人が交差して、舞は終わった。お辞儀する二人の剣士。
歓声が上がった。
「さすがだな」
鞍馬が言うと、シルヴァは笑って肩をすくめた。
「いや、そちらこそ見事な舞だった。楽しかったよ」
鞍馬とシルヴァは握手を交わした。
「…………」
シルヴァは、星を見上げて一息ついていた。祭りはまだまだ続く。
そんなわけでディーナが駆け寄ってきた。笑顔で両手でシルヴァの手を握りみんなの輪に連れて行こうとする。
「私達はこの村に住んでいないのこの村の人にとってはマレビトなの。いろんな物を与えて与えられて去っていく風と同じなの。せっかく出会えたなら貴方も与えて受け取っていけばいいの」
「本当にそれでいいのかね?」
「いいも悪いもないの全てはあるがままなの」
ディーナの言葉に、シルヴァは吐息して、立ち上がった。
「私はディーナというの、貴方のお名前は?」
「シルヴァ」
……ワッダ村の夜は炎で満たされるのであった。原初の魂にも似た輝きを放つ無垢な炎であろうか。ワッダ村には、光がある。その光の中に、ハンター達もシヴァも、村人たちもいた。夜、誰もが炎を囲んで、一縷の時間を思い思いに過ごすのであった。
「おい、コレル、その人は……」
「イノシシ狩りの名人さ。命の恩人かな。ほれ、野鳥は狩って来たけどな。この剣士さんが、イノシシを狩ってくれたんだよ」
「おー。そりゃすげーな。あんた、名前は?」
「シルヴァ」
「シルヴァさんか。まあええ。村へ入ってくれ。歓待するよ。イノシシ狩りの名手とあっちゃな、無碍にも出来んわ。はっはっは……」
そんなこんなで、シルヴァは村の中へ入って行った。
「……というわけで、神様はこの世界をお造りになって、光になりました、なのな~」
黒の夢(ka0187)は、仕事を終えて、子供たちと語らっていた。その風貌から、黒の夢は子供たちの人気者となっていた。
「ふーん……黒の夢さんは凄いなあ……。天に召します我らが神のことを御存じなんですね」
「吾輩はね、ただ在らんとしているだけなのだ。つまり、世界と一つになるということは、心を一つに感じるということ。人間は自分勝手な生き物なのな~。今は歪虚と言う世界共通の敵がいるとは言え、平和な村に暮らすみんなの方こそそのことをよく分かっていると思うのであるよ。だから、吾輩は、みんなのこと、愛おしく思うのである」
「お姉ちゃん! 魔物と戦ったお話を聞かせて! 僕もいつかは魔物を退治できるくらいに強くなって、世界に飛び出すんだ!」
少年の言葉は、黒の夢の魂を揺さぶった。それは心地よいものであった。まるで、戦女神の揺り籠に抱かれているような……そんな感覚が、黒の夢は嫌いではなかった。
「そうであるねえ……」
シェリル・マイヤーズ(ka0509)はいつものように雑魔を退治して、村に立ち寄っていた。村の雰囲気は、シェリルの心を和ませた。ここには守るべき平和がある。このような天下太平の世界を守っている、雑魔であれ何であれ、自分が歪虚を倒すことで、小さき人々が救われているのである。
「ハンターさん」
村の女の子だ。シェリルと歳はさして変わるまい。
「ん……何?」
「怪我はないですか? 雑魔退治の帰りなんですよね」
「ええ……大丈夫だよ……。雑魔だからね……。実際には怪我なんて……しないよ……」
「そうなんだ! 良かった!」
女の子は明るく天使のように笑った。
「ねえ、今晩村でキャンプファイヤーがあるんだけど、来てくれるよね? 是非来て!」
シェリルは微笑した。
「うん……いいよ……。私も……こんな世界でも、炎の光でも……癒されることだってあるかもしれない……」
「じゃあね! きっとよ!」
女の子は手を振って立ち去った。
ザレム・アズール(ka0878)は、王国東部で何やら緩い依頼があると聞いてワッダ村を訪れたのだった。ブラフマー戦で激しくやり合った後と言うのもあった。魔導バイクから降りると、吐息して、村に入った。
村長のドマソンがたまたまザレムと相対した。
「これはこれはようこそ……ハンターの方ですか?」
「ああ……ちょっと、祭りがあると聞いてな。何かお手伝いできないかと思ったんでね」
「ありがとうございます。何でもありますよ。雑時から肉体労働……。あなたは何が得意ですか?」
「実は……シェフだ」
「それは……凄いですな……シェフですか。では、料理の支度でも?」
「腕を振るうよ」
「これは楽しみですな。はっはっは。案内しましょう」
ドマソンは、ザレムを伴って歩き出した。
ザレムは、シルヴァの姿を遠目に見たが、そのまま歩き去った。
ミリア・エインズワース(ka1287)、メンカル(ka5338)、アルマ・A・エインズワース(ka4901)らの三人は、こちらの依頼の帰りでワッダ村に滞在していた。
「しかしまあ……お前らも強くなったなあ……」
メンカルの言葉に、アルマが微笑を浮かべて応じる。
「お兄ちゃん依頼を受けないといけませんねえ……」
「ふん……そんなことより、お前が順調に育ってくれれば……俺は良いんだがな……。まあ……もはや頭痛のタネは尽きないわけだが」
「メンカル、まあ許してやってよ。ボクのだんなはそう言いこそすれ、兄貴のことは慕ってるんだからさ。逆立ちしたって、お兄さんには勝てないことは分かってるよ。今の自分があるのも、お兄ちゃんのおかげってこともね」
ミリアが悪戯っぽく言うと、アルマは顔を赤くして、肩をすくめた。
「アルマ、あんただって分かってるよね?」
「もちろんですよ~、ミリア」
同じエインズワース姓というだけではお分かり頂けないと思うが、アルマとミリアは夫婦である。見た目は十歳くらい違うのだが……実際のところはどうなのかは分からない。
三人は村の酒場にいた。軽食を突きながら、卓を囲んでいた。
と、そこへ。
「あ! いたいた!」
子供たちが駆けこんで来る。
「ハンターの兄ちゃんだぜ! 俺、気になってたんだよね!」
子供たちがメンカルにわらわらと群がってくる。なぜかアルマとミリアの方ではなく、メンカルの方に群がってくる。
「依頼の話聞かせてよ! ねえねえ!」
アルマがくすくすと笑うと、ミリアは亭主を小突いた。
「だって……どうしようもないでしょう?」
アルマは涙目。ミリアは肩をすくめた。
「まあ待て待て! 俺の武勇伝を壮大に聞かせてやるからな。そこに直れ小さき騎士たちよ」
メンカルが立ちあがって、オーバーに手をかざすと、「よ! 大陛下!」とおっちゃんの声が飛んで来て、酒場のマスターは目を和ませた。子供たちはメンカルの物語が始まるのを待った。
「この物語は……ある、三人の勇敢な勇者たちのお話だ。一人は熟練の剣士。そして、残る二人は結婚していて、その剣士の従者をしている」
メンカルの言葉に、アルマが噴き出すと、ミリアはにやにやしてその様子を眺めていた。
その演説が終わると、三人は酒場を後にした。
三人は、夏祭りに向けて準備されている、精霊の神輿の作成を手伝った。大人たちが掲げる神輿で、これは巨大なものであった。
エルバッハ・リオン(ka2434)――エルは、お祭りの手伝いで、村を訪れていた。夏祭りの出しもので、子供たちが巨大な神輿人形を作るのだが、エルはその手伝いに来ていた。まずは人形の原型となる大木に手足をくっつけて行って、さらに精霊の神様のように鮮やかな布などを巻き付けて飾り付けをしていく。
エルは年頃の少年少女たちに混じって、人形作りにいそしんだ。
「人形も魔法で作れると、楽なんですけどね」
エルが言うと、少年が言った。
「お前魔法使えんの?」
「はい」
「何か見せてよ」
「そうですねえ……」
エルは手持ちの魔法を確認した。ウィンドガストがあった。
「それでは」
エルは腕を一振りした。少年の周りに緑に輝く風が湧きおこった。
「うわー! 何だこれ! 何かすげー! 体が軽くなったような気がする! すげー!」
みんながびっくりしたようにエルを見やる。それはそうだろう。村の子供たちが、実物の魔法など、その目にする機会があろうはずもない。
「あなた……歪虚と戦えるのよね」
女の子がちょっとびくびくした様子で言う。
エルは笑った。
「実は、まだ、駆け出しハンターなんで、やっと最近仲間と戦えるようになったんですよ」
「そ、そうなんだ……」
なぜか少女は安心した様子。まさかエルが大魔術師だと知ったら、この空気は台無しになってしまうかもしれない……。まあ、それでも良いのだが。エルはひとまず駆けだしハンターで通した。
「戦うって怖いですよね。私も、夢中でハンターになりたくて、家族がみんなそうだから……。戦うのが当たり前だって思ってましたから。でもね、やってみて分かったんですよ。戦うための力は、戦うためのもので……上手くは言えませんが……歪虚を倒すことは出来ます。マテリアルの力でね。覚醒者は。でも、マテリアルは、みんなのエネルギーで、万物の力で、それは、歪虚達も知ってます。だから、歪虚達が世界を無に帰そうとしているこの世界で、誰かがそれを止めなくちゃいけない。マテリアルで世界を壊そうとしている歪虚は、誰かが倒さないといけないんですよね……。それが、私もほんとは怖くて……。自分にそんなことが出来るのかなって……ね。戦うってことは、敵に力で向かって行くわけじゃないですか? 私だって、ただの子供だもん(笑)」
エルは相当に脚色した。
「ふうん……何かよく分からないけど……歪虚と戦うって、人間の仕事じゃないもんなあ……」
「エルさん凄いわね。怖いって……分かってて、戦うんでしょ?」
「いえいえ。なので、まだ駆け出しなんですよ」
エルは笑った。
「とりあえず。神輿人形を作りましょうよ。今は、私もそのために来たんで」
「うっし、じゃあさ……そっちの腕を……」
「布取って」
エルは作業に戻った。
鞍馬 真(ka5819)と骸香(ka6223)のカップルは、害獣駆除の依頼を受けていた。ここ最近畑を荒らす村の周りをねぐらにしていた狐や狸などを狩った。イノシシと熊も仕留めた。狐や狸は食用にはならないが、イノシシと熊は村の衆がやって来て、持ち帰っていく。
「えいさ~」
「ほいさ~」
「えいさ~」
「ほいさ~」
村人たちがイノシシと熊を担ぎ上げていく。
「きゃははははは♪」
骸香は楽しそうに笑った。
「楽しそうだな、骸香」
「うん、楽しい真ちゃん。害獣駆除って、すっきりするね」
「私もちょっと息抜きにはなったな……激しい戦いが多かったからな」
「真ちゃん危ないことばかりするから~。あんまりうちに心配かけないでよね」
「はは……骸香に言われちゃ立つ瀬もないな」
「でもでも~、村はサバイバーだよねえ? 歪虚を殺している分には精神的にも疲れるけど、こうして生き物を殺していると、自分の力の恐ろしさが少しは分かって来るね」
「何を言っているか私にはよく分からないが……」
「だからあ、サバイバーてことだよ。これが日常だよ? リゼリオにいたら、インフラは整ってるわ生活施設は十二分だし、困ること無いでしょ? でもね、そんなことどうでも良いくらい、イノシシ狩りは燃えた~」
「イノシシは害獣なんだが。村人たちにとっては天敵なんだからな」
「あのさあ。うち思ったんだけど、イノシシの魔獣とか、戦ってみたいわあ」
「魔獣か……本気で言ってるのか?」
鞍馬は苦笑した。
「うーん……そうだねえ……いや! やっぱり魔獣は怖い!」
骸香はけらけらと笑って鞍馬の腕を叩いた。
「そんなこったろ」
二人は村に戻ると、一段落した。
どこか休憩できるところはないかと、村の酒場に向かった。
「ん? どこかで見た顔だな」
子供たちに囲まれているメンカルとミリア、アルマらを見て、鞍馬は吐息した。ハンター仲間がいるらしい。
「ちょっと」
鞍馬はウェイトレスの女の子を呼びとめた。
「は~い♪」
「何か適当に飲み物と食事をくれないか」
「パンとジュースとかでいいですかあ?」
「それでいいよ。骸香、何を飲む?」
「うちはオレンジで良いよ」
「じゃあ、俺もパンとオレンジジュースで」
「は~い♪」
ウェイトレスは立ち去った。しばらくして、パンとオレンジジュースが運ばれてきた。
「じゃあ、食べようか」
「いただきま~す」
骸香と鞍馬は乾杯して食べた。
「ぷはあ~。依頼の後で真ちゃんと食べるご飯はおいしいね。何か特別な感じがする」
「私もだよ」
鞍馬は微笑んだ。
ディーナ・フェルミ(ka5843)は、早速ではあるが、村の女や男たちに混じって、手慣れた手つきでナイフ「プリエール」を取りだした。
「お肉捌くの得意なの任せてほしいの皮も無駄な傷はつけないの」
「おう、お嬢ちゃん、頼もしいなあ」
どさ、と熊やイノシシが台の上に並べられていく。
村人たちとディーナは作業に取り掛かった。
ディーナも獣を縛って四肢広げプリエールで熊も猪もガンガン捌いて行く。
…………。
(わいわいがやがや作業中)
…………。
ディーナは、物凄くイイ笑顔で頬に飛んだ血を拭い、
「やり遂げた感満載なのこれがお祭りで出されるかと思うと……うふふ」
ディーナは辺境の困窮気味な村落出身であり、生活が普通にサバイバルであった……らしい(笑
作業終了。
「ふうーん!」
ディーナは背伸びして、作業場から出た。
「やりきった感満載なの」
「お嬢ちゃん」
村の女が、水の入ったコップを差し出してきた。
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
「あんた良い腕してるわねえ……。どこ出身だって?」
「辺境の村です」
「だからかあ……慣れてんの?」
「はい」
ディーナスマイル。
「ここでも住めるね」
女が笑うと、ディーナは笑った。
「私はどこだって住めますよ。生きていく上で必要なものがあれば、荒地だって住めるんじゃないでしょうか。人間どこでも生きてますよね。私はさすがに仙人みたいなことは出来ませんけど、生きるために必要なことはその時考えます。歪虚は怖いですけど……誰かと一緒なら、安心です」
「人間、一人じゃ生きていけないさね。まあ、ここは歪虚はほとんどいないけどね」
「キャンプファイヤーをやるんですよね? 楽しみです。あの肉も、調理して下さるんですよね?」
「うん。何かね。シェフだってハンターが来てるらしいよ」
「あ、もしかしてザレムさんかな……」
ディーナは微笑んだ。
シルヴァは、村の中を散策していた。
……平和なものだな。歪虚がまだ侵攻していなければ、ここはまだ雑魔程度か。物理的に距離がありすぎる……か。
シルヴァは人々の様子を見やり、木にもたれかかった。
それにしても……グラズヘイム王国は堅牢だな。これをどうするか……だが。ベリアル公の攻勢にしたところで、西の拠点を突破できぬ。ブラフマーなど問題外だし。まあ……気長に待つという手もあるが……。人類が滅亡するまで……。北狄はどうもむちゃくちゃになってしまったしな……。我々の理解を越えている……。となれば、アイテルカイトとしては……。
「あのう!」
シルヴァは、目の前に少女がいることに気が付いた。
「何かな」
シルヴァは優しく微笑むと、視線を落とした。
「コレル君を助けてくれたお礼に……と思って。花束を編んで来たんです」
「君の名は?」
「アーナ。薬草師で、コレル君の幼馴染です」
「そうか」
シルヴァはアーナから花束をもらい受けた。
「あの少年は筋が良い。きっと村一番の狩人になるだろう」
シルヴァが笑うと、アーナの顔に太陽のような笑顔が広がった。
「ありがとう! その言葉を聞いたら、コレル君も喜びます! シルヴァさんみたいに強くなるって言ってましたから」
「はっはっは。まあ、ハンターだけは止めた方がいいと、伝えておくといい。仮に覚醒したとしてもね」
「良く分かりませんけど……伝えます」
「コレル君には、村を守るという使命があるのだよ」
シルヴァはそう言って、アーナの頭をポムと叩いて歩き去った。
そして……。
夜が来た! 祭りだ! 催しだ! 村人たちが集まって来た! キャンプファイヤーだ!
イノシシ肉や熊肉、野鳥の肉が並び、ザレムが狩ってきた鹿肉が並んだ。そして、パンと野菜、スープ、お酒。
「ザレムちゃん凄いのなのな~」
黒の夢は、ザレムシェフが作りだした肉に掛かっている魔法のソースに魅了されていた。
「へえ……確かに……凄い……」
シェリルもやや驚いた様子であった。
「こいつはうまいなあ……」
「ほんとですねえ♪」
ミリアとアルマも絶賛。
「大したもんだ。料理のことは良く分からんが……この味は……」
メンカルは笑っていた。
「ザレムさんさすがですね」
エルも肉を堪能。
「真ちゃん、これすごーい。何使ってるんだろうこのソース」
「フレンチシェフ顔負けだな……」
鞍馬は骸香とメインの肉を頬張っていた。
「あのお肉が……こんな神の料理に……。泣けてきますね……」
ディーナは神に感謝して、涙を拭って肉を頬張って星空を仰いだ。
「みなさま、ご堪能頂けました様子で」
ザレムは、お辞儀して、仲間や村人たちの喝采を浴びた。
「ん?」
黒の夢は、すみっこの方で佇んでいたシルヴァに目を止めた。立ちあがってシルヴァに駆け寄る。
「ほらほらシルヴァちゃん、汝もこっちで一緒に踊ろっ!(むぎゅ)」
「いや……しかし……」
「なーに遠慮してるのであるか~?」
魔女は強引にその腕を引き。
「かんぱーい!」
酒が振る舞われると、黒の夢は匂いだけで酔い始める。
「はい! 先生! 吾輩! 脱ぎますぞ!」
「わー待て待て!」
場内騒然。
「ねーえ、シルヴァちゃーん、酔ってる~?」
「酔ってるか酔ってないかで言えば、酔ってるかもな」
「吾輩はねー? 酔ってる!」
黒の夢はシルヴァの唇を塞いで抱きついた。
「おいおい! そこ! 何してる!」
村人からヤジと口笛が飛ぶ。
が、シルヴァが黒の夢の頬に手を掛け、肩を抱き寄せると、黒の夢は笑ってシルヴァの手を取り、炎に誘った。
「おどろー! みんなもおどろーよー!」
黒の夢の慈愛の笑顔。シルヴァは炎の元に連れ出された。
歌い始める黒の夢。その声は伸びやかに、踊っていてもブレずオペラ歌手並みの声量を出す。
村人たちもハンター達も踊り始める。
バグパイプの音が鳴り始める。おとなし目のアイリッシュダンスのような踊りが始まる。
シルヴァは黒の夢とワルツを踏んだ。
炎が揺れる。シェリルは、シルヴァと炎と踊りを見ていた。
「……貴方も……ハンター?」
「いや……俺はハンターではない」
シェリルは、シルヴァの横顔を見上げた。
「……もしかして、悩み事?」
何となく物憂げな雰囲気? を感じた。
「悩みは無くはない……な。ある意味」
シルヴァは金髪をかきあげた。
「……悩んでると……下ばかり見るから……上、みると……いいんだって」
それはシェリルの母の言葉だった。自分の葛藤から解放されて、思い出すのも変な話だ。
「私も空……見てなかった。今日は星が見えるかな?」
「星は……我々の存在など見透かしているだろう」
シルヴァはワインを飲んで肩をすくめた。
シェリルに取ってはただの世間話。人の闇を見てると綺麗なモノが見たくなる。空とか、心からの笑顔とか。
「空を飛ぶって……どんな感じかな……。空も地上も……きれーかな……」
シェリルはシルヴァを見上げた。
「おにーさんの髪みたいに……キラキラしてるのかな?」
「そんな綺麗な世界だと……いいのだがな」
「……シェリル。私の……名前……。おにーさんは?」
「シルヴァ」
「うん……またね」
ドカ! ザレムが投擲したナイフが的に命中すると、村人から喝采が上がった。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 当たった人には、特製スープを振る舞うよ!」
ザレムは、シルヴァに目を止めた。
「よ! そこの流浪の剣士さんもどうだい!」
ザレムはシルヴァを呼んだ。シルヴァは肩をすくめると、ナイフを受け取り、的に向かって投げつけた。
ドカ! 命中! 拍手喝さい。
「どうだ。俺の料理」
「なかなかのもんだな。王宮のシェフでもしてたのか?」
「いや、本職はハンター、の筈なんだ」
「ほう……」
「聞いてると思うが歪虚要塞と一戦あってさ。例の、ブラフマー」
「ああ……」
「でさ、敵が要塞置いてっちゃったんだ(爆)」
「ほう……? そんな話は知らんな」
「ホロウレイドでさあ、王国は壊滅的な打撃受けたわけだろ? 今も残るイスルダ島。王国の選択肢、歪虚の選択肢……どうなんだろうな」
「海軍でも整備せんと王国に手出しは出来んだろう。イスルダ島のベリアルがどう動くかは……未知数だが……」
「俺はさ、技術には敬意を払うし、優れた存在は敵でも尊敬してる。歪虚であろうと。共存の道は無いんかなあ。技術……理解したいんだよなあ。なあ、アンタなら要塞どうする? なんで置いてったのかなあ……? あれ、分解して解析したらいいと思うんだよね」
「ザレムとか言ったな。共存は無理だろうぜ。歪虚化進行で世界はゲームオーバーだ。人間が生き残るには歪虚を押し返すしかないだろうよ。歪虚の技術なぞ大したことないぞ。『技術』と言う面なら、人間の方がはるかに進んでる」
「にゃるほどねえ……そうか。またな」
アルマは シルヴァに懐きに行く。隅っこできらきらしてたら気になる(金髪好き)。
「わふ。お兄さん、傭兵さんです? みたことないヒトですー」いつの間にかいる。
「何だお前は」
「アルマです。よろしくお願いしますっ」わふ。
「シルヴァだ」
「お兄さん、歪虚とも戦います?」
「ああ……無論そう言うこともあるさ」
シルヴァは笑った。アルマはわふわふ。
「僕はハンターですから。……でも、最近はお話聞いてくれる歪虚のヒトもいるから」
「いるのか? 奇特な奴だな。天誅ものだ」
「お友達になれたらいいなって思います。そしたらもっとお友達がたくさんなので、楽しいことたくさんで幸せですー」
「歪虚の何が良いんだ?」
「ふふ……僕、悪い子ですから。ないしょですー」くすくす。
そこへやってきたミリア。
「おい、アルマ。あんまり旅の人に迷惑かけるなよ。疲れてるかも知れないだろ?」
「ミリア、あ、ごめんなさい……つい……」わふ~
「ミリアだ、うちのアルマが迷惑だったら言ってくれ。捕まえとくから」
「迷惑と言うことはないが……面白い男だな」
「襲ってこなけりゃ歪虚だろうが雑魔だろうがどうでもいい、襲って来るなら何であろうが斬るけどな。すまなかったな」
ミリアの言葉に、シルヴァは肩をすくめる。そこへやってきたメンカル。
「……アルマ。何やってるんだお前」半目。
メンカルはシルヴァに声を掛ける。
「弟がすまない。メンカルと名乗っている。よろしく頼む」折り目正しくきっちり90度のお辞儀。
「こちらこそ」
シルヴァは軽く会釈した。
「迷惑を掛けてはいないか? 何の話をしていたんだ?」
「お兄ちゃんでも秘密です~」
楽しそうなアルマ。
「全く……俺は弟が幸せならそれでいい。弟妹の可愛くない兄がどこにいる」
メンカル、アルマの頭を撫でつつ真顔でブラコン。
「ところでミリアは……あぁ、いた。お前たちの事だからそう離れんとは思ったが」
メンカルの言葉に肩をすくめるミリア。夫に笑顔を向けた。
「アルマ、本祭の頃にまた来ような。良い村じゃないか」
エルは、シルヴァに歩み寄って行った。流浪の剣士と聞いて少々興味が出た。
「初めまして、エルバッハ・リオンです。よろしければ、エルと呼んでください。よろしくお願いします」といつもどおりの挨拶をする。
「宜しく、エル。俺はシルヴァ」
「シルヴァさん。今は王国に?」
「今は、な。というか主にか。どうもこの国の水が合っているらしい。お前は?」
「何やかやですね」
エルは微笑した。
それから二人は雑談した。エルは、シルヴァの剣士としての実力を相当なものだと感じた。立ち振る舞いなどから測った。このような人物が在野にいるのだな……。失礼な態度にならないように注意するエル。
最後に、「楽しい時間でした。また機会があればお話しをしたいですね。それでは」と言って、シルヴァに一礼してから、他の場所に移動するのであった。
鞍馬はすっかりキャンプファイアーの人だった。村人のバグパイプに合わせて笛を奏でる。その様子を見つめる恋人の骸香。骸香はやんやの喝さいを送り、合唱に参加した。
「いえい♪ いえい♪ きゃほ~!」
骸香ははっちゃけていた。
鞍馬は頬笑みを浮かべていた。
シルヴァを見つけた骸香は、金髪の剣士に近づいた。
「シルヴァちゃん、一緒にあっちへ見に行かない?」
「ん? ああ……」
シルヴァを連れ出した骸香。
キャンプファイヤーで歌いながら、シルヴァを見て、祭りは参加してなんぼでしょ? と言いたげに笑う。
「へいへい~、歌って踊ろうよ~、シルヴァちゃん~」
全力で楽しもうと、祭りなんだからと歌唱しながらシルヴァに伝えながらケラケラ笑う。
シルヴァは踊りの輪に入っていくと、軽く踊り始めた。
「そうそう! 祭りは騒いで遊んでなんぼでしょ」
ニヤニヤ笑いながら盛り上がる光景を眺める骸香であった。
そこで、鞍馬が声を掛けた。
「シルヴァ」
「ん? 何だ」
「どうだ。剣舞でもやらないか」
「剣舞か……別に構わんが」
「よし、じゃあ、やろう」
鞍馬はダンサーズショーとソードを抜いた。
シルヴァは剣状態のトリシューラを抜いた。
村人たちが見つめる中、拍手を送るなか、鞍馬とシルヴァは剣舞を始めた。
お辞儀して、舞を始める。
鞍馬の華麗な舞に、剛健な立ち振る舞いを見せるシルヴァ。二人は炎の周りを回りながら、剣を打ち合わせた。
舞い散る剣舞。軽く刀身がぶつかり幻想的なワルツを奏でる。
「真ちゃん! ファイト~!」
骸香が応援する。
鞍馬とシルヴァの舞いは、初めてとは思えぬ呼吸で見事なものだった。
最後に、二人が交差して、舞は終わった。お辞儀する二人の剣士。
歓声が上がった。
「さすがだな」
鞍馬が言うと、シルヴァは笑って肩をすくめた。
「いや、そちらこそ見事な舞だった。楽しかったよ」
鞍馬とシルヴァは握手を交わした。
「…………」
シルヴァは、星を見上げて一息ついていた。祭りはまだまだ続く。
そんなわけでディーナが駆け寄ってきた。笑顔で両手でシルヴァの手を握りみんなの輪に連れて行こうとする。
「私達はこの村に住んでいないのこの村の人にとってはマレビトなの。いろんな物を与えて与えられて去っていく風と同じなの。せっかく出会えたなら貴方も与えて受け取っていけばいいの」
「本当にそれでいいのかね?」
「いいも悪いもないの全てはあるがままなの」
ディーナの言葉に、シルヴァは吐息して、立ち上がった。
「私はディーナというの、貴方のお名前は?」
「シルヴァ」
……ワッダ村の夜は炎で満たされるのであった。原初の魂にも似た輝きを放つ無垢な炎であろうか。ワッダ村には、光がある。その光の中に、ハンター達もシヴァも、村人たちもいた。夜、誰もが炎を囲んで、一縷の時間を思い思いに過ごすのであった。
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流浪の剣士さんへ質問 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/06/24 17:00:53 |
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相談兼雑談卓 鞍馬 真(ka5819) 人間(リアルブルー)|22才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2016/06/28 10:58:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2016/06/28 15:49:11 |